添付一覧
○変異原性が認められた化学物質の取扱いについて
(令和3年11月25日)
(基発1125第13号)
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
(公印省略)
標記について、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第57条の4第1項の規定に基づき届出のあった化学物質及び同条同項の既存の化学物質として政令に定める化学物質のうち、有害性の調査の結果について学識経験者の意見を聴取し、変異原性試験の結果、強度の変異原性が認められる旨の意見を得たものについて、「変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」(平成5年5月17日付け基発第312号の3の別添1。以下「指針」という。)の対象物質に追加することとし、別添により関係事業者団体に対して、指針に基づく措置を講ずるよう周知していただきたい旨要請したところである。
ついては、貴職におかれても、管内の事業者に対して、別添の別紙1及び別紙2に掲げる化学物質を製造し、又は取り扱う際には、指針に基づく措置を講ずる等、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講ずるよう周知されたい。
別添
○変異原性が認められた化学物質の取扱いについて
(令和3年11月25日)
(基発1125第12号)
((別紙関係団体の長)あて厚生労働省労働基準局長通知)
(公印省略)
労働基準行政の運営につきましては、日頃から格段の御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
標記の件に関し、これまで、
1.労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第57条の4第1項の規定に基づき届出のあった化学物質(以下「届出物質」という。)のうち、変異原性試験の結果、強度の変異原性が認められる旨の意見を得たもの(合計1,037物質)
2.法第57条の4第1項の既存の化学物質として政令に定める化学物質(以下「既存化学物質」という。)のうち、有害性の調査結果等により、強度の変異原性が認められたもの(合計242物質)
については、「変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」(平成5年5月17日付け基発第312号の3の別添1。以下「指針」という。別添参照。)に基づく措置を講ずるよう、届出事業者及び関係団体に対して要請しているところです。
今般、「労働安全衛生法第57条の4第3項の規定に基づき新規化学物質の名称を公表する件」(令和2年厚生労働省告示第398号、令和3年厚生労働省告示第107号、第254号、第348号及び第391号)により、751物質の名称を公表したところですが、それらの化学物質のうち、別紙1に掲げる計15の届出物質について、学識経験者から、変異原性試験の結果、強度の変異原性が認められる旨の意見を得ました。
また、既存化学物質のうち、別紙2に掲げる2物質について、学識経験者から強度の変異原性が認められる旨の意見を得ました。
つきましては、貴団体におかれましても、傘下会員又は傘下事業場に対し、別紙1に掲げる届出物質又は別紙2に掲げる既存化学物質を製造し、又は取り扱う際には、指針に基づく措置を講ずる等、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講ずるよう周知いただきますようお願いします。
(別紙)
一般社団法人日本化学工業協会
一般社団法人日本化学品輸出入協会
化成品工業協会
農薬工業会
日本製薬団体連合会
日本製薬工業協会
[別添]
変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針
(平成5年5月17日付け労働省労働基準局長伺い定め)
平成5年5月17日
一部改正 平成18年3月9日
一部改正 平成24年12月11日
1 趣旨
この指針は、微生物を用いる変異原性試験、哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験等の結果から強度の変異原性が認められた化学物質(以下「変異原化学物質」という。)又は変異原化学物質を含有するもの(変異原化学物質の含有量が重量の1パーセント以下のものを除く。)(以下「変異原化学物質等」という。)を製造し、又は取り扱う作業に関し、当該変異原化学物質への暴露による労働者の健康障害を未然に防止するため、その製造又は取扱いに関する留意事項について定めたものである。事業者は、この指針に定める措置を講ずるほか、労働者の健康障害を防止するための適切な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 変異原化学物質による暴露を低減するための措置について
(1) 労働者への変異原化学物質による暴露の低減を図るため、当該事業場における変異原化学物質等の物性、製造量、取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を勘案し、必要に応じ、次に掲げる作業環境管理に係る措置、作業管理に係る措置その他必要な措置を講ずること。
イ 作業環境管理
(イ) 使用条件等の変更
(ロ) 作業工程の改善
(ハ) 設備の密閉化
(ニ) 局所排気装置等の設置
ロ 作業管理
(イ) 労働者が変異原化学物質に暴露されないような作業位置、作業姿勢又は作業方法の選択
(ロ) 呼吸用保護具、不浸透性の保護衣、保護手袋等の保護具の使用
(ハ) 変異原化学物質に暴露される時間の短縮
(2) (1)により暴露を低減するための装置等の設置等を行った場合には、次によること。
イ 局所排気装置等については、作業が行われている間、適正に稼働させること。
ロ 局所排気装置等については定期的に保守点検を行うこと。
ハ 変異原化学物質等を作業場外へ排出する場合は、当該物質を含有する排気、排液等による事業場の汚染を防止すること。
ニ 保護具については同時に就業する労働者の人数分以上を備え付け、常時有効かつ清潔に保持すること。また、送気マスクを使用させたときは、当該労働者が有害な空気を吸入しないような措置を講ずること。
(3) 次の事項について当該作業に係る作業規定を定め、これに基づき作業させること。
イ 設備、装置等の操作、調整及び点検
ロ 異常な事態が発生した場合における応急の措置
ハ 保護具の使用
3 作業環境測定について
(1) 変異原化学物質に係る作業が屋内で行われる場合であって、当該物質に関する作業環境測定手法が開発されているときには、定期に当該物質の性状に応じ作業環境測定基準、作業環境ガイドブック等を参考として作業環境測定を実施することが望ましいこと。
(2) 作業環境測定の結果及び結果の評価の記録を30年間保存するよう努めること。
4 労働衛生教育について
(1) 変異原化学物質等を製造し、又は取り扱う作業に従事している労働者及び当該作業に従事させることとなった労働者に対して、次の事項について労働衛生教育を行うこと。
イ 変異原化学物質の性状及び有害性
ロ 変異原化学物質による健康障害、その予防方法及び応急措置
ハ 局所排気装置その他の変異原化学物質への暴露を低減するための設備並びにそれらの保守及び点検の方法
ニ 保護具の種類、性能、使用方法及び保守管理
(2) 上記事項に係る労働衛生教育の時間は4時間以上とすること。
(3) (1)のイからニの全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該項目についての教育を省略して差し支えないこと。
5 危険有害性等の表示、通知等について
変異原化学物質等を譲渡し、又は提供する場合は、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第24条の14及び第24条の15の規定に準じて、容器又は包装に名称等の表示を行うとともに、相手方に安全データシート(以下「SDS」という。)の交付等により名称等の通知を行うこと。この場合、微生物等への強い変異原性を有することについて表示及び通知の内容に含めること。
6 変異原化学物質等の製造等に従事する労働者の把握について
変異原化学物質等を製造し、又は取り扱う作業に常時従事する労働者について、1年を超えない期間ごとに次の事項を記録すること。
イ 労働者の氏名
ロ 従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間
ハ 変異原化学物質により著しく汚染される事態が生じたときは、その概要及び講じた応急措置の概要
なお、上記の事項の記録は、当該記録を行った日から30年間保存するよう努めること。
別紙1 変異原性が認められた届出物質に関する情報一覧
変異原性が認められた届出物質
名称公表通し番号 |
名称公表年月日 名称公表告示番号 |
名称 |
構造式 |
性状 |
用途の例 |
|
5 |
28884 |
令和2年12月25日 厚生労働省告示第398号 |
4'―[2―(4―アミノフェノキシ)エトキシ][1,1'―ビフェニル]―4―アミン |
別添参照 |
固体 |
中間物 |
1 |
28894 |
[(1S)―1―イソシアナトエチル]ベンゼン |
別添参照 |
液体 |
合成樹脂原料 |
|
4 |
28984 |
4'―ニトロ[1,1'―ビフェニル]―4―オール |
別添参照 |
固体 |
中間物 |
|
3 |
28986 |
2―(4―ニトロフェノキシ)エチル=メタンスルホナート |
別添参照 |
固体 |
中間物 |
|
2 |
29022 |
2―(1―ブロモエチル)―1―フルオロ―3,4―ジメチルベンゼン |
別添参照 |
微黄色澄明の液体 |
医薬品 |
|
7 |
29108 |
令和3年3月26日 厚生労働省告示第107号 |
オキソランとN,N―ジエチルエタンアミンとトルエンとメタノールと[メチル=(2S)―1,3―オキサアジナン―2―カルボキシラートを主成分とする、水素と3―ベンジル=2―メチル=(2S)―1,3―オキサアジナン―2,3―ジカルボキシラートの反応生成物]の混合物 |
― |
無色透明液体 |
治験薬中間体 |
6 |
29209 |
1―[2―(ブロモメチル)―3―メチルフェニル]―4―メチル―1,4―ジヒドロ―5H―テトラゾール―5―オン |
別添参照 |
淡褐色固体 |
農薬の製造中間体 |
|
10 |
29252 |
令和3年6月25日 厚生労働省告示第254号 |
α―(1―アミノプロパン―2―イル(又は2―アミノプロピル))―ω―アミノポリ[オキシ(メチルエタン―1,2―ジイル)]・[(クロロメチル)オキシラン・4,4'―(プロパン―2,2―ジイル)ジフェノール重縮合物]重付加物と5,5―ジメチル―3,7―ジオキサ―1,9(2)―ビス(オキシラナ)―4,6(1,4)―ジベンゼナノナファンの混合物 |
― |
無色透明液体 |
自動車用接着剤 |
11 |
29278 |
(3―エチルフェニル)オキシランと(4―エチルフェニル)オキシランと2,2'―(1,3―フェニレン)ビス(オキシラン)と2,2'―(1,4―フェニレン)ビス(オキシラン)の混合物 |
― |
黄色液体 |
反応中間体 |
|
8 |
29403 |
(2Z)―2―フルオロ―3―(4―メトキシフェニル)プロパ―2―エノイル=クロリド |
別添参照 |
淡黄色固体 |
開発医薬品中間体 |
|
9 |
29411 |
6―[1―(1,3―ベンゾチアアゾール―2―イル)ヒドラジン―1―イル]ヘキサン―1―オール |
別添参照 |
粉末 |
中間物 |
|
13 |
29482 |
令和3年9月27日 厚生労働省告示第348号 |
5―(オキシラニルメトキシ)―3,4―ジヒドロキノリン―2(1H)―オン |
別添参照 |
無色透明液体 |
製造中間体 |
14 |
29595 |
3―ブロモ―2―(4―エチルフェノキシ)ピリジン |
別添参照 |
白色粉末 |
製造中間体 |
|
12 |
29598 |
2―ブロモ―4―フルオロ―1―ニトロ―3―(トリフルオロメチル)ベンゼン |
別添参照 |
黄色の結晶 |
機能性材料 |
|
15 |
29630 |
令和3年11月25日 厚生労働省告示第391号 |
2,2'―(ブタン―1,4―ジイル)ビス(オキシラン) |
別添参照 |
固体 |
製造中間体 |
(別添)
別紙1 変異原性が認められた届出物質の構造式
安衛法官報通し番号 |
構造式 |
安衛法官報通し番号 |
構造式 |
28884 |
28894 |
||
28984 |
28986 |
||
29022 |
29209 |
||
29403 |
29411 |
||
29482 |
29595 |
||
29598 |
29630 |
別紙2 変異原性が認められた既存化学物質一覧
化審法・安衛法官報公示整理番号 |
CAS No. |
名称 |
構造式等 |
常温の性状等(固体、液体、気体) |
用途 |
変異原性試験結果の概要 ※1 |
出典 |
|
1 |
2―1941,2―1955,2―2188 |
126―72―7 |
トリス(2,3,―ジブロモプロパン―1―イル)=ホスファート |
液体 分子量:698.00 融点:5.5℃ 沸点:544.2℃ |
― |
Ames試験最大比活性値 4.54×104(Rev/mg) |
・厚生労働省 ・化学工業日報社 |
|
2 |
3―407 |
6283―25―6 |
2―クロロ―5―ニトロアニリン |
固体 分子量:172.57 融点:120.5℃ 沸点:-℃ |
― |
Ames試験最大比活性値 1.07×103(Rev/mg) |
・厚生労働省 ・化学工業日報社 |
※1 各変異原性試験の判断基準
○ 微生物を用いる変異原性試験(Ames試験)において強い変異原性が認められるとする比活性値は、概ね1,000(revertants/mg)以上
○ ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験において強い染色体異常誘発性を示すと評価する濃度は、D20値が概ね0.01(mg/ml)以下
○ マウスリンフォーマTK試験では、いずれかの試験系で突然変異頻度が陰性対照の4倍、又は陰性対照より400×10-6を超えて増加している場合、強い陽性と判断
○ in vivo小核試験で陽性が出た場合には、強い陽性と判断