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○医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その2)〔保健師助産師看護師法〕

(令和4年12月1日)

(医政発1201第4号)

(各都道府県知事あて厚生労働省医政局長通知)

(公印省略)

医師、歯科医師、看護師等の免許を有さない者による医業(歯科医業を含む。以下同じ。)は、医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条その他の関係法規によって禁止されている。ここにいう「医業」とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うことであると解している。

ある行為が医行為であるか否かについては、個々の行為の態様に応じ個別具体的に判断する必要があるが、介護現場等において医行為であるか否かについて判断に疑義が生じることの多い行為であって原則として医行為でないと考えられるもの等については、これまで、「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」(平成17年7月26日付け医政発第0726005号厚生労働省医政局長通知。以下「平成17年通知」という。)等においてお示ししてきたところである。

今般、規制改革実施計画(令和2年7月17日閣議決定)において、平成17年通知に記載のない行為のうち、介護現場で実施されることが多いと考えられる行為を中心に、医行為ではないと考えられる行為を整理し、周知した上で、介護職員がそれらの行為を安心して行えるよう、ケアの提供体制について本人、家族、介護職員、看護職員、主治医等が事前に合意するプロセスを明らかにすることとされた。

これを踏まえ、医療機関以外の介護現場で実施されることが多いと考えられる行為であって、原則として医行為ではないと考えられるもの及び当該行為を介護職員が行うに当たっての患者や家族、医療従事者等との合意形成や協力に関する事項について別紙のとおり列挙したので、医師、看護師等の医療に関する免許を有しない者が行うことが適切か否か判断する際や、ケアの提供体制について検討する際の参考とされたい。

なお、本通知については、厚生労働省社会・援護局及び老健局と調整済みである。また、当然のこととして、医行為に該当しない行為についても、高齢者介護の現場等において安全に行われるべきものであり、また、行為の実施に当たっては、患者の状態を踏まえ、医師、歯科医師又は看護職員と連携することや、必要に応じてマニュアルの作成や医療従事者による研修を行うことが適当であることを申し添える。

(別紙)

(在宅介護等の介護現場におけるインスリンの投与の準備・片付け関係)

1 在宅介護等の介護現場におけるインスリン注射の実施に当たって、あらかじめ医師から指示されたタイミングでの実施の声かけ、見守り、未使用の注射器等の患者への手渡し、使い終わった注射器の片付け(注射器の針を抜き、処分する行為を除く。)及び記録を行うこと。

2 在宅介護等の介護現場におけるインスリン注射の実施に当たって、患者が血糖測定及び血糖値の確認を行った後に、介護職員が、当該血糖値があらかじめ医師から指示されたインスリン注射を実施する血糖値の範囲と合致しているかを確認すること。

3 在宅介護等の介護現場におけるインスリン注射の実施に当たって、患者が準備したインスリン注射器の目盛りが、あらかじめ医師から指示されたインスリンの単位数と合っているかを読み取ること。

(血糖測定関係)

4 患者への持続血糖測定器のセンサーの貼付や当該測定器の測定値の読み取りといった、血糖値の確認を行うこと。

(経管栄養関係)

5 皮膚に発赤等がなく、身体へのテープの貼付に当たって専門的な管理を必要としない患者について、既に患者の身体に留置されている経鼻胃管栄養チューブを留めているテープが外れた場合や、汚染した場合に、あらかじめ明示された貼付位置に再度貼付を行うこと。

6 経管栄養の準備(栄養等を注入する行為を除く。)及び片付け(栄養等の注入を停止する行為を除く。)を行うこと。なお、以下の3点については医師又は看護職員が行うこと。

① 鼻からの経管栄養の場合に、既に留置されている栄養チューブが胃に挿入されているかを確認すること。

② 胃ろう・腸ろうによる経管栄養の場合に、び爛や肉芽など胃ろう・腸ろうの状態に問題がないことを確認すること。

③ 胃・腸の内容物をチューブから注射器でひいて、性状と量から胃や腸の状態を確認し、注入内容と量を予定通りとするかどうかを判断すること。

(喀痰吸引関係)

7 吸引器に溜まった汚水の廃棄や吸引器に入れる水の補充、吸引チューブ内を洗浄する目的で使用する水の補充を行うこと。

(在宅酸素療法関係)

8 在宅酸素療法を実施しており、患者が援助を必要としている場合であって、患者が酸素マスクや経鼻カニューレを装着していない状況下における、あらかじめ医師から指示された酸素流量の設定、酸素を流入していない状況下における、酸素マスクや経鼻カニューレの装着等の準備や、酸素離脱後の片付けを行うこと。ただし、酸素吸入の開始(流入が開始している酸素マスクや経鼻カニューレの装着を含む。)や停止(吸入中の酸素マスクや経鼻カニューレの除去を含む。)は医師、看護職員又は患者本人が行うこと。

9 在宅酸素療法を実施するに当たって、酸素供給装置の加湿瓶の蒸留水を交換する、機器の拭き取りを行う等の機械の使用に係る環境の整備を行うこと。

10 在宅人工呼吸器を使用している患者の体位変換を行う場合に、医師又は看護職員の立会いの下で、人工呼吸器の位置の変更を行うこと。

(膀胱留置カテーテル関係)

11 膀胱留置カテーテルの蓄尿バックからの尿廃棄(DIBキャップの開閉を含む。)を行うこと。

12 膀胱留置カテーテルの蓄尿バックの尿量及び尿の色の確認を行うこと。

13 膀胱留置カテーテル等に接続されているチューブを留めているテープが外れた場合に、あらかじめ明示された貼付位置に再度貼付を行うこと。

14 専門的管理が必要無いことを医師又は看護職員が確認した場合のみ、膀胱留置カテーテルを挿入している患者の陰部洗浄を行うこと。

(服薬等介助関係)

15 患者の状態が以下の3条件を満たしていることを医師、歯科医師又は看護職員が確認し、これらの免許を有しない者による医薬品の使用の介助ができることを本人又は家族等に伝えている場合に、事前の本人又は家族等の具体的な依頼に基づき、医師の処方を受け、あらかじめ薬袋等により患者ごとに区分し授与された医薬品について、医師又は歯科医師の処方及び薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保健指導・助言を遵守した医薬品の使用を介助すること。具体的には、水虫や爪白癬にり患した爪への軟膏又は外用液の塗布(褥瘡の処置を除く。)、吸入薬の吸入及び分包された液剤の内服を介助すること。

① 患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること

② 副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと

③ 内用薬については誤嚥の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと

(血圧等測定関係)

16 新生児以外の者であって入院治療の必要ないものに対して、動脈血酸素飽和度を測定するため、パルスオキシメーターを装着し、動脈血酸素飽和度を確認すること。

17 半自動血圧測定器(ポンプ式を含む。)を用いて血圧を測定すること。

(食事介助関係)

18 食事(とろみ食を含む。)の介助を行うこと。

(その他関係)

19 有床義歯(入れ歯)の着脱及び洗浄を行うこと。

注1 在宅酸素療法を実施するに当たって、酸素流入中の酸素マスクや経鼻カニューレがずれ、次のいずれかに該当する患者が一時的に酸素から離脱(流入量の減少を含む。)したことが見込まれる場合に、当該酸素マスクや経鼻カニューレを元の位置に戻すことも、原則として、医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要がないものであると考えられる。

・ 肢体不自由等により、自力で酸素マスクや経鼻カニューレを戻すことが困難である患者

・ 睡眠中や意識がない状態で、自力で酸素マスクや経鼻カニューレを戻すことが困難である患者

注2 前記1から19まで及び注1に掲げる行為は、原則として医行為又は医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要があるものでないと考えられるものであるが、病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医行為であるとされる場合もあり得る。このため、介護サービス事業者等はサービス担当者会議の開催時等に、必要に応じて、医師、歯科医師又は看護職員に対して、そうした専門的な管理が必要な状態であるかどうか確認することが考えられる。さらに、病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、医師、歯科医師又は看護職員に連絡を行う等の必要な措置を速やかに講じる必要がある。

また、前記1から4までに掲げる行為については、患者の血糖値や食事摂取量等が不安定でないことが必要である。

さらに、前記2、4、16及び17に掲げる行為によって測定された数値を基に投薬の要否など医学的な判断を行うことは医行為であり、事前に示された数値の範囲外の異常値が測定された場合には医師、歯科医師又は看護職員に報告するべきものである。

注3 前記1から19まで及び注1に掲げる行為は原則として医行為又は医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要があるものではないと考えられるものであるが、その実施に当たっては、当然ながら患者本人や家族に対して分かりやすく、適切な説明を行うとともに、介護職員等の実施する行為について患者本人や家族が相談を行うことができる環境作りに努めることが望ましい。また、必要に応じて、注2のサービス担当者会議の開催時等に医師、歯科医師又は看護職員に相談する、必要に応じて書面等で指示を受ける、ケアの実施後に医師、歯科医師又は看護職員に報告を行う等して適切に連携することが望ましい。

注4 前記1から19まで及び注1に掲げる行為は原則として医行為又は医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要があるものではないと考えられるものであるが、業として行う場合には実施者に対して一定の研修や訓練が行われることが望ましいことは当然であり、介護サービス等の場で就労する者の研修の必要性を否定するものではない。

また、介護サービスの事業者等は、事業遂行上、安全にこれらの行為が行われるよう監督することが求められる。

注5 今回の整理はあくまでも医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法等の解釈に関するものであり、事故が起きた場合の刑法、民法等の法律の規定による刑事上・民事上の責任は別途判断されるべきものである。

注6 前記1から19まで及び注1に掲げる行為について、看護職員による実施計画が立てられている場合は、具体的な手技や方法をその計画に基づいて行うとともに、その結果について報告、相談することにより密接な連携を図るべきである。前記15に掲げる服薬等の介助が福祉施設等において行われる場合には、看護職員によって実施されることが望ましく、また、その配置がある場合には、その指導の下で実施されるべきである。