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○局所皮膚適用製剤(半固形製剤)の後発医薬品の生物学的同等性試験実施に関する基本的な考え方について
(令和4年10月4日)
(事務連絡)
(各都道府県衛生主管部(局)薬務主管課あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課通知)
医療用医薬品の申請に際に添付すべき生物学的同等性に関する資料のうち、医療用後発品の局所皮膚適用製剤の新規承認申請に係るものについては、「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン等の一部改正について」(平成18年11月24日付け薬食審査発第1124004号厚生労働省医薬食品局医薬品審査管理課長通知)の別紙4「局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン」(以下「局所皮膚適用製剤BEガイドライン」という。)において示しているところです。
今般、日本医療研究開発機構研究費医薬品等規制調和・評価研究事業「医療用医薬品の生物学的同等性評価手法の開発及びガイドライン案の作成に関する研究」における検討を踏まえて、局所皮膚適用製剤BEガイドラインにおいて代表的な生物学的同等性の評価方法として示された試験方法のうち、半固形製剤における皮膚薬物動態学的試験及び臨床試験の実施についての基本的考え方を別添のとおりとりまとめましたので、貴管下関係業者等に対し周知願います。
(別添)
局所皮膚適用製剤(半固形製剤)の後発医薬品の生物学的同等性試験の実施に関する基本的考え方
Ⅰ.はじめに
本考え方は、「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン等の一部改正について」(平成18年11月24日薬食審査発第1124004号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)の別紙4において局所皮膚適用製剤の代表的な生物学的同等性評価方法として示された7種の試験方法のうち、半固形製剤(軟膏剤、クリーム剤等)における皮膚薬物動態学的(Dermatopharmacokinetics、DPK)試験及び臨床試験の実施について対象を明確化するものである。特に、今後、治療学的同等性が厳密に評価されるべき医薬品の開発が増加すると予想されることから、臨床試験での評価が必要な半固形局所皮膚適用製剤を明確にするため、基本的な考え方を整理した。
局所皮膚適用製剤のうち半固形製剤では、製剤間における基剤をはじめとする添加剤や物理化学的特性(粘度、展延性、稠度、主薬の粒子状態等)の差異が有効成分の吸収と皮膚内の移行に複雑な影響を及ぼすため、適切な評価方法の選択と試験条件の設定が重要となる。なお、個々の医薬品開発における評価については、参考資料も参照した上で、適宜、審査当局と事前に相談し、適切な試験を計画・実施することが望ましい。
Ⅱ.考え方の対象となる薬剤
本考え方では、新規承認申請される後発医薬品の局所皮膚適用製剤のうち、半固形製剤を対象とする。また有効成分の作用により、治療学的同等性が厳密に評価されるべき医薬品とそれ以外の医薬品に分けて必要な試験を設定する。
Ⅲ.DPK試験と臨床試験の実施対象
有効成分の作用により治療学的同等性が厳密に評価されるべき局所皮膚適用製剤においては、患者を対象に、薬理効果又は臨床効果を指標として、統計学的に同等性を評価する検証的な臨床試験を基本とする。ただし、標準製剤と添加剤の種類が同じで、添加剤の含量と製剤学的な特性(流動学的性質、エマルジョン構造、粒度分布、pH、密度等)が同等な試験製剤で、in vitro試験(放出試験及び透過試験)で同等である場合には、上記以外の特性が有効性・安全性に影響を与える可能性を考慮した上で、DPK試験により生物学的同等性を保証できる場合もある。
上記以外の有効成分を含む製剤においては、標準製剤と試験製剤間の剤形区分が同じで基剤の性状も同じ場合は、生物学的同等性の評価法として有効成分の特性に合わせてDPK試験を選択することができる。このとき同じ基剤の性状とは、油性、水性、乳剤性(W/O型、O/W型)などが同じであることをいう。標準製剤と試験製剤間の剤形区分が異なる場合、又は同じ剤形区分で基剤の性状が異なる場合には、生物学的同等性評価において、患者を対象に、薬理効果又は臨床効果を指標とした臨床試験の実施が必要である。
なお、患者を対象とした臨床試験を行う場合には、全身性の安全性(原則、AUCt及びCmax)を併せて確認する必要がある。
Ⅳ.DPK試験条件の最適化
DPK試験は、局所皮膚適用製剤の生物学的同等性を保証しうる有用な試験であるが、半固形製剤においては、その試験条件の最適化が重要な課題とされている。特に試験結果にばらつきを生じる要因であり最適化が必要な項目としては、製剤の塗布量、角層回収前に皮膚表面に残る製剤の除去方法、角層の回収方法等が挙げられる。局所皮膚適用製剤のうち半固形製剤の承認申請時には、最適化の検討を行った項目とその妥当性について、十分説明する必要がある。
(Q&A)
Q1:「治療学的同等性が厳密に評価されるべき医薬品」とあるが、どのような基準で薬物を判断するのか、またその具体例を示してほしい。
A1:作用が強い有効成分を含有し、厳密な治療学的同等性の評価が必要と考えられる医薬品。例えば、ステロイド剤、カルシニューリン阻害剤、JAK阻害剤等の免疫抑制作用を有する薬剤、及び免疫調整剤が想定される。
Q2:異なる剤形区分又は同じ剤形区分で基剤の性状が異なる製剤間の生物学的同等性評価において、DPK試験ではなく患者を対象に、薬理効果又は臨床効果を指標とした臨床試験の実施が必要である理由を説明してほしい。
A2:DPK試験は製剤間の差異の検出感度に優れた健常皮膚を試験対象とする生物学的同等性の試験法である。しかし、剤形区分が異なる、もしくは同じ剤形区分でも基剤の性状が異なる製剤間では、健常皮膚において同等性が示される場合においても病態皮膚で有効成分の移行に差が生じ、治療学的な差異につながる可能性が否定できない。このリスクの回避を重視した試験設定とした。
Q3:患者を対象に、薬理効果又は臨床効果を指標とした臨床試験の評価法について示してほしい。
A3:薬理効果又は臨床効果を指標に平均値の差による評価が一案として考えられる。なお、有効成分の作用により治療学的同等性が厳密に評価されるべき医薬品における臨床評価は、患者を対象とした薬理効果又は臨床効果を指標に、信頼区間での評価となる。
Q4:局所皮膚適用製剤の生物学的同等性評価のうち、DPK試験の基本的概念を示してほしい。
A4:生物学的同等性試験は同一有効成分を同一量含有する医薬品間の治療学的同等性を評価することを目的とする。作用発現部位中の有効成分濃度の時間推移、あるいは、投与部位から作用発現部位に移行する際に例外なく通過する部位中の有効成分濃度の時間推移が比較する医薬品間の治療学的同等性を十分に保証するほど近似している事を示すことが生物学的同等性試験の目的となっている。
局所皮膚適用製剤の生物学的同等性試験においては、作用発現部位が皮膚角層あるいは更に角層より深部である場合に角層中有効成分濃度の時間推移を評価の対象とできる(DPK試験において、濃度―時間プロフィルは一定時間後に定常状態を示すことから、定常状態時有効成分濃度を評価対象とする)(局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン(平成18年11月24日付薬食審査発第1124004号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン等の一部改正について」の別紙4参照)。
Q5:治療学的同等性が厳密に評価されるべき医薬品であっても、標準製剤と添加剤の種類が同じで、添加剤の含量と製剤学的な特性(流動学的性質、エマルジョン構造、粒度分布、pH、密度等)が同等な試験製剤で、in vitro放出試験及び透過試験で同等である場合には、DPK試験により生物学的同等性を保証できる場合もあるとした理由は何か。
A5:有効成分の移行に影響を与えうる製剤学的な特性の差異を高度に抑制するとともに、in vitroでの放出性・透過性評価およびDPK試験を実施することで、病態皮膚での薬物吸収や移行速度に製剤間の大きな差が生じるリスクも限定されると考えられるためである。
参考資料