添付一覧
○「生食用食肉の腸内細菌科菌群の試験法について」の一部改正について
(令和3年3月30日)
(生食発0330第8号)
(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知)
(公印省略)
生食用食肉の腸内細菌科菌群の試験法については、平成23年9月26日付け食安発0926第1号「生食用食肉の腸内細菌科菌群の試験法について」により通知しているところです。
今般、別紙のとおり、選択増菌培養を削除する等改正することとしましたので、関係者への周知をお願いするとともに、その運用に遺漏なきようお取り計らい願います。
なお、令和3年9月30日までは、従前の例により検査を行うことができる旨申し添えます。
別紙
○生食用食肉の腸内細菌科菌群の試験法について
(平成23年9月26日)
(食安発0926第1号)
(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)
最終改正 令和3年3月30日生食発0330第8号
生食用食肉の規格基準に係る取扱いについては、平成23年9月12日付け食安発第0912第7号(以下「施行通知」という。)により通知したところである。
施行通知中、第4の3において示すこととしていた生食用食肉の腸内細菌科菌群試験法について、別添のとおりの試験法を定めることとしたので、関係者への周知方よろしくお願いする。
また、施行通知中、第4の4(9)の微生物検査の実施に当たっては、下記の事項に留意の上、その運用に遺憾のないようにされたい。
記
1 成分規格について
「腸内細菌科菌群が陰性でなければならない」とは、別添の試験法において、検体25g中、腸内細菌科菌群が検出されないことをいうこと。なお、1ロットにつき、1検体の試験結果により、成分規格の適合性の確認を行って差し支えないこと。
2 ロットについて
ロットの同一性の判断に当たっては、原則として、同一の枝肉に由来する部位であって、かつ同一の加熱条件で加工が行われたとみなすことが可能なものとすること。
3 施行通知第4の4(9)に係る検体の採取方法について
食品安全委員会において、リスク低減の確認のため、1検体を25gとして、25検体以上が陰性であることの確認が必要であるとされていることを踏まえ、加工工程全体の妥当性を確認するための検体の採取に当たっては、ロットを代表したものとなるよう、設定された加熱条件により加工を行った同一ロットの生食部位から計25検体以上を採取すること。
(別添)
生食用食肉の腸内細菌科菌群(Enterobacteriaceae)検出試験法
1 はじめに
本試験法でいう腸内細菌科菌群(Enterobacteriaceae)とは,バイオレットレッド胆汁ブドウ糖(VRBG)寒天培地上で特徴的な集落を形成し,ブドウ糖を発酵するオキシダーゼ反応陰性の細菌をいう。
2 試験法の概要
生食用食肉試料25gを秤量し,緩衝ペプトン水225mlを加えホモジナイザーを用いて攪拌混合した後,37℃で18±2時間培養後,VRBG寒天培地に画線塗抹する。37℃で24±2時間培養後,形成された腸内細菌科菌群の定型集落を釣菌し,オキシダーゼ反応及びブドウ糖発酵性を確認し,腸内細菌科菌群の有無を判定する。
3 培地及び試薬
1) 緩衝ペプトン水(Buffered Peptone Water;BPW):増菌培地
各培地成分又は乾燥培地を溶解して121℃,15分間高圧蒸気滅菌して使用する。必要であれば,滅菌後に25℃でのpHが7.0±0.2となるように調整する。密栓した容器に入れ5±3℃で6か月間保存可能である。
動物組織の酵素消化物* |
10.0g |
塩化ナトリウム |
5.0g |
リン酸水素二ナトリウム(12水和物) |
9.0g |
リン酸二水素カリウム |
1.5g |
精製水 |
1,000ml |
* カゼイン酵素消化物など
2) バイオレットレッド胆汁ブドウ糖寒天培地(Violet Red Bile Glucose Agar;VRBG寒天培地):選択分離培地
各培地成分又は乾燥培地を加温溶解し,必要であれば,25℃でのpHが7.4±0.2となるように調整する。本培地を滅菌してはならない。溶解した培地は調整後4時間以内に使用する。少なくとも3mmの厚さになるように、直径85~100mmのシャーレに分注し、固める。
動物組織の酵素消化物* |
7.0g |
酵母エキス |
3.0g |
胆汁酸塩No.3 |
1.5g |
ブドウ糖 |
10.0g |
塩化ナトリウム |
5.0g |
ニュートラルレッド |
0.03g |
クリスタルバイオレット |
0.002g |
寒天 |
9g~18g** |
精製水 |
1,000ml |
* 獣肉ペプトンなど
** 寒天のゲル強度による
3) 普通寒天培地(Nutrient Agar)
各培地成分又は乾燥培地を,加温溶解して121℃,15分間高圧蒸気滅菌後,寒天平板として使用する。必要であれば,滅菌後に25℃でのpHが7.0±0.2となるように調整する。
注:オキシダーゼ反応用には糖不含の培地を使用する。糖を含有する培地に発育した集落は酸性になるので,オキシダーゼ反応を誤判定する可能性がある。
肉エキス |
3.0g |
動物組織の酵素消化物* |
5.0g |
塩化ナトリウム |
5.0g |
寒天 |
9g~18g** |
精製水 |
1,000ml |
* 獣肉ペプトンなど
** 寒天のゲル強度による
4) グルコースOF培地
各培地成分又は乾燥培地を加温溶解して121℃,15分間高圧蒸気滅菌する。必要であれば,滅菌後に25℃でのpHが6.8±0.2となるように調整する。この培地は5±3℃で4週間保存可能である。使用時に酸素を除去するために、熱湯か蒸気で15分間加熱し,速やかに培養温度に冷やして使用する。
動物組織の酵素消化物* |
2.0g |
リン酸水素二カリウム |
0.3g |
ブドウ糖 |
10.0g |
塩化ナトリウム |
5.0g |
ブロモチモールブルー |
0.08g |
寒天 |
3g~4g** |
精製水 |
1,000ml |
* カゼインペプトンなど
** 寒天のゲル強度による。
5) オキシダーゼ試薬
用時調製して使用する。市販のオキシダーゼ試験用ろ紙を用いても良い。
N,N,N',N'―テトラメチル―p―フェニレンジアミン・ジヒドロクロライド |
1.0g |
精製水 |
100ml |
6) ミネラルオイル
乾熱滅菌器で170~180℃で1~2時間滅菌したものを使用する。
4 機械及び器具
1) 滅菌ハサミ
2) 滅菌ピンセット
3) ホモジナイザー:蠕動式(可能であれば速度及び時間を調整できる機種;ストマッカー)又は回転式(ブレンダー)のもの
4) ストマッカー用袋(ストマフィルター使用可)
5) フラスコ
6) 天秤
7) pHメーター
8) 滅菌ピペット:10ml,1ml,0.1mlが計量できるもの
9) メスシリンダー
10) ビーカー
11) 試験管:ブドウ糖発酵性試験用
12) 試験管立て
13) 白金耳,白金線
14) 高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ):少なくとも121℃(湿熱)を保持できるもの
15) 乾熱滅菌器:170~180℃(乾熱)を保持できるもの
16) 恒温器:37±1℃を保持できるもの
17) 恒温水槽:44~47℃を保持できるもの
18) 滅菌シャーレ:ガラス製又はプラスチック製で直径85~100mmのもの
19) スターラー及びスターラーバー
20) ろ過滅菌用器具(シリンジフィルター及び注射筒)
5 試験手順
1) 試料の調製
生食用食肉の生食部位から採取した検体の全体を無菌的に細切,混和した後,その25gをストマッカー用袋等に秤量して試料とする。
2) 増菌培養
秤量した試料に,BPW225mlを加えホモジナイザーを用いて1~2分間撹拌混合した後,37℃で18±2時間培養する。
3) 選択分離培養
培養後のBPWから1白金耳量をとり,VRBG寒天培地に画線塗抹した後,37℃で24±2時間培養する。
4) 定型集落の確認及び継代培養
① 培養後の寒天培地上に腸内細菌科菌群の定型集落(淡紅色~赤色又は紫色を呈する集落)が形成されているかを判定する。定型集落が認められた場合は,任意に単離集落を選定する。ある種の腸内細菌科菌群は集落又は培地の脱色を引き起こすことがある。従って,特徴的な集落が存在しない場合,白みがかった集落を確認試験のために選定すること。形状の異なる複数の定型集落が認められた場合は,それぞれに単離集落を選定する。
② 選定した集落をそれぞれ釣菌し,普通寒天培地に画線塗抹する。37℃で24±2時間培養後,単離集落を選定して次の確認試験を実施する。
5) 確認試験
培養後の普通寒天培地上に形成された単離集落について,オキシダーゼ試験及びブドウ糖発酵性試験を実施する。
① オキシダーゼ試験
白金耳,白金線又はガラス棒等を用いて単離集落の一部を取り,オキシダーゼ試薬を含ませたろ紙又は市販のオキシダーゼ試験用ろ紙の上に塗抹する。なお,ニクロム線を用いて塗抹してはならない。10秒以内にろ紙が暗青色化しない場合,オキシダーゼ反応は陰性と判定する。また,市販のオキシダーゼ試験用ろ紙を使用する場合,製造業者の使用説明書に従って判定する。
② ブドウ糖発酵性試験
白金線等を用いて,オキシダーゼ反応が陰性の集落をグルコースOF培地に穿刺し、表面にミネラルオイルを1cmの高さで重層した後,37℃で24±2時間培養する。培養後,培地全体の色調が黄色に変色した場合,ブドウ糖発酵性は陽性と判定する。また、市販の培地を使用する場合には、製造業者の使用説明書に従って判定する。
③ 腸内細菌科菌群の確定
オキシダーゼ反応が陰性,かつブドウ糖発酵性が陽性と判定された集落を腸内細菌科菌群と確定する。
6) 結果表示
腸内細菌科菌群が検出された場合は陽性/25gと表示する。また,腸内細菌科菌群が検出されなかった場合は陰性/25gと表示する。
6 参考文献
NIHSJ―15―2020,腸内細菌科菌群の検出試験法(定性法)
腸内細菌科菌群の検出試験法(増菌培養法)フローチャート