添付一覧
○医薬品の一般的名称の取扱いに関する事務手続等について
(令和4年2月4日)
(薬生薬審発0204第3号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)
(公印省略)
標記については、平成18年3月31日薬食発第0331001号医薬食品局長通知「医薬品の一般的名称の取扱いについて」により、医薬品の一般的名称の命名申請等についての取扱いを定めたところであり、その詳細については平成18年3月31日薬食審査発第0331001号「医薬品の一般的名称の取扱いに関する事務手続等について」のとおりとされてきたところである。
今般、JAN決定業務の効率化の観点から一部見直し、今後は下記のとおりとすることとしたので、御了知の上、貴管下関係業者に周知方よろしく御配慮願いたい。
記
1.我が国における医薬品一般的名称(以下「JAN」という。)の命名申請手続(ただし、国際一般名(以下「INN」という。)に収載された品目を除く。)
(1) JAN(案)については、一般名の命名基準(別添1)等を参照の上、考案すること。
(2) 医薬品一般的名称命名申請書は、医薬品一般的名称命名申請書作成上の注意(別添2)に従って作成すること。
2.INNに収載された品目のJANの収載手続
(1) 医薬品一般的名称届出書は、医薬品一般的名称届出書(INN収載品目)作成上の注意(別添3)に従って作成すること。
(2) JAN収載にあたっては、収載のルールに従って届出内容を変更することもあり得る。なお、この場合、届出者には速やかに通知することとし、本通知に対し、異議申立て等がない場合、JAN収載を行う。
3.JANの通知
医薬品名称専門協議において、JANの決定をみたものについては、逐次別途通知する。当該通知においては、JANを別表1又は別表2に区分記載して通知するものとし、その区分は次のとおりであるので、了知されたいこと。
・別表1 医薬品名称専門協議において決定されたJAN
ただし、今後、INNとの整合性が図られる可能性のあるもの
・別表2 医薬品名称専門協議において決定されたJAN
かつ、INNとの整合性も図られたことが確認されたもの
4.通知の廃止について
以下の通知を廃止する。
平成18年3月31日薬食審査発第0331001号「医薬品の一般的名称の取扱いに関する事務手続等について」
平成21年3月13日薬食審査発第0313001号「「医薬品の一般的名称の取扱いに関する事務手続等について」の一部改正について」
【別添1 一般名の命名基準】
1.一般名は、原則としてまず英名を作成するものとし、これを翻訳し、又は字訳する方法により命名するものとする。翻訳又は字訳する場合は、次によるものとする。
(1) 一般名の英名に用いる化学名に文部科学省で定める学術用語(以下、学術用語)で日本語訳が示されている場合は、原則としてその日本語訳によるものとする。ただし、医薬品に特有なものにあっては、その名称によることができる。
(2) 一般名の英名に用いる化学名に学術用語で日本語訳が示されていない場合は、字訳法則(別紙1)により字訳するものとする。ただし、一般名の一部が学術用語で日本語訳が示されている化学名である場合には、当該部分については、(1)に定めるところによるものとする。
2.一般名は、語音、綴りともに明快で、できるだけ短いものであり、かつ、既存の名称と混同されにくいものでなければならない。
3.薬理学的に関連のある群に属する医薬品の一般名は、この関連を示すようにつける。そのため、医薬品グループを表すステム(別紙2)に示す資料を参照すること。また、一般名の一部に解剖学的、生理学的、病理学的、若しくは、治療的効果を示唆するような字句が含まれてはならない。
4.新しい薬理作用あるいは作用機序をもつグループの最初の物質の命名に当たっては、新しくINNのステムを創出することを考慮して命名する。
5.化学薬品であってその化学名が短いものはそのまま医薬品名として命名する。また、化学名が長いものはステムを考慮し、既存品と類似しないように適当な接頭語、接尾語等とステムを組み合わせることにより命名する。化学名を短縮して作る方法は、類似の名称が多くなる傾向があるので避ける。
6.化学名が明らかでない化学薬品又は天然物等については、原則としてそのものの起原、科学的分類(配糖体、アルカロイド、アルコール等の別をいう)及び薬理的作用を勘案して、その一般的名称を命名するものとする。ただし、この場合でも別紙2に掲げる資料に示されているグループのいずれかに該当することが明らかなものについては、当該ステムを使用することが望ましい。
7.塩、エステル、プロドラッグ、包接化合物及び水和物などの一般名は、原則として、薬理的に活性のある部分(塩基、酸又はアルコールなど)の名称について考案し、これに薬理的に不活性な部分の名称を組み合わせることにより命名するものとする。
8.第四級アンモニウム塩の一般名は、原則として陽イオン部、陰イオン部に分けて考案したそれぞれの名称を組み合わせることにより命名するものとし、アミンの塩の一般名と区別できるようにしなければならない。
9.酸及び塩基のうち必要なものについてはその短縮名称を定めるものとし、酸及び塩基等の短縮名称(別紙3)に示す資料を参照すること。この場合において、これらの酸又は塩基を含むものの一般名の命名に当たっては、その短縮名称を用いるものとする。
10.単離した文字、数字又はハイフン、h及びkは原則として使用しないこととし、phはf、thはt、yはi、ae又はoeはeとするものとする。
11.上記の規定にかかわらず、一般名の命名に当たっては、その物質を最初に発見し、又は開発した者及びこれらに準ずる者が提案した名称並びに外国で開発された医薬品は当該開発国で使用されている名称を、特に支障のない限り、優先させるものとする。
【別紙1 字訳法則】
1.原則として、すべての文字を省略することなく、字訳するものとする。ただし、末尾のeは、酵素剤の場合を除き、一般にこれを字訳しないものとする。
2.原則として、子音の次の母音は、当該子音と組み合わせて字訳するものとする。
3.2以外の場合は、原則として一文字ごとに字訳するものとする。
ただし、ch、ph、qh及びthは、それぞれ一つの子音と見なし、また、同一又は類似の発音の子音が重なった場合は、一つの子音とみなすことがある。
4.2及び3にかかわらず母音が2つ以上連続する場合のうちae、oe、はそれぞれeとみなして字訳するほか、euはユー、iaはヤ、ouはウと字訳し、ioについてはiodになった場合のみヨーと字訳するものとする。
5.字訳に当たっては、別表の例(字訳表)によらなければならない。
【別表】
字訳表
文字 |
単独音 |
a |
i.y |
u |
e |
o |
備考 |
a |
ア |
― |
― |
オー |
eとみなす |
― |
|
b |
ブ |
バ |
ビ |
ブ |
ベ |
ボ |
|
c |
ク |
カ |
シ |
ク(キュ) |
セ |
コ |
備考 ① |
d |
ド |
ダ |
ジ |
デュ |
デ |
ド |
備考 ② |
e |
エ |
― |
― |
ユー(オイ) |
― |
― |
|
f |
フ |
ファ |
フィ |
フ |
フェ |
ホ(フォ) |
備考 ③ |
g |
グ |
ガ |
ギ |
グ |
ゲ |
ゴ |
|
h |
― |
ハ |
ヒ |
フ(ヒュー) |
ヘ |
ホ |
|
i |
イ |
ヤ |
― |
― |
― |
イオ(ヨー) |
備考 ④ |
j |
ジ |
ジャ |
ジ |
ジュ |
ジェ |
ジョ |
|
k |
ク |
カ |
キ |
ク |
ケ |
コ |
|
l |
ル |
ラ |
リ |
ル |
レ |
ロ |
備考 ⑤ |
m |
ム,ン |
マ |
ミ |
ム |
メ |
モ |
備考 ⑥ |
n |
ン |
ナ |
ニ |
ヌ |
ネ |
ノ |
|
o |
オ |
― |
― |
ウ |
eとみなす |
― |
|
p |
プ |
パ |
ピ |
プ |
ペ |
ポ |
備考 ⑦ |
q |
― |
― |
― |
ク |
― |
― |
|
r |
ル |
ラ |
リ |
ル |
レ |
ロ |
備考 ⑧ |
s |
ス |
サ(ザ) |
シ(ジ) |
ス(ズ) |
セ(ゼ) |
ソ(ゾ) |
|
t |
ト |
タ |
チ |
ツ |
テ |
ト |
|
u |
ウ |
― |
― |
― |
― |
― |
|
v |
ブ |
バ |
ビ |
ブ |
ベ |
ボ |
備考 ⑨ |
w |
ウ |
ワ |
ウィ |
ウ |
ウェ |
ウォ |
|
x |
クス(キス) |
キサ |
キシ |
クス |
キセ |
キソ |
|
y |
イ |
ヤ |
― |
ユ |
エ |
ヨ |
|
z |
ズ |
ザ |
ジ |
ズ |
ゼ |
ゾ |
|
ch |
ク |
カ(チャ) |
チ |
チュ(キュ) |
ケ(チェ) |
コ |
|
ph |
フ |
ファ |
フィ |
フ |
フェ |
ホ(フォ) |
備考 ⑩ |
qu |
ク |
クァ(カ) |
キ |
― |
クェ(ケ) |
クォ(コ) |
備考 ⑪ |
th |
ト(ス) |
タ |
チ |
ツ |
テ |
ト |
|
sc |
スク |
スカ |
シ |
スク |
セ |
スコ |
|
sh |
シュ |
シャ |
シ |
シュ |
シェ |
ショ |
注:( )内は例外的なものを示す。
備考:
① chはkと同じ。
couはクと同訳。例:クマリン(coumarin)
② 例外:ディルドリン(dildrin)
③ ffはfと同じ。
④ iodとなったときは「ヨー」と字訳する。
⑤ llはlと同じ。
⑥ 例外:―マイシン(―mycin)
⑦ phはfと同じ。
⑧ rrはrと同じ。
⑨ 例外:ワセリン(Vaselin)
⑩ 例外:セロハン(Cellophane)
⑪ カルボコン(Carboquone)
【別紙2 医薬品グループを表すステム】
医薬品グループを表すステムのリストについては、WHOのホームページを参照すること(下記参考資料を参照のこと)。なお、このリストは定期的に更新されており、WHO(The INN Programme, WHO, Geneva)より入手可能である。最新版を確認の上対応のこと。
また、ステムの日本語表記にあたっては、一般名の命名基準に従うこと。
<参考資料>
○The use of stems in the selection of International Nonproprietary Names (INN) for pharmaceutical substances, WHO/EMP/RHT/TSN/2018.1, World Health Organization, Geneva, 2018,
https://www.who.int/medicines/services/inn/StemBook_2018.pdf
○Addendum to “The use of stems in the selection of International Nonproprietary Names for Pharmaceutical Substances”, WHO/EMP/RHT/TSN/2018.1, World Health Organization, Geneva, 2020,
https://cdn.who.int/media/docs/default-source/international-nonproprietary-names-(inn)/addendum-stembook2018-202012.pdf
【別紙3 酸及び塩基等の短縮名称】
酸及び塩基等の短縮名称リストについては、WHOホームページを参照すること(下記参考資料を参照のこと)。なお、このリストは定期的に更新されており、WHO(The INN Programme, WHO, Geneva)より入手可能である。最新版を確認の上対応のこと。
また、短縮名の日本語表記にあたっては、一般名の命名基準に従うこと。
<参考資料>
○International Nonproprietary Names (INN) for pharmaceutical substances.
Names for radicals & groups comprehensive list, WHO/EMP/RHT/TSN/2015.1, World Health Organization, Geneva, 2015,
https://www.who.int/medicines/services/inn/RadicalBook2015.pdf
【別添2 医薬品一般的名称命名申請書作成上の注意】
1.用紙の大きさは、日本産業規格A4とすること。
2.申請書欄外右側には、申請書が受理された時点で登録番号が発行されるので、その登録番号を記入すること。
3.「一般的名称案」欄の記載に際しては、以下の点に注意すること。
(1) 当該品目に関する1回の申請で提出することができる一般的名称案の数は最大3案までとする。
(2) 英名は、各単語の書き出しを大文字で記載すること。
(3) 一般的名称は当該化合物の本質成分全体に対して命名されたものであること(別添3 3.(2)(3)も参照のこと)。塩の場合は塩も含め、エステルの場合はアルコール由来部分も含め、水和物の場合は水も含めて命名されたものであること。ただし、一般名中に塩、水和物の数は示さない。
4.「化学名又は本質記載」欄に化学名を記載する場合には、以下の点に注意して記載すること。
(1) 化学名は、原則として、IUPAC命名規則に従ったものとすること。
(2) 化学名英名は、大文字で書き出すこと。ただし、IUPAC命名規則により小文字で記載することになっている記号等は小文字のままとする。また、必要に応じて日本薬局方収載の化学名も参考とする。
(3) 化学名英名及び日本名は当該化合物の本質成分全体に対したものとすること。化学名においては塩や水和物の数を示すこと。示すべき数には1を含める。すなわち、例えば、一水和物/monohydrateとする。
(4) 化学名日本名は化学名英名を字訳又は翻訳する。
(5) 化学名英名について改行が必要となる場合、単語の区切りで改行し、単語の途中で改行しないこと。ハイフンを含む単語の場合はハイフンの後ろで改行してよい。
(6) 化学名の位置表示には、o―(オルト)、m―(メタ)、p―(パラ)を使用せず、位置番号を使用すること。
(7) 当該物質が旋光性を有する場合は、本欄の化学名に絶対配置を示す「R」、「S」若しくは「RS」を付けて標記すること。絶対配置を示すRS表示には、原則として位置番号を記載すること。
5.「化学構造式又はアミノ酸配列等」欄に当該品目の化学構造式を記載する場合は、以下の点に注意して作成すること。
(1) 本欄に当該品目の化学構造式を記載しきれない場合は、「化学構造式は別紙のとおり」のように記載し、化学構造式を記載した別紙を添付すること。この場合、別紙上部に申請書が受理された時点で発行された登録番号を記載すること。
(2) 化学構造式は、日本薬局方及びINNに収載されている構造式を参考に、WHO化学構造式記載ガイドライン(下述)を指針にして作成する。立体構造が判明している場合は、光学異性体を破線・楔形記号を用いて記載すること。また、糖の構造式は、Haworthの投影式(簡易型)で記載すること。
(3) 同じ炭素に結合している2つの置換基については、炭素主鎖に関し、同じ側に破線・楔形記号が出るように記載すること。
[WHO化学構造式記載ガイドライン]
The graphic representation of chemical formulae in the publications of International Nonproprietary Names (INN) for pharmaceutical substances. WHO/PHARM/95.579, World Health Organization, Geneva, 1996,
https://apps.who.int/iris/handle/10665/63585
6.「化学構造式又はアミノ酸配列等」欄に当該品目の本質を記載するタンパク質、糖タンパク質、ペプチド、糖ペプチド等の「本質記載」欄、「アミノ酸配列等」欄及び「分子式及び分子量」欄は本別添2(別紙)に従うこと。
7.「分子式及び分子量」欄には、有機化合物については分子式及び分子量を、無機化合物については組成式及び式量を記載する。分子式は構造式の表記と整合したものとする。有機化合物の分子式の元素の記載順は、C、H、次いでそれ以外の元素記号を元素記号のアルファベット順に記載する。塩を形成する化合物、溶媒和物、包接化合物などは、原則、活性本体とそれ以外(塩、溶媒和物の溶媒、包接化合物のホスト分子)の分子式は分けて記載し、分子式と分子式の間に「・」を入れて記載する。分子量は、日本薬局方通則による原子量表を使って分子式から理論値を計算し、小数第3位を四捨五入し、小数第2位まで求める。
8.「CAS登録番号」欄には、申請物質のCAS登録番号をイタリック体で記載すること。申請物質のCAS登録番号が存在しない場合は、無水物や水和物、塩等のCAS番号を記載し、続けて括弧書きでその内容(無水物、水和物、塩等の別)を記載すること。
9.「薬理作用」欄には、当該物質の主たる薬理作用と医薬品として承認された後に対応すると予想される薬効分類番号を記入すること。
10.「備考」欄には、以下の事項を記載すること。
(1) 同一品目について過去に命名申請を行ったことがある場合には、今回の申請がその品目について何回目の申請になるのかを本欄に記載すること。
(2) 医薬品の承認申請済みか否かの別、承認申請前であれば、その予定時期等を記入すること。先駆的医薬品等、優先審査の対象とされる品目についてはその旨も併せて記載すること。
【別紙 タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、糖ペプチド等の記載要領】
1.本質記載
(1) 基本的考え方
原則として、本質には以下の3つの要素を含むこと。また、本文は、「●は,」で始めること。ここで●は、(遺伝子組換え)の記載を除いた該当品目のJANを意味する。
(ア) タンパク質部分及び意図的修飾に関する情報
(イ) 産生細胞等に関する情報
(ウ) アミノ酸残基数、サブユニット数、分子量など、構造に関する情報
以下に、各要素として記載する基本的事項を記す。
(ア) タンパク質部分及び意図的修飾に関する情報
タンパク質部分に関する情報として、製造方法(抽出(天然由来/培養細胞由来)、合成又は遺伝子組換え)や由来となるタンパク質の情報を記載する。天然型タンパク質からの改変部分に関しては、置換、断片、修飾等について、由来となる天然型タンパク質との構造上の相違を記載する。複数のタンパク質ドメインを融合させた場合は、それぞれのドメインの情報を記載する。修飾タンパク質の場合は、修飾に関する情報も記載する。抗体等の場合や化合物を結合した修飾タンパク質の場合には、以下の1)及び2)についても考慮すること。
1) 抗体等の場合
① 全長型の場合は抗体のアイソタイプ(例:IgG1、IgG2、IgG4)と由来(種)を記載する(例:相補性決定部はマウス抗体に由来し,その他はヒトIgG1に由来する)。
② 全長型の場合で、定常部にアミノ酸置換があればその情報を記載する(ただし天然の多型を除く)。
③ 標的分子を記載する。標的分子がヒト内在性物質の場合は種の記載を省略する。複数の標的を有する場合は、その旨を記載し(例:二重特異性抗体)、それぞれの標的分子も記載する。
④ 全長型以外の抗体の場合は骨格構造に関する情報を記載する(例:1本鎖抗体(scFv)、1本鎖2価抗体(scFv―scFv)、Fab断片)。
⑤ 抗体模倣人工タンパク質の場合は標的分子と骨格の特徴を記載する(例:▲に結合するアンキリンリピート構造を有する)。
2) 化合物を結合した修飾タンパク質の場合
① 修飾タンパク質(不均一性が高い場合)の分子量、並びに化合物の化学名、分子式、分子量、結合位置、及び平均結合数等を記載する。
(イ) 産生細胞等に関する情報
糖鎖構造等の特徴を表現するため、産生細胞等を記載する。
(ウ) アミノ酸残基数、サブユニット数、分子量など、タンパク質部分の構造に関する情報
タンパク質を構成する各鎖のアミノ酸残基数、サブユニット数及び分子量(不均一性が高い場合)等について記載する。
(2) 留意点
① 有効性・安全性等に特に影響しない構造は、本質記載に記載しないこと。
cDNA上での塩基置換によるアミノ酸配列の改変・除去、組換えタンパク質発現後の修飾等、意図した修飾の場合は、修飾の種類、平均結合数及び結合位置等を記載すること(例:PEG化、糖鎖改変)。アミノ酸配列の置換は、原則、[参照配列]:[置換前のアミノ酸][アミノ酸番号][置換後のアミノ酸]で記載すること(例:○○類縁体(A鎖:N5S,B鎖:T8P))。
② 標的分子等の名称は、文部科学省『学術用語集』を参照し、広く認知された用語を使用すること。略語が広く認知されている場合には略語のみでもよい。
③ 酵素の名称を記載する場合は国際生化学分子生物学連合の命名法委員会が管理している酵素番号(EC番号)を併記すること。
④ 産生細胞のサブラインは記載しないこと。糖鎖構造の改変等、有効成分の構造改変を意図した遺伝子欠損や遺伝子導入が施されている細胞の場合は、その情報を記載すること。
⑤ 本質記載には、分子全体の分子量を適正に反映する方法、例えば、理化学分析(質量分析法、超遠心分析法、電気泳動法、サイズ排除クロマトグラフィー等)による測定値又はアミノ酸部分の理論分子量に修飾部分の理化学分析等による分子量測定値を加えた値を、“約35,000”のように記載すること(百位以下の桁は四捨五入)。分子量の根拠は、理化学的研究に関する資料の中で説明すること。なお、分子量が均一なペプチド、タンパク質、修飾ペプチド及び修飾タンパク質の分子式及び分子量は、本質記載欄への記載を要しない。
2.アミノ酸配列、糖鎖構造及びその他の修飾等
(1) 基本的考え方
原則として、以下のように記載すること。
① アミノ酸配列は、アミノ酸1文字表記で表す。
② ペプチド内ジスルフィド結合は、システイン残基同士を線で結ぶ。ペプチド間ジスルフィド結合はアミノ酸配列脚注に記載する。ただし、アミノ酸配列が50残基以下同士のペプチド間ジスルフィド結合は、システイン残基同士を線で結ぶこと。
③ 翻訳後修飾や意図的修飾の位置や種類等がわかるようにアミノ酸配列脚注に記載する。
④ 抗体薬物複合体やPEG化タンパク質などにおける意図的修飾はその構造及び結合方法等がわかるように記載する。
⑤ 糖鎖は、主な糖鎖又は活性等に影響する糖鎖の構造を糖鎖修飾されたアミノ酸残基ごとに記載する。構成糖の結合位置や結合様式が明らかな場合は記載する。
⑥ 融合タンパク質や多価抗体で模式図を記載することが適切な場合は、模式図を記載する。
(2) 留意点
① アミノ酸1文字表記とする場合はアミノ酸残基間を線で結ばないこと。また、10残基ごとにスペースを入れ、50残基ごとに改行し(行間1.5行)、50残基ごとにアミノ酸番号を右端に記載し、最終行は残基数を記載する。アミノ酸配列は等幅フォント(例:Courier New、10.5ポイント)で記載する。
② ペプチド内ジスルフィド結合はできるだけ線同士が交差しないように結ぶこと(線の太さ:0.5ポイント)。また、線はできるだけアミノ酸配列の行を途中で横切らないよう外側を通して結ぶこと(例:4.記載要領を踏まえた記載例7のC21―C97)。
③ 有効性・安全性等に特に影響しない修飾の場合にはアミノ酸配列脚注にその位置や種類等の記載は不要である。
④ 糖鎖構造は右側を還元末端として記載する。以下の記載例を参考にすること。
i) 側鎖の非還元末端糖の不均一性は中括弧{であらわす。
ii) 下付きの数字は結合数をあらわす。
Gal0,1:Galが結合していない又は2つの側鎖GlcNAcのどちらかにGalが結合していることをあらわす。
iii) 還元末端のGlcNAcに付加したフコースの不均一性はFuc0,1であらわす。
iv) 結合位置や結合様式を書く場合は、以下のとおり記載する。
3.分子式及び分子量
(1) 基本的考え方
原則として、以下のように記載すること。
① 修飾ペプチド又は修飾タンパク質等で、修飾等の種類及び結合数が均一な場合は、修飾されたペプチド又はタンパク質等の分子式及び分子量を記載する。
② 糖ペプチド、糖タンパク質、修飾ペプチド又は修飾タンパク質で、分子式及び分子量が不均一な場合は、ペプチド又はタンパク質部分の分子式及び分子量を記載する。
③ 分子量は、日本薬局方通則による原子量表を使って分子式から理論分子量を計算した後、小数点第3位を四捨五入して計算すること。N末端、C末端及び側鎖は非解離状態で計算すること。複数のペプチドで構成される場合には、分子全体及び各ペプチドの分子式及び分子量をそれぞれ記載すること。ジスルフィド結合がある場合、分子全体の分子式及び分子量はS―Sとして計算すること。各ペプチドの分子式及び分子量は、ペプチド内ジスルフィド結合をS―Sとして計算し、ペプチド間ジスルフィド結合をSH(還元型)として計算すること。
(2) 留意点
① 意図せず生じた部分的修飾は、修飾されていないものとして計算すること(例:N末端の部分的ピログルタミン酸形成、C末端の部分的プロセシングなど)。
② 単純タンパク質であっても分子式及び分子量が不均一な場合は、分子式及び分子量を「分子式及び分子量」欄には記載しないこと(例:インターフェロンアルファ等のサブタイプやアイソフォームがある場合)。
4.記載要領を踏まえた記載例
[記載例1]合成置換型ペプチド(均一)の例
本質記載:
[英名]
● is a synthetic human oxytocin analog (Leu8Lys) consisting of 9 amino acid residues.
[日本名]
●は,合成ヒトオキシトシン類縁体(Leu8Lys)であり,9個のアミノ酸残基からなるペプチドである.
アミノ酸配列及びジスルフィド結合:
分子式及び分子量:
C43H67N13O13S2:1,038.20
[記載例2]遺伝子組換え断片型ペプチド(均一)の例
本質記載:
[英名]
● is a recombinant human growth hormone analog which corresponds to amino acid residues at positions 101‐191 of human growth hormone. ● is a peptide consisting of 91 amino acid residues.
[日本名]
●は,遺伝子組換えヒト成長ホルモン類縁体であり,ヒト成長ホルモンの101~191番目のアミノ酸残基に相当する.●は,91個のアミノ酸残基からなるペプチドである.
アミノ酸配列及びジスルフィド結合:
分子式及び分子量:
C455H708N122O145S5:10,367.55
[記載例3]遺伝子組換え置換型断片型修飾型タンパク質(均一)の例
本質記載:
[英名]
● is a recombinant human growth hormone analog corresponding to amino acid residues at positions 51‐191 of human growth hormone, whose amino acid residue is substituted at 1 position (K90S), and whose K20 is myristoylated. ● is a modified protein consisting of 141 amino acid residues.
[日本名]
●は,遺伝子組換えヒト成長ホルモン類縁体であり,ヒト成長ホルモンの51~191番目のアミノ酸残基に相当し,1つのアミノ酸残基が置換(K90S)され,K20がミリストイル化されている.●は,141個のアミノ酸残基からなる修飾タンパク質である.
アミノ酸配列及びジスルフィド結合:
分子式及び分子量:
C723H1135N189O225S6:16,267.27
[記載例4]遺伝子組換え置換型修飾型(PEG化)2本鎖ペプチド(不均一)の例
本質記載:
[英名]
● is a recombinant human insulin analog, in which amino acid residues are substituted at 2 positions (A‐chain:I10K, B‐chain:L15K), to which an average of two methoxy polyethylene glycol groups (molecular weight:ca. 5,000) are covalently bound (potential pegylation sites:A‐chain:G1, K10;B‐chain:F1,K15,K29). ● is a pegylated peptide (molecular weight:ca. 15,000) whose peptide moiety is composed of an A‐chain consisting of 21 amino acid residues and a B‐chain consisting of 30 amino acid residues.
[日本名]
●は,遺伝子組換えヒトインスリン類縁体であり,2個のアミノ酸残基が置換(A鎖:I10K,B鎖:L15K)され,平均2本のメトキシポリエチレングリコール(平均分子量:約5,000)が結合している(PEG結合可能部位:A鎖:G1,K10,B鎖:F1,K15,K29).●はPEG化ペプチド(分子量:約15,000)であり,そのペプチド部分は,21個のアミノ酸残基からなるA鎖及び30個のアミノ酸残基からなるB鎖から構成される.
アミノ酸配列及びジスルフィド結合:
A鎖G1,A鎖K10,B鎖F1,B鎖K15,B鎖K29:PEG結合可能部位
ポリエチレングリコールの結合様式:
分子式及び分子量:
C257H385N67O77S6:5,837.60(ペプチド部分,2本鎖)
A鎖 C99H154N26O35S4:2,396.70
B鎖 C158H235N41O42S2:3,444.94
[記載例5]遺伝子組換え糖タンパク質の例
本質記載:
[英名]
● is a recombinant human interferon gamma, which is produced in CHO cells. ● is a glycoprotein (molecular weight:ca. 21,000) consisting of 146 amino acid residues.
[日本名]
●は,遺伝子組換えヒトインターフェロンガンマであり,CHO細胞により産生される.●は,146個のアミノ酸からなる糖タンパク質(分子量:約21,000)である.
アミノ酸配列:
N28,N100:糖鎖結合
主な糖鎖の推定構造:
N28
N100
分子式及び分子量:
C761H1206N214O225S6:17,145.41(タンパク質部分)
[記載例6]遺伝子組換えIgG型抗体の例
本質記載:
[英名]
(ア) タンパク質部分及び意図的修飾に関する情報 の記載例
全長がヒトに由来する抗体:
● is a recombinant anti‐**monoclonal antibody derived from human IgG1.