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○成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針の変更について

(令和5年3月22日)

(子発0322第5号)

(各都道府県知事・各保健所設置市市長・各特別区区長あて厚生労働省子ども家庭局長通知)

(公印省略)

政府においては、成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(平成30年法律第104号)第11条第7項に基づき、令和5年3月22日、別添のとおり「成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針」(以下「成育医療等基本方針」という。)の変更を閣議決定したところです。

今般の成育医療等基本方針の変更にかかる主な内容は次のとおりです。各都道府県におかれましては、成育医療等基本方針の内容についてご了知いただくとともに、医療法(昭和23年法律第205号)第30条の4第1項に規定する「医療計画」その他成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律施行令(令和元年政令第170号)で定める計画を作成するに当たっては、成育過程にある者等に対する成育医療等の提供が確保されるよう適切な配慮をいただきますようお願いいたします。

また、貴管内市町村(保健所設置市、特別区を除く)に対する周知をお願い申し上げます。

【主な変更点】

(1) PDCAサイクルに基づく取組を推進するため、次の取組を追記

・ 施策の実施状況等の評価に資する指標の作成

・ 地方公共団体における、基本方針を踏まえた計画の策定・実施や、都道府県内関係者の協議等を通じた広域調整(母子保健事業の均てん化・精度管理等)等の取組に対する支援

(2) こども基本法やこども家庭庁設置を踏まえ、次の取組を追記

・ こどもの意見が尊重され、こどもの最善の利益が優先して考慮されることを基本理念とする、成育医療等の施策の実施

・ こども家庭庁による、成育医療等に関する総合調整の実施

(3) 第8次医療計画に係る議論を踏まえ、次の取組を追記

・ 新興感染症発生時も周産期・小児医療を提供できる体制の整備

・ 周産期医療の集約化・重点化

・ 助産師活用や、助産師と医師による連携・協働の推進

・ 医療的ケア児を含む、小児在宅医療・歯科医療体制の充実

(4) 母子保健や子育て支援に係る課題等を踏まえ、次の取組を追記

・ 母子保健情報のデジタル化等による、健康管理の充実や事業の質の向上

・ 妊婦健康診査に係る公費負担の推進

・ NIPT等の出生前検査に係る適切な情報発信

・ 産後ケア事業の全国展開や更なる取組の推進

・ 性と健康の相談センター等によるプレコンセプションケアの推進

・ こども家庭センター等による子育て世帯への支援体制強化

・ 伴走型相談支援と経済的支援を一体的に実施する事業の定着と充実

・ いわゆる「こどもホスピス」などの、小児がんの患者等が家族等と安心して過ごすことができる環境の整備に関する検討

・ 「健やか親子21」(基本方針に基づく国民運動)による普及啓発

・ 「全国医療情報プラットフォーム」の創設に向けた取組の推進

・ 成育医療等の施策に係る調査研究の推進、シンクタンク機能の充実

(5) その他所要の改正

新旧対照表

成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針の変更について

(令和5年3月22日)

(閣議決定)

政府は、成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(平成30年法律第104号)第11条第7項の規定に基づき、成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(令和3年2月9日閣議決定)の全部を別紙のとおり変更する。

(別紙)

成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針

令和5年3月

目次

Ⅰ 成育医療等の提供に関する施策の推進に関する基本的方向

1 成育医療等の現状と課題

(少子化の進行及び人口減少)

(出産年齢の上昇と平均理想子ども数、平均予定子ども数の低下)

(女性の健康に関する課題)

(年齢と妊娠・出産)

(妊産婦の診療において必要な配慮)

(妊産婦のメンタルヘルス)

(低出生体重児の割合の増加)

(こどものこころの問題)

(学童期・思春期における全般の問題)

(10代における問題)

(食生活等生活習慣に関する課題)

(妊産婦及び乳幼児における口腔)

(児童虐待)

(父親の孤立)

(子育て世代の親を孤立させない地域づくり)

(自然災害時や感染症発生時等における課題)

2 成育医療等の提供に関する施策の推進に向けた基本的な考え方

3 関係者の責務及び役割

Ⅱ 成育医療等の提供に関する施策に関する基本的な事項

1 成育過程にある者及び妊産婦に対する医療

(1) 周産期医療等の体制

(2) 小児医療等の体制

(3) その他成育過程にある者に対する専門的医療等

2 成育過程にある者等に対する保健

(1) 総論

(2) 妊産婦等への保健施策

(3) 乳幼児期における保健施策

(4) 学童期及び思春期における保健施策

(5) 生涯にわたる保健施策

(6) 子育てやこどもを育てる家庭への支援

3 教育及び普及啓発

(1) 学校教育及び生涯学習

(2) 普及啓発

4 記録の収集等に関する体制等

(1) 予防接種、乳幼児健康診査、学校における健康診断に関する記録の収集、管理・活用等に関する体制、データベースその他の必要な施策

(2) 成育過程にある者が死亡した場合におけるその死亡原因に関する情報の収集、管理・活用等に関する体制、データベースその他の必要な施策

(3) ICTの活用による成育医療等の施策の推進

5 調査研究

6 災害時等における支援体制の整備

7 成育医療等の提供に関する推進体制等

Ⅲ その他成育医療等の提供に関する施策の推進に関する重要事項

[Ⅰ 成育医療等の提供に関する施策の推進に関する基本的方向]

1 成育医療等の現状と課題

我が国は、児童福祉法(昭和22(1947)年法律第164号)、予防接種法(昭和23(1948)年法律第68号)、母子保健法(昭和40(1965)年法律第141号)等の関係法令に基づく各種施策の推進、周産期医療や小児医療等の体制整備等の取組を進めており、妊産婦死亡率や乳幼児死亡率は世界有数の低率国になる1とともに、諸外国と比較しても極めて質の高い周産期医療や小児医療の提供を実現するに至った。

しかしながら、我が国における急速な少子化の進展、成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦(以下「成育過程にある者等」という。)を取り巻く環境の変化やその需要の変化等により、我が国における成育医療等は次に掲げる課題を抱えている。

(少子化の進行及び人口減少)

我が国の少子化の進行及び人口減少は深刻さを増している。出生数の減少は予想を上回るペースで進んでおり、令和3(2021)年の出生数(確定数)は81万1,622人と過去最少を記録し、出生数の減少と死亡数の増加を背景として、我が国の総人口は、平成20(2008)年をピークとして減少局面に入っている。

(出産年齢の上昇と平均理想子ども数、平均予定子ども数の低下)

未婚者・既婚者のいずれにおいても、平均して2人程度のこどもを持ちたいとの希望を持っているが、晩婚化に伴い、出産年齢は上昇し、夫婦の平均理想子ども数、平均予定子ども数は低下傾向2にある。

(女性の健康に関する課題)

心身及びその健康について正しい知識や情報を入手することは、主体的に行動し、健康を享受するために必要であるが、特に、女性は妊娠・出産や女性特有の更年期疾患を経験する可能性がある。そのため、生涯を通じて男女が異なる健康上の問題に直面することに留意する必要があり、リプロダクティブ・ヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の視点に基づく、成育医療等の提供が求められている。

(年齢と妊娠・出産)

一般的に、女性の年齢が上昇すると、妊娠・出産に至る確率が低下し、出産年齢が上昇すると、周産期死亡率や妊産婦死亡率は上昇する。近年は、出産年齢の上昇傾向に伴い、妊娠前の糖尿病や高血圧症等の合併症の割合が増加傾向にある。

(妊産婦の診療において必要な配慮)

妊産婦の診療・治療においては、妊娠中に特に重症化しやすい疾患があること、生理学的変化により検査結果が非妊娠時と異なることや診療時の体制に制限があること、また、薬剤の胎児への影響を妊娠週数に応じて考慮する必要があること等から、非妊娠時とは異なる特別な配慮が必要である。

(妊産婦のメンタルヘルス)

妊産婦は、妊娠、出産、産後の期間に様々な不安や負担を抱えている。ホルモンバランスの乱れ、環境の変化やストレスなどで心身のバランスを崩しやすく、うつ病の発症など、メンタルヘルスに関する問題が生じやすい状況にある。

さらに、妊産婦のメンタルヘルスの不調は、本人のみならず、こどもの心身の発達にも影響を及ぼし、養育不全等のリスクにもなり得る。

(低出生体重児の割合の増加)

我が国の乳幼児死亡率は世界的に低い水準にある一方、全出生数中の低出生体重児の割合は、長期的に増加傾向にあったが、この15年程度は横ばい傾向3にある。全出生数中の低出生体重児の割合が増加する要因としては、医学の進歩(早産児の割合の増加)、多胎児妊娠、妊娠前の母親の痩せ(低栄養状態)、妊娠中の体重増加抑制、歯周病、喫煙、飲酒等の因子が報告されており、引き続き、全出生数中の低出生体重児の割合の減少に向けて、要因の軽減に向けた取組が必要である。

(こどものこころの問題)

10代後半の死因の第1位が自殺である4ことなどに見られるように、こどものこころの問題は喫緊の課題であり、学童期からの対策のみならず、親を含む家族等のこころの問題への支援が必要である。こどもの発達特性、バイオサイコソーシャルの観点5(身体的・精神的・社会的な観点)等も踏まえた上で、行政機関、教育機関、民間団体等による多職種の連携を通じ、乳幼児期から思春期に至るまでの継続した支援を行うことが重要である。

(学童期・思春期における全般の問題)

学童期・思春期は、健康に関する様々な情報に自ら触れ、行動を選択しはじめる、生涯を通じた健康づくりのスタートとなる重要な時期である。この時期に科学的根拠に基づいた健康に関する正しい知識を身に付けること、自身の心身の健康に関心を持つことは、生涯の健康づくりのための行動変容に向けた大事な一歩となる。こうした観点から、性に関すること、肥満や痩せなど自身の体に関すること、運動や食生活などの生活習慣に関すること、メンタルヘルスに関すること、がんに関することなど健康教育の充実に資する様々な知識を身に付けるための積極的な取組が求められている。

(10代における問題)

10代における個別の問題としては、まずは、性に関する問題がある。10代の人工妊娠中絶実施率は減少しているが、15歳未満の出生数は減少しておらず、むしろ高止まりしている傾向6にある。若年世代、特に10代においては、男女ともに性や妊娠に関する基礎的な知識が欠けている場合もあり、予期せぬ妊娠へとつながる懸念もある。

こうした10代の妊娠は、例えば、社会や学校での孤立、困難を抱えた家庭環境、家庭に居場所がないこと、自己肯定感が育まれていないことなど様々な要因が関与していることが考えられる。SNS(Social Network Service)の普及等により性を取り巻く環境が変化しているという社会的な背景を踏まえ、引き続き、性や妊娠に関する正しい知識の普及など、性に関する課題に対する適切な対応が求められる。

(食生活等生活習慣に関する課題)

こどもや若い世代の食生活においては、脂質や食塩の過剰な摂取、朝食の欠食といった食生活の乱れがみられる。朝食の欠食7については、就寝時間、起床時間といった1日の生活リズムとも関係する。このため、こどもの頃の食生活をはじめとした生活習慣全般に対応する取組を行い、健やかな生活習慣を身に付けることが必要である。

さらに、こどもの食生活については、貧困等の社会経済的な要因も含めた総合的な視点で検討することが重要である。

(妊産婦及び乳幼児における口腔)

妊産婦については、ホルモンバランスの変化、嗜好の変化等によって、う蝕や歯周病が進行しやすいため、口腔清掃がより重要となる時期である。

また、乳幼児についても、う蝕の予防のみならず、歯周病の初期である歯肉炎予防を行うとともに、しっかりと噛んで食べることができるよう、歯並びや噛み合わせ、口腔機能の観点からの対策等を行うことも重要である。保護者が乳幼児の歯と口の健康を管理することができるようになるためにも、家庭や保育所、幼稚園等において、歯磨きやよく噛むことの重要性についての教育が重要である。

(児童虐待)

全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は一貫して増加し、令和3(2021)年度には児童虐待の防止等に関する法律(平成12(2000)年法律第82号)制定直前の約18倍に当たる20万7660件となっている。

「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第18次報告)」によれば、第1次から第18次報告までの心中以外の虐待死は889例、939人であり、そのうち0歳児の割合は48.5%、0日児の割合は18.4%となっている。

体罰等によらない子育てを進めるためには、体罰等に対する意識を一人ひとりが変え、社会全体で取り組んでいく必要がある。子育て中の保護者に接する者は、子育て中の保護者が孤立しないよう、声かけ等の支援を行い、市町村や児童相談所等と連携してサポートをしていくことが重要である。

(父親の孤立)

出産や育児への父親の積極的な関わりにより、母親の精神的な安定をもたらすことが期待される一方、父親の産後うつが課題となっている。母親を支えるという役割が期待される父親についても、支援される立場にあり、父親も含めて出産や育児に関する相談支援の対象とするなど、父親の孤立を防ぐ対策を講ずることが急務である。母親に限らず、父親を含め身近な養育者への支援も必要であることについて、社会全体で理解を深めていくことが必要である。

(子育て世代の親を孤立させない地域づくり)

成育過程にある者等を取り巻く環境が複雑化・多様化する近年においては、妊娠中から子育て中の親子とその家族が、主体的に自らの健康に関心を持つとともに、お互いを支え合い理解し合えるような環境づくりが必要となる。特にひとり親世帯や両親又は一方の親が外国籍であるといった場合のこどもの養育環境には配慮と支援が必要である。加えて、学校や企業等も含めた地域社会全体でこどもの健やかな成長を見守るとともに、子育て世代の親を孤立させないよう温かく見守り支える地域づくりも重要である。

(自然災害時や感染症発生時等における課題)

自然災害時や感染症発生時においても、成育過程にある者等に対して、適切な配慮の下、必要な成育医療等が提供されることが求められる。しかしながら、今般の新型コロナウイルス感染症の流行は、結婚、妊娠・出産、子育ての当事者にも多大な影響を与えており、安心してこどもを生み育てられる環境を整備することの重要性を改めて浮き彫りにした。また、未然に防止できる事故により亡くなるこどもがいる状況を踏まえ、こどもの事故を予防し、安全な環境を整備することも重要である。

このように、成育過程にある者等を取り巻く環境が大きく変化している中で、成育医療等の提供に当たっては、医療、保健、教育、福祉などのより幅広い関係分野での取組の推進が必要であることから、各分野における施策の相互連携を図りつつ、その需要に適確に対応し、こどもの権利を尊重した成育医療等が提供されるよう、成育過程にある者等に対して横断的な視点での総合的な取組を推進することが求められている。

2 成育医療等の提供に関する施策の推進に向けた基本的な考え方

成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(平成30(2018)年法律第104号。以下「成育基本法」という。)は、平成30(2018)年12月に成立し、令和元(2019)年12月に施行された。

成育基本法は、次代の社会を担う成育過程にある者の個人としての尊厳が重んぜられ、その心身の健やかな成育が確保されることが重要な課題となっていること等に鑑み、児童の権利に関する条約の精神に則り、成育医療等の提供に関する施策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、保護者及び医療関係者等の責務等を明らかにし、並びに成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)の策定について定めるとともに、成育医療等の提供に関する施策の基本となる事項を定めることにより、成育過程にある者等に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策を総合的に推進することを目的としているものである。

そして、基本方針は、この目的を達成するため、成育基本法第11条第1項の規定に基づき策定するものであり、同条第2項の規定に基づき、成育医療等の提供に関する施策の推進に関する基本的方向等について定めるものである。

次代を担う成育過程にある者の個人としての尊厳が重んぜられ、その心身の健やかな成育が確実に確保されるようにするためには、成育基本法及び基本方針に則り、Ⅰの1に掲げる課題に対応する成育医療等の提供に関する施策を推進していくことが必要である。なお、これらの施策の実施に当たっては、次に掲げる点に留意する必要がある。

・ 成育過程にある者の心身の健やかな成育が図られることを保障される権利及びリプロダクティブ・ヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)を尊重すること。

・ こども基本法(令和4(2022)年法律第77号)に基づき、こどもの年齢及び発達の程度に応じ、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されることや、こどもの意見が尊重され、こどもの最善の利益が優先して考慮されることを基本理念として、施策を実施すること。その上で、施策の実施等に当たっては、同法に基づき、こども又はこどもを養育する者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずること。

・ 個人情報の保護に関する法律(平成15(2003)年法律第57号)の規定に則った個人情報等の適正な取扱いが確保されること。

・ 多様化する成育過程にある者等の視点に立って、その需要に適確に対応するとともに、地域の実情を踏まえつつ、福祉との連携を図ること等により、妊娠期から子育て期に至るまで切れ目ない成育医療等を提供すること。

・ 居住する地域にかかわらず、遺伝子診断等の実施を含め、できる限り早期に正しい診断が可能となる体制を整備するとともに、科学的知見に基づく適切な成育医療等を提供すること。

・ 妊娠期から子育て期に至る期間において、こどもとその保護者等との関係性を重視し、その健全な成育過程の形成に資するよう、成育過程にある者等に対して年齢に応じた、適切な情報提供を行うとともに、社会的経済的状況にかかわらず、また、自然災害時や感染症発生時等の緊急時においても適確な対策を実施することにより、希望する者が安心してこどもを生み、育てることができる環境を整備すること。

3 関係者の責務及び役割

国は、責務として、成育基本法に定める基本理念に則り、成育医療等の提供に関する施策を総合的に策定し実施する必要があり、成育基本法を所管するこども家庭庁が、厚生労働省、文部科学省等の関係省庁と必要な総合調整を実施する。その際、国は、施策の実施状況等を客観的に検討・評価し、必要な見直しにつなげるPDCAサイクル8に基づく取組を適切に実施する。そのため、国は、国及び地方公共団体が自らの施策の実施状況等を評価することに資するように、指標を作成する。また、これらの施策の実施に必要な科学的知見の収集や得られた情報の利活用を図りつつ、当事者である成育過程にある者及び社会全体に対して、適時の実施状況の公表を含め、これらの施策に関する科学的知見に基づく適切な情報を提供することが重要である。

地方公共団体は、成育基本法に定める基本理念に則り、成育医療等の提供に関する施策に関し、国との連携を図りつつ、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務があり、例えば、基本方針を踏まえた計画を策定し、実施することなどが考えられる。その上で、国は、施策の実施状況等を客観的に検討・評価し、必要な見直しにつなげるPDCAサイクルに基づく地方公共団体の取組を推進するため、適切な支援を行う。

都道府県においては、域内市町村における成育医療等の提供に関する施策に係る状況の把握、域内市町村の母子保健事業の均てん化や精度管理等の広域的な調整を行うことなどが期待される。その際には、域内市町村や、成育過程にある者に対する医療、保健、福祉等に係る関係団体との十分な連携の下に進めることが望ましく、当該連携を行うため、例えば、これらの関係者による協議の場を設けることなどが考えられる。また、必要に応じ、都道府県を超えた広域連携も検討することが望ましい。国は、都道府県におけるこれらの取組を推進するため、適切な支援を行う。

父母その他の保護者は、責務として、その保護するこどもがその成育過程の各段階において必要な成育医療等の提供を受けられるように配慮する必要がある。また、国及び地方公共団体は、保護者に対し、こうした責務が果たされるように必要な支援を行う。

医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、管理栄養士、歯科衛生士、リハビリ専門職その他の医療関係者は、責務として、国及び地方公共団体が講ずる成育医療等の提供に関する施策に協力し、成育過程にある者の心身の健やかな成育並びに妊産婦の健康の保持及び増進に寄与するとともに、成育医療等を必要とする者の置かれている状況を深く認識し、良質かつ適切な成育医療等を提供する必要がある。

成育医療等又はこれに関連する職務に従事する者(上記の医療関係者を除く。)並びにこれらに関する関係機関及び関係団体は、責務として、国及び地方公共団体が講ずる成育医療等の提供に関する施策に協力し、成育過程にある者の心身の健やかな成育並びに妊産婦の健康の保持及び増進に寄与する必要がある。

国、地方公共団体及び医療関係者等は、責務として、成育基本法に定める基本理念の実現を図るため、相互に連携を図りながら協力する必要がある。

[Ⅱ 成育医療等の提供に関する施策に関する基本的な事項]

1 成育過程にある者及び妊産婦に対する医療

(1) 周産期医療等の体制

・ 各都道府県が策定する医療計画においては、総合周産期母子医療センター及び地域周産期母子医療センター並びに救急医療等との連携その他周産期医療体制の整備に関し必要な事項について盛り込むことが望ましく、当該事項については周産期医療の関係者間で協議を行うことが期待される。また、当該関係者においては、周産期搬送や精神疾患を含む合併症を有する母体や新生児の受入れ等について、メディカルコントロール協議会等の関係者との連携を図ることが期待される。その上で、各都道府県において、成育過程にある者に対する医療、保健、福祉等の関係者は、妊娠・出産・産後のケアの連続性の担保、産後ケア事業や妊産婦健康診査の広域的な調整、流産・死産を経験した方や医療的ケア児等に対する支援等の実施を推進するため、周産期医療の関係者等と連携を図ることが期待される。

・ 各都道府県は、リスクの高い妊産婦や新生児等に高度な医療が適切に提供されるよう、地域における周産期医療の中核となる総合周産期母子医療センター及びそれを支える地域周産期母子医療センター等の整備(新生児集中治療室(NICU)、母体・胎児集中治療室(MFICU)の整備)を通じ、地域の周産期医療体制を確保することが望ましい。精神疾患を合併する妊産婦への医療体制を確保するとともに、災害や新興感染症のまん延に備え、周産期医療を継続的に提供できる体制の整備を平時から図る。

・ 分娩を取り扱う医療機関について、母子への感染防止及び母子の心身の安定・安全の確保を図る観点から、産科区域の特定などの対応を講ずることが望ましい中、医療機関の実情を踏まえた適切な体制の整備を推進する。

・ 産科及び産婦人科以外の医師に対する妊産婦の診療に係る研修体制や産科及び産婦人科の医師による相談体制の構築等を通じ、産科及び産婦人科とそれ以外の診療科との連携体制の構築を図る。

・ 分娩機関が産科医療補償制度に加入し、分娩に関する紛争の防止・解決を図るとともに、原因分析による将来の同種事例の防止に役立つ情報の提供などにより、産科医療の質の向上を図る。

・ 妊産婦死亡時の妊産婦死亡に関する情報集積、母体救命や新生児蘇生技術の普及など、医療における安全性を確保するための体制を整備する。

・ 各地域において、地域医療構想や医師確保計画を踏まえ、周産期医療体制を維持する観点から、周産期医療の集約化・重点化を推進し、分娩を担う医師をはじめとした周産期医療を担当する医師及び新生児医療を担当する医師、助産師、看護師等の確保を図る。

・ 周産期医療等を担当する助産師、看護師等の定着・離職防止等を図るため、医療従事者の勤務環境の改善に向けた取組を計画的に推進する。助産師活用推進事業や院内助産・助産師外来の推進により、助産師と医師の連携・協働を図る。

(2) 小児医療等の体制

・ 各都道府県が策定する医療計画においては、小児医療体制の整備・推進や、地域のこどもの健やかな成育の推進に関する事項について盛り込むことが望ましい。また、各都道府県において、小児医療の関係者は、当該事項について、成育過程にある者に対する医療、保健、福祉等の関係者等と連携を図ることが期待される。

・ こどもが地域において休日・夜間を含めいつでも安心して医療サービスを受けられるよう、かかりつけ医機能の普及とともに小児初期救急センターや小児救急医療拠点病院、小児救命救急センター等の整備とともに、休日・夜間における小児の症状等に関する保護者等の相談に対し小児科医・看護師等が電話で助言を行う「子ども医療電話相談事業(#8000事業)」の整備を支援することなどにより、小児医療体制の充実を図る。

・ 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3(2021)年法律第81号)に基づく施策と連携して、医療的ケア児等の在宅療養後方支援病院の設置やレスパイトの受入れ体制の確保を促進するなど、小児在宅医療体制の充実を図る。また、障害児に対応できる歯科医の育成や小児在宅歯科医療体制の充実を図る。

・ 小児医療等を担当する看護師等の定着・離職防止等を図るため、看護師を含む医療従事者の勤務環境の改善に向けた取組を計画的に推進する。

・ 小児医療等における専門的な薬学管理に対応するため、医療機関・薬局の医療従事者間の連携を推進する。

・ 災害や新興感染症のまん延に備え、小児医療を継続的に提供できる体制の整備を平時から図る。

・ 市町村は、引き続き、子育て世代包括支援センター(令和6(2024)年度以降はこども家庭センター)をコーディネーターとして多職種による地域での保健、医療、福祉及び教育を包括的に検討できるよう、体制の整備を図る。

・ 小児及びその家族の安心安全な療養環境の確保を図る観点から、小児科区域の特定などの対応を講ずることが望ましい中、医療機関の実情を踏まえた適切な体制の整備を推進する。

(3) その他成育過程にある者に対する専門的医療等

・ 各都道府県が策定するがん対策推進計画においては、小児やAYA世代のがん患者に必要な医療・相談支援体制の整備に関する事項について盛り込むことが望ましい。また、各都道府県において、がん対策の推進に係る関係者は、当該事項について、成育過程にある者に対する医療、保健、福祉等の関係者等と連携を図ることが期待される。

・ 小児がんや小児慢性特定疾病等に係る新たな小児用医薬品・医療機器等の開発を推進するとともに、全国の小児医療機関から小児に対する医薬品の投与量、投与方法、副作用の発現状況等に関する情報を収集・整理・活用することにより小児を対象とした医薬品の適正使用等を推進する。

・ 家族性高コレステロール血症等の小児期・若年期から配慮が必要な疾患について、早期発見に向けた取組や適切な指導を行うとともに、小児生活習慣病の予防についても推進する。

・ 小児慢性特定疾病に係る関係者は、成育過程にある者に対する医療、保健、福祉等の関係者と連携を図り、小児期から成人期にかけて必要な医療を切れ目なく行うことができる移行期医療の支援、治療方法の確立に向けた研究事業の実施等、小児慢性特定疾病を抱える児童等の健全な育成に係る施策を総合的に推進することが期待される。

・ 乳幼児期から学童期にわたり、小児慢性特定疾病や、アレルギー疾患にかかっている児童、医療的ケア児が、保育所や幼稚園、高等学校等において、安全な環境のもと安心して過ごすため、嘱託医や学校医が主治医やかかりつけ医、かかりつけ歯科医、看護師、管理栄養士等と診療情報を共有し、保健指導等適切な対応がなされるよう学校等への助言・指導を実施するための適切な連携方法を検討する。

・ 小児慢性特定疾病を抱える児童等への栄養指導をはじめとした療育相談等の充実を図る。

・ 各都道府県において、成育過程にある者に対する医療、保健、福祉等の関係者は、地域の学校医や小児科医、産婦人科医、性と健康の相談センター、精神保健福祉センター等と連携を図り、思春期のこころの問題も含むこどもの性と健康の問題について、学校等へ情報を共有するなどの適切な連携方法を検討することが期待される。

・ 健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(平成30(2018)年法律第105号)及び同法に基づく循環器病対策推進基本計画等を基本に、循環器病対策を推進する。

2 成育過程にある者等に対する保健

(1) 総論

・ 不妊、予期せぬ妊娠、性感染症等への適切な相談支援や、妊娠・出産、産後の健康管理に係る支援を行うため、男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身に付け、健康管理を行うよう促すプレコンセプションケアの推進を含め、需要に適確に対応した切れ目のない支援体制を構築する。

・ 市町村において、妊娠期からこどもがおとなになるまでの一連の成長の過程の様々なニーズに対してワンストップで総合的な相談支援を行うことができるよう、地域の実情に応じて、対象年齢等について柔軟に運用するなど、子育て世代包括支援センター(令和6(2024)年度以降はこども家庭センター)等の機能の整備を図るとともに、地域の関係医療機関(産婦人科、小児科、精神科、歯科等の診療科及び助産所)等と連携しつつ、地域における相談支援体制の整備を推進する。また、地域の状況に応じて、電話やオンラインを活用した相談支援の実施を推進する。

・ 各都道府県において、成育過程にある者に対する医療、保健、福祉等の関係者は、市町村等と連携を図り、妊娠・出産・産後のケアの連続性の担保、産後ケア事業や妊産婦健康診査の広域的な調整、流産・死産を経験した方や医療的ケア児等に対する支援等を推進することが期待される。

・ 妊婦健康診査や乳幼児健康診査、予防接種情報等の母子保健情報については一部が電子化され、マイナポータルを通じて本人がスマートフォン等で閲覧可能なほか、転居時の引継ぎも可能となっている。「母子健康手帳、母子保健情報等に関する検討会」9の議論を踏まえ、母子保健情報のデジタル化と利活用を進め、健康管理の充実や母子保健事業の質の向上等を図る。

・ 乳幼児期から成人期に至るまでの期間においてバイオサイコソーシャルの観点(身体的・精神的・社会的な観点)から切れ目なく包括的に支援するため、個々人の成長特性に応じた健診の頻度や評価項目に関する課題抽出やガイドライン作成等の方策を検討する。

・ 市町村による妊婦等に対する早期の妊娠届出の勧奨とともに、妊婦健康診査の公費負担、出産育児一時金、産前産後休業期間中の出産手当金及び社会保険料免除等により、妊婦等の健康管理の充実及び経済的負担の軽減を図る。特に働く妊婦等に対して就業を継続しつつ健康を管理するための支援を実施していく。

・ 全ての成育過程にある者等が健やかに育つ社会の実現に向け、「健やか親子21」を通じ、国民への啓発と実施状況の評価を推進する。

・ 成育過程にある者等に対する保健を担う医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、管理栄養士、歯科衛生士、保育士、公認心理師等の確保を図る。

(2) 妊産婦等への保健施策

・ 市町村単位で、妊娠期や産後期の母子の健康管理の観点から実施している妊婦健康診査及び産婦健康診査や、妊娠時から出産・子育てまで一貫して身近で相談に応じ、様々なニーズに即した必要なサービスにつなぐ伴走型相談支援を推進することにより、妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない支援体制を整備する。

・ 各都道府県において、成育過程にある者に対する医療、保健、福祉等の関係者が相互に連携を図り、妊娠、出産等のライフステージに応じた、バイオサイコソーシャル(身体的・精神的・社会的)な悩み等に対する、性や生殖に関する専門的な相談支援や市町村の広域的支援を推進することが期待される。

・ 妊婦健康診査の公費負担の金額や検査項目のばらつきが生じないよう、国が示す標準的な検査項目の公費負担の実施状況を把握し、公費負担を促す。加えて、妊婦が、NIPT等の出生前検査や妊婦健康診査で行う感染症検査について不安を抱えることがないよう、また、適切な健康管理が行われるよう、適切な情報発信を行う。

・ 妊娠期から子育て期に至る期間において、こどもとその保護者等との関係性を重視し、その健全な成育過程の形成に資するよう、産婦人科、小児科等と連携して各種事業を実施する。特に、産後のメンタルヘルス対策は重要であり、医師、保健師、助産師等、多職種が連携した支援体制を推進する。

・ 妊産婦が抱える妊娠・出産等や子育てに関する悩み等について、子育て経験者等のピアサポーターによる相談支援を行う産前・産後サポート事業を推進する。

・ また、産後ケア事業の全国展開や更なる取組の推進等に向け、全都道府県・市町村への実態調査を踏まえ、都道府県による広域的な連携支援の下、市町村において事業の体制整備・周知を行うことが望ましい。国は、これらの動きを包括的に支援する。

・ 悩みを抱える妊産婦等を早期に発見し相談支援につなげることはもとより、児童虐待の予防や早期発見に資するよう、若年妊婦や特定妊婦10の把握及び支援、妊産婦健康診査の未受診者への受診の勧奨等を推進する。

・ 妊産婦の望ましい食生活の実現に向けて、各種指針やガイドライン等を活用した栄養指導の実施等、健康づくりに向けた取組を推進する。

・ 育児等の負担が大きく孤立しやすい多胎妊産婦等を支援するため、多胎児の育児経験者家族との交流会の開催や相談支援の実施に加え、多胎妊婦や多胎家庭のもとへ育児等サポーターを派遣し、産前や産後における日常の育児に関する介助等や、相談支援を行うなど、多胎妊産婦等に対する支援体制を構築する。

・ 口腔の健康の保持・増進を図ることの重要性やう蝕や歯周病の治療に関するかかりつけ歯科医への早めの相談について、妊婦、保護者等に対して両親学級等を通じた普及啓発を図る。また、歯科と産婦人科の情報共有などを行うことにより、市町村において妊産婦に対する歯科健康診査を推進する。

・ 妊産婦や妊娠を希望する女性に対して、妊娠・授乳中の薬物治療に関する相談支援体制を都道府県単位で整備するとともに、相談を通じて知見を収集し、整理・活用することにより妊産婦への医薬品の適正使用等を推進する。

(3) 乳幼児期における保健施策

・ 新生児へのマススクリーニング検査の実施により先天性代謝異常等を早期に発見し、その後の治療や生活指導等につなげるなど、先天性代謝異常等への対応を推進する。

・ 市町村において、子育て世代包括支援センター(令和6(2024)年度以降はこども家庭センター)と連携して、乳幼児健康診査等の母子保健事業や、妊娠時から出産・子育てまで一貫して身近で相談に応じ、様々なニーズに即した必要なサービスにつなぐ伴走型相談支援を活用した子育て支援を推進することが期待される。悩みを抱える保護者等を早期に発見し、相談支援につなげ、児童虐待の予防や早期発見に資するよう、乳幼児健診を推進するとともに学童期及び思春期までの切れ目ない健診等の実施体制の整備に向けた検討を行う。

・ 発達障害等の疑いで育てにくさを感じている保護者への支援のために、小児科医等と連携した保健指導等や子育て世代包括支援センター(令和6(2024)年度以降はこども家庭センター)と関係機関との連携やこどもの状態等に応じた適切な支援を推進する。

・ 各都道府県において、成育過程にある者に対する医療、保健、福祉等の関係者が相互に連携を図り、乳幼児健康診査等の母子保健事業の精度管理や広域的支援を推進することが期待される。

・ 聴覚障害は早期に発見され適切な支援が行われることで、言語やコミュニケーションの発達に大きな効果が期待されることから、聴覚障害の早期発見・早期療育に資する乳幼児期の難聴に関する総合的な体制の整備を推進する。

・ 3歳児健康診査における視覚検査に屈折検査機器を導入する市町村においては、検査の受検者数・未受検者数・受検率・検査結果や、精密検査の実施状況等を把握し、集約するとともに、乳幼児及び保護者に対し、必要に応じて適切な支援を提供できる体制を整備することが望ましい。国は、市町村のこうした取組を支援する。

・ 乳幼児における股関節脱臼・臼蓋形成不全などの疾病を早期に発見し、支援につなげていく環境整備に向けた検討を行う。

・ 乳幼児期は成長や発達が著しく、生涯にわたる健康づくりの基盤となる重要な時期であることから、乳幼児及び保護者を対象とした栄養指導の実施を推進する。なお、健康診査等において、乳幼児の栄養状態や睡眠時間の確保について医師や保健師等が保護者に対して評価や助言を行う。

・ 保育所、幼稚園等におけるアレルギー疾患を有するこどもに対し、乳幼児期の特性を踏まえた対応を推進する。

・ 医薬品に関する相談体制の充実など、乳幼児及び保護者に対する医薬品の適正使用等を推進する。

・ 予防接種率を高めるためのワクチンの供給体制の確保やワクチンに対する普及啓発等、予防接種を推進する。特に、母子に影響を及ぼす風しんに対する予防接種を推進する。

・ こどもの健やかな成長及び発達並びに健康の維持及び増進のため、「早寝早起き朝ごはん」国民運動や「健やか親子21」の普及啓発等を通じて、保育所や幼稚園等と、家庭や地域等が連携した食育を推進する。

・ 哺乳、離乳食、普通食へと成長とともに変化する食形態に合わせた、咀嚼そしゃく嚥下えんげ機能の発育のための口腔機能の向上を図る。

(4) 学童期及び思春期における保健施策

・ 各都道府県において、成育過程にある者に対する医療、保健、福祉、教育等の関係者が相互に連携を図り、学童期及び思春期の健康課題に関する取組を推進することが期待される。

・ 学童期及び思春期を通して、生涯の健康づくりに資する栄養・食生活や運動等の生活習慣の形成のための健康教育を推進する。

・ しっかりと噛んで食べることができるよう、健全な口腔機能の保持・増進を図る。

・ こどもの健やかな成長及び発達並びに健康の維持及び増進のため、「早寝早起き朝ごはん」国民運動や「健やか親子21」の普及啓発等を通じて、学校等と、家庭や地域等が連携した食育を推進する。(再掲)

・ 学校等において、アレルギー疾患を有するこどもに対し、学童期及び思春期の特性を踏まえた対応を推進する。

・ 男女を問わず、人間の身体的・精神的・遺伝学的多様性を尊重しつつ、妊娠、出産等についての希望を実現するため、妊娠・出産等に関する医学的・科学的に正しい知識の普及・啓発を学校教育段階から推進する。

・ 思春期の人工妊娠中絶、梅毒及びHIV感染症を含む性感染症問題に対応するため、学校や保健所等において、性に関する科学的知識に加え、性情報への対処や互いを尊重し合う人間関係など様々な観点から、性と健康に関する教育や電話での相談支援等を行う。

・ 予期せぬ妊娠等により不安を抱える若年妊婦等を支援するため、性と健康の相談センターや若年妊婦等への支援に積極的なNPO等によるアウトリーチによる支援や、SNSを活用した相談支援等を実施するほか、当該妊婦等を次の支援につなげるまでの緊急一時的な居場所の確保等に係る支援を行うとともに、里親制度や特別養子縁組制度の普及啓発を実施する。

・ こども等に対する性的な暴力の根絶に向けた対策について、こどもからの相談につながりやすく、こどもが精神面のケアを含んだ適切な保護や支援を受けられる体制整備等を推進する。また、「子供の性被害防止プラン(児童の性的搾取等に係る対策の基本計画)2022」に基づく取組を推進するとともに、「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」に基づき、取組を強化する。

・ 学童期及び思春期における心の問題に対応するための専門家を養成するとともに、精神保健福祉センター、児童相談所などにおける専門家による相談体制や、児童生徒の心身の健康や教育に関する相談体制を整備する。

・ 様々なこどもの心の問題、被虐待児の心のケアや発達障害に対応するため、拠点病院を中核とし、各医療機関や保健福祉教育関係機関等と連携した支援体制の構築を図るこどもの心の診療ネットワーク事業を推進する。

・ 10代後半の死因の第1位が自殺であることなどを踏まえ、自殺予防に資する相談体制の整備及び相談窓口の周知など、こどもの自殺対策を推進する。

・ ゲーム等の使用がこどもの成長や発達に与える影響等についての科学的知見の収集や、保健医療及び教育分野におけるゲームに関する問題等についての普及啓発、相談対応を行う。

・ 学童期における側弯症そくわんしょうなどの疾病を学校における健康診断で早期に発見し、支援につなげていく環境整備に向けた検討を行う。

・ 障害のあるこどもができるだけ身近な地域で、障害の特性に応じた療育などが受けられるよう支援するとともに、こどもの成長に必要な集団的な養育のため、保育所や幼稚園等における障害のあるこどもの受入体制の整備促進を図る。また、その際、障害のあるこどもと障害のないこどもが遊びや生活を通じて互いを理解し、共に成長し合うことができるよう努める。

・ 肢体不自由児が十分なリハビリを受けることができるよう、引き続き、医療型障害児入所施設における有期有目的の支援等を実施する。

・ 発達障害が疑われるこどもの早期発見、発達障害の特性に合った対応を保護者が行えるようにするための有効な支援策の開発・普及、診断を行える専門的な医療機関の確保、発達障害者支援センターの機能強化等による長期にわたる継続した相談支援体制の整備などにより、地域における支援体制の充実を図る。

・ 障害のあるこどもが障害児通所支援や福祉サービス利用の必要性があるときに相談支援が円滑に実施されるよう、専門性向上を図る。

・ 障害のあるこどもの栄養管理に必要な相談体制及び連携体制の整備に向けた検討を行う。

・ 思春期のこころの問題も含むこどもの性と健康の問題に対応するため、学校医、小児科医、産婦人科医、性と健康の相談センター、精神保健福祉センター等の連携を推進する。

(5) 生涯にわたる保健施策

・ 思春期や更年期に至る女性が各ライフステージにおける健康状態に応じて適確に自己管理を行うための女性ヘルスケアやがん教育などの健康教育を推進する。

・ 思春期、妊娠、出産等のライフステージに応じた性と健康の相談支援等を行う「性と健康の相談センター事業」の推進等により、男女を問わず、性や妊娠に関する正しい知識の普及を図り、健康管理を促すプレコンセプションケアを推進する。特に、若年女性の痩せは骨量減少、低出生体重児出産のリスク等との関連があることを踏まえ、妊娠前からの望ましい食生活の実践等、適切な健康管理に向けて、各種指針等により普及啓発を行う。

・ 女性の健康や妊娠、低用量ピルの活用等に伴う健康管理の方法、女性特有の悩みや疾病に関する正しい知識の普及及び社会的関心の喚起を図るため、「女性の健康週間」等を通じて、各種啓発及び行事等を実施する。

・ 子宮けいがん、乳がん等の若年期に発症することの多い女性のがんに対する検診を推進するとともに、これらに対する相談支援、知識、予防、検診等の啓発を行う。

・ 性と健康の相談センター事業の推進等により、男女を問わず、不妊症や不育症に関する正しい知識の情報提供や相談体制の強化を図るとともに、こどもを持ちたいと願う家庭の選択肢として、里親制度や特別養子縁組制度の普及啓発を実施する。

・ 医療的ケア児等が保健、医療、障害福祉、保育、教育等の支援を円滑に受けることができるようにするなど、各関連分野が共通の理解に基づき協働する包括的な支援体制の構築を図る。

・ 日常的に運動習慣のない女性がスポーツを実施することにより健康増進や維持、疾病予防に大きな貢献が期待できること等を踏まえ、女性が生涯を通じてスポーツに親しむことを目的として女性の運動・スポーツへの参加に向けた取組を推進する。

・ 女性アスリートが心身ともに健康な状態でスポーツを継続し、引退後も生涯にわたり健康を維持できるよう、鉄欠乏性貧血や痩せによる無月経に対する栄養管理を含めた健康支援のための取組を推進する。

・ 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13(2001)年法律第31号)に基づき、配偶者からの暴力の防止や被害者の保護等を推進する。

・ アルコール健康障害対策基本法(平成25(2013)年法律第109号)に基づき、20歳未満の者や妊婦の飲酒防止等、アルコール健康障害対策を推進する。

・ 妊産婦等における適切な服薬管理や女性の健康を支援できるよう、薬剤師の研修を行うとともに、健康サポート薬局における医薬品等に係る健康相談等を推進する。

・ DOHaD(Developmental Origins Health and Disease)11の概念を踏まえて、妊娠中の体重増加不良の予防やストレスの軽減など生涯を通じた疾病予防対策を実施する。

(6) 子育てやこどもを育てる家庭への支援

・ 国、地方公共団体のみならず、地域、学校や企業等も含め、地域社会全体でこどもの健やかな成長を見守り育む地域づくりを推進し、成育医療等におけるソーシャルキャピタルの醸成の推進につなげる。特に、働きながら子育てする女性とそのこどもの健康支援のための取組を推進する。

・ 孤立した子育てによって虐待につながることのないよう、地域の身近な場所で、乳幼児のいる子育て中の親子の交流等を実施する地域子育て支援拠点事業等の利用を推進し地域での見守り体制を強化する。

・ 妊婦と父親になる男性が共に、産前・産後の女性の心身の変化を含めた妊娠・出産への理解を深め、共に子育てに取り組めるよう、地方公共団体における両親共に参加しやすい日時設定等に配慮した両親学級等の取組を推進する。

・ 男性の産後うつ等に対して子育て経験のある男性によるピアサポートの実施等、出産や子育てに悩む父親に対する支援を推進する。

・ 市町村における「子ども家庭総合支援拠点」(令和6(2024)年度以降、「子ども家庭総合支援拠点」と「子育て世代包括支援センター」の設立の意義や機能は維持した上で設置される「こども家庭センター」)、「要保護児童対策地域協議会」の機能強化を図る。さらに、児童相談所及び市町村において相談、支援を行う児童福祉司等の確保や専門性の向上、警察、母子保健担当部署等の関係機関との連携や民間団体との協働、育児支援が必要な家庭への訪問支援、SNSを活用した相談支援、児童虐待防止対策に関する医師、歯科医師その他医療従事者への研修の実施などにより、虐待通告や子育ての悩み相談、こどもからの相談に対して確実に対応できる体制の強化を図る。また、児童相談所及び市町村と保育所や幼稚園、小・中学校等の関係機関との連携等により、児童虐待の早期発見・早期対応体制の充実を図る。

・ 令和4(2022)年に成立した児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4(2022)年法律第66号)に基づき、こども家庭センターの設置や、同センターと妊産婦、子育て世帯、こどもが気軽に相談できる子育て世帯の身近な相談機関との密接な連携を促進する等、子育て世帯に対する包括的な支援のための体制強化等を着実に進める。

・ 全ての妊婦・子育て世帯が安心して出産・子育てをできるよう、妊娠時から出産・子育てまで一貫して身近で相談に応じ、様々なニーズに即した必要なサービスにつなぐ伴走型相談支援と、妊婦・子育て世帯に対する経済的支援を一体として実施する事業の全国的な定着と充実を着実に推進する。

・ 児童虐待を発見した人や子育てに悩みを抱える人が適切に通告・相談できるよう、児童相談所虐待対応ダイヤル(189)等を広く国民に周知するとともに、児童虐待防止推進月間等における啓発活動により、社会全体として児童虐待を防止する機運を高める。

・ ひとり親家庭が抱える様々な課題や個別のニーズに対応するため、適切な支援メニューをワンストップで提供する体制を構築するなど、ひとり親家庭が安心して子育てをしながら生活できる環境を整備する。

・ 「子供の貧困対策に関する大綱」(令和元(2019)年11月29日閣議決定)に基づき、複合的な課題をもつ生活困窮世帯のこどもを対象とした居場所づくりを含む学習支援など、こどもの貧困対策を総合的に推進する。

・ ギャンブル等依存症対策基本法(平成30(2018)年法律第74号)に基づき、貧困や児童虐待等の社会問題を生じさせる場合があるギャンブル等依存症である者等やその家族に対する支援を推進する。

・ いわゆる「こどもホスピス」などの、小児がんの患者や小児慢性特定疾病を抱える児童等が家族や友人等と安心して過ごすことができる環境の整備について検討を進める。

・ 小児慢性特定疾病を抱える児童等、医療的ケア児、発達障害児等の兄弟姉妹への支援を推進する。

・ 仕事と育児の両立を実現していくためには、こどもの急病時に対応できる仕組みとして「病児保育」等による子育て支援を推進する。

3 教育及び普及啓発

(1) 学校教育及び生涯学習

・ 地域において、保護者が安心して家庭教育を行うことができるよう、地域の実情に応じた家庭教育支援の取組を推進する。

・ 学校教育において、乳幼児との触れ合い体験や交流などの実践的な活動を取り入れ、乳幼児期の心身の発達と生活、親の役割と保育、こどもを取り巻く社会環境、子育て支援について理解するとともに、乳幼児と適切に関わるための基礎的な技能を身に付けることや、こどもを生み育てることの意義について考えることを推進する。

・ 学校教育において、発達段階に応じ、予防接種の実施が感染症予防に有効であること等を含めた感染症予防に関する指導を行う。

・ 男女を問わず、人間の身体的・精神的・遺伝学的多様性を尊重しつつ、妊娠、出産等についての希望を実現するため、妊娠・出産等に関する医学的・科学的に正しい知識の普及・啓発を学校教育段階から推進する。(再掲)

・ 思春期や更年期に至る女性が各ライフステージにおける健康状態に応じて適確に自己管理を行うための女性ヘルスケアやがん教育などの健康教育を推進する。(再掲)

(2) 普及啓発

・ 国、地方公共団体のみならず、地域や学校、企業等も含め、地域社会全体でこどもの健やかな成長を見守り育む地域づくりの観点から、「健やか親子21」を基本方針に基づく国民運動として位置付け、こどもの成長や発達に関して、子育ての当事者である親や身近な養育者が正しい知識を持つことに加え、学校や企業等も含めた社会全体で親やこどもの多様性を尊重し、見守り、子育てに協力していくことができるよう、国民全体の理解を深めるための普及啓発を促進する。

・ 女性の健康や妊娠、低用量ピルの活用等に伴う健康管理の方法、女性特有の悩みや疾病に関する正しい知識の普及及び社会的関心の喚起を図るため、「女性の健康週間」等を通じて、各種啓発及び行事等を実施する。(再掲)

・ 子宮けいがん、乳がん等の若年期に発症することの多い女性のがんに対する検診を推進するとともに、これらに対する相談支援、知識、予防、検診等の啓発を行う。(再掲)

・ 妊婦と父親になる男性が共に、産前・産後の女性の心身の変化を含めた妊娠・出産への理解を深め、共に子育てに取り組めるよう、地方公共団体における両親共に参加しやすい日時設定等に配慮した両親学級等の取組を推進する。(再掲)

・ こどもの健やかな成長及び発達並びに健康の維持及び増進のため、「早寝早起き朝ごはん」国民運動や「健やか親子21」の普及啓発等を通じて、保育所、幼稚園、学校等と、家庭や地域等が連携した食育を推進する。(再掲)

・ 医薬品の適正使用等に係る普及啓発を実施する。

・ 性的指向・性自認(性同一性)に関すること、女性・男性であることで複合的に困難な状況に置かれている場合等について、可能なものについては実態の把握に努め、人権教育・啓発活動の促進等の取組を進める。

4 記録の収集等に関する体制等

(1) 予防接種、乳幼児健康診査、学校における健康診断に関する記録の収集、管理・活用等に関する体制、データベースその他の必要な施策

・ 個人の健康等情報を本人や家族が一元的に把握し、日常生活改善や必要に応じた受診、医療機関・学校等での正確なコミュニケーションに役立てるため、引き続き、PHR(Personal Health Record)を推進する。また、予防接種、電子処方箋、乳幼児健康診査、電子カルテ等の医療・保健情報について共有・交換できるよう、「全国医療情報プラットフォーム」の創設に向けた取組を推進する。そのため、乳幼児期・学童期の健診・予防接種等の健康等情報の電子化及び標準化を推進する。また、「母子健康手帳、母子保健情報等に関する検討会」の議論を踏まえ、母子保健情報のデジタル化と利活用を進め、健康管理の充実や母子保健事業の質の向上等を図る。(一部再掲)

(2) 成育過程にある者が死亡した場合におけるその死亡原因に関する情報の収集、管理・活用等に関する体制、データベースその他の必要な施策

・ こどもの死亡時に、複数の機関や専門家(医療機関、警察、消防、行政関係者等)が、こどもの既往歴や家族背景、死に至る直接の経緯、解剖結果等に関する様々な情報を基に死因調査を行うことにより、効果的な予防対策を導き出し予防可能なこどもの死亡を減らすことを目的としたCDR(Child Death Review)について、予防のためのこどもの死亡検証体制整備モデル事業の実施等を通じ、その体制整備に必要な検討を進める。

・ こどもの事故の未然・再発防止及び安全性の向上を図るためのこどもの事故検証に関する取組やその情報発信の推進を図る。

・ これらの取組の実施に当たっては、必要に応じてICTの活用を図るとともに、成育過程にある者のみならず、学校等の関係機関も含めた社会全体の意識を高めるための普及啓発を推進する。

(3) ICTの活用による成育医療等の施策の推進

・ 子育て世帯や関係行政機関等における手続負担の軽減、利便性・福祉の向上等に向けて、関連情報の発信に努め、ICT等の活用による成育医療等の各種施策を推進する。

・ 「母子健康手帳、母子保健情報等に関する検討会」の議論を踏まえ、母子保健情報のデジタル化と利活用を進め、健康管理の充実や母子保健事業の質の向上等を図る。(再掲)

・ 市町村において、SNSを活用したオンライン相談等、母子保健事業におけるオンライン化・デジタル化等に関して、システム等の導入・運用に取り組むことが期待されるとともに、例えば、データを活用して、基本方針を踏まえた計画を策定することなども考えられる。都道府県においては、こうした取組について、広域的な連携等を支援することが望ましい。国は、都道府県による広域的な連携等の支援を推進する。

5 調査研究

・ 社会的要因がこどもの健康に及ぼす影響も含め、妊娠・出産・育児に関する問題や成育過程の各段階において生ずる心身の健康に関する問題に対する調査研究を通じて、成育医療等の状況、施策の実施状況やその根拠となるエビデンス、科学的知見等を収集し、その結果を公表・情報発信することにより、政策的対応に向けた検討を行う。

・ 「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の実施を通じ、こどもの成長・発達に影響を与える環境要因(環境中の化学物質のばく露、生活環境等)を解明し、こどもが健やかに育つ環境の実現を目指す。

・ こどもやこどもを養育する者等の視点も踏まえつつ、成育医療等の提供に関する施策に係る知見の収集・分析等の調査研究を推進するとともに、施策の推進に関する提案や施策の進捗状況や実施体制等に係る客観的な評価、地方公共団体の取組の支援や人材育成等を行うシンクタンク機能の充実を図る。

6 災害時等における支援体制の整備

・ 災害時等における授乳の支援や液体ミルクをはじめとする母子に必要となる物資の備蓄及び活用を推進する。

・ 地方公共団体において、乳幼児、妊産婦、発達障害児、医療的ケア児等の要配慮者に十分配慮した防災知識の普及、訓練の実施、物資の備蓄等を行うとともに、指定避難所における施設・設備の整備に努め、災害からこどもを守るための関係機関の連携の強化を図る。

・ 医療的ケア児等の医療機器を使用する要配慮者への対応について、地方公共団体は、あらかじめ医療、保健、福祉等の関係者と連携を図るとともに、必要に応じて避難所における生活環境の整備に努める。

・ 都道府県は、災害時小児周産期リエゾンの養成・配置並びに平時からの訓練及び災害時の活動を通じて、地域のネットワークを災害時に有効に活用する仕組みを確立し、災害時には、被災地域における患者搬送や医療従事者の支援等を円滑に行うことができる体制を構築する。

・ 今般の新型コロナウイルス感染症流行下における対応も踏まえ、災害発生時や新興感染症まん延時においても母子保健事業を継続して提供できるよう、引き続きオンライン化・デジタル化等を推進する。

・ 新興感染症患者を受け入れる周産期・小児医療機関の設定や、他の医療機関との役割分担について、その状況の把握及び検証を行い、その結果を踏まえ、必要な検討を行う。

7 成育医療等の提供に関する推進体制等

・ 国、地方公共団体のみならず、地域、学校や企業等も含め、地域社会全体でこどもの健やかな成長を見守り育む地域づくりの観点から、成育医療等におけるソーシャルキャピタルの醸成を推進するなど、社会全体で成育医療等に関する取組を推進していく。

・ 成育医療等の各種施策に関する各地域の優良事例の横展開を通じて、各地域の施策の向上を図る。

・ 子育て世帯や関係行政機関等における手続負担の軽減や利便性向上等に向けて、関連情報の発信に努め、ICT等の活用による成育医療等の各種施策を推進する。(再掲)

・ こどもやこどもを養育する者等の視点も踏まえつつ、成育医療等の提供に関する施策に係る知見の収集・分析等の調査研究を推進するとともに、施策の推進に関する提案や施策の進捗状況や実施体制等に係る客観的な評価、地方公共団体の取組の支援や人材育成等を行うシンクタンク機能の充実を図る。(再掲)

[Ⅲ その他成育医療等の提供に関する施策の推進に関する重要事項]

国及び地方公共団体の責務として、成育医療等の提供に関する施策の推進に当たっては、施策の進捗状況や実施体制等を客観的に検証・評価し、必要な見直しにつなげるPDCAサイクルに基づく取組を適切に実施していく。

その際、国は、こうした地方公共団体における取組を推進するため、成育医療等の提供に関する施策について、客観的に検証及び評価を行い、支援を行うために必要な取組について検討を行う。

また、成育基本法第11条第7項において、政府は、成育医療等の提供に関する状況の変化を勘案し、及び前項の評価を踏まえ、少なくとも6年ごとに、基本方針に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならないこととされている。

他方で、成育基本法第19条第1項において、都道府県は、医療法(昭和23(1948)年法律第205号)第30条の4第1項に規定する医療計画その他政令で定める計画を作成するに当たっては、成育過程にある者等に対する成育医療等の提供が確保されるよう適切な配慮をするよう努めるものとするとされている。

このため、今回策定する基本方針については、令和5(2023)年度から令和10(2028)年度までの6年程度を1つの目安として策定する。

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1 令和3(2021)年人口動態統計(確定数)によると、令和3(2021)年において、妊産婦死亡率は2.5(出産10万対)、乳児死亡率は1.7(出生千対)、幼児(1~4歳)の死亡率は13.8(人口10万対)である。

また、令和3(2021)年度「厚生統計要覧」第2―18表によると、諸外国の妊産婦死亡率(出生10万対)は、米国31.3(平成29(2017)年)、英国6.6(平成28(2016)年)、スウェーデン3.5(平成29(2017)年)等である。

さらに、令和3(2021)年人口動態統計月報年計(概数)の概況によると、乳児死亡率(出生千対)は、米国5.4(令和2(2020)年)、英国3.9(令和元(2019)年)、スウェーデン2.1(令和元(2019)年)等である。

2 第16回出生動向基本調査によると、平均理想子ども数は、2.32(平成27(2015)年)から2.25(令和3(2021)年)へ低下傾向である。

3 令和3(2021)年人口動態統計(確定数)によると、全出生数中の出生時体重2500g未満の児の割合は、昭和55(1980)年5.2%、平成2(1990)年6.3%、平成12(2000)年8.6%、平成22(2010)年9.6%、令和3(2021)年9.4%となっており、長期的に増加傾向にあったが、この15年程度は横ばい傾向である。

4 令和3(2021)年人口動態統計(確定数)の統計表(e―Stat)上巻第5―17表死因順位別にみた性・年齢(5歳階級)別死亡数・死亡率(人口10万対)及び割合による。

5 疾病などの身体的な課題への対応だけでなく、こどもの悩みなどの心理面や、家庭の状況などの社会面が健康に及ぼす影響も考慮して、総合的に適切な支援を行う観点をいう。

6 令和3(2021)年度衛生行政報告例によると、20歳未満の人工妊娠中絶実施率(人口千対)は7.1(平成23(2011)年度)から3.3(令和3(2021)年度)へ減少している。なお、令和3(2021)年人口動態統計(確定数)によると、15歳未満の出生数については、直近20年間は30人台から60人台の間で推移しており、令和3(2021)年は32人である。

7 朝食を欠食するこどもの割合は、令和4(2022)年度において、小学6年生は5.6%、中学3年生は8.1%である(令和4(2022)年度全国学力・学習状況調査から把握)。

8 「PDCAサイクル」とは、事業活動における生産管理や品質管理等の管理業務を円滑に進める手法の1つであり、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善することをいう。

9 母子健康手帳、母子保健情報等に関して検討を行うことを目的とし、学識経験者・関係団体代表者等の協力を得て、厚生労働省子ども家庭局長の下に開催している検討会。令和4(2022)年5月27日に第1回開催。

10 出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦をいう(児童福祉法第6条の3第5項)。

11 令和元(2019)年「健やか親子21(第2次)」の中間評価等に関する検討会報告書によると、「DOHaD」とは、Developmental Origins of Health and Diseaseの略であり、「将来の健康や特定の病気へのかかりやすさは、胎児期や生後早期の環境の影響を強く受けて決定される」という概念をいう。