○一般社団法人日本衛生材料工業連合会の作成した月経用(生理用)カップ自主基準について
(令和5年3月23日)
(事務連絡)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課通知)
膣内に留置し経血の回収に用いる再使用可能なカップ状の器具、いわゆる月経用(生理用)カップについては、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第7項の「一般医療機器」に該当し、生理用タンポンとして取り扱われています。
今般、一般社団法人日本衛生材料工業連合会より、生理用タンポンの定義に含まれる月経用(生理用)カップの自主基準(別紙)を作成した旨の報告を受けたところ、内容が適当と認められました。月経用(生理用)カップの製造販売届出を行う際には、本自主基準を参考とするよう、貴管下製造販売業者に対し、周知方よろしくお願いいたします。
月経用(生理用)カップ自主基準
令和4年2月8日
(一社)日本衛生材料工業連合会
目次
項目
1.適用範囲
2.引用規格
3.定義
4.構成
5.物理的要求事項
6.化学的要求事項
7.生物学的要求事項
8.安定性に関する要求事項
9.外包装・容器
10.表示(外包装・容器への表示)
11.添付文書
別紙
12.添付文書への記載例
附属書1
13.「月経用(生理用)カップの図」
附属書2
14.「カップ容量の測定」
月経用(生理用)カップ自主基準
1.適用範囲
この基準は、月経若しくは他の腟分泌物を回収するために腟口に挿入する合成素材でできたカップ状の詰め物(以下「カップ」という)を対象とする。
2.引用規格
この基準は下記規格又は基準を引用する。
・日本薬局方(令和3年6月7日 厚生労働省告示第220号 第十八改正)
・医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方についての改正について(令和2年1月6日薬生機審発0106第1号)
3.定義
3.1 カップ部
合成樹脂をカップ形状等に成型したもので、腟内の経血及び腟分泌物を収集するための収集部をいう。また、カップ部の上部には、カップの挿入及び取り出しを容易にするための貫通孔(空気孔)やカップ底部と連結した補助部を有しているものもある。
3.2 補助部(呼称:ステム、リング、他)
カップを腟内に挿入及び腟内から取り出す際の作用補助する部分をいう。カップ底部と連結した棒型及びリング型や球型などの形状がある。
3.3 製品タイプ
カップの大きさは、使用者の腟状態や経血量を考慮し、S(Small)、M(Medium)、L(Large)、XL(Extra Large)のサイズに分類され、それぞれのカップの収集の容量が設定される。なお、カップ本体の材質の違いによる柔らかさや弾性、カップの容量や補助部の有無など、多様な種類が存在する。
3.3 外包装・容器
カップ本体を入れる包装・容器をいう。より衛生性を高めるため「内袋」としてカップ本体を直接に覆う内包装に入れたものを外包装に入れても良い。
4.構成
月経用(生理用)カップは、カップ部を有する。また、カップを腟内への挿入及び腟内からの取り出しを容易にするために、カップ上部に貫通孔(空気孔)及びカップ部と連結する補助部を有しているものもある。(カップの形態の例を、附属書1「月経用(生理用)カップ図」に示した。)なお、月経用(生理用)カップの原料は、医療用シリコーン、医療用エラストマー(TPEなど)などが該当する。
5.物理的要求事項
本品は、次に掲げる事項に適合しなければならない。
5.1 外観
目視で検査するとき、透明又は半透明並びに有色で、材料由来以外の臭い及び鋭利な角や突起物等がなく、外観に異物の付着及び汚染がないこと。
5.2 カップ寸法
カップ寸法を測定するとき、カップ部長さ及びカップ部直径は、いずれの箇所においても以下の範囲内であり、機器ごとに設定された寸法規格の許容差±3mm以内であること。
単位:mm
S(Small) |
M(Medium) |
L(Large) |
XL(Extra Large) |
|
カップ部長さ (補助部除く) |
35~60 |
|||
カップ部直径 |
40~50 |
5.3 カップ容量
附属書2「カップ容量の測定」に従ってその容量を測定するとき、容量は以下の範囲内であり、表示された容量規格の許容差±3mL以内であること。
製品タイプと容量範囲
単位:mL
製品タイプ |
S(Small) |
M(Medium) |
L(Large) |
XL(Extra Large) |
容量 |
10~50 |
注) 製品タイプ及び容量の表示
月経カップの購入者が誤解無く機器を選べるようにするため、外包装・容器の見え易いところに設定された【製品タイプ】(サイズ並びに容量(mL))を必ず表示すること。
6.化学的要求事項
本品は、次に掲げる事項に適合しなければならない。
6.1 色素(有色原材料又は着色料を含有した原材料を使用したときに限る)
カップを10倍量(質量)の新たに煮沸し冷却した精製水に浸し、5分間かき混ぜた後、ろ過し、ろ液10mLを内径15mmの試験管に入れ、上方より観察するとき、ほとんど呈色しない。
6.2 酸及びアルカリ
6.1の方法により採取したろ液は次に掲げる試験(第1法又は第2法)に適合すること。
第1法:ろ液10mLをとり、フェノールフタレイン試液2滴を加えるとき、紅色を呈しない。また、別に同液10mLをとり、これにメチルオレンジ試液1滴を加えるとき、赤色を呈しない。
第2法:ろ液10mLをとりpHメーターを用いて計測するとき、そのpHの値は3.1より大きく、9.8より小さい。
7.生物学的要求事項
粘膜に接触する材料を特定し、その生物学的安全性について「医療機器の生物学的安全性評価の基本的考え方」に基づいて、評価すること。なお、既存の医療機器に用いられる材料と比較し明らかに同等性が示せるもの、最終製品及び/又は製品からの溶出化学物質とその溶出量を分析し、毒性学的情報に基づいた摂取許容値との対比により生物学的安全性が確保できる場合には、必ずしも生物学的安全性試験を実施する必要はない。
細胞毒性試験 |
ISO 10993―5に従う |
刺激性試験(腟粘膜刺激試験) |
ISO 10993―10又はISO 10993―12に従う |
感作性試験 |
ISO 10993―10又はISO 10993―12に従う |
急性全身毒性 |
ISO 10993―11に従う |
亜急性全身毒性 |
ISO 10993―11に従う |
埋植 |
ISO 10993―6に従う |
8.安定性に関する要求事項
本体の材料に新規性のある場合は、製品安定性試験を実施し、評価すること。
9.外包装・容器
外包装・容器は、通常の取扱い、輸送、保管中に内容製品を保護するためのものであること。
内包装は、更なる衛生を高めるものであり、その使用の有無を制限するものではないこと。
10.表示(外包装・容器への表示)
外包装・容器又は外包装・容器から内包装の表記が見える位置に次の情報を表示すること。
(1) 製造販売業者の氏名又は名称及び住所
(2) 販売名
(3) 数量(入り数)
(4) 製造番号又は製造記号
(5) 一般医療機器の旨
(6) TSSに関する注意表示
「安全にお使いいただくために、ご使用前に添付文書を必ずお読みください。トキシックショック症候群(TSS)に関する重要なことが書かれてあります。」と記載すること。
(7) 製品のタイプ【サイズ及び容量(mL)】を記載すること。
11.添付文書
医療機器の添付文書の記載要領については、平成26年10月2日薬食発1002第8号通知及び平成26年10月2日薬食安発1002第1号通知を参照し添付文書を作成すること。添付文書には先の記載要領に示された内容に次の内容を追加して記載すること。
(1) 【警告】及び【禁止・禁忌】
TSSに関する情報を含め、下記事項は必ず添付文書の冒頭に記載すること。
【警告】に関して
・TSSが重篤な疾病であること。
・TSSの症状。
・TSSの可能性があるような症状があったときは、すぐに、月経カップを取り除き、医師の診療を受けるように促すこと。
【禁止・禁忌】に関して
・過去にTSS(トキシックショック症候群)を発症したことがある人は、使用しないこと。
・腟内や腟口に傷、痛み、かゆみなどがある場合、腟炎に感染している場合には使用しないこと。
(2) 形状・構造及び原理等
本品の全体的構造が容易に理解できるように、イラスト図などを用い、原材料、構成等を示すとともに、機能を発揮する原理・メカニズムを簡略に記載すること。
(3) 使用目的又は効果
「腟内に挿入し、経血を回収処理するもの」と記載すること。
(4) 使用方法等
使用方法は、各工程について順を追って、文章やイラスト図などを用いて分かり易く記載すること。
(5) 使用上の注意
健康被害を低減させ、且つ衛生的に使用できるような注意を促す記載を添付文書にすること。
消毒方法は、代表的な方法がいくつかあるが、どの方法を利用者に推奨するかは、それぞれの事業者が、エビデンスに基づいて具体的な方法を記載すること。
(6) 保管方法及び有効期間等
保管方法など当該項目を記載すること。
(7) 取扱い上の注意
繰り返し使用する上での注意を促す記載をすること。
別紙
添付文書への記載例
添付文書に記載する各事項について、代表的な記載例を下記に示すので、添付文書の作成の際の参考にして頂きたい。なお、個々の記載例は、全ての月経カップを網羅するものでは無いため、各項目で記載すべき主旨を理解頂き、それぞれの月経カップの製品特徴等に応じた適切な記載を行うこと。その際、言い表す用語や表現については、【警告】及び【禁止・禁忌】を除き、それぞれの事業者が適宜修正、変更することに制限はない。
(1) 【警告】及び【禁止・禁忌】に関する記載例
【警告】及び【禁止・禁忌】の記載例
【警告】 月経カップの長時間使用によっては、トキシックショック症候群(TSS)が発症する可能性があります。 症状:突然の高熱を伴って発疹・発赤、倦怠感、嘔吐、下痢、粘膜充血など。 もし、上記のような症状が発症した場合、直ちに月経カップを取り出して、使用を中止して、すみやかに産婦人科などの専門医に相談してください。 |
【禁止・禁忌】 1) 過去にトキシックショック症候群(TSS)を発症したことがある人は、使用しないでください。 2) 腟内や腟口に傷、痛み、かゆみなどがある場合、腟炎に感染している場合には使用しないでください。 |
【警告】及び【禁止・禁忌】は、上記の内容に係ることを全ての月経カップの添付文書に必ず記載すること。なお、利用者に対して重大な影響を与える恐れのある事項の改訂となる場合は、「相談申込票(医療機器の添付文書改訂等)」の様式を用いて、医薬品医療機器総合機構へ相談を行い事前確認すること。
(4) 使用方法等に関する記載例
【挿入の方法】
①挿入前に手指をよく洗い清潔にしてください。
②トイレに座るもしくはスクワットの姿勢とり、息を吐いて下半身の力を十分に抜きます。
③補助部が下向きになるように持ち、カップを折りたたみます。
④折りたたんだカップを持ち、もう片方の手で陰唇をやさしく開いてください。
⑤腟口から尾骨に向かって挿入して、補助部が腟口に隠れるまで挿入してください。
(⑥カップはタンポンより低い位置に装着します。)
⑦腟内でカップが完全に開いたことを確認してください。
【取出しの方法】
例示(A)
①取り出す前に手指を洗い清潔にしてください。
②腟口に指を入れて、補助部を見つけます。補助部に指を沿わせるようにして、カップの底部に指が触れたら、カップの底部をつまみ密着を解除します。
(指が補助部に届かない場合には、ゆっくり深呼吸しながら下腹部に力を入れ、いきむようにすると、カップが下のほうに降りてきます。)
③そのままゆっくりと取り出し、経血をトイレや排水溝に流してください。
例示(B) (補助部の強度が弱い場合)
①取り出す前に手指を洗い清潔にしてください。
②スクワットの姿勢で下腹部に力を入れて、月経カップを腟口に向かって押し出します。
③指でカップの底に触れることができるまで、補助部をゆっくり引っ張って移動させてください。
④カップの底をつまんでカップをつぶし、密封されたカップに空気を入れます。その際、補助部を使って取り出さないでください。補助部はあくまでカップを取り出すためではなく、取り出しが容易になるよう腟口に近づけるためのものです。
取り出す時は、カップの底をつまんで骨盤底筋を使ってカップを下に動かす必要があります。
⑤そのままゆっくりと取り出し、経血をトイレや排水溝に流してください。
例示(C) (補助部の強度がある場合)
①取り出す前に手指を洗い清潔にしてください。
②腟の筋肉を使ってカップを押し出してください。
③腟の中に指を入れ、カップの下部分、または横の部分を少し押して腟壁とカップのくっ付きを弱めます。
④補助部を持ち、カップを左右に優しく動かしてから腟からゆっくりと抜き取り、経血をトイレや排水溝に流してください。
【取り出す際の注意】
・密着を解除しないで無理に補助部を引っ張ってカップを取り出すと、痛みが生じたり、補助部が切れたりすることがあります。
・補助部はカップの底部をつかみやすく誘導するためのものです。引っ張って取り出すためのものではないため強く引っ張らないでください。
・腟壁やカップを爪で傷つけないよう、ご注意ください。
(5) 使用上の注意に関する記載例
【使用上の注意】
準備:月経カップを使用する前には、必ずカップを消毒してください。
使用前:両手指を清潔にします。
カップの空気穴が塞がっていないか、破損などないかを必ず確認してください。
使用中:経血の量に関係なく、必ず8時間以内(又は12時間以内)にカップを取り出してください。
使用後:取り出した後、再使用する場合、水で洗うか、低刺激性の石鹸による洗浄をした後、水で洗い流してご使用ください。
取出し時:カップの取り出すことを忘れないでください。
万一取り出せなくなった時は、すぐに産婦人科などで取り出してもらってください。
お手入れ方法:月経期間の終了後は、カップが清潔になったことを確認し、完全に乾燥させてから保管してください。
その他:出産後の最初の月経時(産後6週間くらい)から使用できますが、心配な場合は、専門医にご相談ください。
・月経カップは、個人専用です。他者との兼用を行わないでください。
【消毒方法】
煮沸消毒
・鍋に月経カップが浸かるほどの十分な量の水を入れ沸騰させた後、月経カップを入れ5分~10分間ほど煮沸してください。
・電子レンジを使用する場合には、耐熱容器に月経カップを入れ、十分な量の水に浸し、電子レンジで5分~10分間ほど温めてください。
ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(ミルトンなど)
・月経カップを水ですすぎます。ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを水に溶かし、その中にカップを15分程度で漬けます。その後、手をきれいにしてから取り出してください。取り出した後、水ですすぐ必要はありませんが、水気をよく切ってください。
(薬液は24時間ご使用いただけますが、24時間以上経った薬液は使わないでください。)
・他の薬剤とは決して混ぜないでください。
・ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムは弱酸性です。
(7) 取扱い上の注意に関する記載例
・カップのひび割れや破損にお気づきになられましたら、すぐに新しいカップにお取替えください。
・カップは水解性ではありません。トイレには流さないでください。
・廃棄に関しては、お住まいの自治体の取り決めに従ってください。
附属書1
「月経用(生理用)カップの図」
基本的な月経用(生理用)カップ
補助部のタイプ(ステム、リング、その他)
附属書2
「カップ容量の測定」
1.装置
図1のような台座を準備する。
2.検体
同一生産ロットごとにカップを無作為に3個選択する。
3.手順
(1) 図2のようにカップの開口部が上向き水平になるように台座に設置する。
(2) 予めビーカーに汲み置きした水を、ピペットを用いてカップ内部に注いでいく。
(3) 事業者がそれぞれの製品で規定した容量の水を注ぐ。
(4) 注ぎ終わった後、水が溢れてはならない。
(5) 操作(3)から(4)までを繰り返し、3個のカップについて試験を行う。
4.結果の判定
個々の水が溢れなかったとき「適合」と判断する。
図1:台座(例)
図2:カップ設置図
第1版 令和4年2月8日 (2022年)