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○民間あっせん機関による養子縁組のあっせんを受けて養子となった児童に関する記録の保有及び当該児童に対する情報提供の留意点について

(令和3年3月26日)

(子家発0326第1号)

(各都道府県・各指定都市・各児童相談所設置市民生主管(部)局長あて厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課長通知)

(公印省略)

民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律(平成28年法律第110号)附則第4条において、民間あっせん機関による養子縁組のあっせんを受けて養子となった者に対する当該養子縁組のあっせんに関する情報の開示等の制度の在り方について検討を加えるべきこととされている。

今般、「令和元年度(2019年度)厚生労働省子ども家庭局子ども・子育て支援推進調査研究事業 養子縁組あっせんにおける民間あっせん機関と児童相談所との連携や情報共有の在り方に関する調査研究 報告書」を参考として、民間あっせん機関による養子縁組のあっせんを受けて養子となった児童に関する記録の保有及び当該児童に対する情報提供の留意点について別添のとおり策定したため、通知する。

貴職におかれては、内容について御了知いただくとともに、貴管下の民間あっせん機関に対し周知を図られたい。

なお、本通知については、個人情報保護委員会と協議済みであることを申し添える。

また、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言である。

(別添)民間あっせん機関による養子縁組のあっせんを受けて養子となった児童に関する記録の保有及び当該児童に対する情報提供の留意点について

(様式例1)児童に関する情報項目

(様式例2)児童の実父母等に関する情報項目

(様式例3)養親希望者に関する情報項目

民間あっせん機関による養子縁組のあっせんを受けて養子となった児童に関する記録の保有及び当該児童に対する情報提供の留意点について

第一 目的

平成28年6月3日に児童福祉法(昭和22年法律第164号)が改正され、児童を家庭において養育することが困難であり又は適当でない場合にあっては児童が家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育されるよう、特別養子縁組による永続的解決(パーマネンシー保障)や里親による養育を推進することが明確化された。

平成30年4月1日に施行された、民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律(平成28年法律第110号。以下「法」という。)第4条においては、民間あっせん機関は、児童の最善の利益に資する観点から、他の民間あっせん機関及び児童相談所と養子縁組のあっせんに必要な情報を共有すること等により相互に連携を図りながら協力するように努めなければならないことと規定されている。

また、民間あっせん機関が適切に養子縁組のあっせんに係る業務を行うための指針(平成29年厚生労働省告示第341号)においては、養子縁組あっせんを受けて養子となった児童の出自を知る権利について、「民間あっせん機関は、児童が、自らが養子であること等について確実に養親から告知されるよう必要な支援を行うとともに、養子となった児童から、自らの出自に関する情報を知りたいとの相談があった場合には、丁寧に相談に応じた上で、当該児童の年齢その他の状況を踏まえ、自らの出自に関する情報を提供するのに適当なタイミングであるか否か等について、適切な助言を行いつつ、対応しなければならない」等とされている。

一方で、これらの法令や指針においては、養子となった児童の出自を知る権利を担保するために、具体的にどのような情報を記録すべきか、実父母等の個人情報をどのように提供すべきかなどについて定められていない。特に民間あっせん機関に対しては、帳簿の備え付け義務や帳簿への概括的な記載事項(児童・実父母・養親に関する情報、養子縁組の経緯及び養子縁組が成立した後の状況)、帳簿を永年保存すべき旨は定められているものの、出自を知る権利の担保に照らして保存すべき情報の詳細な内容は規定されていない。

児童の権利条約においては、「できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する」とされており、養子となった児童が自らのアイデンティティの確立や心理的安定を確保する上で、自らのルーツを知ることは極めて重要である。他方で、養子となった児童の実父母等の個人情報を保護することにも留意が必要である。

本通知は、実父母等のプライバシー等に配慮しつつ、養子となった児童の出自を知る権利を保障するために、記録すべき情報や当該児童や養親に対して当該情報を提供するに当たって留意すべき点を示すために策定したものである。

なお、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「個情法」という。)には、この通知に記載した論点以外にも、利用目的の特定(個情法第15条)、利用目的の通知等(個情法第18条)、安全管理措置(個情法第20条)、第三者提供記録の作成等(個情法第25条)等について規定されているため、実際に養子となった児童又は養親に情報提供するに当たっては、当該規定にも留意すること。

第二 記録すべき情報及び記録が望まれる情報並びに情報提供に当たっての留意点

Ⅰ 記録すべき情報及び記録が望まれる情報

養子となった児童、養子となった児童の実父母及び養親となった者に関して、記録すべき情報又は記録が望まれる情報は以下のとおり。食べ物の嗜好や興味関心などに実父母との共通点を見いだすと安心する養子も多いとの報告もあり、情報を記録する際は、以下を参考にされたい。

様式例1~3として、情報を聴取する際の様式を示しているため、参照すること。

なお、障害、健康障害、既往歴等の要配慮個人情報(個情法第2条第3項)の取得に当たっては、原則として、本人から同意を取得する必要がある(個情法第17条第2項)が、民間あっせん機関が要配慮個人情報を書面又は口頭等により本人から適正に直接取得する場合は、当該要配慮個人情報に関する本人が当該情報を提供したことをもって、当該個人情報取扱事業者が当該情報を取得することについて本人の同意1があったものと解される。

1 養子となった児童に関する情報

(注) ★は養子となった児童の要配慮個人情報。

(1) あっせん時の氏名(ふりがな)

(2) 養子縁組後の氏名(ふりがな)

(3) 性別

(4) 住所

(5) 国籍

(6) 本籍地

(7) 出生日時

(8) 出生場所(例:病院の名称、「自宅」等)

(9) 出生時の状況

(10) 血液型

(11) 障害★

(12) 健康状態・既往歴(アレルギー情報、遺伝性疾患、体質等を含む。)★

(13) 実父母による養子縁組あっせんの申込日

(14) 児童の委託開始日

(15) きょうだいの氏名(ふりがな)

(16) 成育情報をたどるために必要な児童の入所等措置歴(措置施設・里親名、連絡先を含む。)

(17) あっせんに関わった機関名

(18) 国際的な養子縁組の場合、出国日及び国籍取得日

2 養子となった児童の実父母に関する情報

(注) ★は実父母の要配慮個人情報。

(1) 記録すべき情報

① 個人に関する情報

(ア) 氏名(ふりがな)

(イ) 生年月日

(ウ) 住所

(エ) 国籍

(オ) 本籍地

(カ) 連絡先

(キ) 職業

(ク) 血液型

(ケ) 障害★

(コ) 健康状態・既往歴(アレルギー情報、遺伝性疾患、体質等を含む。)★

(サ) あっせんにかかわった機関名

(シ) 養子縁組の相談の経緯、委託理由

② 情報提供等の同意・希望

(ア) 養子となった児童への情報提供に係る同意の有無

(イ) 養子となった児童から実父母への連絡の可否に係る希望

(ウ) 養親から実父母への連絡の可否に係る希望(養子となった児童に重大な疾患があり実父母の協力が必要な場合等を含む。)

(エ) 養子となった児童が死亡したときの連絡の希望

(2) 記録が望まれる情報

① 実父母から養子となった児童に対する情報

(ア) 養子となった児童の命名理由

(イ) 養子となった児童への思い(出産後の気持ちや将来への希望)

② 実父母のその他の情報

(ア) 実父母の関係性

(イ) 実父母の生育歴(入所等措置歴を含む。)

(ウ) 家族構成

(エ) 生活の状況

(オ) 学歴

(カ) 性格

(キ) 宗教★

(ク) 嗜好(趣味、癖、飲酒・喫煙の有無、好きな教科・食べ物、興味・関心、将来の夢等)

(ケ) 妊娠の経過、養子となった児童の出生までの実父母の状況、実父母の身長・体重、祖父母の情報、実父母に病気等何かあった場合に養子となった児童に知らせたいか

③ その他の記録

(ア) 実父母から養子となった児童又は養親への手紙の有無

(イ) 養子となった児童、実父母等の写真の有無

(ウ) その他書類の写しの有無(戸籍謄本、母子健康手帳★、出生届、里親委託同意書等)

3 養親となった者に関する情報

(注) ★は養親の要配慮個人情報。

(ア) 氏名(ふりがな)

(イ) 生年月日

(ウ) 住所

(エ) 国籍

(オ) 本籍地

(カ) 連絡先

(キ) 職業

(ク) 勤務先

(ケ) 収入

(コ) 健康状態・既往歴(アレルギー情報、遺伝性疾患、体質等を含む。)★

(サ) 住居の状況

(シ) 家庭の状況(婚姻の有無を含む。)

(ス) 同居の家族(実子の有無を含む。)

(セ) 養子縁組のあっせんを希望する理由

――――――――――

1 個人情報の取扱いに関して同意したことによって生ずる結果について、未成年者、成年被後見人、被保佐人及び被補助人が判断できる能力を有していないなどの場合は、親権者や法定代理人等から同意を得る必要がある。法定代理人等から同意を得る必要がある子どもの具体的な年齢は、対象となる個人情報の項目や事業の性質等によって、個別具体的に判断されるべきであるが、一般的には12歳から15歳までの年齢以下の子どもについて、法定代理人等から同意を得る必要があると考えられる。

第三 情報提供に当たっての考え方

Ⅰ 情報の提供が求められる具体的な場面について

実父母等の情報の提供が求められる具体的な場面としては、例えば、以下の1及び2が考えられる。それぞれについて、提供目的と、提供が求められる情報の例について、具体的な場面と併せて例示する。

1 養子となった児童が自ら又は実父母等の情報について知りたいと民間あっせん機関に連絡するケース(養子となった児童が少年期(小学校就学期から18歳未満の間)の頃である場合や成人してからの場合が多いと考えられる。)

(1) 提供目的:養子となった児童本人のアイデンティティ確立

(2) 提供が求められる情報の例:

・ 第二のⅠの1「養子となった児童に関する情報」に記載の情報

・ 第二のⅠの2「養子となった児童の実父母に関する情報」に記載の情報

2 養親が養子となった児童又は実父母等の情報について知りたいと民間あっせん機関に連絡するケース(養子となった児童が乳幼児(生まれてから小学校就学前まで)の頃である場合が多いと考えられる。)

○ケース1

(1) 提供目的:養子となった児童に対する真実告知(当該児童の出自に関する情報を伝えること)のため

(2) 提供が求められる情報の例:

・ 第二のⅠの1「養子となった児童に関する情報」に記載の情報

・ 第二のⅠの2「養子となった児童の実父母に関する情報」に記載の情報

○ケース2

(1) 提供目的:養子となった児童のアレルギーの有無や将来障害・疾病を発病する可能性等の確認のため

(2) 提供が求められる情報の例:

・ 実父母の障害・健康状態・既往歴

Ⅱ 情報提供に当たっての考え方

第三のⅠで例示した場面において提供が求められる実父母等に関する情報については、以下の2種類に大別することができる。

(A) 実父母の個人情報のうち、養子となった児童の生命・健康にかかわるもの(実父母の障害・健康状態・既往歴)

(B) 実父母等の(A)以外の個人情報(実父母の氏名、住所、連絡先、養子縁組の相談の経緯、養子となった児童の命名理由、養子となった児童のきょうだいの氏名、里親名及び里親の連絡先等)

民間あっせん機関は、養子となった児童又は養親が将来実父母等の情報を求めた場合に適切に対応できるよう、養子となった児童又は養親への情報提供に係る同意の有無につき聴取し記録しておく必要がある。このとき情報提供について実父母等の同意が得られていれば、養子となった児童が成長後に実父母等に関する情報を求めた場合又は養親が養子となった児童に伝えるために実父母等に関する情報を求めた場合、提供することができる。

一方で、実父母等の同意がない場合の対応は下記のとおり。

1 (A)の情報の提供に係る同意がない場合

実父母の障害・健康状態・既往歴については、養子となった児童のアレルギーの有無や将来障害・疾病を発病する可能性等の確認のため、養親ひいては養子となった児童が知る必要がある情報であり、養子となった児童のアイデンティティ確立や心理的安定のために知るべき情報の中でも、とりわけ養子となった児童の生命及び健康にかかわる重要なものである。

民間あっせん機関が、実父母の情報を個情法第2条第6項に定める個人データ(個情法第2条第4項に定める個人情報データベース等(個人情報を含む情報の集合物であって、コンピューターで検索することができるなど、体系的に構成したものをいう。)を構成する個人情報をいう。)として保有している場合において、養子となった児童又は養親が当該個人データの提供を求めた場合は、個情法第23条第1項本文の規定により、原則として、あらかじめ本人の同意を得ないで、当該個人データを第三者に提供してはならない(ここでいう「本人」は実父母、「第三者」は養子となった児童又は養親をいう。)。

しかし、上記のとおり、(A)の情報は、養子となった児童の生命及び健康にかかわる重要なものであることから、個情法第23条第1項本文の例外規定である同項第2号の「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合」に該当し、「本人の同意を得ることが困難であるとき」には、養子の生命及び身体の保護のため、実父母の同意がなくとも養子となった児童又は養親に提供することができる。

なお、養子となった児童又は養親が(A)の情報を求めた際に、情報の中に実父母から情報を取得した時点で養子となった児童又は養親への情報提供に実父母等が同意していないものがある場合は、第三のⅢの2も参照すること。

2 (B)の情報の提供に係る同意がない場合

(B)の情報については、実父母の障害・健康状態・既往歴以外のあらゆる実父母等に関する個人情報を含み得るものであり、養子となった児童のアイデンティティ確立や心理的安定につなげるために必要な情報ではあるものの、(A)の情報ほど重要なものとはいえず、通常は「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合」に該当しないと考えられる。

よって、(B)の情報が実父母等の個人データに該当する場合には、原則として、個情法第23条第1項本文の規定により、あらかじめ本人である実父母等の同意を得ないで、当該個人データを第三者に提供することはできない。

また、養子となった児童の知る権利を優先し、実父母等の同意がなくとも提供できるものとすると、(A)及び(B)の情報について全て実父母等の同意なく提供することができることとなり、実父母等の情報の提供に当たって実父母等の意思が全く介在しないこととなるが、そうすると実父母等があっせん機関への情報提供に応じない、あるいは実父母が特別養子縁組を望まないといった事態につながることが考えられることからも、(B)の情報については、実父母等の同意がある場合に情報の提供を行うべきである。

Ⅲ 情報提供に当たっての留意事項

1 同意の撤回について

実父母等の情報を養子となった児童又は養親に提供することにつき同意が得られていた場合でも、実父母等の生活状況の変化等により、養子となった児童が情報を求めてきた時点では、情報提供の同意について実父母等が翻意している可能性もある。そこで、実父母等の意思を丁寧に確認する観点から、実父母等がその同意を撤回することができる方策を準備しておくことが考えられる。

そのため、民間あっせん機関が実父母等から情報を聴取し記録する際は、実父母等に対し、実父母等に関する情報を記録し、養子となった児童に提供する趣旨について必ず説明するとともに、情報提供の同意は撤回が可能であること及び撤回する場合の連絡方法について併せて説明することが考えられる。

このとき、撤回する場合の連絡方法について、あっせんに関わった機関が民間あっせん機関であれば当該民間あっせん機関とする等、実父母等には具体的に連絡先等を伝えること。

なお、同意を得てから情報提供までの間に民間あっせん機関が事業を廃止することも想定されるが、この場合、民間あっせん機関の保有する帳簿は、法第19条の規定により、他の民間あっせん機関等に引き継がれることとなる。このように事業の承継に伴って個人情報が移転する場合には、個人情報が引き継がれる旨や引継先の担当者の連絡先等について当該実父母等に伝えること。また、事業の承継に伴い個人情報を取得した民間あっせん機関は、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲内で、当該個人情報を取り扱う必要があることに留意すること。

2 養子となった児童又は養親への情報提供について

第二のⅠにおいて示した項目は、養子となった児童の出自を知る権利を保障するために記録すべき情報及び記録が望まれる情報であるが、記録しておいた情報について、養子となった児童や養親からの求めに応じて提供する場合、養子となった児童が知ることを望まない情報まで当該児童が知ることのないよう、養子となった児童の意向をよく聴き取った上で情報提供を行うこと。

なお、養子となった児童や養親が求める情報の中に、実父母等から情報を取得した時点で養子となった児童又は養親への情報提供に実父母等が同意していないものがある場合、あっせん機関は養子となった児童又は養親から情報の求めがあった時点で改めて実父母等に連絡をとり、同意の有無について確認すること。

(様式例1)

(様式例2)

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(様式例3)

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