アクセシビリティ閲覧支援ツール

○「感染症法に基づく「医療措置協定」締結等のガイドライン」について

(令和5年5月26日)

(/医政地発0526第4号/医政産情企発0526第2号/健感発0526第15号/)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局地域医療計画課長、厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課長、厚生労働省健康局結核感染症課長通知)

(公印省略)

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」(令和4年法律第96号。以下「改正法」という。)の趣旨及び運用の詳細等については、「「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」の一部の施行等について(通知)」(令和5年5月26日付け医政発0526第11号・産情発0526第2号・健発0526第4号厚生労働省医政局長・大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官・健康局長通知)により通知したところです。

改正法による改正後の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第36条の3第1項の規定に基づく医療措置協定に関し、協定締結を進める際の参考とされたく、別添のとおり「感染症法に基づく「医療措置協定」締結等のガイドライン」を作成しました。

貴職におかれては、御了知の上、貴管内の医療機関に周知いただくとともに、適宜御活用いただき、地域医師会の医療関係団体等とも連携いただきながら医療機関との協議に当たるなど、改正法の令和6年4月1日からの円滑な施行に向けて取り組んでいただくよう、お願いします。

なお、別添ガイドラインの事前調査結果など含め、来年度からの予防計画・医療計画の策定作業や医療機関との協定締結状況について、今後、進捗等の確認をさせていただくことを予定しており、詳細は追って連絡します。

感染症法に基づく「医療措置協定」締結等のガイドライン

令和5年5月26日(初版)

厚生労働省医政局地域医療計画課

医薬産業振興・医療情報企画課

健康局結核感染症課

目次

1 はじめに

2 本ガイドラインの位置づけ

3 予防計画・医療計画策定や協定締結等に先立つ医療機関調査(事前調査)について

(1) 事前調査の趣旨・目的

(2) 医療機関調査(事前調査)の具体の進め方

4 協定の協議・締結の進め方について

(1) 基本的な考え方

(2) 協定のひな形について

【協定ひな形の解説】

(3) 都道府県医療審議会のプロセス

5 公的医療機関等の義務等と協定締結との関係について

6 協定の締結後の公表や報告・変更等について

(1) 協定の内容の公表

(2) 協定締結後の履行状況等の報告

(3) 協定の内容を変更する場合の対応

1 はじめに

○ 新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)への対応を踏まえ、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症の発生及びまん延に備えるため、国又は都道府県及び関係機関の連携協力による病床、外来医療及び医療人材並びに感染症対策物資の確保の強化、情報基盤の整備等の措置を講ずるため、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第96号。以下「改正法」という。)により感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)を一部改正し、予防計画の記載事項の充実や、都道府県と医療機関との医療措置協定の締結等については、令和6年4月1日から施行されることとなっている。

○ また、良質かつ適切な医療を効率的に提供するための医療法当の一部を改正する法律(令和3年法律第49号)により医療法(昭和23年法律第205号)を一部改正し、医療計画における新たな事業として「新興感染症発生・まん延時における医療」が追加され、改正感染症法による予防計画との整合性を図りながら、また、都道府県と医療機関との医療措置協定の締結等を通じて、令和6年度からの第8次医療計画の作成・推進を行っていくこととなる。

(参考) 新興感染症発生・まん延時における医療(第8次医療計画の追加のポイント)

○ 本ガイドラインでは、改正感染症法の医療措置協定の内容を中心に、令和6年度の施行に向けた対応、あるいは施行後の対応をまとめたものである。特に令和5年度中の対応については、以下のスケジュールを想定しているところであり、スケジュール中に出てくる対応について、本ガイドラインとの対応関係は次のとおりであるので、参考にされたい。

①医療機関に対する調査(対応能力・意向、課題など)

→ 「3 予防計画・医療計画策定や協定締結等に先立つ医療機関調査(事前調査)について」

②医療機関と協議~正式締結

→ 「4 協定の締結の進め方について」「5 公的医療機関等の義務等と協定締結との関係について」

2 本ガイドラインの位置づけ

○ 本ガイドラインは、協定締結に当たっての協議の進め方や協定締結後の履行状況等の報告等に係る事項に関して、都道府県担当者及び医療機関の担当者が参照することを想定して、留意点等をまとめたものである。各都道府県においては、地域の実情に応じて、本ガイドラインを参照しながら各医療機関との協定締結の協議等進められたい。

○ 別途お示ししている、改正感染症法の施行通知や医療計画関係の通知等も以下にまとめたので、本ガイドライン中でも引用しながら解説しているところではあるが、これらもご参照いただきながら、対応を進められたい。

【改正感染症法等の公布・施行について】

・「「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」の公布及び一部施行について(通知)」(令和4年12月9日付け医政発1209第22号・産情発1209第2号・健発1209第2号・生食発1209第7号・保発1209第3号厚生労働省医政局長・大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官・健康局長・官房生活衛生・食品安全審議官・保険局長通知)

・「「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」の一部の施行等について(通知)」(令和5年5月26日付け医政発0526第11号・産情発0526第2号・健発0526第4号厚生労働省医政局長・大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官・健康局長通知)

【予防計画関係】

・「「都道府県、保健所設置市及び特別区における予防計画作成のための手引き」について(通知)」(令和5年5月26日付け健感発0526第16号・医政地発0526第3号・医政産情企発0526第1号・健健発0526第1号厚生労働省健康局結核感染症課長・医政局地域医療計画課長・医政局医薬産業振興・医療情報企画課長・健康局健康課長通知)

【医療計画関係】

・「医療提供体制の確保に基本方針の一部を改正する件の公布等について」(令和5年5月26日付け医政発0526第21号厚生労働省医政局長通知)

・「「医療計画について」の一部改正について」(令和5年5月26日付け医政発0526第8号厚生労働省医政局長通知)

・「「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」の一部改正について」(令和5年5月26日付け医政地発0526第5号厚生労働省医政局地域医療計画課長通知)

【医療法協定関係】

・「感染症法の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律による改正後の医療法に基づく協定等について課長通知」(令和5年5月26日付け医政地発0526第1号厚生労働省医政局地域医療計画課長通知)

3 予防計画・医療計画策定や協定締結等に先立つ医療機関調査(事前調査)について

(1) 事前調査の趣旨・目的

○ 令和6年度からの予防計画・医療計画(医療計画について、ここでは「新興感染症発生・まん延時における医療」のことをいう。以下同じ。)の策定・作成に当たっては、数値目標等を設定する必要があることから、また、感染症法第36条の3第1項の規定に基づく医療措置協定の医療機関との円滑な協議・締結作業に資するよう、新型コロナの対応を念頭に、都道府県は、令和5年度前半には、医療機関調査(事前調査)を行い、その結果に基づき、その後の対応を進めることとする。本調査の結果については、基本は都道府県の中で、計画策定作業や協定締結作業を進めていただくために活用いただくことを念頭に置いている。

(2) 医療機関調査(事前調査)の具体の進め方

○ 別添1のとおり調査票の例を用意したので、適宜ご活用いただき、予防計画・医療計画の策定作業や協定締結の協議等の対応を進められたい。調査票の例(別添1)については、調査の項目例をお示しするものであって、地域の実情に応じて質問項目を追加・変更いただいて構わない。

○ また、調査対象についても、地域の実情に応じて判断いただいて構わないが、新型コロナ対応をいただいた、病院・診療所・薬局・訪問看護事業所を中心に、調査を行っていただくことが考えられる。

○ なお、新興感染症の今後の対応(協定締結や人員確保、報告方法)に当たっての予定や課題等について、厚生労働省において、医療機関等情報支援システム(G―MIS)により、病院・診療所に対し調査を行うこととしていますので、ご了知いただきたい。この調査について、詳細は「新興感染症対応に当たっての実態調査について(依頼)」(令和5年5月26日付け厚生労働省医政局地域医療計画課事務連絡)により連絡する。

○ 感染症法第36条の3第1項の規定に基づく協定は、改正感染症法附則第10条の規定により、施行日(令和6年4月1日)前においても締結できるので、本事前調査の結果等を活用しながら、順次協議が整った医療機関と協定を締結いただくことが可能であるので申し添える。

4 協定の協議・締結の進め方について

(1) 基本的な考え方

○ 都道府県は、新興感染症対応と併せ、通常医療の確保のため、3の事前調査結果(新型コロナ対応実績を含む。)や、③で解説している都道府県医療審議会等を含む協定協議のプロセスも活用して、広く地域における医療機関の機能や役割を確認し、医療提供の分担・確保を図ることとする。その際、必要に応じ、保健所設置市・特別区とも連携して対応すること。

○ 3の事前調査結果(新型コロナ対応実績を含む。)も活用いただき、協定締結を進めていただくこと。(なお、感染症法第36条の3第2項の規定により、都道府県から協定締結の協議を求められた医療機関の管理者は、その求めに応じなければならないこととされている。)具体的には、地域の実情に応じて判断いただいて構わないが、例えば、新型コロナ重点医療機関の指定実績のある医療機関から協定締結の協議を開始することなどが考えられる。

○ 協定は双方の合意であり、また、新興感染症発生・まん延時の対応を円滑に行うためにも、都道府県と医療機関で締結する協定の内容の齟齬がないよう、十分な協議を行うこと。また、協定の締結に当たっては、新興感染症発生・まん延時には、その感染症の特性に合わせて、都道府県と医療機関は協定の内容を見直すなど、実際の状況に応じた機動的な対応を行うことも前提に(※)、協定協議段階で可能な範囲で都道府県と医療機関とが合意した内容について締結すること。

(※) 新興感染症発生・まん延時において、新興感染症の性状のほか、その対応方法を含めた最新の知見の取得状況や、感染症対策物資等の確保の状況などが締結した協定の前提・内容(事前の想定)とは大きく異なる事態の場合は、国においてその判断を行い、機動的に対応するものとする。

感染症法第36条の2の公的医療機関等(医療法の公立・公的医療機関等、特定機能病院、地域医療支援病院をいう。以下同じ。)への通知との関係については、5 公的医療機関等の義務等と協定締結との関係について、を参照されたい。

○ 協定締結作業については、令和5年度中から順次実施し、令和6年9月末までに完了することを目指すこととすること。

(参考) 改正法附則第10条第1項の規定により、令和6年4月1日前においても、協定を締結することが可能であり、同条第2項の規定により、施行日前に締結された協定は、施行日において感染症法第36条の3第1項の規定により締結されたものとみなすこととされている。

(2) 協定のひな形について

○ 感染症法第36条の3第1項の規定に基づく医療措置協定について、病院・診療所と締結する場合、薬局と締結する場合、訪問看護事業所と締結する場合、それぞれについて別添2―1から別添2―3まで、ひな形をお示しするので活用の上、都道府県知事と医療機関(病院・診療所、薬局及び訪問看護事業所をいう。以下同じ。)の管理者と協議し、合意が成立したときは、協定を締結するものとする。

○ ひな形でお示ししている事項は、感染症法第36条の3第1項各号に掲げる協定の内容に係る法定事項(※)を網羅する観点で構成しているが、地域の実情や医療機関との協議の状況に応じて、都道府県知事が必要と認める事項について内容を加えることもできる。

(※) 感染症法第36条の3第1項各号に掲げる事項及び感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(令和5年厚生労働省令第79号)による改正後の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則(平成10年厚生省令第99号。以下「感染症法施行規則」という。)第19条の3第2項に定める事項

(1) ①病床の確保、②発熱外来の実施、③自宅療養者等への医療の提供及び健康観察、④後方支援、⑤医療人材派遣、のうち新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間において当該医療機関が講ずべきもの

(2) 個人防護具の備蓄の実施について定める場合にあっては、その内容

(3) (1)・(2)の措置に要する費用の負担の方法

(4) 医療措置協定の有効期間

(5) 医療措置協定に違反した場合の措置

(6) (1)・(2)の措置に係る必要な準備に係る事項

(7) 医療措置協定の変更に関する事項

(8) その他都道府県知事が必要と認める事項

○ 次ページより、協定ひな形(別添2―1(病院・診療所)、別添2―2(薬局)、別添2―3(訪問看護事業所))の項目に沿って、別添2―1の項目の内容を中心に解説する。なお、実際の協定締結に際しては、別添2―1第3条の医療措置については、一から五までのうち、該当する措置のみ記載することとし、一部の措置についての協定締結することも可能であることを申し添える。

また、協定を締結した医療機関のうち、病床の確保に対応する医療機関は感染症法第6条第16項の「第一種協定指定医療機関」として、発熱外来又は自宅療養者等の対応を行う医療機関は同条第17項の「第二種協定指定医療機関」として、それぞれ都道府県知事による指定を受けることとなる。

【協定ひな形の解説】

(目的)

第1条 この協定は、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症又は新感染症(以下「新型インフルエンザ等感染症等」という。)に係る発生等の公表が行われたときから新型インフルエンザ等感染症等と認められなくなった旨の公表等が行われるまでの間(以下「新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間」という。)に、甲の要請に基づき、乙において、新型インフルエンザ等感染症等に係る医療を提供する体制の確保に必要な措置を迅速かつ適確に講ずることにより、甲が新型インフルエンザ等感染症等の医療提供体制を確保することを目的とする。

(医療措置実施の要請)

第2条 甲は、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間において、地域の感染症医療提供体制等を勘案し、必要があると認めるときは、乙に対し、次条に定める医療措置を講ずるよう要請するものとする。

(解説)

・ 医療措置協定の措置の対象となる感染症は、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症又は新感染症の3つの感染症を対象とする(が、例えば新感染症の場合には、措置の内容を変える(確保できる病床数が異なる)等の個別の事情が確認でき、協議の上合意した場合には、その旨を記載した協定の内容とすることも認められるものとする)。

・ 新型インフルエンザ感染症等発生等公表期間に、都道府県知事が状況に応じて対応の必要を判断の上、医療機関に要請をすることで、医療機関は措置を講ずることとなる。

(医療措置の内容)

第3条 乙は、前条の規定による甲からの要請に基づき、次に掲げる医療措置を講ずるものとする。

一 病床の確保(患者を入院させ必要な医療を提供)(略)

(解説)

・ 感染症法第36条の9第1項の規定による流行初期医療確保措置の対象となる流行初期から対応する措置の内容(最大確保病床数)と、流行初期期間経過後に対応する措置の内容(最大確保病床数)とを分けて記載すること。新型コロナウイルス感染症対応では、国から各都道府県に対し、感染状況に応じ段階的に対応する考え方を示した上で、各都道府県それぞれで、感染状況に応じた対応の段階を設定し、各段階ごとに必要な病床数等を確保する計画(病床確保計画)を立て、病床等の確保を行った。こうした対応も参考に、協定で約束した最大確保病床数を基に、各都道府県において、あらかじめ、あるいは、感染症発生・まん延時に、対応の段階を設定することとなる。なお、流行初期から対応する医療機関においては、その対応方法を含めた知見を生かし、流行初期期間経過後も引き続き同規模以上の対応をしていただくことが望ましい。

新型コロナ対応から得た教訓も踏まえ、各対応の段階での病床確保の目的(新型コロナ対応において、流行初期の病床確保は疑い患者用病床の確保も含めた隔離目的や、重症治療などが目的であった。一定期間経過後、オミクロン株の流行時には、高齢の患者へのケアを意識した適切な療養環境の確保の観点も加わった。)も意識した上で、対応を検討すること。その際、急性期病棟だけでなく地域ケア病棟や療養型病床などの感染症対応を行う病床の元の病床種別・役割も考慮して確保する病床について検討することが重要である。

・ 流行初期医療確保措置の対象となる基準については、感染症法施行規則第19条の7において、同条各号に定める基準を参酌して都道府県知事が定めるものとしており、地域の実情に応じて、通常医療との両立の観点から、柔軟に対応されたい。

・ 病床の確保に当たっては、病床を稼働させるための医療人材確保について、各医療機関で検討いただいた上で協定を締結いただくことが必要である。新型コロナの対応を振り返ると、重症者用病床に関しては、ICU経験のある看護師の確保が重要であり、また、重症者用以外のコロナ病棟においても、手厚い看護師の配置が必要であり、通常医療との両立を図りながら、コロナ病床を稼働できる体制の確保に課題があった。

新型コロナウイルス感染症対応における病床確保に際しての看護配置も含めた人員確保等の取組については、以下で紹介しているところであり、参考にされたい。

(参考)

第8次医療計画検討会(令和4年3月4日)参考資料1『新型コロナ対応に係る事例発表(10/13,11/5,11/11)でご説明いただいた事項』

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000906890.pdf

・ 都道府県知事が稼働を要請してから、実際に当該病床を稼働するまでの期間については、それぞれひな形で記載しているとおり、新型コロナ対応の経験も踏まえ協定において明確化しておく必要があると考えられるが、医療機関で十分な準備期間が確保されるよう、国・都道府県は要請前から、感染症指定医療機関の実際の対応に基づいた対応方法を含め、国内外の最新の知見について、対応する医療機関に情報提供を行うなど、必要な対応を行うことが必要である。

二 発熱外来の実施(略)

(解説)

・ 感染症法第36条の9第1項の規定による流行初期医療確保措置の対象となる流行初期から対応する措置の内容と、流行初期期間経過後に対応する措置の内容とを分けて記載すること。なお、流行初期から対応する医療機関においては、その対応方法を含めた知見を生かし、流行初期期間経過後も引き続き同規模以上の対応をしていただくことが望ましい。

・ 「対応の内容」の「○人/日」については、当該発熱外来の開設時間内における発熱患者の数(受診者数)を意味し、協定締結時点で想定される持続的に対応可能な(最大の)数を記載いただくこととする。(後述のとおり、診療所において、具体に記載が難しい場合には、対応できる旨のみ記載することとし、この対応可能人数については、参考記載とすることも可能。)

・ 「対応の内容」の「(検査(核酸検出検査)の実施能力:○件/日)」については、医療機関内で検体の採取及び検査の実施まで行う場合(注)に、持続的に検査可能な(最大の)数を記載するものとする。また、新型コロナ対応における核酸検出検査と同様の検査方法を想定するものとする。

(注) 医療機関で検体の採取のみ行い、分析は外部に委託する場合は検査の実施能力に含まない。

また、「全国的に検査の実施環境が整備されていることを前提とする」とは、新型インフルエンザ等感染症等が発生した際に、核酸検出検査の実施に必要な検査試薬等が流通し医療機関が利用できる状況にあるなど、医療機関の責に帰すべき理由によらず検査が実施できない環境にはないことを前提として記載することを意味するものである。

・ 検査の実施能力部分については、検査措置協定を兼ねるものとする。

・ 地域における診療所については、新興感染症医療を行うことができる場合はできる限り感染症法に基づく協定を締結し、また、新興感染症医療以外の通常医療を担う診療所も含め、日頃から患者のことをよく知る医師、診療所等と、新興感染症医療を担う医療機関との連携は重要である。そのため、全ての医療機関は当該協定締結の協議に応じる義務があるところ、都道府県は、当該協定の締結に先立つ調査や協議も活用しながら、地域における新興感染症医療と通常医療の役割を確認し、連携を促す。

なお、地域の診療所が新興感染症医療以外の通常医療を担っている場合は、患者からの相談に応じ発熱外来等の適切な受診先の案内に努める。その際は、当該患者に対して、自身の基礎疾患等や、受けている治療内容、自院での受診歴などの情報を当該受診先にお伝えすることや、お薬手帳を活用することなど助言する。その際、当該受診先は、オンライン資格確認等システム等を活用して、マイナンバーカードを持参した患者の同意を得て、診療・薬剤情報等を確認することにより、より正確な情報に基づいた当該患者に合った医療を提供することが可能となる。

診療所の場合

※ 対応可能人数や検査実施能力については、具体に記載が難しい場合には、対応できる旨のみ記載することとし(ただし流行初期期間における対応を行う場合には、記載必須とする)、参考記載とする。

※ 普段から自院にかかっている患者(かかりつけ患者)に限って対応する場合には、その旨明記することとする。

※ 小児患者の対応ができる場合には、その旨明記することとする。

三 自宅療養者等への医療の提供及び健康観察(略)

(解説)

・ 「対応時期(目途)」については、記載例として、「流行初期期間経過後(新型インフルエンザ等感染症等に係る発生等の公表が行われてから6か月以内)」と記載しているが、流行初期期間中の対応が可能な場合はその旨記載いただくなど、都道府県と医療機関との協議で確認いただきたい。

・ 「対応の内容(例)」において、「高齢者施設等への対応が可能」と記載しているが、障害者施設等への対応についても検討いただき、対応可能な場合は明示するなど、都道府県と医療機関との協議で確認いただきたい。

・ 「健康観察の対応」については、感染症法第44条の3第4項の規定に基づき、感染症発生・まん延時にその実施を委託して実施することとなるが、協定において、平時から自宅療養者等への医療の提供とあわせて健康観察を実施するか、都道府県と医療機関との協議で確認いただき、記載いただきたい。

・ 「対応可能見込み(最大○人/日)」については、参考記載とし、可能な範囲で記載いただきたい。なお、当該記載の内容が大幅に変わる場合等については、医療機関から都道府県に報告をいただくことが望ましい。

四 後方支援(略)

(解説)

・ 「対応時期(目途)」については、記載例として、「流行初期期間経過後(新型インフルエンザ等感染症等に係る発生等の公表が行われてから6か月以内)」と記載しているが、流行初期期間中の対応が可能な場合はその旨記載いただくなど、都道府県と医療機関との協議で確認いただきたい。

・ 「対応の内容(例)」の記載については記載例であり、例えば「回復患者の転院受入が可能」といった記載は、流行初期期間経過後に限られるものではない。

五 医療人材派遣(略)

(解説)

・ 「対応時期(目途)」については、記載例として、「流行初期期間経過後(新型インフルエンザ等感染症等に係る発生等の公表が行われてから6か月以内)」と記載しているが、流行初期期間中の対応が可能な場合はその旨記載いただくなど、都道府県と医療機関との協議で確認いただきたい。

・ 「うち県外可能人数:○人」については、参考記載とし、可能な範囲で記載いただきたい。なお、当該記載の内容が大幅に変わる場合等については、医療機関から都道府県に報告をいただくことが望ましい。

・ 感染症発生・まん延時に都道府県知事の要請に基づき、医療人材派遣を行う場合において、協定締結医療機関が派遣を行う医療人材は、原則として派遣元である乙の職員として派遣されることとなる。(協定締結医療機関との雇用関係を維持したまま、都道府県知事からの要請に基づき協定締結医療機関が派遣を行う。)

・ DMAT等については、医療法第30条の12の6第1項の規定に基づくDMATの派遣に関する協定等をあわせて締結することとする。医療法第30条の12の6の規定に基づく協定については、「感染症法の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律による改正後の医療法に基づく協定等について」(令和5年5月26日付け医政地発0526第1号厚生労働省医政局地域医療計画課長通知)によりひな形等をお示ししており、併せて活用していただきたい。

・ 新型コロナ対応における応援派遣看護職の受け入れ・派遣等について、国の予算事業である「新型コロナウイルス感染症対応看護マネジメント体制整備事業」の中で作成された「新型コロナウイルス感染症等対応のための応援派遣看護職受け入れ・応援派遣マニュアル」(一般社団法人日本看護管理学会)が発行されている。今般の協定締結に当たっても、平時からの準備あるいは新興感染症発生・まん延時の対応の参考とされたい。

(参照) https://janap.jp/document/c19-support_manual/

(個人防護具の備蓄)

第4条 新型インフルエンザ等感染症等に係る医療を提供する体制の確保に必要な措置を迅速かつ適確に講ずるため、個人防護具は、次のとおり、乙が備蓄する。(略)

(解説)

・ 協定における個人防護具の備蓄は任意事項であるが、協定で定めることが推奨される。協定締結医療機関(病院、診療所、訪問看護事業所)が個人防護具の備蓄の実施について協定で定める場合、備蓄量は医療機関の使用量2ヶ月分以上とすることを推奨する。

・ 「使用量2ヶ月分」以外でも、例えば「使用量1ヶ月分」や「使用量3週間分」、「使用量3ヶ月分」など、医療機関が設定する備蓄量を記載して協定を締結することができる。協定では、その医療機関の使用量が新興感染症発生・まん延時におけるどのような期間の分かを明らかにして備蓄量を定める。

<備蓄の運営方法等>

・ 個人防護具の備蓄は、物資を購入して保管し、使用期限が来たら廃棄するのではなく、平素から備蓄物資を有効に活用していただく観点から、備蓄物資を順次取り崩して感染症対応以外の通常医療の現場で使用する、回転型での備蓄を推奨する。その上で、備蓄に関する平時の支援については、国において保管施設整備の支援について検討する。

・ 回転型での運営のために、施設内に保管施設を確保することが望ましいが、施設外の保管施設を利用するなどにより使用量2か月分などの備蓄を確保するのでもよい。

※ このほか、例えば、①物資の取引事業者との供給契約で、取引事業者の保管施設で備蓄を確保する方法や、②物資の取引事業者と提携し、有事に優先供給をしていただく取り決めをすることで、平時においては物資を購入することなく、備蓄を確保する方法でもよい。

・ 上記のような備蓄の運営方法については、協定締結のプロセスにおいて、都道府県担当者から共有を図ることにご留意いただきたい。

・ なお、実際の有事において、「使用量2か月分」の想定以上に需要が急増し、一方で供給が確保されず物資が不足する事態が生じた場合には、国の備蓄等で対応することを想定している。国の備蓄等の対応は、協定で「使用量2ヵ月分」を定めた医療機関のほか、協定で「使用量1ヵ月分」等を定めた医療機関や協定で備蓄を定めていない医療機関も含めて想定する。

<対象となる物資(品目)について>

・ PPE備蓄の対象物資(品目)は、病院、診療所及び訪問看護事業所については、サージカルマスク、N95マスク、アイソレーションガウン、フェイスシールド及び非滅菌手袋の5物資とする。

病院、診療所及び訪問看護事業所については、上記5物資全部の使用量2ヵ月分以上の備蓄を推奨する。

※ N95マスクについては、DS2マスクでの代替も可能とする。

※ アイソレーションガウンには、プラスチックガウンも含まれる。

※ フェイスシールドについては、再利用可能なゴーグルの使用での代替も可能とする。この場合において、ゴーグルは再利用が可能であり、有事におけるその医療機関での1日当たり使用量を備蓄することを推奨する。必要人数分の必要量を確保していれば、フェイスシールドの備蓄をすることを要しないものとし、かつ、フェイスシールドの使用量2ヵ月分を確保しているのと同等として取り扱う。

※ 薬局については、対象物資は任意とする。

<備蓄量について>

・ 協定で定める備蓄量(その医療機関の使用量のどのような期間の分か)は、5物資全部について一括して設定するか、物資を分けて、又は各物資ごとに設定する。

※ 病院、診療所及び訪問看護事業所が5物資全部について一括して、新興感染症発生・まん延時における使用量2ヵ月分以上で設定し、協定で定めることを推奨する。

※ また、備蓄量は、その医療機関の施設としての使用量で設定する。その医療機関の新興感染症診療部門以外での使用量も含まれる。

・ 協定で定める備蓄量(物資別の具体的数量)は、これまでの新型コロナ対応での平均的な使用量で設定する。特定の感染の波における使用量での2ヵ月分ではなく、令和3年や令和4年を通じた平均的な使用量で2ヵ月分を設定する。

※ 使用量2ヵ月分を定める場合、その医療機関のこれまでのコロナ対応での平均的な使用量で2ヵ月分を設定するが、その際、G―MIS週次報告対象医療機関については、同週次報告での「1週間想定消費量」の回答を必要に応じ活用できる。また、以下のとおり、G―MIS週次調査から規模別・物資別の平均消費量(令和3年及び令和4年平均値)を整理しているので、必要に応じ参考にされ、設定されたい。

<1病院あたりの個人防護具の1週間想定消費量(全国平均)>


サージカルマスク

N95・DS2マスク

アイソレーションガウン

フェイスシールド

非滅菌手袋

200床未満

1026枚

54枚

146枚

59枚

7904枚

200~399床

3194枚

187枚

584枚

209枚

22908枚

400~599床

4932枚

387枚

820枚

489枚

52156枚

600~799床

8106枚

601枚

1407枚

743枚

88782枚

800~999床

15084枚

875枚

1734枚

1530枚

141202枚

1000床以上

15460枚

1312枚

4878枚

2826枚

169614枚

<1診療所あたりの個人防護具の1週間想定消費量(全国平均)>


サージカルマスク

N95・DS2マスク

アイソレーションガウン

フェイスシールド

非滅菌手袋

病床なし

79枚

6枚

17枚

11枚

272枚

病床あり

160枚

7枚

19枚

13枚

662枚

<1病院あたりの個人防護具の2ヶ月想定消費量(全国平均)>


サージカルマスク

N95・DS2マスク

アイソレーションガウン

フェイスシールド

非滅菌手袋

200床未満

8796枚

466枚

1255枚

509枚

67754枚

200~399床

27376枚

1606枚

5002枚

1789枚

196354枚

400~599床

42278枚

3321枚

7033枚

4189枚

447054枚

600~799床

69483枚

5150枚

12060枚

6366枚

760996枚

800~999床

129290枚

7501枚

14865枚

13116枚

1210304枚

1000床以上

132518枚

11244枚

41807枚

24221枚

1453840枚

<1診療所あたりの個人防護具の2ヶ月想定消費量(全国平均)>


サージカルマスク

N95・DS2マスク

アイソレーションガウン

フェイスシールド

非滅菌手袋

病床なし

674枚

55枚

149枚

98枚

2332枚

病床あり

1370枚

57枚

165枚

114枚

5668枚

(措置に要する費用の負担)

第5条 第3条に基づく措置に要する費用については、都道府県の予算の範囲内において、甲が乙に補助を行うものとする。なお、その詳細については、新型インフルエンザ等感染症等が発生した際に、その感染症の性状に合わせて定めるものとする。

2 甲は、第3条第1号又は第2号に掲げる措置のうち、新型インフルエンザ等感染症等の発生等の初期の段階から当該感染症に係る医療を提供する体制を迅速かつ適確に構築するための措置を講じたと認められる場合であって、乙が当該措置を講じたと認められる日の属する月の収入額が、新興感染症発生・まん延前の同月の収入額を下回った場合には、乙に対し、流行初期医療の確保に要する費用を支給する措置(流行初期医療確保措置)を行うものとする。

3 前条に基づく措置に要する費用については、乙が負担する。なお、甲は、国において新型インフルエンザ等感染症等が発生した際にその感染症の性状に合わせて検討される費用に関する補助等が創設された場合は、乙に対して、それに基づき補助等を検討する。

(解説)

・ 感染症法第58条の規定により(同条第10号の費用)、都道府県の予算の範囲内で都道府県が支弁することを規定したものである。なお、その詳細については、新型インフルエンザ等感染症等が発生した際に、その感染症の性状に合わせて定めるものとする。

・ 感染症法第36条の9等の流行初期医療確保措置の関連政令等については、今後、追って連絡する。

・ 個人防護具の備蓄に係る費用は、医療機関において負担する。なお、新型インフルエンザ等感染症等の発生・まん延時に、その感染症の性状等を踏まえて、国において必要な支援を検討する。

(新型インフルエンザ等感染症等に関する最新の知見についての情報提供等)

第6条 新型インフルエンザ等感染症等に係る発生等の公表が行われる前の段階から、甲は、国から新型インフルエンザ等感染症等に関する対応方法を含めた最新の知見について情報を得た場合は、速やかに乙へ情報提供するものとする。

2 乙は、前項の情報も踏まえ、甲からの第2条の要請に備えて、必要な準備を行うものとする。

3 新型インフルエンザ等感染症等発生・まん延時において、新型インフルエンザ等感染症等の性状のほか、その対応方法を含めた最新の知見の取得状況や、感染症対策物資等の確保の状況なとが事前の想定とは大きく異なる事態の場合として、国においてその判断が行われた場合は、甲は、協定の内容について機動的に変更する又は状況に応じ柔軟に対応を行うことについて、乙と速やかに協議を行うものとする。

(解説)

・ 新型コロナ対応では、「診療の手引き」等により、随時、新たな知見に基づく対応方法等を情報提供してきたところであり、こうした取り組み等も参考に、国は、新型インフルエンザ等感染症等の発生後、新型インフルエンザ等感染症等に係る発生等の公表前においても、都道府県と医療機関との間の調整や準備に資するよう、先行して対応する感染症指定医療機関の実際の対応に基づいた対応方法も含め、国内外の最新の知見について、随時都道府県及び医療機関等に周知を行うこととしており、それも踏まえ、都道府県は協定締結医療機関に情報提供を行うことを規定したものである。

・ そうした情報等を踏まえ、協定締結医療機関においては、新型インフルエンザ等感染症等の発生後、都道府県からの要請前から、必要な準備を行う旨を規定したものである。また、協定締結医療機関(第一種協定指定医療機関)においては、平時より国立感染症研究所及び国立研究開発法人国立国際医療研究センターを中心とした感染症に関する医薬品等の治験及び研究開発のネットワークに参加し、感染症の発生時に新興再興感染症データバンク事業(REBIND)へ協力をしていくことが望ましい。

・ また、新型インフルエンザ等感染症等の性状や、その対応方法を含めた最新の知見の取得状況、感染症対策物資等の確保状況などが、事前の想定とは大きく異なる事態の場合は、国がその判断を行い、機動的に対応する。なお、国は、当該知見について、随時更新の上、情報提供する。国により当該判断が行われた場合は、都道府県は協定の内容の機動的な変更又は状況に応じた柔軟な対応を行うことを医療機関と協議する旨を規定したものである。

(協定の有効期間及び変更)

第7条 本協定の有効期間は、締結日から令和9年3月31日までとする。ただし、本協定による有効期間満了の日の30日前までに、甲と乙のいずれからも更新しない旨の申し出がない場合には、同一条件により3年間更新するものとし、その後も同様とする。

2 第3条に定める医療措置の内容その他この協定の内容を変更する場合、甲又は乙の申し出により協議するものとする。

(解説)

・ 有効期間を令和9年3月31日までとしているのは、医療計画の中間年見直しにあわせて必要に応じ、内容を見直す必要があるからである。都道府県の実情・医療機関との協議状況等に応じ、設定いただいて差し支えない。

(協定の措置を講じていないと認められる場合の措置)

第8条 甲は、乙が、正当な理由がなく、第3条及び第4条に基づく措置を講じていないと認めるときは、乙に対し、感染症法等に基づく措置を行うことができるものとする。

(解説)

・ ここでいう感染症法等に基づく措置とは、感染症法第36条の4第1項から第4項まで(及び地域医療支援病院又は特定機能病院にあっては、医療法第29条第3項(第9号)又は同条第4項(第9号))のことをいう。

・ 新興感染症医療提供体制の構築に当たっては、まずは、当該規定に基づく感染症法等に基づく措置(勧告・指示等)を行う前に、地域の医療機関等の関係者間での話し合いに基づく調整を行うことが重要である。この場合、新興感染症医療のみならず、救命救急医療や他の一般診療への影響など、地域の地域医療提供体制全体の状況を十分に勘案していただくことが必要である。

・ 「正当な理由」については、感染状況や医療機関の実情に即した個別具体の判断が必要であるが、例えば、

(1) 医療機関内の感染拡大等により、医療機関内の人員が縮小している場合

(2) ウイルスの性状等が協定締結時に想定していたものと大きく異なり、患者一人当たりに必要となる人員が異なる場合

(3) 感染症以外の自然災害等により、人員や設備が不足している場合等、

協定締結時の想定と異なる事情が発生し、協定に沿った対応が困難であることがやむを得ないと都道府県が判断する。

ここでお示ししている内容の他、都道府県や医療機関からの情報が蓄積され次第、都度、協定が履行できない「正当な理由」の範囲について、不公平とならないよう、できる限り具体的に示していくこととする。

・ その上で、実際に都道府県が感染症法等に基づく措置(指示や勧告等)を行うか否かは、締結した協定の措置を講じないことによる患者の生命・健康等への影響や、協定の措置に代えて実施し得る他の手段の有無といったことを総合的に考慮して判断されるべきものと考えられる。

※ 例えば、病床確保の協定を締結している一部の医療機関において、医師等の医療従事者の確保や必要な設備等の整備が十分になされているにもかかわらず、協定の措置を講じず、そのことによって地域全体として必要な病床を確保できないなど、地域における患者の生命・健康等に影響が及ぶと考えられる場合には、協定の措置をとるべきことを勧告し、さらに当該勧告に意図的に応じない場合には協定の措置をとるべきことを指示し、それでもなお当該指示に意図的に応じない場合はその旨を公表(公的医療機関等については、指示⇒公表)することなどが考えられる。

・ なお、都道府県において、勧告・指示・公表の是非を判断するに当たっては、医療機関等の事情も考慮し、慎重に行うこととし、例えば、都道府県医療審議会等の関係者の会議体により、事前に(緊急時でやむを得ない場合は事後に)、勧告・指示・公表について当該会議体から意見を聴取するなど、手続きの透明性を確保すること。

(協定の実施状況等の報告)

第9条 乙は、甲から本協定に基づく措置の実施の状況及び当該措置に係る当該医療機関の運営の状況その他の事項について報告の求めがあったときは、速やかに当該事項を報告するものとする。この場合において、電磁的方法(G―MIS)により報告を行う/行うよう努める。

(解説)

・ 感染症法第36条の5第1項から第7項までの規定に基づく協定に基づく措置の実施の状況の報告等に関して規定したものである。同条第4項から第6項までの「電磁的方法」による報告については、医療機関等情報支援システム(G―MIS)上での報告とし、

(1) 平時においては、年1回、協定の措置に係る協定締結医療機関の運営の状況等を、

(2) 感染症発生・まん延時においては、感染状況に応じて随時、協定の措置の実施の状況等を、

それぞれ報告いただくことを予定している。医療機関等情報支援システム(G―MIS)上での報告の内容等の詳細は、別途、お示しするものとする。

(平時における準備)

第10条 乙は、第3条の措置を迅速かつ適確に講ずるため、平時(新型インフルエンザ等感染症等の発生前)において、年1回以上、次に掲げる準備を行うよう努めるものとする。

一 乙の医療機関において、最新の科学的知見に基づいた適切な知識を本協定の措置の実施にかかわることが見込まれる医療従事者等が習得することを目的として、研修を実施する、又は、外部の機関が実施する医療機関向け研修に当該医療従事者等を参加させること。

二 措置を講ずるに当たっての訓練を、乙の医療機関において実施する、又は、外部の機関が実施する訓練に本協定の措置の実施にかかわることが見込まれる医療従事者等を参加させること。

三 措置を講ずるに当たっての乙の医療機関における対応の流れを点検すること。

(解説)

・ 「研修」や「訓練」については、感染症法に基づく予防計画の「感染症の予防に関する人材の養成及び資質の向上に関する事項」とも関係があるものであり、「都道府県、保健所設置市及び特別区予防計画作成の手引き」の当該内容を参照いただき、自医療機関で実施する、あるいは、都道府県等の自治体を含む外部の機関が実施するものに参加させること。

・ 「点検」とは、例えば病床の確保に係る協定を締結した場合において、新興感染症発生・まん延時に新興感染症患者の入院を受け入れる病床を確保するため、都道府県からの要請後、どのようにシフトを調整するか等の対応の流れを点検すること等を想定している。

(3) 都道府県医療審議会のプロセス

○ 都道府県知事は、医療機関の管理者と協定を締結することについて協議が調わないときは、都道府県医療審議会の意見を聴くことができることとされており(感染症法第36条の3第3項)、当該協議を行う医療機関の管理者その他当該協議に関係する者に対し、当該協議の内容に合意することができない理由を記載した書面の提出を求めることができることとし(感染症法施行規則第19条の3第5項)、提出された理由が十分でないと認められるときは、医療機関の管理者その他当該協議に関係する者に対し、都道府県医療審議会に出席し、当該理由について説明することを求めることができる(感染症法施行規則第19条の3第6項)。なお、都道府県医療審議会での説明を求められた者は、当該求めに応じるよう努めなければならない(感染症法施行規則第19条の3第7項)。

また、都道府県知事及び医療機関の管理者は、都道府県医療審議会の意見を尊重しなければならないものとされており(感染症法第36条の3第4項)、都道府県医療審議会では、上述の協定締結の協議の内容に合意することができない理由等を踏まえて、関係者の意見を聴き、意見することとなる。

○ 感染症法上、関係団体は協定締結の主体としていないが、協定締結の協議に当たっては、診療所や薬局が行う協議等の手続きを行う際に、医師会や薬剤師会などの関係団体が協議の窓口となり、とりまとめるといった対応も可能であるので、地域の実情に則して対応されたい。

○ 感染症法施行規則第19条の3第1項の規定により、協定の締結は、書面(電磁的記録を含む。)により行うものとしており、協定における「記名」は、直筆である必要なく、電磁的な方法による取り交わしでよいものとする。

※ 電子メール等を想定。

5 公的医療機関等の義務等と協定締結との関係について

○ 感染症法第36条の2の規定に基づき、都道府県知事は公的医療機関等の管理者に対し、①病床の確保、②発熱外来の実施、③自宅療養者等への医療の提供及び健康観察、④後方支援、⑤医療人材派遣、のうち新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間において当該医療機関が講ずべきもの(新型インフルエンザ等感染症等に係る医療を提供する体制の確保に必要な措置を迅速かつ適確に講ずるものとして、都道府県の区域内の各地域における感染症の患者に対する医療の状況を勘案して当該地域に所在する医療機関の機能当に応じ講ずる必要があるものとして、都道府県知事が認めるものに限る。)を通知し、公的医療機関等は、当該通知に基づく措置を感染症発生・まん延時に講じなければならないこととされている。

○ この通知に基づく義務(以下「医療提供義務」という。)と、感染症法第36条の3第1項の規定に基づく協定の関係については、感染症法施行規則第19条の2第2項の規定のとおり、通知は、協定の協議と併せて行うものとし、公的医療機関等については、感染症法第36条の3第1項の規定に基づく協定締結の協議の結果を踏まえて、協定に基づき講ずることとした措置の一部又は全部を感染症法第36条の2の医療提供義務として通知することを想定しており、当該協定を上回る内容を通知することは、原則、想定していない。

ただし、仮に、協定の協議が調わなかった場合にも、公的医療機関等は医療提供義務の対象であることから、別途感染症法第36条の2の規定に基づき通知が行われることとなるが、この場合においても、当該公的医療機関等の所在する地域における新興感染症医療の状況等を勘案して、当該公的医療機関等の機能・役割を踏まえて通知するように運用することを想定しており、留意されたい。

○ 感染症法第36条の2第1項の規定に基づく通知書のひな形は別添3のとおりであるので、活用されたい。

6 協定の締結後の公表や報告・変更等について

(1) 協定の内容の公表

○ 感染症法第36条の3第5項の規定により、都道府県知事は、協定を締結したときは、インターネットの利用その他適切な方法により協定の内容を公表するものとされており、新型コロナ対応も参考に、協定の締結状況・履行状況等について、公表する仕組みを構築されたい。

公表に当たっては、患者の選択にも資するよう、協定の内容について都道府県のホームページ等でできる限り分かりやすく公表するとともに、当該公表をしている旨の周知を図ることとする。具体的には、平時から、都道府県のホームページに協定を締結した医療機関名・締結した協定の内容(措置の事項(締結した協定のメニュー)をイメージ)を一覧の形で公表されることを想定している。

○ 感染症発生・まん延時には、新型コロナでの対応と同様に、例えば発熱外来について、診療時間や対応可能な患者(例えば小児等)など、患者の選択に資するような情報の公表を行うこととする。

(2) 協定締結後の履行状況等の報告

○ 感染症法第36条の5第1項又は第2項の規定に基づき、都道府県知事は、必要があると認めるときは、協定を締結した医療機関の管理者に対し、協定に基づく措置の実施の状況及び当該措置に係る当該医療機関の運営の状況その他の事項について期限を定めて報告を求めることができ、同条第3項の規定により、医療機関の管理者は、報告の求めがあったときは、正当な理由がある場合を除き、速やかに、報告を求められた事項を報告しなければならないこととされている。また、この報告について、電磁的方法により行うことが義務となる感染症指定医療機関と、努力義務となる感染症指定医療機関とが、厚生労働省令で規定されることとなるが、追って連絡するものとする(同条第5項及び第6項)。なお、この「電磁的方法」については、施行通知でお示ししているとおり、新型コロナの対応における確保病床の状況等についての報告と同様、医療機関等情報支援システム(G―MIS)により、報告を行っていただくこととする。

○ 感染症法第36条の5第1項又は第2項の規定に基づく報告の求めについては、

(1) 平時においては、年1回、協定の措置に係る協定締結医療機関の運営の状況等を、

(2) 感染症発生・まん延時においては、感染状況に応じて随時、協定の措置の実施の状況等を、

それぞれ報告いただくことを予定している。医療機関等情報支援システム(G―MIS)上での報告の内容等の詳細も含め、別途、お示しするものとする。

○ 上述の報告を受けた都道府県知事は、厚生労働大臣に報告するとともに、公表しなければならないこととされている(感染症法第36条の5第4項)。協定の仕組みは、予防計画の数値目標とも関係してくるものであることから、

・ 「報告」については、感染症法第10条第11項の規定に基づく、予防計画の目標に関する事項の達成の状況の毎年度の報告等とあわせて実施する運用を想定し、

・ 「公表」については、予防計画や医療計画の状況等とあわせて都道府県ホームページ等でできる限り分かりやすく公表するとともに、当該公表をしている旨の周知を図ることとする。感染症発生・まん延時において、各医療機関が協定に基づく措置を実施する段階では、新型コロナ対応も参考に、措置の実施状況のほか、病床確保であれば確保した病床の稼働状況や、発熱外来であれば診療時間や対応可能な患者(例えば小児等)など、患者の選択に資するような情報の公表を行うこととする(再掲)。

○ 新興感染症発生・まん延時において、都道府県は、協定の実効性確保のためにも、新型コロナ対応での取り組みも参考に、協定締結医療機関で働く医療従事者の欠勤等の状況も含め、協定の履行状況等についてG―MISを活用して把握できるようにする。

(3) 協定の内容を変更する場合の対応

○ 感染症法施行規則第19条の3第2項の規定により、協定において「協定の変更に関する事項」についても定めることとなっており、協定のひな形でも第7条第2項で「措置の内容その他この協定の内容を変更する場合、甲又は乙の申し出により協議するものとする」と記載しているところである。都道府県の判断で具体の記載は変更いただいて構わないが、協定は、双方の合意に基づくものであることに留意しつつ、医療機関側の事情変更等があれば協定の内容を見直す協議を行うなど、柔軟に対応を行うこと。

協定のひな形第7条第1項で、協定の有効期間についても例として記載しているところであるが、予防計画や医療計画等の見直しのタイミングなど、地域全体で、新興感染症医療提供体制を検討するときには、それまでの②の履行状況等の報告の内容等も踏まえて、各医療機関とも締結した協定の内容等について改めて協議することが考えられる。

○ また、新興感染症発生・まん延時(特に新興感染症の発生段階)において、新興感染症の性状のほか、その対応方法を含めた最新の知見の取得状況や、感染症対策物資等の確保の状況などが締結した協定の前提・内容(事前の想定)とは大きく異なる事態の場合は、国においてその判断を行い、機動的に対応することとしており、協定の内容について変更する又は状況に応じ柔軟に対応を行うこと。

別添1

画像5 (44KB)別ウィンドウが開きます

別添2―1

画像7 (55KB)別ウィンドウが開きます

画像8 (52KB)別ウィンドウが開きます

画像9 (60KB)別ウィンドウが開きます

画像10 (15KB)別ウィンドウが開きます

別添2―2

画像12 (57KB)別ウィンドウが開きます

画像13 (30KB)別ウィンドウが開きます

別添2―3

画像15 (57KB)別ウィンドウが開きます

画像16 (27KB)別ウィンドウが開きます

別添3

画像18 (50KB)別ウィンドウが開きます

画像19 (55KB)別ウィンドウが開きます

画像20 (18KB)別ウィンドウが開きます