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○電動モルセレータに係る「使用上の注意」の改訂について

(令和3年12月24日)

(/医政安発1224第1号/薬生機審発1224第13号/薬生安発1224第3号/)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医政局総務課医療安全推進室長、厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知)

(公印省略)

これまで、電動モルセレータについては、「モルセレータに係る「使用上の注意」について」(平成28年7月25日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課・安全対策課事務連絡)により、添付文書に、「悪性腫瘍又はその疑いがある場合は使用しないこと」「使用に際しては、診断不可能な悪性病変の可能性及び予後を悪化させる可能性について、患者に十分な情報提供を行い、同意を得た上で使用すること」という内容を記載するよう取扱うこととしてきました。

今般、米国食品医薬品局(FDA)は、50歳以上又は閉経後症例への電動モルセレータの使用は禁忌であり、それ以外の症例に対し電動モルセレータを使用する際には、必ず組織回収バッグを使用すべきであるとするガイダンスを令和2年12月に公表しました。

厚生労働省医薬・生活衛生局、独立行政法人医薬品医療機器総合機構及び一般社団法人日本産科婦人科内視鏡学会において検討を行った結果、本邦での使用実態等を踏まえ、電動モルセレータの使用に関して、米国での取扱いを含めた十分なインフォームドコンセントの実施を徹底するため、使用上の注意を改訂することとしました。

ついては、別添1のとおり関係する製造販売業者に対し使用上の注意の改訂等を指示しましたのでお知らせします。

また、一般社団法人日本産科婦人科内視鏡学会から、別添2のとおり、電動モルセレータの使用と組織回収バッグの使用に関する見解を示す会告が発出されました。つきまして、貴管下の医療機関等へ当該会告の周知方よろしくお願いします。

[別添1]

○電動モルセレータに係る「使用上の注意」の改訂について

(令和3年12月24日)

(/薬生機審発1224第14号/薬生安発1224第4号/)

((別記1)代表者あて厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知)

これまで、電動モルセレータについては、「モルセレータに係る「使用上の注意」について」(平成28年7月25日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課・安全対策課事務連絡)により、添付文書に、「悪性腫瘍又はその疑いがある場合は使用しないこと」「使用に際しては、診断不可能な悪性病変の可能性及び予後を悪化させる可能性について、患者に十分な情報提供を行い、同意を得た上で使用すること」という内容を記載するよう取扱うこととしてきました。

今般、米国食品医薬品局(FDA)は、50歳以上又は閉経後症例への電動モルセレータの使用は禁忌であり、それ以外の症例に対し電動モルセレータを使用する際には、必ず組織回収バッグを使用すべきであるとするガイダンスを令和2年12月に公表しました。

厚生労働省医薬・生活衛生局、独立行政法人医薬品医療機器総合機構及び一般社団法人日本産科婦人科内視鏡学会において検討を行った結果、本邦での使用実態等を踏まえ、電動モルセレータの使用に関して、米国での取扱いを含めた十分なインフォームドコンセントの実施を徹底するため、使用上の注意を改訂することとしました。

ついては、下記のとおり使用上の注意を改訂するとともに、医療機関等へ適切な情報提供の徹底をお願いします。

1.電動モルセレータについては、電子化された添付文書の【警告】の項に以下の内容を記載すること。

本製品の使用に際しては、診断不可能な悪性病変の可能性及び予後を悪化させる可能性並びに米国での取扱いについて、患者に十分な情報提供を行い、同意を得た上で使用すること。

2.上記1に従い、改訂した電子化された添付文書を、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「総合機構」という。)のホームページの医療機器の添付文書情報に掲載すること。

3.上記1及び2の対応並びに電子化された添付文書の改訂内容に係る医療機関等への情報提供状況について、令和4年1月31日までに、総合機構医療機器品質管理・安全対策部医療機器安全対策課宛てに報告すること。

4.承認又は認証申請中の電動モルセレータについて、申請者は、電子化された添付文書(案)について、同様の修正を行う旨を総合機構又は登録認証機関の当該品目の審査担当部門に申し出ること。

(別記1)

エダップテクノメド 株式会社

カールストルツ・エンドスコピー・ジャパン 株式会社

コヴィディエンジャパン 株式会社

中村医科工業 株式会社

株式会社 TKB

株式会社 アダチ

株式会社 日本ルミナス

[別添2]

会告

「腹腔鏡の子宮摘出術と子宮筋腫核出術の電動モルセレータ使用と組織回収バッグの使用について」

電動モルセレータは、主に子宮筋腫がある女性の腹腔鏡下の子宮摘出術や子宮筋腫核出術に使用され、子宮筋腫および子宮組織を細切し摘出するために多く使用されています。

2014年4月17日米国食品医薬品局(FDA)が電動モルセレータの使用に関して次のような安全性通知を出しております。「子宮筋腫がある女性の腹腔鏡下の子宮摘出術や子宮筋腫核出術に電動モルセレータを使用した細切除術を実施した場合、想定されていなかったがん組織、とくに子宮肉腫を腹腔内に播種させるリスクがある。現時点では、前述手術における電動モルセレータの使用を推奨しない。」というものです。FDAによると想定していなかった子宮肉腫の発見率は0.28%であると報告されています。それを受けて日本産科婦人科内視鏡学会(以下、本会)でも、平成26年9月5日に、電動モルセレータの適切使用に関する会告「腹腔鏡の子宮摘出術と子宮筋腫核出術の電動モルセレータ使用について」が発出され、日本では想定していなかった子宮肉腫の発見率は0.09%と極めて低いことが明らかとなりました。

この度2020年12月にFDAは電動モルセレータの使用に関する新たな通知を発出しました。当通知の中でFDAは、子宮組織は診断されないがん種を含む可能性があり、電動モルセレータの使用はがんの播種を促進し長期予後に悪影響を及ぼすことを患者に情報提供すべきであることだけでなく、「50歳以上または閉経後症例への使用は禁忌であること、電動モルセレータを使用する際には必ず回収バッグを使用すること」を推奨しています。当通知が本邦での電動モルセレータ使用に大きな影響を与えることが予想されたため、本会会員に対し腹腔鏡の子宮摘出術と子宮筋腫核出術の電動モルセレータ使用について緊急アンケートを行い各施設の実態把握を行いました。その結果(集計結果参照)を学会ホームページへ掲載すると共に、「電動モルセレータ使用と組織回収バッグの使用について」の見解を示します。

本会会員におかれましては、留意点を改めて認識いただき、患者様への対応に際し適切な運用を行う様お願いいたします。

令和3年12月24日

一般社団法人日本産科婦人科内視鏡学会

理事長

アンケート回答を得られた施設での集計結果

◆ アンケート対象施設:当学会会員(2020年11月時点)

◆ 調査対象期間:2017年~2019年の3年間

◆ 回答施設数:302施設(施設の重複を省き集計)

(1) 手術内容別実数

1) 子宮全摘出術:88,167例

2) 子宮筋腫核出術:32,258例

(2) 術前検査実施状況

1) 超音波検査:子宮全摘出術99.3%子宮筋腫核出術99.3%

2) MRI検査:子宮全摘術98.7%子宮筋腫核出術99.3%

3) 子宮頸部細胞診:子宮全摘術99.4%子宮筋腫核出術83.6%

4) 子宮体部細胞診:子宮全摘術72.5%子宮筋腫核出術45.3%

5) 血清LDH測定:子宮全摘術83%子宮筋腫核出術84.2%

(3) 電動モルセレータ使用状況

電動モルセレータは、腹腔鏡下筋腫核出術においては54.8%(2014年80.4%)、腹腔鏡下子宮摘出術および腟上部切断術においては、4.6%(2014年8.9%)の症例で使用されており、2014年アンケートより使用頻度が減少している。

(4) バッグ使用の実態

バッグを用いた子宮筋腫および子宮組織の回収をおこなっているかどうかについては、使用していない27.5%、使用している53.6%、症例に応じて使い分けをしている18.9%であった。

(5) 術前に子宮筋腫の診断で手術が施行された120,425例のうち、悪性疾患は110例(0.09%)で認められた。

(6) 術式別に悪性疾患が認められた症例数

1) 開腹子宮全摘出術:39,251例中29例(0.07%)

2) 開腹子宮筋腫核出術:9,024例中7例(0.08%)

2) 腹腔鏡下子宮全摘出術:48,916例中65例(0.13%) (うちモルセレータ使用例2,265例・4.63%)

3) 腹腔鏡下子宮筋腫核出術:19,853例中7例(0.04%) (うちモルセレータ使用例10,877例・54.79%)

4) 腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術:3,381例中2例(0.06%)

(7) 腹腔鏡下手術において、術後悪性および播種が診断された症例数

1) 術後悪性全体:110例(開腹手術36例、腹腔鏡手術74例)

2) 悪性腫瘍の播種:14例(開腹手術4例、腹腔鏡手術10例)

3) 術後悪性と診断された方の平均年齢は、開腹子宮全摘術55.6歳、開腹子宮筋腫核出術35.3歳、腹腔鏡下子宮筋腫核出術(補助下含む)37.8歳、腹腔鏡下子宮全摘出術(腟上部切断術含む)50.7歳であった。

(8) 術前インフォームドコンセント(IC)実施状況

電動モルセレータによる播種のリスクについてICを実施しているのは260施設中241(92.7%)であった。

(9) 50歳以上の子宮筋腫と診断した症例に対し電動モルセレータを使用することの実態

50歳以上の症例において電動モルセレータを使用する際には、ICの上使う25%、症例に応じて考える17%という対応であり、使用しない施設は55%であった。「50歳以上の症例において電動モルセレータを使用すべきでない」勧告が出た場合、従うと回答した施設は38%であった。

(10) 電動モルセレータを使用する際、子宮筋腫組織の回収にバッグ使用が義務付けられた場合の対応

電動モルセレータを使用する際、子宮筋腫組織回収にバッグ使用を義務付けられた場合、バッグ使用に切り替える28%、バッグ使用し腹腔鏡下子宮筋腫核出術をおこなうことを継続63%と、大半の施設はバッグ使用でも腹腔鏡下子宮筋腫核出術をおこなうと回答したが、8%の施設は腹腔鏡下子宮筋腫核出術の実施を止めると回答した。

電動モルセレータ使用についての見解

子宮筋腫の術前診断で手術を行い、術後に始めて悪性と判明する頻度は、モルセレータを用いる頻度の比較的高い(54.8%使用)腹腔鏡下子宮筋腫核出術で19,853例中7例、0.04%(平均年齢 37.8歳)でありました。なお、悪性と診断された7例中1例に播種が起こっています。この播種例にはモルセレータが使用されていました。一方、モルセレータを用いる頻度の比較的低い(4.6%使用)腹腔鏡下子宮全摘術(腹腔鏡補助下子宮全摘術、腟上部切断術を含む)において術後に始めて悪性と判明する頻度は48,916例中65例、0.13%(平均年齢 50.7歳)でしたが、うち9例に播種(全体の0.009%)が起こっています。すなわちわが国では、モルセレータを用いる頻度の高い腹腔鏡下子宮筋腫核出術において、子宮筋腫の術前診断で手術を行いながら術後に始めて悪性と判明する頻度は米国FDAの発表より極めて低いことがわかりました。本統計は2014年におこなったアンケートとほぼ同様な傾向を示しており、術後悪性と判明する頻度が米国と比べ低い理由は、わが国ではMRI検査、超音波検査、細胞診、血清LDH測定などの術前検査により悪性疾患の除外診断が的確に行われているためと考えます。しかしながら、術後にはじめて悪性と判明する症例があること、子宮肉腫以外の悪性疾患が術後に判明している例もみられること、さらに現時点では電動モルセレータの使用が播種の原因になっているとは断言できないものの、電動モルセレータ使用後の播種例があることが分かりました。電動モルセレータは、腹腔鏡下筋腫核出術においては54.8%(2014年80.4%)、腹腔鏡下子宮摘出術および腟上部切断術においては、4.6%(2014年8.9%)の症例で使用されており、2014年アンケートより使用頻度が減少していますが、バッグを用いた子宮筋腫および子宮組織の回収は、今回アンケートにおいて使わない、と回答した83施設を除き、何らかの形で組織回収バッグを使っていることも明らかになっていますので、日本においては電動モルセレータ使用時においても十分な注意を自発的に図っていることが推察されます。

腹腔鏡下手術はその侵襲の小ささから、痛みが少ない、社会復帰が早いなどのメリットを持っており、モルセレータはそのメリットをいかすための機器であります。モルセレータを使用しない場合は、創部が一部大きくなり、腹腔鏡手術のメリットを生かせない可能性が生じます。バッグを使用して電動モルセレータを使用した場合のメリットについては未だ知見が不足しています。バッグ使用下に子宮筋腫を体外回収した場合とバッグ非使用で電動モルセレータを使用した場合の違いを検討したランダム化比較試験のメタ解析1)によると、前者は手術時間がやや長くなる以外に両群に差異がみられず、有益であるかどうかの結論が得られておりません。術後に悪性疾患が見られる頻度が少ないことがその原因と考えられます。しかし悪性疾患に対し電動モルセレータを使用すると、病変の飛散は一定頻度で生じているため、モルセレータの使用が万が一予後を悪くするとすれば看過することができないことも事実であります。開腹、腹腔鏡の術式を問わず、100%確実な術前診断は不可能であるものの、術前検査で可能な限り病変の良悪性について検討することは重要といえます。

アンケート結果や以上の見解を踏まえ、今後も引き続き低侵襲手術のメリットを生かすために、術前検査で子宮頸がん、子宮体がん、子宮肉腫など悪性疾患の除外に努めると共に、以下の基準のとおり、被実施者へインフォームドコンセントをさらに徹底し、被実施者に十分な情報提供の実施と、被実施者自身の自己決定に基づき使用する事を勧告します。また、引き続き機器添付文書の【警告】【禁忌・禁止】【使用上の注意】を順守するようにしてください。

【電動モルセレータ使用に関する適応基準】

電動モルセレータ使用が適切と考えられる対象

1.術前検査(MRI検査、超音波検査、細胞診、組織診、血清LDH測定など)によって悪性の除外診断が適正に行われている場合。

2.被実施者へのインフォームドコンセントにより、開腹、腹腔鏡下を問わず100%確実な術前診断は不可能であり、想定されていなかったがん組織、とくに子宮肉腫を腹腔内に播種させるリスクがある可能性を被実施者が承諾され電動モルセレータ使用を希望された場合。

3.米国においては、年齢50歳以上または閉経後である被実施者は電動モルセレータ使用対象外であること、電動モルセレータ使用時には子宮および子宮筋腫組織の回収にバッグを使うことが義務付けられていることの説明を受けた上で、電動モルセレータ使用を希望された場合。

電動モルセレータ使用を避けるべき対象

1.術前検査(MRI検査、超音波検査、細胞診、血清LDH測定など)によって悪性又は悪性が疑われると判断された場合。

2.術前検査で悪性の可能性が低いと判断された場合でも、被実施者へのインフォームドコンセントにより、被実施者が電動モルセレータ使用を希望されない場合。

3.米国においては、年齢50歳以上または閉経後である被実施者は電動モルセレータ使用対象外であること、電動モルセレータ使用時には子宮および子宮筋腫組織の回収にバッグを使うことが義務付けられていることの説明を受けた上で、電動モルセレータの使用を希望されない場合。

1) Zullo Fら In‐bag manual versus uncontained power morcellation for laparoscopic myomectomy. Cochrane Database Syst Rev. 2020 May 6;5(5):CD013352.

学会として今後追加的に進める調査等に付いて

*電動モルセレータ使用の適切な使用に関しては、庶務・COI・組織委員会、調査普及委員会で対応する。

1.国内外において学会発表・論文発表を行う。

2.電動モルセレータおよび回収バッグ使用の前向き調査をおこなうことで、本邦での実態追跡を実施する。

3.被実施者への不利益につながらない様、厚生労働省、企業との情報共有化を図り電動モルセレータのリスク軽減に努める。

4.学会編ガイドラインのブラッシュアップ、又は追補対応を行う。