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○「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」の公布及び一部施行について(通知)

(令和4年12月9日)

(/医政発1209第22号/産情発1209第2号/健発1209第2号/生食発1209第7号/保発1209第3号/)

(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省医政局長、厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官、厚生労働省健康局長、厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官、厚生労働省保険局長通知)

(公印省略)

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」(令和4年法律第96号。以下「改正法」という。)が本日公布され順次施行されることとなりました。

また、改正法の一部が公布日等に施行されることに伴い、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(令和4年政令第377号。以下「整備政令」という。)及び感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令(令和4年厚生労働省令第165号。以下「整備省令」という。)が本日公布され、関係法令が改正されました。令和5年4月1日以降の施行に必要な政省令及び通知等については、今後制定し、その具体的な内容について別途通知する予定です。

これらの改正の趣旨等は下記のとおりですので、十分御了知の上、管内の関係機関等に対し、その周知を図るとともに、その運用に遺漏のなきようお願いします。なお、本改正に関するQ&A等を後日発出する予定ですので、当該Q&A等についても御参照いただきますようお願いします。

第一 改正の趣旨

新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症の発生及びまん延に備えるため、国又は都道府県及び関係機関の連携協力による病床、外来医療及び医療人材並びに感染症対策物資の確保の強化、保健所や検査等の体制の強化、情報基盤の整備、機動的なワクチン接種の実施、水際対策の実効性の確保等の措置を講ずるもの。

第二 改正の概要

一 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部改正

1 疑似症サーベイランスの強化(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

現在、重症の原因不明の感染症の早期探知を行うために、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)第14条第1項に基づき、指定届出機関(疑似症定点)からの疑似症の発生動向を調査する「疑似症サーベイランス」を運用しているが、指定届出機関からの届出のみでは正確に把握することが困難な感染症を迅速に探知し、積極的疫学調査に結びつけるため、今後、一定の状況下において、本サーベイランスの届出機関を拡大し、積極的疫学調査の早期実施等に資する届出項目を設定できるようにすることで、強化された「疑似症サーベイランス」を実施できるようにする。

(2) 改正の概要

① 都道府県知事(保健所設置市区の長を含む。③において同じ。)は、二類感染症、三類感染症、四類感染症又は五類感染症の疑似症のうち厚生労働省令で定めるものであって当該感染症にかかった場合の病状の程度が重篤であるものが発生し、又は発生するおそれがあると厚生労働大臣が認めたときは、指定届出機関以外の医師に対し、当該感染症の患者又は当該死亡した者の②に記載する事項を届け出ることを求めることができることとする(当該医師は、正当な理由がない限り、求めに応じなければならないこととする)。(感染症法第14条第7項及び第8項関係)

② また、当該届出については、直ちに提出することとし、届出に記載する事項としては、患者等の氏名や住所、症状等とする。(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則(平成10年厚生省令第99号。以下「感染症法施行規則」という。)第7条第4項及び第5項関係)

③ 当該届出を受けた都道府県知事は、当該届出の内容を厚生労働大臣に報告しなければならないこととする。(感染症法第14条第9項関係)

④ なお、「疑似症サーベイランス」の運用に当たっては、国立感染症研究所において「疑似症サーベイランスの運用ガイダンス」を作成しているところ、①の「正当な理由」等本改正を踏まえた運用の変更については、別途、お示しする。

2 厚生労働大臣による健康監視業務の代行(公布日から10日後施行)

(1) 改正の趣旨

新型インフルエンザ等感染症に感染したおそれのある入国者の健康監視は、その感染力の強さに鑑み、患者発生時にその周囲の者への調査をできる限り早期に開始する必要があるため、本来は、都道府県又は保健所設置市等において実施される。しかしながら、今般の新型コロナウイルス感染症の対応にあっては、市中感染の増加により都道府県等の業務がひっ迫したことを受け、都道府県等の事務負担を軽減しながら入国者に対する健康確認・感染者の把握を迅速に行うべく、厚生労働省において、健康監視業務を事実上代行してきたという経緯がある。これを踏まえ、国内において新型インフルエンザ等感染症の患者が増加し都道府県等の業務がひっ迫する場面においては、国が入国者の健康状態の確認等を代行できることにつき、法律上の根拠を設けることとする。

(2) 改正の概要

① 厚生労働大臣は、都道府県知事(保健所設置市区の長を含む。本項目及び②において同じ。)から要請があり、かつ、感染症法等の規定により当該都道府県知事が処理することとされている事務の実施体制その他の地域の実情を勘案して、当該都道府県又は保健所設置市等における新型インフルエンザ等感染症等のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該都道府県知事に代わって自ら検疫法(昭和26年法律第201号)第18条第4項に規定する者に対し、健康状態の報告の求めや質問の措置を実施するものとする。(感染症法第15条の3第5項関係)

② 厚生労働大臣は、都道府県知事の事務を代行するときは、その対象となる者にその旨を通知するとともに、当該報告又は質問の結果、健康状態に異状を生じた者を確認したときは、直ちにその旨を都道府県知事に通知するものとし、当該通知を受けた都道府県知事は、当該職員に必要な調査等をさせることができるものとする。(感染症法第15条の3第6項及び第7項関係)

3 都道府県と市町村の間の情報共有(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

住民に対するきめ細かいリスクコミュニケーションを含む周知・広報や住民からの相談受付等を実施するため、都道府県知事は、市町村長に対し情報の公表に関する必要な協力を求めることができることとし、都道府県知事は、当該協力のため必要があると認めるときは、当該市町村の長に対して必要な情報を提供することができる旨の規定を新設する。

(2) 改正の概要

① 都道府県知事は、感染症法第16条第2項に規定する新型インフルエンザ等感染症等に係る発生等の公表が行われたときから新型インフルエンザ等感染症等と認められなくなった旨の公表等が行われるまでの間(以下「感染症発生・まん延時」という。)、当該公表が行われた感染症の発生の状況、動向及び原因に関する情報に対する住民の理解の増進に資するため必要があると認めるときは、市町村長に対し、必要な協力を求めることができることとする。(感染症法第16条第2項関係)

② また、都道府県知事は、当該協力の求めに関し必要があると認めるときは、協力を求めた市町村長に対し、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症の患者又は新感染症の所見がある者(当該都道府県内に居住地を有する者に限る。)の数及び当該者の居住する市町村の名称、当該者がこれらの感染症の患者又は所見がある者であることが判明した日時その他厚生労働省令で定める情報を提供できることとする。(同条第3項関係)

③ その際、都道府県知事は個人情報の保護に留意しなければならないこととする。(同条第4項関係)

④ 情報提供の対象となる「厚生労働省令で定める情報」については、都道府県知事が必要と認める情報とする。(感染症法施行規則第9条の8関係)

4 健康観察等に係る一般市町村の長の協力及び情報提供(公布日から10日後施行)

(1) 改正の趣旨

都道府県知事(保健所設置市区の長を含む。本項目及び(2)において同じ。)は、新型インフルエンザ等感染症の濃厚接触者及び患者等に対し、当該者の居宅等若しくはこれに相当する場所から外出しないこと等の協力を求める時は、必要な生活支援を行うよう努める(感染症法第44条の3第4項)こととされているが、住民に身近な存在である一般市町村(保健所設置市区以外の市町村をいう。以下同じ。)の宿泊・自宅療養者・高齢者施設での療養者等(以下「宿泊・自宅療養者等」という。)への良好な療養環境の整備への一層の参画を求める観点から、都道府県知事は、一般市町村の長に対し、宿泊・自宅療養者等の健康観察等に関して必要な協力を求めるものとする。あわせて、一般市町村の長は、協力に必要な範囲で患者情報等の提供を求めることができる旨を、法律上明記する。

(2) 改正の概要

① 都道府県知事は、新型インフルエンザ等感染症若しくは新感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者、新型インフルエンザ等感染症の患者又は新感染症の所見がある者に健康状態の報告又は外出自粛の協力を求めるときは、必要に応じ、一般市町村の長に対して、協力を求めるものとする。また、協力を求められた一般市町村の長は協力に必要な範囲で患者情報等の提供を求めることができるものとする。このため、都道府県知事は一般市町村の長と連携して健康観察等を実施する場合は、必要な範囲で患者情報等の提供を行っていただきたい。(感染症法第44条の3第6項及び第7項並びに第50条の2第4項関係)

② また、本改正により、都道府県知事が当該事務を行うにあたり、一般市町村の長に必要な協力を求めるものとすることとなるため、当該協力の求めに応じて健康状態の報告又は外出自粛の協力の求めに関する事務に従事した市町村の公務員又は公務員であった者についても、その職務の執行に関して知り得た人の秘密を正当な理由がなく漏らした場合の罰則規定(感染症法第73条第2項)の対象とする。

③ 運用に当たっては、一般市町村の長が都道府県知事に対し、その協力に必要な範囲で患者情報等の提供を求めることができる旨を法律上明記したことを踏まえ、積極的に一般市町村と連携し、宿泊・自宅療養者等の健康観察や生活支援等に対応いただきたい。なお、本規定は、災害時において被災した宿泊・自宅療養者等や濃厚接触者の避難に係る都道府県等と一般市町村との情報共有にも活用できる。

④ 健康観察等に係る一般市町村の長の協力については、各都道府県の予防計画の策定過程等において、都道府県と市町村の間で協議し、役割分担とともに、費用負担についてもあらかじめ合意を得ておくことが望ましい。

5 厚生労働大臣による総合調整(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

厚生労働大臣に、感染症発生・まん延時の場合に限り、都道府県知事や保健所設置市区の長、医療機関等に対する感染症の予防に関する人材(感染症の専門家や保健師等)の確保や患者の移送等の感染症のまん延防止の事項に関する総合調整権限を創設する。

(2) 改正の概要

① 厚生労働大臣による総合調整権限は、感染症発生・まん延時であって都道府県の区域を超えた感染症の予防に関する人材の確保、患者の移送その他感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときに、都道府県知事や保健所設置市区の長、医療機関その他の関係者に対して行使できるものとする。(感染症法第44条の5第1項及び第51条の2第1項関係)

② また、都道府県知事又は保健所設置市区の長が他の都道府県知事や保健所設置市区の長、医療機関その他の関係者の必要な協力を求めることも考えられるため、都道府県知事又は保健所設置市区の長から総合調整についての要請があった場合で、厚生労働大臣が総合調整の必要があると判断した場合は、当該要請に応諾し総合調整を行うこととする。(感染症法第44条の5第2項及び第51条の2第2項(第64条第1項において準用する場合を含む。)関係

③ さらに、厚生労働大臣が行った総合調整の結果に対して、都道府県知事や保健所設置市区の長、医療機関その他の関係者が意見を申し出ることができることとするとともに、厚生労働大臣が総合調整を行うために必要があると認めるときは、報告又は資料の提出を求めることができることとする。(感染症法第44条の5第3項及び第4項並びに第51条の2第3項関係)

④ 加えて、感染症法に基づく厚生労働大臣の総合調整と新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号。以下「特措法」という。)に基づく政府対策本部長の総合調整とで、措置の内容に齟齬が生じることを防ぐため、厚生労働大臣が総合調整を行う必要が生じた場合は、特措法第18条第1項に規定する基本的対処方針との整合性の確保を図らなければならないこととする。(感染症法第44条の5第5項及び第51条の2第3項関係)

⑤ その他、総合調整権限及び既存の指示権限については、令和6年4月1日施行予定の基本指針において、方針に関する事項を規定することとしており、別途、お示しする。都道府県知事、保健所設置市区の長又は医療機関その他の関係者が厚生労働大臣の総合調整に関し、要請又は意見の申し出を行う場合については、以下の宛先までご連絡いただきたい。

(連絡先)

・ 厚生労働省健康局結核感染症課

6 都道府県知事による総合調整、指示(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

都道府県知事の総合調整権限について、平時から感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するための枠組みづくりに資するよう、対象となる措置を平時から感染症発生・まん延時に至るまでの感染症対策全般に拡大する。

また、都道府県知事が感染症発生・まん延時その他感染症対策を的確かつ迅速に遂行することができるよう、保健所設置市区の長に対する入院勧告、入院措置に係る指示権限を創設する。

(2) 改正の概要

① 都道府県知事による総合調整は、平時であっても感染症対策にあたり必要がある場合に実行できることとし、総合調整の対象についても、保健所設置市区の長の他、市町村長も対象とするほか、医療機関や感染症試験研究等機関といった民間機関も対象とすることとする。(感染症法第63条の3第1項関係)

② また、必要がある場合に限り、保健所設置市区の長から都道府県知事に対して総合調整を要請できることとするほか、都道府県知事が行う総合調整に対して、総合調整の対象となる関係機関が意見を申し出ることができることとするとともに、都道府県知事が総合調整を行うために必要があると認めるときは、報告又は資料の提出を求める規定を置くものとする。(同条第2項から第4項まで関係)

③ 都道府県知事による指示は、感染症発生・まん延時の際、国民の生死に直結する緊急性を有する入院勧告や入院措置の事項に係る措置を実施するために必要な場合に限り、保健所設置市区の長に対してのみ行えることとする。(感染症法第63条の4関係)

④ なお、総合調整及び指示については、令和6年4月1日施行予定の予防計画において、方針に関する事項を規定することとしており、基本指針及び予防計画のガイドラインにおいて別途お示しする。保健所設置市区の長及び他の関係機関等が都道府県知事の総合調整に関し要請又は意見の申し出を行う場合に備え、都道府県におかれては、照会先を管内に周知いただきたい。

⑤ また、当該規定により総合調整又は指示を行った場合は、(ア)当該対応が必要であった理由・背景、(イ)行った総合調整・指示の内容・日付について、以下の宛先までご連絡いただきたい。

(連絡先)

・ 厚生労働省健康局結核感染症課

7 指定感染症に係る規定の整備(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

指定感染症にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、全国的かつ急速なまん延のおそれがあるものと認めたときは、厚生労働大臣は、速やかに、その旨や必要な情報を公表することとし、必要の規定の準用を行うこととする。

(2) 改正の概要

① 厚生労働大臣は、指定感染症にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、全国的かつ急速なまん延のおそれがあるものと認めたときは、速やかに、その旨を公表するとともに、個人情報の保護に留意の上、当該指定感染症の発生の予防又はそのまん延の防止に必要な情報を公表しなければならないこととし、国民の大部分が当該指定感染症に対する免疫を獲得したこと等により全国的かつ急速なまん延のおそれがなくなったと認めたときは、その旨を公表しなければならないこととする。(感染症法第44条の7関係)

② また、指定感染症に関する準用規定を整備する。(感染症法第44条の8及び第44条の9関係)

8 都道府県連携協議会(令和5年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

都道府県に管内の保健所設置市区、感染症指定医療機関、診療に関する学識経験者の団体、消防機関その他関係機関(高齢者施設等の関係団体等)からなる都道府県連携協議会を組織することとする等、平時から関係機関間の連携を図るとともに、感染症発生・まん延時においては、必要な協議を行うよう努めるものとする等、関係機関間における感染症発生・まん延時の対応に関する枠組の構築を推進する。

(2) 改正の概要

① 都道府県に管内の保健所設置市区、感染症指定医療機関、診療に関する学識経験者の団体、消防機関その他関係機関(高齢者施設等の関係団体等)からなる都道府県連携協議会を組織し、構成員が相互の連絡を図ることにより、予防計画の実施状況及びその実施に有用な情報を共有し、その構成員の連携の緊密化を図ることとする。(感染症法第10条の2第1項及び第2項関係)

② 感染症発生・まん延時の際には連携協議会を開催し、必要な対策の実施について協議するよう努めるものとする。(同条第3項関係)

③ さらに、連携協議会において協議が調った事項については、その構成員はその協議の結果を尊重しなければならないこととし、都道府県連携協議会に関し必要な事項は、都道府県連携協議会が定めることとする。(同条第4項及び第5項関係)

④ なお、連携協議会の運営規則等については、今後早期にお示しする。

9 電磁的な方法による届出等の努力義務等(令和5年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

感染症対策において、感染拡大防止のためには、疫学情報がリアルタイムで収集され、関係者で共有されることが重要である。この取組を更に推進させるため、感染症発生等の情報を行政が迅速・効率的に収集し、感染症対策に活かしていくための仕組みとして、厚生労働省令で定める感染症指定医療機関の医師から都道府県に対して届出を行う場合には、電磁的方法(新型コロナウイルス感染症については新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER―SYS)、それ以外の感染症については感染症サーベイランスシステム)を使用して行うものを念頭に置く。)によるものとする義務(それ以外の医師については、努力義務とする。)を課すほか、都道府県から国又は他の都道府県に対する報告等については電磁的方法(対象とする報告等に応じて、HER―SYSや感染症サーベイランスシステム、その他適切な手法を定める予定)によるものとする義務を課すこととする。

(2) 改正の概要

① 都道府県知事若しくは保健所設置市区の長(以下本項目及び②~⑤において「都道府県知事等」という。)から厚生労働大臣又は他の都道府県知事等に対する報告及び通報については電磁的方法によるものとする義務を課すこととする。(感染症法第12条第2項から第4項まで、第13条第3項から第5項まで、第14条第3項、第14条の2第4項並びに第15条第13項及び第14項関係)

② 発生届に関し、厚生労働省令で定める感染症指定医療機関の医師については、電磁的方法により行うことを義務化するとともに、それ以外の医師については努力義務化し、また、当該届出が電磁的方法により行われた場合は、都道府県知事等は、報告等を行ったものとみなすこととする。慢性の感染症の患者を治療する医師による届出及び所定の感染症により死亡した者等の死体を検案した場合の届出についても同様とする。(感染症法第12条第5項から第7項まで並びに第9項及び第10項関係)

③ 獣医師の届出については、電磁的方法により行うことを努力義務化するとともに、当該届出が電磁的方法により行われた場合は、都道府県知事等は、報告等を行ったものとみなすこととする。(感染症法第13条第6項関係)

④ 指定届出機関の管理者による定点届出については、当該機関が厚生労働省令で定める感染症指定医療機関である場合には電磁的方法により行うことを義務化するとともに、それ以外の場合については努力義務化し、また、当該届出が電磁的方法により行われた場合は、都道府県知事等は、報告を行ったものとみなすこととする。(感染症法第14条第4項関係)

⑤ 指定届出機関以外の病院又は診療所の医師による疑似症のサーベイランスの届出については、当該医療機関が厚生労働省令で定める感染症指定医療機関である場合には電磁的方法により行うことを義務化するとともに、それ以外の場合については努力義務化し、また、当該届出が電磁的方法により行われた場合は、都道府県知事等は、報告を行ったものとみなすこととする。(感染症法第14条第10項関係)

10 新型インフルエンザ等感染症等に係る検体の提出要請等(令和5年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

変異株の発生初期において、その性質を迅速に把握するためには、発生届や退院届(「11 新型インフルエンザ等感染症等の患者の退院等の届出」参照)の情報に加え、当該届出に係る患者の病原体が従来株か変異株であるかをゲノム解析により迅速に特定することが重要であることから、国から感染症指定医療機関の管理者その他の者に対する検体提出の要請を可能とし、当該要請を受けた者に対する検体提出義務を課すこと等とする。

(2) 改正の概要

① 厚生労働大臣は、感染症発生・まん延時において、感染症の性質及び感染症にかかった場合の病状の程度に係る情報その他の必要な情報を収集するため必要があると認めるときは、感染症指定医療機関の管理者その他厚生労働省令で定める者に対し、新型インフルエンザ等感染症の患者又は新感染症の所見がある者の検体又は当該感染症の病原体の全部又は一部の提出を要請することができることとする。(感染症法第44条の3の2第1項及び第50条の3第1項関係)

(※) 提出を要請する期間は、変異株の性質を把握するために必要な検体数が集まるまでを念頭に置くが、これらは要請ごとに状況に応じて定めることとする。

② 厚生労働大臣は①の要請をしたときは、都道府県知事(要請を受けた者の所在地が保健所設置市区の区域内にある場合にあっては、その所在地を管轄する保健所設置市区の長。③から⑥までにおいて同じ。)に、その旨を通知するものとする。(感染症法第44条の3の2第2項及び第50条の3第2項関係)

③ ①の要請を受けた者は、①の検体又は病原体の全部又は一部を所持している又は所持することとなったときは、直ちに、その所在地を管轄する都道府県知事に提出しなければならないこととする。(感染症法第44条の3の2第3項及び第50条の3第3項関係)

④ 厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事は、提出を受けた検体又は病原体について直ちに検査を実施し、その結果を、電磁的方法により厚生労働大臣(保健所設置市区の長にあっては、その区域を管轄する都道府県知事を含む。)に報告しなければならないこととする。(感染症法第44条の3の2第4項及び第50条の3第4項関係)

⑤ 厚生労働大臣は、自ら検査を実施する必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、提出を受けた検体又は病原体の一部の提出を求めることができることとする。(感染症法第44条の3の2第5項及び第50条の3第5項関係)

⑥ 感染症指定医療機関等が①の要請に応じない場合における都道府県知事の検体の提出命令及び無償収去について規定することとする。(感染症法第44条の3の2第6項及び第50条の3第6項関係)

⑦ 検体若しくは病原体の受理又は検査の実施に係る事務に従事した公務員又は公務員であった者については、その職務の執行に関して知り得た人の秘密を正当な理由がなく漏らした場合の罰則規定(感染症法第73条第2項)の対象とする。

11 新型インフルエンザ等感染症等の患者の退院等の届出(令和5年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

新型インフルエンザ等感染症等の実態を把握するためには、入院後の患者情報を把握し、当該感染症の重症度等を迅速に把握・分析する必要があることから、感染症指定医療機関を通じて退院時等の患者の情報を収集する仕組みを新設する。

(2) 改正の概要

① 厚生労働省令で定める感染症指定医療機関の医師は、入院している新型インフルエンザ等感染症の患者又は新感染症の所見がある者が退院し、又は死亡したときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該者について厚生労働省令で定める事項を、電磁的方法により当該感染症指定医療機関の所在地を管轄する都道府県知事及び厚生労働大臣(その所在地が保健所設置市区の区域内にある場合にあっては、その所在地を管轄する保健所設置市区の長、都道府県知事及び厚生労働大臣)に届け出なければならないこととする。(感染症法第44条の3の3及び第50条の4関係)

② 上記の入院患者の届出に係る事務に従事した公務員又は公務員であった者については、その職務の執行に関して知り得た人の秘密を正当な理由がなく漏らした場合の罰則規定(感染症法第73条第2項)の対象とする。

12 医薬品の確保に係る国の責務(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

医薬品に関し、感染症法における国の責務(努力義務)においては、感染症に係る医療のための医薬品の研究開発の推進を図るための体制整備が規定されているが、それに加えて、医薬品の安定供給の確保についても規定に追加する。

(2) 改正の概要

国の責務として、感染症に係る医療のための医薬品の安定供給の確保に努めるものとすることとする。(感染症法第3条第3項関係)

13 第一種協定指定医療機関及び第二種協定指定医療機関の新設(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

患者の入院を受け入れる医療機関又は発熱外来や宿泊・自宅療養者等の外来医療・在宅医療を担当する医療機関として通知を受けたもの及び協定を締結したものについて、新たに都道府県知事が指定する指定医療機関の類型に位置付けた上で、当該医療機関により実施される入院医療・外来医療・在宅医療を公費負担医療(外来医療・在宅医療については、「20 新型インフルエンザ等感染症外出自粛対象者及び新感染症外出自粛対象者の医療に要する費用負担」参照)の対象とする。

(2) 改正の概要

① 患者の入院を受け入れる内容の通知(感染症法第36条の2第1項第1号)を受けた医療機関又はその内容の協定(感染症法第36条の3第1項(感染症法第36条の2第1項第1号に掲げる措置をその内容に含むものに限る。))を締結した医療機関であって、新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症の患者又は新感染症の所見がある者の入院を担当させるものについては、「第一種協定指定医療機関」として法律上位置付け、都道府県知事が指定し、他の指定医療機関と同様に新型インフルエンザ等感染症等の患者の入院等の対応を行い、それらに係る費用については、公費負担医療の対象とする。(感染症法第6条第16項、第38条第7項等関係)

② 発熱外来又は宿泊・自宅療養者等の外来医療・在宅医療を担当する内容の通知(感染症法第36条の2第1項第2号又は第3号)を受けた医療機関又はその内容の協定(感染症法第36条の3第1項(感染症法第36条の2第1項第2号又は第3号に掲げる措置をその内容に含むものに限る。))を締結した病院若しくは診療所(これらに準ずるものとして政令で定めるものを含む。)又は薬局(以下13の(2)②及び16において「医療機関」という。)であって、外出自粛対象者の医療を担当する医療機関については、「第二種協定指定医療機関」として法律上位置付け、都道府県知事が指定し、それらに係る費用については、新たに規定を整備し、公費負担医療の対象とする。(感染症法第6条第17項、第38条第8項、第44条の3の2から第44条の3の4まで、第50条の3から第50条の5まで等関係)

14 基本指針(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

今般の新型コロナウイルス感染症の対応を踏まえ、記載事項を充実させるほか、3年ごとの中間見直しを新設する。

(2) 改正の概要

<基本指針の記載事項について>(感染症法第9条第2項関係)

① 基本指針の記載事項に次の事項を追加する。

・ 感染症の患者の移送のための体制の確保に関する事項(同項第7号関係)

・ 感染症に係る医療を提供する体制その他感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するための措置に必要なものとして厚生労働省令で定める体制の確保に係る目標に関する事項(同項第9号関係)

・ 第44条の3第2項又は第50条の2第2項に規定する宿泊施設の確保に関する事項(感染症法第9条第2項第10号関係)

・ 第44条の3の2第1項に規定する新型インフルエンザ等感染症外出自粛対象者又は第50条の3第1項に規定する新感染症外出自粛対象者の療養生活の環境整備に関する事項(感染症法第9条第2項第11号関係)

・ 第44条の5第1項(第44条の8において準用する場合を含む。)、第51条の4第1項若しくは第63条の3第1項の規定による総合調整又は第51条の5第1項、第63条の2若しくは第63条の4の規定による指示の方針に関する事項(感染症法第9条第2項第12号関係)

・ 第53条の16第1項に規定する感染症対策物資等の確保に関する事項(感染症法第9条第2項第13号関係)

・ 感染症の予防に関する保健所の体制の確保に関する事項(同項第16号関係)

② また、「感染症の予防に関する人材の養成に関する事項」について、感染症発生・まん延時における研修の強化のため、「資質の向上」を加える。(感染症法第9条第2項第15号関係)

③ さらに、「感染症及び病原体等に関する調査及び研究に関する事項」について、感染症発生・まん延時における国や都道府県等の意思決定・情報集約機能の強化のため、「情報の収集」を加える。(同項第4号関係)

④ 加えて、現行の「緊急時における感染症の発生の予防及びまん延の防止並びに医療の提供のための施策(国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡体制の確保を含む。)に関する事項」については、感染症対策には検査の実施体制が重要であること及び感染症法第16条の2においても医療機関等と検査機関に協力を求められることと規定していることを踏まえ、「緊急時における感染症の発生の予防及びまん延の防止、病原体等の検査の実施並びに医療の提供のための施策(国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡体制の確保を含む。)に関する事項」とする。(同項第18号関係)

<基本指針の中間見直しについて>(感染症法第9条第3項関係)

① 基本指針における一部の事項(以下「特定事項」という。)については、3年ごとの中間見直し規定を設けることとする。特定事項については、最新の科学的知見等に基づく見直しの必要性や医療計画等との整合性を踏まえて、次の事項とする。

・ 病原体等の検査の実施体制及び検査能力の向上に関する事項

・ 感染症に係る医療を提供する体制の確保に関する事項

・ 第44条の3第2項又は第50条の2第2項に規定する宿泊施設の確保に関する事項

・ 第44条の3の2第1項に規定する新型インフルエンザ等感染症外出自粛対象者又は第50条の3第1項に規定する新感染症外出自粛対象者の療養生活の環境整備に関する事項

・ 第53条の16第1項に規定する感染症対策物資等の確保に関する事項

・ 感染症の予防に関する人材の養成及び資質の向上に関する事項

・ 感染症の予防に関する保健所の体制の確保に関する事項

・ 緊急時における感染症の発生の予防及びまん延の防止、病原体の検査の実施並びに医療の提供のための施策(国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡体制の確保を含む。)に関する事項

15 予防計画(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

今般の新型コロナウイルス感染症の対応を踏まえ、記載事項を充実させるほか、保健所設置市区においても定めることとする等、感染症対策の一層の充実を図る。

(2) 改正の概要

<都道府県が定める予防計画の記載事項>(感染症法第10条第2項関係)

① 予防計画の記載事項に次の事項を追加する。

・ 感染症及び病原体等に関する情報の収集、調査及び研究に関する事項(同項第2号関係)

・ 病原体等の検査の実施体制及び検査能力の向上に関する事項(同項第3号関係)

・ 感染症の患者の移送のための体制の確保に関する事項(同項第5号関係)

・ 感染症に係る医療を提供する体制の確保その他感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するための措置に必要なものとして厚生労働省令で定める体制の確保に係る目標に関する事項(同項第6号関係)

・ 第44条の3第2項又は第50条の2第2項に規定する宿泊施設の確保に関する事項(感染症法第10条第2項第7号関係)

・ 第44条の3の2第1項に規定する新型インフルエンザ等感染症外出自粛対象者又は第50条の3第1項に規定する新感染症外出自粛対象者の療養生活の環境整備に関する事項(感染症法第10条第2項第8号関係)

・ 第63条の3第1項の規定による総合調整又は第63条の4の規定による指示の方針に関する事項(感染症法第10条第2項第9号関係)

・ 感染症の予防に関する人材の養成及び資質の向上に関する事項(同項第10号関係)

・ 感染症の予防に関する保健所の体制の確保に関する事項(同項第11号関係)

② また、「緊急時における感染症の発生の予防及びまん延の防止並びに医療の提供のための施策(国との連携及び地方公共団体相互間の連絡体制の確保を含む。)に関する事項」については、感染症対策には検査の実施体制が重要であることから「病原体等の検査の実施」を加える。(同項第12号関係)

<保健所設置市区が定める予防計画の記載事項>(感染症法第10条第14項から第18項まで関係)

① 現行の感染症法上、予防計画は都道府県が作成することとなっているが、感染症発生・まん延時の際は、地域の実情に応じて保健所設置市区においても主体的・機動的に感染症対策に取り組む必要があるため、保健所設置市区にも一部の事項について、同様に予防計画の策定を義務付けることとする。(同条第14項関係)

② 一方で、「感染症及び病原体等に関する情報の収集、調査及び研究に関する事項」、「感染症に係る医療を提供する体制の確保に関する事項」、「第44条の3第2項又は第50条の2第2項に規定する宿泊施設の確保に関する事項」並び「総合調整又は指示の方針に関する事項」は、都道府県が一義的・中心的に行うものであることから、当該事項以外の都道府県予防計画の記載事項について、保健所設置市区においても、予防計画を策定することを規定する。また、「病原体等の検査の実施体制の確保その他感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するための措置に必要なものとして厚生労働省令で定める体制の確保に係る目標に関する事項」についても予防計画を策定することを規定する。(感染症法第10条第15項関係)

③ ただし、「感染症及び病原体等に関する情報の収集、調査及び研究に関する事項」、「第44条の3第2項又は第50条の2第2項に規定する宿泊施設の確保に関する事項」及び「感染症に関する知識の普及に関する事項」については、都道府県と同様に対応可能な保健所設置市区が存在することから、当該事項を定めるよう努めるものとすることと規定する。(感染症法第10条第16項関係)

④ また、保健所設置市区は、基本指針及び都道府県が定める予防計画が変更された場合に当該保健所設置市区が定める予防計画について再検討を加えることとする。(同条第18項において読み替えて準用する第4項関係)

<その他の予防計画に関する事項>(感染症法第10条第5項から第18項まで関係)

① 厚生労働大臣の助言(同条第5項及び第18項関係)

都道府県等において適切な感染症対策が行われるよう、予防計画の適切性を担保する必要があるため、都道府県等が適切に予防計画の作成・変更をできるように、予防計画の作成・変更にあたっては、厚生労働大臣は助言できることとする。

② 都道府県連携協議会への協議等(同条第6項、第7項、第17項及び第18項関係)

都道府県が予防計画を作成・変更する際、現行の感染症法第10条第5項の規定に基づき、あらかじめ市町村及び診療に関する学識経験者の団体の意見を聴かなければならないとされているが、今般の改正より、予防計画の作成主体として保健所設置市区が追加されることや、協定に基づく平時からの感染症に係る医療を提供する体制の確保に係る目標に関する事項等も予防計画の新たな必須記載事項になることから、予防計画を都道府県等が作成・変更する際に必ず都道府県連携協議会(「8 都道府県連携協議会」参照)に協議することとする。

なお、保健所設置市区以外の市町村は予防計画の作成の義務を負わないが、予防計画等の作成・変更の際には、都道府県は従来通り市町村の意見を聴かなければならないこととする。

③ 医療計画及び都道府県行動計画等との整合性の確保(同条第8項及び第17項関係)

都道府県が予防計画を作成・変更する際、医療法(昭和23年法律第205号)第30条の4第1項の医療計画及び特措法第7条第1項の都道府県予防計画との整合性の確保を図らなければならないこととする。また、保健所設置市等が予防計画を作成・変更する際、特措法第8条第1項の市町村行動計画との整合性の確保を図らなければならないこととする。

④ 予防計画の提出並びに提出された予防計画に関する助言、勧告及び援助(感染症法第10条第9項、第10項及び第18項関係)

改正前の感染症法において都道府県が予防計画を作成・変更した際には、遅滞なく、国へ予防計画を提出しなければならないとされていることを踏まえ、保健所設置市区にあっても、予防計画を作成・変更した場合は都道府県へ提出し、当該都道府県はこれを厚生労働大臣に提出することを義務付け、提出を受けた予防計画について、厚生労働大臣は必要があると認めるときは都道府県知事に対し、助言、勧告及び援助(都道府県は保健所設置市区に対し、助言、勧告及び援助)ができることを規定する。

⑤ 目標の達成の状況の報告並びに助言、勧告及び公表(同条第11項から第13項まで及び第18項関係)

都道府県に、毎年度、感染症に係る医療を提供する体制の確保等に係る目標の達成状況の厚生労働大臣への報告(保健所設置市区は都道府県への報告し、当該都道府県はその内容を厚生労働大臣に報告)を義務付け、厚生労働大臣はその受けた報告について、必要があると認めるときは助言及び勧告ができることを規定するとともに、その内容を公表することができることを規定する。

⑥ 医療機関等の協力の努力義務(同条第19項関係)

医療機関、病原体等の検査を行っている機関及び宿泊施設の管理者は、予防計画の達成の推進に資するため、地域における必要な体制の確保のために必要な協力をするよう努めなければならないものとする。

16 公的医療機関等の医療の提供の義務及び医療措置協定等(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

今般の新型コロナウイルス感染症の対応を踏まえ、今後感染症の発生及びまん延に備え、発生の初期段階から効果的に対策を講ずることができるよう、公的医療機関等並びに地域医療支援病院及び特定機能病院に、感染症発生・まん延時において、医療の提供に関して講ずべき措置を義務付けるとともに、都道府県知事が、民間医療機関を含めた全ての医療機関と当該措置に関する協定を締結するものとし、感染症発生・まん延時に備えた体制整備を行うことを規定する。

(2) 改正の概要

<公的医療機関等並びに地域医療支援病院及び特定機能病院の医療の提供の義務について>

① 都道府県知事は、公的医療機関等並びに地域医療支援病院及び特定機能病院の管理者に対し、以下のiからviまでの措置のうち、感染症発生・まん延時において当該医療機関が講ずべきもの(新型インフルエンザ等感染症、指定感染症又は新感染症に係る医療を提供する体制の確保に必要な措置を迅速かつ適確に講ずるものとして厚生労働省令で定めるものに限る。)等について、通知するものとする。(第36条の2第1項関係)

i 新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症の患者又は新感染症の所見がある者を入院させ、必要な医療を提供すること(病床確保)。

ii 新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症の疑似症患者若しくは当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者又は新感染症にかかっていると疑われる者若しくは当該新感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者の診療を行うこと。(いわゆる発熱外来の対応)

iii 外出自粛対象者が受ける医療を提供すること(オンライン診療、往診、訪問看護、医薬品等対応等を含む。)及び新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症の患者又は新感染症の所見がある者の体温その他の健康状態の報告を求めること。(宿泊・自宅療養者等への医療の提供等)

iv iからiiiまでに掲げる措置を講ずる医療機関に代わって新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症の患者又は新感染症の所見がある者以外の患者に対し、医療を提供すること。(感染症対応医療機関からの一般患者を受け入れる等)

v 都道府県知事の行う感染症の患者に対する医療を担当する医師、看護師その他の医療従事者(以下「感染症医療担当従事者」という。)又は感染症の予防及びまん延を防止するための医療提供体制の確保に係る業務に従事する医師、看護師その他の医療関係者(医療担当従事者を除く。以下「感染症予防等業務対応関係者」という。)を確保し、医療機関その他の機関に派遣すること(医療人材の派遣)。

vi その他厚生労働省令で定める措置を実施すること。

② 公的医療機関等並びに地域医療支援病院及び特定機能病院の管理者は、都道府県知事から①の通知を受けたときは、当該通知に基づく措置を講じなければならないこととする。(感染症法第36条の2第2項関係)また、都道府県知事は、①の通知の内容を公表するものとする。(感染症法第36条の2第3項関係)

<協定の締結について>

① 都道府県知事は、厚生労働大臣が定めるところにより、当該都道府県知事の管轄する区域内における医療機関の管理者と協議し、合意が成立したときは、次の内容を含む医療措置協定を締結するものとする。(感染症法第36条の3第1項関係)

(協定の内容)

・ 感染症法第36条の2第1項各号に掲げる措置のうち感染症発生・まん延時において当該医療機関が講ずべきもの

・ 個人防護具の備蓄の実施について定める場合にあっては、その内容

・ 措置に要する費用の負担の方法

・ 協定の有効期間

・ 協定に違反した場合の措置 等

② 都道府県知事から①の協定の締結の協議を求められた医療機関の管理者は、その求めに応じなければならないものとする。(感染症法第36条の3第2項関係)

③ 都道府県知事は、医療機関の管理者と協定を締結することについて①の協議が調わないときは、都道府県医療審議会の意見を聴くことができるものとし、都道府県知事及び医療機関の管理者は、その意見を尊重しなければならないものとする。(感染症法第36条の3第3項及び第4項関係)

④ 都道府県知事は、協定を締結したときは、その内容を公表するものとする。(感染症法第36条の3第5項関係)

⑤ その他、協定の締結に関し必要な事項は、厚生労働省令で定めることとし、令和6年4月1日の施行に向けて、今後お示ししていく予定である。

<通知及び協定に基づく措置に係る協定履行確保措置について>

① 都道府県知事は、公的医療機関等の管理者が、正当な理由がなく、通知又は協定に基づく措置を講じていないと認めるときは、当該措置を講ずるよう指示(※)することができ、これらの指示を受けた公的医療機関等の管理者が、正当な理由がなく、これに従わなかったときはその旨を公表することができるものとする。(感染症法第36条の4第1項及び第4項関係)

② 都道府県知事は、医療機関(公的医療機関等を除く。)の管理者が、正当な理由がなく、通知又は協定に基づく措置を講じていないと認めるときは、当該措置を講ずるよう勧告することができるものとし、当該管理者が正当な理由がなく、これに従わない場合は必要な指示(※)をすることができるものとし、当該指示を受けた管理者が正当な理由がなく、指示に従わなかったときは、その旨を公表することができるものとする。(感染症法第36条の4第2項から第4項まで関係)

(※) 地域医療支援病院及び特定機能病院については、当該指示に従わない場合は、これらの承認を取り消すことができることとする。(「五 医療法の一部改正」の「3 地域医療支援病院及び特定機能病院の承認取消事由の追加(令和6年4月1日施行)」参照)

<通知及び協定に基づく措置の実施状況の報告等について>

① 都道府県知事は、必要があると認められるときは、公的医療機関等若しくは地域医療支援病院若しくは特定機能病院の管理者又は協定を締結した医療機関に対し、通知又は協定に基づく措置の実施の状況及び通知又は協定に係る当該医療機関の運営の状況その他の事項について報告を求めることができることとし、医療機関の管理者は、当該報告の求めがあったときは、正当な理由がある場合を除き、速やかに、報告しなければならないものとする。(感染症法第36条の5第1項から第3項まで関係)

② ①の報告を受けた都道府県知事は、当該報告の内容を、電磁的方法により厚生労働大臣に報告をするとともに、公表しなければならないものとする。(感染症法第36条の5第4項関係)

③ ①の報告をすべき医療機関(厚生労働省令で定める感染症指定医療機関に限る。)の管理者は、電磁的方法であって、都道府県知事及び厚生労働大臣が閲覧することができるもの(※)により当該報告を行わなければならないものとする。また、厚生労働省令で定める感染症指定医療機関を除く①の報告をすべき医療機関の管理者は、電磁的方法による報告は努力義務とする。

①の報告をすべき医療機関の管理者が、この電磁的方法により報告を行ったときは、当該報告を受けた都道府県知事は、②の報告を行ったものとみなすものとする。(感染症法第36条の5第5項から第7項まで関係)

(※) 新型コロナウイルス感染症の対応では、医療機関等情報支援システム(G―MIS)により、コロナ確保病床の状況等について報告を行っていただいているところであり、具体の報告の方法等については、施行までに厚生労働省令等でお示ししていく予定。

④ 厚生労働大臣は、②の報告を受けた事項について、必要があると認めるときは、当該都道府県知事に対し、必要な助言又は援助をすることができるものとし、厚生労働大臣は、②の報告を受けたとき、又は当該助言若しくは援助をしたときは、必要に応じ、その内容を公表するものとする。(感染症法第36条の5第8項及び第9項関係)

17 病原体等の検査を行っている機関等における検査等措置協定(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

今般の新型コロナウイルス感染症の対応を踏まえ、今後感染症の発生・まん延等の事態が生じた場合に、より迅速な対応を行う観点から、検査・宿泊療養等の感染症発生・まん延時における体制を即座に確保する手法として、都道府県知事及び保健所設置市区の長(以下(2)において「都道府県知事等」という。)が事前に病原体等の検査を行っている機関、宿泊施設等(以下「病原体等の検査を行っている機関等」という。)と協定を締結し、感染症発生・まん延時に備えた体制整備を行うことを規定する。

(2) 改正の概要

<協定の締結について>

① 都道府県知事等は、厚生労働大臣が定めるところにより、それぞれ厚生労働省令で定める一定の病原体等の検査を行っている機関等と協議し、その合意が成立したときは、感染症発生・まん延時において講ずべき措置や個人防護具の備蓄について定める場合にあってはその内容、当該措置に係る費用負担、協定に違反した場合の措置等について定めた協定を締結するものとする。(感染症法第36条の6第1項関係)

② 都道府県知事等は、①の協定を締結したときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該協定の内容を公表するものとする。(同条第2項関係)

<協定の履行確保措置について>(感染症法第36条の7関係)

都道府県知事等は、病原体等の検査を行っている機関等の管理者が、正当な理由がなく、協定に基づく措置を講じていないと認めるときは、当該措置を講ずるよう勧告できるものとし、これに従わない場合は指示・公表できるものとする。

<病原体等の検査を行っている機関等の協定に基づく措置の実施状況について>

① 都道府県知事等は、病原体等の検査を行っている機関等に対し、協定に基づく措置の実施状況(協定に基づき確保した検査の実施状況等)及び当該病原体等の検査を行っている機関等の協定に係る運営の状況(平時における設備の整備状況等)の報告の求めができることとする。当該病原体等の検査を行っている機関等から報告を受けた内容について、都道府県知事は厚生労働大臣に対し、保健所設置市区の長は都道府県知事に対し、電磁的方法により報告することとする。(感染症法第36条の8第1項から第3項まで関係)

② 厚生労働大臣は都道府県知事に対し、都道府県知事は保健所設置市区の長に対し、報告を受けた事項について、必要な助言又は援助を行う。厚生労働大臣は必要に応じ、その内容を公表することとする。(同条第4項及び第5項関係)

18 流行初期医療確保措置等(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

今般の新型コロナウイルス感染症の対応において、診療報酬の特例措置や補助金等の財政支援が整備されるまでに一定の時間がかかり、特に流行初期の医療提供体制の構築に課題があったこと等を踏まえ、補助金や診療報酬の上乗せ等による十分な財政支援が整備されるまでの間において、初動対応等を行う特別な協定を締結した医療機関について流行前と同水準の医療の確保を可能とする措置(以下「流行初期医療確保措置」という。)を規定する。

(2) 改正の概要

① 都道府県知事は、新型インフルエンザ等感染症等に係る発生等の公表が行われた日の属する月から政令で定める期間が経過する日の属する月までの期間(以下「実施期間」という。)において、当該都道府県の区域内にある医療機関が、協定又は医療提供義務による措置のうち、16の(2)の①に掲げる感染症患者の入院に対応する病床の確保(感染症疑い患者の受入病床の確保を含む。)及び発熱外来に係る対応の措置であって、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症又は新感染症の発生後の初期の段階から当該感染症に係る医療を提供する体制を迅速かつ適確に講ずるための措置として厚生労働省令で定める基準を満たすもの(以下「医療協定等措置」という。)を講じたと認められる場合、当該医療機関(以下「対象医療機関」という。)に対し、流行初期医療の確保に要する費用を支給する措置を行うものとする。(感染症法第36条の9)

② 流行初期医療の確保に要する費用の額は、実施期間において、対象医療機関が医療協定等措置を講じたと認められる日の属する月における当該医療機関の診療報酬の額として政令で定めるところにより算定した額が、感染症流行前の直近の同月における当該医療機関の診療報酬の額として政令で定めるところにより算定した額を下回った場合、その差額として政令で定めるところにより算定した額とすることとする(感染症法第36条の10)

③ 流行初期医療確保措置を実施する都道府県は、「流行初期医療確保措置に要する費用」及び「流行初期医療確保措置に関する事務の執行に要する費用」を支弁することとする。(感染症法第36条の11)

④ 国は、都道府県に対し、流行初期医療確保措置に要する費用の8分の3に相当する額を交付することとする。(感染症法第36条の12)

⑤ 都道府県が支弁する流行初期医療確保措置に要する費用の2分の1に相当する額については、社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)が当該都道府県に対して交付する流行初期医療確保交付金をもって充てることとする。流行初期医療確保交付金は、支払基金が徴収する流行初期医療確保拠出金をもって充てることとする。(感染症法第36条の13)

⑥ 支払基金は、流行初期医療確保措置関係業務に要する費用に充てるため、実施期間において、流行初期医療確保措置が実施された月ごとに、保険者等(被用者保険者、国民健康保険の保険者及び後期高齢者医療広域連合をいう。以下同じ。)から、流行初期医療確保拠出金を徴収することとする。また、流行初期医療確保措置関係業務に関する事務の処理に要する費用に充てるため、年度ごとに、保険者等から流行初期医療確保関係事務費拠出金を徴収することとし、保険者等は流行初期医療確保拠出金及び流行初期医療確保関係事務費拠出金(以下「流行初期医療確保拠出金等」という。)を納付する義務を負うこととする。(感染症法第36条の14)

⑦ 保険者等から徴収する流行初期医療確保拠出金の額は、実施期間において、流行初期医療確保措置が実施された月における流行初期医療確保措置に要する費用の2分の1に相当する額を基礎として、厚生労働省令で定めるところにより算定した保険者等に係る対象医療機関に対する診療報酬の支払額の割合に応じ、厚生労働省令で定めるところにより算定した額とすることとする。(感染症法第36条の15)

⑧ 保険者等から徴収する流行初期医療確保関係事務費拠出金の額は、毎年度における流行初期医療確保措置関係業務に関する事務の処理に要する費用の見込額を基礎として、厚生労働省令で定めるところにより算定した当該年度における保険者の加入者及び後期高齢者医療の被保険者の見込数に応じ、厚生労働省令で定めるところにより算定した額とする。(感染症法第36条の16)

⑨ 流行初期医療確保措置の対象医療機関は、実施期間において、流行初期医療確保措置が実施された月における対象医療機関の診療報酬及び流行初期医療の確保に要する費用に係る収入その他政令で定める収入の合計額が、感染症流行前の直近の同月における当該医療機関の診療報酬の額として政令で定めるところにより算定した額を上回った場合には、その差額として政令で定める額(以下「返納金」という。)を都道府県に返納しなければならないこととする。返納金が返納された場合には、都道府県は、当該返納金の合計の8分の3に相当する額を国に返還するとともに、当該返納金の合計の2分の1に相当する額を流行初期医療確保拠出金の額に応じて保険者等に還付しなければならないこととする。(感染症法第36条の23)

⑩ 都道府県知事は、正当な理由がなく、医療協定等措置に関する指示に従わない対象医療機関に対して、流行初期医療の確保に要する費用の全部又は一部の返還を命ずることができることとし、当該費用が返還された場合には、都道府県は、当該返還金の合計の8分の3に相当する額を国に返還するとともに、当該返還金の合計の2分の1に相当する額を流行初期医療確保拠出金の額に応じて保険者等に還付しなければならないこととする。(感染症法第36条の24)

⑪ その他流行初期医療確保措置の実施に関して、所要の規定の整備を行うこととする。

19 健康観察の委託(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

宿泊・自宅療養者等の健康観察について、保健所の業務ひっ迫を防ぐとともに、基礎疾患のある者等の重症化リスクの高い患者等の容体の急変等を迅速に把握し、迅速に医療につなげる観点から、第二種協定指定医療機関その他医療機関、地域の医師会又は民間事業者に委託することができることとする。

加えて、濃厚接触者の健康観察については、民間事業者等に委託することができることとする。

また、上記の委託に当たって、地域の医師会等に協力を求めることができるよう、感染症法第16条の2の対象として、診療に関する学識経験者の団体を明記することとする。

(2) 改正の概要

① 都道府県知事(保健所設置市区の長を含む。本項目、②及び③において同じ。)は、一般市町村の長に対し、宿泊・自宅療養者等の健康観察等に関して必要な協力を求めるものとしている(「4 健康観察等に係る市町村長の協力及び情報提供」参照)が、これに加えて、新型インフルエンザ等感染症又は新感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者に対する健康状態の報告の求めは、都道府県知事が適当と認める者(民間事業者等)に委託できることとする。(感染症法第44条の3第4項及び第50条の2第4項関係)

② 都道府県知事は、新型インフルエンザ等感染症の患者又は新感染症の所見がある者に対する健康状態の報告の求めを第二種協定指定医療機関(宿泊・自宅療養者等の医療に関する義務を負っている医療機関又は協定を締結しているものに限る。)その他都道府県知事が適当と認める者に委託して行うことができることとする。(感染症法第44条の3第5項及び第50条の2第4項関係)

③ ①又は②の委託を受けた者は、健康観察の報告内容を委託した都道府県知事に報告しなければならないこととする。(感染症法第44条の3第6項及び第50条の2第4項関係)

④ 健康観察に協力いただくことを想定し、医療機関等への協力の要請の対象として、診療に関する学識経験者の団体を明示する。(感染症法第16条の2関係)

⑤ 健康状態の報告の求めの委託に関し、委託を受けた者(その者が法人である場合にあっては、その役員)若しくはその職員又はこれらの者であった者が、当該委託に係る事務に関して知り得た人の秘密を正当な理由がなく漏らしたときは、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処することとする。(感染症法第73条の2)

20 新型インフルエンザ等感染症外出自粛対象者及び新感染症外出自粛対象者の医療に要する費用負担(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

宿泊・自宅療養者等が受ける外来医療・在宅医療について、入院医療費を公費負担の対象としている現行の考え方や、宿泊・自宅療養者等の早期受診や重症化防止の実効性を確保することで病床のひっ迫の回避につなげる観点から、入院医療と同様に公費負担医療の仕組みを新設する。

(2) 改正の概要

<外出自粛対象者の医療等>

① 都道府県(保健所設置市区を含む。)は、厚生労働省令で定める場合を除き、外出自粛対象者又はその保護者から申請があったときは、当該外出自粛対象者が第二種協定指定医療機関において受ける厚生労働省令で定める医療に要する費用を負担することとする。(感染症法第44条の3の2第1項及び第50条の3第1項関係)

② 入院の場合と同様に、外出自粛対象者の本人又はその保護者に費用を負担する能力がある場合は都道府県が負担することを要しないこととする。(感染症法第44条の3の2第2項及び第50条の3第2項において準用する第37条第2項関係)

③ 上記の申請は、当該外出自粛対象者の居住地を管轄する保健所長を経由して都道府県知事(保健所設置市区の長を含む。)に対してしなければならないこととする。(感染症法第44条の3の2第2項及び第50条の3第2項において準用する第37条第4項関係)

<外出自粛対象者の緊急時等の医療に係る特例>

① 都道府県(保健所設置市区を含む。)は、厚生労働省令で定める場合を除き、外出自粛対象者が第二種協定指定医療機関以外の病院、診療所(これらに準ずるものとして政令で定めるものを含む。)又は薬局から医療を受けた場合においては、その医療に要した費用につき、当該外出自粛対象者又はその保護者の申請により、療養費を支給できることとする。また、外出自粛対象者が緊急その他やむを得ない理由により申請をしないで医療の提供を受けたときも同様とする。(感染症法第44条の3の3第1項及び第50条の4第1項関係)

② 上記の申請は、当該外出自粛対象者の居住地を管轄する保健所長を経由して都道府県知事(保健所設置市区の長を含む。)に対してしなければならないこととする。(感染症法第44条の3の3第2項及び第50条の4第2項において準用する第37条第4項関係)

③ 上記の療養費は、外出自粛対象者が医療を受けた当時それが必要であったと認められる場合に限り、支給するものとする。(感染症法第44条の3の3第3項及び第50条の4第3項関係)

<その他の事項>

① 他の法律に関する医療に関する給付との調整、診療報酬の請求、審査及び支払い、診療報酬の基準並びに感染症指定医療機関への報告の請求及び検査については、入院の場合に関する規定を準用することとする。(感染症法第44条の3の2第2項において準用する第39条から第41条まで及び第43条並びに第50条の3第2項において準用する第40条、第41条及び第43条関係)

② 外出自粛対象者の医療及び療養費の申請の手続きに関して必要な事項は、厚生労働省令で定めることとする。(感染症法第44条の3の4及び第50条の5関係)

21 他の都道府県知事等による応援等(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

感染症発生・まん延時における医療人材の確保に関し、国と都道府県の役割分担や都道府県をまたいで医療人材の応援を要する場合の条件の明確化等のため、都道府県の区域を越えた医療人材の確保に係る応援等の仕組みを規定する。

(2) 改正の概要

① 都道府県知事から他の都道府県知事への応援の求めについて(感染症法第44条の4の2第1項及び第51条の2第1項関係)

都道府県知事は、感染症発生・まん延時において、感染急拡大等により、感染症医療担当従事者又は感染症予防等業務対応関係者の確保に係る応援を他の都道府県知事に対し求めることができるものとする。

② 都道府県知事から厚生労働大臣に対する他の都道府県知事による応援の求めについて

都道府県知事は、感染症発生・まん延時において、次の医療ひっ迫等の要件のいずれにも該当する場合には、厚生労働大臣に対し、感染症医療担当従事者の確保に係る他の都道府県知事による応援について調整を行うよう求めることができるものとする。(感染症法第44条の4の2第2項及び第51条の2第2項関係)

i 感染症法第36条の2第1項の通知及び感染症法第36条の3第1項の医療措置協定に基づく措置が講じられてもなお感染症医療担当従事者の確保が困難であり、当該都道府県における医療の提供に支障が生じ、又は生じるおそれがあると認めること。

ii 感染症の発生の状況及び動向その他の事情による他の都道府県における医療の需給に比して、当該都道府県における医療の需給がひっ迫し、又はひっ迫するおそれがあると認めること。

iii ①の応援の求めのみによっては感染症医療担当従事者の確保に係る他の都道府県知事からの応援が円滑に実施されないと認めること。

iv その他厚生労働省令で定める基準を満たしていること。

また、都道府県知事は、感染症発生・まん延時において、①の応援の求めによっては、感染症予防等業務関係者の確保に係る他の都道府県知事による応援が円滑に実施されないと認めるときは、厚生労働大臣に対し、感染症予防等業務関係者の確保に係る他の都道府県知事による応援の調整を行うよう求めることができるものとする。(感染症法第44条の4の2第3項及び第51条の2第3項関係)

③ 厚生労働大臣から他の都道府県知事への応援の求めについて

厚生労働大臣は、感染症発生・まん延時において、都道府県知事から②の応援の調整の求めがあった場合において、全国的な感染症の発生の状況及び動向その他の事情並びに協定の報告の内容その他の事項を総合的に勘案し特に必要があると認めるときは、当該都道府県知事以外の都道府県知事に対し、当該都道府県知事の行う感染症医療担当従事者又は感染症予防等業務関係者の確保に係る応援を求めることができるものとする。(感染症法第44条の4の2第4項及び第51条の2第4項関係)

また、厚生労働大臣は、感染症発生・まん延時において、全国的な感染症の発生の状況及び動向その他の事情を総合的に勘案し、感染症のまん延を防止するため、広域的な人材の確保に係る応援の調整の緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事から②の応援の調整の求めがない場合であっても、都道府県知事に対し、感染症医療担当従事者又は感染症予防等業務対応関係者の確保に係る応援を求めることができる。(感染症法第44条の4の2第5項及び第51条の2第5項関係)

④ 厚生労働大臣から公的医療機関等への応援の求めについて

厚生労働大臣は、感染症発生・まん延時において、全国的な感染症の発生の状況及び動向その他の事情を総合的に勘案し、感染症のまん延を防止するため、その事態に照らし、広域的な人材の確保に係る応援について特に緊急の必要があると認めるときは、公的医療機関等その他厚生労働省令で定める医療機関に対し、感染症医療担当従事者又は感染症予防等業務関係者の確保に係る応援を求めることができるものとする。この場合において、応援を求められた医療機関は、正当な理由がない限り、応援を拒んではならないものとする。(感染症法第44条の4の2第6項及び第51条の2第6項関係)

⑤ 他の都道府県知事から求めを受けた応援の費用について

①~④により他の都道府県知事又は公的医療機関等による感染症医療担当従事者又は感染症予防等業務関係者の確保に係る応援を受けた都道府県は、当該応援に要した費用を負担しなければならないものとする。(感染症法第44条の4の3及び第51条の3関係)

<総合調整規定との関係について>

他の都道府県知事等による応援等の規定(感染症法第44条の4の2、第44条の4の3、第51条の2及び第51条の3)については、令和6年4月1日に施行される。施行までの間については、5の厚生労働大臣の総合調整規定(感染症法第44条の5及び第51条の4)に基づく総合調整として、都道府県をまたいで医療人材の応援等の調整を行うことが可能であることを申し添える。

22 感染症対策物資等の生産等に関する要請等(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に必要な医薬品、医療機器、個人防護具その他の物資並びに当該物資の生産に必要不可欠であると認められる物資及び資材(以下「感染症対策物資等」という。)について、感染症発生・まん延時において物資が不足する自体に対処するため、事業者に対する生産要請や物資の需給状況に係る情報収集に係る規定を新設する。

(2) 改正の概要

① 国は、感染症対策物資等について、需要の増加又は輸入の減少その他の事情により、その供給が不足し、又はそのおそれがあるため、感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止することが困難になることにより、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある場合等において、事業者に対して生産・輸入・出荷調整の要請、売渡し・貸付け・輸送・保管に関する指示等を行うことができるものとする。また、国は生産・輸入の要請及び売渡し・貸付け・輸送・保管に関する指示に従った者に対し、必要な財政上の措置その他の措置を講ずることができるものとする。(感染症法第53条の16から第53条の21まで関係)

② 厚生労働大臣又は感染症対策物資等の生産・輸入・販売・貸付けの事業を所管する大臣は、感染症対策物資等の国内の需給状況を把握するため、事業者に対し、感染症対策物資等の生産・輸入・販売・貸付けの状況について報告を求めることができるものとし、報告を求められた事業者はこれに応じるよう努めなければならないものとする。(感染症法第53条の22関係)

23 感染症及び病原体等に関する調査及び研究並びに医薬品の研究開発の推進等(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

感染症及び病原体等に関する調査及び研究並びに医薬品の研究開発の推進に関し、関係医療機関との緊密な連携を確保する旨等を規定する。

(2) 改正の概要

① 国は、感染症の患者の治療によって得られた情報や検体の提供等の協力を求めることその他の関係医療機関との緊密な連携を確保することにより、感染症の患者に対する良質かつ適切な医療の確保を図るための基盤となる感染症の発病の機構等に関する調査・研究を推進するものとする。(感染症法第56条の39第1項関係)

② また、国は、医薬品の臨床試験の実施等の協力を求めることその他の関係医療機関との緊密な連携を確保することにより、感染症の患者に対する良質かつ適切な医療の確保を図るための基盤となる医薬品の研究開発を推進するものとするとともに、当該研究開発に係る事務を国立研究開発法人国立国際医療研究センターその他の機関に委託することができるものとする。(同条第1項及び第3項関係)

24 匿名感染症関連情報の利用又は提供等(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

患者に対する良質かつ適切な医療の確保に資するため、感染症に関する情報についての調査及び研究に関する規定を新設するとともに、国民保健の向上に資するため、これらの情報を匿名加工した情報の利用又は提供に関する規定を新設する。

(2) 改正の概要

患者に対する良質かつ適切な医療の確保のための調査及び研究並びに国民保健の向上のための匿名感染症関連情報の利用又は提供に関し、照合等の禁止、消去、安全管理措置、利用者の義務、立入検査等、是正命令、支払基金等への委託、手数料、罰則を含む所要の規定を整備する。(感染症法第56条の40から第56条の49、第73条の3、第77条第1項、第78条の2及び第79条関係)

25 都道府県及び国の補助等(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

今回の改正法案においては、感染症発生・まん延時に備えて、平時から協定を結び、今回のコロナウイルス感染症において実施した現行の感染症の枠を超えた措置(通常医療を提供する病床を感染症対応を行う病床に切り替える等)を、協定に基づく措置として法律上に位置付けて実施すること等を想定している。

当該協定の締結主体は都道府県及び保健所設置市区(以下、本項目及び(2)において「都道府県等」という。)であり、当該都道府県等は、協定等に基づく措置を実効足らしめるために履行確保措置等の権限を有していることを踏まえると、協定に係る措置等について責任を負う主体である都道府県等が費用を支弁した上で、国がその一部を補助・負担することとする。

(2) 改正の概要

① 通知を受けた公的医療機関等、地域医療支援病院及び特定機能病院並びに協定を締結した医療機関又は検査機関等への設備整備については、感染症発生・まん延時に対応する感染症指定医療機関の設備整備と同様に、都道府県等が全部又は一部を補助(国は都道府県等の支弁の1/2以内を補助)とする。(感染症法第60条第3項及び第62条第3項)

② 宿泊・自宅療養者等の公費負担医療措置の費用については、入院措置と同様、公費部分に関し、都道府県等が1/4、国が3/4を負担することとする。(感染症法第58条第14号及び第15号並びに第61条第2項)

③ 通知を受けた公的医療機関等、地域医療支援病院及び特定機能病院並びに協定を締結した医療機関又は検査機関等が実施する措置に要する費用については、国が3/4を補助することとする。(感染症法第58条第10号及び第62条第1項)

④ 都道府県知事が他の都道府県に対し、医療担当従事者や感染症予防等業務対応関係者の確保に係る応援を求めた場合については、当該者の派遣元の都道府県と派遣先の当該派遣によって講じられる措置を享受する都道府県が異なることから、応援に要した費用については、派遣先の都道府県が負担しなければいけないことを規定した上で、国がその3/4を補助することとする。(感染症法第44条の4の3、第51条の3、第58条第16号及び第62条第1項)

二 地域保健法の一部改正

1 地域保健対策の推進に関する基本的な指針の考慮要素の追加(令和5年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨・概要

地域保健法(昭和22年法律第101号)第4条に規定する地域保健対策の推進に関する基本的な指針は、健康危機(国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延その他の公衆衛生上重大な危害が生じ、又は生じるおそれがある緊急の事態をいう。以下同じ。)への対処を考慮して定めるものとする。(地域保健法第4条第3項関係)

2 IHEATの法定化(令和5年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

新型コロナウイルス感染症の感染拡大時において、医師、保健師、看護師等の外部の専門職による保健所等の業務の支援を活用できるよう、人材バンクを創設した(※)ところであり、この仕組みを地域保健法に位置付ける。本通知では当該人材バンクに登録された者をIHEAT要員と呼称する。

(※) 「令和4年度における新型コロナウイルス感染症等に係る対応人材(IHEAT:Infectious disease Health Emergency Assistance Team)の運用について」(令和4年9月30日健健発0930第1号厚生労働省健康局健康課長通知)に基づき活用されているところ。

(2) 改正の概要

① 保健所を設置する地方公共団体の長は、感染症発生・まん延時その他の健康危機が発生した場合に必要があると認めるときは、IHEAT要員に対し、当該地方公共団体の長が管轄する区域内の地域保健対策に係る業務に従事すること又は当該業務に関する助言を行うことを要請することができるものとする。(地域保健法第21条第1項関係)

② ①の要請を受けたIHEAT要員を使用している者は、著しい支障のない限り、当該IHEAT要員が①の要請に応じて地域保健対策に関する業務又は助言を行うことができるための配慮をするよう努めなければならないものとする。(地域保健法第21条第2項関係)

③ ①の要請を受けたIHEAT要員(一般職の地方公務員として①の要請に応じて地域保健対策に関する業務又は助言を行う者を除く。以下この③において同じ。)は、①による要請に応じて行った助言に関して知り得た秘密を漏らしてはならないものとする。IHEAT要員でなくなった後においても、同様とするものとする。(地域保健法第21条第3項関係)

④ 国及び保健所を設置する地方公共団体は、IHEAT要員に対し、研修の機会の提供その他の必要な支援を行うものとする。(地域保健法第22条関係)

⑤ 国は、IHEAT要員の確保及び資質の向上並びにIHEAT要員が行う業務又は助言が円滑に実施されるように、保健所を設置する地方公共団体に対し、必要な助言、指導その他の援助の実施に努めるものとする。(地域保健法第23条関係)

3 地域保健に関する調査及び研究並びに試験及び検査に関する措置(令和5年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

地方衛生研究所の体制整備など、専門的な知識・技術を必要とする試験検査・調査研究等の業務を行うための必要な体制整備等を推進する。

(2) 改正の概要

① 保健所を設置する地方公共団体は、地域保健対策に関する法律に基づく調査及び研究並びに試験及び検査であって、専門的な知識及び技術を必要とするもの等の業務を行うため、必要な体制の整備、他の保健所を設置する地方公共団体との連携の確保その他の必要な措置を講ずるものとする。(地域保健法第26条関係)

なお、同条の必要な体制整備には、現在、保健所を設置する地方公共団体が整備している地方衛生研究所の体制整備が含まれる。

② 国は、①の措置が円滑に実施されるように、保健所を設置する地方公共団体に対し、必要な助言、指導その他の援助の実施に努めるものとする。(地域保健法第27条関係)

三 予防接種法の一部改正

1 臨時の予防接種の見直し(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

今後、新型コロナウイルス感染症のような全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病が新たに発生することが考えられ、そのまん延予防上の緊急の必要があると認められるときに、改正法による改正前の予防接種法(昭和23年法律第68号)附則第7条第1項に基づく新型コロナウイルス感染症に係る予防接種(以下「特例臨時接種」という。)と同様に、国が全国的な予防接種を主導する必要がある場合が想定されることを踏まえ、特例臨時接種に係る規定と同様の規定を、予防接種法の本則に新設することとする。

また、改正法による改正前の予防接種法(以下「旧予防接種法」という。)第6条第2項に基づく臨時の予防接種の指示についても、都道府県知事に加え、都道府県知事を通じて市町村長に対しても行うことができるよう、改正を行う。

(2) 改正の概要

厚生労働大臣は、A類疾病のうち当該疾病の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものとして厚生労働大臣が定めるもののまん延予防上緊急の必要があると認めるときは、その対象者及びその期日又は期間を指定して、都道府県知事に対し、又は都道府県知事を通じて市町村長に対し、臨時に予防接種を行うよう指示することができるものとし、当該予防接種に係る費用は全額国費負担とする。(予防接種法第6条第3項及び第27条第2項関係)

国庫の負担は、各年度において、都道府県又は市町村が支弁する予防接種法に定めるところにより予防接種を行うために要する費用について厚生労働大臣が定める基準によって算定した医師の報酬、薬品、材料その他に要する経費の額(その額が当該年度において現に要した当該費用の額(その費用のための寄附金があるときは、その寄附金の額を控除するものとする。)を超えるときは、当該費用の額とする。)について行うこととする。(予防接種法施行令(昭和23年政令第197号)第32条第2項関係)

また、厚生労働大臣は、A類疾病及びB類疾病のうち厚生労働大臣が定めるもののまん延予防上緊急の必要があると認めるときは、その対象者及びその期日又は期間を指定して、都道府県知事に対し、又は都道府県知事を通じて市町村長に対し、臨時に予防接種を行うよう指示することができることとする。(予防接種法第6条第2項関係)

2 予防接種の勧奨及び予防接種を受ける努力義務に関する規定の適用除外(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

新設する予防接種法第6条第3項の規定による臨時の予防接種については、特例臨時接種と同様に、その接種の勧奨を行い、予防接種を受ける努力義務を課すことを規定する。その上で、同法第6条第1項から第3項までの臨時の予防接種については、その対象とする疾病のまん延状況や当該疾病に係る予防接種の有効性等に関する情報を踏まえ、当該規定ごとに対象者を指定して適用しないこととすることができる旨の規定を新設する。

(2) 改正の概要

改正法による改正後の予防接種法(以下「新予防接種法」という。)第6条第3項の臨時の予防接種についても、予防接種法第8条による予防接種の勧奨及び同法第9条による予防接種を受ける努力義務の対象とするよう規定する。また、その対象とする疾病のまん延の状況並びに当該疾病に係る予防接種の有効性及び安全性等に関する情報を踏まえ、政令で、当該規定ごとに対象者を指定して適用しないこととすることができるものとする。(予防接種法第8条、第9条及び第9条の2関係)

3 予防接種に関する記録(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

市町村長又は都道府県知事が定期の予防接種及び臨時の予防接種(以下「定期の予防接種等」という。)の対象者を把握し、当該接種を円滑かつ効果的に実施するためには、自らが実施した定期の予防接種等の記録のほか、定期の予防接種等に相当する接種についても記録の保存を行うことが必要であるため、これらの記録の保存に関する規定を新設する。

(2) 改正の概要

市町村長又は都道府県知事は、

・ 定期の予防接種等を行ったとき

・ 定期の予防接種等に相当する接種を受けた者又は当該定期の予防接種等に相当する接種を行った者から当該定期の予防接種等に相当する接種に関する証明書の提出を受けた場合又はその内容を記録した電磁的記録の提供を受けたとき

は、遅滞なく、当該定期の予防接種等又は当該定期の予防接種等に相当する接種に関する記録を作成し、保存しなければならないものとする。(予防接種法第9条の3関係)

作成する記録の記載事項は、予防接種を受けた者の氏名、性別、生年月日、住所等、予防接種を行った年月日等とし、定期の予防接種等を行ったとき又は定期の予防接種等に相当する接種を受けた者若しくは当該定期の予防接種等に相当する接種を行った者から当該定期の予防接種等に相当する接種に関する証明書等の提供を受けたときから5年間保存しなければならないものとする。(予防接種法施行規則(昭和23年厚生省令第36号)第3条関係)

また、定期の予防接種等を行った者又は定期の予防接種等に相当する接種を受けた者若しくは当該定期の予防接種等に相当する接種を行った者から当該定期の予防接種等に相当する接種に関する証明書等の提供を受けた者はそれぞれ規定する様式(様式第1号又は様式第2号)による予防接種済証を交付するものとし、臨時の予防接種を受けた者又は臨時の予防接種に相当する予防接種を受けた者であって、海外渡航その他の事情を有するものから求めがあったときは、当該予防接種済証のほか別途規定する様式(様式第3号)による予防接種済証を交付することができることとする。(予防接種法施行規則第4条及び様式第1号から様式第3号まで)

4 資料の提供等(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

市町村長又は都道府県知事が他の市町村等に対し、接種記録等の定期の予防接種等の実施に必要となる情報を照会する場合における情報提供を受ける法的根拠を明確にするとともに、市町村から予防接種の実施を委託された医療機関等における予防接種の実施事務の適正を担保するためには、当該医療機関等に対して報告を求めることができる必要がある。

そのため、市町村長又は都道府県知事が、官公署への資料の提供や、医師その他の関係者に対して必要な報告を求める権限を法律上明記する。

(2) 改正の概要

市町村長又は都道府県知事は、定期の予防接種等の実施に関し必要があると認めるときは、官公署に対し、必要な書類の閲覧若しくは資料の提供を求め、又は病院若しくは診療所の開設者、医師その他の関係者に対し、必要な事項の報告を求めることができるものとする。(予防接種法第9条の4関係)

5 損失補償契約(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

新型インフルエンザ等感染症、指定感染症又は新感染症に係るワクチンについて、世界的規模で需給が著しくひっ迫する等し、これを早急に確保しなければ全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるときは、一定の期間に限り、国会承認等の手続を経た上で、厚生労働大臣は、当該疾病に係るワクチンの供給に関して製造販売業者等と損失補償契約を締結することができる旨の規定を整備する。

(2) 改正の概要

政府は、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症又は新感染症に係るワクチンについて、世界的規模で需給が著しくひっ迫し、又はひっ迫するおそれがあり、これを早急に確保しなければ当該疾病の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるときは、一定の期間に限り、閣議の決定をし、かつ、国会の承認を得た上で、厚生労働大臣が当該疾病に係るワクチンの供給に関する契約を締結する当該疾病に係るワクチン製造販売業者等を相手方として、当該契約に係るワクチンを使用する予防接種による健康被害に係る損害を賠償することにより生ずる損失等を政府が補償することを約する契約を締結することができるものとする。

ただし、緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで当該契約(国会の承認を受けることをその効力の発生条件とするものに限る。)を締結することができるものとする。(予防接種法第29条関係)

6 電子対象者確認(公布日の日から起算して3年6月を超えない範囲内において政令で定める日施行)

(1) 改正の趣旨

定期の予防接種等の対象者であることの確認に係る市町村又は都道府県知事の事務負担を軽減する等の観点から、個人番号カードに記録された利用者証明用電子証明書等による定期の予防接種等の対象者確認(以下「電子対象者確認」という。)を導入する。

(2) 改正の概要

市町村長又は都道府県知事は、定期の予防接種等を行うに当たっては、電子対象者確認の方法により、当該定期の予防接種等を受けようとする者が当該定期の予防接種等の対象者であることの確認を行うことができるものとする。(予防接種法第6条の2関係)

7 予防接種の有効性及び安全性の向上に関する調査等(公布日の日から起算して3年6月を超えない範囲内において政令で定める日施行)

(1) 改正の趣旨

厚生労働大臣が、定期の予防接種等の有効性及び安全性の向上のための調査及び研究を行うことを明確化するとともに、当該調査及び研究に必要な情報の収集等についての規定を新設する。

(2) 改正の概要

厚生労働大臣は、定期の予防接種等の有効性及び安全性の向上を図るために必要な調査及び研究を行うものとする。

また、市町村長又は都道府県知事は、それらの調査及び研究の実施に必要な情報を厚生労働大臣に対して提供しなければならないこととするとともに、厚生労働大臣は、地方公共団体、病院若しくは診療所の開設者、医師又はワクチン製造販売業者に対し、当該調査及び研究の実施に必要な情報を提供するよう求めることができるものとする。(予防接種法第23条関係)

8 匿名予防接種等関連情報の利用又は提供等(公布日の日から起算して3年6月を超えない範囲内において政令で定める日施行)

(1) 改正の趣旨

国民保健の向上に資するため、定期の予防接種等に関する情報、医師等が厚生労働大臣に報告した副反応疑い報告に係る情報等を匿名化したもの(以下「匿名予防接種等関連情報」という。)を外部の研究機関等に提供することができることとするための規定を新設する。

(2) 改正の概要

① 厚生労働大臣は、国民保健の向上に資するため、匿名予防接種等関連情報を利用し、又は次に掲げる者であって、匿名予防接種等関連情報の提供を受けて行うことについて相当の公益性を有すると認められる業務としてそれぞれ次に定めるものを行うものに提供することができるものとする。(予防接種法第24条第1項関係)

・ 国の他の行政機関及び地方公共団体 適正な保健医療サービスの提供に資する施策の企画及び立案に関する調査

・ 大学その他の研究機関 疾病の原因並びに疾病の予防、診断及び治療の方法に関する研究その他の公衆衛生の向上及び増進に関する研究

・ 民間事業者その他の者 医療分野の研究開発に資する分析その他の業務(特定の商品又は役務の広告又は宣伝に利用するために行うものを除く。)

② 厚生労働大臣は、①による利用又は提供を行う場合には、当該匿名予防接種等関連情報を高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)に規定する匿名医療保険等関連情報等と連結して利用し、又は連結して利用することができる状態で提供することができるものとする。(予防接種法第24条第2項関係)

③ 匿名予防接種等関連情報の適切な管理、利用が行われるよう必要な規定を整備する。(予防接種法第25条から第30条まで関係)

④ 支払基金等への委託、手数料、対象者番号等の利用制限その他所要の規定の整備を行う。(予防接種法第31条から第46条まで、第54条、第55条及び第57条関係)

9 その他(公布日施行)

予防接種法第11条の見直しに伴い、政令への委任事項の見直しを行い、予防接種を行う医師の氏名等の公告に係る規定を削除することとする。(予防接種法施行令第4条関係)

四 地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律の一部改正

電子対象者確認の事務に係る利用者証明用電子証明書の利用等(公布の日から3年6月以内に政令で定める日施行)

(1) 改正の趣旨

電子対象者確認を行うには、当該利用者が事前に支払基金等に自身の利用者証明用電子証明書を提供しておく必要がある。医療保険等における電子資格確認のために支払基金等が取得した利用者証明用電子証明書を、定期の予防接種等の電子対象者確認の事務を行う際に用いるに当たり、対象者の利便性の低下が生じないよう必要な規定を整備する。

(2) 改正の概要

支払基金又は国民健康保険団体連合会は、電子資格確認の事務等に必要な限度で、その保有する利用者証明用電子証明書を、その保有に当たって特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用し、又は相互に提供することができるものとする。(地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(平成元年法律第64号)第11の2関係)

五 医療法の一部改正

1 病床の特例許可に対する条件の付与等(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

都道府県知事が、感染症の発生・まん延時において、新型インフルエンザ等感染症の患者等の受入れのための病床の確保をより機動的に行うことができるよう、病床過剰地域における病院の開設・増床等の特例許可に関し、必要な措置を講ずる。

(2) 改正の概要

① 都道府県が、病床過剰地域において病院の開設・増床等の許可を特例的に行うことができる事情として、感染症法第16条第2項に規定する新型インフルエンザ等感染症等に係る発生等の公表が行われたときが含まれる旨を明確化する。(医療法第30条の4条第10項、医療法施行令(昭和23年政令第326号)第5条の3第1項第2号関係)

② 都道府県が、医療法第30条の4第10項又は第11項の規定により病床過剰地域における病院の開設・増床等の許可に係る事務を行う場合には、当該許可に、同条第10項の特例許可に係る事情がなくなったと認められる場合又は同条第11項の特定病床において、当該特定病床に係る業務が行われなくなった場合には、当該地域における基準病床数を超えている範囲内で、当該特例許可に係る病床の数を削減する旨の条件を付与することができることとする。(医療法第7条第6項、医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第1条の14第13項関係)

なお、「特定病床に係る業務が行われなくなった場合」は、当該特定病床において、当該特定病床の機能と直接関連しない医療が提供されている場合を含むものである。

③ 都道府県知事は、病院又は診療所の開設者又は管理者が、正当な理由がなく②の条件に従わない場合には、当該開設者又は管理者に対し、当該条件に従うべきことを勧告することができるものとし、当該開設者又は管理者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、当該措置をとるべきことを命ずることができるものとし、当該命令を受けた開設者又は管理者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができることとする。(医療法第27条の2関係)

④ 指定都市の市長が医療法第7条第1項から第3項までの規定により病院の開設・増床等の許可を行う場合において、都道府県知事から、当該許可に①の条件を付するよう求めがあった場合には、当該条件を付さなければならないこととする。(地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第174条の35関係)

2 医薬品等に係る報告徴収(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

感染症発生・まん延時をはじめとして、生産や輸入の停止・遅延等が発生した場合には、様々な医薬品等の供給に影響が出ることが想定される。これにより、通常の医療にまで影響が及ぶことのないよう、感染症対策物資等に当たらない医薬品等についても、事業者に対して生産等の情報を求めることを可能とする。

(2) 改正の概要(医療法第6条の4の3関係)

厚生労働大臣は、医薬品等について、生産の減少その他の事情によりその供給が不足し、又は不足するおそれがあるため、医療を受ける者の利益が大きく損なわれるおそれがある場合には、事業者に対して当該医薬品等の生産・輸入・販売・貸付けの状況について報告を求めることができるものとし、報告を求められた事業者はこれに応じなければならないものとする。また、厚生労働大臣は、事業者から医薬品等の状況について報告を受けた場合には、当該状況に関する情報を公表するものとする。

3 地域医療支援病院及び特定機能病院の承認取消事由の追加(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

今後感染症の発生・まん延の事態が生じた場合に、より迅速な対応を行う観点から、地域医療支援病院及び特定機能病院に対する医療の提供義務及び協定の締結を規定することとし、それらに基づく措置の確実な履行を確保するため、医療機関の管理者に対して指示等の履行確保措置を規定したところ、併せて地域医療支援病院及び特定機能病院に対しては、確実な履行を確保するための必要な措置を講ずる。

(2) 改正の概要(医療法第29条第3項第5号及び第9号、同条第4項第5号及び第9号関係)

都道府県知事及び厚生労働大臣は、以下の場合において、地域医療支援病院及び特定機能病院の承認を取り消すことができることとする。

・ 管理者が医療チームの派遣に関する協定に係る指示(医療法第30条の12の6第9項。「5 感染症対応等を行う医療チームの法定化」参照)に従わなかったとき

・ 管理者が医療措置協定等に係る指示(感染症法第36条の4第1項又は第3項。一の「16 公的医療機関等の医療の提供の義務及び医療措置協定等」参照)に従わなかったとき

4 医療計画と予防計画等との整合性の確保(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

今般の新型コロナウイルス感染症の対応を踏まえ、感染症法において、予防計画の記載事項を充実させる等のほか、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律(令和3年法律第49号)により、令和6年4月より開始する医療計画の記載事項に「そのまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症がまん延し、又はそのおそれがあるときにおける医療」が盛り込まれることを踏まえ、予防計画と医療計画、特措法の都道府県行動計画との整合性の確保を図らなければならないことを規定した。あわせて、医療法においても、医療計画の策定にあたっては、予防計画及び都道府県行動計画との整合の確保を図らなければならないことを規定する。

(2) 改正の概要(医療法第30条の4第13項関係)

都道府県は、医療計画を作成するにあたっては、感染症法第10条第1項に規定する予防計画及び特措法第7条第1項に規定する都道府県行動計画との整合性の確保を図らなければならないこととする。

5 感染症対応等を行う医療チームの法定化(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

感染症のまん延時におけるDMAT(災害派遣医療チーム)、DPAT(災害派遣精神医療チーム)等の円滑な派遣を実施するため、従来実施している災害対応に加え、感染症等にも対応する医療チームとして、国が養成・登録するとともに、都道府県知事とDMAT等が所属する医療機関が協定を締結する仕組みを法律上位置づけ、その活動根拠の明確化を行うこととする。

(2) 改正の概要

<災害・感染症医療業務従事者の登録等について>

① 厚生労働大臣は、都道府県知事の求めに応じて、災害が発生した区域又はそのまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症がまん延し、若しくはそのおそれがある区域に派遣されて医療計画に定める災害医療又は感染症医療の確保に係る業務に従事する旨の承諾をした者(医師、看護師その他の当該業務に関する必要な知識及び技能を有する者であって厚生労働大臣が実施する研修の課程を修了したことその他の基準を満たすものに限る。)を、当該者の申請により、災害・感染症医療業務従事者として登録するものとする。(医療法第30条の12の2関係)

② 厚生労働大臣は、災害・感染症医療業務従事者から登録の消除の申請があった場合又は本人が死亡したことを知った場合には当該登録を消除しなければならないものとし、登録の基準を満たさなくなったと認められる場合等には、当該登録を消除することができるものとする。(医療法第30条の12の3関係)

③ 厚生労働大臣は、都道府県知事の求めに応じ、医療計画に定める災害医療又は感染症医療の確保に必要な事業(以下「災害・感染症医療確保事業」という。)に係る人材の確保等の実施に必要な限度において、災害・感染症医療業務従事者に関する情報であって厚生労働省令で定めるものを当該都道府県知事に提供することができるものとする。(医療法第30条の12の4関係)

④ 厚生労働大臣は、①の研修及び登録に関する事務並びに③の情報提供に関する事務を厚生労働大臣が指定する者に委託することができることとし、当該委託を受けた者は、厚生労働大臣の承認を得て、他の者に委託を受けた事務の全部又は一部を委託することができることとする。(医療法第30条の12の5関係)

<協定の締結について>

① 都道府県知事は、災害・感染症医療確保事業を実施するため、当該都道府県の区域内に所在する病院又は診療所の管理者と協議し、合意が成立したときは、次に掲げる事項をその内容に含む協定(以下この(2)において単に「協定」という。)を締結するものとする。(医療法第30条の12の6第1項関係)

(協定の内容)

・ 都道府県知事による災害・感染症医療業務従事者又はそれらの者の一隊(以下「医療隊」という。)(以下あわせて「医療チーム」という。)の派遣の求め及び当該求めに係る措置に関する。

・ 都道府県知事の派遣の求めに応じ、他の都道府県に医療チームの派遣を行う場合はその旨

・ 医療チームが行う業務の内容

・ 医療チームの派遣に要する費用の負担の方法

・ 協定の有効期間

・ 協定に違反した場合の措置

・ その他協定の実施に関し必要な事項として厚生労働省令で定めるもの

② 協定は、感染症法第36条の3第1項の医療措置協定と一体のものとして締結することができるものとする。(医療法第30条の12の6第2項関係)

<協定に基づく措置の実施状況の報告について>

① 都道府県知事は、災害・感染症医療確保事業を実施するため必要があると認めるときは、協定を締結した病院又は診療所(以下この(2)において「協定締結病院等」という。)の管理者に対し、協定に基づく医療チームの派遣の状況その他の事項について報告を求めることができるものとし、協定締結病院等の管理者は、当該求めがあったときは、正当な理由がある場合を除き、その求めに応じなければならないものとする。(医療法第30条の12の6第3項及び第4項関係)

② 都道府県知事は、①の報告を受けたときは、当該報告を受けた事項について厚生労働大臣に報告しなければならないものとし、厚生労働大臣は、当該報告を受けた事項について、必要があると認めるときは、当該都道府県知事に対し、助言その他必要な援助をすることができるものとする。(医療法第30条の12の6第5項及び第7項関係)

③ 都道府県知事が①により報告を求めた場合において、当該協定締結病院等の管理者が、当該報告を、電磁的方法であってその内容を当該管理者、当該都道府県知事及び厚生労働大臣が閲覧することができるものにより行ったときは、当該報告を受けた都道府県知事は、②による報告を行ったものとみなすものとする。(医療法第30条の12の6第6項関係)

<協定に基づく措置の履行担保措置について>

① 都道府県知事は、協定締結病院等の管理者が、正当な理由がなく、当該協定に基づく措置を講じていないと認めるときは、当該管理者に対し、当該措置をとるべきことを勧告することができるものとし、当該管理者が正当な理由がなく当該勧告に従わないときは、当該措置をとるべきことを指示することができるものとし、当該指示を受けた管理者がその指示に従わなかったときは、その旨を公表することができるものとする。(医療法第30条の12の6第8項から第10項まで関係)

<国・都道府県の援助等について>

① 国は、災害・感染症医療業務従事者に対する災害・感染症医療確保事業に係る業務に関する研修及び訓練の機会の提供その他必要な援助を行うものとし、都道府県は、これらの援助を行うよう努めるもの等とする。(医療法第30条の12の7関係)

② 法令に特別の定めがある場合又は予算の範囲内において特別の措置を講じている場合を除くほか、協定に基づく災害・感染症医療業務従事者又は医療隊の派遣に要する費用は、都道府県が支弁するものとし、都道府県は、当該費用のうち、他の都道府県の知事により実施された災害・感染症医療確保事業につき行った応援のため支弁した費用について、当該他の都道府県に対して、求償することができるものとする。(医療法第30条の12の8関係)

六 検疫法の一部改正

1 検疫所長等の移送権限の明確化(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

新型コロナウイルス感染症の対応においては、隔離・停留の実施件数が増加する実態があったところ、検疫官がこれらの措置の執行に際し、対象となる入国者を宿泊施設等に移送する場面において、一部の入国者が自家用車に立てこもって、検疫官による停留を拒んだり、停留場所である施設から逃亡したりする等の事案が生じた。

隔離・停留の際に必要となる移送については、隔離・停留に付随するものとして、格別規定されていなかったところ、検疫所長・検疫官の権限として移送事務が明示的に規定されていないため、上述のような事案に際し、十分に対応できていない実態があったことから、検疫所長等に移送の権限がある旨、明確に規定することとする。

(2) 改正の概要

① 一類感染症又は新型インフルエンザ等感染症に係る隔離・停留に当たって、検疫所長は自ら、又は検疫官をして、入国者を隔離・停留先の病院若しくは診療所又は宿泊施設に移送することができる旨規定する。(検疫法第15条第2項及び第16条第4項関係)

② 新感染症に係る隔離・停留についても同様の規定を設ける。(検疫法第34条の3第2項及び第34条の4第2項関係)

2 新型インフルエンザ等感染症に感染したおそれがある者に対する宿泊施設での待機要請の明確化(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

新型コロナウイルス感染症については、累次に渡り新たな変異株が発生し、その都度、当該変異株の科学的知見が明らかになるまでの間においては、患者はもとより、患者ではない者であっても、当該変異株の流行地域から入国する者に対しては、未知の感染症の国内侵入防止を徹底する観点から、一定の期間、検疫所が指定する宿泊施設での待機を求める運用が実施された。

現行法においては、新型インフルエンザ等感染症の患者に対しては、検疫法第16条の2第1項において、協力要請に係る待機の場所として「宿泊施設」が明示的に規定されているが、新型インフルエンザ等感染症に感染したおそれのある者に対する待機要請の場所については、同条第2項において「当該者の居宅又はこれに相当する場所」と規定されており、「宿泊施設」は待機場所として明示的には規定されていない。このため、上記の運用は、これまで、同項の「その他の当該感染症の感染の防止に必要な協力」の一環として実施してきた。

今後も、感染力が強い新型インフルエンザ等感染症が発生した場合には、感染したおそれのある者に対して、居宅等での待機ではなく、検疫所が指定する宿泊施設における待機を要請することが十分想定されることから、新型インフルエンザ等感染症に感染したおそれのある者に対する外出自粛要請として、宿泊施設における待機を要請することができることを明確化する。

(2) 改正の概要(検疫法第16条の2第2項関係)

新型インフルエンザ等感染症に感染したおそれのある者に対する外出自粛要請につき、その実施場所として、「当該者の居宅又はこれに相当する場所」に加えて「宿泊施設」を追加し、宿泊施設での待機を要請することができることを明確化する。

3 宿泊施設の借上げ等のための根拠規定の創設(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

検疫所長が宿泊施設を確保するに当たっては、周辺住民の理解が得られない場合があるなどの課題があったことに加え、入国者を宿泊施設に移動させるための移動手段の確保に苦慮する事例も生じた。

さらに、検疫手続中の船舶や感染のおそれのある入国者であって待機施設に滞在するものに対し検査を行う際に、検体を採取したうえで検査機関に運送する場合があるが、この検体の運搬に当たって、関係者の協力を得られず、採取した検体の運送手段の確保に困難が生じる事例が生じた。

これらの協力要請については、法律上の根拠がなく、事実行為として行ってきたところ、今般、協力要請の根拠規定を設け、関係者との調整等を円滑に行うための環境整備を行う。

(2) 改正の概要

① 厚生労働大臣又は検疫所長は、診察及び検査(検疫法第13条)、隔離(同法第14条第1項第1号)、停留(同項第2号)、感染を防止するための報告又は協力の求め(同項第3号)、感染を防止するための指示(同項第4号)を行うために必要があると認めるときは、宿泊施設の開設者、運送事業者その他関係者に対し、宿泊施設の提供、人及び物の運送その他必要な協力を求めることができることとする。なお、検疫所長が、本条に基づき事業者等への要請を行う場合にあっては、相手方の任意の協力が前提であることに留意し、当該協力の内容が義務的なものであるなどの誤解を生じないよう努める必要がある。(検疫法第23条の3関係)

② 併せて、特定検疫港等(外国において特措法第2条第1号の新型インフルエンザ等が発生した場合において、新型インフルエンザ等の発生国を発航し、又は発生国に寄航して来航しようとする船舶又は航空機に係る検疫を行うべき検疫港又は検疫飛行場として、特措法第29条第1項の規定により厚生労働大臣が定めるものという。)において検疫を行う検疫所長が、停留を行うための施設の不足により停留を行うことが困難であると認めるときにおいて、医療機関の管理者や宿泊施設の開設者等の同意を得ることなく当該医療機関・宿泊施設を使用することができる旨を規定した同条第5項の規定について、現行規定においては、当該権限を発動できる場合について「特定検疫港等において検疫をされるべき者が増加し、停留を行うための施設の不足により停留を行うことが困難であると認められる場合」とされているところ、「特定検疫港等において検疫をされるべき者が増加し、検疫法第23条の3の規定による宿泊施設の提供の協力の求めを行つてもなお停留を行うための施設の不足により停留を行うことが困難であると認められる場合」に改正する。(特措法第29条第5項関係)

4 関係行政機関への協力要請(公布日施行)

(1) 改正の趣旨

隔離・停留をはじめとして、検疫法に規定する業務を確実に執行するため、上陸の申請を行った外国人が検疫未実施者であることが判明した場合には、入管から検疫に差し戻すことを依頼することや、税関に対し隔離・停留等が発生した場合の代理通関を要請すること等、関係行政機関の協力を得ることが重要となっていることを受け、関係行政機関との協力連携規定を設ける。

(2) 改正の概要(検疫法第23条の4(第23条の6)関係)

厚生労働大臣及び検疫所長は、出入国在留管理庁、税関、警察庁、都道府県警察、海上保安庁その他の関係行政機関に対し、検疫法第2章(検疫)の業務の遂行に関して、必要な協力を求めることができる旨規定する。また、協力を求められた上記行政機関は、本来の任務の遂行を妨げない範囲において、できるだけその求めに応じなければならない旨規定する。なお、関係行政機関には、地方公共団体も含まれる。

5 船舶の検疫実施場所の柔軟化(公布日から10日後施行)

(1) 改正の趣旨

検疫法第5条において、同条各号に掲げる事由に該当する場合を除き、船舶については、検疫済証又は仮検疫済証の交付を受けた後でなければ、何人も、当該船舶から上陸又は物を陸揚げすることができないこととされており、航空機については、検疫済証又は仮検疫済証の交付を受けた後でなければ、何人も、当該航空機及び検疫飛行場ごとに検疫所長が指定する場所から離れ、又は物を運び出してはならないこととされている。

ただし、航空機については航空機外で検疫を行うことが円滑な業務の遂行に資することから、必要な場合には、航空機外においても検疫を行うことが可能である一方、船舶については、検疫法第5条において、交通等の制限の対象場所が「当該船舶」とされており、検疫済証又は仮検疫済証が交付されるまでは何人も船舶から上陸等することが許されず、このため、乗客に対する検査や質問等の検疫業務についても、必然的に、船舶内で実施することが法律上求められている。

一方で、最近では、船舶についても、いわゆるクルーズ客船と呼ばれる数千人規模の乗客を乗せた大型客船が外国から来港するといったケースがあり、こういったケースについては、航空機・空港の検疫と同様、乗客を船舶から上陸させ、客船ターミナル等の中の適切な場所に検疫ブースを設置しそこで検査等を実施することにより、船船内のみで検疫業務を実施するよりも、迅速かつ円滑な検疫業務の実施が可能となると考えられる。

こうしたことを踏まえ、船舶についても、航空機の場合と同様に、船外であって検疫所長が指定する場所での検疫業務の実施を可能とするため、船舶に係る交通等の制限に係る条文を見直すこととする。

(2) 改正の概要(検疫法第5条第3号関係)

交通等の制限の原則を規定する検疫法第5条柱書において、外国から来航した船舶について、検疫済証又は仮検疫済証の交付を受けた後でなければ当該船舶から上陸し、若しくは物を陸揚げしてならないとされているところ、当該原則の例外を規定する同条のただし書きに該当するものとして「当該船舶から、検疫港ごとに検疫所長が指定する場所(検疫港指定場所)に上陸し、又は検疫港指定場所に陸揚げするとき」を追加することにより、船舶について、検疫港ごとに検疫所長が指定する場所の範囲内に限り上陸・陸揚げを可能とする。

併せて、検疫港ごとに検疫所長が指定する場所を「検疫港指定場所」、検疫飛行場ごとに検疫所長が指定する場所を「検疫飛行場指定場所」と称することとする。

6 船舶等の長に対する書類の提出の求めの法定化(公布日から10日後施行)

(1) 改正の趣旨

船舶又は航空機(以下「船舶等」という。)の長は、検疫を受けるに当たって、検疫所長に船舶等の名称又は登録番号、発航地名、寄航地名等を記載した明告書を提出しなければならないこととされており(検疫法第11条第1項)、また、検疫所長は、船舶等の長に対して、乗組員名簿、乗客名簿、積荷目録の提出を求め、又は航海日誌・航空日誌、その他検疫のために必要な書類の提示を求めることができることとされている(同条第2項)。「その他検疫のために必要な書類」とは、具体的には、船舶衛生管理(免除)証明書、患者の診療記録、医薬品の使用簿等が想定されている。

乗組員名簿、乗客名簿及び積荷目録については「提出」を求めることができることとされているところ、この提出については、書面による提出に限らず、インターネットを用いた電磁的方法による提出も可能である。一方、現行法上、航海日誌・航空日誌及びその他検疫のために必要な書類については、検疫所長は船舶等の長に対し、「提示」のみ求めることができることとされており、現物の書類を対面で「提示」しなければならない。

しかし、航海日誌・航空日誌及びその他検疫のために必要な書類について、現物の書類を提示させなくても、その写しの提出を求めることにより検疫業務につき必要な情報を収集することが可能である。また、船舶等の長が空港等において検疫官に対面で現物の書類を提示するよりも、インターネットを用いた電磁的方法により写しを送付する方が、検疫手続の迅速化に資すると考えられる。

こうしたことを踏まえ、現行は現物の書類の提示を求めることとしている航海日誌・航空日誌、その他検疫のために必要な書類について、当該書類の写しの提出を求めることを可能とする。

(2) 改正の概要(検疫法第11条第2項関係)

検疫所長は、船舶等の長に対して、乗組員名簿、乗客名簿、積荷目録の提出並びに航海日誌又は航空日誌、その他検疫のために必要な書類の提示又は当該書類の写しの提出を求めることができることとする。

7 検疫所長等による情報の提出の求めの法定化(公布日から10日後施行)

(1) 改正の趣旨

検疫業務における検疫所長の権限の一つとして、検疫所長は、船舶等に乗ってきた者及び水先人その他船舶等が来航した後にこれに乗り込んだ者に対して、必要な質問を行い、又は検疫官に質問させることができることとされており、当該質問に対して答弁をせず、又は虚偽の答弁をした場合は罰則(6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)の対象とされている(検疫法第12条及び第36条第3号)。

世界的に感染症が流行する状況下では、検疫において、入国者から保健上の必要な情報を得る必要性が高くなるものと考えられ、実際、新型コロナウイルス感染症に係る検疫措置にあっては、入国者に対して質問を行うことに加えて、出国前72時間以内に新型コロナウイルス感染症の検査を受けその結果が陰性であることを示す「検査証明書」や新型コロナウイルス感染症に有効なワクチンを接種したことを示す「ワクチン接種証明書」の提示等を求めてきたところであり、質問や書類の提示等を通じて取得した情報をもとに、入国者の体調やワクチンの接種状況、滞在国等といった個々の状況を踏まえ、それぞれの入国者に対し、リスクに応じて隔離、停留又は宿泊施設若しくは居宅等における待機要請といった措置を適切に講じてきたものである。

検疫感染症の国内侵入を防止する上では、こうした書類の提示等により入国者に関する情報を取得することは、質問と同程度の重要性を持つと考えられることから、検疫所長等の権限として、書類の提示等により必要な情報の提出を求めることができることを明確化することとする。

(2) 改正の概要

検疫所長の権限として、船舶等に乗ってきた者及び水先人その他船舶等が来航した後これに乗り込んだ者に対して、書類の提示その他の適当と認める方法により必要な情報を提出することを求め、又は検疫官をしてこれを行わせることができることとする(検疫法第12条関係)。

上記の情報の提出を求められた場合において、虚偽の情報を提出した場合について、罰則(6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)を科すこととする。(検疫法第36条第3号関係)

8 検疫手続中の感染拡大防止のための指示(公布日から10日後施行)

(1) 改正の趣旨

新型コロナウイルス感染症に係る検疫手続(質問、診察・検査等)においては、検査や施設への移動の待ち時間に、入国者等による妨害行為が発生し、検疫業務の妨げとなった事案が生じたが、これらの事案は検疫法第11条から第16条の2までの各権限に基づく措置の違反として当てはめることができず、現行法上は検疫所長又は検疫官が取り締まることができなかった。

検疫手続は空港内の指定場所や船舶の内部といった限られたスペースで実施されるため、感染者とそうでない者が限られたスペースに混在しうるものであり、妨害行為については、単に業務の妨げになるのみならず、検疫業務の実施場所における感染症の感染拡大に繋がるおそれのある行為である。

こうした状況を踏まえ、検疫業務の実施場所における感染症の感染拡大の防止に必要な検疫所長等による指示の規定を設けることとする。

(2) 改正の概要

① 検疫所長は、検疫業務の円滑な遂行に支障を及ぼす行為によって船舶等、検疫港指定場所又は検疫飛行場指定場所において検疫感染症が発生し、又はまん延するおそれがあると認めるときは、これらの場所における検疫感染症の発生又はまん延を防止するため必要な限度において、検疫法第12条に規定する者(船舶等に乗ってきた者及び水先人その他船舶等が来航した後にこれに乗り込んだ者)に対し必要な指示を行い、又は検疫官をしてこれを行わせることができることとする。(検疫法第13条の3関係)

② 上記の指示に違反した場合は罰則(6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)を科すこととする。(検疫法第36条第5号関係)

③ 当該指示は、検疫法第34条の2に規定する新感染症についても適用すべきであることから、新感染症について実施できる事務として、検疫法第13条の3の規定を追加する。(検疫法第34条の2第3項関係)

9 感染したおそれのある入国者の居宅等待機の実効性確保(公布日から10日後施行)

(1) 改正の趣旨

新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律(令和3年法律第5号)の施行後は、検疫法第16条の2第2項に基づき、感染したおそれのある入国者に対し、居宅等での待機に加え、スマートフォン等により居宅等での待機状況の報告等も求めているところであるが、求めに応じない入国者も一定数存在しており、その実効性の確保が課題となっていた。

新型インフルエンザ等感染症に感染したおそれのある者がこうした求めに応じない場合、検疫所長は、医療機関又は宿泊施設に停留を行うことが考えられるが、新型コロナウイルス感染症のように、感染が急速に拡大する感染症において、医療機関・宿泊施設がひっ迫する場合も想定されることから、居宅等における待機の実効性をより高めることが必要となる。

(2) 改正の概要(検疫法第14条第1項第4号、第16条の2第5項及び第6項、第16条の3、第36条第8項関係)

感染したおそれのある入国者については、検疫法第16条の2第2項に基づく居宅等待機の協力要請を基本としつつ、当該要請によっては居宅等待機の実効性を確保できない場合を想定し、そのような場合において、検疫所長は、感染したおそれのある者に対し、居宅等から外出しないことを指示することができることとするとともに、当該指示への対応状況(外出していないかどうか)について報告を求めることができることとし、当該報告に応じなかった場合又は虚偽の報告を行った場合の罰則(6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)を設けることとする。

10 平時における医療機関との協定の締結及び感染症発生時における個別の入院調整に係る都道府県知事との連携(令和6年4月1日施行)

(1) 改正の趣旨

新型コロナウイルス感染症の対応においては、空港等での検査や宿泊施設での待機中の検査によって新型コロナウイルス感染症の患者が見つかり、患者を医療機関に隔離するケースが頻発した。

新型コロナウイルス感染症の流行以前においては、検疫所にとって、隔離・停留の措置を行うことは稀であったため、検疫所と医療機関との間で、必ずしも平時から連携が図られていたわけではなく、特に、検疫所の近隣の医療機関以外の医療機関においては、検疫所から隔離等による入院の委託を依頼されることを想定しておらず、検疫所と医療機関との調整に支障を生じさせた。

さらに、症状が重篤であるデルタ株の流行期や、感染力が強いオミクロン株の流行期において、水際対策において隔離・停留による入院措置の件数が増加した時期と、市中においても感染が広がり、都道府県が感染症法に基づく入院勧告・措置を行う件数が増加した時期が重複し、検疫所と都道府県が病床を取り合うような状態となり、医療機関との調整に当たり混乱が生じたことがあった。

これを踏まえ、

・ 検疫所が、平時から医療機関と協定を締結し連携体制を構築することにより、感染症が発生したときに、円滑に隔離・停留による入院措置を講じられる体制を確保することとし、併せて、協定の締結に当たり平時から当該医療機関の所在地の都道府県と連携すること

・ 水際対策において患者が発生した際の個別の入院調整において、検疫所と都道府県知事が相互に緊密に連携すること

について、法的枠組を整備することとする。

(2) 改正の概要

① 検疫所長は、隔離・停留の措置について、医療機関に迅速かつ適確に入院を委託することができる体制を整備するため、医療機関の管理者と協議し、合意が成立したときは、当該医療機関が検疫所長からの求めに応じて隔離・停留の措置に係る入院の委託を受けること等の事項を内容とする協定を締結するものとする。(検疫法第23条の4第1項関係)

② 検疫所長は、協定(一類感染症に係る入院の委託に関するものを除く。)を締結しようとするときは、当該協定に係る医療機関の所在地を管轄する都道府県知事の意見を聴かなければならないものとする。(検疫法第23条の4第2項関係)

③ 検疫所長は、協定を締結したときは、当該協定に係る医療機関の所在地を管轄する都道府県知事に対し、遅滞なく、当該協定の内容を通知しなければならないものとすること。(検疫法第23条の4第3項関係)

④ 検疫所長及び都道府県知事は、検疫所長が隔離・停留の措置をとろうとするときは、当該措置に係る入院の委託先の調整が円滑に行われるよう、相互の緊密な連携の確保に努めるものとすること。(検疫法第23条の5関係)