添付一覧
○令和4年度「若年層の性暴力被害予防月間」の実施について
(令和4年3月29日)
(/基監発0329第1号/基法発0329第1号/職需発0329第3号/雇均総発0329第1号/雇均雇発0329第1号/)
(都道府県労働局長あて労働基準局監督課長、労働基準局労働関係法課長、職業安定局需給調整事業課長、雇用環境・均等局総務課長、雇用環境・均等局雇用機会均等課長通知)
(公印省略)
政府は、令和2年6月に「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」(令和2年6月11日付け性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議決定)を取りまとめ、令和3年4月から、若年層の性被害に関する問題を広報啓発するのに適した毎年入学・進学時期である4月を、「若年層の性暴力被害予防のための月間」とすることとし広報・啓発を集中的に実施している。
このため、別添1の実施要綱により令和4年度「若年層の性暴力被害予防月間」を実施する。
また、令和4年4月1日から民法の一部を改正する法律(平成30年法律第59号)が施行され、成年年齢が20歳から18歳に引下げとなる。これにより18歳になると一人で有効な契約をすることが可能となり、未成年者取り消しができなくなることからも、各都道府県労働局におかれては、若年層に対する性暴力は決して許されないものであるとの社会認識を更に醸成しつつ、下記に留意の上、若年層に対する性犯罪・性暴力の問題に関する取組を一層強化されたい。
記
Ⅰ AV出演強要・JKビジネスなどの問題への対応について
1 相談への適切な対応
(1) 内閣府の広報サイト(URL https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/index.html)においては、総合労働相談コーナーが各種相談窓口の1つとされていることから、雇用環境・均等部(室)においては、コーナーに「AV強要・JKビジネス」問題等の相談が寄せられた場合には、以下の点に留意しつつ、相談者の置かれた立場に意を払い、懇切丁寧に対応するとともに、相談内容に応じて担当部署へ取り次ぐ等により、適切な対応を行うこと。
ア 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づき締結されるものであり、芸能プロダクション等と労働者の間で、強迫や詐欺等により、労働者の自由意思に基づかずに労働契約が締結された場合、民事上無効とされる可能性があること。
イ 契約の名目が委託契約等であった場合であっても、その実態において労働基準法(昭和22年4月7日法律第49号。以下「労基法」という。)上の労働者に該当すると認められる場合は、労働基準関係法令が適用され、職業安定法(昭和23年法律第141号)及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)の対象となることから、その相談内容を十分斟酌し、法令違反が疑われる場合には、労働基準監督署及び需給調整事業担当課室等の担当部署に取り次ぐこと。
ウ 強姦罪等の性犯罪、強要罪、傷害罪、暴行罪、脅迫罪等の違法行為が疑われる場合には、相談者の意向も踏まえた上で、都道府県警察に対する相談等について教示すること。
(2) 労働基準部においては、コーナーから「AV強要・JKビジネス」問題等の相談に関して取次ぎがあった場合は、平成15年4月1日付け厚生労働省発地第0401002号、基発第0401014号、職発第0401029号、雇児発第0401011号「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づく個別労働紛争解決制度の運用について」に基づき適切に対応すること。
労働基準監督署においては、平成15年4月1日付け基発第0401015号「申告・相談等の対応に当たって留意すべき事項について」に基づき、労働基準関係法令違反を構成するおそれがあると認められる事案については、申告事案として受理し、優先的かつ迅速に対応するとともに、労働基準関係法令違反以外の相談があった場合は、適切な部署に取り次ぐこと。
監督指導時においては、労基法第5条(強制労働)、第16条(違約金等の賠償予定)、第62条(年少者の有害業務)違反の有無を含め、法定労働条件の履行確保上の問題を丁寧に確認し、法違反が認められた場合には所要の措置を講ずること。
また、重大又は悪質な事案については司法処分も含め厳正に対処すること。
なお、上記(1)ウの実態を把握した場合には、速やかに警察機関等に連絡すること。
(3) 職業安定部又は需給調整事業部においては、コーナーからの「AV強要・JKビジネス」問題等の相談に関して取次ぎや、直接労働者等からの相談等があり得るが、労働者派遣法第58条又は職業安定法第63条第2号については、労働者本人の同意の有無にかかわらず、公衆道徳上有害な業務(以下「有害業務」という。)に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者供給を行った者若しくはこれらに従事した者又は労働者派遣をした者に対して、罰則が設けられている。
当該規定については、実態において雇用関係が認められれば対象となるため、個別事案ごとに契約内容、実態等を確認した上で対応すること。労働者派遣法の適用における労働者性の判断基準については、平成13年3月30日付け職民発第8号「労働者性の判断基準について」及び同日事務連絡「労働者性の有無を踏まえた適切な対応について」により示しているところである。
アダルトビデオ出演強要問題に関しては、これらの規定の適用を視野に入れた厳正な取締りを行うべきであることから、有害業務に労働者派遣をした者等の情報を把握したときは、都道府県警察と情報を共有し、十分な連携を確保しつつ、実態を把握し、指導監督や告発を検討すること。また、都道府県警察から情報の交換等を求められた場合は、十分これに協力すること。
なお、労働者本人から相談があった際には、その相談内容を十分斟酌し、本人の救済を優先する観点から、必要に応じて適切な部署に取り次ぐこと。
(4) 「今後の対策」に基づき、平成29年9月15日付け基監発0915第2号、基法発0915第1号、職需発0915第6号「いわゆるアダルトビデオ出演強要問題に関する関係法令の遵守について(依頼)」により、アダルトビデオ出演者が労働者に該当する場合には、職業安定法、労働者派遣法、労基法等の対象となり、例えば、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者派遣をすることが罰則をもって禁じられていること等について、業界関係者に対して周知を行ったところである。業界関係者から相談があった場合には、相談内容に応じて担当部署へ取り次ぐ等により、適切な対応を行うこと。
(5) 「AV強要・JKビジネス」問題等に関連すると考えられる主な法条文は以下のとおりであるので参考とすること。
(参考法条文) ●「アダルトビデオ出演強要問題」に該当する事案 ・労基法第5条【強制労働】 ・労基法第16条【違約金等の賠償予定】 ・労働者派遣法第58条【有害業務就業目的の労働者派遣】 ・職業安定法第63条第2号【有害業務就業目的の職業紹介等】 ●いわゆる「JKビジネス」に該当する事案 ・労基法第62条【年少者の有害業務】 |
2 成年年齢引下げに伴う性暴力被害の予防に関する周知について
本年4月1日から成年年齢が引き下げられることに伴い、18歳、19歳の若年者は、親の同意がなくても契約ができるようになり、また、未成年であることを理由とした契約の取消し(未成年者取消権)をすることができなくなる。
その中で、性的な行為の撮影をするという認識がないまま契約し、撮影を強要される問題(いわゆるAV出演強要問題)について、より一層の注意が必要なことから、この度、内閣府男女共同参画局が成年年齢引下げに伴う性暴力被害の予防に関する資料(別添2)と動画を作成した。
ついては、必要に応じて、別添資料を活用の上、資料、動画の周知をすること。
○成年年齢引下げに関する啓発動画
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/jakunengekkan/index.html
○周知用資料(別添2)
3 関係機関との連携
「AV強要・JKビジネス」問題等による性暴力被害者からの相談については、事案に応じて、都道府県警察、婦人相談所及び児童相談所等の適切な関係機関(内閣府広報サイトに掲載の相談窓口参照。URLはhttps://www.gender.go.jp/policy/no_violence/index.html)を案内するなど、必要に応じ関係機関と連携を図りながら対応すること。
また、都道府県警察から情報の交換等を求められた場合は、十分これに協力すること。
4 フォローアップ
4月の集中月間において、上記1の(1)に係る相談等がコーナーに寄せられた場合は、その事案の概要等を直ちに本省雇用環境・均等局総務課労働紛争処理業務室業務指導係に報告すること。
Ⅱ 職場におけるセクシュアルハラスメントの防止対策に関する周知・啓発
「性犯罪・性暴力対策強化の方針」には、セクシュアルハラスメントに関する社会全体への啓発等に関する記載が盛り込まれている。
セクシュアルハラスメントは労働者等の尊厳を傷つけるあってはならない行為であり、各都道府県労働局におかれても、職場におけるセクシュアルハラスメント、就職活動中の学生等に対するセクシュアルハラスメント防止対策に関する周知・啓発に引き続き適切に対応すること。
(参考)
○いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・「JKビジネス」問題等に関する今後の対策(平成29年5月19日いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・「JKビジネス」問題等に関する関係府省対策会議決定)
https://www.gender.go.jp/kaigi/sonota/pdf/avjkkaigi_03_02.pdf
○性犯罪・性暴力対策の強化の方針(令和2年6月11日性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議決定)
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/pdf/policy_02.pdf