添付一覧
○緊急時に輸血に用いる血液製剤を融通する場合の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第24条第1項の考え方及び地域の実情に応じた血液製剤の安定供給に係る取組事例について
(令和3年3月31日)
(/薬生総発0331第1号/薬生血発0331第2号/)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長、厚生労働省医薬・生活衛生局血液対策課長通知)
(公印省略)
今般、令和2年の地方分権改革に関する提案募集に対して輸血に用いる血液製剤(以下「血液製剤」という。)の安定供給に係る提案があり、「令和2年の地方からの提案等に関する対応方針」(令和2年12月18日閣議決定。以下「本対応方針」という。)が、別紙1のとおり閣議決定されたところです。
医薬品の販売、授与等については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第24条第1項の規定により、薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として、医薬品の販売、授与等をしてはならないこととされています。このため、医薬品である血液製剤を医療機関の間で融通する場合については、原則として、血液製剤を販売、授与等する医療機関は販売業の許可を有する必要がありますが、本対応方針を踏まえ、緊急時における血液製剤の考え方を下記のとおり整理しましたので、業務の参考としていただくようお願いします。
また、本対応方針を踏まえ、地域の実情に応じた血液製剤の安定供給に係る取組について、別紙2のとおり事例を収集しましたので、合同輸血療法委員会など貴管内関係団体、事業者、医療機関等に周知いただくとともに、一層の血液製剤の安定供給に努めていただくよう、御協力をお願いいたします。
なお、こうした取組に関しては、必要な医療提供体制を確保する上でも重要であることから、「医療計画について」(平成29年3月31日付け医政発0331第57号厚生労働省医政局長通知。令和2年4月13日一部改正)第3の10(8)において、「血液の確保・適正使用対策」について記載されていることも、参考にしていただくようお願いします。
記
1.地域の医療提供体制を確保し、血液製剤の需要に対応するために、通常時から地域において血液製剤の供給体制を整備しておくことは重要である。一方、通常時の血液製剤の供給体制が整備されている場合であっても、地域の実情等により血液製剤を供給する卸売販売業者からの供給が困難な場合も想定される。このため、例えば、血液製剤を必要とする医療機関に勤務する医師が、以下の条件に該当すると判断した場合には、緊急時のやむを得ない場合の対応として、当該医療機関に勤務する医師から、近隣の血液製剤を所有する医療機関(以下「近隣医療機関」という。)の医師へ、以下の条件に該当すると判断する旨を連絡し、その連絡を受けた近隣医療機関が以下の条件に該当する旨を確認の上、血液製剤を必要とする医療機関に対して、血液製剤を提供することは差し支えないこととする。
(1) 血液製剤を必要とする医療機関に入院等している患者に生命又は身体の重大な危険が生じており、当該患者への対応において血液製剤を必要としていること。
(2) 当該医療機関が在庫する血液製剤のみでは当該患者への対応ができないこと。
(3) 夜間や休日において当該患者の生命又は身体の重大な危険が差し迫っている等の緊急性を踏まえ、血液製剤を供給する卸売販売業者から血液製剤の供給を受けるよりも、近隣医療機関から血液製剤の提供を受けることが適切であると認められること。
2.1により近隣医療機関が対応する場合は、血液製剤を必要とする医療機関及び近隣医療機関の双方が、供給する血液製剤の使用期限や輸送時の保管温度を確認する等により、当該血液製剤の品質、有効性及び安全性を確保する必要があること。また、トレーサビリティ確保の観点から、血液製剤の提供に当たっての記録を適切に保存するとともに、近隣医療機関から当該血液製剤の製造販売承認取得者等に連絡することが求められること。
[別紙1]
令和2年の地方からの提案等に関する対応方針(抄)
令和2年12月18日
閣議決定
5 義務付け・枠付けの見直し等
【厚生労働省】
(23) 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭35法145)
輸血に用いる血液製剤(以下「血液製剤」という。)の地域における供給体制については、緊急時には、販売業の許可(24条)の有無にかかわらず、医療機関の間で血液製剤を融通することが可能であることを明確化し、地方公共団体に令和2年度中に通知する。
また、地域の実情に応じた血液製剤の安定供給に係る取組事例について、地方公共団体に令和2年度中に通知するとともに、日本赤十字社による出張所の設置や血液製剤の配送回数、配送ルートの見直し等について、地方公共団体、医療機関及び日本赤十字社との間において検討されるよう、必要な支援を行う。
[別紙2]
血液製剤の安定供給に係る取組事例について
1.医療機関における適正使用の取組
・適正使用の推進
医療機関における血液製剤の適正使用については、「血液製剤の使用指針(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04183.html)」及び「輸血療法の実施に関する指針(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10704.html)」をお示ししているところ、両指針に基づき各医療機関において適正使用に係る取組が進められている。
2.自治体における適正使用の取組
○合同輸血療法委員会の活性化
合同輸血療法委員会は、血液製剤の適正使用を推進するため、行政、医療機関、血液センター等の輸血療法に係る関係者が参画し、血液製剤の使用状況や輸血療法に係る課題等を共有し、適正使用の推進のための方策の検討を行う場として、各都道府県に設置されており、同委員会において様々な適正使用に係る取組が行われている。取組の例は以下のとおり。
(秋田県)
令和元年度は、11月に県合同輸血療法委員会、2月に県合同輸血療法委員会地域輸血講演会を開催した。輸血の適応に関する評価基準を作成し、基準に合わない患者への輸血オーダーに対する疑義照会を推進することで、基準適応外の輸血を回避し、血液製剤の適正使用を推進している。
(神奈川県:別添1)
令和元年度は、9月に医療機関と血液センターの合同カンファレンス、1月に合同輸血療法委員会を開催した。医療機関と血液センターが意見交換する場を設け、各医療機関の血液製剤の利用状況を把握するとともに、緊急に輸血を要する事態の基準の共有、緊急時にも対応できる適正な院内在庫等について議論することで、より現実に即した供給体制を実現できるよう取り組んでいる。
○血液製剤使用適正化方策調査研究事業の取組
血液製剤使用適正化方策調査研究事業は、血液製剤の適正使用を推進するため、各都道府県における適正使用に係る積極的な取組を全国的に共有し、効果的な適正化推進方策の普及を図り、かつ合同輸血委員会の充実強化による適正使用の推進を図るために必要な調査研究を行うことを目的として実施している。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kenketsugo/pamphlet.html)
令和2年度の同事業における取組の例は以下のとおり。
(新潟県:別添2)
血液製剤の廃棄率が高い傾向のあるへき地・離島における血液製剤の有効利用を目的として、新潟県佐渡市を対象に、新潟県本土の医療機関と連携して、血液搬送装置(Active Transport Refrigerator:ATR)を活用した血液製剤の回収および再出庫(ブラッドローテーション)の取組の実証を行い、課題および対応策を検討。
(広島県:別添3)
災害等の緊急時に血液製剤の血液センターからの供給が間に合わない場合に備えて、緊急的に地域の医療機関で協力して血液製剤の提供を可能とする仕組みを構築するため、医療機関に対して血液製剤の在庫量や譲受・譲渡の対応可能性等に関するアンケートを実施の上、対応が必要となる事態、譲受・譲渡にあたっての手順等を検討し、緊急時の血液製剤の譲受・譲渡に係る指針を作成。
(愛媛県:別添4)
血液製剤の適正使用を推進し廃棄率を低下させるため、合同輸血療法委員会のもとに部会を設置し、医療機関の血液製剤の在庫数や廃棄数、血液センターの配送数等の解析によるエビデンスに基づく院内在庫数を設定するとともに、日本輸血・細胞治療学会が示す輸血機能評価認定基準等をベースとする医療機関の規模に応じて実行可能な院内輸血体制基準を検討。
3.日本赤十字社の取組
○定時配送推進の取組(別添5)
医療機関における血液製剤の適正使用を推進するため、各医療機関において、適正な血液製剤の在庫量を把握し必要な量だけ計画的に発注する、定時配送の取組を推進している。取組の例は以下のとおり。
(北海道)
年末年始と5月の連休前に、計画的な配送について依頼を行い、定時配送便利用の意識付けを行っている。
(岩手県)
全ての発注について、FAX受信時に医療機関に電話で各種調整の連絡を行っている。臨時、緊急の発注についても、配送便や納品時間について調整を行っている。
(石川県)
供給の頻度が高い医療機関を訪問し、定時配送便の利用を依頼した。
(鳥取県)
供給上位の医療機関を訪問し、文書で定時配送便を依頼。併せて医療機関の要望を踏まえ、令和2年6月から、定時配送便を2便から3便へ増便した。
(島根県)
医療機関に定時配送便の利用にかかるアンケートを毎年実施している。定時配送便の配送時間の見直しを行うとともに、定時配送便がどの程度周知されているか把握した上で、定時搬送便の利用を再度依頼している。
(愛媛県)
県内の8医療機関について、定時配送便を1便から2便へ増便し、血液製剤の種別を調整した(汎用性の高いO型血液の増加)。
(高知県)
定時配送便を依頼する文書(所長名)及び資料の配布を令和2年5月下旬に実施した。
(北海道、熊本県)
「血液製剤発注の手引き」を医療機関へ訪問して配布した。
(北海道、秋田県、熊本県)
臨時便による供給受注時に定時便への変更の可否について確認している。
○院内在庫保有の依頼
(北海道、秋田県)
緊急配送が多い医療機関に対して、使用傾向を踏まえた院内在庫の確保について依頼をしている。
○新たなWeb発注システムの展開(別添6)
これまで別であった赤血球抗原情報検索システムと統合された新たなWeb発注システムが、利便性を考慮した仕様で開発され、令和2年11月より運用が開始された。各医療機関で必要な血液製剤の発注において、これまでのFAXによる発注と比較して、効率的かつ簡潔な手順での発注が可能となる。
○都道府県をまたぐ配送ルートの構築(別添7)
同一の都道府県内にある血液センターから遠方である地域においては、近隣の都道府県の血液センターから都道府県をまたぐ配送ルートを構築することで、より短時間で効率的な血液製剤の供給を行うことが可能となっている。具体的には、青森県(秋田県、岩手県)、福島県(宮城県)、東京都(埼玉県)、福井県(滋賀県)、岐阜県(愛知県)、愛知県(岐阜県)、京都府(兵庫県)、山口県(島根県)、佐賀県(福岡県)、福岡県(佐賀県)、鹿児島県(宮崎県)の血液センターにおいて、都道府県外の医療機関への供給を行っている(括弧内は供給先の都道府県)。
○配送ルートの見直し(別添8)
供給に時間を要する地域や供給医療機関が増加した地域における新たな配送ルートの設定や、医療機関の移転や所要時間の短縮に係る配送ルートの変更等、より効率的できめ細やかな血液製剤の供給を行うことが可能となっている。取組の例は以下のとおり。
(千葉県)
発注依頼が増加し、納品に時間を要する場合があるため、供給地域を他の配送ルートと分担して、医療機関への納品時間が日ごとに大きく変わらないような配送体制とした。
(大阪府)
供給に時間を要していた地域への配送ルートを新たに設定した。
(岩手県、大阪府)
医療機関の移転に伴い、供給時間が増加したことから、配送ルートを増やし、供給時間が移転前と変わらないよう対応した。
(山形県、愛知県)
配送ルートを変更して定時配送便にかかる所要時間を短縮し、次の定時配送便までの緊急要請に対応できるようにした。
(熊本県、大分県)
供給医療機関が増加したため、新たに配送ルートを設定し、供給体制を充実させた。
[別添1]
[別添2]
[別添3]
[別添4]
[別添5]
[別添6]
[別添7]
[別添8]