アクセシビリティ閲覧支援ツール

○「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について」の一部改正について

(平成29年10月12日)

(生食発1012第1号)

(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知)

(公印省略)

今般、農薬、飼料添加物及び動物用医薬品に関する試験法に係る知見の集積等を踏まえ、「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について」(平成17年1月24日付け食安発第0124001号)を別添のとおり改正することとしました。

改正の概要につきましては、下記のとおりですので、関係者への周知をお願いするとともに、その運用に遺漏なきようお取り計らいをお願いします。

農薬、飼料添加物及び動物用医薬品に係る知見の集積等を踏まえ、目次を別紙1のように改め、「ジクロベニル試験法(農産物)」を廃止し、以下に掲げる7つの試験法を「第3章 個別試験法」に追加すること。

・エンロフロキサシン、オキソリニック酸、オフロキサシン、オルビフロキサシン、サラフロキサシン、ジフロキサシン、ダノフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、フルメキン及びマルボフロキサシン試験法(はちみつ)

・ジクロベニル試験法(魚介類)

・ジクロベニル及びフルオピコリド試験法(農産物)

・フェントラザミド試験法(畜水産物)

・フルトラニル試験法(畜水産物)

・ベダプロフェン試験法(畜水産物)

・メチオカルブ試験法(農産物)

[別紙1]

画像2 (44KB)別ウィンドウが開きます

画像3 (42KB)別ウィンドウが開きます

画像4 (44KB)別ウィンドウが開きます

画像5 (40KB)別ウィンドウが開きます

画像6 (39KB)別ウィンドウが開きます

画像7 (37KB)別ウィンドウが開きます

画像8 (38KB)別ウィンドウが開きます

画像9 (35KB)別ウィンドウが開きます

(参考)食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)に規定する試験法

・2,4,5―T試験法

・アルドリン、エンドリン及びディルドリン試験法

・α―トレンボロン及びβ―トレンボロン試験法

・イプロニダゾール、ジメトリダゾール、メトロニダゾール及びロニダゾール試験法

・オラキンドックス及びカルバドックス試験法

・カプタホール試験法

・クマホス試験法

・クレンブテロール試験法

・クロラムフェニコール試験法

・クロルスロン試験法

・クロルプロマジン試験法

・酢酸メレンゲステロール試験法

・ジエチルスチルベストロール試験法

・ダミノジッド試験法

・デキサメタゾン試験法

・二臭化エチレン試験法

・ニトロフラゾン試験法

・ニトロフラントイン、フラゾリドン及びフラルタドン試験法

・パラチオン試験法

・ブロチゾラム試験法

・プロファム試験法

・マラカイトグリーン試験法

[別紙2]

エンロフロキサシン、オキソリニック酸、オフロキサシン、オルビフロキサシン、サラフロキサシン、ジフロキサシン、ダノフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、フルメキン及びマルボフロキサシン試験法(はちみつ)

1.分析対象化合物

農薬等の成分である物質

分析対象化合物

エンロフロキサシン

エンロフロキサシン、シプロフロキサシン

オキソリニック酸

オキソリニック酸

オフロキサシン

オフロキサシン

オルビフロキサシン

オルビフロキサシン

サラフロキサシン

サラフロキサシン

ジフロキサシン

ジフロキサシン

ダノフロキサシン

ダノフロキサシン

ナリジクス酸

ナリジクス酸

ノルフロキサシン

ノルフロキサシン

フルメキン

フルメキン

マルボフロキサシン

マルボフロキサシン

2.適用食品

はちみつ

3.装置

液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC―MS/MS)

4.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。

4級アンモニウム塩修飾ジビニルベンゼン―N―ビニルピロリドン共重合体ミニカラム(500mg) 内径12~13mmのポリエチレン製のカラム管に、4級アンモニウム塩修飾ジビニルベンゼン―N―ビニルピロリドン共重合体500mgを充てんしたもの又はこれと同等の分離特性を有するものを用いる。

エンロフロキサシン標準品 本品はエンロフロキサシン98%以上を含む。

シプロフロキサシン標準品 本品はシプロフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、又は塩酸シプロフロキサシン一水和物95%以上を含む。

オキソリニック酸標準品 本品はオキソリニック酸98%以上を含む。

オフロキサシン標準品 本品はオフロキサシン98%以上を含む。

オルビフロキサシン標準品 本品はオルビフロキサシン98%以上を含む。

サラフロキサシン標準品 本品はサラフロキサシン又は塩酸サラフロキサシン95%以上を含む。

ジフロキサシン標準品 本品はジフロキサシン又は塩酸ジフロキサシン98%以上を含む。

ダノフロキサシン標準品 本品はダノフロキサシン又はメシル酸ダノフロキサシン98%以上を含む。

ナリジクス酸標準品 本品はナリジクス酸98%以上を含む。

ノルフロキサシン標準品 本品はノルフロキサシン98%以上を含む。

フルメキン標準品 本品はフルメキン98%以上を含む。

マルボフロキサシン標準品 本品はマルボフロキサシン98%以上を含む。

25mmol/Lギ酸含有25mmol/Lギ酸アンモニウム溶液 ギ酸1.15g及びギ酸アンモニウム1.58gに水を加えて1,000mLとする。

25mmol/Lギ酸含有25mmol/Lギ酸アンモニウム・メタノール溶液 ギ酸1.15g及びギ酸アンモニウム1.58gにメタノールを加えて1,000mLとする。

5.試験溶液の調製

1) 抽出

試料5.00gを量り採り、これに1mol/Lアンモニア溶液20mLを加え、10分間振とうした後、毎分3,000回転で10分間遠心分離し、上澄液を採る。

2) 精製

① 4級アンモニウム塩修飾ジビニルベンゼン―N―ビニルピロリドン共重合体カラムクロマトグラフィー

4級アンモニウム塩修飾ジビニルベンゼン―N―ビニルピロリドン共重合体ミニカラム(500mg)に、メタノール5mL及び1mol/Lアンモニア溶液5mLを順次注入し、流出液は捨てる。このカラムに、1)で得られた溶液を注入した後、さらに水10mLを注入し、流出液は捨てる。次いで250mmol/Lギ酸・メタノール溶液5mLを注入し、溶出液を採る。

② エチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー

エチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲルミニカラム(500mg)に、250mmol/Lギ酸・メタノール溶液5mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに、aで得られた溶液を注入し、さらに、250mmol/Lギ酸・メタノール溶液1mLを注入し、全溶出液を採る。得られた溶出液を50mmol/Lギ酸アンモニウム溶液を用いて正確に10mLとしたものを試験溶液とする。

6.検量線の作成

各分析対象化合物の標準品をメタノールに溶解し、100mg/Lの標準原液を調製する。各標準原液を適宜混合して50mmol/Lギ酸アンモニウム溶液及び250mmol/Lギ酸・メタノール溶液(2:3)混液で希釈した溶液を数点調製し、それぞれLC―MS/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。なお、本法に従って試験溶液を調製した場合、試料中0.01mg/kgに相当する試験溶液中の濃度は各分析対象化合物について0.005mg/Lである。

7.定量

試験溶液をLC―MS/MSに注入し、6.の検量線で各分析対象化合物の含量を求める。なお、エンロフロキサシンについては、その代謝物であるシプロフロキサシンとの和を分析値とする。

8.確認試験

LC―MS/MSにより確認する。

9.測定条件

(例)

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル 内径3.0mm、長さ150mm、粒子径3μm

カラム温度:40℃

移動相:A液及びB液について下表の濃度勾配で送液する。

A液:25mmol/Lギ酸含有25mmol/Lギ酸アンモニウム溶液

B液:25mmol/Lギ酸含有25mmol/Lギ酸アンモニウム・メタノール溶液

時間(分)

A液(%)

B液(%)

0.0

80

20

5.0

80

20

20.0

65

35

25.0

20

80

30.0

0

100

35.0

0

100

イオン化モード:ESI(+)

主なイオン(m/z):

エンロフロキサシン;プリカーサーイオン360、プロダクトイオン342、316

シプロフロキサシン;プリカーサーイオン332、プロダクトイオン314、231

オキソリニック酸;プリカーサーイオン262、プロダクトイオン244、216

オフロキサシン;プリカーサーイオン362、プロダクトイオン318、261

オルビフロキサシン;プリカーサーイオン396、プロダクトイオン378,、352

サラフロキサシン;プリカーサーイオン386、プロダクトイオン368、299

ジフロキサシン;プリカーサーイオン400、プロダクトイオン382、299

ダノフロキサシン;プリカーサーイオン358、プロダクトイオン340、255

ナリジクス酸;プリカーサーイオン233、プロダクトイオン215、187

ノルフロキサシン;プリカーサーイオン320、プロダクトイオン302、276

フルメキン;プリカーサーイオン262、プロダクトイオン244、202

マルボフロキサシン;プリカーサーイオン363、プロダクトイオン345、72

注入量:10μL

保持時間の目安:

エンロフロキサシン 17分

シプロフロキサシン 16分

オキソリニック酸 25分

オフロキサシン 14分

オルビフロキサシン 18分

サラフロキサシン 20分

ジフロキサシン 19分

ダノフロキサシン 17分

ナリジクス酸 26分

ノルフロキサシン 15分

フルメキン 26分

マルボフロキサシン 12分

10.定量限界

各分析対象化合物について0.01mg/kg

11.概要

エンロフロキサシン、シプロフロキサシン、オキソリニック酸、オフロキサシン、オルビフロキサシン、サラフロキサシン、ジフロキサシン、ダノフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、フルメキン及びマルボフロキサシンをはちみつ試料から1mol/Lアンモニア溶液で抽出し、4級アンモニウム塩修飾ジビニルベンゼン―N―ビニルピロリドン共重合体ミニカラム及びエチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲルミニカラムをで精製し、LC―MS/MSで定量及び確認する方法である。

12.参考

1) 各分析対象化合物のLC―MS/MS測定で、試験法開発時に使用したイオンを以下に示す。

エンロフロキサシン

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン360、プロダクトイオン342

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン360、プロダクトイオン316

シプロフロキサシン

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン332、プロダクトイオン314

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン332、プロダクトイオン231

オキソリニック酸

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン262、プロダクトイオン244

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン262、プロダクトイオン216

オフロキサシン

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン362、プロダクトイオン318

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン362、プロダクトイオン261

オルビフロキサシン

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン396、プロダクトイオン352

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン396、プロダクトイオン378

サラフロキサシン

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン386、プロダクトイオン368

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン386、プロダクトイオン299

ジフロキサシン

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン400、プロダクトイオン382

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン400、プロダクトイオン299

ダノフロキサシン

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン358、プロダクトイオン340

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン358、プロダクトイオン255

ナリジクス酸

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン233、プロダクトイオン215

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン233、プロダクトイオン187

ノルフロキサシン

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン320、プロダクトイオン302

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン320、プロダクトイオン276

フルメキン

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン262、プロダクトイオン202

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン262、プロダクトイオン244

マルボフロキサシン

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン363、プロダクトイオン72

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン363、プロダクトイオン345

2) 本試験法の分析対象化合物は、低濃度では検量線の直線性が低下する場合がある。その場合には、充填剤であるシリカゲル表面の金属不純物が少ない分析カラムを用いると良い。

3) 本試験法の分析対象化合物は、ガラスに吸着する場合がある。その場合には、ポリプロピレン製の器具を用いると良い。

4) 本試験法の分析対象化合物は、光による分解を受けやすい化合物もあるため、試験溶液調製までの操作を出来るだけ迅速に行う必要がある。

5) 試験法開発時に検討した食品:はちみつ

13.参考文献

なし

14.類型

C

[別紙3]

ジクロベニル試験法(水産物)

1.分析対象化合物

ジクロベニル

2.適用食品

水産物

3.装置

ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC―MS)又はガスクロマトグラフ・タンデム質量分析計(GC―MS/MS)

4.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。

ジクロベニル標準品 本品はジクロベニル98%以上を含む。

5.試験溶液の調製

1) 抽出

試料10.0gを量り採り、n―ヘキサン25mL及びn―ヘキサン飽和アセトニトリル50mLを加え、ホモジナイズした後、毎分3,000回転で5分間遠心分離し、アセトニトリル層を採る。残留物とn―ヘキサン層にn―ヘキサン飽和アセトニトリル25mLを加え、ホモジナイズした後、毎分3,000回転で5分間遠心分離する。アセトニトリル層を先のアセトニトリル層に合わせ、正確に100mLとする。

2) 精製

① オクタデシルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー

オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(1,000mg)にアセトニトリル10mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに1)抽出で得られた溶液から正確に25mLを分取して注入し、さらにアセトニトリル5mLを注入して全溶出液を採り、40℃以下で4mL以下に濃縮する。これに10w/v%塩化ナトリウム溶液40mLを加え、n―ヘキサン40mL及び20mLで2回振とう抽出する。抽出液を合わせ、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、40℃以下で約2mLに濃縮する。

② エチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー

エチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲルミニカラム(500mg)にn―ヘキサン10mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに①で得られた溶液を注入し、さらにn―ヘキサン8mLを注入して全溶出液を採り、40℃以下で約2mLに濃縮した後、n―ヘキサンで正確に5mLとしたものを試験溶液とする。

6.検量線の作成

ジクロベニル標準品のn―ヘキサン溶液を数点調製し、それぞれGC―MS又はGC―MS/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。なお、本法に従って試験溶液を調製した場合、試料中0.005mg/kgに相当する試験溶液中濃度は0.0025mg/Lである。

7.定量

試験溶液をGC―MS又はGC―MS/MSに注入し、6の検量線でジクロベニルの含量を求める。

8.確認試験

GC―MS又はGC―MS/MSにより確認する。

9.測定条件

(例)

カラム:5%フェニル―メチルシリコン 内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm

カラム温度:50℃(1分)-25℃/分-125℃(0分)-10℃/分-300℃(10分)

注入口温度:250℃

キャリヤーガス:ヘリウム

イオン化モード(イオン化エネルギー):EI(70eV)

主なイオン(m/z)

GC―MS:173、171

GC―MS/MS:プリカーサーイオン171、プロダクトイオン136、100

注入量:1μL

保持時間の目安:8分

10.定量限界

0.005mg/kg

11.概要

ジクロベニルを試料からn―ヘキサン存在下アセトニトリルで抽出し、オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラムで精製した後、n―ヘキサンに転溶する。エチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲルミニカラムで精製した後、GC―MS又はGC―MS/MSで定量及び確認する方法である。

12.参考

1) ジクロベニルのGC―MS測定で、試験法開発時に使用したイオンを以下に示す。

定量イオン(m/z):171

定性イオン(m/z):173

2) ジクロベニルのGC―MS/MS測定で、試験法開発時に使用したイオンを以下に示す。

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン171、プロダクトイオン100

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン171、プロダクトイオン136

3) 遠心分離後、アセトニトリル抽出液を採る際に試料残留物の混入が認められる場合には、アセトニトリル抽出液をろ紙でろ過すると良い。

4) 食品によっては、n―ヘキサンへの転溶操作の際にエマルジョンが形成されることがある。その場合には、遠心分離(3,000回転、5分間)を行い、n―ヘキサン層を採ると良い。

5) ジクロベニルは蒸気圧が高く揮散しやすいため、穏かに濃縮し、乾固させないように十分注意する。

6) 試験法開発時に検討した食品:うなぎ、しじみ

13.参考文献

なし

14.類型

C

[別紙4]

ジクロベニル及びフルオピコリド試験法(農産物)

1.分析対象化合物

ジクロベニル

2,6―ジクロロベンズアミド

フルオピコリド

2.適用食品

果実及び野菜

3.装置

ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC―MS)

液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC―MS/MS)

4.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。

グラファイトカーボン/エチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲル積層ミニカラム(500mg/500mg)内径12~13mmのポリエチレン製のカラム管に、上層にグラファイトカーボンを、下層にエチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲルを各500mg充てんしたもの又はこれと同等の分離特性を有するものを用いる。

ジクロベニル標準品 本品はジクロベニル98%以上を含む。

2,6―ジクロロベンズアミド標準品 本品は2,6―ジクロロベンズアミド98%以上を含む。

フルオピコリド標準品 本品はフルオピコリド98%以上を含む。

5.試験溶液の調製

1) 抽出

果実及び野菜の場合は試料20.0gにアセトン100mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物にアセトン50mLを加えてホモジナイズした後、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせ、アセトンを加えて正確に200mLとする。この溶液から正確に40mLを分取し、40℃以下で約6mLに濃縮する。これに10w/v%塩化ナトリウム溶液30mLを加え、酢酸エチル及びn―ヘキサン(7:3)混液30mLずつで2回振とう抽出する。抽出液を合わせ、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液に2w/v%ジエチレングリコール・アセトン溶液0.5mLを加えて40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトニトリル2mLを加えて溶かす。

2) 精製

グラファイトカーボン/エチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲル積層ミニカラム(500mg/500mg)にアセトニトリル10mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに1)で得られた溶液を注入し、さらにアセトニトリル15mLを注入して全溶出液を採り、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトンに溶かし正確に2mLとしたものをジクロベニル及び2,6―ジクロロベンズアミドの試験溶液とする。ジクロベニル及び2,6―ジクロロベンズアミドの試験溶液から正確に0.2mLを分取し、水及びメタノール(1:1)混液を加えて正確に1mLとしたものをフルオピコリドの試験溶液とする。

6.検量線の作成

1) ジクロベニル及び2,6―ジクロロベンズアミド

ジクロベニル及び2,6―ジクロロベンズアミド標準品の0.5w/v%ジエチレングリコール・アセトン溶液を数点調製し、それぞれGC―MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。なお、本法に従って試験溶液を調製した場合、試料中0.01mg/kgに相当する試験溶液中濃度は0.02mg/Lである。

2) フルオピコリド

フルオピコリド標準品の水及びメタノール(1:1)混液の溶液を数点調製し、それぞれLC―MS/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。なお、本法に従って試験溶液を調製した場合、試料中0.01mg/kgに相当する試験溶液中濃度は0.004mg/Lである。

7.定量

1) ジクロベニル及び2,6―ジクロロベンズアミド

ジクロベニル及び2,6―ジクロロベンズアミドの試験溶液をGC―MSに注入し、6.1)の検量線でジクロベニル及び2,6―ジクロロベンズアミドの各含量を求める。

2,6―ジクロロベンズアミドを含むジクロベニルの含量を求める場合には、次式により求める。

ジクロベニル(2,6―ジクロロベンズアミドを含む。)の含量=A+B×0.9052

A:ジクロベニルの含量(ppm)

B:2,6―ジクロロベンズアミドの含量(ppm)

2) フルオピコリド

フルオピコリドの試験溶液をLC―MS/MSに注入し、6.2)の検量線でフルオピコリドの含量を求める。

8.確認試験

GC―MS又はLC―MS/MSにより確認する。

9.測定条件

(例)

1) GC―MS

カラム:50%フェニル―メチルシリコン 内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm

カラム温度:50℃(1分)-20℃/分-300℃(12分)

注入口温度:250℃

キャリヤーガス:ヘリウム

イオン化モード(イオン化エネルギー):EI(70eV)

主なイオン(m/z)

ジクロベニル:173、171

2,6―ジクロロベンズアミド:175、173

注入量:1μL

保持時間の目安

ジクロベニル:8分

2,6―ジクロロベンズアミド:11分

2) LC―MS/MS

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル 内径2.1mm、長さ150mm、粒子径3.5μm

カラム温度:40℃

移動相:0.1vol%ギ酸及び5mmol/L酢酸アンモニウム・メタノール溶液の混液(9:1)から(1:9)までの濃度勾配を14分間で行う。

イオン化モード:ESI(+)

主なイオン(m/z)

フルオピコリド:プリカーサーイオン383、プロダクトイオン365、173、プリカーサーイオン385、プロダクトイオン175

注入量:5μL

保持時間の目安:フルオピコリド13分

10.定量限界

各化合物0.01mg/kg

11.概要

ジクロベニル、2,6―ジクロロベンズアミド及びフルオピコリドを試料からアセトンで抽出し、酢酸エチル及びn―ヘキサン(7:3)混液に転溶する。グラファイトカーボン/エチレンジアミン―N―プロピルシリル化シリカゲル積層ミニカラムで精製した後、ジクロベニル及び2,6―ジクロロベンズアミドはGC―MSで定量及び確認し、フルオピコリドはLC―MS/MSで定量及び確認する方法である。なお、各化合物について定量を行い、2,6―ジクロロベンズアミドを含むジクロベニルの含量を求める場合には、2,6―ジクロロベンズアミドの含量に換算係数を乗じてジクロベニルの含量に変換し、これらの和をジクロベニルの分析値とする。

12.注意点

1) ジクロベニルは濃縮時に揮散しやすいため、濃縮時にキーパーとしてジエチレングリコールを加える。減圧濃縮時には乾固させないように充分注意する。アセトン抽出液の濃縮の際は、試料中の水分がキーパーとして働くと考えられるが、過剰に濃縮するとジクロベニルが揮散する可能性がある。また、キーパー存在下であっても、窒素気流を強く吹きつけたり、溶媒が概ね除去されてからも窒素気流吹きつけを続けるとジクロベニルが揮散することがあるため、注意する。

2) GC―MS測定において、試験溶液中に残存するジエチレングリコールが定量値に影響を及ぼす可能性がある。このため、検量線の作成に用いる標準液に、試験溶液と同等の濃度となるようジエチレングリコールを添加する。

3) フルオピコリドについてもGC―MSで定量しても良い。ただし、食品によっては定量値が真値より高くなる可能性があるため、マトリックスの影響を確認した上で実施する。また、2,6―ジクロロベンズアミドをLC―MS/MSで定量及び確認することも可能である。

4) 各化合物をガスクロマトグラフ・タンデム型質量分析計(GC―MS/MS)で定量することも可能である。

5) 各化合物の測定で、試験法開発時に使用したイオンを以下に示す。

GC―MS

ジクロベニル

定量イオン(m/z):171、定性イオン(m/z):173

2,6―ジクロロベンズアミド

定量イオン(m/z):173、定性イオン(m/z):175

フルオピコリド(保持時間の目安:14分)

定量イオン(m/z):347、定性イオン(m/z):209

GC―MS/MS

ジクロベニル

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン171、プロダクトイオン100

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン171、プロダクトイオン136

2,6―ジクロロベンズアミド

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン189、プロダクトイオン173

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン173、プロダクトイオン145

フルオピコリド(保持時間の目安:14分)

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン209、プロダクトイオン182

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン347、プロダクトイオン172

LC―MS/MS

2,6―ジクロロベンズアミド(保持時間の目安:6分)

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン190、プロダクトイオン173

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン190、プロダクトイオン145、109

フルオピコリド

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン383、プロダクトイオン173

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン385、プロダクトイオン175

プリカーサーイオン383、プロダクトイオン365

6) 試験法開発時に検討した食品:ばれいしょ、キャベツ、ほうれんそう、りんご及びぶどう

13.参考文献

農薬残留分析法研究班編「最新 農薬の残留分析法(改訂版)」ジクロベニル、p.278―280、中央法規出版(2006)

14.類型

C

[別紙5]

フェントラザミド試験法(畜水産物)

1.分析対象化合物

フェントラザミド

2.適用食品

畜水産物

3.装置

液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC―MS/MS)

4.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。

フェントラザミド標準品 本品はフェントラザミド98%以上を含む。

5.試験溶液の調製

1) 抽出

① 筋肉、肝臓、腎臓、乳、鶏卵及び魚介類の場合

試料を正確に量り、重量比で3/10量のリン酸を加え磨砕均一化した後、試料10.0gに相当する量を量り採る。これにアセトン100mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物にアセトン50mLを加えてホモジナイズした後、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、アセトンで正確に200mLとする。この溶液から正確に4mLを分取し、水16mLを加える。

② 脂肪の場合

試料を正確に量り、重量比で3/10量のリン酸を加え磨砕均一化した後、試料5.00gに相当する量を量り採る。これにアセトン100mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物にアセトン50mLを加えてホモジナイズした後、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、アセトンで正確に200mLとする。この溶液から正確に8mLを分取し、水20mLを加える。

③ はちみつの場合

試料10.0gに1.5mol/Lリン酸20mLを加え溶解する。これにアセトン100mLを加え、ホモジナイズした後、吸引ろ過する。ろ紙上の残留物にアセトン50mLを加えてホモジナイズした後、上記と同様にろ過する。得られたろ液を合わせて、アセトンで正確に200mLとする。この溶液から正確に4mLを分取し、水16mLを加える。

2) 精製

オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(1,000mg)に、アセトニトリル及び水各5mLを順次注入し、流出液は捨てる。グラファイトカーボンミニカラム(500mg)に、アセトニトリル及び水各5mLを順次注入し、流出液は捨てる。

オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラムに1)で得られた溶液を注入した後、さらにアセトニトリル及び水(2:3)混液10mLを注入し、流出液は捨てる。次いで、このカラムの下部にグラファイトカーボンミニカラムを接続し、アセトニトリル及び水(7:3)混液10mLを注入し、流出液は捨てる。オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラムを除去した後、グラファイトカーボンミニカラムにアセトニトリル20mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトニトリル及び水(1:1)混液に溶かし、正確に2mLとしたものを試験溶液とする。

6.検量線の作成

フェントラザミド標準品のアセトニトリル及び水(1:1)混液の溶液を数点調製し、それぞれLC―MS/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。なお、本法に従って試験溶液を調製した場合、試料中0.01mg/kgに相当する試験溶液中濃度は0.001mg/Lである。

7.定量

試験溶液をLC―MS/MSに注入し、6.の検量線でフェントラザミドの含量を求める。

8.確認試験

LC―MS/MSにより確認する。

9.測定条件

(例)

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル 内径2.0mm、長さ150mm、粒子径5μm

カラム温度:40℃

移動相:アセトニトリル及び2mmol/L酢酸アンモニウム溶液(1:9)から(9:1)までの濃度勾配を5分間で行い、(9:1)で5分間保持する。

イオン化モード:ESI(+)

主なイオン(m/z):プリカーサーイオン350、プロダクトイオン197、154

注入量:5μL

保持時間の目安:9分

10.定量限界

0.01mg/kg

11.概要

フェントラザミドを試料からリン酸酸性下アセトンで抽出し、オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム及びグラファイトカーボンミニカラムで精製した後、LC―MS/MSで定量及び確認する方法である。

12.参考

1) フェントラザミドは肝臓などの試料中で分解されやすいためpHを十分に下げ、酵素を失活させる必要がある。

2) フェントラザミドのLC―MS/MS測定で、試験法開発時に使用したイオンを以下に示す。

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン 350、プロダクトイオン 154

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン 350、プロダクトイオン 197

3) 試験法開発時に検討した食品:牛の筋肉、牛の脂肪、牛の肝臓、牛乳、鶏の筋肉、鶏卵、はちみつ、さけ、うなぎ及びしじみ

13.参考文献

なし

14.類型

C

[別紙6]

フルトラニル試験法(畜産物)

1.分析対象化合物

フルトラニル

α,α,α―トリフルオロ―3'―ヒドロキシ―o―トルアニリド(以下「代謝物M4」という。遊離体、グルクロン酸抱合体及び硫酸抱合体を含む。)

2.対象食品

畜産物(はちみつを除く)

3.装置

液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC―MS/MS)

4.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。

フルトラニル標準品 本品はフルトラニル98%以上を含む。

代謝物M4標準品 本品は代謝物M4 98%以上を含む。

α,α,α―トリフルオロ―o―トルイル酸標準品 本品はα,α,α―トリフルオロ―o―トルイル酸98%以上を含む。

5.試験溶液の調製

1) 抽出

① 筋肉、肝臓、腎臓、乳及び卵の場合

2)加水分解から実施する。

② 脂肪の場合

試料10.0gにn―ヘキサン50mL、n―ヘキサン飽和アセトニトリル50mL及び無水硫酸ナトリウム20gを加えて、ホモジナイズした後、毎分3,000回転で5分間遠心分離し、アセトニトリル層を採り、n―ヘキサン層は捨てる。残留物にn―ヘキサン50mL及びn―ヘキサン飽和アセトニトリル50mLを加えホモジナイズした後、上記と同様に遠心分離する。アセトニトリル層を採り、先のアセトニトリル層と合わせ、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。

2) 加水分解

① 筋肉、肝臓、腎臓、乳及び卵の場合

試料10.0gをポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)製容器に採り、50w/w%水酸化ナトリウム溶液10mL(乳の場合は水酸化ナトリウム7g)を加えて混合し、10分間放置した後、密栓して200℃で6時間加熱する。反応後の容器を放冷して室温に戻した後、加水分解物をビーカーに採り撹拌する。先の容器を水10mLで4回、30vol%硫酸20mL、水10mL、アセトン5mLで順次洗浄し、加水分解物を撹拌しているビーカーに洗液を合わせ、試料を確実に溶解する。この溶液を酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:9)混液50mL、次いで40mLで2回振とう抽出する。抽出液を合わせ、酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:9)混液で正確に100mLとする。

② 脂肪の場合

1)抽出で得られた残留物にアセトン5mLを加えて溶解して、PTFE製容器に移した後、窒素ガスを吹き付けて溶媒を除去する。これに、50w/w%水酸化ナトリウム溶液10mLを加えて10分間放置した後、密栓して200℃で6時間加熱する。反応後の容器を放冷して室温に戻した後、加水分解物をビーカーに採り撹拌する。容器を水10mLで4回、30vol%硫酸20mL、水10mL、アセトン5mLで順次洗浄し、加水分解物を撹拌しているビーカーに洗液を合わせる。この溶液を酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:9)混液50mL及び40mLで2回振とう抽出する。抽出液を合わせ、酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:9)混液で正確に100mLとする。

3) 精製

トリメチルアミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラム(500mg)に、酢酸エチル及びn―ヘキサン(1:9)混液5mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに2)で得られた溶液から正確に10mLを分取して注入した後、アセトン5mL、メタノール10mLを順次注入し、各流出液は捨てる。次いで、アンモニア水及びメタノール(1:99)混液10mLを注入し、溶出液を採り、2vol%ジエチレングリコール・アセトン溶液0.5mLを加えて、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をアセトニトリル及び水(1:19)混液に溶かし、正確に2mLとしたものを試験溶液とする。

6.検量線の作成

α,α,α―トリフルオロ―o―トルイル酸標準品のアセトニトリル及び水(1:19)混液の溶液を数点調製し、それぞれLC―MS/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。なお、本法に従って試験溶液を調製した場合、試料中0.01mg/kg(フルトラニル換算)に相当する試験溶液の濃度は、0.005mg/L(フルトラニル換算)である。

7.定量

試験溶液をLC―MS/MSに注入し、6.の検量線でα,α,α―トリフルオロ―o―トルイル酸の含量を求め、次式により、フルトラニル(代謝物M4を含む)の含量を求める。

フルトラニル(代謝物M4を含む)の含量(ppm)=α,α,α―トリフルオロ―o―トルイル酸の含量(ppm)×1.701

8.確認試験

LC―MS/MSにより確認する。

9.測定条件

(例)

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル 内径2.1mm、長さ150mm、粒子径3μm

カラム温度:40℃

移動相:アセトニトリル及び2mmol/L酢酸アンモニウム溶液(1:19)混液

イオン化モード:ESI(-)

主なイオン(m/z):プリカーサーイオン189、プロダクトイオン145、69

注入量:5μL

保持時間の目安:5分

10.定量限界

0.01mg/kg(フルトラニル換算)

11.概要

脂肪の場合は、フルトラニル及び代謝物M4を試料からn―ヘキサン存在下n―ヘキサン飽和アセトニトリルで抽出し抽出液を濃縮して乾固した後、筋肉、肝臓、腎臓、乳及び卵の場合はそのまま試料に水酸化ナトリウムを加えて、フルトラニル及び代謝物M4を、α,α,α―トリフルオロ―o―トルイル酸に加水分解する。酢酸エチル及びn―ヘキサン混液に転溶し、トリメチルアミノプロピルシリル化シリカゲルミニカラムで精製した後、LC―MS/MSで定量及び確認する方法である。なお、α,α,α―トリフルオロ―o―トルイル酸について定量を行い、α,α,α―トリフルオロ―o―トルイル酸の含量に換算係数を乗じてフルトラニル(代謝物M4を含む)含量に変換したものを分析値とする。

12.注意点

1) 本法(筋肉等の方法)は、魚介類にも適用可能であるが、適用に当たっては規制対象化合物に留意すること。

2) 加水分解操作については、フルトラニル標準品を用いて、加水分解が十分に行われていることを確認すること。

3) 5.試験溶液の調製の2)加水分解では、密閉された容器内で高濃度の水酸化ナトリウム溶液を高温条件で加熱する。加熱時に容器内の圧力が上昇して、内容物の漏出、容器の破損等により、分析者に危険が生じる可能性があるため、本操作はドラフト内等で行うことが望ましい。また、加熱時に内容物の漏出がある場合には、加水分解に使用する反応容器に75mL程度以上の容量のものを使用すると良い。また、反応時には、容器の内部圧力の急激な上昇を避けるために、容器上部に冷却剤を載せると良い。

4) 5.試験溶液の調製の2)加水分解において、反応後の容器を放冷すると、筋肉、肝臓、うなぎの場合には、試料がゲル化することがある。また、加水分解後の加水分解物に30vol%硫酸を加える際には、強アルカリと強酸の反応となり激しく発熱するため、溶液の温度には十分に注意する。このため、ゲル化した試料を確実に溶解するとともに、30vol%硫酸を加える際の急激な温度上昇を避けるために、マグネチックスターラーを用いて加水分解物を撹拌しながら慎重に加える。

5) α,α,α―トリフルオロ―o―トルイル酸は揮散しやすいため、濃縮操作の際には、キーパーとして2vol%ジエチレングリコール・アセトン溶液を加えてから、濃縮操作を行う。

6) α,α,α―トリフルオロ―o―トルイル酸のLC―MS/MS測定で、試験法開発時に使用したイオンを以下に示す。

定量イオン(m/z):プリカーサーイオン189、プロダクトイオン145

定性イオン(m/z):プリカーサーイオン189、プロダクトイオン69

7) 試験法開発時に検討した食品:牛の筋肉・脂肪・肝臓・乳、卵、うなぎ、しじみ

13.参考文献

Independent laboratory validation of an analytical method for residues of flutolanil in milk, eggs, beef muscle and fat, rice grain, and peanut meat and hay, Report AU95R005, Analytical Development Corp, USA, 1998.

14.類型

C

[別紙7]

ベダプロフェン試験法(畜水産物)

1.分析対象化合物

ベダプロフェン

2.適用食品

畜水産物

3.装置

液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC―MS/MS)

4.試薬、試液

次に示すもの以外は、総則の3に示すものを用いる。

ベダプロフェン標準品 本品はベダプロフェン98%以上を含む。

5.試験溶液の調製

1) 抽出

① 筋肉、脂肪、肝臓、腎臓、魚介類、乳及び卵の場合

試料10.0gにアセトン100mL及び1mol/L塩酸1mLを加え、ホモジナイズした後、毎分3,500回転で5分間遠心分離し、上澄液を採る。残留物にアセトン50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様に遠心分離し、上澄液を採る。得られた上澄液を合わせて40℃以下で約15mLまで濃縮する。これに5w/v%塩化ナトリウム溶液100mLを加え、酢酸エチル100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液を合わせ、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトン及びn―ヘキサン(1:1)混液20mLを加えて溶かす。

② はちみつの場合

試料10.0gに水10mLを加えて溶かした後、アセトン100mL及び1mol/L塩酸1mLを加え、ホモジナイズした後、毎分3,500回転で5分間遠心分離し、上澄液を採る。残留物にアセトン50mLを加えてホモジナイズし、上記と同様に遠心分離し、上澄液を採る。得られた上澄液を合わせて40℃以下で約15mLまで濃縮する。これに5w/v%塩化ナトリウム溶液100mLを加え、酢酸エチル100mL及び50mLで2回振とう抽出する。抽出液を合わせ、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、無水硫酸ナトリウムをろ別した後、40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物にアセトン及びn―ヘキサン(1:1)混液20mLを加えて溶かす。

2) 精製

弱塩基性陰イオン交換体ミニカラム(500mg)にアセトン及びn―ヘキサン(1:1)混液10mLを注入し、流出液は捨てる。このカラムに1)で得られた溶液を注入した後、アセトン及びn―ヘキサン(1:1)混液10mL、アセトン10mL及びメタノール5mLを順次注入し、流出液は捨てる。次いで酢酸及びメタノール(1:99)混液5mLを注入し、溶出液を40℃以下で濃縮し、溶媒を除去する。この残留物をメタノールに溶かし、正確に10mLとしたものを試験溶液とする。

6.検量線の作成

ベダプロフェン標準品のメタノール溶液を数点調製し、それぞれLC―MS/MSに注入し、ピーク高法又はピーク面積法で検量線を作成する。なお、本法に従って試験溶液を調製した場合、試料中0.01mg/kgに相当する試験溶液中濃度は0.01mg/Lである。

7.定量

試験溶液をLC―MS/MSに注入し、6の検量線でベダプロフェンの含量を求める。

8.確認試験

LC―MS/MSにより確認する。

9.測定条件