添付一覧
○医療計画における看護師の特定行為研修の体制の整備等について〔保健師助産師看護師法〕
(令和5年3月31日)
(医政看発0331第6号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局看護課長通知)
(公印省略)
特定行為に係る看護師の研修制度については、「保健師助産師看護師法第37条の2第2項第1号に規定する特定行為及び同項第4号に規定する特定行為研修に関する省令の施行等について」(平成27年3月17日付け医政発0317第1号厚生労働省医政局長通知)にて、各都道府県知事に対して、保健師助産師看護師法第37条の2第2項第1号に規定する特定行為及び同項第4号に規定する特定行為研修に関する省令(平成27年厚生労働省令第33号)の趣旨、内容等を踏まえた円滑な実施に御協力をお願いしているところです。
今般、「医療計画について」(令和5年3月31日付け医政発0331第16号厚生労働省医政局長通知)において、別紙「医療計画作成指針」の見直しが行われ、特定行為に係る看護師の研修制度(以下「特定行為研修」という。)については、特定行為研修に係る指定研修機関及び実習を行う協力施設の確保等の研修体制の整備に向けた具体的な計画の策定を必須とするとともに、都道府県ごとの特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業者数の目標を設定することとされました。
特定行為研修制度は、少子高齢化の進展に伴って需要が増大する在宅医療の推進を趣旨として創設され、特定行為研修を修了した看護師(以下「特定行為研修修了者」という。)は在宅医療における質の高い効果的なケアの提供者としてその活躍が期待されています。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に際しては、急増した集中治療を要する重症患者等に対応するため、特定行為研修修了者等の高度な知識と技術を身につけた看護師の確保が求められました。新興感染症等の感染拡大等の緊急的な状況にあっても適切な医療提供体制を維持するためには、重症患者等に対応可能な看護師を平時から計画的に養成することが重要です。また、令和6年4月1日より医師の時間外・休日労働の上限規制が適用されるにあたり、特定行為研修修了者へのタスク・シフト/シェアによる医師の労働時間短縮の効果が大きいことが指摘されています。
このような状況を踏まえ、特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師は、在宅医療の推進のほか、新興感染症等の感染拡大時の迅速かつ的確な対応及び医師の働き方改革に伴うタスク・シフト/シェアの推進に資するものとしてその役割が期待されています。こうした看護師を活用することにより地域の実情に応じた医療機能の確保と充実を図るため、各都道府県においては、特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の養成と就業の促進について、計画的に取組を進めることが求められます。
つきましては、医療計画の策定にあたり、特定行為研修の体制の整備に向けた計画の策定と特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業者数の目標の設定について、特に留意する事項は下記のとおりです。貴職におかれては、「医療計画作成指針」これらの事項にご留意いただき、計画を策定いただきますようお願い申し上げます。
なお、追ってお示しする新興感染症等に係る医療計画に関する通知等についても、必要に応じ、ご参照ください。
また、本通知は厚生労働省医政局地域医療計画課と調整済みであることを申し添えます。
記
1 医療計画に記載する事項
(1) 地域の実情に応じた指定研修機関や協力施設の確保等の研修体制の整備に向けた具体的な計画(指定研修機関数や協力施設数の目標の設定等)
(2) 特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業者数の目標
2 計画の策定に当たっての留意事項
特定行為研修制度に係る研修体制の整備に向けた計画(以下「計画」という。)の作成及び特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業者数の目標の設定にあたっては、地域の実情を踏まえて策定するよう、事前に、地域の医療機関(指定研修機関を含む)や関係団体等と十分な意見調整を行うとともに、以下に留意すること。
(1) 特定行為研修制度等の普及状況の把握
研修体制を整備するにあたって、地域における特定行為研修等の普及の現状を客観的に把握すること。その際、業務従事者届の集計データや指定研修機関数等の国が提供するデータ、独自調査データ等を活用して把握すること。
(現状の把握に必要な情報の例)
・特定行為研修に係る指定研修機関数、実習を行う協力施設数
・特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業者数(総数、特定行為区分別、就業場所別等)
・医療機関及び訪問看護ステーション等における特定行為研修等の受講希望者等のニーズ
・医療機関における指定研修機関の指定申請の意向
(2) 課題の抽出
「(1) 特定行為研修制度等の普及状況の把握」で収集した情報により把握した数値から明確となった現状について分析を行い、研修体制の整備における課題や特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業状況における課題を抽出すること。
(3) 数値目標
研修体制の整備(指定研修機関数や協力施設数の目標の設定等)や特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業者数について、「(2) 課題の抽出」で明確となった課題に対して、指定研修機関数や協力施設数、特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業者数について、地域の実情に応じた数値目標並びに目標達成に要する期間を設定すること。
特に、特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業者数についての目標の設定にあたっては、以下の観点を考慮すること。
① 在宅医療における質の高い効果的なケアの実施の推進
(目標の例)
在宅・慢性期領域における特定行為研修その他の専門性の高い看護師の就業者数
② 新興感染症等の感染拡大時に、高度急性期治療に対応できる知識と技術を有する看護師の平時からの確保
(目標の例)
新興感染症等の感染拡大等の有事に対応可能な特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業者数
③ 看護の質の向上と医師の時間外労働の上限規制に資するタスク・シフト/シェアの推進
(目標の例)
医師労働時間短縮計画の作成対象となる医療機関等における看護の質の向上とタスク・シフト/シェアに資するに必要な特定行為研修修了者の就業者数
なお、都道府県内に指定研修機関数が極端に少ないなどの研修体制の整備が十分でない場合は、都道府県内の指定研修機関における特定行為研修修了者の状況を元に就業者数の目標値を設定することも考えられる。
(4) 施策
目標の達成には、課題に応じた施策及び事業を実施することが重要である。「(2) 課題の抽出」に対応するよう、「(3) 数値目標」で設定した目標を達成するために行う施策及び事業等を立案すること。なお、目標を達成するための施策として、国が実施する事業も積極的に活用すること。
(施策及び事業の例)
・特定行為研修の受講に係る支援事業(受講料の補助、代替職員の経費の補助)
・指定研修機関及び実習を行う協力施設の確保に係る支援事業
・指定研修機関及び実習を行う協力施設の確保や指定研修機関相互のネットワーク形成を目的とした関係団体(者)や医療機関との会議の場の設置、運営に係る事業
・特定行為研修修了者の活動体制の推進に係る支援やフォローアップ研修の実施、運営に係る事業
(5) 評価
計画の実効性を高めるためには、計画の進捗について評価を行い、必要に応じて計画の内容を見直すことが重要である。このため、あらかじめ評価を行う体制を整え、計画の評価を行う組織や時期を明確にすること。この際、少なくとも施策の進捗状況の評価については、1年ごとに行うことが望ましい。また、数値目標の達成状況及び現状把握に用いた指標の状況について、中間見直しに合わせて調査、分析及び評価を行い、必要があるときには、都道府県は計画を変更することとする。