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○「国際共同治験に関する基本的考え方(参考事例)」の一部改正について

(令和3年12月10日)

(事務連絡)

(各都道府県衛生主管部(局)薬務主管課あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課通知)

我が国が参加する国際共同治験の推進に向けて、「国際共同治験に関する基本的な考え方」(平成19年9月28日付け厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)、「国際共同治験に関する基本的考え方(参考事例)」について」(平成24年9月5日付け厚生労働省医薬食品局審査管理課事務連絡。以下、「事務連絡」という。)により、国際共同治験を実施する際の考え方、留意事項等をお示ししているところです。

今般、事務連絡別添「国際共同治験に関する基本的考え方(参考事例)」の国際共同治験を経た後の日本人における長期安全性の評価に関して、下記のとおり改めましたので、貴管下関係業者に対し、周知方ご協力お願いします。

なお、改正後の「国際共同治験に関する基本的考え方(参考事例)」については別添の通りです。

17) 国際共同治験において、日本人と全集団で有効性について一貫性が示され、安全性に明確な差異が認められない場合で、致死的でない疾患に対して、長期にわたり繰り返し投与が想定される医薬品に関して、長期における安全性を評価するためには、どの程度の日本人症例数が必要か。

17) 国際共同治験において、日本人と外国人の一貫性が示された場合で、致死的でない疾患に対して、長期にわたり繰り返し投与が想定される医薬品に関して、長期における安全性を評価するためには、どの程度の日本人症例数が必要か。

長期投与試験を計画する時点で得られている治験薬の臨床試験成績や類薬の情報などから日本人の長期安全性に関し特段の懸念事項がないと判断できる場合は、検証的な国際共同治験の成績で日本人集団と全集団の有効性に一貫性が示され、安全性に明確な差異が認められないことを前提に、ICH―E1 ガイドラインに則った症例数での長期安全性は、例えば、日本人を含む国際共同長期投与試験の全集団で評価する等、日本人のみではなく、日本人を含めた集団で評価することとしてもよい。その場合に必要な日本人の症例数は、各薬剤により異なることから具体的に示すことは困難であるが、考え方の例として、検証的な国際共同治験と同程度の日本人症例数の割合で設定することや、検証的な国際共同治験を完了した症例が概ね移行する長期継続国際共同治験を実施すること等があり得る。

一方で、治験薬の臨床試験成績や類薬の情報など既存の情報から日本人の長期安全性に関する特段の懸念事項が示されている場合は、当該事項の評価や精査に適したデザイン(日本人症例数を含む)で長期安全性試験を実施することを検討する必要がある。なお、類薬において当該懸念事項に対応するリスク最小化策が既に確立しており、治験薬にも同様の対応を設定することが妥当と判断される場合など、別途日本人の長期安全性に関する懸念事項を臨床試験で評価するための特別な対応をとらなくてもよい状況もあり得る。

具体的な症例数を含む長期安全性の評価方針は、薬剤毎にPMDAの対面助言で相談することが推奨される。

医薬品開発の国際化が進んでいる状況において、より効率的な臨床開発を進めるためには、国際共同治験に日本が積極的に参加することが有用と考えられるが、国際共同治験を中心として開発を進めた場合には、承認申請までに収集できる日本人症例数は、国内単独開発に比べ減少し、特に安全性を評価する上で問題となる可能性がある。したがって、致死的でない疾患に対して長期投与が想定される医薬品については、十分に長期投与時の安全性を確認する必要があり、基本的には日本人で1年間投与された症例として100例程度以上の安全性データが収集できるよう計画すべきである。ただし、症例集積が困難な場合等で、例えば、開発早期の探索的な段階から日本が継続的に国際開発に参加しており、複数の試験結果から、日本人と他の外国人との間で安全性に大きな差異がないことが確認できている場合、あるいは他の類似する効能・効果で既に承認されており、外国人と大きな差異がないことが、製造販売後での日本人における十分な安全性データから明らかとなっている場合等には、上記の症例数を満たさなくとも評価が可能な場合もあると考えられるので、個々のケースについては、PMDAの対面助言で相談することが推奨される。

以上

(別添)

国際共同治験に関する基本的考え方(参考事例)

平成24年9月5日作成

令和3年12月10日改正

(独)医薬品医療機器総合機構

はじめに

我が国が参加する国際共同治験の経験は、平成19年に「国際共同治験に関する基本的考え方について」(平成19年9月28日付薬食審査発第0928010号、厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)が通知されてから着実に増加しており、近年では、欧米との国際共同治験だけでなく、日中韓等の東アジア地域での国際共同治験も増加している。また、我が国と海外との連携内容も、開発の初期段階からの国際共同治験の実施や数千例を超える大規模国際共同治験への参加等多様化しつつある。さらに、規制当局間においても、日米欧だけでなく日中韓3カ国の連携も強化されつつあり、医薬品の国際開発が進む中で、国際共同治験、特に東アジア地域における国際共同治験が円滑かつ適切に実施されることは、得られた結果の評価を行う規制当局にとっても重要な課題である。

このような状況を踏まえ、既発出の「国際共同治験に関する基本的考え方について」の理解をさらに深め、我が国がより早い段階から国際開発に円滑に参加するとともに、今後も増加が予想される東アジア地域における国際共同治験等の円滑かつ適切な実施に資することを目的に、今般、近年の事例を踏まえて、国際共同治験に関する基本的考え方(参考事例)を取りまとめることとした。

以下にその内容を示すが、これらは一般的な事例を示したものであり、個々のケースについては、(独)医薬品医療機器総合機構(以下、「PMDA」という。)との対面助言において相談することが推奨される。

なお、これら事例は、現時点における科学的知見に基づいて述べたものであり、今後の状況の変化、科学技術の進歩や知見の集積等に応じて随時見直され、改訂されるべきものであることに留意する必要がある。

1.東アジア地域での国際共同治験に関する留意事項

1) 東アジア地域で国際共同治験を実施するにあたって特に留意する事項はあるか。

日中韓等の東アジア地域の民族間では、代謝酵素における遺伝子多型の種類と頻度あるいは遺伝子プロファイルが類似していると考えられ、近年では、東アジア地域での国際共同治験を主たる臨床試験結果として承認された医薬品もある。したがって、十分な検討に基づき計画され、実施された東アジア地域での国際共同治験の結果を、本邦での承認申請資料として受け入れることは可能である。

しかしながら、東アジア民族間においても民族的要因(内因性民族的要因のみならず、医療習慣や社会経済的要因等の外因性民族的要因も重要)の差異が、医薬品の有効性及び安全性(データそのものだけではなく、評価に及ぼす影響も含む。以下同様)に影響を及ぼす可能性はあるため、東アジア地域で実施する治験であっても、欧米諸国と実施する国際共同治験の場合と同様に、民族的要因の差異が医薬品の有効性及び安全性に及ぼす影響について予め十分に検討した上で、国際共同治験を計画し実施する必要がある。

特に、東アジア民族を一つの集団と捉えて検証的な治験を実施しようとする場合には、予め十分なデータや情報を収集した上で日本人と他の東アジア民族間における民族的要因の影響について検討し、その結果を踏まえて適切な仮説に基づく試験計画を策定することが適切であり、臨床薬理学的試験を別途実施することで有用なデータが得られる場合もある。具体的な試験デザイン、評価方法等については、事前にPMDAの対面助言で相談することが推奨される。

今後、東アジア地域における科学的データや情報をより集積し検討することで、民族的要因の差異に関する理解が深まり、東アジア地域における国際共同治験をより円滑かつ適切に実施することにつながると考えられる。このような検討を積み重ねることによって、東アジア地域を含む臨床開発の効率化と質の向上が期待され、最終的には、本邦の承認申請に東アジア地域で実施された国際共同治験の結果をさらに利用しやすくなるものと考えられる。したがって、開発計画の中に東アジア地域における国際共同治験を含めることも検討し、東アジア地域での情報を集積することが望まれる。

2) 東アジア地域での国際共同治験を計画することが推奨される疾患領域はあるか。

どのような疾患領域であっても東アジア地域での国際共同治験を実施することは可能と考えられるが、東アジア地域で特に必要性が高い医薬品、例えば、欧米に比べて東アジア地域で罹患率が高い疾患領域(例:胃癌、肝炎等)で、かつ日本単独では検証試験の実施が困難な疾患領域では、東アジア地域での臨床開発を積極的に計画することが、臨床開発全体の効率化や質の向上に寄与する可能性がある。なお、計画時には、上記1)を参照するとともに、東アジア地域だけでなく欧米等も含めた全世界的な開発を目指す場合には、世界全体での臨床開発計画における東アジア地域での国際共同治験の位置付けを、予め明確化した上で開発を進めることが適切であり、欧米等での開発と連携を保ちつつ東アジア地域での開発を進めることが必要である。

3) 民族間における薬物動態プロファイルの比較から、どのような国際共同開発戦略を構築することが、一般的には可能であるか。

開発戦略は、様々な要因を考慮して決定されるものであり、一般的に確立された考え方はないが、日本における医薬品の承認を目的として開発を進める場合で、薬物動態プロファイルの差異に着目すると、日本人と欧米人又は日本以外の他の東アジア民族との比較等を行うことが考えられる。

日本人と欧米人との間で、薬物動態に大きな差異がないと考えられる場合には、早期の探索的な試験から日本人と欧米人での国際共同治験の実施が可能と考えられ、欧米諸国と継続的に連携しながら国際共同開発を行うという選択肢について検討することが有用である。一方、日本人と欧米人との間で薬物動態に大きな差異が認められるものの、日本人と他の東アジア民族との間で大きな差異がないと考えられる場合には、日本人と他の東アジア民族を主とする探索的な国際共同治験の実施が考えられ、東アジア地域を主体として開発するという選択肢について検討することが有用である。日本人と外国人(欧米人あるいは他の東アジア民族)との間で薬物動態に大きな差異が認められる場合には、その差異が生じる理由並びにそれが有効性及び安全性に及ぼす影響について詳細に検討した上で開発計画を立案すべきであり、日本人における単独での探索的試験の実施についても検討が必要である。

検証的な試験を国際共同治験として実施するか否かについては、探索的な試験等の結果に基づき判断する必要があるが、薬物動態プロファイルでの差異のみならず、どのような民族的要因が医薬品の有効性及び安全性に影響を及ぼしているのかについて、層別解析等の結果に基づき十分に検討することが必要であり、検証的な試験を開始する前に、組み入れる全集団での結果を主要評価項目として設定し、評価することの適切性を説明する必要がある。なお、得られた試験結果の評価に関しては、本文書の項目「6)国際共同治験の結果を評価する際に留意すべき点は何か。」を参考にしていただきたい。

4) ブリッジング試験を国内臨床試験ではなく東アジア国際共同治験として実施し、欧米で実施された臨床試験結果を外挿することは可能か?また、その際に留意すべき点は何か。

通常、ブリッジング試験は、海外で実施された臨床試験結果を日本人に外挿することを目的としており、日本人を対象として実施される。したがって、東アジア国際共同治験をブリッジング試験と位置付け、欧米の試験結果を外挿しようとする場合には、予め十分なデータや情報を収集した上で、日本人と他の東アジア民族との間で民族的要因の影響が評価を行う上で問題にはならないという科学的根拠を説明する必要があり、得られた結果においても日本人と他の東アジア民族との間で一貫した結果が確認できていることがブリッジングコンセプトに基づく評価を行う上での前提となる。個別のケースについては、予めPMDAの対面助言で相談することが推奨される。

なお、ブリッジング試験を国際共同治験として実施する上での留意点等については、既にICH E5ガイドライン質問11に対する回答(『「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因についての指針」に関するQ&Aについて(その2)』,平成18年10月5日付事務連絡)で述べられているので、参考にしていただきたい。

2.国際共同治験に関する一般的な留意事項

5) 医薬品開発の国際化が進む中で、日本における臨床開発戦略及び臨床試験計画を立案する上で留意すべき点は何か。

医薬品の臨床開発計画を立案する上で重要なことは、長期的かつ全体的な開発計画を立案するとともに、開発期間中においても、適宜、その時点までに得られているデータを適切かつ十分に評価し、臨床開発の進め方や次相以降の臨床試験計画の効率化や最適化を図ることであり、早期から継続的に臨床開発計画等についてPMDAと相談することが推奨される。

医薬品開発の国際化が進展する中では、国際共同開発の可能性を考慮することが多いと思われるが、開発戦略の如何に関わらず、常に関係する海外担当部署と必要な連携や協力を保ちながら、医薬品開発を進めることが望ましい。海外担当部署との連携あるいは協力とは、海外との共同治験の実施だけを指すものではなく、国内又は海外で単独で実施する臨床試験であっても、その試験計画立案への関与、試験計画・有効性あるいは安全性情報等の適時共有、定期的な薬事連絡等あらゆる連携や協力を含むものである。

すなわち、医薬品開発の早期から常に海外関連部署との連携を保ちながら、関係者がある医薬品に関する最新のデータや情報を正確に理解し共有した上で開発計画を検討し立案することが、開発計画の効率化や最適化につながるものと考えられる。日本での承認に向けたより適切な開発計画を立案するためにも、開発早期の探索的な段階から日本人患者でのデータを集積していくことが望ましい。

現時点において日本で又は日本を含めて実施されている主な臨床開発戦略としては、国内単独で臨床試験を実施する開発、海外臨床試験結果を外挿するブリッジングによる開発、検証試験を含めた臨床試験を海外と共同で実施する国際共同開発の3つがあり、国際共同開発には欧米等と連携して実施する世界規模の国際共同開発及び日中韓等の東アジア地域を中心として実施する東アジア国際共同開発があると考えられる。これらの開発方法の特徴を十分に考慮し、開発中の医薬品の性質やその時点で得られているデータ等から、次相として最も適している臨床試験計画を策定することが重要である。

6) 国際共同治験の結果を評価する際に留意すべき点は何か。

日本人を対象に国内で実施される臨床試験の結果の評価と同様の手順で、患者背景の確認、有効性評価、安全性評価を行うことが原則である。評価の際には、全集団の評価に加えて日本人集団のみの評価を行った上で、全集団との間の一貫性について検討することが必要となるが、日本人集団が試験における部分集団であり必ずしも試験目的を達成するのに十分な症例数が組み入れられていない可能性、組み入れられた集団間に結果として差異が生じている可能性等に留意することが重要である。したがって、日本人集団の結果の評価に際しては、日本人症例数を踏まえ、点推定値のみならずその精度(標準偏差等)にも着目する必要がある。また、日本人集団における主要評価項目の評価だけではなく、副次評価項目についても、主要評価項目の結果や全集団の結果と同様の結果が示されているか確認すべきである。また、安全性についても同様に、全集団と日本人集団との間で著しく異なった傾向が認められていないか確認すべきである。全集団と日本人集団との間で結果に差異が認められた場合には、要因毎の部分集団解析結果等も参考に差異が生じた原因について十分に考察し、当該国際共同治験の結果を日本人の有効性及び安全性の根拠とすることが可能であるのか慎重に評価する必要がある。

なお、これらの評価結果及び考察については、申請時にCTDに適切に記載すべきである。

7) 海外在住日本人を対象として、海外で実施された試験結果を評価する上で、留意すべき点は何か。

海外で実施された試験結果を適切に評価するためには、まずは、ICH E5ガイドラインで述べられているような民族的要因(内因性及び外因性)について考慮することが重要である。

その上で、開発初期に日本人での薬物動態を評価する試験は、通常健康成人で実施されることが多く、医療環境よりも、遺伝的要因等の内因性民族的要因が結果を評価する上で重要であり、食事等の生活環境等の外因性民族的要因の違いによる影響を考慮する必要があるものの、多くの場合、海外在住日本人を対象として海外の治験施設で実施された結果から日本人の薬物動態を評価することは可能である。

一方で、有効性及び安全性を評価する試験では、内因性民族的要因のみならず、診断方法や標準治療等の医療環境、教育、文化等の社会的要因等の外因性民族的要因を考慮する必要がある。したがって、日本人における有効性及び安全性については、日本の医療環境下で確認すべきであり、日本在住の日本人が適切に組み入れられた臨床試験(国際共同治験又は国内単独での臨床試験)の結果に基づき評価することが適切である。

8) 異なった民族での薬物動態を比較する上で一般的に留意すべき点は何か。

一般に、異なった民族間での薬物動態を比較する際には、内因性民族的要因以外の要因による変動を低減するため、測定方法等も含め同一プロトコル(別試験での実施も含む。)で収集した薬物動態結果に基づき比較することが望ましい。また、代謝酵素やトランスポーターにおける遺伝的変異が、開発中の医薬品の薬物動態に影響を及ぼすと考えられる場合には、その遺伝的変異の各民族における発現率等も考慮し、治験において遺伝子検査を実施し、各遺伝型での集計なども行った上で、評価することが重要である。

独立して実施された複数の薬物動態試験結果を比較して、各民族での薬物動態の類似性や差異を考察する場合には、内因性民族的要因のみならず、外因性民族的要因についても考慮に入れないと、結果の解釈を誤るおそれがある事例が最近明らかとなっており(平成22年度厚生労働科学研究費補助金・行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(日中韓大臣声明に基づく医薬品の民族差に関する国際共同臨床研究)川合班報告書)、試験方法、対象被験者、定量法(バリデーションの有無、定量限界等を含む)、測定時点、投与条件、投与薬物の用量や製剤、試験結果の標準偏差の大きさ(はずれ値の存在の有無等を含む)、実施時期等における各測定方法間の差異を精査し、差異がある場合には、その差異が評価に影響を及ぼす可能性及び程度について、十分な検討を行った上で試験間の比較を行う必要がある(製剤が異なる場合には製剤間での生物学的同等性の有無等も含む)。

同一プロトコルで収集した日本人と他の民族での薬物動態試験結果が存在しない場合には、その後に実施する治験計画を工夫することなどにより、遅くとも検証的な国際共同治験を実施する前までには、少なくとも投与後の数点において、同一プロトコルによる薬物動態特性から適切と考えられる指標(例:Cmax、トラフ値等)のデータを、検証試験に組み入れることを予定している主要な民族で入手できるよう計画することが望ましい。

9) 第Ⅰ相試験(First in Human)を国際共同治験として実施する際の留意点は何か。

第Ⅰ相試験の段階から国際的な連携をとりつつ日本が国際共同治験に積極的に参加することは、開発時期の遅延を生じることなく、日本人における忍容性、薬物動態等の結果を開発早期に収集することが可能となり有用な情報が得られると考えられる。

しかしながら、第Ⅰ相試験を国際共同治験として実施する場合には、参加する国・地域の全ての被験者の安全性確保にも配慮する必要があり、各施設で発現した有害事象や治験を実施する上での懸念等が、直ちに参加する全ての施設間で適切に共有できるよう措置を講じる必要がある。したがって、第Ⅰ相試験を国際共同治験として実施するか否かについては、国内単独で実施する場合とのメリットとデメリットを比較検討して判断する必要がある。

また、一般的に、第Ⅰ相試験は、医薬品のヒトでの忍容性を確認することを主眼としており少数例で実施されるため、薬物動態や薬力学等における民族的な類似性や差異を検討するためのデータや情報は限定的であり、第Ⅰ相試験を国際共同治験として実施した場合の民族間比較は、探索的な位置づけと考えられる。

したがって、第Ⅰ相試験以降の国際共同治験にも継続的に日本人を組み入れ、民族的要因が医薬品の有効性及び安全性に及ぼす影響をさらに検討することが適切である。また、民族的要因の差異が大きいと考えられる場合などには、別途、臨床薬理試験等を実施して検討することが必要な場合もある。

10) 国内の臨床試験では単独投与の検討しか行っていないが、医薬品Aとの併用投与で実施予定の探索的な国際共同試験に参加することは可能か。

原則として、国際共同治験への参加前に日本人での医薬品Aとの併用投与時の投与経験を得ておくことが適切である。ただし、海外臨床試験の結果等から、併用を必須とする医薬品Aを治験薬及び治験で併用する可能性のある他の薬剤と併用投与した場合であっても、安全性上のリスクが増大するおそれはなく、かつ治験に用いる医薬品Aの用量が既に本邦において十分な臨床使用経験があり、安全性も確立していると考えられる場合には、国内での医薬品Aとの併用試験を実施しなくとも、国際共同治験に参加できる可能性はあると考えられる。

なお、個別のケースについては、その時点で得られている科学的データ、情報等を整理した上で、PMDAの対面助言で相談することが推奨される。

11) 国内外で治験薬の曝露量が異なる(日本人の曝露量が外国人よりも高い又は低い)場合に、ある程度以上の被験者数を確保し、薬物の安全性プロファイルや最低限の検査を考慮して安全性評価を実施するという前提のもと、探索的な用量反応性試験を国際共同治験として実施し、日本人を組み入れることは可能か。

日本人と外国人での薬物動態が大きく異なった場合に、探索的な用量反応性試験を国際共同治験として実施し、日本人を組み入れるか否かについては、差異が生じた機序や理由を十分に検討し、臨床推奨用量が異なる可能性も考慮し、国内単独で実施する場合とのメリットとデメリットを慎重に比較検討して判断する必要がある。

例えば、日本人における血中薬物濃度が外国人よりも高くなったとしても、既に実施した第Ⅰ相試験等の結果から、日本人における治験薬の忍容性は確認されており、安全性を担保するための十分な措置が講じられる場合には、探索的な国際共同用量反応性試験へ日本人を組み入れることは可能であるが、想定される副作用等も考慮し、日本人における安全性モニタリングを強化する等の措置を講じることが適切な場合もある。

なお、治験での用量設定にあたっては、日本人や外国人で既に得られている薬物動態、薬力学等の情報を十分に検討し、当該治験に組み入れられる各民族での臨床用量を含むように、適切な範囲を設定することが重要である。また、当該治験における日本人症例数の設定については、「国際共同治験に関する基本的考え方について」(平成19年9月28日付薬食審査発第0928010号)の質問6の回答に基づき検討することが適切であるが、薬物動態が大きく異なるような場合には、日本人と外国人における臨床推奨用量が異なる可能性もあるため、実行可能性を考慮しながらも日本人での用量反応関係が十分に検討できるよう、より保守的に設定することが望ましい。

12) 優越性又は非劣性の検証を目的としてないが、探索的な比較、陽性対照等の目的で実薬対照群を設定した試験において、設定した実薬対照が日本で未承認薬である場合、日本人集団を実薬対照群には割付けないという方法は受入れられるか。

国際共同治験の結果を適切に評価するためには、当該治験に参加するすべての国・地域において、試験の目的を踏まえて比較可能な条件下で検討できるよう予め調整すべきであり、日本人のみ構成する比較群が異なるような試験計画は適切ではない。なお、対照薬が本邦で未承認であっても、当該対照薬が既に国際的に確立した薬剤の場合には治験での使用が可能である旨が、「国際共同治験に関する基本的考え方について」(平成19年9月28日付薬食審査発第0928010号)の質問9の回答で述べられているので参考にしていただきたい。

なお、治験依頼者は、当該治験開始前に対照薬に関する情報を海外添付文書、公表文献等から可能な限り入手し提出するとともに、安全性情報に関して、開発中の治験薬だけでなく、対照薬についても継続的に収集し報告できる体制を確立しておくべきであり、対照薬となる未承認薬のライセンスを取得している企業との間で、予め相談し、安全性情報の交換方法・手順等を定めておくことが望ましい。

13) 国際共同治験での対照薬として実薬を用いる場合に、実薬の有効成分は国内外で既に承認されているが、用法・用量又は製剤が異なる場合に、どのような点に留意すべきか。

対照薬である実薬は、既に臨床現場において広く使用されている医薬品が選択され、有効性及び安全性に関して治験薬と比較するために設定されるものであり、国際共同治験での対照薬として実薬を用いるのであれば、参加する国・地域において承認されている医薬品を承認用法・用量の範囲内で使用することが望ましい。また、科学的に適切な評価を行う観点からは、参加する国・地域間で対照薬の用法・用量に差異がないことが原則である。

しかしながら、現実的には参加する国・地域間で、対照薬の承認用法・用量に差異が認められる場合もあり、これらの差異が有効性及び安全性に影響を及ぼす可能性について、予め十分な検討が必要である。例えば、対照薬の承認用法・用量が国内外で異なる場合には、参加する国、地域間で異なる用法・用量が承認された理由や経緯を確認し、有効性及び安全性に及ぼす影響を検討すべきである。特に、漸増時の用法・用量が異なる場合には投与初期の脱落率等に、最大用量が異なる場合には副作用発現率等に影響を及ぼす可能性がある。また、製剤が国内外で異なる場合には、参加する国、地域間で異なる製剤が承認された理由や経緯を確認するとともに、製剤上の差異が溶出特性や血中薬物濃度等に及ぼす影響について検討が必要である。さらに、同一試験で異なる用法・用量あるいは製剤を用いることによる盲検性担保への影響についても検討すべきである。

検討の結果から、対照薬の国内外での差異が有効性及び安全性に無視できない重大な影響を及ぼすと考えられる場合には、そのような薬剤を対照薬として設定することは避けるべきであり、本邦と同様の用法・用量及び製剤で実施できる国・地域での治験を実施すること、あるいは別の薬剤を対照薬として設定すること等について検討が必要である。

なお、国内での承認用法・用量とは異なるものの、国際的な教科書、診療ガイドライン等で既に用法・用量が確立しており、国内の医療現場においても国際的な用法・用量が広く受け入れられている場合には、治験における用法・用量を国際的な用法・用量に合わせることが可能な場合もあると考えられる。個別のケースについては、対照薬の取り扱いも含めPMDAの対面助言で相談することが推奨される。

14) 治験薬と併用する既存薬の効能・効果や用法・用量が国内外で異なる場合には、国際共同治験の実施は可能か。

国際共同治験は、様々な国・地域が参加して実施されるため、併用する既存薬の効能・効果や用法・用量が、それぞれの国・地域における医療環境等により異なる可能性が想定される。したがって、併用する既存薬での差異が治験薬の有効性及び安全性に及ぼす影響について十分に検討した上で、国際共同治験を実施する国・地域を適切に選択すべきである。

治験に参加する国・地域間で、併用する既存薬が治験薬の有効性又は安全性に影響を及ぼすことが明らかで、治験薬の有効性及び安全性を評価するために、その既存薬の併用が必要であり、治験薬の使用時に効能・効果あるいは用法・用量等で併用薬についても明確に規定する必要がある場合(例:抗がん剤の併用療法等)には、併用する既存薬の用法・用量について、国内外で統一することが望ましい。

一方で、治験に参加する国・地域間で併用する既存薬の効能・効果や用法・用量に差異があったとしても、必ずしも治験薬との併用を前提としておらず、患者の状態によって適宜使用されるような場合(例:うつ病を対象とした治験で併用される睡眠薬等)には、治験薬の有効性及び安全性の評価に大きな影響を及ぼさないことが科学的根拠に基づき説明できることを前提とし、それらの国・地域において国際共同治験を実施することは可能と考えられる。しかしながら、その場合にも、評価に与える影響を最小限とするため、治験中に併用する既存薬の変更は不可とする等、可能な限り試験条件を統一すべきである。なお、治験実施後には、併用した既存薬での差異が治験薬の有効性及び安全性にどのような影響を与えるのかについて、部分集団解析の実施が可能となるよう、治療内容、実施時期等の必要な情報を詳細に記録しておく必要がある。

15) 国際共同治験において、各国の症例登録が競合的に行われ、治験開始当初に設定した日本人目標症例数に到達する前に全体の登録が終了した場合には、別途、国内治験を追加する必要はあるか。

「国際共同治験に関する基本的考え方について」(平成19年9月28日付薬食審査発第0928010号)の質問6の回答で述べているとおり、国際共同治験に組み入れるべき日本人症例数は、全集団と日本人集団との間で結果の一貫性が評価可能なように設定されているものであり、当初に計画した日本人症例数を組み入れることができるよう、治験開始前に十分な検討を行うとともに、治験実施中にも注意深く進行状況をモニタリングして、目標を達成することができるよう、適時適切な対応をとるべきである。

しかしながら、これら可能な限りの措置を講じたにもかかわらず、目標症例数に到達できなかった場合には、実施した対応策と目標を達成できなかった原因、全集団と日本人集団における結果等について十分な検討を行った上で、結果の一貫性が示されているか否かについて判断すべきである。

なお、得られた結果として、日本人症例数が極端に少なく、全集団と日本人集団での結果を比較して評価することが困難となった場合や全集団と日本人集団との間で結果に一貫性が認められず、民族差が示唆され、日本人集団において懸念される事項が認められた場合等には、別途、追加の治験を実施して検討することが必要な場合もある。

個々のケースについては、PMDAの対面助言で相談することが推奨される。

16) 生存期間等の真の臨床的評価指標を用いた大規模な国際共同治験に参加する際に留意すべき点は何か。

生存期間等の真の臨床的評価指標を用いた数千例又はそれを超える大規模な治験は、症例の集積に要する期間等を考慮し、多数の国・地域が参加する国際共同治験として実施されることが多い。日本からも当該治験に参加することにより、治験の目的となる真の評価指標に関するエビデンスの構築に貢献できる一方で、その試験規模及び参加国・地域の数を踏まえると、真の評価指標に関する全集団の結果と日本人集団の結果の一貫性の検討を十分に行える日本人症例数が確保できない可能性も考えられる。したがって、治験計画時には、それ以前の検討に用いられてきた評価指標において得られている結果や、その評価指標と真の評価指標との関係、治験を実施する国や地域間での差異の影響等を精査し、日本を含む全集団を一つの集団としてみなすことができるか十分に検討する必要がある。

日本人目標症例数の設定に関しては、「国際共同治験に関する基本的考え方」(平成19年9月28日付薬食審査発第0928010号)の質問6で2つの方法が提示されているが、これらは数百例規模での治験を想定しており、大規模治験に適用することは困難な場合もある。どのような試験規模であっても、症例数設定に関しては、現時点で適切な手法は確立していないが、例えば、数千例又はそれを超える大規模な治験の場合には、検証すべき主要評価項目(生存率等の真の評価手法)との関係性が合理的に類推可能で、かつより少数例で評価可能な指標(代替指標)に基づき、結果の一貫性が検討可能な症例数を必要最小例数とし、可能な限り多くの日本人症例を組み入れることも一案である。

治験計画においては、症例数設定に利用した指標に加え、これまでの開発の各段階で用いられた評価指標も副次評価項目として設定し、評価に際しても、主要評価項目である真の評価指標に関する日本人集団と全集団の結果の比較検討に加え、副次評価項目の結果等についても検討することが重要である。これらの検討及び臨床開発を通して得られた情報を踏まえて、大規模な治験において全集団で得られた結果が日本人においても適用可能と判断できることを説明する必要がある。

17) 国際共同治験において、日本人と全集団で有効性について一貫性が示され、安全性に明確な差異が認められない場合で、致死的でない疾患に対して、長期にわたり繰り返し投与が想定される医薬品に関して、長期における安全性を評価するためには、どの程度の日本人症例数が必要か。

長期投与試験を計画する時点で得られている治験薬の臨床試験成績や類薬の情報などから日本人の長期安全性に関し特段の懸念事項がないと判断できる場合は、検証的な国際共同治験の成績で日本人集団と全集団の有効性に一貫性が示され、安全性に明確な差異が認められないことを前提に、ICH―E1 ガイドラインに則った症例数での長期安全性は、例えば、日本人を含む国際共同長期投与試験の全集団で評価する等、日本人のみではなく、日本人を含めた集団で評価することとしてもよい。その場合に必要な日本人の症例数は、各薬剤により異なることから具体的に示すことは困難であるが、考え方の例として、検証的な国際共同治験と同程度の日本人症例数の割合で設定することや、検証的な国際共同治験を完了した症例が概ね移行する長期継続国際共同治験を実施すること等があり得る。

一方で、治験薬の臨床試験成績や類薬の情報など既存の情報から日本人の長期安全性に関する特段の懸念事項が示されている場合は、当該事項の評価や精査に適したデザイン(日本人症例数を含む)で長期安全性試験を実施することを検討する必要がある。なお、類薬において当該懸念事項に対応するリスク最小化策が既に確立しており、治験薬にも同様の対応を設定することが妥当と判断される場合など、別途日本人の長期安全性に関する懸念事項を臨床試験で評価するための特別な対応をとらなくてもよい状況もあり得る。

具体的な症例数を含む長期安全性の評価方針は、薬剤毎にPMDAの対面助言で相談することが推奨される。