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○「リステリア・モノサイトゲネスの検査について」の一部改正について

(令和3年3月30日)

(生食発0330第5号)

(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知)

(公印省略)

リステリア・モノサイトゲネスの検査については、平成26年11月28日付け食安発1128第2号「リステリア・モノサイトゲネスの検査について」により通知しているところです。

今般、別紙のとおり、培養時間を変更する等改正することとしましたので、関係者への周知をお願いするとともに、その運用に遺漏なきようお取り計らい願います。

なお、令和3年9月30日までは、従前の例により検査を行うことができる旨申し添えます。

別紙

○リステリア・モノサイトゲネスの検査について

(平成26年11月28日)

(食安発1128第2号)

(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)

最終改正 令和3年3月30日生食発0330第5号

(公印省略)

リステリア・モノサイトゲネス(以下「リステリア」という。)の試験法については、平成5年8月2日付け衛乳第169号「乳及び乳製品のリステリアの汚染防止等について」により通知しているところである。

本年10月21日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会において、食品衛生法に基づく非加熱食肉製品及びナチュラルチーズ(ソフト及びセミハードに限る。)の成分規格にリステリアの基準値(100cfu/g)を設定することが了承されたところである。

ついては、リステリアの試験法を別添のとおり定めることとしたので、基準値設定後の円滑な監視指導に資するよう、事前の準備及び関係者への周知方よろしくお願いする。

リステリア定量試験法(別紙1)については、基準値の施行日より、リステリア定性試験法(別紙2)については、本日より適用することとする。

ただし、基準値が設定されるまでの間、リステリア定性試験法は、なお従前の例によることができる旨申し添える。

[別添]

食品中のリステリア・モノサイトゲネスの検査について

1.検査の概要

基準適合性は、対象となる食品検体1g当たり、リステリア・モノサイトゲネス生菌数が100を超えないことを別紙1に示す定量試験法によりn=5で評価する。予備試験を行う場合は、検体25gを対象とした予備定量試験法と定性試験法の併用により評価し、必要な場合は本試験(n=5で評価する定量試験法)を行い、その結果から当該食品の基準適合性を判断する。

予備試験は、3箇所以上から検体を採取し、計25gとし、別紙2に示す定性試験法により生菌の検出の有無を確認し、本試験を行う必要性を決定する。検体は、200g以上を確保し、定性試験の結果が出るまで4℃以下(冷凍食品の場合は冷凍状態)で保存する。また、基準適合性を迅速に評価する為に、定性試験用に作成したストマッカー等処理後の10%乳剤(half‐Fraser液体培地)から一部を分取し、直接酵素基質培地に接種、培養し、平板培地上に形成したリステリア・モノサイトゲネスの定型集落を計数することで、本試験の必要性を評価する。

具体的な予備試験の手順は、ストマッカー等処理後の10%乳剤(half‐Fraser液体培地)から、1mlをピペットにより滅菌試験管等に無菌的に分取し、3枚の酵素基質培地に全量を塗抹し、定量試験法と同様の手法で培養を行う(予備定量試験)。予備定量試験用に1mlを分取した残りの10%乳剤を用い、定性試験法により、生菌の有無を評価する。

予備定量試験により、リステリア・モノサイトゲネスの定型集落が3枚の酵素基質培地上に合計11集落以上観察された場合は、5集落について本試験と同様の手順で性状確認を行い、いずれもリステリア・モノサイトゲネスであることが確認された場合等、11集落以上のリステリア・モノサイトゲネスが別紙1の5.計数法に示す方法で確認された場合は、規格基準違反とする。リステリア・モノサイトゲネスの定型集落が3枚の酵素基質培地上に合計1から10集落観察された場合、又は定性試験によりリステリア・モノサイトゲネスが検出された場合は、速やかに以下の本試験を行う。

本試験は、4℃以下に保存してあった検体につき、検体量10gずつを対象とし、n=5で、定量試験を実施する。試験法は別紙1に示す定量試験法により行う。n=5で評価した結果、少なくともいずれかの1試料について11集落以上のリステリア・モノサイトゲネスが別紙1の5.計数法に示す方法で確認された場合は、規格基準違反とする。

なお、別紙1の定量試験法はISO 11290―2に示される試験法で実施しても差し支えない。

2.検体の調製

同一ロットの食品検体200g以上を準備する。ハサミ、ピンセット等を用いて3箇所以上から検体を無菌的に切り出し、合計25gとし、ストマッカー用袋(ストマフィルター使用可)に採る。それに225mlのhalf‐Fraser液体培地を加え、ストマッカー等で均質化し、ストマッカーを用いる場合は、1分間ストマッカー処理する(ストマッカーが準備できない施設は、揉み洗いを20回程度行う。)。

予備試験を行う場合のフロー図

[別紙1]

リステリア・モノサイトゲネス定量試験法

1.はじめに

本試験法で述べるリステリア・モノサイトゲネスとは、ISO 11290―2:2017で定義するListeria monocytogenesとする。

2.試験法の概要

試験試料Xgをストマッカー用袋等に無菌的にとりわけ、9×Xmlの前増菌培地又は希釈水を加え、ストマッカー等で均質化し、その1mlを1種類の酵素基質培地3枚に分けて塗布し、発育した定型集落数を測定する。L. monocytogenesと思われる5集落を純培養し、鏡検、溶血性試験、炭水化物分解試験を行い、L. monocytogenesと確定する。合計集落数、確認試験に用いた集落数及びL. monocytogenesと確定された集落数から、1検体当たりのL. monocytogenes菌数を算出する。

3.使用器具及び装置

(1) 滅菌ハサミ

(2) 滅菌ピンセット

(3) ホモジナイザー:蠕動式(可能であれば速度及び時間を調整できる機種;ストマッカー)又は回転式(ブレンダー)のもの

(4) ストマッカー用袋(ストマフィルター使用可)

(5) フラスコ

(6) 天秤

(7) pHメーター

(8) 滅菌ピペット、マイクロピペット及び滅菌チップ

(9) メスシリンダー

(10) ビーカー

(11) 小試験管

(12) 中試験管

(13) 試験管立て

(14) 白金耳、白金線

(15) 高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ):少なくとも121℃(湿熱)を保持できるもの

(16) 乾熱滅菌器:170~180℃(乾熱)を保持できるもの

(17) 恒温槽・ふ卵器(37±1℃、必要に応じて25±1℃)、恒温水槽

(18) 滅菌シャーレ:ガラス製又はプラスチック製で直径85~100mmのもの

(19) 顕微鏡、スライドグラス、カバーグラス(必要に応じて)

(20) スターラー及びスターラーバー

(21) ろ過滅菌用器具(シリンジフィルター及び注射筒)

4.培地、試薬及び抗血清

(1) 希釈溶液

Buffered peptone water(BPW)

half‐Fraser液体培地

(2) 選択分離寒天培地:Ottaviani and Agostiリステリア寒天培地(ALOA培地)又はそれと同等性の確認された酵素基質培地

(3) 確認用培地:トリプトソイ酵母エキス寒天培地(TSYEA):選択分離寒天培地上の定型集落の純培養に用いる。

(4) 血液寒天培地:血液寒天培地又は重層血液寒天培地

(5) 溶血性試験用赤血球浮遊液

リン酸緩衝液

赤血球浮遊液

(6) 生化学性状確認培地及び試薬

炭水化物分解試験用培地

グラム染色液

カタラーゼ試薬(任意)

以下の培地及び抗血清は必要に応じて用いる。

(7) 運動性試験用培地

非選択液体培地(トリプトソイ酵母エキス液体培地など):顕微鏡による旋回運動の確認に用いる。

半流動寒天培地:傘状発育の確認に用いる。

(8) 血清型別用抗血清:リステリア診断用血清

5.試験手順

(1) 試料の希釈

滅菌ストマッカー用袋に入れた試料XgにBPW又はhalf Fraser液体培地等の希釈水9×Xmlを加え、ストマッカー処理する。必要に応じて10倍階段希釈液を作製する。half Fraser液体培地を用いる場合は、できる限り迅速(最長45分以内)に平板培養を行う。必要に応じて、定量試験接種後に選択剤をhalf Fraser液体培地に加え、定性試験を行う。

(2) 平板培養

① 10倍希釈液及びその10倍階段希釈液1ml全量を、滅菌ピペットを用いてよく乾燥させた3枚の選択分離培地上に分けて塗抹する。必要に応じて、10倍階段希釈を繰り返して同様に塗布する。蓋をし、液が寒天に吸収されるまで約15分間放置する。

② 接種した培地を37℃で24±2時間培養する。

③ 乳白色のハローに囲まれた青緑色の集落はL. monocytogenesとみなす(定型集落)。集落形成が認められない場合は更に24±2時間の培養を追加する。

注:選択分離寒天培地として用いる酵素基質培地上では、既定の培養時間においてL. monocytogenesは乳白色のハローを伴った青緑色の定型集落を示すが、ハローが弱い株も存在する。

(3) 定型集落の確認培養

① 培養後、3枚の選択分離寒天培地上に形成された定型集落の合計数を計測する。その中から5個を釣菌し、非選択寒天培地平板上に単独集落が形成されるよう画線塗抹する。3平板上の合計推定集落数が5個未満の場合は、全てを確認試験用に釣菌する。

② 37℃で18~24時間又は十分増殖するまで培養する。

③ TSYEA平板上のリステリア属菌定型集落は、直径1~2mmで凸状を呈する無色不透明で、辺縁がはっきりしている。純培養がうまくいかない場合は、定型的なリステリア属菌の集落を非選択寒天培地で再び分離する。以下の試験は、非選択寒天培地上で純培養された集落を用いて行う。

④ カタラーゼ反応(必要に応じて)

単離した集落を、スライドグラス上に滴下した3%過酸化水素水中で懸濁させる。リステリア属菌はカタラーゼ陽性で、気泡が発生する。血液寒天培地上の集落を用いると、偽陽性反応を示すことがある。

⑤ 運動性試験(必要に応じて)

単離した集落を非選択液体培地に接種する。25℃に設定した恒温器内で8~24時間、培地が濁ってくるまで培養する。白金耳を用いて上記の培養液1滴をスライドグラス上に移す。カバーグラスをのせ、顕微鏡で観察する。一般的に、リステリア属菌は短桿菌の形態をとり、旋回運動を示す。

半流動寒天培地を用いた傘状発育の確認は、試験菌を培地に穿刺して、25~30℃で48時間~5日間培養する。リステリア属菌はこの温度帯で鞭毛が発育して運動性が認められ、特有の傘状発育(表層から3~5mm下で最もよく発育し、傘のように見える。)を示す。

⑥ 鏡検(酵素基質培地を用いた場合は任意となる。)

単離した集落でグラム染色を実施し、鏡検する。一般的に、L. monocytogenesを含むリステリア属菌は、グラム陽性で短桿菌の形態をとる。あるいは、染色せずに生理食塩水等に懸濁して顕微鏡で観察する。新鮮培養では旋回運動を示す。

(4) L. monocytogenesの確認試験

① 溶血性試験

以下から1つを選択して行う。

ア 血液寒天培地を用いる場合

血液寒天培地の表面を乾燥させ、画分して被検菌を接種する。同じ平板に、陽性対照(L. monocytogenes)と陰性対照(L. innocua)を接種する。37℃で24±2時間培養後、溶血性を観察する。L. monocytogenesは狭く透明な溶血帯を示す。L. innocuaは溶血帯を示さない。L. seeligeriは弱い溶血帯を示す。L. ivanoviiは通常幅広く、輪郭の明瞭な溶血帯を示す。明るい照明の下で観察する。集落を除去すると、溶血帯はより観察しやすくなる。

重層血液寒天培地やCAMP試験培地を用いてもよい。

イ 赤血球を用いる場合

集落を150μlの普通ブイヨンに懸濁し、37℃で2時間培養する。等量の赤血球浮遊液を加え、37℃で15~60分培養した後、5℃で約2時間冷蔵して、溶血性を観察する。疑わしい場合は24±2時間まで5℃に放置する。試験管の底に赤い点が見える場合は陰性である。陽性及び陰性対照を置くこと。

L. monocytogenesには稀にβ溶血やCAMP試験での陽性反応を示さない株が存在する。酵素基質培地でのハローが弱い株は溶血性を示さないことがあり、それらはグラム染色、カタラーゼ試験、運動性試験、CAMP試験、PCR等の追加試験を行い、非溶血性L. monocytogenesであることを確認することを推奨する。

② 炭水化物分解試験

非選択寒天培地上の集落を、白金耳を用いて炭水化物分解試験用培地にそれぞれ接種する。37℃で5日まで培養する。陽性反応(酸の産生)は多くの場合24~48時間以内に黄色に変化することで示される。L. monocytogenesはラムノース陽性、キシロース陰性である。稀にラムノース陰性のL. monocytogenesも存在する。

③ CAMP試験(任意)

血液寒天培地にStaphylococcus aureusとRhodococcus equiを培地上に平行線を描くように画線培養する(図1参照)。ごく薄くむらのない画線でなければならない。白金耳か白金線を寒天に対し直角に持つとよい。

注:CAMP試験に用いる菌株

CAMP試験の実施には、β―haemolysin産生性のS. aureus(例:WDCM 00034株)、R. equi(例:WDCM 0028株)、L. monocytogenes(例:WDCM 00021株あるいはWDCM 00109株)、L. innocua(例:WDCM 00017株)及びL. ivanovii(例:WDCM 00018株)が必要である。全てのS. aureusがCAMP試験に適しているわけではない。

次に、単離した試験菌株を、S. aureusとR. equiに直角に、かつ、接触しないように1~2mm離れた位置から画線する。1枚の平板に数株接種できる。同時に、コントロール株としてL. monocytogenes,L. innocua及びL. ivanoviiを画線する。血液寒天培地を用いた場合は、37℃で18~24時間培養する。重層血液寒天培地を用いた場合は、37℃で12~18時間培養する。

試験菌株がS. aureus又はR. equiに交差する部分でβ溶血が増強されているのが陽性反応とみなされる。

R. equiとの陽性反応は幅の広い(5~10mm)の矢頭状溶血を示す。R. equi菌株の周囲の拡散している領域と試験菌株の交差部分で1mm程度の弱い溶血帯しか見られない場合には、陰性とみなされる。L. monocytogenesは、基本的にR. equiとは陰性反応を示すが、一部の株では、R. equiの塗抹線近くでも溶血が増強されるものがある。

S. aureusとの陽性反応は、S. aureusの周囲の弱い溶血帯と試験菌株が交差する領域で、試験菌株を中心に3~4mm幅での増強された溶血として観察される。S. aureusとL. monocytogenesの交差する領域には、幅の広いβ溶血は認められず、幅の狭い溶血帯が観察される。

CAMP法の代替法としてβリジンディスク法を用いることも可能である。

この場合は、上記寒天培地の中央にディスクを置き、ディスクを中心として2~3mm離して放射状に被検菌を塗抹して培養する。L. monocytogenesではディスク周辺で溶血の増強が認められる。この試験でも、被検菌と同時に対象株として既知のL. monocytogenes、L. innocua及びL. ivanoviiを画線する。

L. monocytogenesには、溶血の弱い株が存在する。

図1.CAMP試験平板への接種と解説

注1:図に示すように血液寒天培地若しくは重層血液寒天培地に接種する。垂直の線はS. aureus(S)とR. equi(R)を示す。水平の線は、試験菌株を示す。斜線の領域は、溶血が増強されている領域を示す。

注2:点線で囲まれた領域は、S. aureusの増殖の影響を受けた領域を示す。

表 主要なリステリア属菌の鑑別性状

リステリア属菌

溶血性試験

炭水化物分解性

CAMP試験

(β溶血)

ラムノース

キシロース

S. aureus

R. equi

L. monocytogenes

L. ivanovii

L. innocua

v

L. welshimeri

v

L. seeligeri

L. grayi biovar grayi

L. grayi biovar murrayi

L. fleischmannii

L. marthii

L. rocourtiae

L. weihenstephanensis

v:+or-、(+):弱い陽性反応、+:90%以上陽性、-:陰性

6.計数法

3枚の選択分離培地上に形成された定型集落の合計数と、確認培養を実施した5集落のうちL. monocytogenesと確認された集落数を用いて、検体中の菌数を以下のように算出する。

a=b/A×C

a:L. monocytogenes集落数

b:確認培養でL. monocytogenesと確認された集落数

A:確認培養に用いた集落数

C:3枚の選択分離培地上に形成された定型集落の合計数

試験試料を階段希釈したものを塗布した平板の集落数を用いる場合には、集落数に希釈倍率をかけて検体1g(又はml)当たりの菌数を算出する。

7.結果の解釈

検体から作製した10倍乳剤液1ml当たりのL. monocytogenesの集落数が11以上(検体当たり100cfu/gを超える)の検体は、規格基準違反となる。

図2.フロー図

8.培地組成(参考例)及び調製方法

(1) 希釈溶液

Buffered peptone water(BPW)

粉末培地を精製水に溶解(必要ならば加温する。)後、滅菌後のpHが25℃で7.0±0.2となるよう調整する。121℃15分オートクレーブで滅菌する。

組成:

動物組織の酵素消化物 10.0g

塩化ナトリウム 5.0g

リン酸水素二ナトリウム(十二水和物) 9.0g

リン酸二水素カリウム 1.5g

精製水 1,000ml

half‐Fraser液体培地

① 基礎培地

基礎培地の組成又は粉末の市販品を、必要に応じて加温しながら水に溶かす。必要に応じて滅菌後のpHが25℃で7.2±0.2になるように調整する。試験に適した大きさのフラスコに分注して121℃15分オートクレーブで滅菌する。なお、後述の塩化リチウム溶液とナリジクス酸溶液は、オートクレーブ前に基礎培地に加えてもよい。

組成:

動物組織の酵素消化物 5.0g

カゼインの酵素消化物 5.0g

肉エキス 5.0g

酵母エキス 5.0g

塩化ナトリウム 20.0g

リン酸水素二ナトリウム(二水和物) 12.0g

リン酸二水素カリウム 1.35g

エスクリン 1.0g

精製水 1,000ml

② 塩化リチウム溶液

塩化リチウムを精製水に溶解し、孔経が0.45μm以下のフィルターでろ過滅菌する。塩化リチウムを精製水に溶解するときには、その反応が強い発熱を引き起こすため、必要な予防策を講じること。この溶液は、粘膜にも刺激を引き起こす。

組成:

塩化リチウム 3.0g

精製水 10ml

③ ナリジクス酸ナトリウム塩溶液

ナリジクス酸ナトリウムを水酸化ナトリウム水溶液に溶かし、孔経が0.45μm以下のフィルターでろ過滅菌する。

組成:

ナリジクス酸ナトリウム塩 0.1g

水酸化ナトリウム水溶液(0.05mol/L) 10ml

④ 塩酸アクリフラビン溶液

塩酸アクリフラビンを精製水に溶解し、孔経が0.45μm以下のフィルターでろ過滅菌する。

組成:

塩酸アクリフラビン 0.25g

精製水 100ml

⑤ クエン酸鉄(Ⅲ)アンモニウム溶液

クエン酸鉄(Ⅲ)アンモニウムを精製水に溶かし、孔経が0.45μm以下のフィルターでろ過滅菌する。

組成:

クエン酸鉄(Ⅲ)アンモニウム 5.0g

精製水 100ml

⑥ 完全培地

使用前に、基礎培地に滅菌済みの塩化リチウム溶液、ナリジクス酸ナトリウム溶液、塩酸アクリフラビン溶液及びクエン酸鉄(Ⅲ)アンモニウム溶液を加える。

組成:

基礎培地 100ml

塩化リチウム溶液 1ml

ナリジクス酸ナトリウム塩溶液 0.1ml

塩酸アクリフラビン溶液 0.5ml

クエン酸鉄(Ⅲ)アンモニウム溶液 1ml

(2) 選択分離寒天培地

Ottaviani and Agostiリステリア寒天培地(ALOA培地)、又はそれと同等性の確認された酵素基質培地(注参照)

Ottaviani and Agostiリステリア寒天培地(ALOA培地)

① 基礎培地

使用説明書に従って作製する。基礎培地を精製水に加熱溶解後、121℃15分オートクレーブで滅菌する。必要に応じて25℃におけるpHを7.2±0.2に調整する。

組成:

動物組織の酵素消化物 18.0g

カゼインの酵素消化物 6.0g

酵母エキス 10.0g

ピルビン酸ナトリウム 2.0g

ブドウ糖 2.0g

グリセロリン酸マグネシウム 1.0g

硫酸マグネシウム(無水) 0.5g

塩化ナトリウム 5.0g

塩化リチウム 10.0g

リン酸水素二ナトリウム(無水) 2.5g

5―ブロモ―4―クロロ―3―インドリル―β―D―グルコピラノシド 0.05g

寒天 12~18g1)

精製水 930ml2)

1)寒天強度による

2)アンホテリシンB溶液を用いる場合には、925ml

注:Ottaviani and Agostiリステリア寒天培地と同等性が確認された酵素基質培地

国立医薬品食品衛生研究所法(NIHSJ―09)に示されている酵素基質培地については、同等性が確認されている。その他の酵素基質培地については、メーカーの品質証明によるデータ又は第三者認証機関による評価を確認する。なお、酵素基質培地は、メーカーの品質証明を取るとともに、既知の菌株を用いて性能評価を行うこと。

② ナリジクス酸溶液

ナリジクス酸ナトリウムを5mlの水酸化ナトリウム水溶液に溶かし、孔経が0.45μm以下のフィルターでろ過滅菌する。

組成:

ナリジクス酸ナトリウム 0.02g

水酸化ナトリウム水溶液(0.05mol/L) 5ml

③ セフタジジム溶液

セフタジジムを5mlの精製水に溶かし、孔経が0.45μm以下のフィルターでろ過滅菌する。

組成:

セフタジジム 0.02g

精製水 5ml

④ ポリミキシンB溶液

硫酸ポリミキシンBを5mlの精製水に溶かし、孔経が0.45μm以下のフィルターでろ過滅菌する。

組成:

硫酸ポリミキシンB 76,700IU

精製水 5ml

⑤ 抗生剤サプリメント(シクロヘキシミド溶液又はアンホテリシンB溶液(シクロヘキシミド溶液の代替として))

a シクロヘキシミド溶液

シクロヘキシミドを2.5mlのエタノールに溶かし、その後2.5mlの精製水を加え、孔経が0.45μm以下のフィルターでろ過滅菌する。

組成:

シクロヘキシミド 0.05g

エタノール 2.5ml

精製水 2.5ml

b アンホテリシンB溶液

アンホテリシンBを塩酸/ジメチルホルムアミド(DMF)液に溶かし、孔経が0.45μm以下のフィルターでろ過滅菌する。

組成:

アンホテリシンB 0.01g

塩酸(1mol/L) 2.5ml

DMF 7.5ml

注:塩酸/DMF液は有毒なので、取り扱いに注意する。

⑥ 添加剤

2gのL―α―ホスファチジルイノシトールを50mlの精製水に溶かし、約30分スターラーで均一になるまで撹拌する。121℃15分オートクレーブで滅菌し、恒温水槽で47~50℃に冷却する。

組成:

L―α―ホスファチジルイノシトール 2.0g

精製水 50ml

⑦ 完全培地

47~50℃に保温した溶解済み基礎培地にナリジクス酸溶液、セフタジジム溶液、ポリミキシンB溶液、シクロヘキシミド溶液(又はアンホテリシンB溶液)及びL―α―ホスファチジルイノシトール溶液を加え、その度によく混和する。最終的にpHが25℃で7.2±0.2となるようにする。培地は均一に白濁する。各シャーレに18~20mlずつの調製直後の培地を分注し、固まるまで放置する。

組成:

基礎培地 930ml1)

ナリジクス酸溶液 5ml

セフタジジム溶液 5ml

ポリミキシンB溶液 5ml

シクロヘキシミド溶液 5ml

(又はアンホテリシンB溶液 10ml)

添加剤 50ml

1)アンホテリシンB溶液を用いる場合は、925ml

注:酵素基質培地を自家調製する場合は、培地の性能確認を行う。培地メーカーから粉末培地を購入した場合は、培地及びサプリメントともにメーカーの指示書に従い調製し、メーカーの品質証明を取るとともに、既知の菌株を用いて性能評価を行う。

(3) 確認用培地

トリプトソイ酵母エキス寒天培地(TSYEA)

下記の組成又は粉末培地を加温溶解する。必要に応じて滅菌後のpHが25℃で7.3±0.2となるよう調整する。試験に適した容量の試験管に分注し、121℃15分オートクレーブで滅菌する。寒天平板を作る場合には、試験に適した容量をシャーレに分注し、固める。

TSYEAは、トリプトソイ寒天培地(TSA)で代替可能である。

組成:

カゼインの酵素消化物 17.0g

大豆タンパクの酵素消化物 3.0g

酵母エキス 6.0g

ブドウ糖 2.5g

塩化ナトリウム 5.0g

リン酸水素二カリウム 2.5g

寒天 12~18g1)

精製水 1,000ml

1)寒天強度による

(4) 溶血性試験溶媒値(血液寒天培地又は重層血液寒天培地)

血液寒天培地

① 基礎培地

下記の組成又は粉末培地(Blood Agar Base No.2等)を精製水に溶解する(必要に応じて加温する。)。必要に応じて滅菌後のpHが25℃で7.2±0.2となるよう調整する。試験に適した容量のフラスコにいれ、121℃15分オートクレーブで滅菌する。

組成:

動物組織の酵素消化物 15.0g

肝臓の酵素消化物 2.5g

酵母エキス 5.0g

塩化ナトリウム 5.0g

寒天 9~18g1)

精製水 1,000ml

1)寒天強度による

② 完全培地

47~50℃に維持した恒温水槽中で保持し、冷ました基礎培地に血液を加え、よく混和する。滅菌シャーレに試験に適した容量を分注し、固める。

組成:

基礎培地 100ml

脱繊維血(羊、仔牛、牛由来) 5~7ml

重層血液寒天培地

シャーレに約10mlの基礎培地を分注し、固化させる。3mlを超えない量の血液寒天培地の非常に薄い層を重層し、固化させる。基礎培地を固化させた後、37℃のインキュベータに20分置きシャーレを温めてから血液寒天培地を注ぐとよい。

組成:上記血液寒天培地と同じ

(5) 溶血性試験用赤血球浮遊液

① リン酸緩衝液(PBS)

下記の組成を精製水に溶解する。必要に応じて滅菌後のpHが25℃で7.2±0.2となるよう調整する。121℃15分オートクレーブで滅菌する。

組成:

リン酸水素二ナトリウム(二水和物) 8.98g

リン酸二水素ナトリウム 2.71g

塩化ナトリウム 8.5g

精製水 1,000ml

② 赤血球浮遊液

赤血球は5±2℃に保管する。使用前に血清部分に溶血がないか確認し、溶血していなければ2mlの赤血球を98mlのPBSに浮遊する。溶血している場合は約4mlの赤血球を10mlのPBSに浮遊し、静かに混和して遠心分離する。上清が赤い場合、赤血球を廃棄する。赤くなければ、上清を除去し、赤血球2mlを98mlのPBSに浮遊する。作製した赤血球浮遊液は5日間5±2℃で保存可能であるが、溶血した場合は廃棄する。

(6) 生化学性状確認試験用培地及び試薬

炭水化物分解試験用培地

① 基礎培地

下記の組成又は粉末培地を精製水に溶解する(必要に応じて加温する。)。必要に応じて滅菌後のpHが25℃で6.8±0.2となるよう調整する。試験に適した容量のフラスコにいれ、121℃15分オートクレーブで滅菌する。

組成:

動物組織の酵素消化物 10.0g

肉エキス 1.0g

塩化ナトリウム 5.0g

ブロモクレゾールパープル 0.02g

精製水 1,000ml

② 炭水化物溶液

下記組成を精製水に溶かし、孔経が0.45μm以下のフィルターでろ過滅菌する。

組成:

L―ラムノース又はD―キシロース 5.0g

精製水 100ml

③ 完全培地

オートクレーブにかけた基礎培地とろ過滅菌した炭水化物溶解液を9:1の割合で混合する。

組成:

基礎培地 900ml

炭水化物溶液 100ml

グラム染色液

市販のグラム染色液キットを用いる。

カタラーゼ試薬

3%(最終濃度)過酸化水素水を用いる。

(7) 運動性試験用培地

半流動寒天培地

下記の組成を加温溶解する。必要に応じて滅菌後のpHが25℃で7.3±0.2となるよう調整する。試験管に約5mlずつ分注し、121℃15分オートクレーブで滅菌する。

組成:

カゼインの酵素消化物 20.0g

動物組織の酵素消化物 6.1g

寒天 3.5g

精製水 1,000ml

[別紙2]

リステリア・モノサイトゲネス定性試験法

1.はじめに

本試験法で述べるリステリア・モノサイトゲネスとは、ISO 11290―1:2017で定義するListeria monocytogenesとする。

2.試験法の概要

検体を3箇所以上から採取し、合計25gの試験検体としてストマッカー用袋等に無菌的に取り分ける。225mlのhalf‐Fraser液体培地を加え、ストマッカー等で均質化し、前増菌培養する。その培養液1白金耳を2種の分離寒天培地(酵素基質培地1種とその他の選択培地1種)に塗抹培養し、集落の形成を確認する。また、前増菌培養液0.1mlをFraser液体培地10mlに加え、培養後にその培養液1白金耳を2種の分離寒天培地(酵素基質培地1種とその他の選択培地1種)に塗抹培養し、集落の形成を確認する。L. monocytogenesと思われる集落を純培養し、鏡検、溶血性試験、炭水化物分解試験を行い、L. monocytogenesと確定する。

3.使用器具及び装置

(1) 滅菌ハサミ

(2) 滅菌ピンセット

(3) ホモジナイザー:蠕動式(可能であれば速度及び時間を調整できる機種;ストマッカー)又は回転式(ブレンダー)のもの

(4) ストマッカー用袋(ストマフィルター使用可)

(5) フラスコ

(6) 天秤

(7) pHメーター

(8) 滅菌ピペット、マイクロピペット及び滅菌チップ

(9) メスシリンダー

(10) ビーカー

(11) 小試験管

(12) 中試験管

(13) 試験管立て

(14) 白金耳、白金線

(15) 高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ):少なくとも121℃(湿熱)を保持できるもの

(16) 乾熱滅菌器:170~180℃(乾熱)を保持できるもの

(17) 恒温槽・ふ卵器(30±1℃、37±1℃、必要に応じて25±1℃)、恒温水槽

(18) 滅菌シャーレ:ガラス製又はプラスチック製で直径85~100mmのもの

(19) 顕微鏡、スライドグラス、カバーグラス(必要に応じて)

(20) スターラー及びスターラーバー

(21) ろ過滅菌用器具(シリンジフィルター及び注射筒)

4.培地、試薬及び抗血清

(1) 一次選択増菌培地:half‐Fraser液体培地

(2) 二次選択増菌培地:Fraser液体培地

(3) 選択分離寒天培地:第一[A]と第二[B]からそれぞれ1種類用いる。

[A] 第一選択分離寒天培地(酵素基質培地):Ottaviani and Agostiリステリア寒天培地(ALOA培地)又はそれと同等性の確認された酵素基質培地

[B] 第二選択分離寒天培地:PALCAM寒天培地又はOxford寒天培地

(4) 確認用培地:トリプトソイ酵母エキス寒天培地(TSYEA):選択分離寒天培地上の定型集落の純培養に用いる。

(5) 血液寒天培地:血液寒天培地又は重層血液寒天培地

(6) 溶血性試験用赤血球浮遊液

リン酸緩衝液

赤血球浮遊液

(7) 生化学性状確認試験用培地及び試薬

炭水化物分解試験用培地

グラム染色液

カタラーゼ試薬(任意)

以下の培地及び抗血清は必要に応じて用いる。

(8) 運動性試験用培地

非選択性液体培地(トリプトソイ酵母エキス液体培地など):顕微鏡による旋回運動の確認に用いる。

半流動寒天培地:傘状発育の確認に用いる。

(9) 血清型別用抗血清:リステリア診断用血清

5.試験手順

(1) 一次選択増菌培養

① 検体を3箇所以上から採取し、合計25gの試験検体として滅菌ストマッカー用袋に無菌的に取り分け、室温に戻したhalf‐Fraser液体培地225mlを加えてストマッカー処理する。25gより多い量の検体を試験する場合は、half‐Fraser液体培地を30±1℃にあらかじめ加温する。

② 30℃で25±1時間培養する。培養後、二次選択増菌培養及び平板培養に進む前に、最長72時間まで5℃での保管が可能である。

(2) 二次選択増菌培養

① 培養後の一次選択増菌培養液0.1mlを10mlのFraser液体培地が入った試験管に移す。

② 37℃で24±2時間培養する。培養後、平板培養に進む前に、最長72時間まで5℃での保管が可能である。

(3) 平板培養及び同定

① 培養後の一次増菌培養液を白金耳に取り、第一選択分離寒天培地上に単独集落が形成されるよう画線塗抹する。第二選択分離寒天培地についても同様に接種する。

② 接種した培地を、第一選択分離寒天培地は37℃で合計48±2時間まで培養する。24±2時間の時点でL. monocytogenesと推定される集落が出現すれば、確認培養に移行する。第二選択分離寒天培地は規定された温度及び時間で培養する。培養後、集落の観察までに最大2日間、5℃での保管が可能である。

③ 培養後の二次増菌培養液について、①及び②と同様の手順を実施する。

注:第一選択分離寒天培地では、既定の培養時間においてL. monocytogenesは乳白色のハローを伴った青緑色の定型集落を示すが、ハローが弱い株も存在し、4日以上培養した後に検出されることがある。L. ivanoviiも同様の色調を示す。また、リステリア属菌以外で青色集落を形成するものがある。第二選択分離寒天培地上では、リステリア属菌はエスクリン分解による褐色から黒色のハローを呈する灰色から濃オリーブグリーン色の定型集落を示す。

(4) リステリア属菌の確認培養

注:規定された培養温度及び時間において、第一選択分離寒天培地(酵素基質培地)上に形成される定型集落のほとんどはL. monocytogenesであるが、L. ivanoviiが発育する可能性もある。第二選択分離寒天培地上の定型集落はリステリア属菌である。

① 各選択分離寒天培地から形成された定型集落を少なくとも1個釣菌する。確認試験の結果、それが陰性なら各培地から5個釣菌する。血液寒天、普通寒天、TSYEA等の非選択寒天培地平板上に単独集落が形成されるよう画線塗抹する。血液寒天培地を使う場合はこの段階で溶血性を見ることができる。溶血性を示さない場合は、後述の溶血性試験を行う。

② 37℃で18~24時間又は十分増殖するまで培養する。

③ TSYEA平板上のリステリア属菌定型集落は、直径1~2mmで凸状を呈する無色不透明で、辺縁がはっきりしている。純培養がうまくいかない場合は、定型的なリステリア属菌の集落を非選択寒天培地で再び分離する。以下の試験は、非選択寒天培地上で純培養された集落を用いて行う。

④ カタラーゼ試験(必要に応じて)

単離した集落を、スライドグラス上に滴下した3%過酸化水素水中で懸濁させる。リステリア属菌はカタラーゼ陽性で、気泡が発生する。血液寒天培地上の集落を用いると、偽陽性反応を示すことがある。

⑤ 運動性試験(必要に応じて)

単離した集落を非選択液体培地に接種する。25℃に設定した恒温器内で8~24時間、培地が濁ってくるまで培養する。白金耳を用いて上記の培養液1滴をスライドグラス上に移す。カバーグラスをのせ、顕微鏡で観察する。一般的に、リステリア属菌は短桿菌の形態をとり、旋回運動を示す。非選択寒天培地で得られた単独集落を滅菌精製水等に希釈したものを用いてもよい。

半流動寒天培地を用いた傘状発育の確認は、試験菌を培地に穿刺して、25~30℃で48時間~5日間培養する。リステリア属菌はこの温度帯で鞭毛が発育して運動性が認められ、特有の傘状発育(表層から3~5mm下で最もよく発育し、傘のように見える。)を示す。

⑥ 鏡検(酵素基質培地を用いた場合は任意となる)

単離した集落でグラム染色を実施し、鏡検する。一般的に、L. monocytogenesを含むリステリア属菌は、グラム陽性で短桿菌の形態をとる。あるいは、染色せずに生理食塩水等に懸濁して顕微鏡で観察する。新鮮培養では旋回運動を示す。

(5) L. monocytogenesの確認試験

① 溶血性試験

以下から1つを選択して行う。

ア 血液寒天培地を用いる場合

血液寒天培地の表面を乾燥させ、画分して被検菌を接種する。同じ平板に、陽性対照(L. monocytogenes)と陰性対照(L. innocua)を接種する。37℃で24±2時間培養後、溶血性を観察する。L. monocytogenesは狭く透明な溶血帯を示す。L. innocuaは溶血帯を示さない。L. seeligeriは弱い溶血帯を示す。L. ivanoviiは通常幅広く、輪郭の明瞭な溶血帯を示す。明るい照明の下で観察する。集落を除去すると、溶血帯はより観察しやすくなる。

重層血液寒天培地やCAMP試験用培地を用いてもよい。

イ 赤血球を用いる場合

集落を150μlの普通ブイヨンに懸濁し、37℃で2時間培養する。等量の赤血球浮遊液を加え、37℃で15~60分培養した後、5℃で約2時間冷蔵して、溶血性を観察する。疑わしい場合は24±2時間まで5℃に放置する。試験管の底に赤い点が見える場合は陰性である。陽性及び陰性対照を置くこと。

L. monocytogenesには稀にβ溶血やCAMP試験での陽性反応を示さない株が存在する。酵素基質培地でのハローが弱い株は溶血性を示さないことがあり、それらはグラム染色、カタラーゼ試験、運動性試験、CAMP試験、PCR等の追加試験を行い、非溶血性L. monocytogenesであることを確認することを推奨する。

② 炭水化物分解試験

非選択寒天培地上の集落を、白金耳を用いて炭水化物分解試験用培地にそれぞれ接種する。37℃で5日まで培養する。陽性反応(酸の産生)は多くの場合24~48時間以内に黄色に変化することで示される。L. monocytogenesはラムノース陽性、キシロース陰性である。稀にラムノース陰性のL. monocytogenesも存在する。

③ CAMP試験(任意)

血液寒天培地にStaphylococcus aureusとRhodococcus equiを培地上に平行線を描くように画線培養する(図1参照)。ごく薄くむらのない画線でなければならない。白金耳か白金線を寒天に対し直角に持つとよい。

注:CAMP試験に用いる菌株

CAMP試験の実施には、β haemolysin産生性のS. aureus(例:WDCM 00034株)、R. equi(例:WDCM 0028株)、L. monocytogenes(例:WDCM 00021株あるいはWDCM 00109株)、L. innocua(例:WDCM 00017株)及びL. ivanovii(例:WDCM 00018株)が必要である。全てのS. aureusがCAMP試験に適しているわけではない。

次に、単離した試験菌株を、S. aureusとR. equiに直角に、かつ、接触しないように1~2mm離れた位置から画線する。1枚の平板に数株接種できる。同時に、コントロール株としてL. monocytogenes,L. innocua及びL. ivanoviiを画線する。血液寒天培地を用いた場合は、37℃で18~24時間培養する。重層血液寒天培地を用いた場合は、37℃で12~18時間培養する。

試験菌株がS. aureus又はR. equiに交差する部分でβ溶血が増強されているのが陽性反応とみなされる。

R. equiとの陽性反応は幅の広い(5~10mm)の矢頭状溶血を示す。R. equi菌株の周囲の拡散している領域と試験菌株の交差部分で1mm程度の弱い溶血帯しか見られない場合には、陰性とみなされる。L. monocytogenesは、基本的にR. equiとは陰性反応を示すが、一部の株では、R. equiの塗抹線近くでも溶血が増強されるものがある。

S. aureusとの陽性反応は、S. aureusの周囲の弱い溶血帯と試験菌株が交差する領域で、試験菌株を中心に3~4mm幅での増強された溶血として観察される。S. aureusとL. monocytogenesの交差する領域には、幅の広いβ溶血は認められず、幅の狭い溶血帯が観察される。

CAMP法の代替法としてβリジンディスク法を用いることも可能である。

この場合は、上記寒天培地の中央にディスクを置き、ディスクを中心として2~3mm離して放射状に被検菌を塗抹して培養する。L. monocytogenesではディスク周辺で溶血の増強が認められる。この試験でも、被検菌と同時に対象株として既知のL. monocytogenes,L. innocua及びL. ivanoviiを画線する。

L. monocytogenesには、溶血の弱い株が存在する。

図1.CAMP試験平板への接種と解説

注1:図に示すように血液寒天培地若しくは重層血液寒天培地に接種する。垂直の線はS. aureus(S)とR. equi(R)を示す。水平の線は、試験菌株を示す。斜線の領域は、溶血が増強されている領域を示す。

注2:点線で囲まれた領域は、S. aureusの増殖の影響を受けた領域を示す。

表.主要なリステリア属菌の鑑別性状