○「精神保健指定医申請時のケースレポート記述上の配慮について」の一部改正について
(令和4年6月23日)
(事務連絡)
(各都道府県・指定都市精神保健福祉主管部局あて厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課通知)
日頃より、精神保健福祉行政の推進にご尽力を賜り、厚く御礼申し上げます。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第18条第1項の規定による精神保健指定医の指定の申請に当たって提出することとしているケースレポートの記述上の配慮については、「精神保健指定医申請時のケースレポート記述上の配慮について」(平成26年2月18日厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課事務連絡)のとおり示しているところです。
今般、当該事務連絡を別添のとおり一部改正したので、お知らせします。
なお、本事務連絡は、令和4年7月1日以後の申請に当たって提出するケースレポートの記述上の配慮について示すものであることを申し添えます。
(別添)
改正後全文
○精神保健指定医申請時のケースレポート記述上の配慮について
(平成26年2月18日)
(事務連絡)
(各都道府県精神保健福祉主管部局・各指定都市精神保健福祉主管部局・各地方厚生(支)局健康福祉課あて厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課通知)
改正 令和元年 5月28日事務連絡
同 2年12月25日同
同 3年 6月30日同
同 3年12月13日同
同 4年 6月23日同
日頃より、精神保健福祉行政の推進にご尽力を賜り、厚く御礼申し上げます。
今般、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第18第1項第3号の規定に基づき精神保健指定医の指定申請時に提出することとしているケースレポートの記述上の配慮について別添のとおり送付しますので、関係機関及び関係団体に対して周知徹底方お取り計らい願います。
別添
精神保健指定医申請時のケースレポート記述上の配慮について
はじめに
ケースレポートには患者本人の意思にかかわらない入院措置等に関わる指定医の職務上必要とされる知識及び技能並びに精神科実務経験が反映されていなければならない。特に、患者の人権に配慮しながら適切な医療が提供されたことが読み取れるものでなければならない。
ケースレポートの記載要領については、「精神保健指定医の新規申請等に係る事務取扱要領の制定について」(平成30年12月6日障発1206第3号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知。以下「事務取扱要領」という。)に定めているところであるが、以下の点について留意されたい。
1 症例選択に係る留意事項について
(1) 症状性を含む器質性精神障害
次の症例についてケースレポートを作成する場合には、次の点に留意すること。
ア てんかん 症状性又は器質性要因が明らかに認められるものであって、精神症状による入院である旨を記載すること。
イ 身体疾患治療薬による精神症状(せん妄を含む) 身体疾患治療薬(例えば、膠原病に対するステロイド、パーキンソン病に対する抗パーキンソン病薬等。)により精神症状を発症した旨を記載すること。
ウ 老年期認知症 年齢的に初老期であっても、老年期につながる疾患であれば差し支えない。
(2) 精神作用物質使用による精神及び行動の障害
精神作用物質の依存症を含むものに限る。
(3) 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者に係る症例(以下「児童・思春期症例」という。)
次の症例についてケースレポートを作成する場合には、次の点に留意すること。
ア 診断名が小児(児童)期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害でない症例 児童・思春期の心性を踏まえ、心理的発達の観点に立ちつつ症状経過について記載すること。
イ 18歳に達した患者を対象とする症例 18歳に達した日以後の最初の3月31日以前から申請者が診療(外来を含む。)を開始し、継続して治療に当たっている旨を記載すること。
2 レポート又は臨床記録としての留意事項について
(1) レポートとしての留意事項
ア 原則として、文書作成ソフト等を用いて記載すること。やむを得ない場合は手書きでも可とする。
イ 用紙は、縦置き、横書きとし、文字の大きさは12ポイント、1行の字数は35~40字程度、1ページの行数は35~40行程度とすること。手書きの場合にも、A4判、縦置き、横書きとし、明確な字体で記載すること。
ウ ケースレポート様式の表紙の「①申請者氏名」及び<ケースレポートの証明>の指導医署名の欄については、それぞれ申請者及び指導医本人が手書きで署名すること。なお、原本の1通以外は複写で構わない。
エ 論旨を簡潔かつ明瞭に記載するよう心掛け、<入院時の状況>及び<入院後経過>並びに【考察】を合わせて指定字数(1200~2000字)以内とし、誤字(特に専門用語)のないよう十分な注意を払うこと。なお、本文の記載に当たっては、様式の柱立て(※)を順守し、必要な事項はすべてこの中で記載すること、これ以外の項目を追加することは慎むこと(追加した場合、余事記載として評価対象外(又は不適切な記載の評価)となる場合がある。)。
※【初診時主訴】、【家族歴】、【生育・生活歴】、【既往歴】、(【病前性格】、)【現病歴】の<入院前経過>、<入院時の状況>、<入院後経過>、(【考察】)
オ 医学用語・概念は、正確かつ一般的に通用するものを使用すること。また、用語として「痴呆」及び「精神分裂病」は使用せず、それぞれ「認知症」及び「統合失調症」を用いること。
カ 各種入院・行動制限が法令の要件を満たす旨の事実は、本文に記載しなければ評価の対象とはならない。具体的には、本文様式の注釈(斜体字)において、特に記載が必要な事項として示されている事項は本文(【現病歴】の<入院時の状況>、<入院後経過>)において記述すること。
キ 年の表記については、西暦を原則とし、「X年」などとせずに実際の年を記載すること。
(2) 臨床記録としての留意事項
ア 診断名は可能な限り明確に記載すること。なお、副病名がない場合には、副病名の欄については「なし」と記載すること。
イ 家族歴、生育・生活歴及び既往歴は、疾患に関係あるものは明記し、それ以外は簡潔に記載又は省略すること。
ウ 現病歴中の<入院前経過>、<入院時の状況>、<入院後経過>の所見及び状態像については十分に記載すること。
エ 申請者が実際に診療に当たった入院期間を中心に、症状及び経過を記載し、他の医師が担当した当該入院期間以前の期間の所見に関しては、必要な事項のみを簡潔に記載すること。
オ 入退院(入院形態の変更を含む。)の年月日は、現病歴中にも記載すること。
カ 行動、症状、所見等の記載は、カルテ記載に要求される水準と同程度で記載すること。
キ 教科書的・一般論的な記載は避け、担当医としての治療的かかわりが明らかになるよう記載すること。問題となる点については、担当医としての意見を記載すること。
ク 長期経過例又は周期性発症例について、同様の内容を繰り返し詳述する必要はないこと。
ケ 症例の診療上、重要な所見・検査結果は漏れなく記載すること。他方、あまり重要でない事柄は簡略に記載し、結果が正常な生化学・血液・脳波所見、付随的な処方薬物等は省略して差し支えない。
コ 慎重を要する治療手段(例えば、電気けいれん療法、大量又は多剤の薬物療法等)をとった場合、当該手段を必要とする理由について記載すること。
サ 入院形態及び処遇に関する事柄について、精神医学的見解及び関連する法の趣旨を踏まえて記載すること。入院によって得られた成果、その限界等について言及することが望ましい。
シ 退院又は他の入院形態に変更した場合は、その理由及びそれ以後の治療方針についても記載すること。また、退院後又は担当終了後に知り得た事柄及び予後についての考察も可能な限り記載することが望ましい。
ス 外来移行症例として提出できるものは、退院後の通院による治療について、申請者が引き続き自ら担当として行ったものに限られる。この場合、評価基準上、外来移行症例に要求されている、退院後の保健福祉等の支援や関係機関との連携に関する検討・評価を伴う対応について、実際の対応を具体的に記載すること。
(3) その他
次の症例については、次の点を記載することが望ましい。
ア 症状性を含む器質性精神障害 原疾患とその経過、他科等における診療歴及び必要な身体的所見。なお、老年期認知症については、病前の社会歴、家族・親族の状況及び必要な身体的所見。
イ 精神作用物質使用による精神及び行動の障害 依存形成の経過及び必要な身体的所見
ウ 児童・思春期症例 生育歴、家庭内人間関係、学校等における状況、思春期特有の心理及び発達的観点。1(3)アに示しているとおり、例えば、児童・思春期における統合失調症、気分(感情)障害等の症例を、児童・思春期精神障害の症例として提出することは可能であるが、その場合には、これらの疾患の一般的記述を行うだけでは不十分であり、当該症例における思春期特有の心性・家庭内人間関係、学校等における問題点、発達過程での特記事項等を、個々のケースに即して記載すること。
3 法制度を踏まえたレポートとしての留意事項について
(1) 措置入院
措置入院に関する診断書を必ず参照し、事務取扱要領別添様式3―1(ケースレポート)に即して、【関係法規に定める手続への対応】のチェック欄及び記載欄並びに本文に正確に記載すること。記載に当たっては、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号。以下「法」という。)上の用語を正確に用いること。なお、解除の見込み、解除時の状態及び解除後の処遇形態についても記載することが望ましい。
(2) 医療保護入院
事務取扱要領別添様式3―1(ケースレポート)に即して、【関係法規に定める手続への対応】のチェック欄及び記載欄並びに本文に正確に記載すること。同意を得た者を必ず明記するとともに、医療保護入院の要件を示すため、入院しない場合に予想される問題点、同意についての判断能力又は現症上の問題点、任意入院に変更する見込み及び推定される入院期間についても必要に応じて記載することが望ましい。
① 平成26年3月31日以前に入院した症例を選択する場合
医療保護入院のレポートとして認められるのは、経過中に平成25年改正前の法第33条第1項による医療保護入院がなされた症例のみである。
任意入院、措置入院等から医療保護入院に変更された場合、その理由とともに同意を得た保護者についても必ず記載すること。
② 平成26年4月1日以後に入院した症例を選択する場合
医療保護入院のレポートとして認められるのは、経過中に法第33条第1項又は第3項による医療保護入院がなされた症例のみである。
任意入院、措置入院等から医療保護入院に変更された場合、その理由とともに同意者についても必ず記載すること。
(3) その他
次の場合には、次の点について申請者が法制度を理解していることが明瞭となるよう記載すること。
ア 隔離又は身体的拘束が行われた場合 その理由、期間、告知の際の状況
イ 入院時の告知に際し、特記すべきことがあった場合 直ちに告知を行うことができなかった場合の理由、その後の対応
ウ 法第38条の4に基づく退院等の請求があった場合 請求の内容、病院における対応の状況
4 レポート提出に際しての留意事項について
(1) 事務取扱要領別添様式3―1(ケースレポート)の【関係法規に定める手続への対応】については、「<措置入院>」、「<医療保護入院>」、「<緊急措置入院又は応急入院>」、「<任意入院>」、「<行動制限>」の項目に分かれているが、当該ケースレポートに関連の無い項目は削除して提出すること。なお、削除は上記項目の単位で行うこととし、項目内の各事項及び記載の一部のみの削除はしないこと。
(2) 事務取扱要領別添様式3―1(ケースレポート)の様式について、「<入院時の状況>」、「<入院後経過>」、「【考察】」の項目にあらかじめ記載されている斜字体による注書き部分は、削除して提出すること。
以上