添付一覧
○公定規格に収載されていない生薬の自主基準について
(令和4年4月8日)
(事務連絡)
(各都道府県衛生主管部(局)薬務主管課あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課通知)
日本漢方生薬製剤協会及び日本生薬連合会が作成した「公定規格に収載されていない生薬の規格及び試験方法」(以下「自主基準」という。)については、平成19年12月17日付事務連絡、平成24年10月30日付事務連絡、平成28年9月30日付事務連絡及び令和3年3月12日付事務連絡で参考に示しているところです。
今般、自主基準から「スイギュウカク」を削除した旨の連絡がありましたので、改定された自主基準を別添として参考に送付します。
[別添]
公定規格に収載されていない生薬の規格及び試験方法
令和4年3月25日(改定)
日本漢方生薬製剤協会
日本生薬連合会
キンモンダイオウ(錦紋大黄・甘粛)
基原 |
本品はRheum palmatum Linne, Rheum tanguticum Maximowicz, Rheum officinale Baillon又はそれらの種間雑種(Polygonaceae)の根及び根茎で,通例,周皮を除いたものである. 本品は,総アントラキノン配糖体[1,8―ジヒドロキシアントラキノンとして]0.50%以上を含む. |
性状 |
本品は卵形,長卵形又は円柱形を呈し,しばしば横切又は縦割され,径4~10cm,長さ5~15cmである.皮層の大部分を除いたものでは,外面は平滑で,黄褐色~淡褐色を呈し,白色の細かい網目の模様が見られるものがあり,質はち密で堅い.本品の破砕面は繊維性でない.本品の横切面は黄褐色又は紅褐色で,黒褐色に白色及び淡褐色の入り組んだ複雑な模様がある.この模様は形成層の付近でしばしば放射状を呈し,また,髄では径1~3mmの褐色の小円の中心から放射状に走るつむじようの組織からなり,明瞭に環状に並んでいる.本品は特異なにおいがあり,味はわずかに渋くて苦い.かめば細かい砂をかむような感じがあり,だ液を黄色に染める.本品の横切面を鏡検するとき,大部分は柔細胞からなり,髄にはところどころに小さい環状の異常形成層があり,その内側には師部,外面には木部が形成されていて,褐色の着色物質を含む二~四列の放射組織を伴い,これが形成層環の中心から放射状に外方に向かって走り,つむじようの組織となる.柔細胞はでんぷん粒,褐色の着色物又はシュウ酸カルシウムの集晶を含む. |
確認試験 |
本品の粉末0.1gに水50mLを加え,水浴上で30分間加温してろ過し,ろ液に希塩酸2滴を加え,ジエチルエーテル20mLずつで2回振り混ぜ,ジエチルエーテル層を除き,水層に塩酸5mLを加え,水浴中で30分間加熱する.冷後,ジエチルエーテル20mLを加えて振り混ぜ,ジエチルエーテル層をとり,炭酸水素ナトリウム試液10mLを加えて振り混ぜるとき,水層は赤色を呈する. |
純度試験 |
(1) ラポンチシン 本品の粉末0.5gにエタノール(95)10mLを正確に加え,還流冷却器を付けて水浴上で10分間加温した後,ろ過し,ろ液を試料溶液とする.この液につき,薄層クロマトグラフィーにより試験を行う.試料溶液10μLを薄層クロマトグラフィー用シリカゲル(蛍光剤入り)を用いて調製した薄層板にスポットする.次にイソプロピルエーテル/メタノール/1―ブタノール混液(26:7:7)を展開溶媒として約10cm展開した後,薄層板を風乾する.これに紫外線(主波長365nm)を照射するとき,Rf値0.3~0.6に青白色の蛍光を発するスポットを認めることがあっても青紫色の蛍光を発するスポットを認めない. (2) 重金属:10ppm以下 (3) ヒ素:5ppm以下 |
乾燥減量 |
13.0%以下(6時間) |
灰分 |
13.0%以下 |
エキス含量 |
希エタノールエキス 30.0%以上 |
成分含量測定法 |
本品の粉末約0.5gを精密に量り,水40mLを加え50℃の水浴中で30分間加熱抽出する.冷後遠心分離を行い,その上澄液を取り,残渣はさらに水40mLを加え50℃の水浴中で15分間加熱抽出する.冷後遠心分離を行い,その上澄液を先の上澄液と合わせ水を加えて正確に100mLとする. この液の10mLを正確に分液ロートにとり,ジエチルエーテル30mLで3回洗浄し,洗浄に用いたジエチルエーテル液を合わせて水15mLずつで2回抽出し,抽出液は先の水層に合わせる.この水層に,塩化鉄(Ⅲ)溶液(3→5)15mLを加え,還流冷却器を付け,沸騰水浴中で20分間煮沸する.次いで,塩酸10mLを加え,同様に20分間煮沸し,沈殿物が溶けるまで十分に振り混ぜる.冷後分液ロートに移し,容器は水10mLで洗い,洗液は先の分液ロートに合わせ,ジエチルエーテル30mLずつで3回抽出する.ジエチルエーテル抽出液は水30mLで2回洗浄する.このジエチルエーテル抽出液に,無水硫酸ナトリウム10gを加えよく振り混ぜた後,10分間放置し,乾燥ろ紙を用いてろ過する.残渣の硫酸ナトリウムはジエチルエーテル10mLずつで3回洗い,洗液とろ液を合わせ,水浴上で蒸発乾固した後,残留物に水酸化ナトリウム試液10mLを正確に加えて振り混ぜて溶かす.この液2mLを正確にとり水酸化ナトリウム試液を加えて正確に10mLとし,試料溶液とする.別に1,8―ジヒドロキシアントラキノン約15mgを精密に量り,アセトンを加えて正確に100mLとする.この液1mLを正確に量り,水浴上でアセトンを留去し残留物に水酸化ナトリウム試液を加えて正確に10mLとし,標準溶液とする.これらの液につき,発色後10分以内に水酸化ナトリウム試液を対照として層長1cmで波長500nmにおける吸光度AT及びASを測定する. 試料中の総アントラキノン配糖体[1,8―ジヒドロキシアントラキノンとして]の含量%=(WS/WT)×(AT/AS)×(1/2)×100 WT:試料の秤取量(mg) WS:標準品の秤取量(mg) AT:試料液の吸光度 AS:標準液の吸光度 |
(注) 本規格及び試験方法は別に規定するもののほか,日本薬局方の通則,生薬総則及び一般試験法を準用する.
シンキク(神麹)
基原 |
本品は,通例,白麹(又は小麦粉),赤小豆,杏仁,青蒿汁,蒼茸汁,野蓼汁を混合したものを圧縮して成型し,数日間発酵させた後,乾燥したものである. |
性状 |
本品は灰黄色~褐色の不整の塊片もしくはブロック状の塊状である.表面は粗く,平滑でなく,ところどころに暗赤色の粒が認められる.本品はわずかに発酵臭があり,味はわずかに甘い. |
確認試験 |
(1) 本品の粉末2gに水10mLを加え,水浴上で5分間加温した後,ろ過する.ろ液にヨウ素試液1滴を加えるとき,液は赤紫色を呈する. (2) 本品の粉末2gに水20mLを加え,水浴中で2~3分間加熱した後,ろ過する.ろ液4mLにフェーリング試液2mLを加え,水浴中で加熱するとき,赤色の沈殿を生じる. |
純度試験 |
(1) 重金属:20ppm以下 (2) ヒ素:2ppm以下 |
乾燥減量 |
15.0%以下(6時間) |
灰分 |
7.0%以下 |
酸不溶性灰分 |
2.0%以下 |
エキス含量 |
希エタノールエキス 8.0%以上 |
(注1) 本規格及び試験方法は別に規定するもののほか,日本薬局方の通則,生薬総則及び一般試験法を準用する.
(注2) 本規格及び試験方法は薬局製剤指針に収載された別紙規格「シンキクの規格及び試験方法」に準じたものである.
(注3) なお,基原に示した白麹(又は小麦粉)とは,コムギTriticum sativum Lamarckを蒸して発酵させたもの又はそのまま粉末としたものを,赤小豆とは,アズキPhaseolus angularis Wightの成熟種子を乾燥したもの,杏仁とは,ホンアンズPrunus armeniaca L.又はアンズPrunus armeniaca L. var. ansu Maximowiczの種子を乾燥したもの,青蒿汁とはカワラニンジンArtemisia apiacea Hanceの全草の汁を搾ったもの,蒼茸汁とはオナモミXanthium strumarium L.全草の汁を搾ったもの,野蓼汁とはヤナギタデPolygonum hydropiper L.の全草の汁を搾ったものである.
セキシャク(赤芍)
基原 |
本品はシャクヤクPaeonia lactiflora Pall., Paeonia obovata Maxim.又はPaeonia veitchii Lynch. (Paeoniaceae)の根である. 本品は定量するとき,換算した生薬の乾燥物に対し,ペオニフロリン(C23H28O11:480.46)2.0%以上を含む. |
性状 |
本品は円柱状又は紡錘状を呈し,長さ5~36cm,径0.5~2.5cm,外面は赤褐色~暗褐色で,外皮は粗く脱落しやすい.全体に明らかな縦じわおよびいぼ状の側根の跡と横長の皮目がある.横切片の木部は淡灰褐色~褐色で放射状の線がある.本品はわずかに特異なにおいがあり,味は初めわずかに甘く,後に渋くてわずかに苦い.本品の横切面を鏡検するとき,褐色のコルク細胞からなるコルク層が認められる.皮部の大部分は柔細胞からなり,空げき及び師部組織がみられる.木部には道管及び木部繊維が放射状に配列し,でんぷん粒を含んだ柔細胞が認められる. |
確認試験 |
(1) 本品の粉末0.5gにエタノール(95)30mLを加えて15分間振り混ぜた後,ろ過する.ろ液3mLに塩化鉄(Ⅲ)試液1滴を加えて振り混ぜるとき,液は青紫色~青緑色を呈し,後に暗青紫色~暗緑色に変わる. (2) 本品の粉末2gにメタノール10mLを加え,水浴上で5分間加温し,冷後,ろ過し,ろ液を試料溶液とする.別にペオニフロリン標準品1mgをメタノール1mLに溶かし,標準溶液とする.これらの液につき,薄層クロマトグラフィーにより試験を行う.試料溶液及び標準溶液10μLずつを薄層クロマトグラフィー用シリカゲルを用いて調製した薄層板にスポットする.次にアセトン/酢酸エチル/酢酸(100)混液(10:10:1)を展開溶媒として約10cm展開した後,薄層板を風乾する.これに4―メトキシベンズアルデヒド・硫酸試液を均等に噴霧し,105℃で5分間加熱するとき,試料溶液から得た数個のスポットのうち1個のスポットは,標準溶液から得た紫色のスポットと色調及びRf値が等しい. |
純度試験 |
(1) 重金属:10ppm以下 (2) ヒ素:5ppm以下 |
乾燥減量 |
14.0%以下(6時間) |
灰分 |
11.0%以下 |
酸不溶性灰分 |
1.5%以下 |
エキス含量 |
希エタノールエキス 22.0%以上 |
定量法 |
本品の粉末約0.5gを精密に量り,薄めたメタノール(1→2)50mLを加え,還流冷却器を付けて水浴上で30分間加熱し,冷後,ろ過する.残留物は,薄めたメタノール(1→2)50mLを加え,同様に操作する.全ろ液を合わせ,薄めたメタノール(1→2)を加えて正確に100mLとし,試料溶液とする.別にペオニフロリン標準品(別途水分を測定しておく)約10mgを精密に量り,薄めたメタノール(1→2)に溶かして正確に100mLとし,標準溶液とする.試料溶液及び標準溶液10μLずつを正確にとり,次の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行い,それぞれの液のペオニフロリンのピーク面積AT及びASを測定する. ペオニフロリン(C23H28O11)の量(mg)=WS×(AT/AS) WS:脱水物に換算したペオニフロリン標準品の秤取量(mg) 試験条件 検出器:紫外吸光光度計(測定波長:232nm) カラム:内径4.6mm,長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんする. カラム温度:20℃付近の一定温度 移動相:水/アセトニトリル/リン酸混液(850:150:1) 流量:ペオニフロリンの保持時間が約10分になるように調整する. システム適合性 システムの性能:ペオニフロリン標準品及びアルビフロリン1mgずつを薄めたメタノール(1→2)に溶かして10mLとする.この液10μLにつき,上記の条件で操作するとき,アルビフロリン,ペオニフロリンの順に溶出し,その分離度は2.5以上である. システムの再現性:標準溶液につき,上記の条件で試験を6回繰り返すとき,ペオニフロリンのピーク面積の相対標準偏差は1.5%以下である. |
(注) 本規格及び試験方法は別に規定するもののほか,日本薬局方の通則,生薬総則及び一般試験法を準用する.
フンボウイ(粉防己)
基原 |
本品はシマハスノハカズラStephania tetrandra S.Moore (Menispermaceae)の根である. |
性状 |
本品は長さ5~10cm,直径1~5cmで,不規則な円柱形,半円柱形或いは塊状を呈し,湾曲しているものが多い.表面は淡灰黄色を呈し,折面は灰白色を呈し,粉性に富んでいる.断面には放射状に不規則な紋が認められる.ほとんどにおいはなく,味は苦い. |
確認試験 |
本品の粉末1.0gにメタノール10mLを加え,10分間振り混ぜた後,遠心分離し,上澄液を試料溶液とする.試料溶液につき,下記の条件で薄層クロマトグラフィーにより試験を行う.試料溶液20μLを薄層クロマトグラフィー用シリカゲルを用いて調製した薄層板にスポットする.次に酢酸エチル/エタノール(99.5)/アンモニア水(28)混液(40:3:2)を展開溶媒として約10cm展開した後,薄層板を風乾する.これに噴霧用ドラーゲンドルフ試液を均等に噴霧するとき,Rf値0.45付近に黄赤色のスポットを認める. |
純度試験 |
(1) 重金属:10ppm以下 (2) ヒ素:5ppm以下 |
乾燥減量 |
15.0%以下(6時間) |
灰分 |
6.0%以下 |
酸不溶性灰分 |
1.0%以下 |
エキス含量 |
希エタノールエキス 10.0%以上 |
(注) 本規格及び試験方法は別に規定するもののほか,日本薬局方の通則,生薬総則及び一般試験法を準用する.