添付一覧
○「健康保険組合の事業運営について」の一部改正について
(令和3年12月22日)
(保発1222第4号)
(健康保険組合理事長あて厚生労働省保険局長通知)
(公印省略)
健康保険組合の事業運営については、「健康保険組合の事業運営について」(平成19年2月1日保発第0201001号(以下「通知」という。))により取り扱ってきたところである。
今般、通知別紙2「健康保険組合事業運営指針」(以下「指針」という。)の一部を改正し、令和4年1月1日から適用することとしたので通知する。
記
改正理由
「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第66号)の施行に伴い、傷病手当金の支給期間が通算化されることとなったため、指針第2の1【一部負担還元金及び付加給付の基準】の傷病手当金付加金の支給期間欄等について、必要な見直しを行う。また、その他所要の改正を行う。
[様式ダウンロード]
[参考]
別紙2
健康保険組合事業運営指針
第1 本指針の趣旨
本指針は、健康保険組合(以下「組合」という。)の事業運営のうち組合の判断で実施するものについて適正な事業運営が確保されるよう、事業運営に当たっての基本的考え方や適正水準、望ましい事業の例、事業に当たり留意すべき点など、組合の事業運営の指針となる事項を示すものである。
第2 一部負担還元金及び付加給付
1 一部負担還元金及び付加給付については、コスト意識の喚起、受診する者としない者との負担の均衡、他の医療保険制度との均衡等の点に留意し、組合の財政状況を十分勘案した上で、次表の範囲に留めることを基本として実施すること。
【一負担還元金及び付加給付の基準】
区分 |
支給期間 |
支給額 |
一部負担還元金 |
― |
診療報酬明細書又は調剤報酬明細書各1件(医療機関の処方箋に基づき薬局で薬剤の支給が行われた場合は、診療報酬明細書と調剤報酬明細書とを合算して1件とみなすこと。)について支払った一部負担金の額(高額療養費(同一月において、被保険者若しくはその被扶養者の支払った一部負担金等の額を合算することにより支給される高額療養費(以下「合算高額療養費」という。)を除く。以下同じ。)が支給される場合にあっては、一部負担金の額から高額療養費に相当する額を控除して得た額)から25,000円を控除して得た額 |
訪問看護療養費付加金 |
訪問看護療養費を支給している期間 |
訪問看護療養費明細書1件について、健康保険法(大正11年法律第70号。以下「法」という。)第88条第4項に規定する厚生労働大臣の定めるところにより算定した費用の額から訪問看護療養費に相当する額(高額療養費が支給される場合にあっては、訪問看護療養費に相当する額に高額療養費に相当する額を加えて得た額)を控除して得た額から25,000円を控除して得た額 |
家族訪問看護療養費付加金 |
家族訪問看護療養費を支給している期間 |
訪問看護療養費明細書1件について、法第88条第4項に規定する厚生労働大臣の定めるところにより算出した費用の額から家族訪問看護療養費に相当する額(高額療養費が支給される場合にあっては、家族訪問看護療養費に相当する額に高額療養費に相当する額を加えて得た額)を控除して得た額から25,000円を控除して得た額 |
傷病手当金付加金 |
傷病手当金の支給期間 |
労務不能の日1日につき、第99条第2項本文の規定による傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額又は同項ただし書各号に掲げる額のうちいずれか少ない額の85/100に相当する額(以下「傷病手当金付加金基準額」という。)から傷病手当金の額を控除した額。 |
傷病手当金の支給期間経過後、通算して1年6月 |
労務不能の日1日につき、傷病手当金付加金基準額 |
|
出産手当金付加金 |
出産手当金の支給期間 |
労務に服しない日1日につき、法第102条第2項において準用する法第99条第2項本文の規定による出産手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額又は法第102条第2項において準用する法第99条第2項ただし書各号に掲げる額のうちいずれか少ない額の85/100に相当する額から出産手当金の額を控除した額 |
埋葬料付加金 |
埋葬料に相当する額。ただし、被保険者と生計維持のない者に支給する場合は、埋葬料と埋葬料付加金とを合算した額が埋葬に要した費用を超えないこと |
|
家族埋葬料付加金 |
家族埋葬料に相当する額 |
|
出産育児一時金付加金 |
出産育児一時金に相当する額 |
|
家族出産育児一時金付加金 |
家族出産育児一時金に相当する額 |
|
家族療養費付加金 |
家族療養費を支給している期間 |
診療報酬明細書または調剤報酬明細書各1件(医療機関の処方箋に基づき薬局で薬剤の支給が行われた場合は、診療報酬明細書と調剤報酬明細書とを合算して1件とみなすこと。)について、療養(食事療養及び生活療養を除く。)に要する費用の額から家族療養費に相当する額(高額療養費が支給される場合にあっては、家族療養費に相当する額に高額療養費に相当する額を加えて得た額)を控除して得た額から25,000円を控除して得た額 |
合算高額療養費付加金 |
各診療月について、被保険者若しくはその被扶養者の支払った一部負担金等の額に相当する額から合算高額療養費に相当する額を控除して得た額から、原則として当該被保険者又はその被扶養者1人につき、それぞれ25,000円を控除して得た額 |
(注) 上記表中の控除額(25,000円)については、高額療養費における自己負担限度額設定(上位所得者区分及び一定額の医療費を超える部分の1%の設定)の趣旨を踏まえ、適切な額とすること。
2 傷病手当金付加金については、法第103条第1項又は法第108条第1項若しくは第3項から第5項までの規定により傷病手当金の全部又は一部の支給が行われない場合であっても、傷病手当金の全部又は一部の支給があったものとみなして支給を行うことができること。なお、この場合における支給額の考え方は次のとおりであるが、傷病手当金付加金と受けることができる報酬、出産手当金(出産手当金付加金を支給する場合においては、出産手当金付加金を含む。)、障害厚生年金又は老齢退職年金給付とが重複しないよう留意すること。
(1) 法第103条第1項に該当する場合
出産手当金の支給を受けなければ支給を受けることができた傷病手当金の額と傷病手当金付加金の合計額(傷病手当金の支給期間経過後の労務不能期間につき傷病手当金付加金を支給する場合においては、その傷病手当金付加金の額)から当該出産手当金の額(出産手当金付加金を支給する場合においては、当該出産手当金と当該出産手当金付加金の合計額)を控除して得た額とすること。
(2) 法第108条第1項に該当する場合
報酬を受けなければ支給を受けることができた傷病手当金と傷病手当金付加金の合計額(傷病手当金の支給期間経過後の労務不能期間につき傷病手当金付加金を支給する場合においては、その傷病手当金付加金の額)から受けることのできる報酬の額を控除して得た額(同時に後記3に該当する場合は、当該控除して得た額から後記3の規定により算定した額を控除して得た額)とすること。
(3) 法第108条第3項に該当する場合
厚生年金保険法による障害厚生年金の支給を受けなければ支給を受けることができた傷病手当金と傷病手当金付加金の合計額(傷病手当金の支給期間経過後の労務不能期間につき傷病手当金付加金を支給する場合においては、その傷病手当金付加金の額)から以下に掲げる額のうちいずれか多い額を控除して得た額とすること。
① 法第108条第3項の規定により算定された当該障害厚生年金の額
② 報酬の全部又は一部の額
③ 法第102条第2項において準用する法第99条第2項の規定により算定される額(出産手当金付加金を支給する場合においては、当該額と出産手当金付加金の額の合計額)
(4) 法第108条第4項に該当する場合
傷病手当金付加金の全額とすること。ただし、同時に報酬の全部若しくは一部又は出産手当金の支給を受ける場合(法第108条第2項ただし書の規定により同項ただし書に規定する報酬の額と同項ただし書の規定により算定される出産手当金の額との合算額の支給を受ける場合を含む。)は、前記2(1)又は(2)の取扱いに準じること。
なお、傷病手当金の支給期間経過後の労務不能期間において傷病手当金付加金を支給する場合は、障害手当金から当該障害手当金の支給を受けなければ支給を受けることができた傷病手当金の額を控除した額に当該傷病手当金付加金の額が達するまでの間当該傷病手当金付加金は支給しないこと。
(5) 法第108条第5項に該当する場合
老齢退職年金給付の支給を受けなければ支給を受けることができた傷病手当金と傷病手当金付加金の合計額(傷病手当金の支給期間経過後の労務不能期間につき傷病手当金付加金を支給する場合においては、その傷病手当金付加金の額)から法第108条第5項の規定により算定された当該老齢退職年金給付の額を控除して得た額とすること。
3 出産手当金付加金については、法第108条第2項の規定により出産手当金の支給が行われない場合であっても、出産手当金の支給があったものとみなして、支給を行うことができること。この場合における出産手当金付加金の額は、報酬を受けなければ支給を受けることができた出産手当金と出産手当金付加金の合計額から受けることができる報酬の額を控除して得た額とすること。
第3 保健事業及び福祉事業
1 保健事業
組合の保健事業については、法の規定に基づき定められた「健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針(厚生労働省告示第308号)」及び健康増進法(平成14年法律第103号)の規定に基づき定められた「健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針(厚生労働省告示第242号)」に基づき実施するほか、以下に示す事項についても留意し、適切に実施すること。
(1) 実施体制の整備
保健事業の推進を図るため、実施体制の整備・確立を図ること。
① 健康管理事業推進委員会の設置
保健事業の中長期にわたる企画立案、実施計画の策定、実施結果の分析、評価を行い、理事会に対し意見の提出を行うために健康管理事業推進委員会若しくはこれに類する機関を設置すること。
なお、健康管理事業推進委員会は、事業主及び被保険者のほか、医師、保健師等の専門的知識を有する者及び組合事務局職員により構成するよう努めること。
② 健康管理委員の委嘱
各職場ごとに健康管理に関する情報、知識等を広く被保険者等に周知し、保健事業の有効かつ円滑な実施を図るため、被保険者の中から健康管理委員を委嘱すること。なお、健康管理委員に対しては、その資質の向上を図るため、定期的に研修、教育の機会を設けること。
(2) 保健事業の種類
保健事業の具体的内容を例示すると、次のとおりであること。
① 健康教育に関するもの
ア 健康の自己管理及び増進についての健康教育
機関誌、パンフレット、ポスター、講習会等による広報、健康者表彰及び優良事業所表彰、健康強調月間等の実施
イ 健康手帳の配布
受診心得、健康管理の記録等を内容とする健康手帳の配布
ウ 保健衛生に関する指導
環境衛生、口腔衛生、精神衛生、母子衛生、栄養指導、エイズ予防等についての保健師による指導や機関誌、講習会等による啓発
エ 心の健康づくり
一般の健康相談等に合わせ精神面における健康の保持増進を図るための健康教育、健康相談
② 健康相談に関するもの
ア 保健師等による健康相談
イ 健康に関する実態の把握及びそれに基づく相談、助言
加入者の健康状態、入院等の状況の把握及びそれに基づく保健師等による適切な相談、助言
③ 健康診査に関するもの
ア 健康診査
(ア) 一般健康診査
(イ) 消化器、循環器、糖尿病等の成人健康診査
(ウ) 胃がん、子宮がん、大腸がん、乳がん等のがん検診
(エ) 要精密検査者等に対する精密検査
(オ) 歯科検診、口腔検診
(カ) 人間ドック
(キ) 骨粗しょう症検診
(ク) 肝炎ウィルス検査
イ 各種健康診査実施後の個人別健康管理台帳の作成及びデータの管理
ウ 保健師等による健康診査後の保健指導
エ 疾病予防等
(ア) インフルエンザ等の各種予防接種
(イ) 救急常備薬の配布等
④ 体力・健康づくり
ア 健康体操、トリム運動、体力測定や各種スポーツ、レクリエーションによる体力づくり事業
イ 健康増進施設における有酸素運動、温泉利用等による健康増進の事業
⑤ 固定施設等
保養所、体育館、運動場、健康増進施設、健康管理センター、保健会館、山の家、海の家等の設置運営
⑥ 一般広報
医療保険制度の仕組み、組合の事業計画、財政状況、将来計画等についての機関誌やパンフレット等による一般広報
(3) 保健事業の実施上の留意点
① 労働安全衛生法に基づく事業との関係
労働安全衛生法に基づく事業は労働災害防止の観点から行われるものであり、被保険者の全般的な健康の保持増進については、組合が保健事業として積極的に実施すること。
② 保健事業を共同実施する場合
保健事業を事業主又はその他の機関と共同して実施するときは、必要に応じ費用を分担し公平の確保を図ること。なお、その場合、共同実施した事業の内容や費用分担等を明確にした関係書類を整備・保管すること。
③ 健康診査
ア 成人健康診査については、生活習慣病の発症が多い30歳から、少なくとも5年に1回以上行うものとし、40歳以降は毎年実施するよう努めること。
また、人間ドックについては、40歳以降少なくとも5年に1回以上は実施するよう努めること。
イ 子宮細胞診検査については、子宮がん発見の効率的時期を考慮し、35歳以降毎年実施するよう努めること。
ウ C型肝炎ウィルス検査については、自身のウィルス感染の状況を認識するきっかけとするため、40歳以上を対象に生涯に一度ウィルス検査を実施するよう努めること。また、B型肝炎ウィルス検査についても、C型肝炎ウィルス検査と同時に実施するよう努めること。
④ 保健事業の一般開放
保養所等の保健施設については、被保険者等の利用に支障が生じない範囲で、退職者や地域住民等に利用させることも差し支えないこと。
2 福祉事業
組合の福祉事業については、以下に示す事項について留意し、適切に実施すること。
(1) 福祉事業の種類
福祉事業を例示すると、次のとおりであること。
① 病院・診療所・薬局の設置運営
② 訪問看護ステーションの設置運営
③ 介護老人保健施設の設置運営
④ 高額医療費貸付事業
⑤ 出産費貸付事業
⑥ 在宅療養のための機器・用品の支給、貸与
⑦ 在宅療養の環境整備のために貸付事業
(2) 福祉事業の実施上の留意点
貸付事業の実施に当たっては、適正な事業運営が確保されるよう、貸付方法等に関する規程を整備すること。
第4 共同事業
被扶養者に対する保健事業など個別の組合で実施するより複数の組合や他の保険者等と共同して実施することが効果的・効率的な事業については、共同して事業を実施することも差し支えないこと。
なお、共同事業として適当なものを例示すると、次のとおりであること。
① 健康管理に関する広報、教育の実施
② 健康保険制度に関する広報の実施
③ 健康診査の実施
④ 保健師等による保健指導及び健康相談
⑤ 保養所等保健施設の共同利用
第5 保険給付の適正化
組合は、保険給付に要する費用の支出の適正化を図り、財政の健全化を図るため、保険給付の適正化に資する事業を実施することが望ましいこと。
保険給付の適正化に資する事業を例示すると、次のとおりであること。
① 医療費通知
② 診療報酬明細書、調剤報酬明細書及び訪問看護療養費明細書の事後点検
《点検内容の例示》
ア 受給資格
イ 重複請求
ウ 業務上傷病(通勤途上災害によるものを含む。)
エ 交通事故等第三者行為による傷病
③ 傷病手当金の適正支給の確認
④ 被保険者証の検認
⑤ 後発医薬品の使用促進
《内容の例示》
ア 後発医薬品希望カードの配布
イ 周知・広報
パンフレット配布、ポスター掲示等
ウ 後発医薬品使用に伴う自己負担額の軽減にかかる内容の周知
⑥ 柔道整復師に係る療養費の適正化
《内容の例示》
ア 審査
イ 多部位、長期または頻度が高い施術である支給申請書の被施術者に対する負傷原因調査
ウ 医療費通知
エ 周知・広報
⑦ レセプト情報や特定健診・特定保健指導の実施結果による電子情報を活用した情報分析や被保険者・被扶養者に対する情報提供
第6 その他
1 保険料額の負担割合
法第162条に基づき事業主の保険料額の負担割合を増加させる場合は、組合の民主的運営が、事業主と被保険者が相互扶助の精神に基づき組合の事業費用を共同して負担することにより確保されることにかんがみ、少なくとも、法定給付費、前期高齢者納付金、後期高齢者支援金、病床転換支援金、日雇拠出金及び退職者給付拠出金に要する費用(関係事務費拠出金を含み、前期高齢者交付金がある場合には当該交付金相当額を控除した額とする。)の2分の1以上は、被保険者の負担とすることが望ましいこと。
2 統計資料の整備
効率的・効果的な事業運営を行うための基礎資料として各種統計を整備し、その活用に努めること。