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○医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検について

(令和3年10月8日)

(/薬生薬審発1008第1号/薬生安発1008第1号/薬生監麻発1008第1号/)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知)

(公印省略)

近年、国内外において、サルタン系医薬品、ラニチジン、ニザチジン及びメトホルミン等から、発がん性物質であるニトロソアミン類が検出され、一部の製品が自主回収されています。

医薬品へのニトロソアミン類混入の原因としては、合成過程における生成、共用設備からの交叉汚染、回収溶媒や試薬中への混入、一部の包装資材の使用、保存時の生成等が考えられます。したがって、これまでニトロソアミン類が検出された医薬品以外の医薬品でもニトロソアミン類が混入している可能性は否定できず、また、その混入リスクを可能な限り低減することは重要であることから、今般、別添のとおり医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検の取扱いを定めました。

ついては、貴管下の製造販売業者に対して、原薬若しくは製剤の製造又は包装に係る製造業者、添加剤、試薬、容器施栓系等の供給業者及び原薬等国内管理人とも連携して、ニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検を行うよう御指導お願いいたします。

なお、本自主点検を円滑に行うために、別途、質疑応答集(Q&A)を策定することとしており、追って事務連絡を発出することを申し添えます。

(別添)

医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検

1.対象となる医薬品について

対象となる医薬品は、次の(1)及び(2)のとおりとする。ただし、ICH S9ガイドライン(抗悪性腫瘍薬の非臨床評価に関するガイドライン)の適用範囲において定義されている進行がんのみを適応症とする医薬品及び人の身体に直接使用されない医薬品は対象外とする。

(1) 化学合成された医療用医薬品、要指導医薬品及び一般用医薬品

(2) 生物製剤等のうち、以下のニトロソアミン類混入リスクの高いもの

・ 化学的に合成したフラグメントを含む生物製剤等であって、化学的に合成した有効成分と同等のリスク因子が存在するもの

・ ニトロソ化試薬を意図的に添加する工程を用いて製造されるもの

・ 特定の一次包装資材(ニトロセルロースを含有するブリスターパック等)を用いて包装したもの

2.自主点検の基本的な考え方について

(1) ニトロソアミン類の既知(潜在的リスクのあるものを含む)の混入原因(root causes)、混入リスク評価方法、分析方法開発の原則等については、EMA又はFDAのガイダンスを参照すること。

(2) 医薬品中に混入するニトロソアミン類の限度値については、以下のとおりとすること。

① 既知のニトロソアミン類が1種類確認された場合

N―ニトロソジメチルアミン(NDMA)、N―ニトロソジエチルアミン(NDEA)、N―ニトロソ―N―メチル―4―アミノ酪酸(NMBA)、N―ニトロソメチルフェニルアミン(NMPA)、N―ニトロソイソプロピルエチルアミン(NIPEA)、N―ニトロソジイソプロピルアミン(NDIPA)、メチルニトロソピペラジン(MeNP)、N―ニトロソジブチルアミン(NDBA)及びN―ニトロソモルホリン(NMOR)の限度値は、表に示した許容摂取量を適用すること。

ニトロソアミン類

許容摂取量(ng/日)

NDMA

96.0

NDEA

26.5

NMBA

96.0

NMPA

34.3

NIPEA

26.5

NDIPA

26.5

MeNP

26.5

NDBA

26.5

NMOR

127

※げっ歯類のTD50値(腫瘍発生率が50%となる用量)等から算出。10万分の1という理論上の発がんリスクに相当する変異原性不純物の1日摂取量。

② 新規のニトロソアミン類が1種類確認された場合

げっ歯類を用いたがん原性試験データが存在する場合はICH M7(R1)を参考に一生涯曝露を想定した限度値を設定する等、がん原性試験データを利用出来ない場合は構造活性相関又は遺伝毒性試験に基づき限度値を設定する等、科学的に妥当な方法で限度値を設定すること。

③ 2種類以上のニトロソアミン類が確認された場合

10万分の1という発がんリスクを超えないよう、科学的に妥当な方法で限度値を設定すること。例えば、以下の2つの方法が考えられる。

・ 検出された全てのニトロソアミン類の1日摂取量の合計が、検出されたニトロソアミン類の中で最も強い発がん性を示すものの許容摂取量を超えないように設定する方法

・ 検出された全てのニトロソアミン類の発がんリスクの合計が、生涯過剰発がんリスクとして10万分の1を超えないように設定する方法

なお、上記②及び③で限度値を設定する際には、その妥当性について厚生労働省(専用メールアドレス:nitrosamines@mhlw.go.jp)に相談すること。

3.確認事項、実施期限等について

(1) 自社が製造販売する品目について、ニトロソアミン類の既知の混入原因を参考に、ニトロソアミン類の混入リスクを令和5年4月30日までに評価すること。

(2) 上記(1)の結果、ニトロソアミン類の混入リスクのある品目について、当該医薬品に含まれるニトロソアミン類の量を適切なロット数にて測定すること。なお、限度値を超えるニトロソアミン類の混入が確認された品目については、速やかに監視指導・麻薬対策課に報告すること。

(3) 上記(2)の結果、限度値を超えるニトロソアミン類の混入が確認された品目については、規格値の設定、ニトロソアミン類の量を低減するための製造方法の変更等のリスク低減措置を講じること。上記(2)のニトロソアミン類の量の測定及び本項に示す措置は、令和6年10月31日までに行うこと。なお、措置に伴い一部変更承認申請又は軽微変更届出が必要な場合は当該申請又は届出を令和6年10月31日までに行うこと。

4.承認申請中又は承認申請前の品目について

(1) 製造販売の承認申請(ニトロソアミン類の混入リスク評価が必要な一部変更承認申請を含む。)中の品目及び令和5年4月30日までに承認申請を行う品目については、以下のとおりとする。

① 3(1)と同様のリスク評価を可能な限り行うこと。なお、令和5年4月30日までに承認申請する場合は、3(1)のリスク評価に先立ち承認申請を行うことは差し支えない。

② 3(1)の評価の結果、混入リスクがある場合には、3(2)及び(3)の対応を行うこと。

③ 本対応は承認審査とは無関係の扱いとし、3(1)(令和5年4月30日までに承認を取得した場合)から(3)までの対応は承認後であっても差し支えない。ただし、既に混入リスクが特定されている成分(サルタン系医薬品、ラニチジン、ニザチジン、メトホルミン等)又は製造工程に既知のニトロソアミン類の生成・混入経路を有する品目については、承認審査においてリスク評価結果及びリスク低減措置の適切性を確認することとする。

(2) 令和5年5月1日以降に、承認申請を行う品目については、承認申請時までに3(1)のリスク評価を行うこと。なお、必要なリスク低減措置は令和6年10月31日までに行うこと。

なお、上記(1)及び(2)のいずれの場合においても、今後新たにリスクが特定された成分等について、リスク評価結果及びリスク低減措置に関する資料の提出を求める場合があるので留意すること。また、承認審査中に限度値を超えるニトロソアミン類の混入が確認された品目については、速やかに厚生労働省(専用メールアドレス:nitrosamines@mhlw.go.jp)及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、「PMDA」という。)の担当審査部に報告すること。

5.製造販売業者以外の業者の対応について

(1) 原薬若しくは製剤の製造又は包装に係る製造業者及び添加剤、試薬、容器施栓系等の供給業者は、ニトロソアミン類の混入リスクを評価し、製造販売業者に可能な限り情報提供を行う等、本自主点検に協力すること。

(2) 原薬等国内管理人は、原薬等登録原簿(MF)登録されている原薬等の製造業者に本通知に従い自主点検を実施させるとともに、遅滞なく適切に製造販売業者への情報提供を行うこと。また、3(3)のリスク低減措置を行う際には、製造販売業者が必要な一部変更承認申請又は軽微変更届出を行えるよう調整するとともに、速やかに必要なMF変更登録申請又は軽微変更届出を行い、製造販売業者への報告を行うこと。

6.その他

PMDAのホームページにおいて本自主点検の特設サイト(https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/0371.html)を公開し、関連情報を掲載しているので、適宜参照されたい。

参考情報:

○ EMAのガイダンス

・ Assessment report:Nitrosamine impurities in human medicinal products.

・ Questions and answers for marketing authorisation holders/applicants on the CHMP Opinion for the Article 5(3) of Regulation (EC) No 726/2004 referral on nitrosamine impurities in human medicinal products.

○ FDAのガイダンス

・ Guidance for Industry:Control of Nitrosamine Impurities in Human Drugs.

注:最新のガイダンスは、各規制当局のホームページで確認すること(EMA:https://www.ema.europa.eu/en/human-regulatory/post-authorisation/referral-procedures/nitrosamine-impurities、FDA:https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/information-about-nitrosamine-impurities-medications)。