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○医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の質疑応答集(Q&A)について

(令和5年1月31日)

(事務連絡)

(各都道府県衛生主管部(局)あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課通知)

医薬品の治験を実施する際の一般的な留意事項については、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年厚生省令第28号。以下「医薬品GCP」という。)及び「「「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のガイダンスについて」の改正について」(令和3年7月30日付け薬生薬審発0730第3号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)により示してきたところです。

今般、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)における医薬品GCPに関する相談事例等の蓄積に伴い、治験の準備又は実施についての一般的な留意事項を別添のとおり質疑応答集(Q&A)として取りまとめましたので、貴管内関係業者に対して周知いただきますよう御配慮願います。

なお、Q&Aの内容は、PMDAにおける相談事例の蓄積状況、技術的な進歩及び海外の規制状況等の変化等を踏まえて、適宜見直すこととしておりますのでご留意ください。

なお、本通知の写しについて、別記の関係団体、独立行政法人医薬品医療機器総合機構および各地方厚生局宛てに発出しますので、念のため申し添えます。

別記

日本製薬団体連合会

日本製薬工業協会

米国研究製薬工業協会在日技術委員会

一般社団法人欧州製薬団体連合会

公益社団法人日本医師会

公益社団法人日本歯科医師会

一般社団法人日本病院薬剤師会

公益社団法人日本看護協会

一般社団法人日本CRO協会

日本SMO協会

公益社団法人全国自治体病院協議会

一般社団法人日本病院会

公益社団法人全日本病院協会

一般社団法人日本医療法人協会

公益社団法人日本精神科病院協会

総務省自治行政局公務員部福利課

文部科学省高等教育局医学教育課

防衛省人事教育局衛生官付

日本郵政株式会社事業部門病院管理部

健康保険組合連合会

国家公務員共済組合連合会

一般財団法人船員保険会

公益社団法人全国国民健康保険診療施設協議会

全国厚生農業協同組合連合会

日本赤十字社

独立行政法人労働者健康安全機構

独立行政法人国立病院機構

独立行政法人地域医療機能推進機構

独立行政法人医薬品医療機器総合機構

各地方厚生局

(別添)

令和5年9月28日改訂

医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の質疑応答集(Q&A)

※ 本質疑応答集においては、次のとおり略語を用いるものとする。

「薬機法」

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)

「医薬品GCP省令」

医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号)

「医薬品GCP省令ガイダンス」

「「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のガイダンスについて」の改正について(令和3年7月30日付け薬生薬審発0730第3号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)

(1) 治験薬、治験使用薬に関する事項

Q1

医薬品GCP省令第16条第2項のただし書きにおいて「被験者、治験責任医師等若しくは治験協力者が被験薬及び対照薬を識別できない状態にしていない治験薬を用いる治験を実施する場合にあっては、この限りでない。」とあるが、非盲検試験において既に市販されている医薬品を治験薬として使用する場合は、医薬品GCP省令第16条第2項のただし書きの適用を受け、使用する治験薬に医薬品GCP省令第16条第2項各号に掲げる事項が記載されていてもよいか。

A1

貴見のとおり。なお、非盲検試験以外にも、評価者盲検で実施する二重盲検試験、単盲検試験又は二重盲検期間から継続して実施する非盲検期間のある試験で、被験者又は実施医療機関担当者(治験薬管理者を含む。)においてどの薬剤であるか識別できる状態にある治験薬を用いる場合には、当該治験薬について医薬品GCP省令第16条第2項のただし書きの考え方を準用することも差し支えない。評価者盲検で実施する二重盲検試験等の盲検性を維持する必要がある試験については、盲検性を適切に確保する必要があることに留意すること。

Q2

医薬品GCP省令第16条第1項では治験薬の容器又は被包に記載すべき事項が定められているが、非盲検試験において既に市販されている医薬品を治験薬として使用する場合、再包装せずに市販されている医薬品の表示の上に、医薬品GCP第16条第1項各号に掲げる事項を記載したラベルを貼付し、実施医療機関に交付することでよいか。

A2

貴見のとおり。治験依頼者は非盲検試験において既に市販されている医薬品を治験薬として使用する場合、再包装せずに市販されている医薬品の表示の上に、医薬品GCP省令第16条第1項各号に掲げる事項を記載したラベルを貼付し、実施医療機関に治験薬を交付することでよい。

Q3

非盲検試験において既に市販されている医薬品を治験薬として使用する場合であっても、その容器又は被包には、医薬品GCP省令第16条第1項各号に掲げる事項を記載することが必要である。しかし、治験薬の品質確保等の観点から上記事項を記載することが困難な場合であり、かつ市販薬との取り違えを防止するような対策等を講じることができる場合には、医薬品GCP省令第16条第1項各号に掲げる事項の記載について、容器又は被包に記載せず、治験薬を梱包する外箱にのみ記載の上で交付することでよいか。

A3

貴見のとおり。治験薬の品質確保等の観点から医薬品GCP省令第16条第1項各号に掲げる事項を記載することが困難な場合であり、かつ市販薬との取り違えを防止するような対策等を講じることができる場合であれば、医薬品GCP省令第16条第1項各号に掲げる事項の記載については、容器又は被包に記載せず、治験薬を梱包する外箱にのみ記載の上で交付することでよい。

容器又は被包への記載が困難な場合の事例としては、次の場合が考えられる。

・ 使用直前まで治験薬を梱包する外箱を開封できない製剤(無菌製剤又は吸湿性を有する製剤等)である場合

・ ラベルの貼り替え等により製剤としての付加機能を阻害する恐れがある製剤(針刺し防止機能のある注射製剤等)である場合

・ ラベルの貼り替え等を実施することで作業者のリスクを上げる危険性がある製剤(放射性医薬品等)である場合

・ 包装形態がラベルの貼り替えが困難な形状の製剤である場合

・ 極低温下又は冷凍下での保管が必要である場合

・ 開封により品質確保に影響する場合

Q4

治験実施計画書に規定する治験薬(被験薬及び対照薬)ではない治験使用薬(併用薬、レスキュー薬、前投与薬等)については、実施医療機関が在庫として保管する医薬品を使用してもよいか。

A4

貴見のとおり。治験実施計画書に規定された治験薬(被験薬及び対照薬)ではない治験使用薬(併用薬、レスキュー薬、前投与薬等)については、実施医療機関が在庫として保管する医薬品を使用してもよい。この場合、治験依頼者が品質上及び管理上問題ないと判断しており、かつ実施医療機関の合意のもと治験使用薬の適切な管理が保証されている必要があることに留意すること。

ただし、被験薬及び対照薬については、既に市販されている医薬品であっても、治験依頼者が治験薬として交付する必要がある。

Q5

治験実施計画書に規定する治験薬(被験薬及び対照薬)ではない治験使用薬(併用薬、レスキュー薬、前投与薬等)については、実施医療機関が院外処方を希望し、治験依頼者が院外処方を行うことが品質上及び管理上の懸念がないと判断して院外処方をすることについて了承している場合には、実施医療機関が処方箋を発行し調剤薬局の在庫から交付してもよいか。

A5

貴見のとおり。この場合において、実施医療機関は調剤薬局との間で医薬品GCP省令第39条の2による契約を締結する必要はないが、院外処方する場合の手順を定めるとともに、治験薬以外の治験使用薬が調剤薬局から被験者に対して確実に交付されていることを確認すること。また、治験依頼者や実施医療機関は、調剤薬局における治験薬以外の治験使用薬の管理状況を確認する必要はない。なお、当該薬剤費用は、実施医療機関が院外処方する場合であっても、治験依頼者が負担することが原則にはなるが、当該薬剤費用を被験者が支払うことについて、説明文書に記載した上で、被験者に対して文書により適切に説明し、文書により同意が得られていれば、この限りではない。

Q6

治験実施中に、治験依頼者(又は治験国内管理人)の名称又はその住所が変更になった場合、既に製造済みの治験薬の容器又は被包に記載される医薬品GCP省令第16条第1項第2号に掲げる事項(治験依頼者又は治験国内管理人の氏名及び住所)を変更しなくてもよいか。

A6

治験実施中に、治験依頼者又は治験国内管理人の名称又はその住所が変更になった場合には、変更後遅滞なく、治験薬の容器又は被包に記載される医薬品GCP省令第16条第1項第2号に掲げる事項(治験依頼者又は治験国内管理人の氏名及び住所)を記載する必要がある。

なお、再包装せずに治験薬の容器又は被包に、変更後の治験依頼者又は治験国内管理人の氏名及び住所を記載したラベルを貼付することでも差し支えがないが、治験薬の品質確保等の観点から、上記事項を記載することが困難である場合(A3の事例参照。)には、変更前の治験依頼者又は治験国内管理人の氏名及び住所を記載した治験薬を使用することもできる。この場合においては、変更に関する内容を治験依頼者又は治験国内管理人から実施医療機関に対して連絡するとともに、実施医療機関との合意を得ること。当該経緯及び理由については文書等に記録した上で、実施医療機関における適正使用、適切な管理が行えるよう、治験依頼者又は治験国内管理人の責任の下、必要な措置を講ずること。

Q7

実施医療機関と運搬業者との間で医薬品GCP省令第39条の2に基づく契約が締結されていれば、治験使用薬を実施医療機関から被験者に配送することができるとされているが、当該契約については、運搬業者が医薬品GCP省令第39条の2に掲げる事項を含む約款を作成し、実施医療機関がその約款の内容を確認し依頼する形で実施してもよいか。

A7

貴見のとおり。医薬品GCP省令第39条の2の各号に掲げる事項が約款に含まれていることを確認することをもって、同省令第39条の2の契約に相当するものとみなすことができる。実施医療機関は、医薬品GCP省令第39条の2に掲げる事項を含む約款の写しを保存しておくこと。

Q8

治験使用薬を実施医療機関から被験者に配送する際、被験者本人が運搬業者から直接受け取ることができる場所であれば、送付先として指定してもよいか。

A8

貴見のとおり。治験使用薬を実施医療機関から被験者に配送する際、被験者本人が対面で運搬業者から直接受け取ることができる場所(例えば、被験者の勤務先、かかりつけ医療機関、近隣の調剤薬局、その他本人が指定した場所)であれば、送付先として指定することができる。ただし、受取時に本人確認が必要である。なお、被験者本人が治験使用薬を受け取る場所に係る事項であることから、受け取り場所(かかりつけ医療機関等)との間に医薬品GCP省令第39条の2に基づく契約は締結する必要はない。

Q9

実施医療機関は、被験者がやむを得ない事情により実施医療機関に来院できない等により治験使用薬を直接受け取れない場合、当該被験者から合意が得られていれば、代わりに来院した被験者の家族(被験者の親権を行う者、後見人その他これらに準じる者を含む。)に対し、治験使用薬を交付してもよいか。

A9

実施医療機関は、治験責任医師又は治験分担医師(以下「治験責任医師等」という。)により治験使用薬の投与開始又は投与継続可能と判断された被験者において、治験責任医師等の責任の下、当該試験の内容(治験使用薬の性質、投与経路及び投与期間等)や被験者の状態等を考慮の上、被験者から合意が得られている場合に限り、被験者の代わりに来院した家族に交付することができる。その際、治験責任医師等は、被験者が家族から治験使用薬等を適切な時期に確実に受け取ることが可能であることを家族の署名やその他の可能な手段で確認すること。また、治験責任医師等は、治験使用薬の交付等の経緯や対応の記録を作成し保存すること。

(2) 治験審査委員会に関する事項

Q10

治験審査委員会(IRB)は、対面形式で行われた場合と同等の質で審議が可能であり、かつ、会議の開催要件、方法、運営等の必要な手順を手順書に定めていれば、オンライン形式又はオンライン形式と対面形式を組み合わせた方法により開催してもよいか。

A10

貴見のとおり。なお、通常は対面形式で開催する場合であっても、パンデミック等の影響により対面形式による審議が困難となる事態を想定し、予めオンライン形式又はオンライン形式と対面形式を組み合わせた方法でも開催できるよう手順を定めておくことが望ましい。

(3) その他

Q11

パンデミック等の影響により、実施中の治験において治験使用薬を被験者宅に速やかに配送する必要があるが、事前に実施医療機関と運搬業者との間で医薬品GCP省令第39条の2に基づく委受託契約を締結することが難しい場合には、治験依頼者が選定・契約する運搬業者を利用し、実施医療機関から被験者宅に配送してもよいか。

A11

パンデミック等の緊急事態に限定した対応として、実施医療機関と治験依頼者で協議し、至急の対応を要する場合は可能である。ただし、治験使用薬の品質管理や被験者の個人情報等の取扱いを含めた業務内容を適切に取り決め、被験者宅への治験使用薬の配送業務に係る責任の所在は実施医療機関にあることを両者で合意している旨の記録を残した上で実施すること。その場合においても、事後的に実施医療機関と運搬業者との間で医薬品GCP省令第39条の2に基づく委受託契約を締結するとともに、経緯及び対応の記録を作成し保存すること。

Q12

パンデミック等の影響により、実施医療機関へのモニタリング担当者の訪問が制限され、モニタリング計画のとおりにオンサイトモニタリングを実施できない場合、モニタリング計画を変更することは可能か。

A12

モニタリング計画に基づくオンサイトモニタリングが困難な場合は、リスク評価を行った上で、中央モニタリングを含め、代替となるモニタリング手法を検討し、その結果を踏まえてモニタリング計画等を見直し、変更した方法について文書化することは可能である。ただし、オンサイトモニタリングができない理由及びその対応の記録を作成し保存すること。なお、パンデミック等の影響によりオンサイトモニタリングの実施が困難となる事態を想定し、予め代替となるモニタリング手法を規定しておくことが望ましい。

Q13

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(平成30年3月(令和5年3月一部改訂)厚生労働省)において、「治験や臨床試験等を経ていない安全性の確立されていない医療を提供するべきでない」とあるが、治験をオンラインでの診療で行ってはならないのか。

A13

治験は当該指針の対象として想定されておらず、治験において適切に行われるオンラインでの診療について治験実施計画書に規定している場合は、実施して差し支えない。ただし、治験実施計画書を作成する際、一般にオンラインでの診療では対面診療に比べて得られる患者の心身の状態に関する情報が限定されること等に留意し、慎重に判断すること。治験実施計画書においてオンラインでの診療の実施が許容されている場合であっても、被験者の状態等を考慮の上、被験者保護の観点から、治験責任医師等がオンラインでの診療の実施の可否を判断すること。

Q14

医薬品GCPにおいて規定されている原資料には「正確な複写であることが検証によって保証された複写物又は転写物」が含まれるが、複写物を元の文書の代わりとして置き換えて、元の文書を廃棄してよいか。

A14

貴見のとおり。元の文書は感熱紙等の長期の保存に適さない記録に限らない。また、複写物は電磁的記録であっても差し支えない。ただし、元の文書を廃棄する場合には、当該複写物は「保証付き複写」の要件を満たすこと。「保証付き複写」とは、使用媒体によらず、元の記録からの複写物で、元の記録の背景、内容及び構成を説明するデータを含め、同一の情報を有することが保証された(すなわち、日付入り署名が記入された又はバリデートされた過程により作成された)ものをいう。また、当該複写物の真正性、保存性、見読性についても考慮すること。

Q15

治験関連文書は、電磁的記録としてクラウド等システムに保存することが可能であり、その留意事項は「治験関連文書における電磁的記録の活用に関する基本的考え方」(平成25年7月1日付け厚生労働省医薬食品局審査管理課事務連絡)に示されている。これについて、電磁的記録を保存するクラウド等システムから、何らかの理由により電磁的記録を退避させ、当該資料がクラウド等システムに保存される資料と相違ないことを保証する手続きをとっていれば、その退避させた電磁的記録を保存することでよいか。

A15

治験関連文書の電磁的記録を保存するクラウド等システムには、個々の文書にデジタル署名を行い保存するシステム並びに各種文書及び監査証跡を紐づけ保存するシステムが存在する。後者のシステムからの退避方法としては、同様の機能をもった新しいクラウド等システムに対して、見読性を保持しながら監査証跡と各種文書を移行させる方法と、DVD等のメディアに対して監査証跡と各種文書を紐づけつつ出力しシステムを介さなくても見読性を確保できるように留意しながら移行させる方法がある。いずれの方法であっても、退避に関する手順書を作成の上、その手順に従って退避するとともに、退避後にシステムから全ての電磁的記録が漏れなく出力されており、事実経過を検証するために必要な情報(監査証跡等)とともに移行し、真正性、見読性、保存性が確保できるのであれば、退避された電磁的記録を保存することでよい。

ただし、前者の方法で退避する場合には、旧システムと新システムの管理者・ベンダーが連携し、十分にバリデーションを行うことが重要であり、電磁的記録の正確な移行が保証されていることを確認すること。また、後者の方法で退避する場合には、それぞれの情報を紐づけながら、事実経過が検証できるように退避されていることを確認すること。

なお、クラウド等システムからのデータの退避については、クラウド等システムの利用者の都合だけでなく、当該システムを運営・管理するベンダーが事業を廃止するなど事業者の都合で必要となる場合もある。そのため、クラウド等システムを選定するにあたっては、本Q&Aを参考にデータが当該システムから適切に退避できるようになっているかを予め確認しておくこと。