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○食品衛生法等に基づく処分の理由の提示について

(令和4年4月20日)

(薬生食監発0420第1号)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課長通知)

(公印省略)

標記については、「食品衛生法等に基づく処分の理由の提示について」(平成30年3月29日付け薬生食監発0329第1号。以下「平成30年通知」という。)にて、営業者に対して、営業の禁停止処分等の不利益処分を行う場合には、当該処分を通知する書面に、具体的事実関係と適用する法条の適用関係が明らかになるよう記載することが必要であるとお示ししたところです。

今般、行政手続法(平成5年法律第88号。以下「行手法」という。)第12条の規定に基づく処分基準(以下「処分基準」という。)を設定・公開する自治体において、食品衛生法(昭和22年法律第233号)第55条第1項の規定に基づく営業停止処分(条番号は当該処分時点のもの)をする際、当該処分の理由を通知する書面に、処分基準の適用関係を示さなかったことから、当該処分に対する行政不服審査法(平成26年法律第68号)第2条の規定に基づく審査請求の裁決にて、行手法第14条第1項本文の要求する理由の提示として不十分であると指摘された例が見られました。

このことを踏まえ、平成30年通知に加えて、下記に御留意の上、必要な手続が適切になされるよう特段の御配慮をお願いします。

1 行手法第14条第1項本文に基づいて、どの程度の理由を提示すべきかは、平成30年通知記1に示す同項本文の趣旨に照らし、①当該処分の根拠法令の規定内容、②当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無、③当該処分の性質及び内容、④当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきであること。

2 その上で、処分基準を設定・公表している場合において、処分の原因となる事実及び処分の根拠法条に加えて、処分基準の適用関係が示されなければ、処分の名宛人において、上記事実及び根拠法条の提示によって処分要件の該当性に係る理由は知り得るとしても、いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることは困難であるのが通例である。

このことから、処分基準を設定・公表している場合においては、いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって当該処分が選択されたかを、処分の名宛人が知ることができるよう理由の提示を行われたいこと。

なお、処分基準を設定・公表していない場合においても、1を踏まえ、具体的な理由の提示を行われたいこと。

3 行手法第14条第1項本文に基づく理由の提示に関しては、上記のほか、以下の最高裁判例についても参考にされたいこと。

最判平成23年6月7日民集65巻4号2081頁(一級建築士免許取消処分等取消請求事件)

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=81379(裁判所HP)

<参照条文>

○行政手続法(平成5年法律第88号)

(処分の基準)

第十二条 行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。

2 行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。

(不利益処分の理由の提示)

第十四条 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。

2 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。

3 不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない。

○行政不服審査法(平成26年法律第68号)

(処分についての審査請求)

第二条 行政庁の処分に不服がある者は、第四条及び第五条第二項の定めるところにより、審査請求をすることができる。

参考

○食品衛生法等に基づく処分の理由の提示について

(平成30年3月29日)

(薬生食監発0329第1号)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課長通知)

(公印省略)

食品衛生法(昭和22年法律第233号)等に基づく処分の理由の提示については、行政手続法(平成5年法律第88号)第8条第1項(申請に対する拒否処分)及び第14条第1項(不利益処分)の規定により、申請者等に対し、当該処分の理由を示さなければならないこととされています。

特に食品衛生法に基づく営業の禁停止処分等の不利益処分の理由の提示については、処分の取消訴訟において、例えば、「法第6条に違反した」と記載されているのみで、処分の原因となる基本的事実関係や、違反した条項が具体的に示されておらず、行政手続法が求める理由の提示がなされていないとして処分の違法性が判決において指摘された例がみられることから、下記を踏まえ、必要な手続が適切になされるよう特段の御配慮をお願いします。

なお、営業の禁停止処分等を事業者に通知する際には、処分の理由も含めた通知内容を丁寧に説明するとともに、営業の禁停止期間中に取り組むべき内容(施設の清掃、衛生教育等)を十分に理解させることが必要であることを念のため申し添えます。

1 一般に、処分に理由の提示が求められるのは、処分庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨であり、その提示を欠く場合には、処分自体の取消しを免れないこと。

2 1の趣旨から理由の提示が求められている場合における理由の提示の程度は、特段の理由のない限り、いかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して当該処分がされたのかを、処分の相手方において、その提示内容自体から了知し得るものでなければならず、単に抽象的に処分の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の適用の原因となった具体的事実関係をも当然に知り得るような例外的な場合を除いては、理由の提示として十分でないこと。

3 以上を踏まえれば、食中毒を発生させ、食品衛生法第6条各号に違反したとして営業者に対して営業の禁停止処分を行う場合には、当該処分を通知する書面に、当該営業者、食品が食中毒の原因であると判断し、推定し、又は疑わしいとした根拠である食中毒調査を踏まえ、同条各号に違反したとする食品、それが同条各号のいずれに該当するか、当該営業者の行為が同条が禁止する行為(製造、販売等)のいずれに該当するかを記載するなど、具体的事実関係と適用する法条の適用関係が明らかになるよう記載することが必要であること。

※ 例えば、原因施設のみ特定し、原因食品が特定できない場合には、「当該施設において加工、販売された食品」と記載することが考えられる。

4 上記のことは、原因食品及び原因施設が一応推定しかできない又は疑わしい場合においても、危害の拡大防止のため、営業の禁停止処分等の必要な措置をできるだけ速やかに実施しなければならないこと等、従来からの食中毒事件に対する取扱いを変更するものではないこと。