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○医療用漢方製剤において剤形が異なる製剤の追加のための生物学的同等性評価に関する基本的考え方について

(令和3年7月19日)

(事務連絡)

(各都道府県衛生主管部(局)薬務主管課あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課通知)

今般、国立研究開発法人日本医療研究開発機構平成30~令和2年度医療研究開発推進事業費補助金(医薬品等規制調和・評価研究事業)「漢方製剤・生薬製剤の品質確保等、国際調和及び承認関連基準等の整備に関する研究」(研究代表者:国立医薬品食品衛生研究所生薬部・生薬部長 袴塚 高志)内の「新規漢方製剤承認申請ガイドラインに関する研究」において、別添のとおり、「医療用漢方製剤において剤形が異なる製剤の追加のための生物学的同等性評価に関する基本的考え方」が取りまとめられましたので、貴管下関係業者に対して周知願います。

(別添)

医療用漢方製剤において剤形が異なる製剤の追加のための生物学的同等性評価に関する基本的考え方

本考え方は、既承認の医療用漢方製剤において当該製剤と同一の漢方処方エキスを使用した剤形が異なる製剤を追加(以下、「剤形追加」という)する場合の、生物学的同等性評価を行う際に必要な試験等の基本的な考え方を整理したものである。

漢方製剤は、多くの化学成分を含有する多成分系薬剤であり、日本薬局方(日局)にその中間製剤たる漢方処方エキスが収載されている場合は、原則的に3種の成分が品質規格のための定量成分として規定され、また、日局未収載の漢方処方においても、その品質規格はそれぞれの製造販売承認書に設定された数種の定量成分により規定されている。一方、これら定量成分は、腸内細菌による代謝、消化管内での吸収、吸収後の代謝等の生体内反応により大きく影響を受ける場合や食事中に同一の成分が含まれる場合には、当該製剤を経口で服用した後の血中動態を追跡することが困難となるため、必ずしも生物学的同等性評価の指標成分として適切であるとは限らない。このため、当該エキスの含有成分もしくはその代謝物の中から、生物学的同等性評価に使用し得る成分を選定した上で、一連の試験等を行い同等性を判定する必要がある。本考え方は、医療用漢方製剤の剤形追加に際し、標準製剤(旧剤形)及び試験製剤(新剤形)について、平成9年12月22日付医薬審発第487号医薬安全局審査管理課長通知(令和2年3月19日付薬生薬審発0319第1号一部改正)・別紙1「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」(以下、「後発医薬品ガイドライン」という。に従って実施する生物学的同等性試験、並びに、それに先立って行う溶出試験における溶出挙動の類似性評価及びクロマトグラフィーにより得られる溶出のパターン(以下、「クロマトパターン」)の同等性確認に関する基本的な考え方を示すものである。

本考え方に沿って医療用漢方製剤の剤形追加を行う場合には、適宜、審査当局と事前に相談することが望ましい。

Ⅰ.生物学的同等性評価に用いる製剤

剤形追加しようとする製剤は、既承認の製剤と同一の漢方処方エキスを使用し、効能または効果は同一で用法及び用量が既承認の範囲内にある剤形とする。既承認の製剤とは、本考え方が発出された時点で承認されている剤形である。

標準製剤は、溶出試験により3ロットの製剤から中間の特性を示したロットの製剤とする。なお、標準製剤中に含まれる成分の品質特性により溶出試験では適切な標準製剤を選択できない場合には、それに代わる物理化学的試験により中間の特性を示したロットを標準製剤とする。

試験製剤は、剤形追加しようとする製剤であって、標準製剤と同一製造ロットの漢方処方エキスを使用して製造した製剤とする。実生産スケールで製造されたロット(以下「実生産ロット」という。)の製剤であることが望ましいが、実生産スケールの1/10以上の大きさで製造されたロットの製剤でもよい。なお、実生産ロットと生物学的同等性の検討に用いるロットの製造方法は同一であり、両者の品質は同等であるものとする。

Ⅱ.生物学的同等性評価に用いる成分

日局および製造販売承認書に規定された定量成分もしくはその主代謝物より原則1種を選定する。日局および製造販売承認書に規定された定量成分において生物学的同等性の評価が困難な場合は、これら以外の成分を選定してもよい。

Ⅲ.溶出挙動の類似性評価

生物学的同等性試験に先立ち、標準製剤と試験製剤について溶出試験を行い、複数の定量成分の溶出挙動の類似性を評価する。さらに、溶出試験終了後の試験液についてクロマトグラムの比較を行い、クロマトパターンの同等性を確認する。

溶出試験の方法および溶出挙動の類似性の判定は、後発医薬品ガイドライン第3章,A.Ⅴ.における溶出試験の項を参考とする。ただし、ベッセルの底部に製剤の崩壊物が堆積する現象が認められるなど、溶出性を適切に評価できない場合は、後発医薬品ガイドラインに基づき条件を変更することが可能である。

1.溶出試験を行う成分

1) 生物学的同等性試験において評価を行う成分(代謝物を評価する場合は、その親化合物に加え、

2)―1 日局に漢方処方エキスが収載された漢方製剤については、日局および製造販売承認書に規定される定量成分

2)―2 日局に漢方処方エキスが未収載の漢方製剤については、製造販売承認書で規定された定量成分

2.試験液

後発医薬品ガイドライン第3章,A.Ⅴ.3.に示した試験液

3.クロマトパターンの同等性確認

クロマトパターンの同等性確認については、グラジエント溶出のHPLC分析等により取得した網羅的なクロマトグラムを比較し、両者のクロマトパターンが実質的に同等であることを以下の方法により確認する。クロマトパターンの同等性確認は、生物学的同等性試験において評価を行う成分で行った溶出試験の終了後の試験液について実施する。

1) 標準製剤と試験製剤の両クロマトグラムにおいて、対応する各ピークの保持時間を比較する

2) 標準製剤と試験製剤の両クロマトグラムにおいて、ピーク強度を適切な方法により評価する

Ⅳ.生物学的同等性試験

Ⅲ.溶出挙動の類似性評価において、溶出挙動の類似性およびクロマトパターンの同等性を確認したうえで、標準製剤と試験製剤について、Ⅱにおいて選択した成分を指標として後発医薬品ガイドライン第3章,A.Ⅱ.に従い生物学的同等性試験を実施する。

以上