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○確定拠出年金の拠出限度額の見直しについて(通知)

(令和3年9月27日)

(年企発0927第3号)

(地方厚生(支)局長あて厚生労働省年金局企業年金・個人年金課長通知)

(公印省略)

今般、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(令和3年厚生労働省令第159号)」が令和3年9月27日付けで公布されたところである。

また、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令(令和3年政令第229号。以下「整備等政令」という。)」が令和3年8月6日付けで、「確定拠出年金法施行令及び公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令の一部を改正する政令(令和3年政令第244号。以下「改正政令」という。)」と「確定拠出年金における他制度掛金相当額及び共済掛金相当額の算定に関する省令(令和3年厚生労働省令第150号。以下「算定省令」という。)」が同年9月1日付けで、それぞれ公布されたところである。

これらにより、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(令和2年法律第40号)」による確定拠出年金法(平成13年法律第88号。以下「DC法」という。)の一部改正並びに「令和2年度税制改正の大綱(令和元年12月20日閣議決定)」及び「令和3年度税制改正の大綱(令和2年12月21日閣議決定)」を受けた、確定拠出年金法施行令(平成13年政令第248号。以下「DC令」という。)及び確定拠出年金法施行規則(平成13年厚生労働省令第175号。以下「DC規則」という。)が一部改正されたこと等により、令和4年10月から、企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入する者について、企業型DCの事業主掛金と個人型確定拠出年金(個人型DC(iDeCo))の掛金との合算管理の仕組みを構築することで、企業型DC規約の定めや事業主掛金の上限の引下げがなくても、月額5.5万円(確定給付企業年金(DB)等の他制度(DBのほか、厚生年金基金、私立学校教職員共済制度及び石炭鉱業年金基金をいう。以下同じ。)にも加入する者は2.75万円)から各月の事業主掛金を控除した残余の範囲内で(ただし、月額2.0万円(同1.2万円)を上限)、iDeCoの掛金を各月拠出できるよう改善を図るとともに、令和6年12月から、企業型DCとiDeCoの拠出限度額の算定に当たって、全てのDB等の他制度の掛金相当額を一律評価している現状を改め、加入者がそれぞれ加入しているDB等の他制度ごとの掛金相当額の実態を反映し、企業型DCの拠出限度額は、月額5.5万円からDB等の他制度の掛金相当額(他制度掛金相当額)を控除した額とすること、iDeCoの拠出限度額は、月額5.5万円から事業主の拠出額(各月の企業型DCの事業主掛金とDB等の他制度掛金相当額とを合算した額)を控除した残余の範囲内(上限は月額2.0万円で統一)とすることによって、企業年金(企業型DC、DB等の他制度)に加入する者の拠出限度額について公平を図るものであるが、その全体像は別紙のとおりであるので、その内容につき御了知いただくとともに、実施に当たっては、周知徹底を図り遺漏のないよう取り扱われたい。

特に、DB等の他制度ごとの掛金相当額の算定と、その掛金相当額の企業型DCとiDeCoの拠出限度額への反映は、新たな取組であり、円滑な施行に向けて十分な説明と適切な指導を期せられたい。

また、参考資料を添付するので、併せて活用されたい。

なお、改正政令の施行に伴う関係省令の改正については、追って通知することとしている。

(別紙)

確定拠出年金の拠出限度額の見直しについて

第1 現行の企業型DCとiDeCoの拠出限度額の考え方と課題

これまで企業年金や個人年金に関する制度・税制が段階的に整備・拡充されてきた中で、働き方・勤め先の企業の違い等によって税制の適用関係が異なることや、各制度でそれぞれ非課税の拠出限度額の管理が行われているといった課題があり、より公平な仕組みとしていくことが求められている。

企業型DCの拠出限度額は、現行、月額5.5万円となっているが、DB等の他制度にも加入していると、そのDB等の他制度の給付水準・掛金水準にかかわらず、企業型DCの拠出限度額は月額2.75万円となっている。

企業型DCのみに加入する者と、企業型DCのみならずDB等の他制度にも加入する者との間で不公平が生じないよう、DB等の他制度にも加入する者の企業型DCの拠出限度額は、企業型DCの拠出限度額(月額5.5万円)からDB等の他制度に事業主が拠出する掛金相当額を控除する必要があるという基本的考え方に立っているが、この控除する掛金相当額については、制度創設検討当時の厚生年金基金の上乗せ部分の給付水準の平均から評価したもの(月額2.75万円)を一律で用いている。

また、iDeCoは、国民年金第1号被保険者と企業年金のない国民年金第2号被保険者のための制度として創設されたが、平成29年1月、企業年金(企業型DC、DB等の他制度)に加入する者、国家公務員共済組合及び地方公務員等共済組合の組合員、国民年金第3号被保険者まで加入可能範囲が拡大された。

その際、企業型DCに加入する者のiDeCoの拠出限度額は、企業型年金加入者掛金(いわゆるマッチング拠出)の拠出額の実態を勘案して、月額2.0万円とした。企業型DCのみに加入している場合の事業主掛金の拠出限度額は月額5.5万円で、マッチング拠出は事業主掛金を超えることはできないため、最大月額2.75万円となるが、マッチング拠出の実態の大半をカバーする水準の月額2万円を、同じく個人拠出であるiDeCoの拠出限度額とした。ただし、現行は、拠出限度額の管理を簡便に行うため、iDeCoの加入を認める企業型DC規約の定めがあって事業主掛金の上限を月額5.5万円から月額3.5万円に引き下げた場合に限った。

企業型DCのみならずDB等の他制度にも加入する者のiDeCoの拠出限度額は、これらの者のマッチング拠出の拠出額の実態を踏まえ、月額1.2万円とした。企業型DCの事業主掛金の拠出限度額が月額2.75万円となっている中で、マッチング拠出は事業主掛金を超えることはできないため、最大月額1.375万円となるが、マッチング拠出の実態の大半をカバーする水準の月額1.2万円を、同じく個人拠出であるiDeCoの拠出限度額とした。ただし、iDeCoの加入を認める企業型DC規約の定めがあって事業主掛金の上限を月額2.75万円から月額1.55万円に引き下げた場合に限った。

企業型DCに加入していないDB等の他制度のみに加入する者(国家公務員共済組合及び地方公務員等共済組合の組合員を含む。)のiDeCoの拠出限度額についても、この月額1.2万円を適用することとした。

以上のように、iDeCoの拠出限度額は、月額2.0万円(DB等の他制度にも加入する者は1.2万円)としたが、全体の拠出限度額があるため、この枠内に収める必要があるところ、事業主掛金の上限を月額3.5万円(同1.55万円)に引き下げることを要件とすることで、必ず全体の拠出限度額の枠内に収まることから、このような要件が設けられた。

この仕組みについては、事業主掛金が高い従業員が一部いること等により事業主掛金の上限の引下げは困難となっているため、ほとんど活用されていない現状にある。事業主掛金の上限を引き下げない限り、当該企業型DCの加入者全員がiDeCoに加入できないため、事業主掛金が低い従業員にとっては、拠出可能な枠に十分な残余があるにもかかわらず、iDeCoに加入できない状態となっている。

つまり、事業主掛金が高い従業員にとっては、仮にiDeCoに加入できる仕組みであっても、拠出限度額に残余がなく又は少なく、結果、iDeCoに加入できない又は加入しても十分な掛金拠出ができないが、こうした加入者が一部いることで、事業主掛金が低い従業員も含めてiDeCoには加入・拠出できない状態となっている。

一方、これまで述べたとおり、現行は、拠出限度額の管理を簡便に行うため、DB等の他制度の給付水準・掛金水準にかかわらず、全てのDB等の他制度の掛金相当額を月額2.75万円として一律評価し、DB等の他制度にも加入する者の企業型DCの拠出限度額は残りの月額2.75万円としているが、現在の制度数が1万件を超えるDBについてDBごとの掛金をみると、加入者1人当たりの標準掛金は月額2.75万円より低いDBが多く、DBの間で大きな差もある。

また、DB等の他制度にも加入する者のiDeCoの拠出限度額についても、全てのDB等の他制度の掛金相当額を月額2.75万円として一律評価していることを踏まえた設定となっており、一律評価している現行の仕組みは、企業型DCのみならず、iDeCoの拠出限度額の公平性の問題とも関連する課題となっている。

さらに、企業型DCに加入していないDB等の他制度のみに加入する者のiDeCoの拠出限度額については、DB等の他制度の給付水準・掛金水準にかかわらず一律となっており、企業年金(企業型DC、DB等の他制度)に加入する者の間でiDeCoの拠出限度額に差が生じている。

第2 企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和(令和4年10月1日施行)

第1の課題を踏まえ、今回の改正は、企業型DCに加入する者について、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金との合算管理の仕組みを構築することで、企業型DC規約の定めや事業主掛金の上限の引下げがなくても、月額5.5万円(DB等の他制度にも加入する者は2.75万円)から各月の事業主掛金を控除した残余の範囲内で(ただし、月額2.0万円(同1.2万円)を上限)、iDeCoの掛金を各月拠出できるよう、改善を図るものである。

また、現行は、事業主がマッチング拠出を導入している場合、当該企業の企業型DCに加入する者はマッチング拠出しか選択肢はなく、iDeCo加入を選択することはできないがiDeCo加入の要件緩和に併せて、マッチング拠出かiDeCo加入かを加入者ごとに選択できるようにするものである。

この見直しによって、企業型DCの事業主掛金が低い従業員がiDeCoを利用しやすくなるが、事業主の拠出額(各月の企業型DCの事業主掛金)が月額3.5万円(DB等の他制度にも加入する者は1.55万円)より高い者にとってはiDeCoの拠出限度額は月額2.0万円(同1.2万円)とはならないこと、iDeCoの掛金は個人型年金規約により月額0.5万円以上と定められていることから事業主の拠出額が月額5.0万円(同2.25万円)を超えるとiDeCoの掛金を拠出することができなくなり企業型DCへの資産の移換等も必要となること等には留意が必要である。

(見直しの具体的内容)

① 企業型DCのみに加入する者については、月額5.5万円から各月の事業主掛金を控除した残余の範囲内で(ただし、月額2.0万円を上限)、iDeCoの掛金を各月拠出できるものとすること。企業型DCのみならずDB等の他制度にも加入する者については、月額2.75万円から各月の事業主掛金を控除した残余の範囲内で(ただし、月額1.2万円を上限)、iDeCoの掛金を各月拠出できるものとすること。(DC令第11条及び第36条関係)

② 企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金については、平成30年1月から任意に決めた月にまとめて拠出(いわゆる年単位拠出)することも選択可能となっているが、この仕組みは任意性が高く、これを把握・管理してiDeCoの拠出限度額を管理しようとすると、iDeCoの拠出限度額の管理を行っている国民年金基金連合会の事務処理・システム対応が極めて複雑化するため、今回の要件緩和は、事業主掛金とiDeCoの掛金について、各月の拠出限度額の範囲内での各月拠出に限るものであること。企業型DCの事業主掛金が各月の拠出限度額の範囲内での各月拠出となっていない場合は、当該企業型DCの加入者はiDeCoに加入できないこと。(DC法第62条並びにDC令第11条の2、第34条の2、第35条及び第36条の2関係)

③ 企業型DCの事業主掛金が各月の拠出限度額の範囲内での各月拠出となっていない場合は、DC法第3条第3項第7号に掲げる事項として企業型DC規約に記載するとともに、企業型記録関連運営管理機関に通知すること。また、分かりやすさの観点から、企業型DCに加入する者がiDeCoに加入できるのかできないのかを企業型DC規約に記載するなど、加入者への周知に努めること。(DC規則第10条及び第11条並びにDC法第4条第3項関係)

④ 企業型記録関連運営管理機関等は、企業型DCの加入者向けのウェブサイトで、

・ 事業主掛金及び企業型年金加入者掛金の拠出の状況

・ DB等の他制度の加入者にあっては、その旨

・ 企業型DCの事業主掛金が各月の拠出限度額の範囲内での各月拠出となっていない場合、すなわち、当該企業型DCの加入者はiDeCoに加入できない場合は、その旨

・ 拠出することができると見込まれるiDeCoの掛金の額

等を表示するものとすること。企業型DCに加入する者がiDeCoの加入や変更等の申出をする際には、このウェブサイトで加入の要件等を確認するよう促すこと。(DC法第27条及びDC規則第21条の2関係)

⑤ 企業型DCを実施する事業主は、毎月末日における企業型DCに加入する者に関する情報(DB等の他制度に加入する者に該当するかの別を含む。)を翌月末日から起算して2営業日以内に、企業年金連合会を経由して国民年金基金連合会に通知しなければならないこと。記録関連業務を委託している場合は、この通知は、企業型記録関連運営管理機関を通じて、企業年金連合会を経由して行うものとすること。これらの通知は電磁的方法により行うものとすること。(DC規則第61条の2関係)

⑥ 企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金の合算は、基礎年金番号、生年月日及び性別を用いて行うことから、事業主は、企業型DCに加入する者の基礎年金番号、生年月日及び性別を適正に管理すること。

⑦ 企業型DCの事業主掛金の拠出額によっては、施行後、iDeCoの拠出限度額が小さくなることやiDeCoの掛金を拠出できなくなることがあるため、企業型DCに加入する者がiDeCoに新規加入する場合に留意が必要であることや、企業型DCに加入する者はiDeCoの拠出限度額内に収まるようにiDeCoの掛金の変更手続が必要となることについて、企業型DCを実施する事業主は、必要に応じて、企業型DCに加入する者に対して周知が必要であること。

第3 DB等の他制度掛金相当額の反映(令和6年12月1日施行)

1.DB等の他制度掛金相当額の反映に係る具体的内容

第2の内容に加え、企業型DCとiDeCoの拠出限度額の算定に当たって、全てのDB等の他制度の掛金相当額を一律評価している現状を改め、加入者がそれぞれ加入しているDB等の他制度ごとの掛金相当額の実態を反映し、

・ 企業型DCの拠出限度額は、月額5.5万円からDB等の他制度の掛金相当額(他制度掛金相当額)を控除した額とすること

・ iDeCoの拠出限度額は、月額5.5万円から事業主の拠出額(各月の企業型DCの事業主掛金とDB等の他制度掛金相当額とを合算した額)を控除した残余の範囲内(上限は月額2.0万円で統一)とすること

によって、企業年金(企業型DC、DB等の他制度)に加入する者の拠出限度額について公平を図る。

この見直しによって、DB等の他制度掛金相当額が月額2.75万円より低い者にとっては、企業型DCとiDeCoの拠出限度額が拡大することとなるが、拠出限度額について公平を図るための見直しであり、全ての者の企業型DCとiDeCoの拠出限度額が拡大するものではなく、事業主の拠出額(各月の企業型DCの事業主掛金とDB等の他制度掛金相当額)が月額3.5万円より高い者にとってはiDeCoの拠出限度額は月額2.0万円とはならないこと、iDeCoの掛金は個人型年金規約により月額0.5万円以上と定められていることから事業主の拠出額が月額5.0万円を超えるとiDeCoの掛金を拠出することができなくなり企業型DC等への資産の移換等も必要となること等には留意が必要である。

また、企業型DCに加入していないDB等の他制度のみに加入する者のiDeCoの拠出限度額は、これまでDB等の他制度の給付水準・掛金水準にかかわらず一律となっていたが、改正後はDB等の他制度掛金相当額によってはiDeCoの掛金を拠出することができなくなることから、給付水準が高い、すなわち、他制度掛金相当額が高いDBを実施する事業主におかれては、従業員のiDeCoの資産を受換することができるよう、DBの規約変更の検討をお願いする。

施行日については、全てのDB等において他制度掛金相当額を算定する必要があること等を踏まえ、施行までに十分な準備期間を確保し、令和6年12月1日とする。

見直しの具体的内容は以下のとおり。

(企業型DCの拠出限度額について)

① 企業型DCの拠出限度額については、月額5.5万円からDB等の他制度掛金相当額(同時に2以上の他制度に加入する場合にあっては、それぞれについて算定した額の合計額)を控除した額とすること。(DC令第11条関係)

② 施行の際現に事業主が実施する企業型DCの拠出限度額については、月額5.5万円からDB等の他制度掛金相当額を控除した額が2.75万円を下回るときは2.75万円と読み替えてDC令第11条第2号を適用することで、施行の際の企業型DC規約に基づいた従前の掛金拠出を可能とすること(旧制度(現行制度)の適用)。(改正政令附則第2項関係)

③ 施行の際、企業型DCを実施している事業主は、旧制度(現行制度)を適用することとなるが、施行の日以後に、当該事業主が企業型DC規約のうちDC法第3条第3項第7号に掲げる事項を変更する規約変更を行った場合その他厚生労働省令で定める場合に該当したときは、改正政令による改正後のDC令第11条第2号を適用すること(新制度の適用)。(改正政令附則第2項関係)

(iDeCoの拠出限度額について)

① 企業年金(企業型DC、DB等の他制度)に加入する者については、月額5.5万円から事業主の拠出額(各月の企業型DCの事業主掛金とDB等の他制度掛金相当額とを合算した額)を控除した残余の範囲内で(ただし、月額2.0万円を上限)、iDeCoの掛金を各月拠出できるものとすること。国家公務員共済組合及び地方公務員等共済組合の組合員については、月額5.5万円から事業主掛金に相当する額として算定する額(共済掛金相当額)を控除した残余の範囲内で(ただし、月額2.0万円を上限)、iDeCoの掛金を各月拠出できるものとすること。(DC令第36条関係)

② 今回の見直しは、これらの者について、iDeCoの掛金を上限2.0万円に統一した上で、各月の拠出限度額から事業主の拠出額を控除した残余の範囲内で各月拠出できるようにするものであり、iDeCoの掛金については、各月の拠出限度額の範囲内での各月拠出に限るものであること。引き続き、企業型DCの事業主掛金が各月の拠出限度額の範囲内での各月拠出となっていない場合は、当該企業型DCの加入者はiDeCoに加入できないこと。(DC令第34条の2、第35条及び第36条の2関係)

③ DB等の他制度掛金相当額とiDeCoの掛金の合算は、基礎年金番号、生年月日及び性別を用いて行うことから、確定給付企業年金を実施する事業主等、厚生年金基金及び石炭鉱業年金基金は、DB等に加入する者の基礎年金番号、性別及び生年月日を適正に管理すること。

④ DB等の他制度のみに加入する者の拠出限度額について、他制度掛金相当額の反映によって個人型年金規約で定めるiDeCoの掛金の最低額(0.5万円)を下回る場合、資産額が一定額以下である等の脱退一時金の要件を満たせば脱退一時金を受給できるものとすること。(DC法第62条及びDC令第34条の2関係)

⑤ DB等の他制度掛金相当額が高い場合には、施行後、iDeCoの拠出限度額が小さくなることやiDeCoの掛金を拠出できなくなることがあるため、DB等に加入する者がiDeCoに新規加入する場合に留意が必要であることや、DB等に加入する者はiDeCoの拠出限度額内に収まるようにiDeCoの掛金の変更手続が必要となることについて、事業主は、必要に応じて、DB等に加入する者に対して周知が必要であること。

2.他制度掛金相当額等の算定方法

(1) 他制度掛金相当額の算定方法

加入者がそれぞれ加入しているDB等の他制度ごとの掛金相当額の実態を反映するためには、給付建てのDB等の他制度について、確定拠出年金と比較可能な形で、DB等の他制度の掛金相当額を算定する必要がある。

他制度掛金相当額と共済掛金相当額の算定に関しては、算定省令の定めるところによる。他制度掛金相当額等の具体的な算定方法は以下のとおり。

(DBの加入者に係る他制度掛金相当額の算定方法)

① DB(リスク分担型企業年金を除く。)の加入者に係る他制度掛金相当額は、次の財政方式ごとの算定式により算定した額を月額換算した額とし、当該算定に当たっては、標準掛金の計算に用いた基礎率と同一の基礎率に基づいて算定すること。(算定省令第3条第1項及び第2項関係)

ア 「加入年齢方式」を財政方式としているDBの加入者に係る他制度掛金相当額はaに掲げる額をbに掲げる額で除した額を月額換算した額とすること。なお、ここでの標準的な加入者とは、算定省令第3条第1項第1号に規定する標準的な加入者として厚生労働大臣が認める者であり、特定の年齢で加入し、それ以降基礎率どおり推移する仮想的な加入者をいうこと。また、a及びbに掲げる額は加入時点での現価を指すものであること。

a 標準的な加入者に係る通常予測給付現価

b 標準的な加入者に係る人数現価

イ 「開放基金方式」を財政方式としているDBの加入者に係る他制度掛金相当額はaに掲げる額をbに掲げる額で除した額を月額換算した額とすること。なお、ここでの加入者となる者とは、計算基準日において、加入者ではないものの、年金数理上あらかじめ見込むべき加入者をいうこと。

a 現在の加入者に係る将来分の通常予測給付現価と加入者となる者に係る通常予測給付現価を合算した額

b 現在の加入者及び加入者となる者に係る人数現価

ウ 「閉鎖型総合保険料方式」を財政方式としているDBの加入者に係る他制度掛金相当額はaに掲げる額をbに掲げる額で除した額を月額換算した額とすること。

a 現在の加入者に係る将来分の通常予測給付現価

b 現在の加入者に係る人数現価

エ ア、イ及びウに規定している財政方式のいずれにも該当しない財政方式であるDBの加入者に係る他制度掛金相当額は、ア、イ及びウの算定方法に準じた算定方法として厚生労働大臣が認める算定方法により算定した額とすること。

② リスク分担型企業年金の加入者に係る他制度掛金相当額の算定に当たっては、アのa、イのa及びウのaにおける通常予測給付現価を調整前の通常予測給付現価に置き換えて、DB(リスク分担型企業年金を除く。)の加入者に係る他制度掛金相当額の算定方法を用いること。(算定省令第3条第3項関係)

ただし、算定に用いる基礎率はリスク分担型企業年金掛金額の標準掛金相当分を変更した直近の財政計算(リスク分担型企業年金を開始してから標準掛金相当分を変更していない場合は、リスク分担型企業年金を開始したときの財政計算)に用いた基礎率と同一とすること。

③ 簡易な基準に基づくDB又は通常の算定式での算定が困難であると厚生労働大臣が認めるDBの加入者に係る他制度掛金相当額は、直近の財政計算の計算基準日における当該財政計算の結果に基づく標準掛金額を当該財政計算の計算基準日における加入者数で除した額を月額換算した額とすること。(算定省令第4条関係)

④ 積立金が積立上限額を超え、掛金の控除を行う場合は、当該控除しなければならない額が零であるものとして算定すること。(算定省令第6条関係)

(私立学校教職員共済制度の加入者に係る他制度掛金相当額の算定方法)

私立学校教職員共済制度の加入者に係る他制度掛金相当額は、DBの加入者に係る他制度掛金相当額の算定方法に準じた方法により算定される額として厚生労働大臣が定める額とすること。(算定省令第7条第1号関係)

(石炭鉱業年金基金の坑内員等に係る他制度掛金相当額の算定方法)

石炭鉱業年金基金の坑内員等に係る他制度掛金相当額は、DBの加入者に係る他制度掛金相当額の算定方法に準じた方法により算定される額として厚生労働大臣が定める額とすること。(算定省令第7条第2号関係)

(厚生年金基金の加入員に係る他制度掛金相当額の算定方法)

① 厚生年金基金の加入員に係る他制度掛金相当額は、代行部分がないものとして、財政方式を「加入年齢方式」又は「開放基金方式」とするDBの加入者に係る他制度掛金相当額の算定方法と同様の算定方法により算定すること。(算定省令第8条関係)

なお、標準的な加入員とは、算定省令第8条第1項第1号に規定する標準的な加入員として厚生労働大臣が認める者であり、特定の年齢で加入し、それ以降基礎率どおり推移する仮想的な加入員をいうこと。また、「加入年齢方式」及び「開放基金方式」に該当しない財政方式である厚生年金基金の加入員に係る他制度掛金相当額は、「加入年齢方式」又は「開放基金方式」の算定方法に準じた算定方法として厚生労働大臣が認める算定方法により算定した額とすること。

② 積立金が積立上限額を超え、掛金の控除を行う場合は、当該控除しなければならない額が零であるものとして算定すること。(算定省令第9条関係)

(国家公務員共済組合の組合員に係る共済掛金相当額の算定方法)

国家公務員共済組合の組合員に係る共済掛金相当額は、DBの加入者に係る他制度掛金相当額の算定方法に準じた方法により算定される額として厚生労働大臣が定める額とすること。(算定省令第10条関係)

(地方公務員等共済組合の組合員に係る共済掛金相当額の算定方法)

地方公務員等共済組合の組合員に係る共済掛金相当額は、DBの加入者に係る他制度掛金相当額の算定方法に準じた方法により算定される額として厚生労働大臣が定める額とすること。(算定省令第10条関係)

(2) 他制度掛金相当額及び共済掛金相当額に係るその他の取扱い

① DBにおいて加入者が掛金の一部を負担している場合は、加入者が負担する掛金は零であるものとして算定すること。(算定省令第5条関係)

なお、DB以外の他制度については加入者が負担する掛金を含めて算定すること。

② 他制度掛金相当額及び共済掛金相当額は千円未満を四捨五入し、千円単位とすること。(算定省令第11条)

③ 他制度掛金相当額及び共済掛金相当額は、掛金の再計算及び費用の再計算を実施する度に再度算定すること。(算定省令第12条)

(3) 経過措置

令和6年12月1日前を計算基準日とする財政計算の結果に基づいて掛金の額を算定するDBの加入者又は厚生年金基金の加入員に係る他制度掛金相当額は、直近の財政計算の計算基準日における当該財政計算の結果に基づく標準掛金額(厚生年金基金の場合は免除保険料額を除く。)を当該財政計算の計算基準日における加入者数又は加入員数で除した額を月額換算した額とすることができること。(算定省令附則第2条)

ただし、リスク分担型企業年金において、令和6年12月1日以後を計算基準日とする財政再計算を行った場合、算定省令第3条第3項に基づく他制度掛金相当額の算定とすること。

3.その他

(1) DBにおける委託契約事項に関する規約変更に係る規定の見直し

DBを実施している事業主又は企業年金基金が確定給付企業年金法(平成13年法律第50号)第93条の規定により法人に業務を委託する場合の当該委託に係る契約のうち加入者等に関する情報の管理に係る業務に関する事項を変更することを目的とした規約変更について、現在は厚生労働大臣への届出が不要な軽微な変更とされているところ、厚生労働大臣への届出が必要な軽微な変更とすること。(確定給付企業年金法施行規則(平成14年厚生労働省令第22号)第10条第1号及び第18条第2号関係)