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○「再生医療等製品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のガイダンスについて

(令和3年7月30日)

(薬生機審発0730第1号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)

(公印省略)

再生医療等製品の臨床試験の実施の基準については、「再生医療等製品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成26年厚生労働省令第89号。以下「再生医療等製品GCP省令」という。)で定められ、その後「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令の整備等に関する省令」(令和2年厚生労働省令第155号)等により改正されたところです。

今般、改正後の再生医療等製品GCP省令が円滑に施行されるよう、その運用の参考となるガイダンスを別添のとおりとりまとめましたので、御了知の上、貴管下関係業者、医療機関等に対し周知いただきますよう御配慮願います。

なお、再生医療等製品GCP省令の規定に合致し、被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上が図られ、治験の科学的な質及び試験成績の信頼性が確保される場合には、本ガイダンス以外の適切な運用により治験を実施できることを申し添えます。

(別添)

「再生医療等製品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のガイダンス

策定:令和3年7月30日

再生医療等製品の臨床試験の実施の基準に関する省令の目次

第一章 総則

第一条 趣旨

第二条 定義

第三条 承認審査資料の基準

第二章 治験の準備に関する基準

第一節 治験の依頼をしようとする者による治験の準備に関する基準

第四条 業務手順書等

第五条 安全性試験等の実施

第六条 実施医療機関等の選定

第七条 治験実施計画書

第八条 治験製品概要書

第九条 説明文書の作成の依頼

第十条 実施医療機関の長への文書の事前提出

第十一条 治験製品の事前交付の禁止

第十二条 業務の委託

第十三条 治験の契約

第十四条 被験者に対する補償措置

第十五条 治験国内管理人

第二節 自ら治験を実施しようとする者による治験の準備に関する基準

第十六条 業務手順書等

第十七条 安全性試験等の実施

第十八条 治験実施計画書

第十九条 治験製品概要書

第二十条 説明文書の作成

第二十一条 実施医療機関の長への文書の事前提出及び治験の実施の承認

第二十二条 業務の委託

第二十三条 被験者に対する補償措置

第三章 治験の管理に関する基準

第一節 治験依頼者による治験の管理に関する基準

第二十四条 治験製品又は治験使用製品の管理

第二十五条 治験製品の交付

第二十六条 委嘱の文書の作成

第二十七条 効果安全性評価委員会の設置

第二十八条 不具合情報等

第二十九条 モニタリングの実施

第三十条 モニターの責務

第三十一条 監査

第三十二条 治験の中止等

第三十三条 総括報告書

第三十四条 記録の保存等

第二節 自ら治験を実施する者による治験の管理に関する基準

第三十五条 治験製品又は治験使用製品の管理

第三十六条 治験製品の品質の確保

第三十七条 委嘱の文書の作成

第三十八条 効果安全性評価委員会の設置

第三十九条 不具合情報等

第四十条 モニタリングの実施

第四十一条 モニターの責務

第四十二条 監査

第四十三条 治験の中止等

第四十四条 総括報告書

第四十五条 記録の保存等

第四章 治験を行う基準

第一節 治験審査委員会

第四十六条 治験審査委員会の設置

第四十七条 治験審査委員会の構成等

第四十八条 治験審査委員会の会議

第四十九条 治験審査委員会の審査

第五十条 継続審査等

第五十一条 治験審査委員会の責務

第五十二条 治験審査委員会の意見

第五十三条 記録の保存

第二節 実施医療機関

第五十四条 実施医療機関の要件

第五十五条 実施医療機関の長

第五十六条 モニタリング等への協力

第五十七条 治験事務局

第五十八条 治験使用製品の管理

第五十九条 業務の委託等

第六十条 治験の中止等

第六十一条 記録の保存

第三節 治験責任医師

第六十二条 治験責任医師の要件

第六十三条 治験分担医師等

第六十四条 被験者となるべき者の選定

第六十五条 被験者に対する責務

第六十六条 治験実施計画書からの逸脱

第六十七条 症例報告書

第六十八条 治験中の不具合等報告

第六十九条 治験の中止等

第四節 被験者の同意

第七十条 文書による説明と同意の取得

第七十一条 説明文書

第七十二条 同意文書等への署名等

第七十三条 同意文書の交付

第七十四条 被験者の意思に影響を与える情報が得られた場合

第七十五条 緊急状況下における救命的治験

第五章 再審査等の資料の基準

第七十六条 再審査等の資料の基準

第六章 治験の依頼等の基準

第七十七条 法第八十条の二第一項の厚生労働省令で定める基準

第七十八条 法第八十条の二第四項の厚生労働省令で定める基準

第七十九条 法第八十条の二第五項の厚生労働省令で定める基準

附則

1.第一章 総則

(趣旨)

第一条 この省令は、被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上を図り、治験の科学的な質及び成績の信頼性を確保するため、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「法」という。)第二十三条の二十五第三項(同条第十一項(法第二十三条の三十七第五項において準用する場合を含む。以下同じ。)及び法第二十三条の三十七第五項において準用する場合並びに法第二十三条の二十六第五項(法第二十三条の三十七第五項において準用する場合を含む。以下同じ。)において読み替えて適用する場合を含む。第三十二条第三項及び第四十三条第三項において同じ。)並びに法第二十三条の二十九第四項及び第二十三条の三十一第四項(これらの規定を法第二十三条の三十九において準用する場合を含む。以下同じ。)に規定する厚生労働省令で定める基準のうち再生医療等製品の臨床試験の実施に係るもの並びに第八十条の二第一項、第四項及び第五項に規定する厚生労働省令で定める基準を定めるものとする。

1 本基準(この省令で定める基準を以下「本基準」という。)は、被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上を図り、再生医療等製品の製造販売承認申請の際に提出すべき資料のうち臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施(以下「治験」という。)の科学的な質と成績の信頼性を確保することを目的として、治験及び製造販売後臨床試験に関する計画、実施、モニタリング、監査、記録、解析及び報告等に関する遵守事項を定めるものである。

2 治験に関する原則的事項としては、次の事項があげられる。製造販売後臨床試験を実施する際も準拠すべきである。

1) 治験は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則及び本基準を遵守して行うこと。

2) 治験を開始する前に、個々の被験者及び社会にとって期待される利益と予想される危険及び不便とを比較考量すること。期待される利益によって危険を冒すことが正当化される場合に限り、治験を開始し継続すべきである。

3) 被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上に対する配慮が最も重要であり、科学と社会のための利益よりも優先されるべきである。

4) 治験製品に関して、その治験の実施を支持するのに十分な非臨床試験及び臨床試験に関する情報が得られていること。

5) 治験は科学的に妥当でなければならず、治験実施計画書にその内容が明確かつ詳細に記載されていること。

6) 治験は、治験審査委員会が事前に承認した治験実施計画書を遵守して実施すること。

7) 被験者に対する医療及び被験者のためになされる医療上の決定に関する責任は、医師又は歯科医師が常に負うこと。

8) 治験の実施に関与する者は、教育、訓練及び経験により、その業務を十分に遂行しうる要件を満たしていること。

9) 全ての被験者から、治験に参加する前に、自由意思によるインフォームド・コンセントを得ること。

10) 治験に関する全ての情報は、正確な報告、解釈及び検証が可能なように記録し、取扱い、及び保存すること。本原則は、その媒体によらず、本ガイダンスで規定する全ての記録に適用される。

11) 被験者の身元を明らかにする可能性のある記録は、被験者のプライバシーと秘密の保全に配慮して保護すること。

12) 治験製品の製造、取扱い、保管及び管理は、適切な製造管理及び品質管理のもとで行うこと。治験製品は治験審査委員会が事前に承認した治験実施計画書を遵守して使用すること。

13) 治験の被験者保護及び治験結果の信頼性確保に必要不可欠な局面の質を保証するための手順を示したシステムを運用すること。

14) 治験に関連して被験者に健康被害が生じた場合には、過失によるものであるか否かを問わず、被験者の損失を適切に補償すること。その際、因果関係の証明等について被験者に負担を課すことがないようにすること。

(定義)

第二条 この省令において「製造販売後臨床試験」とは、再生医療等製品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令(平成二十六年厚生労働省令第九十号)第二条第一項第三号に規定する製造販売後臨床試験をいう。

2 この省令において「実施医療機関」とは、治験又は製造販売後臨床試験を行う医療機関をいう。

3 この省令において「治験責任医師」とは、実施医療機関において治験に係る業務を統括する医師又は歯科医師をいう。

4 この省令において「製造販売後臨床試験責任医師」とは、実施医療機関において製造販売後臨床試験に係る業務を統括する医師又は歯科医師をいう。

5 この省令において「被験製品」とは、治験の対象とされる人若しくは動物の細胞に培養その他の加工を施したもの若しくは人若しくは動物の細胞に導入され、これらの体内で発現する遺伝子を含有させたもの(以下「加工細胞等」という。)又は製造販売後臨床試験の対象とされる再生医療等製品をいう。

6 この省令において「対照製品」とは、治験又は製造販売後臨床試験において被験製品と比較する目的で用いられる加工細胞等をいう。

7 この省令において「治験製品」とは、被験製品及び対照製品(治験に係るものに限る。)をいう。

8 この省令において「製造販売後臨床試験製品」とは、被験製品及び対照製品(製造販売後臨床試験に係るものに限る。)をいう。

9 この省令において「治験使用製品」とは、被験製品(治験に係るものに限る。以下この項において同じ。)並びに被験製品の有効性及び安全性の評価のために使用する加工細胞等をいう。

10 この省令において「治験使用製品等」とは、治験使用製品又は治験使用製品と構成細胞又は導入遺伝子が同一性を有すると認められる加工細胞等をいう。

11 この省令において「製造販売後臨床試験使用製品」とは、被験製品(製造販売後臨床試験に係るものに限る。以下この項において同じ。)並びに被験製品の有効性及び安全性の評価のために使用する加工細胞等をいう。

12 この省令において「製造販売後臨床試験使用製品等」とは、製造販売後臨床試験使用製品又は製造販売後臨床試験使用製品と構成細胞又は導入遺伝子が同一性を有すると認められる加工細胞等をいう。

13 この省令において「被験者」とは、被験製品若しくは製造販売後臨床試験製品を使用される者又は当該者の対照とされる者をいう。

14 この省令において「原資料」とは、被験者に対する治験製品若しくは製造販売後臨床試験製品の使用及び診療により得られたデータその他の記録をいう。

15 この省令において「治験分担医師」とは、実施医療機関において、治験責任医師の指導の下に治験に係る業務を分担する医師又は歯科医師をいう。

16 この省令において「製造販売後臨床試験分担医師」とは、実施医療機関において、製造販売後臨床試験責任医師の指導の下に製造販売後臨床試験に係る業務を分担する医師又は歯科医師をいう。

17 この省令において「症例報告書」とは、原資料のデータ及びそれに対する治験責任医師若しくは治験分担医師又は製造販売後臨床試験責任医師若しくは製造販売後臨床試験分担医師の評価を被験者ごとに記載した文書をいう。

18 この省令において「治験協力者」とは、実施医療機関において、治験責任医師又は治験分担医師の指導の下にこれらの者の治験に係る業務に協力する薬剤師、看護師その他の医療関係者をいう。

19 この省令において「製造販売後臨床試験協力者」とは、実施医療機関において、製造販売後臨床試験責任医師又は製造販売後臨床試験分担医師の指導の下にこれらの者の製造販売後臨床試験に係る業務に協力する薬剤師、看護師その他の医療関係者をいう。

20 この省令において「治験調整医師」とは、一の治験実施計画書(第二十二項に規定する治験実施計画書をいう。以下この項及び次項において同じ。)に基づき複数の実施医療機関において治験を行う場合に、治験依頼者(第二十二項に規定する治験依頼者をいう。次項において同じ。)又は自ら治験を実施する者により当該実施医療機関における当該治験実施計画書の解釈その他の治験の細目について調整する業務(以下この条において「調整業務」という。)の委嘱を受け、当該調整業務を行う医師又は歯科医師をいう。

21 この省令において「治験調整委員会」とは、一の治験実施計画書に基づき複数の実施医療機関において治験を行う場合に、治験依頼者又は自ら治験を実施する者により調整業務の委嘱を受けて当該調整業務を行う複数の医師又は歯科医師で構成される委員会をいう。

22 この省令において「モニタリング」とは、治験又は製造販売後臨床試験が適正に行われることを確保するため、治験又は製造販売後臨床試験の進捗状況並びに治験又は製造販売後臨床試験がこの省令及び治験の計画書(以下「治験実施計画書」という。)又は製造販売後臨床試験の計画書(以下「製造販売後臨床試験実施計画書」という。)に従って行われているかどうかについて治験の依頼をした者(以下「治験依頼者」という。)若しくは製造販売後臨床試験の依頼をした者(以下「製造販売後臨床試験依頼者」という。)が実施医療機関に対して行う調査又は自ら治験を実施する者が実施医療機関に対して特定の者を指定して行わせる調査をいう。

23 この省令において「監査」とは、治験又は製造販売後臨床試験により収集された資料の信頼性を確保するため、治験又は製造販売後臨床試験がこの省令及び治験実施計画書又は製造販売後臨床試験実施計画書に従って行われたかどうかについて治験依頼者若しくは製造販売後臨床試験依頼者が行う調査又は自ら治験を実施する者が特定の者を指定して行わせる調査をいう。

24 この省令において「有害事象」とは、治験使用製品又は製造販売後臨床試験使用製品を使用された被験者に生じた全ての疾病若しくは障害又はこれらの徴候をいう。

25 この省令において「代諾者」とは、被験者の親権を行う者、配偶者、後見人その他これらに準じる者をいう。

26 この省令において「自ら治験を実施しようとする者」とは、その所属する実施医療機関等において自ら治験を実施するために法第八十条の二第二項の規定に基づき治験の計画を届け出ようとする者であって、治験責任医師となるべき医師又は歯科医師(一の治験実施計画書に基づき複数の実施医療機関において共同で治験を行う場合にあっては、代表して同項の規定に基づき治験の計画を届け出ようとする治験調整医師となるべき医師又は歯科医師を含む。)をいう。

27 この省令において「自ら治験を実施する者」とは、その所属する実施医療機関等において自ら治験を実施するために法第八十条の二第二項の規定に基づき治験の計画を届け出た治験責任医師(一の治験実施計画書に基づき複数の実施医療機関において共同で治験を行う場合にあっては、代表して同項の規定に基づき治験の計画を届け出た治験調整医師を含む。)をいう。

28 この省令において「治験製品提供者」とは、自ら治験を実施する者に対して治験製品を提供する者をいう。

29 この省令において「拡大治験」とは、人道的見地から実施される治験をいう。

1 第3項の「治験責任医師」とは、実施医療機関において治験の実施に関して責任を有する医師又は歯科医師である。実施医療機関において治験が複数の者からなるチームにより実施される場合には、当該チームを統括する医師又は歯科医師である。

2 第5項の「被験製品」とは、治験の対象とされる加工細胞等であり、当該治験の試験成績をもって承認申請資料とすることを目的とするものである。

3 第6項の「対照製品」とは、治験又は製造販売後臨床試験(以下「治験等」という。)において被験製品と比較する目的で用いられる既承認再生医療等製品若しくは効能効果を有さない加工細胞等又はプラセボを意味する。

なお、「対照製品」が既承認再生医療等製品の場合、試験の信頼性に影響を与えない限りにおいて市販の再生医療等製品を用いることができる。

4 第9項の「治験使用製品」とは、被験製品(治験に係るものに限る。)並びに被験製品の有効性及び安全性の評価のために使用する加工細胞等をいい、具体的には、治験計画届書及び治験実施計画書において規定された被験製品、対照製品、併用製品等が含まれる。

なお、再生医療等製品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成26年厚生労働省令第89号。以下「GCP省令」という。)において「治験使用製品」に対して求める事項については、加工細胞等に係る治験において被験製品の有効性及び安全性の評価のために使用する薬物又は機械器具等に対しても、同様に遵守されることが望ましい。

5 第11項の「製造販売後臨床試験使用製品」とは、被験製品(製造販売後臨床試験に係るものに限る。)並びに被験製品の有効性及び安全性の評価のために使用する加工細胞等をいい、具体的には、製造販売後臨床試験実施計画書において規定された被験製品、対照製造、併用製品等が含まれる。

なお、GCP省令において「治験使用製品」に対して求める事項については、加工細胞等に係る製造販売後臨床試験において被験製品の有効性及び安全性の評価のために使用する薬物又は機械器具等に対しても、同様に遵守されることが望ましい。

6 第14項の「原資料」とは、治験の事実経過に係る情報や症例報告書等の元となる文書、データ及び記録(例:病院記録、診療録、検査ノート、メモ、被験者の日記又は評価用チェックリスト、使用記録、自動計器の記録データ、正確な複写であることが検証によって保証された複写物又は転写物、マイクロフィッシュ、写真のネガ、マイクロフィルム又は磁気媒体、エックス線写真、被験者ファイル及び治験に関与する薬剤部門、検査室、医療技術部門に保存されている記録等)をいう。

7 第15項の「治験分担医師」とは、実施医療機関において治験を実施するチームに参加する個々の医師又は歯科医師で、治験責任医師によって指導・監督され、治験に係る重要な業務又は決定を行う者である。

8 第18項の「治験協力者」とは、実施医療機関において治験を実施するチームのメンバーで、治験責任医師によって指導・監督され、専門的立場から治験責任医師及び治験分担医師(以下「治験責任医師等」という。)の業務に協力する者である。

9 第20項の「治験調整医師」とは、一の治験実施計画書に基づき複数の実施医療機関において共同で行う治験(以下「多施設共同治験」という。)において、治験依頼者又は自ら治験を実施する者(以下「治験依頼者等」という。)により当該実施医療機関における当該治験実施計画書の解釈その他の治験の細目について調整業務の委嘱を受け、当該調整業務を行う医師又は歯科医師である。治験調整医師は、当該治験の分野において十分な経験を有し、多施設間の調整を適切に行いうる者であること。治験責任医師の中から選定されることが考えられるが、必ずしも治験責任医師に限らないこと。

10 第21項の「治験調整委員会」とは、多施設共同治験において、治験依頼者等により調整業務の委嘱を受けて当該調整業務を行う複数の医師又は歯科医師で構成される委員会である。なお、治験協力者等も治験調整委員会を構成する委員となることは可能である。

11 第22項の「モニタリング」とは、治験等が適正に行われることを確保するため、治験依頼者等又は製造販売後臨床試験依頼者より指名されたモニターが、治験等の進行状況を調査し、本基準並びに治験実施計画書(又は製造販売後臨床試験実施計画書)及び手順書に従って実施、記録及び報告されていることを保証する活動である。自ら治験を実施する者が当該実施医療機関内の者をモニターに指定する場合は、当該治験に従事していない第三者を指定すべきであり、また、実施医療機関外部に委託することも可能である。

12 第23項の「監査」とは、治験等が本基準並びに治験実施計画書(又は製造販売後臨床試験実施計画書)及び手順書に従って実施され、データが記録、解析され、正確に報告されているか否かを確定するため、治験依頼者等(又は製造販売後臨床試験依頼者)によって指名された監査担当者が、独立した立場において治験等に係る業務及び文書を体系的に検証することである。自ら治験を実施する者が、当該実施医療機関内の者を監査担当者に指定する場合には、当該治験又は当該治験に対するモニタリングに従事していない第三者を指定するべきであり、また、実施医療機関外部に委託することも可能である。なお、事実経過の再現を可能とする文書を「監査証跡」、監査が行われた旨の監査担当者による証明書を「監査証明書」、監査担当者が監査の結果の評価を記述したものを「監査報告書」という。

13 第24項の「有害事象」とは、治験使用製品又は製造販売後臨床試験使用製品との因果関係の有無に関わらず、当該治験使用製品又は製造販売後臨床試験使用製品の使用された被験者に生じた全ての好ましくない又は意図しない疾病若しくは障害又はその徴候(臨床検査値の異常を含む。)をいう。

なお、治験使用製品として市販の再生医療等製品を使用した場合、治験における治験使用製品としての有害事象は本項において定義した有害事象であるが、市販の再生医療等製品としての不具合等の取扱いについては、「医薬品等の副作用等の報告について」(平成26年10月2日付け薬食発1002第20号厚生労働省医薬食品局長通知)及び「再生医療等製品の不具合等報告について」(令和2年1月31日付け薬生安発0131第2号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知)による。

14 第25項の「代諾者」とは、治験への参加について、被験者に十分な同意の能力がない場合に、被験者とともに、又は被験者に代わって同意をすることが正当なものと認められる者であり、被験者の親権を行う者、配偶者、後見人その他これらに準じる者で、両者の生活の実質や精神的共同関係から見て、被験者の最善の利益を図りうる者であること。

15 第26項の「自ら治験を実施しようとする者」とは、その所属する実施医療機関において自ら治験を実施するために医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「法」という。)第80条の2第2項の規定に基づき治験の計画を厚生労働大臣に届け出ようとする者であって、治験責任医師となるべき医師又は歯科医師(一の治験実施計画書に基づき複数の実施医療機関において共同で治験を行う場合にあっては、代表して同項の規定に基づき治験の計画を届け出ようとする治験調整医師となるべき医師又は歯科医師を含む。)をいう。なお、本基準への適合性の客観性が確保される限りにおいてやむを得ない場合にあっては、実施医療機関の長が自ら治験を実施しようとする者となることを妨げるものではない。

16 第27項の「自ら治験を実施する者」とは、その所属する実施医療機関において自らが治験を実施するために法第80条の2第2項の規定に基づき治験の計画を厚生労働大臣に届け出た治験責任医師(一の治験実施計画書に基づき複数の実施医療機関において共同で治験を行う場合にあっては、代表して治験の計画を届け出た治験調整医師を含む。)をいう。なお、一の治験実施計画書に基づき複数の実施医療機関において共同で治験を実施する場合、各治験責任医師は「自ら治験を実施する者」と解される。

17 第28項の「治験製品提供者」とは、自ら治験を実施する者に対して治験製品を提供する者をいう。この場合の治験製品提供者は、当該実施医療機関に対して治験製品を提供する再生医療等製品製造販売業者等をいう。

18 省令で規定するもののほか、次の用語については、以下に示すとおりである。

1) 「インフォームド・コンセント」及び「説明文書」と「同意文書」について

ア) 「インフォームド・コンセント」とは、被験者の治験への参加の意思決定と関連する、治験に関するあらゆる角度からの説明が十分なされた後に、被験者がこれを理解し、自由な意思によって治験への参加に同意し、文書によってそのことを確認することをいう。

この際の説明に用いられる文書が「説明文書」(第71条参照)である。治験への参加に同意することを確認する文書が「同意文書」(第72条第1項参照)であり、被験者(又は代諾者)と治験責任医師等の署名と日付が記入される。

イ) 「説明文書」と「同意文書」は両者を一体化した文書とすること又は一式の文書とすることが望ましい。

ウ) 同意文書は、説明文書の内容を十分に理解した上で、当該治験に参加することに同意する旨を記載した文書であるが(第72条第1項参照)、あらかじめ様式を定めている場合には、説明文書と一体化した文書又は一式の文書として取り扱うこと。

例えば、第10条に基づき実施医療機関の長に対し説明文書を提出する場合及び第51条に基づき治験審査委員会に審査資料として説明文書を提出する場合には、説明文書と同意文書をあわせて治験審査委員会に提出すること。また、第70条に基づき説明文書を用いて説明する場合には、説明文書と同意文書をあわせて用いて説明すること。

2) 「開発業務受託機関」について

治験の依頼及び管理に係る業務の全部若しくは一部を治験を依頼しようとする者から受託する者又は治験の実施の準備及び管理に係る業務の全部若しくは一部を自ら治験を実施しようとする者若しくは実施医療機関から受託する者は開発業務受託機関、CRO(Contract Research Organization)とも呼ばれる(第12条及び第22条参照)。

3) 「治験施設支援機関」について

治験の実施に係る業務の一部を実施医療機関から受託する者は、治験施設支援機関、SMO(Site Management Organization)とも呼ばれる。(第59条参照)

4) 「効果安全性評価委員会」は、治験の進行、安全性データ及び重要な有効性エンドポイントを適当な間隔で評価し、治験依頼者等に治験の継続、変更、又は中止を提言することを目的として、治験依頼者等が設置することができる委員会であり、「データモニタリング委員会」とも呼ばれる。有効性の検証を目的とした臨床試験等においては、治験依頼者、治験責任医師及び治験調整医師から独立した委員会として設置した場合には、とくに「独立データモニタリング委員会」とも呼ばれる(第27条及び第38条参照)。

5) 「公正な立会人」とは、治験の実施から独立し、治験に関与する者から不当に影響を受けない者で、被験者又は代諾者が同意文書等を読むことができない場合又は疾病等の影響で自ら同意文書に署名し、日付を記入することができない場合にインフォームド・コンセントの過程に立ち会う者である(第72条参照)。

なお、治験責任医師、治験分担医師及び治験協力者は説明をする側に位置する者であり、公正な立会人としては適当でない。

6) 「症例報告書の見本」とは、各被験者に対して、治験依頼者に報告すること又は自ら治験を実施する者が保存することが治験実施計画書において規定されている全ての情報を記録するために印刷された又は光学的若しくは電子的な記録様式をいう(症例報告書の様式とも呼ばれている。)。なお、これに記録されたものは「症例報告書」という。

7) 「手順書」とは、治験に係る各々の業務が恒常的に又は均質に、かつ適正に実施されるよう手順を詳細に定めた文書をいう。

8) 「被験者識別コード」とは、個々の被験者の身元に関する秘密を保護するため、治験責任医師が各被験者に割り付けた固有の識別番号で、治験責任医師が有害事象及びその他の治験関連データを報告する際に、被験者の氏名、身元が特定できる番号及び住所等の代わりに用いるものである。

9) 「非臨床試験」とは、人を対象としない生物医学的試験及びその他の試験をいう。

10) 「不具合」とは、治験使用製品について、治験製品の機能の不全、細胞が人体に及ぼす副作用等広く具合がよくないことをいい、製造、交付、保管又は使用のいずれの段階によるものであるかを問わないこと。

11) 「盲検化(又は遮蔽化)」とは、有効性等の評価に対する偏りの介入を避ける目的で、治験に参加する単数又は複数の当事者が、治療方法の割付けについて知らされないようにする措置をいう。単盲検法は通常、被験者が割付けの内容を知らされないこと、二重盲検法は被験者、治験責任医師、治験分担医師、治験協力者、治験依頼者、自ら治験を実施する者、モニター、監査担当者及び一部の事例ではデータ解析者が割付けの内容を知らされないことを指す。なお、ここでいう「治験依頼者が割付けの内容を知らされないこと」とは、治験依頼者において手順を定める等割付けの内容の機密性を確保するための必要な措置が講じられており、かつ、再生医療等製品の開発に係る者が割付けの内容を知らされないことを意味するものである。

12) 「原データ」とは、治験における臨床所見、観察その他の活動に関する元の記録及びその保証付き複写に記録されているあらゆる情報であって、治験の事実経過の再現と評価に必要なものをいう。「原データ」は原資料(元の記録又はその保証付き複写)に含まれる。

13) 「保証付き複写」とは、使用媒体によらず、元の記録からの複写物で、元の記録の背景、内容及び構成を説明するデータを含め、同一の情報を有することが保証された(すなわち、日付入り署名が記入された又はバリデートされた過程により作成された)ものをいう。複写物を元の文書(原資料、症例報告書等)の代わりとして置き換える場合には、当該複写物は保証付き複写の要件を満たすこと。

14) 「システムバリデーション」とは、電子データ処理システムが要求される仕様について、システムの設計から廃棄まで又は新システムへの移行まで常に満たすことを検証し、文書化(記録化)する過程をいう。システムバリデーションの取組みは、システムの用途や被験者保護及び治験結果の信頼性への影響を与える可能性を考慮したリスク評価に基づくこと。

15) 「モニタリング計画書」とは、治験のモニタリングの戦略、方法、責務及び要件を記述した文書をいう。

(承認審査資料の基準)

第三条 法第二十三条の二十五第一項若しくは第九項(法第二十三条の三十七第五項において準用する場合を含む。)又は第二十三条の三十七第一項の承認を受けようとする者が行う再生医療等製品の臨床試験の実施に係る法第二十三条の二十五第三項(同条第十一項及び法第二十三条の三十七第五項において準用する場合を含む。次項において同じ。)に規定する資料の収集及び作成については、第二章第一節、第三章第一節及び第四章(第四十八条第一項第二号、第五十条第四項、第五十一条第四項及び第七項、第五十二条第三項並びに第六十八条第三項を除く。)の規定の定めるところによる。

2 自ら治験を実施する者が行う再生医療等製品の臨床試験の実施に係る法第二十三条の二十五第三項に規定する資料の収集及び作成については、第二章第二節、第三章第二節及び第四章(第四十八条第一項第一号、第五十一条第六項及び第八項並びに第六十八条第二項を除く。)の規定の定めるところによる。

(第1項)

1 再生医療等製品の製造販売承認申請の際に提出すべき資料のうち、再生医療等製品の製造販売承認申請を行おうとする者が行う臨床試験の成績に関する資料については、第二章第一節、第三章第一節及び第四章(第48条第1項第2号、第50条第4項、第51条第4項及び第7項、第52条第3項並びに第68条第3項を除く。)の規定の定めるところに従ったものであること。

(第2項)

1 再生医療等製品の製造販売承認申請の際に提出すべき資料のうち、自ら治験を実施する者が行う臨床試験の成績に関する資料については、第二章第二節、第三章第二節及び第四章(第48条第1項第1号、第51条第6項及び第8項並びに第68条第2項を除く。)の規定に定めるところに従ったものであること。

2.第二章 治験の準備に関する基準

2―1 第一節 治験の依頼をしようとする者による治験の準備に関する基準

(業務手順書等)

第四条 治験の依頼をしようとする者は、治験実施計画書の作成、実施医療機関及び治験責任医師の選定、治験使用製品の管理、治験使用製品等の不具合に関する情報等(以下「不具合情報等」という。)の収集、記録の保存その他の治験の依頼及び管理に係る業務に関する手順書を作成しなければならない。

2 治験の依頼をしようとする者は、医師、歯科医師、薬剤師その他の治験の依頼及び管理に係る業務を行うことにつき必要な専門的知識を有する者を確保しなければならない。

〈第1項〉

1 治験の依頼をしようとする者は、治験依頼者になることを意図した者であり、治験の依頼に係る治験実施計画書の作成、実施医療機関及び治験責任医師の選定、治験製品概要書の作成、健康被害の補償に関する業務、治験の管理に係る治験使用製品の管理、治験使用製品等の不具合情報等の収集、モニタリング及び監査の実施、総括報告書の作成、記録の保存等の業務について手順書を作成すること。

なお、本条の以下の解説において治験依頼者とあるのは、治験の依頼をしようとする者を含むものである。

2 治験依頼者は、治験の全ての過程において、品質マネジメントのためのシステムを履行し、被験者保護及び治験結果の信頼性確保に必要不可欠な活動に重点的に取り組むものとする。

品質マネジメントには、治験の実施並びにデータの作成、記録及び報告が、本基準及び治験実施計画書を遵守して行われることを保証するために、手順書に基づく品質保証及び品質管理のほか、以下のものが含まれる。

・効率的な治験実施計画書のデザイン

・データ収集及び処理に関するツール及び手順

・意思決定に不可欠な情報の収集

治験の品質保証及び品質管理のために使用する方法は、治験固有のリスク及び収集する情報の重要性に対して釣り合いのとれたものとすべきである。

また、治験依頼者は、実施した品質マネジメントについて総括報告書に記載すること。

このほか、品質マネジメントの詳細については、「治験における品質マネジメントに関する基本的考え方について」(令和元年7月5日付け薬生薬審発0705第5号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)を参照のこと。

なお、「治験の品質保証」とは、治験の実施、データ作成、文書化(記録化)及び報告が、本基準及び治験実施計画書を遵守していることを保証するために設定された計画的かつ体系的な全活動をいう。また、「治験の品質管理」とは、治験関連の活動の質に求められる事項を充足しているか否かを検証するために治験の品質保証の一環として行われる実務的な手法及び活動をいう。

3 治験依頼者は、治験に関連する全てのデータの信頼性とその適正な処理を保証するために、データ取扱いの各段階に品質管理を適用すること。

4 治験依頼者は、治験に係る検体等の検査機関(実施医療機関の検査室等を含む。)において、検査が適切に実施されて治験に係るデータが信頼できることを保証するため、当該検査機関における精度管理等を保証する記録等を確認すること。

なお、確認すべき検査の範囲や具体的な確認方法は、各検査データの当該治験における位置づけ(主要評価項目であるかどうか等)を考慮し、治験依頼者と実施医療機関との間で取り決めること。

5 治験依頼者は、実施医療機関に交付する治験使用製品について、第24条第6項に基づき、実施医療機関の治験製品管理者がそれらの取扱い及び保管、管理並びにそれらの記録に際して従うべき指示を記載した手順書を定めること。当該手順書には、治験使用製品の受領、取扱い、保管、管理、処方並びに未使用治験使用製品の被験者からの返却及び治験依頼者への返却又はその他の処分が、適切で確実に行われるように規定すること。

なお、治験製品以外の治験依頼者が交付しない治験使用製品であって、実施医療機関が在庫として保管するもの等の中から使用する治験使用製品については、治験依頼者は、実施医療機関において定められた取扱い、保管、管理及び処方等に係る手順等を確認すること。

6 治験依頼者が作成すべき記録の保存に関する手順書には、実施医療機関及び当該治験に係る審査を行った治験審査委員会において保存すべき記録(第53条及び第61条参照)について、その保存の必要がなくなった場合には、その旨を実施医療機関の長及び実施医療機関の長を経由して治験審査委員会の設置者に通知することを含むこと。

なお、第32条第2項及び第3項に規定されている治験の中断又は中止及び開発の中止に関する治験依頼者から実施医療機関の長への文書による通知に関する事項(当該通知を受けた実施医療機関の長から治験責任医師及び治験審査委員会への通知については、第60条第2項に規定されている。)並びに当該被験製品に係る製造販売承認を受けた場合に、治験依頼者から実施医療機関の長へその旨を通知することについても規定されている必要がある。

1) 治験依頼者は、治験を中止又は中断する場合には、治験に関与する全ての実施医療機関の長にその旨とその理由の詳細を速やかに文書で通知すること(第32条第2項参照)。

2) 治験依頼者は、被験製品の開発を中止する場合には、その旨とその理由の詳細を治験に関与する全ての実施医療機関の長に速やかに文書で通知すること(第32条第3項参照)。

3) 実施医療機関の長は、治験依頼者が治験の中止若しくは中断又は被験製品の開発の中止を決定しその旨を通知してきた場合には、治験責任医師及び治験審査委員会等に対し、また治験責任医師が治験を中止又は中断しその旨を報告してきた場合には、治験依頼者及び治験審査委員会等に対し、それぞれ速やかにその旨を文書で通知するとともに、中止又は中断について文書で詳細に説明すること(第60条第2項及び第3項参照)。

4) 治験依頼者は、当該被験製品に係る製造販売承認を得た場合には、その旨を実施医療機関の長に通知すること。

7 治験依頼者は、治験責任医師等に症例報告書の変更又は修正に関する手引きを提供すること(第67条第2項参照)。また、治験依頼者が指名した者が行う症例報告書の変更又は修正については、それらが文書に記録され、かつ、当該変更又は修正が必要なものであり、治験責任医師が承認したものであることを保証するための手順書を作成しておくこと。

8 治験依頼者は、治験が開始される前に、治験に関連する全ての施設及び原資料等の全ての治験関連記録について、治験依頼者によるモニタリング及び監査、並びに治験審査委員会及び規制当局による調査のための直接閲覧が可能であるように全ての関係者との合意を得ておく必要があり、これに関する規定を手順書に定めておくこと。

9 治験依頼者は、治験責任医師、実施医療機関及び治験に係わるその他の施設又は治験依頼者のスタッフが本基準、治験実施計画書又は手順書を遵守していない場合には、遵守を確保するべく迅速な措置を講じること。

被験者の保護や治験結果の信頼性に重大な影響を与える又は与えるおそれがある不遵守が発覚した場合には、治験依頼者は、根本原因を分析し、適切な是正措置及び予防措置を講じ、必要に応じて規制当局に報告すること。

〈第2項〉

1 「治験の依頼及び管理に係る業務を行うことにつき必要な専門的知識を有する者」とは、治験に関する医学的又は歯学的な問題について適切な助言を行う医学又は歯学の専門家並びに治験実施計画書、治験製品概要書等の作成・改訂、データの取扱い、統計解析の実施、総括報告書の作成等において活用されるべき治験依頼者内部及び外部の専門家(例:生物統計学、臨床薬理学、臨床検査学、臨床工学等の専門家)を含む。

2 治験依頼者は、治験に関する業務の総括的な監督、治験実施計画書、症例報告書の見本(治験実施計画書において、症例報告書に記載すべき事項が十分に読み取れる場合は、当該治験実施計画書をもって症例報告書の見本に関する事項を含むものと解してよい。)及び治験製品概要書の作成及び改訂、データの取扱い、検証及び統計解析の実施並びに治験の中間報告書(必要な場合)、総括報告書等の作成等、治験の全過程を通じ、適格な者(例:生物統計学者、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、臨床薬理学者、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士等)を活用すること。

3 治験依頼者は、治験に関する医学的又は歯学的な問題について速やかに助言を得るために、適格な医学等の専門家を指名しておくこと。

4 治験の依頼をしようとする者は、治験を依頼する前に治験に関連する全ての業務を確定し、適格な者に割り当てること。

(安全性試験等の実施)

第五条 治験の依頼をしようとする者は、被験製品の品質、安全性、効能、効果及び性能に関する試験その他治験の依頼をするために必要な試験を終了していなければならない。

1 「被験製品の品質、安全性、効能、効果及び性能に関する試験その他治験の依頼をするために必要な試験」とは、当該被験製品の物理的、化学的性質、性状等に関する理化学試験等及び安全性、効能、効果、性能、体内動態等に関する動物試験等のいわゆる非臨床試験や臨床試験を指しているが、当該試験の具体的な項目、内容等については、当該治験の内容(治験製品の使用方法及び使用期間、被験者の選択基準等)等を考慮のうえ、治験の依頼時点における科学的水準に照らし適正なものであること。

2 治験の依頼をしようとする者は、治験責任医師となるべき者と協議し、治験実施計画書の作成及び必要に応じて改訂を行うが、その際、当該治験の目的並びに当該治験で採用される使用対象集団、用法・用量又は使用方法、使用期間、観察項目及び評価項目等の妥当性を支持できるだけの品質、安全性及び有効性に関する十分なデータが理化学試験等、非臨床試験及び先行する臨床試験から得られており、当該治験の倫理的及び科学的妥当性が裏付けられていることを保証すること。また、そのための手続を文書で定めること(第4条参照)。

3 治験の依頼をしようとする者は、開発期間中に被験製品の原料等、副成分又は構成体が変更される場合には、新たに当該被験製品の品質及び安全性を評価するのに必要な試験成績(品質特性、非臨床安全性等の試験成績)を被験製品の使用前に入手しておくこと。

(実施医療機関等の選定)

第六条 治験の依頼をしようとする者は、第五十四条各号に掲げる要件を満たしている実施医療機関及び第六十二条各号に掲げる要件を満たしている治験責任医師を選定しなければならない。

1 治験の依頼をしようとする者は、治験責任医師及び実施医療機関を選定する責任を有する。

2 治験の依頼をしようとする者は、当該治験を適切に実施するのに求められる要件を満たした治験責任医師(第62条参照)及び実施医療機関(第54条参照)を選定すること。

(治験実施計画書)

第七条 治験の依頼をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した治験実施計画書を作成しなければならない。

一 治験の依頼をしようとする者の氏名(法人にあっては、その名称。以下この号及び次号、第十三条第一項第二号及び第三号、第十八条第一項第二号及び第六号並びに第二十四条第一項第二号において同じ。)及び住所(法人にあっては、その主たる事務所の所在地。以下この号及び次号、第十三条第一項第二号及び第三号、第十五条、第十八条第一項第二号及び第六号、第二十四条第一項第二号並びに第三十四条第二項において同じ。)(当該者が本邦内に住所を有しない場合にあっては、その氏名及び住所地の国名並びに第十五条に規定する治験国内管理人の氏名及び住所。第十三条第一項第二号において同じ。)

二 治験に係る業務の全部又は一部を委託する場合にあっては、当該業務を受託した者(以下この章において「受託者」という。)の氏名、住所及び当該委託に係る業務の範囲

三 実施医療機関の名称及び所在地

四 治験責任医師となるべき者の氏名

五 治験の目的

六 治験使用製品の概要

七 治験の方法

八 被験者の選定に関する事項

九 原資料の閲覧に関する事項

十 記録(データを含む。)の保存に関する事項

十一 治験調整医師に委嘱した場合にあっては、その氏名

十二 治験調整委員会に委嘱した場合にあっては、これを構成する医師又は歯科医師の氏名

十三 第二十七条に規定する効果安全性評価委員会を設置したときは、その旨

2 治験の依頼をしようとする者は、当該治験が被験者に対して治験製品の効果を有しないこと及び第七十条第一項の同意を得ることが困難な者を対象にすることが予測される場合には、その旨及び次に掲げる事項を治験実施計画書に記載しなければならない。

一 当該治験が第七十条第一項の同意を得ることが困難と予測される者を対象にしなければならないことの説明

二 当該治験において、予測される被験者への不利益が必要な最小限度のものであることの説明

3 治験の依頼をしようとする者は、当該治験が第七十条第一項及び第二項の同意を得ることが困難と予測される者を対象にしている場合には、その旨及び次に掲げる事項を治験実施計画書に記載しなければならない。

一 当該被験製品が、生命が危険な状態にある傷病者に対して、その生命の危険を回避するため緊急に使用される再生医療等製品として、製造販売の承認を申請することを予定しているものであることの説明

二 現在における治療方法では被験者となるべき者に対して十分な効果が期待できないことの説明

三 被験製品の使用により被験者となるべき者の生命の危険が回避できる可能性が十分にあることの説明

四 第二十七条に規定する効果安全性評価委員会が設置されている旨

4 第一項の規定により治験実施計画書を作成するときは、当該治験実施計画書の内容及びこれに従って治験を行うことについて、治験責任医師となるべき者の同意を得なければならない。

5 治験の依頼をしようとする者は、治験使用製品の品質、有効性及び安全性に関する事項その他の治験を適正に行うために重要な情報を知ったときは、必要に応じ、治験実施計画書を改訂しなければならない。この場合においては、前項の規定を準用する。

(第1項)

1 治験実施計画書には、作成及び改訂の日付並びに版表示、又は最新版の作成の日付及び版表示を記載すること。

2 治験実施計画書(改訂版を含む。)に通常含まれているべき具体的事項については、中央薬事審議会答申注1)の10又はISO14155:2020の附属書Aを適宜参照すること。ただし、監査担当者の氏名、職名及び電話番号等は記載しなくても差し支えない。なお、治験実施計画書の具体的記載にあたって、「治験の依頼をしようとする者」を「治験依頼者」と記載しても差し支えない。例えば、治験依頼者と記載して治験の依頼をしようとする者の氏名(法人にあっては、その名称)及び住所(法人にあっては、その主たる事業所の所在地)を記載して差し支えない。

また、一の治験実施計画書に基づき複数の実施医療機関に対して治験の依頼をしようとする場合において、実施医療機関の名称及び所在地、治験責任医師となるべき者の氏名並びに実施医療機関を担当するモニター(モニターが複数である場合にはその代表者)の氏名及び電話番号等については、施設に特有の情報として、治験実施計画書の分冊として差し支えなく、当該各実施医療機関の長に対しては、当該分冊のうち、当該実施医療機関に係るもののみを提出することとして差し支えない。

3 治験実施計画書又はその分冊に記載されたモニター以外のモニター及び監査担当者が診療録の閲覧等を行う場合は、モニター等の氏名等を当該実施医療機関が把握できるようにすること。

注1) 中央薬事審議会答申(平成9年3月13日中薬審第40号)は、現行の薬事・食品衛生審議会の改変前の組織である中央薬事審議会が答申した医薬品の臨床試験の実施の基準である。

注2) 治験の依頼をしようとする者は、治験責任医師となるべき者と協議し、治験実施計画書の作成及び必要に応じて改訂を行うが、その際、当該治験の目的並びに当該治験で採用される使用対象集団、用法・用量又は使用方法、使用期間、観察項目及び評価項目等の妥当性を支持できるだけの品質、有効性及び安全性に関する十分なデータが理化学試験等、非臨床試験及び先行する臨床試験から得られており、当該治験の倫理的及び科学的妥当性が裏付けられていることを保証すること。また、そのための手続を文書で定めること(第4条参照)。

(第2項)

1 次の2に掲げる場合を除き、被験者に対する直接の臨床的利益が予期されない非治療的な内容の治験においては、必ず被験者本人から同意を得ること(第70条第4項参照)。

2 非治療的な内容の治験において、次の1)から4)に掲げる事項が全て満たされる場合には、被験者となるべき者の同意を得ることが困難な者を対象として、被験者となるべき者の代諾者による同意を得て治験を行うことができる。このような治験は、例外が正当化される場合を除き、被験製品の適応となることが意図された疾病又は症状を有する患者において行われるべきである。また、治験責任医師又は治験分担医師は、このような治験における被験者に対しては、特に綿密な観察を行い、もし不当な苦痛を受けていると見受けられた場合には治験を中止すること。

1) 治験の目的が、本人による同意が可能な被験者による治験では達成されないこと。

2) 被験者に対する予見しうる危険性が低いこと。

3) 被験者の福祉に対する悪影響が最小限とされ、かつ、低いこと。

4) 代諾者の同意に基づいて被験者を治験に組み入れる旨を明示した上で治験審査委員会に承認の申請がなされ、かかる被験者の参加を承認する旨が承認文書に記載されていること。

3 「当該治験が被験者に対して治験製品の効果を有しないこと、及び第70条第1項の同意を得ることが困難な者を対象にすることが予測される場合」とは、例えば、同意の能力を欠く者(小児等)を対象にした治験において、これらの者を被験者として体内動態に関する試験を行う必要がある場合が考えられる。また、「当該治験において予測される被験者に対する不利益が必要な最小限度のものであること」とは、被験者に対する予見しうる危険性が低いこと、被験者への肉体的又は精神的な悪影響が、それらを避けるための努力が行われた上で、十分に低いことをいう。

(第3項)

1 「当該治験が第70条第1項及び第2項の同意を得ることが困難と予測される者を対象にしている場合」とは、次に掲げる点から、被験者又はその代諾者となるべき者から事前に文書による同意を得ることが困難である緊急状況下における救命的な治験である(第75条参照)。

1) 被験者の状態から被験者の同意を得ることができないこと。

2) 被験者の代諾者による同意が可能となる以前に、救急的に治験が開始される必要があること。

3) 当該治験の被験者となり得る者をあらかじめ特定することが困難であること。

2 このような緊急状況下における救命的な内容の治験において、被験者となるべき者による事前の同意を得ることが不可能で、かつ、被験者となるべき者の代諾者から同意を得ることができない場合にも治験が行われることが計画されている場合には、その旨及び次の事項が治験実施計画書に記載されていなければならない。

1) 生命が危険な状態にある傷病者に対して、その生命の危険を回避するため緊急に使用される再生医療等製品として承認申請することを予定しているものであること。

2) 現在利用可能な治療方法では十分な効果が期待できないこと。

3) 被験者となるべき者の生命の危険が回避できる可能性が十分にあること。なお、そのことを支持する適切なデータが得られている必要があること。また、当該治験への参加から生じ得る被験者に対する危険性が、現在利用可能な治療方法のリスク・ベネフィットに照らして合理的であること。

4) 第27条に規定する効果安全性評価委員会が設置されていること。

5) 治験責任医師又は治験分担医師が、速やかに、被験者(又は代諾者となるべき者)に対して当該治験に関する説明を行い、当該治験への継続参加について同意を得ること(第75条第2項参照)及び被験者の身元が明らかでない者は治験の対象から除かれることについて、第7条第1項第7号の「治験の方法」及び第8号の「被験者の選定に関する事項」として治験実施計画書に記載されていること。なお、治験責任医師がこの経過と結果を治験審査委員会に報告することについても記載されていること。

(第4項)(第5項)

1 治験の依頼をしようとする者は、治験責任医師となるべき者と治験実施計画書について合意をする前に、治験責任医師となるべき者に治験実施計画書案及び最新の治験製品概要書又は治験使用製品に係る科学的知見を記載した文書その他必要な資料・情報を提供すること。

治験実施計画書を改訂する場合も同様とする。

2 治験の依頼をしようとする者は、治験責任医師となるべき者に対して、提供された治験実施計画書案等の資料・情報を十分検討し、治験の依頼をしようとする者と協議するために必要な時間を与えること。

治験実施計画書を改訂する場合も同様とする。

3 治験責任医師となるべき者は、治験実施計画書について治験の依頼をしようとする者と合意する前に、提供される治験実施計画書案及び最新の治験製品概要書又は治験使用製品に係る科学的知見を記載した文書その他必要な資料・情報に基づき治験の依頼をしようとする者と協議し、当該治験を実施することの倫理的及び科学的妥当性について十分検討すること。

治験実施計画書が改訂される場合も同様とする。

4 治験の依頼をしようとする者は、治験責任医師となるべき者と協議した後、治験実施計画書の内容及び当該治験実施計画書を遵守することについて治験責任医師となるべき者と合意すること。治験の依頼をしようとする者と治験責任医師となるべき者は、この合意を証するため、治験実施計画書又はそれに代わる文書にそれぞれ署名し、各自日付を記入すること。

治験実施計画書を改訂する場合及び治験審査委員会の意見に基づく実施医療機関の長の指示により治験実施計画書を改訂する場合も同様とする。

5 治験責任医師となるべき者は、治験の依頼をしようとする者と治験実施計画書の内容に合意し、また、当該治験実施計画書を遵守することについて合意した旨を証するため、治験の依頼をしようとする者とともに治験実施計画書又はそれに代わる文書に署名し、日付を記入すること。

治験実施計画書が改訂される場合及び治験審査委員会の意見に基づく実施医療機関の長の指示により治験実施計画書が改訂される場合も同様とする。

6 上記1から5の規定のうち治験実施計画書の改訂に係る規定については、第7条第1項の規定に基づき治験実施計画書の分冊を作成しており、当該分冊に記載された当該実施医療機関以外の実施医療機関に特有の情報を改訂する場合を除いて差し支えないこと。

7 症例報告書の見本を作成する場合は、上記1から5の規定を準用する。ただし、レイアウト(電子情報処理組織の利用による症例報告書にあっては、その仕様)の変更を行う場合を除いて差し支えない。

(治験製品概要書)

第八条 治験の依頼をしようとする者は、第五条の試験により得られた資料並びに被験製品の品質、有効性及び安全性に関する情報に基づいて、次に掲げる事項を記載した治験製品概要書を作成しなければならない。

一 被験製品の構成細胞、導入遺伝子又は識別記号

二 品質、安全性、効能、効果、性能その他の被験製品に関する事項

三 臨床試験が実施されている場合にあっては、その試験成績に関する事項

2 治験の依頼をしようとする者は、被験製品の品質、有効性及び安全性に関する事項その他の治験を適正に行うために重要な情報を知ったときは、必要に応じ、前項の治験製品概要書を改訂しなければならない。

(第1項)

1 治験の依頼をしようとする者は、治験責任医師及びその他治験に関与する者が、治験実施計画書の主要項目(用法・用量又は使用方法、被験者の安全性を監視するための手順等)の合理的根拠を理解し、かつそれを遵守するための情報を提供するために治験製品概要書を作成すること。また、治験製品概要書は、治験実施期間中の被験者の臨床上の管理に必要な知識を提供するものであること。

2 治験製品概要書に記載されるデータは、簡潔、客観的、公平かつ販売促進に関わりのないものであること。

3 治験の依頼をしようとする者は、治験製品概要書の編集に当たり、一般的には医師等の専門家を参加させることが望ましい。

4 治験製品概要書に記載すべき情報の種類や範囲は、被験製品の特性に応じた適切なものであること。被験製品が市販され、その効能、効果及び性能が一般の医師又は歯科医師に広く理解されている場合には、広範な情報を掲載した概要書は必要ない場合もありうる。

5 第1号の「構成細胞、導入遺伝子又は識別記号」とは、被験製品について、ヒト細胞加工製品及び動物細胞加工製品にあっては製品の効能、効果又は性能を期待する主たる構成細胞、遺伝子操作を受けるヒト細胞加工製品及び動物細胞加工製品並びに遺伝子治療用製品にあっては導入遺伝子等の概要を簡潔に取りまとめたものであること。また、これらの記載が困難な場合にあっては識別記号を記載すること。

6 第2号の「品質、安全性、効能、効果、性能その他の被験製品に関する事項」とは、被験製品の特性、原料又は材料名、効力又は性能、安全性、体内動態等に関連する非臨床試験の成績を指す。

7 治験製品概要書に通常含まれているべき具体的事項については、中央薬事審議会答申の11又はISO14155:2020の附属書Bを適宜参照すること。

8 治験の依頼をしようとする者が、複数の被験製品を用いる治験を実施する際に、自らが製造販売する予定の被験製品と併用するものの、他社が製造販売している等の理由で、治験製品概要書を準備することができない場合は、我が国において既承認の再生医療等製品であり、かつ治験を依頼しようとする者が、当該被験製品を治験に用いるに当たり被験製品の安全性を担保できると考える場合に限り、治験製品概要書に代わり、当該被験製品の最新の科学的知見について記載した文書(添付文書又は注意事項等情報、学術論文等)を添付することで差し支えない。

(第2項)

1 治験の依頼をしようとする者は、開発段階に応じて、また治験製品に関連する新たな情報が国内外から得られた場合等には、手順書に従って少なくとも年に1回治験製品概要書を見直し、必要に応じて改訂すること。

2 治験の依頼をしようとする者は、新たな重要な情報が得られた場合には、治験製品概要書の改訂に先立って、治験責任医師、実施医療機関の長及び規制当局にこれらの情報を報告すること。

(説明文書の作成の依頼)

第九条 治験の依頼をしようとする者は、治験責任医師となるべき者に対して、第七十条第一項の規定により説明を行うために用いられる文書(以下「説明文書」という。)の作成を依頼しなければならない。

1 治験の依頼をしようとする者は、実施医療機関の長に対して治験の依頼をする前に、第71条で規定する説明文書を治験責任医師となるべき者が作成するために、必要な資料・情報を治験責任医師となるべき者に提供し、その作成に協力すること。

(実施医療機関の長への文書の事前提出)

第十条 治験の依頼をしようとする者は、あらかじめ、次に掲げる文書を実施医療機関の長に提出しなければならない。

一 治験実施計画書(第七条第五項の規定により改訂されたものを含む。)

二 治験製品概要書(第八条第二項の規定により改訂されたものを含む。)及び治験使用製品(被験製品を除く。)に係る科学的知見を記載した文書

三 症例報告書の見本

四 説明文書

五 治験責任医師及び治験分担医師(以下「治験責任医師等」という。)となるべき者の氏名を記載した文書

六 治験の費用の負担について説明した文書

七 被験者の健康被害の補償について説明した文書

2 治験の依頼をしようとする者は、前項の規定による文書の提出に代えて、第四項で定めるところにより、当該実施医療機関の長の承諾を得て、前項各号に掲げる文書に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次に掲げるもの(以下この条において「電磁的方法」という。)により提出することができる。この場合において、当該治験の依頼をしようとする者は、当該文書を提出したものとみなす。

一 治験の依頼をしようとする者の使用に係る電子計算機と、実施医療機関の長の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの

イ 治験の依頼をしようとする者の使用に係る電子計算機と実施医療機関の長の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法

ロ 治験の依頼をしようとする者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された前項各号に掲げる事項を電気通信回線を通じて実施医療機関の長の閲覧に供し、当該実施医療機関の長の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに同項各号に掲げる事項を記録する方法(電磁的方法による文書の提出を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては、治験の依頼をしようとする者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法)

二 磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに前項各号に掲げる事項を記録したものを交付する方法

3 前項各号に掲げる方法は、実施医療機関の長がファイルへの記録を出力することにより書面を作成することができるものでなければならない。

4 治験の依頼をしようとする者は、第二項の規定により第一項各号に掲げる文書を提出しようとするときは、あらかじめ、当該実施医療機関の長に対し、その用いる次に掲げる電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。

一 第二項各号に掲げる方法のうち治験の依頼をしようとする者が使用するもの

二 ファイルへの記録の方式

5 前項の承諾を得た治験の依頼をしようとする者は、当該実施医療機関の長から書面又は電磁的方法により電磁的方法による通知を受けない旨の申出があったときは、当該実施医療機関の長に対し、第一項各号に掲げる文書の提出を電磁的方法によってしてはならない。ただし、当該実施医療機関の長が再び前項の承諾をした場合は、この限りでない。

(第1項)

1 治験の依頼をしようとする者は、治験の依頼にあたっては、あらかじめ実施医療機関の長に以下の最新の文書を提出すること。

1) 治験実施計画書

2) 治験製品概要書及び治験使用製品(被験製品を除く。)に係る科学的知見を記載した文書(添付文書又は注意事項等情報、学術論文等)

3) 症例報告書の見本(治験実施計画書において、症例報告書に記載すべき事項が十分に読み取れる場合は、当該治験実施計画書をもって症例報告書の見本に関する事項を含むものと解してよい。)

4) 説明文書(説明文書と同意文書は一体化した文書又は一式の文書として取り扱われたい(第2条の解説18の1)のイ)及びウ)を参照。)

5) 治験責任医師等の氏名を記載した文書(治験責任医師となるべき者がその要件を満たすことを証明した履歴書及びその他の文書並びに治験分担医師となるべき者の氏名リスト(求めがあった場合には治験分担医師の履歴書))

6) 治験の費用の負担について説明した文書(被験者への支払(支払がある場合)に関する資料)(第51条第1項及び第2項の解説11を参照)

7) 被験者の健康被害に対する補償に関する資料

8) その他の必要な資料

注) 治験責任医師となるべき者は、最新の履歴書及びその他の適切な文書並びに治験分担医師を置く場合には当該治験分担医師となるべき者の氏名リスト(求めがあった場合には治験分担医師の履歴書)を、治験の依頼をしようとする者に提出すること(第6条及び第62条参照)。

2 本条各号に規定する文書は、必ずしも個別の作成を求めるものではなく、記載すべき内容が確認できる場合にあっては、複数の文書を1つにまとめることが可能であること。

3 説明文書と同意文書は一体化した文書又は一式の文書として取り扱うこと(第2条の解説18の1)のウ)を参照)。

(治験製品の事前交付の禁止)

第十一条 治験の依頼をしようとする者は、治験の契約が締結される前に、実施医療機関に対して治験製品を交付してはならない。

1 治験の依頼をしようとする者は、実施医療機関との間で治験の契約が締結されるまでは、実施医療機関に治験製品を交付してはならない。

(業務の委託)

第十二条 治験の依頼をしようとする者は、治験の依頼及び管理に係る業務の全部又は一部を委託する場合には、次に掲げる事項を記載した文書により当該委託を受けた者(以下この節において「受託者」という。)との契約を締結しなければならない。

一 当該委託に係る業務の範囲

二 当該委託に係る業務の手順に関する事項

三 前号の手順に基づき当該委託に係る業務が適正かつ円滑に行われているかどうかを治験の依頼をしようとする者が確認することができる旨

四 受託者に対する指示に関する事項

五 前号の指示を行った場合において当該措置が講じられたかどうかを治験の依頼をしようとする者が確認することができる旨

六 受託者が治験の依頼をしようとする者に対して行う報告に関する事項

七 当該委託する業務に係る第十四条の措置に関する事項

八 その他当該委託に係る業務について必要な事項

2 治験の依頼をしようとする者は、前項の規定による文書による契約の締結に代えて、第四項で定めるところにより、前項の受託者の承諾を得て、前項各号に掲げる事項を内容とする契約を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次に掲げるもの(以下この条において「電磁的方法」という。)により締結することができる。この場合において、当該治験の依頼をしようとする者は、当該文書による契約の締結をしたものとみなす。

一 治験の依頼をしようとする者の使用に係る電子計算機と、受託者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの

イ 治験の依頼をしようとする者の使用に係る電子計算機と受託者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、それぞれの使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法

ロ 治験の依頼をしようとする者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された前項各号に掲げる事項を電気通信回線を通じて受託者の閲覧に供し、当該受託者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに同項各号に掲げる事項を記録する方法(電磁的方法による契約の締結を行う旨の承諾又は行わない旨の申出をする場合にあっては、治験の依頼をしようとする者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法)

二 磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに前項各号に掲げる事項を記録したものを交付する方法

3 前項各号に掲げる方法は、次に掲げる技術的基準に適合するものでなければならない。

一 治験の依頼をしようとする者及び受託者がファイルへの記録を出力することにより書面を作成することができるものであること。

二 ファイルに記録された文書に記載すべき事項について、改変が行われていないかどうかを確認することができる措置を講じていること。

4 治験の依頼をしようとする者は、第二項の規定により第一項各号に掲げる事項を内容とする契約を締結しようとするときは、あらかじめ、当該受託者に対し、その用いる次に掲げる電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。

一 第二項各号に掲げる方法のうち治験の依頼をしようとする者が使用するもの

二 ファイルへの記録の方式

5 前項各号の規定による承諾を得た治験の依頼をしようとする者は、受託者から書面又は電磁的方法により電磁的方法による契約を締結しない旨の申出があったときは、受託者に対し、第一項各号に掲げる事項を内容とする契約の締結を電磁的方法によってしてはならない。ただし、受託者が再び前項の規定による承諾をした場合は、この限りでない。

(第1項)

1 治験の依頼をしようとする者は、治験の依頼及び管理に係る業務(治験製品の製造及び品質管理も含む。)の全部又は一部を委託することができる(当該受託者は開発業務受託機関とも呼ばれる。)。ただし、治験計画の届出及び規制当局への不具合等の報告については、当該業務を、開発業務受託機関に委託することはできない。また、治験の依頼及び管理に係る業務を委託する場合においては、治験の依頼をしようとする者と当該受託者たる開発業務受託機関は文書により、委託業務の範囲、委託業務の手順に関する事項、治験の依頼をしようとする者が、手順に基づき委託業務が適正かつ円滑に行われているかどうかを確認することができる旨等について記載した文書により契約を締結すること。

2 開発業務受託機関は、受託者たる開発業務受託機関が実施医療機関において業務を行う場合においては、治験依頼者とともに、当該受託業務により生じた健康被害の治療に要する費用その他の損失を補償するための手順を定め、当該手順書に従って健康被害の補償に関する業務を実施すること(第14条参照)。

3 治験依頼者が開発業務受託機関に委託した治験に関連する業務については、開発業務受託機関との間で取り交わした文書に全て明記すること。

4 治験に関連する業務のうち、開発業務受託機関に明確に委託されていないものは、全て治験依頼者が行うこと。

5 受託者たる開発業務受託機関は、当該受託業務を本基準に従って行うこと。

6 受託者たる開発業務受託機関は、業務終了後も開発業務受託機関で継続して保存すべき文書又は記録(データを含む。)及びその期間を治験依頼者との契約書に定めること。なお、保存すべき期間については、第34条を参照のこと。

7 受託者たる開発業務受託機関は、法第23条の25第5項後段及び法第80条の2第7項の規定による調査等の対象となる。治験依頼者は、規制当局による調査時に開発業務受託機関が保存すべき文書又は記録(データを含む。)の全ての記録を直接閲覧に供することを、開発業務受託機関との治験の契約書に明記すること。

8 受託者たる開発業務受託機関は、治験依頼者が行う監査及び規制当局による調査を受け入れること。受託者は、治験依頼者の監査担当者及び規制当局の求めに応じて、保存すべき文書又は記録(データを含む。)の全ての治験関連記録を直接閲覧に供すること。

9 治験の依頼をしようとする者(治験依頼者)は、治験の依頼及び管理に関する業務を開発業務受託機関に委託することができるが、治験データの品質と完全性に関する最終責任は常に治験依頼者が負うこと。開発業務受託機関は品質保証及び品質管理を履行すること。なお、治験依頼者は、開発業務受託機関によって他者へ再委託された業務全てが適切に監督されていることを保証すること。

(治験の契約)

第十三条 治験の依頼をしようとする者及び実施医療機関(前条の規定により業務の全部又は一部を委託する場合にあっては、治験の依頼をしようとする者、受託者及び実施医療機関)は、次に掲げる事項について記載した文書により治験の契約を締結しなければならない。

一 契約を締結した年月日

二 治験の依頼をしようとする者の氏名及び住所

三 前条の規定により業務の全部又は一部を委託する場合にあっては、受託者の氏名、住所及び当該委託した業務の範囲

四 実施医療機関の名称及び所在地

五 契約担当者の氏名及び職名

六 治験責任医師の氏名

七 治験の期間

八 治験使用製品の管理に関する事項

九 記録(データを含む。)の保存に関する事項

十 この省令の規定により治験依頼者及び実施医療機関に従事する者が行う通知に関する事項

十一 被験者の秘密の保全に関する事項

十二 治験の費用に関する事項

十三 実施医療機関が治験実施計画書を遵守して治験を行う旨

十四 実施医療機関が治験依頼者の求めに応じて第六十一条第二項各号に掲げる記録(文書を含む。)を閲覧に供する旨

十五 実施医療機関がこの省令、治験実施計画書又は当該契約に違反することにより適正な治験に支障を及ぼしたと認める場合(第六十六条に規定する場合を除く。)には、治験依頼者が治験の契約を解除できる旨

十六 被験者の健康被害の補償に関する事項

十七 その他治験が適正かつ円滑に行われることを確保するために必要な事項

2 前項の文書による契約については、前条第二項から第五項までの規定を準用する。この場合において、同条第二項中「前項の受託者」とあるのは「実施医療機関(この条の規定により業務の全部又は一部を委託する場合にあっては、実施医療機関及び受託者)(以下「実施医療機関等」という。)」と、同項第一号並びに同条第三項第一号、同条第四項及び第五項中「受託者」とあるのは「実施医療機関等」と読み替えるものとする。

(第1項)

1 治験の契約は、実施医療機関の長が治験審査委員会の意見に基づいて治験の実施を了承した後に、治験の依頼をしようとする者と実施医療機関の間で文書により行うこと。なお、実施医療機関の契約者については、実施医療機関の長又は実施医療機関の長が選任した者のいずれでも差し支えないが、その責任は実施医療機関の長が負うこと。また、治験責任医師は契約書の内容を確認するが、必ずしも署名等は必要としない。

2 第12条の規定により治験の依頼をしようとする者が業務の全部又は一部を委託する場合であって、受託者たる開発業務受託機関が実施医療機関において業務を行うときには、治験の依頼をしようとする者、開発業務受託機関及び実施医療機関の三者の間で契約を文書により締結すること。なお、治験依頼者による治験の準備及び管理に関する業務、実施医療機関における治験の実施に関する業務が円滑に実施できる場合にあっては、治験の依頼をしようとする者及び実施医療機関の間、並びに治験を依頼しようとする者及び開発業務受託機関の間で、適切な契約を文書により締結することで差し支えない。また治験を依頼しようとする者、開発業務受託機関及び実施医療機関の三者の間で合意の上、開発業務受託機関及び実施医療機関の間の二者の契約としても差し支えない。

3 契約書には、次に掲げる事項が含まれていること。なお、これら事項については、必ずしも一の契約書に全て含まれていなくても差し支えない。(例えば、複数の治験に共通する事項等に関する基本的な契約書と、各治験の個別事項等に関する契約書を、別個に作成・締結することでも差し支えない。)

また、実施医療機関と治験を依頼しようとする者との契約を支援する業務に関しては、臨床研究中核病院等のネットワークの事務局等、当該実施医療機関以外の者が行っても差し支えない。

1) 契約を締結した年月日

2) 治験の依頼をしようとする者(契約書には治験依頼者と記載して差し支えない。)の氏名及び住所(法人にあっては、名称及び主たる事業所の所在地)

3) 開発業務受託機関に業務を委託する場合には、開発業務受託機関の氏名及び住所(法人にあっては、名称及び主たる事業所の所在地)並びに委託する業務の内容

4) 実施医療機関の名称、所在地

5) 契約者の氏名及び職名

6) 治験責任医師の氏名

7) 治験期間

8) 治験使用製品の管理に関する事項(実施医療機関の長の指名した治験製品管理者等が第24条第6項及び第7項の規定により提供された手順書又は文書に従って治験使用製品を適切に管理する旨を含む。)

9) 記録(データを含む。)の保存に関する事項(実施医療機関は、保存すべき文書又は記録を、治験依頼者によって保存の必要がなくなった旨の通知がなされるまで保存すること。なお、実施医療機関の長又は治験審査委員会の設置者が記録を保存すべき期間については、各々第61条及び第53条を参照のこと。また、治験依頼者がこれらの規定よりも長期間の保存を必要とする場合には、両者が協議するものであること。)

10) 本基準の規定により治験依頼者及び実施医療機関に従事する者が行う通知に関する事項

11) 被験者の秘密の保全に関する事項

12) 治験の費用に関する事項(治験に係る金銭の支払については、治験依頼者と実施医療機関との間で、文書で取り決めておくこと。)

13) 実施医療機関が本基準及び治験実施計画書を遵守して治験を行う旨

14) 治験依頼者が行うモニタリング及び監査並びに治験審査委員会及び規制当局による調査を受け入れること。また、治験依頼者のモニター及び監査担当者並びに治験審査委員会及び規制当局の求めに応じて、原資料等の全ての治験関連記録を直接閲覧に供すること。

15) 実施医療機関が本基準、治験実施計画書又は当該契約に違反することにより適正な治験に支障を及ぼしたと認める場合(第66条に規定する場合を除く。)には、治験依頼者が治験の契約を解除できる旨(第32条第1項参照)

16) 治験に関連して健康被害が発生した場合の補償に関する事項

17) その他治験が適正かつ円滑に行われることを確保するために必要な事項

ア) 治験課題名

イ) 治験内容

ウ) 治験依頼者が提供したデータの記録及び報告の手続に関する事項

エ) その他必要な事項(治験依頼者に帰属する情報の秘密の保全に関する事項等)

4 第8号の「治験使用製品の管理に関する事項」とは、実施医療機関の長の指名した治験製品管理者が、第24条第6項及び第7項の規定により提供された手順書又は文書に従って治験依頼者により交付された治験使用製品を適切に管理する旨を含むこと。

5 第10号の趣旨は、本基準中に規定する第28条第2項及び第3項、第32条第2項及び第3項、第51条第6項、第60条第3項及び第4項並びに第68条第2項に規定する通知が、適切な時期に適切な方法で行われなければならない旨である。

6 第11号「被験者の秘密の保全に関する事項」とは、法第80条の2第10項の規定により、治験依頼者又はその役員若しくは職員が、モニタリング、監査の際に得た被験者の秘密を漏らしてはならない旨、及び、これらの地位にあった者についても同様である旨を含むこと。

7 第12号「治験の費用に関する事項」には、費用算定が可能な内容を記載することで差し支えない。なお、本項の記載に基づく治験の費用の支払は、治験の実績に応じた適正なものであること。

8 第14号は、実施医療機関がモニター又は監査担当者に対して第61条第2項各号に掲げる記録を直接閲覧させる旨であること。

9 本条の規定により契約を締結した受託者(開発業務受託機関)は、法第23条の25第5項後段及び法第80条の2第7項の規定による調査等の対象となること。

10 治験依頼者は、実施医療機関の長、治験責任医師及びその他治験に関与する全ての者との合意を、実施医療機関との治験契約書及び治験実施計画書の一部又は別個の合意文書として保存しておくこと。

11 治験依頼者は、モニタリング、監査並びに治験審査委員会及び規制当局の調査時に治験責任医師及び実施医療機関が原資料等の全ての治験関連記録を直接閲覧に供することを、実施医療機関との治験の契約書及び治験実施計画書又は他の合意文書に明記すること。

12 治験依頼者は、治験に関連する全ての施設及び原資料等の全ての治験関連記録を、治験依頼者によるモニタリング及び監査、並びに規制当局による調査のための直接閲覧が可能であるように全ての関係者との合意を治験が開始される前に得ておくこと。

(第2項)

1 治験依頼者は、第12条第2項から第5項までの規定を準用し、電磁的方法により契約を締結しようとするときは、あらかじめ、実施医療機関の承諾を得ること。なお、実施医療機関の承諾については、第1項解説1における実施医療機関の契約者と同様に取り扱うことで差し支えない。

注) 治験依頼者は、治験の契約を締結する前に次の(a)から(c)について、治験実施中に(d)について対応する必要がある。

(a) 治験を依頼しようとする者は、治験審査委員会が治験の実施を承認した場合は、実施医療機関との間で治験の契約を締結する前に、実施医療機関の長から次の文書を入手すること。

1) 当該治験審査委員会の名称と所在地が記された文書

2) 当該治験審査委員会が本基準に従って組織され、活動している旨を治験審査委員会が自ら確認した文書

3) 治験審査委員会が承認したことを証する文書及びこれに基づく実施医療機関の長の指示、決定の文書、並びに治験を依頼しようとする者が変更の有無等の確認のために必要とする場合には、審査に用いられた治験実施計画書等の文書

(b) 治験を依頼しようとする者は、治験審査委員会が治験実施計画書、説明文書及びその他の手順について、何らかの修正を条件に治験の実施を承認した場合には、実施医療機関との間で治験の契約を締結する前に、実施医療機関の長から、当該治験審査委員会が修正を条件に承認したことを証する文書及びこれに基づく実施医療機関の長の指示、決定の文書を入手すること。(a)に規定するその他の文書の入手については、同規定を準用する。なお、何らかの修正を必要とされた文書は速やかに最新のものにすること。

(c) 治験を依頼しようとする者は、治験審査委員会が治験の実施を却下した場合は、実施医療機関の長から、当該治験審査委員会が却下したことを証する文書及びこれに基づく実施医療機関の長の決定の文書を入手すること。(a)に規定するその他の文書の入手については、同規定を準用する。

(d) 治験依頼者は、実施医療機関の長から、実施中の治験に関して治験審査委員会が実施したすべての継続審査等に係る、承認したことを証する文書、修正を条件に承認したことを証する文書、又は既に承認した事項を取り消したこと(治験の中止又は中断を含む。)を証する文書及びこれらに基づく実施医療機関の長の指示、決定の文書を入手すること。(a)に規定するその他の文書の入手については、同規定を準用する。なお、何らかの修正を必要とされた文書は速やかに最新のものにすること。

(被験者に対する補償措置)

第十四条 治験の依頼をしようとする者は、あらかじめ、治験に係る被験者に生じた健康被害(受託者の業務により生じたものを含む。)の補償のために、保険契約の締結その他の必要な措置を講じておかなければならない。

1 治験の依頼をしようとする者は、治験に関連して被験者に生じた健康被害(治験に係る業務の全部又は一部を委託した場合における当該委託業務により生じた健康被害を含む。)の治療に要する費用その他の損失を補償するための手順書を定めるとともに、その履行を確保するために、保険契約の締結その他の措置を講じておくこと。

2 本条は上記1を受けたものであり、括弧書きの「受託者」は第12条の受託者、いわゆる開発業務受託機関を指す。

注1) 治験に関連して被験者に健康被害が生じた場合には、過失によるものであるか否かを問わず、被験者の損失を適切に補償すること。その際、因果関係の証明等について被験者に負担を課すことがないようにすること(第1条の解説参照)。

注2) 開発業務受託機関は、治験依頼者とともに、当該受託業務により生じた健康被害の治療に要する費用その他の損失を補償するための手順書を定め、当該手順書に従って健康被害の補償に関する業務を実施すること(第12条参照)。

(治験国内管理人)

第十五条 本邦内に住所を有しない治験の依頼をしようとする者は、治験使用製品による保健衛生上の危害の発生又は拡大の防止に必要な措置を採らせるため、治験の依頼をしようとする者に代わって治験の依頼を行うことができる者を、本邦内に住所を有する者(外国法人で本邦内に事務所を有するものの当該事務所の代表者を含む。)のうちから選任し、この者(以下「治験国内管理人」という。)に治験の依頼に係る手続を行わせなければならない。

1 治験国内管理人は、本邦内に住所を有しない治験の依頼をしようとする者が本邦において治験を実施するにあたり、本基準、治験に係る法令及び行政通知等を理解するために必要な資料又は情報を当該治験の依頼をしようとする者に提供すること。

2 本邦内に住所を有しない治験の依頼をしようとする者に選任された治験国内管理人は、治験の依頼の基準に従い、本邦内における治験の依頼に係る一切の手続を行うとともに、厚生労働大臣に治験の計画の届出等を行うこと。

2―2 第二節 自ら治験を実施しようとする者による治験の準備に関する基準

(業務手順書等)

第十六条 自ら治験を実施しようとする者は、治験実施計画書の作成、治験使用製品の管理、治験使用製品等の不具合情報等の収集、記録の保存その他の治験の実施の準備及び管理に係る業務に関する手順書を作成しなければならない。

2 自ら治験を実施しようとする者は、医師、歯科医師、薬剤師その他の治験の実施の準備及び管理に係る業務を行うことにつき必要な専門的知識を有する者を確保しなければならない。

(第1項)

1 自ら治験を実施しようとする者は、治験の準備に係る治験実施計画書の作成、治験製品概要書の作成、健康被害の補償に関する業務、治験の管理に係る治験使用製品の管理、治験使用製品等の不具合情報等の収集、モニタリング及び監査の実施、総括報告書の作成、記録の保存等の業務について手順書を作成すること。

2 第1項の「手順書」とは、治験に係る業務が恒常的に適正に実施されるよう標準的な手順を定めた文書である。なお、第21条第5号及び第6号、第35条第6項、第38条第2項、第40条第1項、第42条第1項等における「手順書」も同じ意味である。

なお、本条の以下の解説において自ら治験を実施する者とあるのは、自ら治験を実施しようとする者を含むものである。

3 多施設共同治験において、自ら治験を実施する者のうち治験責任医師と治験調整医師で分担して治験の実施の準備及び管理に係る業務を行う場合には、あらかじめ、業務の分担等を手順書に定めておく等により両者が行う業務を明確にしておくこと。なお、明確にされていない業務については、自ら治験を実施する者のうち治験責任医師である者が行うこと。また、治験調整医師に分担された業務についても、治験責任医師が把握できるようにしておくこと。

4 自ら治験を実施する者は、治験の全ての過程において品質マネジメントのためのシステムを履行し、被験者保護及び治験結果の信頼性確保に不可欠な活動に重点的に取り組むものとする。

品質マネジメントには、治験の実施並びにデータの作成、記録及び報告が、本基準及び治験実施計画書を遵守して行われることを保証するために、手順書に基づく品質保証及び品質管理のほか、以下のものが含まれる。

・効率的な治験実施計画書のデザイン

・データ収集及び処理に関するツール及び手順

・意思決定に不可欠な情報の収集

治験の品質保証及び品質管理のために使用する方法は、治験固有のリスク及び収集する情報の重要性に対して釣り合いのとれたものとすべきである。

また、自ら治験を実施する者は、実施した品質マネジメントについて総括報告書に記載すること。

このほか、品質マネジメントの詳細については、「治験における品質マネジメントに関する基本的考え方について」を参照のこと。

なお、「治験の品質保証」とは、治験の実施、データ作成、文書化(記録化)及び報告が、本基準及び治験実施計画書を遵守していることを保証するために設定された計画的かつ体系的な全活動をいう。また、「治験の品質管理」とは、治験関連の活動の質に求められる事項を充足しているか否かを検証するために治験の品質保証の一環として行われる実務的な手法及び活動をいう。

5 自ら治験を実施する者は、治験に関連する全てのデータの信頼性とその適正な処理を保証するために、データ取扱いの各段階に品質管理を適用すること。

6 自ら治験を実施する者は、治験に係る検体等の検査機関(実施医療機関の検査室等を含む。)において、検査が適切に実施されて治験に係るデータが信頼できることを保証するため、当該検査機関における精度管理等を保証する記録等を確認すること。

なお、確認すべき検査の範囲や具体的な確認方法は、各検査データの当該治験における位置づけ(主要評価項目であるかどうか等)を考慮すること。

7 自ら治験を実施する者は、第35条第6項に基づき、実施医療機関の治験製品管理者が治験使用製品の取扱い及び保管、管理並びにそれらの記録に際して従うべき指示を記載した手順書を定めること。当該手順書には、治験使用製品の受領、取扱い、保管、管理、処方並びに未使用治験使用製品の被験者からの返却及び治験製品提供者への返却又はその他の処分が、適切で確実に行われるように規定すること。

なお、治験製品以外の自ら治験を実施する者が作成した若しくは入手した、又は治験製品提供者から提供を受けた以外の治験使用製品であって、実施医療機関が在庫として保管するものの中から使用する治験使用製品については、自ら治験を実施する者は、実施医療機関において定められた取扱い、保管、管理及び処方等に係る手順等に基づき対応すること。

8 自ら治験を実施する者が作成すべき記録の保存に関する手順書には、実施医療機関及び当該治験に係る審査を行った治験審査委員会において保存すべき記録(第53条及び第61条参照)について、その保存の必要がなくなった場合には、その旨を実施医療機関の長及び実施医療機関の長を経由して治験審査委員会の設置者に通知することを含むこと。

なお、第43条第2項及び第3項に規定する治験の中断又は中止に関する自ら治験を実施する者から実施医療機関の長への文書による通知に関する事項(当該通知を受けた実施医療機関の長から治験責任医師及び治験審査委員会への通知については、第60条第2項に規定されている。)及び当該被験製品に係る製造販売承認を受けた場合に、治験製品提供者から自ら治験を実施する者へその旨が通知されるよう、治験製品提供者と契約を締結するなど必要な措置を講じることについても規定されている必要がある。

1) 自ら治験を実施する者は、治験を中止又は中断する場合には、実施医療機関の長にその旨とその理由の詳細を速やかに文書で通知すること(第43条第2項参照)。

2) 自ら治験を実施する者は、当該治験により収集された臨床試験の試験成績に関する資料が法第23条の25第3項に規定する申請書に添付されないことを知り得た場合には、その旨とその理由の詳細を実施医療機関の長に速やかに文書で通知すること(第43条第3項参照)。

3) 実施医療機関の長は、自ら治験を実施する者が治験の中止若しくは中断、又は当該治験により収集された臨床試験の試験成績に関する資料を法第23条の25第3項に規定する申請書に添付しないことを知った旨を通知してきた場合には、治験審査委員会に対し速やかにその旨を文書で通知するとともに、中止又は中断について文書で詳細に説明すること(第60条第2項及び第3項参照)。

4) 治験製品提供者は、自ら治験を実施する者が治験を実施した治験製品に係る再生医療等製品についての製造販売承認申請に関する情報を自ら治験を実施する者に提供すること。

9 自ら治験を実施する者は、治験分担医師に症例報告書の変更又は修正に関する手引きを提供すること。

10 自ら治験を実施する者は、当該治験を実施する実施医療機関以外の全ての関連施設及び原資料等の全ての治験関連記録を、自ら治験を実施する者が指定したものによるモニタリング及び監査、並びに治験審査委員会及び規制当局による調査のための直接閲覧が可能であるように全ての関係者との合意を治験が開始される前に得ておくものとし、これに関する規定が手順書に定められていること。

11 自ら治験を実施する者は、実施医療機関及び治験に係るその他の施設又は自ら治験を実施する者のスタッフが本基準、治験実施計画書及び手順書を遵守していない場合には、遵守を確保するべく迅速な措置を講じること。被験者保護や治験結果の信頼性に重大な影響を与える又は与えるおそれがある不遵守が発覚した場合には、自ら治験を実施する者は、根本原因を分析し、適切な是正措置及び予防措置を講じること。

(第2項)

1 「治験の実施の準備及び管理に係る業務を行うことにつき必要な専門的知識を有する者」とは、治験に関する医学的又は歯学的な問題について適切な助言を行う医学又は歯学の専門家並びに治験実施計画書、治験製品概要書等の作成・改訂、データの取扱い、統計解析の実施、総括報告書の作成等、治験の全過程を通じて活用されるべき実施医療機関内部及び外部の専門家(例:生物統計学、臨床薬理学、臨床検査学、臨床工学等の専門家)を含む。

2 自ら治験を実施する者は、治験に関する業務の総括的な監督、治験実施計画書、症例報告書の見本(治験実施計画書において、症例報告書に記載すべき事項が十分に読み取れる場合は、当該治験実施計画書をもって症例報告書の見本に関する事項を含むものと解してよい。)及び治験製品概要書の作成及び改訂、データの取扱い、検証及び統計解析の実施並びに治験の中間報告書(必要な場合)及び総括報告書等の作成等、治験の全過程を通じ適格な者(例:生物統計学者、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、臨床薬理学者、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士等)を活用すること。

3 自ら治験を実施しようとする者は、治験の準備において治験に関連する全ての業務を確定し、適格な者に割り当てること。