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○歯科用インプラント承認基準の改正について

(令和4年11月2日)

(薬生発1102第10号)

(各都道府県知事あて厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)

(公印省略)

歯科用インプラント承認基準については、「歯科用インプラント承認基準の制定について」(平成21年5月25日付け薬食発第0525004号厚生労働省医薬食品局長通知。以下「改正前基準通知」という。)により示してきたところです。

今般、適用範囲へのハイドロキシアパタイトによるコーティング処理の追加等に伴い、下記のとおり当該承認基準を改正しましたので、御了知の上、貴管内関係団体、関係事業者等への周知方お願いします。

1.改正の内容

歯科用インプラント承認基準について、適用範囲にハイドロキシアパタイトによるコーティング処理を追加したこと等に伴い、別添のとおり、技術基準及び基本要件適合性チェックリストの記載整備等の改正をしたこと。

2.承認基準の不適合品の取扱いについて

承認基準の「適用範囲」に該当する歯科用インプラントであって、当該承認基準に適合しないものについては、「医療機器の製造販売承認申請について」(平成26年11月20日付け薬食発第1120第5号厚生労働省医薬食品局長通知。以下「承認申請通知」という。)における承認基準なし(承認基準不適合)の取扱いとなること。

3.既承認品の取扱いについて

既に承認を受けている歯科用インプラントのうち、改正後の承認基準(以下「本基準」という。)に適合しないものについては、承認基準に適合させるための承認事項の一部変更申請を別途行う必要はないものとする。

なお、既承認品に係る今後行われる承認事項の一部変更申請は、変更後の製品が本基準に適合しない場合には、承認申請通知における承認基準なし(承認基準不適合)の取扱いとなることに留意すること。

4.適用期日

本基準は、本通知の発出日から適用する。

別添

歯科用インプラント承認基準

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条の第5項から第7項までの規定に基づき、厚生労働大臣が指定する高度管理医療機器、管理医療機器及び一般医療機器(平成16年厚生労働省告示第298号。以下「クラス分類告示」という。)別表第1第1041号に規定する歯科用骨内インプラント材、第1042号に規定する歯科用インプラントフィクスチャ、第1048号に規定する歯科用インプラントシステム及び第1049号に規定する歯科用インプラントアバットメントについて、次のように承認基準を定め、令和4年11月2日から適用する。

歯科用インプラント承認基準

1.適用範囲

クラス分類告示に規定する歯科用骨内インプラント材、歯科用インプラントフィクスチャ、歯科用インプラントシステム及び歯科用インプラントアバットメントであること。

2.技術基準

別紙1に適合すること。

3.使用目的又は効果

使用目的又は効果は、歯の欠損部位の顎骨内に埋植し、歯科用補綴物を支持することによって咀嚼機能を回復させるものであること。

4.基本要件への適合性

別紙2に示す基本要件適合性チェックリストに基づき基本要件への適合性を説明するものであること。

5.その他

構造、使用方法、性能等が既存の医療機器と明らかに異なる場合については、本基準に適合しないものとする。

別紙1

歯科用インプラント承認基準における技術基準

1 適用範囲

この基準は、歯の欠損部位の顎骨内に埋植し、歯科用補綴物を支持することによって咀嚼機能の回復に用いる歯科用インプラントのうち、歯科用骨内インプラント材、歯科用インプラントフィクスチャ、歯科用インプラントシステム又は歯科用インプラントアバットメントであって、既に承認された歯科用インプラントと原材料が同一であり、かつ、既承認品と同等の表面処理が施され、既承認品と同等の表面又は同等の表面処理の状態をもつ歯科用インプラントに適用する。ただし、歯科用インプラントシステムとは、歯科用インプラントフィクスチャと歯科用インプラントアバットメントとで構成されるもののみとし、表面処理とは、サンドブラスト、酸処理、サンドブラスト及び酸処理、粗面化のための陽極酸化処理、ワイヤカット放電加工、窒化チタンによる着色処理並びに干渉色を発現させるための陽極酸化処理及びハイドロキシアパタイトによるコーティング処理をいい、無処理も含むものとする。また、即時負荷又は早期負荷を使用方法とするもの及び暫間インプラントを除く。

2 引用規格

この基準は、下記の規格又は基準(以下「規格等」という。)を引用する。引用する規格等が下記の規格等と同等以上の場合には、本邦又は外国の規格等を使用することができる。

2.1 JIS H 4650,チタン及びチタン合金―棒

2.2 JIS H 4670,チタン及びチタン合金―線及び線材

2.3 JIS K 6717―1,プラスチック―ポリメタクリル酸メチル(PMMA)成形用及び押出用材料―第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎

2.4 JIS T 0307,医療機器―医療機器のラベル、ラベリング及び供給される情報に用いる図記号

2.5 JIS T 6002,歯科用金属材料の腐食試験方法

2.6 JIS T 6005,歯科用骨内インプラントの動的疲労試験方法

2.7 JIS T 6116,歯科鋳造用金合金

2.8 JIS T 6501,義歯床用レジン

2.9 JIS T 14971,医療機器―リスクマネジメントの医療機器への適用

2.10 ISO 5832―3,Implants for surgery‐Metallic materials‐Part 3:Wrought titanium 6‐aluminium 4‐vanadium alloy

2.11 ISO 5832―11,Implants for surgery‐Metallic materials‐Part 11:Wrought titanium 6‐aluminium 7‐niobium alloy

2.12 ISO 6474―1,Implants for surgery‐Ceramic materials‐Part 1:Ceramic materials based on high purity alumina

2.13 ISO 6872,Dentistry‐Ceramic materials

2.14 ISO 10271,Dentistry‐Corrosion test methods for metallic materials

2.15 ISO 13356,Implants for surgery‐Ceramic materials based on yttria‐stabilized tetragonal zirconia(Y‐TZP)

2.16 ISO 13779―2,Implants for surgery‐Hydroxyapatite‐Part 2:Thermally sprayed coatings of hydroxyapatite

2.17 ISO 13779―3,Implants for surgery‐Hydroxyapatite‐Part 3:Chemical analysis and characterization of crystallinity ratio and phase purity

2.18 ISO 13779―4,Implants for surgery‐Hydroxyapatite‐Part 4:Determination of coating adhesion strength

2.19 ISO 14801,Dentistry‐Implants‐Dynamic loading test for endosseous dental implants

2.20 ISO 14971,Medical devices‐Application of risk management to medical devices

2.21 ISO 20795―1,Dentistry‐Base polymers‐Part 1:Denture base polymers

2.22 ASTM B 348,Standard Specification for Titanium and Titanium Alloy Bars and Billets

2.23 ASTM B 476,Standard Specification for General Requirements for Wrought Precious Metal Electrical Contact Materials

2.24 ASTM F 67,Standard Specification for Unalloyed Titanium for Surgical Implant Applications

2.25 ASTM F 136,Standard Specification for Wrought Titanium‐6 Aluminum‐4 Vanadium ELI(Extra Low Interstitial)Alloy for Surgical Implant Applications(UNS R56401)

2.26 ASTM F 603,Standard Specification for High‐Purity Dense Aluminum Oxide for Medical Application

2.27 ASTM F 2026,Standard Specification for Polyetheretherketone(PEEK)Polymers for Surgical Implant Applications

2.28 薬食機発1012号第2号:平成22年10月12日,エチレンオキサイド滅菌における滅菌残留物の許容限度の取扱いについて

2.29 薬食機発1109第1号:平成23年11月9日,医療機器のエチレンオキサイド滅菌残留物に関する日本工業規格の制定に伴う薬事法上の取扱いについて

2.30 薬生監麻発0215第13号:平成29年2月15日,滅菌バリデーション基準の改正について

2.31 薬生機審発0612第4号:平成30年6月12日,歯科用医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方等の一部改正について

2.32 薬生機審発0531第5号:令和3年5月31日,歯科用医療機器の生物学的安全性評価の基本的考え方の一部改正について

2.33 Calcium Phosphate(Ca‐P)Coating Draft Guidance for Preparation of FDA Submissions for Orthopedic and Dental Endosseous Implant

3 定義

3.1 歯科用インプラント

生体に親和性のある材料で作られ、上顎若しくは下顎の骨に外科的に埋植するか、又はそれに直接接続し、咀嚼機能を回復させるための医療機器。ただし、この基準では、歯科用骨内インプラント材、歯科用インプラントフィクスチャ、歯科用インプラントシステム及び歯科用インプラントアバットメントをいう。

3.2 歯科用骨内インプラント材

部分的又は全体的に顎骨内に埋植する歯科用インプラントをいう。ただし、この基準においては、歯科用インプラントフィクスチャ及び歯科用インプラントアバットメントを含むものとする。

3.3 歯科用インプラントフィクスチャ

外科的に骨内に埋植する歯科用インプラントの一部をいう。スクリュ型及びシリンダ型がある。

3.4 歯科用インプラントアバットメント

歯科用インプラントフィクスチャに固定して上部構造体の支台となるもの又は歯肉が治癒するまで暫間的に使用するものをいう。なお、この基準では、歯科用インプラントアバットメントを固定するアバットメントスクリュを含むものとする。

3.5 歯科用インプラントシステム

歯科用インプラント、インプラント埋植手術用器材、上部構造の作製に用いる技工用器具から成るシステムをいう。ただし、この基準では、歯科用インプラントフィクスチャと歯科用インプラントアバットメントとで構成されるもののみとする。

3.6 即時負荷

歯科用骨内インプラント材又は歯科用インプラントフィクスチャを埋植後、48時間以内に歯科用インプラント上の補綴物へ咬合負荷をかける術式をいう。

3.7 早期負荷

歯科用骨内インプラント材又は歯科用インプラントフィクスチャを埋植後、骨の治癒(上顎4か月、下顎3か月)の前に歯科用インプラント上の補綴物へ咬合負荷をかける術式をいう。ただし、即時負荷を除く。

3.8 暫間インプラント

永久に使用するためではない歯科用骨内インプラント材又は歯科用インプラントフィクスチャをいう。

3.9 表面処理

歯科用インプラント表面の一部又は全体に施された加工処理をいい、この基準においては、サンドブラスト、酸処理、サンドブラスト+酸処理、粗面化のための陽極酸化処理、ワイヤカット放電加工、窒化チタンによる着色処理、干渉色を発現させるための陽極酸化処理及びハイドロキシアパタイトによるコーティング処理とし、無処理も含む。

3.10 最終製品

その製品が使用される状態にある歯科材料をいう。ただし、滅菌品又は用時加工・調整される製品については、滅菌後のもの又は加工・調整後のものをいう。

3.11 つる巻き線

円筒又は円すいの表面に沿って、軸方向移動と軸線の周りの回転角との比が、一定であるような点が描く軌跡をいう。

4 材料及び形状・構造

4.1 原材料

原材料は、既承認品と同一でなければならない。既承認品の原材料を表9―1~表9―3に例示する。表に記載のない既承認品の原材料は、該当する既承認品の医療機器承認番号、製造販売業者名、販売名等を記載するとともに、既承認品の原材料と同一であることを示さなければならない。

4.2 外観

目視にて観察したとき、形状の異常、表面のバリ、傷、異物の付着・被覆等を認めてはならない。

4.3 形状、構造

歯科用インプラントフィクスチャ、歯科用骨内インプラント材についてはスクリュ形状を含む概略円柱状であって、骨内埋入部最大直径及び全長が表1の範囲内のものとする。

歯科用インプラントアバットメントは概略円柱状の部分、及びスクリュ形状の部分から成るものとし、歯科用インプラントフィクスチャと歯科用インプラントアバットメントとの各主軸がなす角度が30度以下のものとする。

表1 歯科用インプラントフィクスチャ及び歯科用骨内インプラント材の主要寸法

主要寸法箇所

1ピースタイプ

2ピースタイプ

骨内埋入部最大直径(A)

3.0~6.0mm

3.0~7.0mm

全長(B)

13.5~23.8mm

6.0~22.0mm

ただし、2ピースタイプのうち、骨内埋入部最大直径が3.8mm未満であり、かつ、全長が6.25mm未満のものを除く。

図1 骨内埋入部最大直径(A)、全長(B)、及び各主軸のなす角度(C)の指示箇所

歯科用インプラントフィクスチャ、歯科用骨内インプラント材及び歯科用インプラントアバットメントについては、寸法及びその規格値を記した図面(嵌合部分を含む。)を示し、組み合わせて用いるものについては、推奨する組合せ、及び組合せに関わる境界部分、ねじ等の寸法、又は規格を一覧表等で示す。また、歯科用インプラントアバットメントについては各用途を記載する。

5 物理的・化学的要求事項

歯科用インプラントを構成する各部品の安全性、有効性を確認するために、下記の項目について試験を行うか、又は情報を示す。試料としては、最終製品若しくは最終製品と同一の条件で作製された試験体又は原材料を適宜使用する。ただし、承認前例のある原材料に対応する公的規格の中に規格値がある場合には、その規格の番号、種類記号及び当該規格値を示すことで試験結果に代えることができる。試験方法等を変更した場合には、試験法及び試験法選択の妥当性を示す。

評価に当たっては、平成30年6月12日付け薬生機審発0612第4号通知「歯科用医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方等の一部改正について」の別添2「歯科材料の物理的・化学的評価の基本的考え方」に準じて行う。

5.1 物理的要求事項

a) 表面処理

この基準の対象となる表面処理の歯科用インプラントとの組合せは、表2の○印の組合せに限る。

表2 表面処理及び対象とする歯科用インプラント


歯科用インプラント

歯科用インプラントフィクスチャ

歯科用インプラントアバットメント*

アバットメントスクリュ

表面処理


2)―1 無処理

2)―2 サンドブラスト



2)―3 酸処理



2)―4 サンドブラスト+酸処理



2)―5 粗面化のための陽極酸化処理



2)―6 ワイヤカット放電加工



2)―7 窒化チタンによる着色処理



2)―8 干渉色を発現させるための陽極酸化処理

2)―9 ハイドロキシアパタイトによるコーティング処理



*アバットメントスクリュを除く。

歯科用インプラントフィクスチャにあっては、原材料及び表面処理の組合せが表9―1に掲げられたもの、原材料が同一及び表2の表面処理の組合せが既承認品と同一のもの、のいずれかでなければならない。

歯科用インプラントアバットメントにあっては、既承認品の原材料と同一であって、かつ、表2に示された歯科用インプラントアバットメントの表面処理でなければならない。歯科用インプラントアバットメントの既承認の原材料及び表面処理の組合せを参考として表9―2及び表9―3に示す。

各表面処理については以下の1)~3)の情報を示さなければならない。

1) 表面処理される部品名及び表面処理名

2) 表面処理法の情報

2)―1 無処理

表面処理に関する情報は必要ない。

2)―2 サンドブラスト

i)ブラスト粒子の種類

ii)ブラスト粒子の平均粒子径

2)―3 酸処理

i)酸の種類

ii)酸の濃度

2)―4 サンドブラスト+酸処理

2)―2、2)―3に記載の各情報

2)―5 粗面化のための陽極酸化処理

i)電解液の種類

ii)電圧

iii)皮膜厚さ

2)―6 ワイヤカット放電加工

i)加工液の種類

ii)電圧

2)―7 窒化チタンによる着色処理

i)真空度

ii)窒化チタンの厚さ

2)―8 干渉色を発現させるための陽極酸化処理

表面処理に関する情報は必要ない。

2)―9 ハイドロキシアパタイトによるコーティング処理

i)コーティング方法

ii)コーティング膜厚

iii)コーティング前処理

3) 最終処理品の写真

表面処理された部分が確認できる最終製品全体の鮮明なカラー写真、及び表面性状が確認できる鮮明な走査電子顕微鏡写真(縮尺入り)を示す。ただし、2)―7及び2)―8の粗面化以外の表面処理については、最終製品全体の鮮明なカラー写真のみを提示する。

2)―2~2)―6の粗面化のための表面処理をされた歯科用インプラントにあっては、表面粗さが既承認品と同等又は別紙の測定条件で表面粗さ[算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)又は輪郭曲面の算術平均高さ(Sa)及び最大高さ(Sz)]を測定したときの各粗さが、表3―1又は表3―2の範囲でなければならない。ここでの同等とは、それぞれRaは±15%、Rzは±25%、Saは±10%、Szは±18%の範囲とする。なお、測定方法は別紙の測定条件に限定されるものではなく、別の測定方法を選択した場合には条件設定の根拠等を示した上で同等性の評価を行うこと。また、測定を省略する場合は、その理由、妥当性等を示すこと。

表3―1 表面粗さ(スクリュ型インプラント)

表面処理

規格値

Ra(μm)

Rz(μm)

Sa(μm)

Sz(μm)

2)―2 サンドブラスト

2)―3 酸処理

2)―4 サンドブラスト+酸処理

2)―5 粗面化のための陽極酸化処理

2)―6 ワイヤカット放電加工

1.15~4.05

5.0~40.0

1.40~5.05

13.5~55.0

表3―2 表面粗さ(シリンダ型インプラント)

表面処理

規格値

Ra(μm)

Rz(μm)

Sa(μm)

Sz(μm)

2)―4 サンドブラスト+酸処理

2)―6 ワイヤカット放電加工

1.60~4.05

6.0~40.0

1.40~4.25

14.5~55.5

2)―9のハイドロキシアパタイトによるコーティング処理をされた歯科用インプラントフィクスチャにあっては、走査電子顕微鏡写真等により、表面性状が既承認品と同等であることを示す。

b) 疲労試験

9.リスク評価によって、疲労強度に関してリスクが最も高いと分析された歯科用インプラントフィクスチャ(又は歯科用骨内インプラント材)、歯科用インプラントアバットメント、及び専用のアバットメントスクリュの各最終製品を用いて、規定のトルクで締結して組み立て、ISO 14801又はJIS T 6005に準じて疲労試験を原則として実施し、得られた疲労限の値を用いて組立構成品の疲労強度に関するリスク評価を実施するとき、リスクが既承認品と同等又は小さくなければならない。

特に、組立構成品の一部が他社既承認品である場合には、その組合せを、疲労試験によるリスク評価の対象として本試験を実施しなければならない。

c) 曲げ強さ

歯科用インプラントのうち、セラミックス又は高分子材料が使用されている歯科用インプラントアバットメントに対し適用する。

セラミック材料が用いられている場合には、ISO 6474―1若しくはASTM F 603又はISO 13356に準じて試験を行う。高分子材料が用いられている場合には、JIS T 6501若しくはISO 20795―1又はASTM F 2026に準じて試験を行う。各値は、次による。

表4 曲げ強さ(セラミックス製又は高分子製の歯科用インプラントアバットメント)

材質

曲げ強さ

セラミックス

アルミナ

250MPa以上(2軸曲げ)又は400MPa以上(4点曲げ)

ジルコニア

500MPa以上(2軸曲げ)又は800MPa以上(4点曲げ)

高分子

アクリル樹脂

65MPa以上(3点曲げ)

ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂

110MPa以上(3点曲げ)

d) 曲げ弾性率

歯科用インプラントのうち、高分子材料が使用されている歯科用インプラントアバットメントに対し適用する。JIS T 6501若しくはISO 20795―1、又はASTM F 2026に準じて試験を行う。各値は、次による。

表5 曲げ弾性率(高分子製の歯科用インプラントアバットメント)

材質

曲げ弾性率

高分子

アクリル樹脂

2000MPa以上(3点曲げ)

ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂

3000MPa以上(3点曲げ)

5.2 化学的要求事項

a) 溶解性及び分解性

歯科用インプラントのうち、セラミックス又は高分子材料が使用されている歯科用インプラントアバットメントに適用する。セラミック材料の場合には、ISO 6872に準じて試験を行う。高分子材料の場合には、JIS T 6501、又はISO 20795―1に準じて測定を行う。溶解量は、次による。

表6 溶解性及び分解性(セラミックス製又は高分子製の歯科用インプラントアバットメント)

材質

規格値

セラミックス

16時間当たりの溶出量が50μg/cm2以下

高分子

7日間当たりの溶解量が1.6μg/mm3以下

b) 吸水性

歯科用インプラントのうち、高分子材料が使用されている歯科用インプラントアバットメントに対して、JIS T 6501又はISO 20795―1に準じて測定を行う。吸水量は、次による。

表7 吸水性(高分子製の歯科用インプラントアバットメント)

材質

規格値

高分子

7日間当たりの吸水量が32μg/mm3以下

c) 耐食性

金属材料が使用されている歯科用インプラントに適用する。各歯科用インプラントの最終製品又は最終製品と同一条件で作製された試験体に対して、JIS T 6002:2014の4.1 静的浸漬試験又はISO 10271:2020の4.1 Static immersion testに準じて溶出量の測定を行う。溶出量は、次による。なお、化学成分及び表面処理に関して、既承認品との同等性を示すことができる場合においては、本試験を省略することができる。

表8 耐食性(金属製の歯科用インプラント)

歯科用インプラントの種類

規格値

歯科用インプラントフィクスチャ

7日間当たりの溶出量が10μg/cm2以下

歯科用インプラントアバットメント

7日間当たりの溶出量が20μg/cm2以下

5.3 ハイドロキシアパタイトによるコーティング処理をされたものの物理的・化学的要求事項

歯科用インプラントのうち、ハイドロキシアパタイトによるコーティング処理をされた歯科用インプラントフィクスチャに対して、以下の1)~5)までの各項目に関して評価し、既承認品との同等性を示す。

1) 処理膜の厚さ

2) はく離強さ

3) 元素分析

4) Ca/P比

5) 同定・結晶化度

処理膜の厚さは、断面の顕微鏡観察によって試験する。はく離強さは、ISO 13779―4に準じて試験を行う。元素分析及びCa/P比は、Calcium Phosphate(Ca‐P)Coating Draft Guidance for Preparation of FDA Submissions for Orthopedic and Dental Endosseous Implants、ISO13779―2に準じて測定を行う。同定・結晶化度は、ISO 13779―3に準じて測定を行う。

なお、評価項目及び試験方法は上記に限定されるものではなく、申請品目のコーティング方法の種類に応じて必要な項目を追加し、既承認品との同等性を示すこと。同等性の評価にあたっては試験の設定、選択の根拠等を示し、試験を省略する場合は、その理由、妥当性等を示すこと。

6 生物学的安全性評価

歯科用インプラントの最終製品に対して、令和3年5月31日付け薬生機審発0531第5号「歯科用医療機器の生物学的安全性評価の基本的考え方の一部改正について」の別添「歯科用医療機器の生物学的安全性評価の基本的考え方」に準じて、生物学的安全性評価を実施する。

7 無菌性の保証

滅菌済みとして供給される歯科用インプラントは、滅菌バリデーション基準又はこれと同等以上の基準に基づき、無菌性の担保を図る。

8 残留エチレンオキサイド試験

エチレンオキサイドガス滅菌された歯科用インプラントの残留ガス濃度は、「残留ガス濃度の限度値」(平成22年10月12日付け薬食機発1012号第2号「エチレンオキサイド滅菌における滅菌残留物の許容限度の取扱いについて」)に従う。

9 リスク評価

リスク分析及びリスク評価は、歯科用インプラントフィクスチャ又は歯科用骨内インプラント材における表面処理による残留物及び歯科用インプラントの疲労強度に関する点を含めてJIS T 14971又はISO 14971によって実施する。

10 包装

a) 一次包装

一次包装は、微生物の侵入を防止することができ、通常の取扱い、輸送、保管中に製品を適切に保護できるものであること。

b) 二次包装

二次包装は、通常の取扱い、輸送、保管中に製品及び一次包装を適切に保護できるものであること。

11 表示

直接の容器又は直接の被包等には、次の事項を記載(表示)しなければならない。

a) 製造販売業者の氏名又は名称及び所在地

b) 製品及び構成品の名称

c) 「滅菌済み」の旨及び滅菌方法(該当する場合)

歯科用インプラントが滅菌済み及び非滅菌の両方の状態で供給される場合には、どちらの状態であるかを明瞭に記載する。JIS T 0307に規定する滅菌済み記号を使用することによってこれに替えてもよい。

d) 製造番号又は製造記号

e) 滅菌有効期間(該当する場合)

f) 単回使用の場合には、その旨を記載する。

g) 貯蔵・保管方法(貯蔵条件及び/又は取扱い条件)

特定の貯蔵・保管方法によらなければその品質を確保することが困難であるか、又は3年以内に経時的に品質の低下をきたす製品について、その貯蔵方法及び条件を記載する。

h) 警告及び/又は予防措置

特に注意を喚起する必要のある場合に記載する。

i) 他の法定表示事項

参考文献

1.JIS B 0101 ねじ用語

2.JIS B 0601 製品の幾何特性(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式―用語,定義及び表面性状パラメータ

3.JIS B 0681―2 製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状:三次元―第2部:用語,定義及び表面性状パラメータ

4.ISO 10451,Dentistry‐Contents of technical file for dental implant systems

5.DIN 13902‐1 Terminology of oral implantology‐Part 1:Endosseous dental implant systems

6.DIN 13902‐3 Terminology of oral implantology‐Part 3:Clinical terms

7.ClassⅡSpecial Controls Guidance Document:Root‐form Endosseous Dental Implants and Endosseous Dental Implant Abutments;Guidance for Industry and FDA Staff, issued May 14,2004

表9―1 既承認品の原材料と表面処理(歯科用インプラントフィクスチャ)

原材料

原材料規格

表面処理

・チタン

・ASTM F 67 Grade 1

1)無処理

2)粗面化のための陽極酸化処理

・JIS H 4650 2種

・JIS H 4670 2種

1)無処理

2)サンドブラスト+酸処理(塩酸)

3)ワイヤカット放電加工

・ASTM F 67 Grade 2

1)サンドブラスト+酸処理(フッ酸,硫酸)

・ASTM F 67 Grade 3

1)無処理

2)酸処理(塩酸,硫酸)

3)サンドブラスト+酸処理(硝酸)

4)干渉色を発現させるための陽極酸化処理

・JIS H 4650 4種

1)無処理

2)サンドブラスト+酸処理(塩酸)

・ASTM F 67 Grade 4

1)無処理

2)サンドブラスト

3)サンドブラスト+酸処理

(硝酸)

(フッ酸,硝酸)

(塩酸,硫酸)

4)粗面化のための陽極酸化処理

5)干渉色を発現させるための陽極酸化処理

・チタン 6―アルミニウム

4―バナジウム合金

・ASTM F 136

1)サンドブラスト

2)酸処理(塩酸,硫酸)

3)サンドブラスト+酸処理(フッ酸,硝酸)

4)干渉色を発現させるための陽極酸化処理