○医療計画について
(令和5年3月31日)
(医政発0331第16号)
(各都道府県知事あて厚生労働省医政局長通知)
(公印省略)
我が国の医療提供体制については、これまで、医療のアクセスや質を確保しつつ、良質かつ適切な医療提供体制を確保するため、地域医療構想による病床の機能の分化及び連携の推進や地域包括ケアシステム(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第83号)第2条第1項に規定する地域包括ケアシステムをいう。以下同じ。)の構築等の取組を進めてきた。
また、医療法及び医師法の一部を改正する法律(平成30年法律第79号)により、患者の医療アクセス向上及び医師の勤務負担の軽減等の観点から、医師確保計画の策定等を通じて医師偏在の解消等を図るとともに、良質かつ適切な医療を効率的に提供するための医療法等の一部を改正する法律(令和3年法律第49号)により、令和6年4月の医師に対する時間外労働の上限規制の適用の開始に向け、医師の労働時間の短縮及び健康保持のための制度の創設や、医療関係職種の業務範囲の見直し等を行うなど、医療従事者の側面からも、地域における良質かつ適切な医療提供体制の確保を図ってきたところである。
今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、我が国の医療提供体制に多大な影響が生じ、救急医療をはじめ、地域医療の様々な課題が浮き彫りとなり、地域における入院・外来・在宅にわたる医療機能の分化・強化、連携等を行う重要性や、地域医療全体を視野に入れて適切な役割分担の下で必要な医療提供を行う重要性などが改めて認識された。
さらに、令和7年にかけて高齢者人口が急速に増加した後、令和22年に向けてその増加は緩やかになる一方、既に減少に転じている生産年齢人口は、令和7年以降さらに減少が加速する中、令和6年度より開始する医師の時間外・休日労働の上限規制への対応も必要であり、地域の医療提供体制を支えるマンパワーの確保はますます重要な課題となる。こうしたことを踏まえ、人口減少・高齢化に伴う医療ニーズの質・量の変化に対応した必要な医療提供体制を維持するため、地域医療構想の取組を着実に進めるとともに、医療従事者の確保に一体的に取り組んでいく必要がある。さらに、医療の質の向上や効率化を図る観点から、情報通信技術(ICT)の活用や、医療分野のデジタル化を推進していくことも重要である。
今般の医療計画の策定に当たっては、令和3年6月より開催した、第8次医療計画等に関する検討会における意見のとりまとめ等を踏まえ、
① 急性期から回復期、慢性期までを含めた一体的な医療提供体制の構築
② 疾病・事業横断的な医療提供体制の構築
③ 5疾病・6事業及び在宅医療に係る指標の見直し等による政策循環の仕組みの強化
④ 介護保険事業(支援)計画等の他の計画との整合性の確保
などの観点から、医療法(昭和23年法律第205号。以下「法」という。)第30条の3第1項の規定に基づき、医療提供体制の確保に関する基本方針(平成19年厚生労働省告示第70号。以下「基本方針」という。)の改正を行うとともに、「医療計画作成指針」(以下「指針」という。)の見直しを行った。
都道府県においては、患者本位の、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築し、国民の医療に対する安心及び信頼の確保を図るために、基本方針の改正の趣旨を踏まえた医療計画の見直しを通じて、医療計画をより一層有効に機能させていくこと及び地域医療構想の達成に向けた取組を進めていくことが求められている。また、そのために必要な人材の育成を継続的に行っていくことも重要である。
また、病床の機能の分化及び連携の推進による効率的で質の高い医療提供体制の構築及び居宅等における医療(以下「在宅医療」という。)・介護の充実等の地域包括ケアシステムの構築が一体的に行われるよう、医療計画、介護保険法(平成9年法律第123号)第118条第1項に規定する都道府県介護保険事業支援計画(以下「都道府県介護保険事業支援計画」という。)及び同法第117条第1項に規定する市町村介護保険事業計画(以下「市町村介護保険事業計画」という。)の整合性を確保することが必要である。加えて、医療計画策定に当たっては、そのまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症がまん延し、又はそのおそれがあるときにおける医療(以下「新興感染症発生・まん延時における医療」という。)について、地域の実情に応じて、連携して新興感染症への対応を行うことができるよう、医療計画と感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第96号)第3条による改正後の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)第10条第1項に規定する予防計画(以下「予防計画」という。)及び新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)第7条第1項に規定する都道府県行動計画(以下「都道府県行動計画」という。)との整合性を確保することも必要である。
以上の趣旨を踏まえ、都道府県においては、見直しの趣旨及び内容の周知徹底を図るとともに、下記に示す留意事項及び指針に示す具体的手順を参考としながら、医療計画の作成及び推進に遺憾なきを期されたい。
なお、本通知は法第30条の8に基づく技術的助言であることを申し添える。
また、「医療計画について」(平成29年3月31日付け医政発第0331第57号医政局長通知)は廃止する。
記
1 医療計画の作成について
医療計画の作成に当たっては、基本方針に即して、指針及び「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」(令和5年3月31日付け医政地発0331第14号厚生労働省医政局地域医療計画課長通知)の別紙「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制の構築に係る指針」(以下「疾病・事業及び在宅医療指針」という。)を参考とし、かつ、医療提供体制の現状及び今後の医療需要の変化を含む地域の実情に応じて、関係者の意見を十分踏まえた上で行うこと。
2 医療連携体制について
(1) 医療連携体制(医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を確保するための体制をいう。以下同じ。)に関する事項は、がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病及び精神疾患の5疾病(以下「5疾病」という。)並びに救急医療、災害時における医療、新興感染症発生・まん延時における医療、へき地の医療、周産期医療及び小児医療(小児救急医療を含む。)の6事業(以下「6事業」という。)並びに在宅医療について定めること。
その際、施策や事業の結果(アウトプット)のみならず、住民の健康状態や患者の状態といった成果(アウトカム)に対してどれだけの影響(インパクト)を与えたかという観点から、施策及び事業の評価及び改善を行い、政策循環(PDCAサイクル等)を強化することが重要である。そのため、指標を用いることなどにより現状把握を行った上で、疾病・事業及び在宅医療指針で述べる5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれの目指すべき方向の各事項を踏まえて対策上の課題を抽出し、その解決に向けた施策及び数値目標の設定、それらの進捗状況の評価等を実施すること。
なお、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病(CKD)、ロコモティブシンドローム、フレイル、肺炎、大腿骨頚部骨折等については、5疾病に当たらないものの、健康増進施策等の関連施策等との調和を図りつつ、対策を講じることが必要であること。
(2) 人口の減少及び高齢化の進展の中で、疾病構造の変化や地域医療の確保といった課題に対応するためには、求められる医療機能を明確にした上で、地域の医療関係者等の協力の下、医療機関及び関係機関の機能の分担及び連携により、切れ目なく医療を提供する体制を構築することが必要である。また、医療及び介護を取り巻く地域ごとの多様な状況に対応するため、限りある地域の社会資源を効率的かつ効果的に活用し、地域包括ケアシステムの構築を進めていく上でも、医療機関と関係機関との連携は重要である。
3 医師の確保及び医療従事者(医師を除く。)の確保等について
(1) 法第30条の4第2項第11号の医師の確保及び同項第12号の医療従事者(医師を除く。)の確保については、医師、歯科医師、薬剤師、看護師等の医療従事者について、将来の需給動向を見通しつつ養成を進め、適正な供給数を確保するとともに、地域間の偏在や診療科間等における偏在への対応を進める必要があること。
その際、医療提供施設相互間における連携体制を構築する取組自体が偏在解消への対策になることや、都道府県が中心となって地域の医療機関へ医師を派遣する仕組みを再構築することが求められていること。
これらを踏まえ、都道府県においては、法第30条の23第1項の規定に基づき、地域医療対策協議会の活用等により医師及び医療従事者の確保に関する事項に関し必要な施策を定めるための協議を行い、そこで定めた施策を医療計画に記載するとともに、公表し実施していくことが必要であること。
特に地域の医療機関で医師を確保するためには、地域の医療機関で勤務する医師のキャリア形成に係る不安の解消に向けて、大学等の関係機関と緊密に連携しつつ、医師のキャリア形成支援と一体的に地域の医療機関の医師の確保を支援する取組が必要であり、都道府県においては、地域の医療関係者等と協議の上、地域医療支援センター等を活用して必要な施策を推進していくことが必要であること。
また、令和6年4月からの医師に対する時間外・休日労働の上限規制の適用に当たり、各医療機関において、医師事務作業補助者の確保をはじめとしたタスク・シフト/シェアの推進等による医師の業務負担の軽減等、勤務医が自身の健康を確保しながら働くことができる勤務環境の整備に向けた取組が進むよう支援することが重要であること。
(2) 法第30条の4第2項第13号の医療の安全の確保については、医療機器の安全管理等に関する事項として、高度な医療機器について、配置状況に加え稼働状況等も確認し、保守点検を含めた評価を行うこと。
また、CT、MRI等の医療機器を有する診療所については、当該機器の保守点検を含めた医療安全の取組状況について、定期的に報告を求めること。
(3) 法第30条の4第3項第1号の地域医療支援病院の整備の目標その他医療提供施設の機能を考慮した医療提供施設の整備の目標に関する事項として、特定の病院等が果たすべき機能について医療計画に記載する場合には、事前にその開設者と十分な意見調整を行うものとすること。
4 基準病床数及び特定の病床等に係る特例等について
(1) 法第30条の4第2項第17号に規定する基準病床数の算定は、病院の病床及び診療所の病床(以下「病院の病床等」という。)に対して行うものであること。
なお、基準病床数並びに二次医療圏及び三次医療圏(同項第14号及び15号に規定する区域をいう。)の設定については、厚生労働省令で定める標準により実施すること。これは、病院の病床等の適正配置を図るためには、全都道府県において統一的に実施しなければ実効を期しがたいからであること。
(2) 既設の二次医療圏が、入院に係る医療を提供する一体の圏域として成り立っていない場合は、その見直しについて検討すること。その際には、圏域内の人口規模が患者の受療動向に大きな影響を与えていることから、人口規模や、当該圏域への患者の流入及び当該圏域からの患者の流出の実態等を踏まえて検討すること。
特に、人口規模が20万人未満であり、かつ、二次医療圏内の病院の療養病床及び一般病床の推計流入入院患者割合(以下「流入患者割合」という。)が20%未満かつ推計流出入院患者割合(以下「流出患者割合」という。)が20%以上となっている既設の二次医療圏については、入院に係る医療を提供する一体の区域として成り立っていないと考えられるため、設定の見直しについて検討することが必要であること。また、検討の結果、見直しを行わないこととする場合には、その理由(地理的条件、当該圏域の面積、地理的アクセス等)を明記すること。さらに、人口規模が100万人以上の二次医療圏については、構想区域(法第30条の4第2項第7号に規定する構想区域をいう。以下同じ。)としての運用に課題が生じている場合が多いことを踏まえ、必要に応じて区域の設定の見直しについて検討するとともに、地域医療構想調整会議(法第30条の14第1項に規定する協議の場をいう。)について、構想区域内をさらに細分化した地域や地域の医療課題等の協議項目ごとに分けて開催するなど運用上の工夫を行うこととする。
また、構想区域と二次医療圏が異なっている場合は、一致させることが適当であることから、構想区域に二次医療圏を合わせるよう必要な見直しを行うこと。
(3) 法第30条の4第9項及び第10項の規定による特例は、大規模な都市開発等により急激な人口の増加が見込まれ、現在人口により病床数を算定することが不適当である場合や感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第16条第2項に規定する新型インフルエンザ等感染症等に係る発生等の公表が行われた場合、特殊な疾病にり患する者が異常に多い場合等病床に対する特別の需要があると認められる場合に行うものとすること。
(4) 法第30条の4第11項の規定による特定の病床に係る特例の対象となる病院の病床等、特に今後各区域において整備する必要があるものに限り、各区域において基準病床数を超える病床が存在する等の場合でも必要に応じ例外的に整備できるものであること。
この場合において、特例の対象とされる数は、当該申請に係る病床と機能及び性格を同じくする既存の病床数等を勘案し、必要最小限とすること。
なお、これらの特例の対象となった病床については、既存病床数として算定するものであること。
(5) 法第30条の4第10項及び第11項の規定による許可については、(3)に定める事情がなくなったと認められる場合や、(4)の特例病床の機能に係る業務が行われなくなった場合には、基準病床数を超えている範囲内で当該特例許可に係る病床数を削減する旨の条件を付与することができること。
(6) 法第30条の4第12項の規定による特例は、地域医療連携推進法人(法第70条の5第1項に規定する地域医療連携推進法人をいう。以下同じ。)の参加法人(法第70条第1項に規定する参加法人をいう。以下同じ。)同士又は同一参加法人内で、地域医療構想の達成を推進するために必要なものであり、病床数の合計が増加しておらず、地域医療連携推進法人の地域医療連携推進評議会(法第70条の3第1項第16号に規定する地域医療連携推進評議会をいう。)の意見を聴き、また、当該意見を尊重した上で行われる場合に実施できるものであること。
なお、必要な病床数を認めるに当たっては、病院の病床等の増加等の申請に係る構想区域における地域医療構想調整会議の協議の方向性に沿ったものであることを確認すること。
(7) 法第30条の4第9項から第12項までの規定による特例については、都道府県医療審議会に諮ること。その際、特例としての取扱いを必要とする理由及び特例としての取扱いをしようとする病床数の算定根拠を明らかにして、当該都道府県医療審議会の意見を聴くものとすること。
また、前記の規定(法第30条の4第12項の規定を除く。)に基づき、特例としての取扱いを受ける数について厚生労働大臣に協議するときは、特例としての取扱いを必要とする理由及び特例としての取扱いをしようとする病床数の算定根拠等を記載した申請書(別紙様式1、2)に当該都道府県医療審議会の意見を附すること。
(8) 都道府県において療養病床及び一般病床の整備を行う際には、地域医療構想の達成に向けた取組と整合的なものとなるよう、既存病床と基準病床数の関係性だけではなく、地域医療構想における将来の病床数の必要量を踏まえて対応すること。具体的には「地域医療構想を踏まえた病床の整備に当たり都道府県が留意すべき事項について」(平成29年6月23日付け医政地発0623第1号厚生労働省医政局地域医療計画課長通知)等における留意事項を参照すること。
5 既存病床数及び申請病床数について
(1) 医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号。以下「規則」という。)第30条の33第1項第1号により国の開設する病院又は診療所であって宮内庁、防衛省等の所管するもの、特定の事務所若しくは事業所の従業員及びその家族の診療のみを行う病院又は診療所等の病床について、既存病床数及び当該申請に係る病床数の算定に当たり、当該病床の利用者のうち、職(隊)員及びその家族以外の者、従業員及びその家族以外の者等の部外者が占める率による補正を行うこととしているのは、それらの病院又は診療所の病床については部外者が利用している部分を除いては、一般住民に対する医療を行っているとはいえないからであること。
なお、当該病院又は診療所の開設許可の申請があったときは、その開設の目的につき十分審査するものとすること。また、開設の目的につき変更の申請があったときも同様とすること。
(2) 放射線治療病室(規則第30条の12第2項に規定する特別措置病室を除く。)の病床については、専ら放射線治療を行うために用いられる病床であることから、これを既存病床数及び当該申請に係る病床数として算定しないこと。
(3) 国立及び国立以外のハンセン病療養所である病院の病床については、既存の病床数に算定しないこと。
(4) 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成15年法律第110号)第16条第1項の規定により厚生労働大臣の指定を受けた指定入院医療機関である病院の病床(同法第42条第1項第1号又は第61条第1項第1号の決定を受けた者に対する同法による入院による医療に係るものに限る。)については、既存の病床数に算定しないこと。
(5) 診療所の一般病床のうち、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律(平成18年法律第84号)附則第3条第3項に定める「特定病床」については、別途政令で定める日までの間、既存の病床数に算定しないこと。
(6) 診療所の療養病床又は一般病床について、規則第1条の14第7項第1号又は第2号に該当する診療所として都道府県医療審議会の議を経たときは、都道府県知事への許可申請の代わりに届出により病床が設置されることとなるが、既存の病床数の算定に当たっては当該届出病床も含めて算定を行うこと。
6 医療計画の作成手順等について
(1) 法第30条の4第14項の「医療と密接な関連を有する施策」とは、基本方針第十一に掲げる方針等が該当すること。
(2) 法第30条の4第15項の規定により、都道府県は医療計画を作成するに当たり、都道府県の境界周辺の地域における医療の需給の実情に照らし必要があると認めるときは、関係都道府県と連絡調整を行うこと。
これは、5疾病・6事業及び在宅医療に係る医療連携体制の構築など、施策の内容によっては、より広域的な対応が求められることから、都道府県内における自己完結にこだわることなく、当該都道府県の境界周辺の地域における医療を確保するために、必要に応じて隣接県等との連携を図ることが求められているものであること。
(3) 法第30条の4第16項の「診療又は調剤に関する学識経験者の団体」としては、都道府県の区域を単位として設立された医師会、歯科医師会及び薬剤師会が考えられること。
(4) 法第30条の4第17項の規定により、医療計画の作成等に関して、都道府県ごとに設けられている保険者協議会(高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)第157条の2第1項に規定する協議会をいう。以下同じ。)の意見を事前に聴くこと。
(5) 法第30条の4第18項の規定における医療計画の変更とは、法第30条の6の規定に基づく変更をいうものであり、例えば、5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれに係る医療連携体制において、医療機能を担う医療提供施設を変更する場合などは、この規定に基づく医療計画の変更には当たらないこと。
(6) 医療計画については、法第30条の6の規定に基づき、6年ごとに調査、分析及び評価を行い、必要がある場合は変更すること。また、在宅医療、医師の確保及び外来医療に関する事項については、3年ごとに調査、分析及び評価を行い、必要がある場合は変更すること。
(7) 医療計画、都道府県介護保険事業支援計画及び市町村介護保険事業計画を一体的に作成し、これらの計画の整合性を確保することができるよう、地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針(平成26年厚生労働省告示第354号)第2の二の1に規定する協議の場を設置すること。加えて、特に新興感染症発生・まん延時における医療については、予防計画及び都道府県行動計画との整合性を確保し、地域の実情に応じて、地域において連携して感染症への対応を行うことができるよう、感染症法第10条の2に規定する連携協議会を必要に応じて活用することも重要であること。なお、第8次医療計画の開始時期である令和6年度は、都道府県等において策定する予防計画や市町村において策定する介護保険事業計画等の開始時期でもあることから、それらの計画の策定スケジュールを都道府県と市町村とで共有しながら議論を進める体制を整えるよう留意すること。
また、病床の機能分化・連携に伴い生じる、介護施設、在宅医療等の新たなサービス必要量に関する整合性の確保が重要であることから、都道府県介護保険事業支援計画及び市町村介護保険事業計画において掲げる介護の整備目標と、医療計画において掲げる在宅医療の整備目標が整合的なものとなるよう、当該協議の場において、必要な事項についての協議を行うこと。
7 医療計画の推進について
(1) 法第30条の7第1項において、医療提供施設の開設者及び管理者は、医療計画の達成の推進に資するため、医療連携体制の構築のために必要な協力をするよう努めるとともに、同条第2項において、必要な協力をするに際しては、他の医療提供施設との業務の連携を図りつつ、それぞれ定められた役割を果たすよう努めるものとされていること。また、同条第3項において、病院又は診療所の管理者は在宅医療を提供し、又は福祉サービスとの連携を図りつつ、必要な支援を行うよう努めるものとされていること。
(2) 法第30条の7第4項の規定に基づく病院の開放化については、単に病床や医療機器の共同利用にとどまらず、当該病院に勤務しない地域の医師等の参加による症例の研究会や研修会の開催までを含めた広義のものであること。
また、医療計画の推進を図るに当たっては、大学における医学又は歯学に関する教育又は研究に支障を来さないよう十分配慮すること。なお、同項の「当該病院の医療業務」には、大学附属病院における当該大学の教育又は研究が含まれること。
(3) 法第30条の9の規定に基づく国庫補助については、医療計画の達成を推進するために、医療計画の内容を考慮しつつ行うこととしていること。
(4) 医療計画の推進の見地から、病院の開設等が法第30条の11の規定に基づく勧告の対象とされた場合においては、独立行政法人福祉医療機構の融資を行わないこととしていること。
8 都道府県知事の勧告について
(1) 法第30条の11の「医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合」とは、原則として法第7条の2第1項各号に掲げる者以外の者が、病院の開設又は病院の病床数の増加若しくは病床の種別の変更の許可の申請をした場合、又は診療所の病床の設置若しくは診療所の病床数の増加の許可の申請をした場合において、その病床の種別に応じ、その病院又は診療所の所在地を含む二次医療圏又は都道府県の区域における既存の病床数が、医療計画に定める当該区域の基準病床数に既に達している場合又はその病院又は診療所の開設等によって当該基準病床数を超えることとなる場合をいうものであること。
また、「病院の開設若しくは病院の病床数の増加若しくは病床の種別の変更又は診療所の病床の設置若しくは診療所の病床数の増加に関して勧告する」とは、それぞれの行為の中止又はそれぞれの行為に係る申請病床数の削減を勧告することをいうものであること。なお、都道府県知事は、勧告を行うに先立ち、病院又は診療所を開設しようとする者に対し、可能な限り、他の区域における病院又は診療所の開設等について、助言を行うことが望ましいものであること。
(2) 法第30条の11の規定に基づく勧告は、法第7条の許可又は不許可の処分が行われるまでの間に行うものであること。
(3) 精神病床、結核病床及び感染症病床については、都道府県の区域ごとに基準病床数を算定することとされているが、これらの病床が都道府県の一部に偏在している場合であって、開設の申請等があった病院の所在地を含む二次医療圏及びこれと境界を接する他の二次医療圏(他の都道府県の区域内に設定された二次医療圏を含む。)の内にその申請に係る種別の病床がないときは、当該都道府県の区域における病院の病床数が医療計画に定める当該区域の基準病床数に既に達している等の場合であっても勧告の対象としないことが適当と考えられること。なお、その際には都道府県医療審議会の意見を聴くこと。
(4) 病院又は診療所の開設者に変更があった場合であっても、その前後で病床の種別ごとの病床数が増加されないときは、勧告は行わないこと。
(5) 病院又は診療所が移転する場合であっても、その前後で、その病院又は診療所が存在する二次医療圏内の療養病床及び一般病床の数並びに都道府県内の精神病床、結核病床又は感染症病床の数が増加されないときは、勧告は行わないこと。
なお、特定病床を有する診療所が移転する場合、その診療所が存在する二次医療圏内の既存病床数は当該特定病床分増加することとなるが、移転の前後で病床の種別ごとの病床数が増加されないときは、勧告は行わないものとする。
(6) 地域医療構想の達成の推進のため、2以上の医療機関の再編であって1以上の医療機関が廃止する場合(二次医療圏を越えて行う場合を除く。)にあっては、その前後で病床数の合計数が増加されないときであって、当該再編に関する計画について地域医療構想調整会議における協議及び合意を経た上で、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(平成元年法律第64号。以下「医療介護総合確保法」という。)第12条の2の2に規定する厚生労働大臣の認定を受けるときは、勧告は行わないこと。ただし、病床過剰地域であることに鑑み、やむを得ないと認められる場合を除き、法第30条の12第1項の規定により読み替えて適用する第7条の2第3項の規定の趣旨を踏まえ、再編の対象となる医療機関において、病床に係る業務の全部又は一部を行っていないときは、再編後の病床数の合計数は、当該業務を行っていない病床数を除いたものとすること。なお、再編の対象となる医療機関において、規則第1条の14第7項各号に掲げる場合として法第7条第3項の許可を受けずに設置した病床又は規則第30条の32の2第1項各号に掲げる病床を有する場合にあっては、当該病床の趣旨に照らして適切な対応を取ること。
(7) 病院を開設している者がその病院を廃止し、当該病院を開設していた場所において診療所の病床を設置する場合であっても、その診療所が存在する二次医療圏内の療養病床及び一般病床の数が増加されないときは、勧告は行わないこと。
(8) 国(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構、独立行政法人海技教育機構、独立行政法人労働者健康安全機構、独立行政法人国立病院機構、国立研究開発法人国立がん研究センター、国立研究開発法人国立循環器病研究センター、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター、国立研究開発法人国立国際医療研究センター、国立研究開発法人国立成育医療研究センター、国立研究開発法人国立長寿医療研究センター及び国立大学法人を含む。以下同じ。)の開設する病院又は診療所については、法第6条に基づく医療法施行令(昭和23年政令第326号)第3条の規定により、法第30条の11の規定は適用されないこと。
なお、国が病院を開設し、若しくはその開設した病院につき病床数を増加させ、若しくは病床の種別を変更し、又は診療所に病床を設け、若しくは診療所の病床数を増加させ、若しくは病床の種別を変更しようとするときは、「医療法の一部を改正する法律の施行に伴う国の開設する病院の取扱いについて」(昭和39年3月19日閣議決定)又は法第7条の2第7項の規定に基づき、主務大臣等は、あらかじめ、その計画に関し、厚生労働大臣に協議等をするものとされていること。
この場合において、当職から関係都道府県知事に速やかにその旨及びその概要を通知するとともに、当該計画の審査をするために必要な資料及び医療計画の達成の推進を図る観点からの意見の提出を求めるため、速やかに対応を行われたいこと。
(9) 医育機関に附属する病院を開設しようとする者又は医育機関に附属する病院の開設者若しくは管理者に対して勧告しようとするときは、大学における医学又は歯学に関する教育研究に係る立場から、意見を述べる機会を与えることが望ましいこと。
(10) 診療所の療養病床又は一般病床の設置について、規則第1条の14第7項第1号又は第2号に該当する次の診療所のいずれかとして都道府県医療審議会の議を経た場合は、都道府県知事への許可申請の代わりに届出により病床が設置されることとなるため、勧告の対象とならないこと。
なお、次の診療所については、「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の一部の施行について」(平成18年12月27日付け医政発第1227017号厚生労働省医政局長通知)における留意事項を参照されたい。
① 法第30条の7第2項第2号に掲げる医療の提供の推進のために必要な診療所その他の地域包括ケアシステムの構築のために必要な診療所
② へき地の医療、周産期医療、小児医療、救急医療その他の地域において良質かつ適切な医療が提供されるために必要な診療所
9 公的性格を有する病院又は診療所の開設等の規制について
法第30条の4第18項の規定により医療計画が公示された日以降における法第7条の2第1項各号に掲げるものが開設する公的性格を有する病院又は診療所の開設等の規制は、当該医療計画に定める区域及び基準病床数を基準として行われるものであること。
(別紙様式1)
(別紙様式2)
(別紙)
医療計画作成指針
目次
はじめに
第1 医療計画作成の趣旨
第2 医療計画作成に当たっての一般的留意事項
1 医療計画作成等に係る法定手続
2 記載事項
3 他計画等との関係
4 医療計画の作成体制の整備
5 医療計画の名称等
6 医療計画の期間
第3 医療計画の内容
1 医療計画の基本的な考え方
2 地域の現状
3 5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれに係る医療連携体制
4 疾病の発生状況等に照らして都道府県知事が特に必要と認める医療
5 地域医療構想の取組
6 外来医療に係る医療提供体制の確保
7 医師の確保及び医療従事者(医師を除く。)の確保
8 医療の安全の確保
9 基準病床数
10 医療提供施設の整備の目標
11 その他医療を提供する体制の確保に関し必要な事項
12 施策の評価及び見直し
第4 医療計画作成の手順等
1 医療計画作成手順の概要
2 医療圏の設定方法
3 基準病床数の算定方法
4 介護保険事業(支援)計画との整合性の確保
5 5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれに係る医療連携体制構築の手順
第5 医療計画の推進等
1 医療計画の推進体制
2 医療計画の推進状況の把握、評価及び再検討
第6 医療計画に係る報告等
1 医療計画の厚生労働大臣への報告
2 法第27条の2第1項、第30条の11、第30条の12第2項及び第30条の17の規定に基づく勧告等の実施状況の報告
はじめに
都道府県は、厚生労働大臣が定める基本方針に即して、かつ、地域の実情に応じて、当該都道府県における医療計画を定めることとされているが、医療計画の作成の手法その他重要な技術的事項については、厚生労働大臣が都道府県に対し必要な助言をすることができることとされている。本指針は、そのような事項について都道府県の参考となるものを手引きの形で示したものである。
第1 医療計画作成の趣旨
我が国の医療提供体制については、国民の健康を確保し、国民が安心して生活を送るための重要な基盤となっている。一方で、高齢化の進行や医療技術の進歩、国民の意識の変化など、医療を取り巻く環境が大きく変わる中、誰もが安心して医療を受けることができる環境の整備が求められている。
特に、人口の減少及び高齢化や社会構造の多様化・複雑化が進む中、がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病及び精神疾患の5疾病(以下「5疾病」という。)については、生活の質の向上を実現するため、患者数の増加の状況も踏まえつつ、これらに対応した医療提供体制の構築が求められている。
さらには、地域医療の確保において重要な課題となる6事業及び在宅医療についても、これらに対応した医療提供体制の構築により、患者や住民が安心して医療を受けられるようにすることが求められている。
5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれについて、地域の医療機能の適切な分化・連携を進め、切れ目ない医療が受けられる効率的で質の高い医療提供体制を地域ごとに構築するためには、医療計画における政策循環(PDCAサイクル等)の仕組みを一層強化することが重要となる。
具体的には、住民の健康状態や患者の状態といった成果(アウトカム)を踏まえた上で、医療提供体制に関する現状を把握し、現行の医療計画に対する評価を行い、目指すべき方向(5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれの目指すべき方向をいう。以下同じ。)の各事項を踏まえて、課題を抽出し、課題の解決に向けた施策の明示及び数値目標の設定、それらの進捗状況の評価等を実施する。施策及び事業評価の際には、施策及び事業の結果(アウトプット)のみならず、地域住民の健康状態や患者の状態、地域の医療の質などの成果(アウトカム)にどのような影響(インパクト)を与えたか、また、目指すべき方向の各事項に関連づけられた施策群が全体として効果を発揮しているかという観点も踏まえ、必要に応じて医療計画の見直しを行う仕組み(PDCAサイクル等)を、政策循環の中に組み込んでいくことが必要となる。抽出された課題を解決するために、具体的な方法を論理的に検討し、できる限り実効性のある施策を盛り込むとともに、各々の施策と解決すべき課題との連関を示すことが重要であり、施策の検討及び評価の際にはロジックモデル等のツールの活用を検討する。
都道府県には、5疾病・6事業及び在宅医療について、それぞれに求められる医療機能を明確にした上で、地域の医療関係者等の協力の下に、医療連携体制を構築するとともに、それをわかりやすく示すことにより、患者や住民が地域の医療機関ごとの機能分担の現状を理解し、病期に適した質の高い医療を受けられる体制を整備することが求められている。また、各都道府県においては、ロジックモデル等のツールを活用し、PDCAサイクルの実効性を確保するため、計画的に人材の育成に取り組むとともに、国が実施する研修の受講を職員に促すことが重要である。
なお、医療計画の作成に際して、医療や行政の関係者に加え、患者(家族を含む。)や住民が医療の現状について共通の認識を持ち、課題の解決に向け、一体となって協議・検討を行うことは今後の医療の進展に大きな意義を有するものである。このため、都道府県は、患者・住民の作業部会等への参加やタウンミーティングの開催、患者・住民へのヒアリングやアンケート調査、医療計画のパブリックコメントなどにより、患者・住民の意見を反映させた上で、医療計画の内容について分かりやすく公表し、周知することが必要である。
第2 医療計画作成に当たっての一般的留意事項
1 医療計画作成等に係る法定手続
医療計画の作成等に関しては、法に基づく次の手続きを行うこと。
(1) 医療計画を作成するに当たり、都道府県の境界周辺の地域における医療の需給の実情に照らし必要があると認めるときは、関係都道府県と連絡調整を行う。
(2) 医療計画を作成するため、都道府県の区域を単位として設置された医師会、歯科医師会、薬剤師会等診療又は調剤に関する学識経験者の団体の意見を聴く。
(3) 医療計画を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、市町村(救急業務を処理する地方自治法(昭和22年法律第67号)第284条第1項に規定する一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)及び保険者協議会の意見を聴く。
(4) 医療計画を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、都道府県医療審議会の意見を聴く。
(5) 医療計画を定め、変更したときは、遅滞なく厚生労働大臣に提出するとともにその内容を公示する。
(6) 医療計画を作成し、施策を実施するために必要がある場合は、市町村、官公署、医療保険者、医療提供施設の開設者又は管理者に対して、医療機能に関する情報等必要な情報提供を求める。
2 記載事項
次の事項については、医療計画に必ず記載しなければならない。
(1) 都道府県において達成すべき、5疾病・6事業及び在宅医療の目標に関する事項
(2) 5疾病・6事業及び在宅医療に係る医療連携体制に関する事項
(3) 医療連携体制における医療機能に関する情報提供の推進に関する事項
(4) 5疾病・6事業及び在宅医療に関する事項
(5) 地域医療構想に関する事項
(6) 病床の機能に関する情報の提供の推進に関する事項
(7) 外来医療に関する事項
(8) 医師及び医療従事者(医師を除く。)の確保に関する事項
(9) 医療の安全の確保に関する事項
(10) 病床の整備を図るべき区域の設定に関する事項
(11) 基準病床数に関する事項
(12) 地域医療支援病院の整備の目標その他医療機能を考慮した医療提供施設の整備の目標に関する事項
(13) その他医療提供体制の確保に関し必要な事項
3 他計画等との関係
医療計画の作成に当たっては、他の法律の規定による計画であって医療の確保に関する事項を定めるものとの調和が保たれるようにするとともに、公衆衛生、薬事、社会福祉その他医療と密接に関連を有する施策との連携を図るよう努めなければならない。
また、医療介護総合確保法に定める総合確保方針及び都道府県計画並びに介護保険法に定める基本方針、都道府県介護保険事業支援計画及び市町村介護保険事業計画並びに予防計画並びに都道府県行動計画との整合性の確保を図らなければならない。
なお、医療の確保に関する内容を含む計画及び医療と密接に関連を有する施策としては、例えば次のようなものが考えられる。また、政策的に関連の深い他の計画に、医療計画に記載するべき事項と同様の内容を記載することが定められている場合には、医療計画上で、これらの計画の対応する箇所を明確に示すことで、具体的な記載に代替することとして差し支えないこと。
(1) 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(令和3年法律第19号)に基づく過疎地域持続的発展計画
(2) 離島振興法(昭和28年法律第72号)に基づく離島振興計画
※ 令和4年11月18日に成立した「離島振興法の一部を改正する法律」(令和4年法律第92号)により、国及び地方公共団体は、離島における医療の充実が図られるよう特別の配慮をすることとされ、当該配慮規定において、遠隔医療が明記されたことに留意すること。
(3) 山村振興法(昭和40年法律第64号)に基づく山村振興計画
(4) 基本方針第十一に掲げる方針等
① 健康増進法(平成14年法律第103号)に定める基本方針及び都道府県健康増進計画
② 高齢者の医療の確保に関する法律に定める医療費適正化基本方針及び都道府県医療費適正化計画
③ 医師の労働時間短縮等に関する指針
④ がん対策基本法(平成18年法律第98号)に定めるがん対策推進基本計画及び都道府県がん対策推進計画
⑤ 健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(平成30年法律第105号)に定める循環器病対策推進基本計画及び都道府県循環器病対策推進計画
⑥ 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律123号)に定める指針
⑦ 肝炎対策基本法(平成21年法律第97号)に定める肝炎対策基本指針
⑧ 難病の患者に対する医療等に関する法律(平成26年法律第50号)に定める基本方針
⑨ アレルギー疾患対策基本法(平成26年法律第98号)に定める基本指針
⑩ 児童福祉法(昭和22年法律第164号)に定める基本的な方針、基本指針及び都道府県障害児福祉計画
⑪ 成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(平成30年法律第104号)に定める成育医療等基本方針
⑫ 自殺対策基本法(平成18年法律第85号)に定める自殺総合対策大綱及び都道府県自殺対策計画
⑬ アルコール健康障害対策基本法(平成25年法律第109号)に定めるアルコール健康障害対策推進基本計画及び都道府県アルコール健康障害対策推進計画
⑭ 歯科口腔保健の推進に関する法律(平成23年法律第95号)に定める基本的事項
⑮ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)に定める基本指針及び都道府県障害福祉計画
4 医療計画の作成体制の整備
各種の調査及び医療計画の作成に当たっては、関係行政機関、医療関係団体等との協議の場を設けるなど関係者の十分な連携の下に進めることが望ましい。特に、5疾病・6事業及び在宅医療に係る医療連携体制については、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者、介護保険法に定める介護サービス事業者、患者・住民その他の地域の関係者による協議を経て構築されることが重要である。
なお、法第30条の9に基づき厚生労働省が予算の範囲内で補助することとしている医療提供体制推進事業費補助金(医療連携体制推進事業)については、前述のような体制整備に活用できるものである。
5 医療計画の名称等
都道府県における医療計画の名称は「○○県医療計画」とすることが望ましいが、法に基づく手続により作成され、法に基づく事項が記載されている計画であれば、例えば「○○県保健医療計画」のような名称のものであっても差し支えなく、また、福祉等他の関連する分野の内容を含む包括的な計画であっても差し支えない。
6 医療計画の期間
医療計画については、3年ごとの中間評価も踏まえ、6年ごとに調査、分析及び評価を行い、必要がある場合、医療計画を変更するものとしている。また、在宅医療、医師の確保及び外来医療に関する事項については、3年ごとに調査、分析及び評価を行い、必要がある場合、医療計画を変更するものとしている。
第3 医療計画の内容
医療計画の内容は概ね次のようなものが想定されるが、その構成を含めた具体的な内容については、都道府県において、基本方針に即して、かつ、それぞれの地域の実情に応じて、定めるものとすること。
ただし、法第30条の4第2項において医療計画の記載事項とされているものについては、必ず記載するものとすること。
1 医療計画の基本的な考え方
医療計画を作成するに当たって、都道府県における基本的な考え方を記載する。
(1) 医療計画作成の趣旨
医療計画に関する根拠法令と作成の趣旨を明示する。
(2) 基本理念
基本方針との整合性に留意の上、都道府県における基本的な理念を記載する。
(3) 医療計画の位置付け
保健、福祉等他の関連する分野の内容を含む包括的な計画を作成している場合には、医療計画との関係を明示する。
(4) 医療計画の期間
計画の対象期間を記載する。なお、基準病床数について計画全体と異なる期間を対象とする場合には、その期間を付記する。
2 地域の現状
医療計画の前提条件となる地域の現状について記載する。その際、医療に関する事項のほか、公衆衛生、薬事及び社会福祉に関する事項並びに社会経済条件等に関する事項を記載することが考えられる。
参考として地域の現状に関する指標として考えられるものを次に示す。
(1) 地勢と交通
地域の特殊性、交通機関の状況、地理的状況、生活圏等
(2) 人口構造(その推移、将来推計を含む。)
人口、年齢三区分人口、高齢化率、世帯数等
(3) 人口動態(その推移、将来推計を含む。)
出生数、死亡数、平均寿命等
(4) 住民の健康状況
生活習慣の状況、生活習慣病の有病者・予備群の数等
(5) 住民の受療状況
入院・外来患者数、二次医療圏(法第30条の4第2項第14号に規定する区域をいう。以下同じ。)又は都道府県内における患者の受療状況(流入患者割合(二次医療圏内の病院の療養病床及び一般病床の推計流入入院患者割合をいう。以下同じ。)及び流出患者割合(二次医療圏内の病院の療養病床及び一般病床の推計流出入院患者割合をいう。以下同じ。)を含む。)、病床利用率、平均在院日数等
(6) 医療提供施設の状況
① 病院(施設数、病床種別ごとの病床数)
② 診療所(有床及び無床診療所、歯科診療所の施設数、有床診療所の病床数)
③ 薬局
④ その他
3 5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれに係る医療連携体制
5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれに係る医療連携体制については、基本方針第四で示された方針に即して、かつ、患者や住民にわかりやすいように記載する。
具体的には、5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれについて、(1)住民の健康状態や患者の状態といった成果(アウトカム)、患者動向や医療資源・連携等の医療提供体制について把握した現状、(2)成果を達成するために必要となる医療機能、(3)課題、数値目標、数値目標を達成するために必要な施策、(4)原則として、各医療機能を担う医療機関等の名称、(5)評価・公表方法等を記載する。
また、記載に当たっては、(6)公的医療機関等及び独法医療機関並びに社会医療法人の役割、(7)病病連携及び病診連携にも留意する。
さらに、特に必要な場合には、関係機関の役割として、(8)歯科医療機関(病院歯科、歯科診療所)の役割、(9)薬局の役割、(10)訪問看護事業所の役割についても記載すること。
(1) 現状の把握
住民の健康状態や患者の状態(成果(アウトカム))、受療動向に関する情報、医療資源・連携等に関する情報に基づき、地域の医療提供体制等の現状を記載する。
また、5疾病・6事業及び在宅医療については、全都道府県共通のストラクチャー・プロセス・アウトカムに分類した指標を用いることで、住民の健康状態、医療提供体制の経年的な比較又は医療圏間の比較や、医療提供体制に関する指標間相互の関連性なども明らかにする。
(2) 必要となる医療機能
例えば、脳卒中の病型ごとの年齢調整死亡率や急性期、回復期から維持期・生活期に至るまでの各病期において求められる医療機能を記載するなど、医療連携体制の構築に必要となる医療機能を、5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれについて明らかにする。
(3) 課題、数値目標、数値目標を達成するために必要な施策
5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれについて、(1)で把握した現状を分析し、地域の医療提供体制の課題を抽出する。第2の3に掲げる各計画等で定められた目標を勘案し、また、目指すべき方向を踏まえて、それぞれの課題を抽出し、さらに地域の実情に応じて、評価可能で具体的な数値目標を定めた上で、数値目標を達成するために必要な施策を記載する。施策の検討に当たっては、課題について原因分析を行い、検討された施策の結果(アウトプット)が課題に対してどれだけの影響(インパクト)をもたらしうるかという観点を踏まえる。その際、各々の施策と解決すべき課題との連関を示すことが重要であり、ロジックモデル等のツールの活用を検討する。
(4) 医療機関等の具体的名称
各医療機能を担う医療機関等については、原則として名称を記載する。
なお、地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの医療機関が複数の機能を担うこともある。
また、医療機関等の名称については、例えば医療連携体制の中で各医療機能を担う医療機関等が圏域内に著しく多数存在する場合にあっては、別途当該医療機関等の名称を表示したホームページのURLを医療計画上に記載する等の方法をとることも差し支えない。
(5) 評価・公表方法等
5疾病・6事業及び在宅医療について、評価・公表方法及び見直しの体制を明らかにする。目標項目の数値の年次推移や施策の進捗状況の把握、評価について、都道府県医療審議会等により定期的に実施し(1年ごとの実施が望ましい。)、目標に対する進捗状況が不十分な場合、その原因を分析した上で、施策及び事業の結果(アウトプット)のみならず、住民の健康状態や患者の状態、地域の医療の質などの成果(アウトカム)にどのような影響(インパクト)を与えたかといった観点から、必要に応じて施策の見直しを図ることが必要である。その際、(3)で用いたロジックモデル等のツールを再度活用することが考えられる。
なお、都道府県医療審議会等において評価等を行うに当たっては、その役割が発揮できるよう、委員の構成(医師、歯科医師、薬剤師、看護師、医療保険者、医療を受ける立場にある者(患者等)、学識経験のある者)及び運営(作業部会の積極的な活用や患者を代表する委員への情報の提供等)について、適切に取り組むこと。
(6) 公的医療機関等及び独法医療機関並びに社会医療法人の役割
公的医療機関等(法第7条の2第1項各号に掲げる者が開設する医療機関をいう。第3の3(6)を除き、以下同じ。)及び医療法施行令第4の6に掲げる独立行政法人(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構及び独立行政法人海技教育機構を除く。国立大学法人法施行令(平成15年政令第478号)第23条第2項において医療法施行令第4条の6で定める独立行政法人とみなして、法第7条の2第7項の規定を準用する国立大学法人を含む。)が開設する医療機関(以下「公的医療機関等及び独法医療機関」という。)の役割や公的医療機関等及び独法医療機関と民間医療機関との役割分担を踏まえ、医療提供施設相互間の機能分担及び業務連携を記載する。
特に、公立病院等の公的医療機関(法第31条に規定する公的医療機関をいう。)については、地域の医療需要等を勘案し、地域の民間医療機関では担うことができない機能に重点化することが重要であることを踏まえ、その役割として求められる救急医療等確保事業(法第30条の4第2項第5号イからヘまでに掲げる事業をいう。以下同じ。)に係る業務の実施状況を病院ごとに明らかにする。
なお、総務省が公表した「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」(令和4年3月29日総財準第72号総務省自治財政局長通知別添)を踏まえ、地域の医療機関との役割分担や連携を十分勘案した上で、公立病院に係る再編・ネットワーク化等との整合性を図るものとする。
また、社会医療法人については、救急医療等確保事業において積極的な役割を図ることとしていることから、認定を受けた事業全てにおいて社会医療法人であることを明確にすることが重要である。
さらに、新興感染症発生・まん延時における医療については、都道府県知事が感染症法に基づき、公的医療機関等(法第7条の2第1項各号に掲げる者が開設する医療機関、独立行政法人国立病院機構、独立行政法人労働者健康安全機構及び国その他の法人が開設する医療機関であって感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則(平成十年十二月二十八日厚生省令第九十九号)で定めるもの並びに地域医療支援病院及び特定機能病院に対し、義務となる新興感染症医療の提供について通知することを踏まえて、地域の実情に応じて、その役割を明らかにすること。
(7) 病病連携及び病診連携
今後、地域における医療提供体制の構築に当たっては、地域医療構想(法第30条の4第2項第7号に規定する地域医療構想をいう。以下同じ。)における病床の機能分化・連携を進めていくこととしており、それぞれの医療機関が地域において果たす役割を踏まえ、地域全体で効率的・効果的な医療提供体制を構築していくことが必要である。医療計画においては、急性期から回復期・慢性期までの切れ目ない連携体制の構築に取り組むことや、疾病予防・介護予防まで含めた体制の構築を進めていくことから、病病連携及び病診連携を、より一層進めることが必要となる。
なお、病病連携や病診連携など、医療機関及び関係機関との連携に当たって、効率的に患者の診療情報等を共有するため、情報通信技術(ICT)の活用も含めた検討を行うこと。
地域における診療所については、新興感染症医療を行うことができる場合は可能な限り感染症法に基づく協定を締結し、また、新興感染症医療以外の通常医療を担う診療所も含め、日頃から患者のことをよく知る医師、診療所等と、新興感染症医療を担う医療機関が連携することが重要である。そのため、全ての医療機関は当該協定締結の協議に応じる義務があるところ、都道府県は、当該協定の締結に先立つ調査や協議も活用しながら、地域における新興感染症医療と通常医療の役割を確認し、連携を促すこと。
なお、地域の診療所が新興感染症医療以外の通常医療を担っている場合は、患者からの相談に応じ発熱外来等の適切な受診先の案内に努めること。その際は、当該患者に対して、自身の基礎疾患等や、受けている治療内容、当該診療所での受診歴などの情報を当該受診先に伝えることや、お薬手帳を活用することなど助言すること。また、当該受診先は、オンライン資格確認等システム等を活用して、マイナンバーカードを持参した患者の同意を得て、診療・薬剤情報等を確認することにより、より正確な情報に基づいた当該患者に合った医療を提供することが可能となること。
(8) 歯科医療機関(病院歯科、歯科診療所)の役割
地域包括ケアシステムの構築を進める上で、歯科医療機関は地域の医療機関等との連携を推進する等、地域の実情を踏まえた取組を行うことが重要である。特に、近年は、口腔の管理が誤嚥性肺炎の発症予防につながるなど、口腔と全身との関係について広く指摘されていることから、各医療連携体制の構築に当たって、歯科医療や歯科医療従事者が果たす役割を明示するとともに、入院患者や在宅等で療養を行う患者に対する医科歯科連携等を更に推進することが必要となる。
(9) 薬局の役割
地域において安全で質の高い医療を提供するためには、薬物療法についても入院から外来・在宅医療へ移行する中で円滑に提供し続ける体制を構築することが重要である。このため、地域の薬局では、医薬品等の供給体制の確保に加え、医療機関等と連携した患者の服薬情報の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導、入退院時における医療機関等との連携、夜間・休日等の調剤や電話相談への対応等の役割を果たすことが必要となる。
(10) 訪問看護事業所の役割
住み慣れた地域で安心して健やかに暮らすためには、24時間切れ目のない医療サービスが提供されるとともに、医療機関と居宅等との間で、療養の場が円滑に移行できることが必要である。そのため、在宅において、患者の医療処置や療養生活の支援等のサービスを提供する訪問看護事業所の役割は、重要である。高齢多死社会を迎え、特に今後は在宅においても、看取りや重症度の高い利用者へ対応できるよう、訪問看護事業所間や関係機関との連携強化、訪問看護事業所の事業者規模の拡大等の機能強化、情報通信機器の活用等による業務効率化等による安定的な訪問看護サービスの提供体制の整備が必要である。また、日常的に医療を必要とする小児患者への対応についても、医療・福祉サービスを提供する関係機関との連携を強化するなど充実を図ることが必要である。
4 疾病の発生状況等に照らして都道府県知事が特に必要と認める医療
5疾病・6事業以外で都道府県における疾病の発生の状況等に照らして、都道府県知事が特に必要と認める医療について明記すること。
5 地域医療構想の取組
地域医療構想の策定並びに病床の機能の分化及び連携の推進に当たっては、別添の「地域医療構想策定ガイドライン」(平成27年3月31日付け医政発0331第53号厚生労働省医政局長通知別添1)及び「地域医療構想の推進について」(平成30年2月7日付け医政発0207第1号厚生労働省医政局地域医療計画課長通知)等を踏まえること。
6 外来医療に係る医療提供体制の確保
外来医療計画の策定並びに地域における外来医療に係る病院及び診療所の機能の分化及び連携の推進に当たっては、外来医療に係る外来医療提供体制の確保に関するガイドライン(平成31年3月29日付け医政地発0329第3号・医政医発0329第6号厚生労働省医政局地域医療計画課長・医事課長通知別添)を踏まえること。
7 医師の確保及び医療従事者(医師を除く。)の確保
医師及び医療従事者の確保に関する事項については、医療連携体制を構築する取組自体が偏在解消への対策になること、地域医療構想における医療機関の再編・統合等の方針によっても地域でどの程度医師及び医療従事者を確保すべきかが左右されること及び都道府県が中心となって医師を地域の医療機関へ派遣する仕組みの再構築が求められていることを踏まえ、法第30条の23第1項の規定に基づく医療従事者の確保に関する事項に関し、必要な施策を定めるための協議会(以下「地域医療対策協議会」という。)を開催し、当該協議会において決定した具体的な施策を記載する。
(1) 医師の確保について
医師の確保については、医師確保計画策定ガイドライン(平成31年3月29日付け医政地発0329第3号・医政医発0329第6号厚生労働省医政局地域医療計画課長・医事課長通知別添)を踏まえて計画の策定及び実施を行うこと。
(2) 医師以外の医療従事者の確保について
医師以外の医療従事者、例えば以下の職種についても、必要に応じて、その資質向上に関する事項を含め、医療従事者の確保の現状及び目標について、可能な限り具体的に記載する。
【医療従事者の現状及び目標】
① 歯科医師
② 薬剤師
③ 看護職員(保健師・助産師・看護師(特定行為研修を修了した看護師を含む。)・准看護師)
④ その他の保健医療従事者
診療放射線技師、臨床検査技師・衛生検査技師、理学療法士・作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、歯科衛生士、歯科技工士、管理栄養士等
⑤ 介護サービス従事者
特に、歯科医師、薬剤師及び看護職員に関する記載に当たっては、以下の観点を踏まえること。
ア 歯科医師については、口腔と全身の関係について広く指摘されている観点を踏まえ、医科歯科連携を更に推進するために病院における歯科の役割をより明確化することが望ましい。具体的には、地域における歯科医療従事者の配置状況の把握を行った上で、医科歯科連携における歯科の果たす役割を認識し、病院の規模や機能に応じて地域の歯科医療従事者を病院において活用することや、病院と歯科診療所等の連携を推進することなど、地域の実情を踏まえた取組を推進すること等が考えられる。また、地域医療介護総合確保基金を積極的に活用し、それらの取組をさらに推進すること。
イ 薬剤師については、地域医療における薬物療法の有効性・安全性の確保や公衆衛生の向上及び増進等に資するため、調剤等の業務に加え、病院薬剤師にあっては病棟薬剤業務やチーム医療等、薬局薬剤師にあっては在宅医療や高度な薬学的管理を行う機能等を中心とした業務・役割の更なる充実が求められている。薬剤師の従事先には業態の偏在や地域偏在があり、特に病院薬剤師の不足が喫緊の課題となっていることも踏まえ、必要な薬剤師の確保を図るため、病院及び薬局それぞれにおける薬剤師の就労状況を把握し、地域医療介護総合確保基金(修学資金貸与、医療機関への薬剤師派遣等)の積極的な活用を含め、地域の実情に応じた薬剤師の確保策について、可能な限り具体的に記載すること。確保策の検討及び実施に当たっては、都道府県の薬務主管課及び医務主管課並びに都道府県薬剤師会等の関係団体が連携して取り組むこと。特に、病院薬剤師の確保策の検討及び実施については、都道府県病院薬剤師会とも連携の上取り組むこと。
また、その資質向上のために、「患者のための薬局ビジョン」(平成27年10月23日付け薬生総発1023第3号厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長通知)を踏まえ、最新の医療及び医薬品等に関する専門的情報の習得を基礎としつつ、患者・住民とのコミュニケーション能力の向上に資する研修及び医療機関等との連携強化につながる多職種と共同で実施する研修等が行われるよう、研修実施状況を把握し、関係者間の調整を行うこと。
ウ 看護職員については、その確保に向けて、都道府県ナースセンター等の関係者との連携に基づき、都道府県・二次医療圏ごとの課題を把握し、看護師等養成所による養成、「マイナンバー制度を活用した看護職の人材活用システム」や看護師等の離職届出を活用した都道府県ナースセンターによる復職支援、医療機関の勤務環境改善による離職防止など、新規養成・復職支援・定着促進を三本柱とした取組を推進していくこと。
また、地域における訪問看護の需要の増大に対応するため、地域の実情を踏まえて、地域医療介護総合確保基金の活用や都道府県ナースセンターにおける取組の充実など、訪問看護に従事する看護職員を確保するための方策を記載すること。
あわせて、看護師については、在宅医療等を支える看護師や感染症の発生・まん延時に迅速かつ的確に対応できる看護師を地域で計画的に養成していくため、地域の実情を踏まえ、看護師が特定行為研修(保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第37条の2第2項第4号に規定する特定行為研修をいう。)を地域で受講できるよう、指定研修機関及び実習を行う協力施設の確保等の研修体制の整備に向けた計画について、具体的に記載すること。また、特定行為研修修了者その他の専門性の高い看護師の就業者数の目標を記載すること。なお、これらの目標数を設定する際には、可能な限り二次医療圏ごとや分野・領域別の設定を検討すること。
8 医療の安全の確保
医療提供施設及び医療安全支援センターの現状及び目標について、(1)及び(2)により記載すること。なお、記載に当たっては、以下の事項に留意すること。
・ 地域の患者や住民がわかりやすく理解できるよう医療計画に記載すること。
・ その際、都道府県は、保健所を設置する市及び特別区の協力のもと、医療事故(医療法第6条の10第1項に規定する医療事故をいう。)が発生した場合の対応に関する取組等を含む医療提供施設における医療安全を確保するための取組状況を把握し、都道府県が講ずる医療安全に関する情報の提供、研修の実施、意識の啓発等の現状及びその目標を計画に明示すること。
・ また、住民の身近な地域において、患者又はその家族からの医療に関する苦情、相談に対応し、必要に応じて医療提供施設に対して必要な助言を行う体制等を構築するため、都道府県における医療安全支援センターの設置状況及びその目標についても計画に明示すること。
・ 病院における高度な医療機器の配置状況及び稼働状況等を確認し、保守点検を含めた評価を実施すること。
・ CT、MRI等の医療機器を有する診療所に対する当該機器の保守点検を含めた医療安全の取組状況の定期的な報告を求めること。
(1) 医療提供施設における医療の安全を確保するための措置に関する現状及び目標
① 病院、一般診療所、歯科診療所及び助産所ごとの総数に対する医療安全管理者を配置している医療施設数の割合
② 病院の総数に対する専従又は専任の医療安全管理者を配置している病院数の割合
③ 病院、一般診療所、歯科診療所及び助産所ごとの総数に対する医療安全に関する相談窓口を設置している医療施設数の割合
④ 病院、一般診療所、歯科診療所及び助産所ごとの総数に対する、医療事故調査制度に関する研修(医療事故調査・支援センター又は支援団体等連絡協議会が開催するもの(委託して行うものを含む。)に限る。)を管理者が受講した医療施設数の割合
⑤ 病院の総数に対する、他の病院から医療安全対策に関して評価を受けている又は第三者評価(公益財団法人日本医療機能評価機構が実施する病院機能評価、Joint Commission Internationalが実施するJCI認証による評価及びISO規格に基づくISO 9001認証による評価に限る。)を受審している病院数の割合
(2) 医療安全支援センターの現状及び目標
記載に当たっては、「医療安全支援センターの実施について」(平成19年3月30日付け医政発第0330036号厚生労働省医政局長通知)を参考に、次の事項について記載すること。
① 二次医療圏の総数に対する医療安全支援センターを設置している二次医療圏数の割合
② 相談職員(常勤換算)の配置数
③ 相談職員の総数に対する、医療安全支援センター総合支援事業が実施する研修を受講した相談職員数の割合
④ ホームページ、広報等による都道府県、二次医療圏、保健所設置市及び特別区における医療安全支援センターの活動状況に関する情報提供の状況
⑤ 都道府県、二次医療圏、保健所設置市及び特別区における、医療従事者に対し医療安全に関する研修を実施している医療安全支援センターの割合
⑥ 都道府県、二次医療圏、保健所設置市及び特別区における、患者・住民に対する医療安全推進のための意識啓発活動の実施状況
⑦ 都道府県、二次医療圏、保健所設置市及び特別区における医療安全推進協議会の設置・開催状況
9 基準病床数
(1) 療養病床及び一般病床
療養病床及び一般病床に係る基準病床数については、二次医療圏ごとに、規則第30条の30第1号に規定する算定式に基づいて算定すること。
なお、全国平均で9割以上の患者が、居住する都道府県内において、入院加療を受けている現状を鑑み、特に必要とする場合にのみ、都道府県間で調整を行うことができることとする。その際、基準病床数の算定にあたっては、医療機関の所在地に基づいた値を用いること。
(2) 精神病床、結核病床及び感染症病床
精神病床に係る基準病床数、結核病床に係る基準病床数及び感染症病床に係る基準病床数については、都道府県の区域ごとに、規則第30条の30第2号から第4号に規定する算定式に基づいて算定すること。
なお、法第30条の4第2項第15号に規定する区域(以下「三次医療圏」という。)が1都道府県において2以上設定された場合においても、基準病床数については当該都道府県全体について定めること。
(3) 各区域における入院患者の流出入数の算出
各区域における入院患者の流出入数の算出に当たり、病院に対して特に報告の提出を求める場合には、医療計画作成の趣旨等を調査対象となる病院に十分説明の上、円滑な事務処理が行われるよう配慮すること。
(4) 基準病床数の算定の特例
各区域の急激な人口の増加が見込まれること等、医療法施行令第5条の2で定める事情があるときは、都道府県知事が厚生労働大臣と協議し同意を得た数等を基準病床数とすることができること。
(5) 都道府県知事の勧告
(1)から(3)までにより基準病床数が算定された後は、各区域において病院の開設、病床数の増加若しくは病床の種別の変更、又は診療所の病床の設置若しくは診療所の病床数の増加の許可の申請(以下「許可申請等」という。)があった場合において、当該区域の既存病床数が基準病床数を超えている場合又は許可申請等により病床数が基準病床数を超えることになる場合には、法第30条の11の規定に基づく都道府県知事の勧告(公的医療機関等が開設等する病院等については法第7条の2第1項の規定に基づく不許可処分)の対象となり得ること。
10 医療提供施設の整備の目標
地域医療支援病院は、医療施設機能の体系化の一環として、医師の少ない地域を支援する役割を担い、紹介患者に対する医療提供、医療機器等の共同利用の実施、地域の医療従事者の資質の向上を図るための研修等を通じてかかりつけ医、かかりつけ歯科医等を支援する能力を備え、地域医療の確保を図る病院として相応しい構造設備等を有するものとして都道府県知事が承認する病院である。
かかりつけ医等への支援を通じた地域医療の体系化と地域医療支援病院の整備目標について、次の機能及び地域の実情を考慮し検討を行う。
① かかりつけ医等からの紹介等、病診連携体制
② 共同利用の状況
③ 救急医療体制
④ 医療従事者に対する生涯教育等、その資質向上を図るための研修体制
また、規則第9条の19第1項第2号の規定に基づき、地域における医療の確保を図るために当該病院が行うことが特に必要であるものとして都道府県知事が定める事項については、医療計画の策定及び見直しの際に必要に応じて見直しを行い、公表すること。また、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第96号)による感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の改正により、地域医療支援病院に感染症の発生・まん延時に担うべき医療の提供が義務付けられることとされたことを踏まえ、地域医療支援病院の整備の目標を定める際には、医療計画における感染症の発生・まん延時の対応に関する事項との連携に留意すること。さらに、地域医療支援病院は、紹介患者への対応等、紹介受診重点医療機関にも該当しうる機能を有することから、外来医療に係る医療提供体制の確保との関係についても留意すること。それらの結果を踏まえ、必要に応じて地域医療支援病院の整備目標(例えば二次医療圏ごとに整備する等)を設定すること。
なお、地域医療支援病院を整備しない二次医療圏にあっては、医療機関相互の機能分担及び業務連携等の充実を図ることが重要である。
11 その他医療を提供する体制の確保に関し必要な事項
5疾病・6事業及び在宅医療以外の疾病等について、その患者動向や医療資源等について現状を把握した上で、都道府県における疾病等の状況に照らして特に必要と認める医療等については、次の事項を考慮して、記載すること。
また、各疾病等に対する医療を担う医療機関等の名称も記載するよう努めること。
(1) 障害保健対策
① 障害者(高次脳機能障害者、発達障害者を含む。)に対する医療の確保等(都道府県の専門医療機関の確保、関係機関との連携体制の整備等)に関する取組
② 相談等の連絡先
(2) 結核・感染症対策
① 結核対策、感染症対策に係る各医療提供施設の役割
② インフルエンザ、エイズ、肝炎などの取組
(3) 移植医療対策(臓器移植、造血幹細胞移植)
① 都道府県の取組
② 相談等の連絡先
(4) 難病等対策
① リウマチなどの都道府県の取組
② 相談等の連絡先
(5) アレルギー疾患対策
① 都道府県の取組
② 相談等の連絡先
(6) 慢性閉塞性肺疾患(COPD)対策
① 都道府県の取組
② 相談等の連絡先
(7) 慢性腎臓病(CKD)対策
① 都道府県の取組
② 相談等の連絡先
(8) 今後高齢化に伴い増加する疾患等対策
① ロコモティブシンドローム、フレイル等対策
ア ロコモティブシンドローム、フレイル、大腿骨頚部骨折対策の重要性
イ ロコモティブシンドローム、フレイル、大腿骨頚部骨折対策について、予防、医療、介護の総合的な取組
② 誤嚥性肺炎などの都道府県の取組
(9) 歯科保健医療対策
① 都道府県の取組
② 相談等の連絡先
(10) 血液の確保・適正使用対策
① 都道府県の取組
② 相談等の連絡先
(11) 医薬品等の適正使用対策
① 都道府県の取組
② 相談等の連絡先
③ 治験の実施状況や医薬品提供体制
(12) 医療に関する情報化
① 医療提供施設の情報システム(電子レセプト、カルテ等)の普及状況と取組
② 情報通信技術(ICT)を活用した医療機関及び関係機関相互の情報共有への取組(情報セキュリティ対策を含む。)
(13) 保健・医療・介護(福祉)の総合的な取組
地域の医療提供体制の確保に当たっては、疾病予防から治療、介護までのニーズに応じた多様なサービスが地域において切れ目なく一貫して提供される、患者本位の医療の確立を基本とすべきである。
このため、疾病予防、介護、公衆衛生、薬事、社会福祉その他医療と密接に関連を有する施策について、連携方策や地域住民への情報提供体制を記載すること。
なお、医療と密接に関連を有する施策としては、第2の3に掲げる計画等が挙げられること。
12 施策の評価及び見直し
施策の実施状況については、都道府県は、設定した数値目標等を基に、施策の達成状況を検証し、次の医療計画の見直しに反映させることが求められる。その際、学識経験者の協力を得て分析等を実施することも検討する。
法第30条の6に基づいて行う施策の評価及び見直しについては、次に掲げる項目をあらかじめ医療計画に記載する。
(1) 施策の目標等
5疾病・6事業及び在宅医療の医療連携体制に係る数値目標等
(2) 推進体制と役割
施策の目標を達成するための推進体制及び関係者の責務と役割
(3) 目標の達成に要する期間
(4) 目標を達成するための方策
(5) 評価及び見直し
(6) 進捗状況及び評価結果の広報・周知方法
第4 医療計画作成の手順等
都道府県が医療計画を作成する際、技術的見地からみて全国に共通すると考えられる手順等を参考までに示す。
1 医療計画作成手順の概要
医療計画の作成等に当たっては、概ね次の手順が考えられる。
(1) 医療計画(案)を作成するための体制の整備(第2の4参照)
(2) 医療計画の目的、基本理念についての検討及び医療計画の基本骨子についての検討
(3) 現行の医療計画に基づき実施された施策の効果の検証
(4) 医療圏及び基準病床数の検討
(5) 5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれに係る医療連携体制の構築に当たっての課題や数値目標、施策についての検討
(6) 5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれに係る医療連携体制の構築についての検討
(7) 地域医療構想の策定並びに病床の機能の分化及び連携の推進に関する施策の検討
(8) 外来医療に係る医療提供体制の確保についての検討
(9) 医師の確保及び医療従事者(医師を除く。)の確保についての検討
(10) 医療の安全の確保その他の必要な事項についての検討
(11) 以上の検討を踏まえた医療計画(試案)の作成
(12) 診療又は調剤に関する学識経験者の団体(医師会、歯科医師会及び薬剤師会)から医療計画(試案)についての意見の聴取(必要に応じ試案の手直し)
(13) 医療計画(案)の決定
(14) 医療計画(案)についての市町村及び保険者協議会の意見聴取(必要に応じ医療計画(案)の手直し)
(15) 医療計画(案)について都道府県医療審議会への諮問、答申
(16) 医療計画の決定
(17) 医療計画の厚生労働大臣への提出及び公示
※ 医療計画の内容のうち必要な情報については、住民向けの概要版の作成や用語の解説を加える等の工夫を行い、分かりやすい形で住民に対して情報提供を行うことに努める。その際、限られた医療資源を有効に使う観点から地域の医療提供体制の課題や見通しなどを示し、住民の理解・協力を得られるよう努めること。
2 医療圏の設定方法
(1) 二次医療圏の設定に当たっては、地理的条件等の自然的条件及び日常生活の需要の充足状態、交通事情等の社会的条件を考慮して一体の区域として病院における入院に係る医療(三次医療圏で提供することが適当と考えられるものを除く。)を提供する体制の確保を図ることが相当であると認められる区域を単位として認定することとなるが、その際に参考となる事項を次に示す。
① 人口構造、患者の受療の状況(流入患者割合及び流出患者割合を含む。)、医療提供施設の分布など、健康に関する需要と保健医療の供給に関する基礎的事項については、二次医療圏単位又は市町村単位で地図上に表示することなどを検討すること。また、人口規模が100万人以上の二次医療圏については、構想区域としての運用に課題が生じている場合が多いことを踏まえ、必要に応じて区域の設定の見直しについて検討するとともに、地域医療構想調整会議について、構想区域内をさらに細分化した地域や地域の医療課題等の協議項目ごとに分けて開催するなど運用上の工夫を行うこと。なお、患者の受療状況の把握については、患者調査の利用の他、統計学的に有意な方法による諸調査を実施することが望ましい。
人口規模が20万人未満の二次医療圏については、入院に係る医療を提供する一体の区域として成り立っていないと考えられる場合(特に、流入患者割合が20%未満であり、流出患者割合が20%以上である場合)、その設定の見直しについて検討すること。なお、設定の見直しを検討する際は、二次医療圏の面積や基幹となる病院までのアクセスの時間等も考慮することが必要である。
また、設定を変更しない場合には、その理由(地理的条件、当該圏域の面積、地理的アクセス等)を明記すること。
② 既存の圏域、すなわち、広域市町村圏、保健所・福祉事務所等都道府県の行政機関の管轄区域、学校区(特に高等学校に係る区域)等に関する資料を参考とすること。
③ 構想区域に二次医療圏を合わせることが適当であること。
(2) 5疾病・6事業及び在宅医療のそれぞれに係る医療連携体制を構築する際の圏域については、従来の二次医療圏に拘らず、患者の移動状況や地域の医療資源等の実情に応じて弾力的に設定すること。
(3) 三次医療圏については、概ね一都道府県の区域を単位として設定するが、その区域が特に広大であることその他特別の事情がある都道府県にあっては、一都道府県内に複数の三次医療圏を設定しても差し支えない。
また、一般的に三次医療圏で提供することが適当と考えられる医療としては、例えば、特殊な診断又は治療を必要とする次のものが考えられること。
① 臓器移植等の先進的技術を必要とする医療
② 高圧酸素療法等特殊な医療機器の使用を必要とする医療
③ 先天性胆道閉鎖症等発生頻度が低い疾病に関する医療
④ 広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特に専門性の高い救急医療
(4) 都道府県の境界周辺の地域における医療の需給の実情に照らし、隣接する都道府県の区域を含めた医療圏を設定することが地域の実情に合い、合理的である場合には、各都道府県の計画にその旨を明記の上、複数の都道府県にまたがった医療圏を設定しても差し支えない。
なお、その際には、関係都道府県間での十分な協議や調整を行うとともに必要に応じ厚生労働省にも連絡されたい。
また、隣接する都道府県の区域を含めた医療圏の設定を行わない場合であっても、医療提供体制の構築において隣接する都道府県と連携を取る場合は、当該連携を行う都道府県と協議を行い、具体的な内容を医療計画へ記載するよう努めること。
(5) 医療圏の設定については、二次医療圏が外来医療計画及び医師確保計画における施策の単位とされていることも踏まえ、医療計画の策定において先行して議論を行い、設定を変更する場合は、その検討状況を先んじて国に報告すること。
3 基準病床数の算定方法
(1) 基準病床数の算定方法
基準病床数の算定は、次に掲げる方式によること(規則第30条の30)。
① 療養病床及び一般病床に係る基準病床数は、アの算定式により算出した数と、イの算定式により算出した数に、ウにより算定した数を加減した数の合計数を標準とする。
ア 療養病床
{(当該区域の性別及び年齢階級別人口)×(全国平均の性別及び年齢階級別療養病床入院受療率)の総和-(介護施設及び在宅医療等で対応可能な数)+(0~当該区域への他区域からの流入入院患者数の範囲内で知事が定める数)-(0~当該区域から他区域への流出入院患者数の範囲内で知事が定める数)}×(1/病床利用率)
イ 一般病床
{(当該区域の性別及び年齢階級別人口)×(当該区域の性別及び年齢階級別一般病床退院率)の総和×平均在院日数+(0~当該区域への他区域からの流入入院患者数の範囲内で知事が定める数)-(0~当該区域から他区域への流出入院患者数の範囲内で知事が定める数)}×(1/病床利用率)
ウ 基準病床数の都道府県間調整について
なお、当該都道府県において、都道府県外への流出入院患者数が都道府県内への流入入院患者数よりも多い場合は、流出先都道府県との調整協議を行った上で、都道府県間を超える患者の流出入について、合意を得た数を各二次医療圏の基準病床数に加減することができる。
ただし、アからウにより二次医療圏ごとに算定した病床数の都道府県における合計数は、
{(当該区域の性別及び年齢階級別人口)×(全国平均の性別及び年齢階級別療養病床入院受療率)の総和-(介護施設及び在宅医療等で対応可能な数)}×(1/病床利用率)+{(当該区域の性別及び年齢階級別人口)×(当該区域の性別及び年齢階級別一般病床退院率)の総和×平均在院日数}×(1/病床利用率)及びウにより二次医療圏ごとに算定した病床数の都道府県における合計数を超えることはできない。
(注1) 「人口」とは、医療計画作成時における夜間人口をいう。その数値については、国勢調査の結果による人口、地方公共団体の人口に関する公式統計による人口等のうち最近のものによることとする。
(注2) 「年齢階級」とは、5歳ごとの年齢による階級である。
(注3) 「全国平均の性別及び年齢階級別療養病床入院受療率」とは、厚生労働大臣が定める療養病床の性別及び年齢階級別の入院受療率を上限とし、策定した地域医療構想における慢性期機能の病床数の必要量を勘案して、都道府県知事が定める値とする。
(注4) 「介護施設及び在宅医療等で対応可能な数」とは、地域医療構想に定める「構想区域における将来の居宅等における医療の必要量」のうちの以下の数の合計数から、令和11年度末時点における以下の数の合計数に相当する数を比例的に推計した数とする。
(i) 慢性期入院患者のうち当該構想区域に住所を有する者であって、医療区分Ⅰである患者の数の70%に相当する数。
(ii) 慢性期入院患者のうち当該構想区域に住所を有する者であって、入院受療率の地域差を解消していくことで在宅医療等の医療需要として推計する患者の数((i)に掲げる数を除く。)。
(注5) 「当該区域の性別及び年齢階級別一般病床退院率」とは、地方ブロックの性別及び年齢階級別の退院率をいう。
(注6) 「病床利用率」とは、厚生労働大臣が定める療養病床又は一般病床の病床利用率について、各都道府県における療養病床又は一般病床の直近の病床利用率を下回る場合は、厚生労働大臣が定める療養病床又は一般病床の病床利用率以上当該地域の直近の療養病床又は一般病床の病床利用率の範囲内で、都道府県知事が当該都道府県の状況を勘案して定める値とする。
なお、「当該地域の直近の療養病床又は一般病床の病床利用率」は、原則、入手可能な最新のものであるが、新型コロナウイルス感染症の影響により、最新のデータをそのまま使うことが妥当ではない場合も考えられることから、そのような場合には、新型コロナウイルス感染症の影響を受けていない「令和元年の病床利用率」又は「平成28年から令和元年の病床利用率の平均」を用いることも差し支えないものとする。
(注7) 「療養病床入院受療率」、「一般病床退院率」、「病床利用率」及び「平均在院日数」として使用する(参考とする)数値については、法第30条の4第2項第17号の療養病床及び一般病床に係る基準病床数の算定に使用する数値等(昭和61年厚生省告示第165号)により定められている。
(注8) 各区域における流入入院患者数については、都道府県知事が当該区域における医療の確保のために必要と認める事情があるときは、当該区域ごとの数を超えて、当該事情を勘案した数を加えることができる。
(注9) 各区域における流入流出入院患者数については、患者調査、国民健康保険等のレセプト調査等により把握する。
(備考) 「地方ブロック」とは、以下の9ブロックをいう。