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○「Kudoa septempunctataの検査法について」の一部改正について

(令和2年4月7日)

(薬生食監発0407第1号)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課長通知)

(公印省略)

ヒラメからのKudoa septempunctataの検査法については、平成28年4月27日付け生食監発0427第3号「Kudoa septempunctataの検査法について」により通知しているところです。

これまで、本検査法において、スクリーニング検査の結果が陽性であって顕微鏡検査の結果が陰性の場合は、国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部に郵送することとしておりましたが、陰性と判定できる場合には送付を不要とするため、別紙のとおり改正しました。

つきましては、これにより実施されるようお願いします。

別紙

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○Kudoa septempunctataの検査法について

(平成28年4月27日)

(生食監発0427第3号)

(各都道府県・各保健所設置市・特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部監視安全課長通知)

(公印省略)

ヒラメからのKudoa septempunctataの検査法については、平成23年7月11日付け食安監発0711第1号「Kudoa septempunctataの検査法について(暫定版)」により通知しているところです。

今般、当該通知を廃止し、Kudoa septempunctataの検査法について別添のとおり定めましたので、検査を行う場合はこの方法により実施されるようお願いします。

(別添)

ヒラメからのKudoa septempunctata検査法

1.暫定検査法からの変更点

暫定検査法では顕微鏡検査を行う前のスクリーニング検査法としてリアルタイムPCR法が収載されていたが、今回の改訂ではリアルタイムPCR法に加えLoop―Mediated Isothermal Amplification(LAMP)法とイムノクロマトグラフィー法を収載した。なお、リアルタイムPCR法、顕微鏡検査法に関しては暫定検査法からの変更点はない。

2.検体採取方法

食後数時間程度で一過性の嘔吐や下痢を呈し、軽症で終わる有症事例であって、当該病因物質が原因と疑われる事例のヒラメを対象とする。

3.検査方法

1)または2)のどちらかの方法を用いる。

1) スクリーニング検査を行い、陽性の結果が得られた検体に対して、「5.顕微鏡検査法」で述べた方法で、6~7個の極嚢を有するKudoa septempunctata(K.septempunctata)の胞子数を計測する。

2) スクリーニング検査を行わず、「5.顕微鏡検査法」で述べた方法で顕微鏡検査を行い、6~7個の極嚢を有するK.septempunctataの胞子数を計測する。陽性になった場合には、必要に応じて確認検査として、「4.スクリーニング検査法」で述べている方法、またはそれと同等以上の検査を行い、K.septempunctataであることを定性的に確認することが望ましい。

4.スクリーニング検査法

1) スクリーニング検査法の方法

スクリーニング検査はリアルタイムPCR法、イムノクロマトグラフィー法、LAMP法又はこれらの検査法と同等以上の性能を持っている方法により行う。

なお、同等以上の性能とは以下を満たすものをいう。

● 5試験室以上で試験室間バリデーションを行う。試験室間バリデーションでは同一試料・濃度のサンプルを各試験室毎に2サンプルずつ以上を送付して判定率を評価する。K.septempunctataを含む試料の陽性率は90%以上、ブランク試料における陰性率は90%以上とする。なお、いずれも95%以上が望ましい。試料に含まれるK.septempunctataレベルにはブランクと5×104~5×105胞子/gを含める。

● ヒラメに寄生する他のクドア属粘液胞子虫(K.lateolabracis,K.thyrsitesなど)を検出しないことが望ましい。

2) LAMP法

キットに付属のDNA抽出液を用いて、ヒラメ筋肉からDNAを抽出する。等温増幅蛍光測定装置もしくは通常のリアルタイムPCR装置を用いて測定を行う。使用機器によって結果の判定方法が異なるため注意する。陽性判定が得られた場合、顕微鏡検査を行い、検体中に胞子が含まれることを確認する。

現在までにK.septempunctata検出用としてスクリーニング検査法の条件を満たす旨のデータが提示されているLAMP法キットとして以下のキットがある。また、これと同等以上の性能を有する他のキットを使用してもよい。

※操作にあたっては、各検査キットに添付された説明書に従い検査を実施すること。

・EasyAmpクドア・セプテンプンクタータ検査キット

(製造:株式会社ニッポンジーン、販売:株式会社ファスマック)

*上記キットは国内試験研究機関および韓国済州大学水産ワクチンセンターで試験室間バリデーションが行われ、ヒラメ1gあたり105個代以上の胞子を検出できることが確認されている。またヒラメに寄生する他のクドア属粘液胞子虫(K.lateolabracis,K.thyrsites)を検出しないことが確認されている。

3) イムノクロマトグラフィー法

キットに付属の懸濁液にヒラメ肉を入れすり潰した後、イムノクロマトに滴下し、目視でテストラインの出現を判定する。陽性判定が得られた場合、必ず顕微鏡検査を行い、検体中に胞子が含まれることを確認する。

現在までにK.septempunctata検出用としてスクリーニング検査法の条件を満たす旨のデータが提示されているイムノクロマトグラフィー法キットとして以下のキットがある。また、これと同等以上の性能を有する他のキットを使用してもよい。

※操作にあたっては、各検査キットに添付された説明書に従い検査を実施すること。

・ARK Checker((R)) IC Kudoa septempunctata

(製造・販売:アーク・リソース株式会社)

*上記キットは国内試験研究機関および韓国済州大学水産ワクチンセンターで試験室間バリデーションが行われ、ヒラメ1gあたり105個代以上の胞子を検出できることが確認されている。またヒラメに寄生する他のクドア属粘液胞子虫(K.lateolabracis,K.thyrsites)を検出しないことが確認されている。

4) リアルタイムPCR法

以下に示した方法もしくは同等以上の方法を用いて行う。陽性判定が得られた場合、顕微鏡検査を行い、検体中に胞子が含まれることを確認する。

● ヒラメ試料からのDNA抽出

(1) 器具および試薬

1.5mlのエッペンドルフチューブを使用できる遠心分離装置、56℃と70℃で使用できるヒートブロックもしくはウォーターバス2台、マイクロピペット(20、200、1000μl)、ボルテックスミキサー、ハサミ、エッペンドルフチューブ、分子生物学用エタノール(96―100%i、QIAamp DNA Mini Kit)

(2) ヒラメ切り身からのDNA抽出

ヒラメ切り身から約50mgを2ヶ所より採取する。キアゲン社のQIAamp DNA Mini Kitの「組織からのプロトコール」に準じて以下の方法でDNAを抽出する。

① ヒートブロックまたはウォーターバスを56℃と70℃にセットする。

② エッペンドルフチューブに、ヒラメ試料35~50mgを秤量し、それを25で割った値をF(秤量した値÷25=F)とする。

③ Buffer ATL(180×F)μlを加える。

④ Proteinase K(20×F)μlを加え、ボルテックスミキサーで撹拌する(ATLとProteinase Kを9:1で混ぜておき、(200×F)μl加えても良い)。

⑤ 時々ボルテックスミキサーで撹拌しながら56℃で溶解させる(通常1時間程度で溶解する)。

⑥ 溶解サンプル225μlを新しいエッペンドルフチューブに移す。

⑦ Buffer AL200μlを加え、15秒間ボルテックスミキサーで撹拌する。

⑧ 70℃で10分間インキュベートする。

⑨ 200μlの99.5%エタノールを加え、15秒間ボルテックスミキサーで撹拌する。

⑩ 2mlコレクションチューブのセットされたQIAamp Spin Columnの中に⑨の溶液全量を入れる。8,000rpmで1分間遠心する。QIAamp Spin Columnを新しい2mlコレクションチューブにセットする。

⑪ 500μlのBuffer AW1を加える。8,000rpmで1分間遠心する。QIAamp Spin Columnを新しい2mlコレクションチューブにセットする。

⑫ 500μlのBuffer AW2を加える。14,000rpmで3分間冷却遠心する。

⑬ QIAamp Spin Columnを1.5mlエッペンドルフチューブ(Noを記入)にセットする。200μlのBuffer AEを加える。1分間室温でインキュベートとしてから、8,000rpmで1分間冷却遠心する。その溶出液をPCRサンプルとして使用する。

● リアルタイムPCRによる検出

(1) 器具および試薬

リアルタイムPCR装置(ABI社製または同等品)、PCR反応チューブ、TaqMan Universal Master Mix(ABI社)、プライマー・プローブミックス溶液、TEバッファー

(2) プライマー・プローブミックス溶液

使用するプライマーとプローブの配列は以下のとおりである。

Kudoa―F(sense):CATGGGATTAGCCCGGTTTA

Kudoa―R(antisense):ACTCTCCCCAAAGCCGAAA

Kudoa―P(probe):FAM―TCCAGGTTGGGCCCTCAGTGAAAA―TAMRA

10×Primer/Probe Mixはプライマーそれぞれが4μM、プローブが2.5μMになるように調整する(反応液中での最終濃度はそれぞれ0.4μM,0.25μM)。

(例) プライマー,プローブのストック溶液の濃度がそれぞれ100μMの場合

Kudoa―F 8μl,Kudoa―R 8μl,Kudoa―P 5μを179μlのTEバッファーに加える。

プローブおよびプライマー・プローブミックスの取り扱い、保存は遮光して行い、小分けにして保存するなど凍結融解をなるべく避けるようにする。

(3) 陽性コントロールの調製

1×109コピー/1μlのK.septempunctata 18S rDNAを組み込んだ陽性コントロールプラスミド溶液を配布するので、TEバッファーで段階希釈し、2.5×107/μl,2.5×105/μl,2.5×103/μl,2.5×101/μlのプラスミド溶液を作成する(1反応系につき4μl使用するので、反応系での最終コピー数はそれぞれ1×108,1×106,1×104,1×102になる)。

● PCR反応

表1に基づいて反応調整液を作成する。表1の1,2,4を混合し、各ウエルに分注する。そこへ検体からのDNA溶液、検量線作成のための「(2) 陽性コントロールの調整の項」で作成した陽性コントロール、陰性コントロールとして精製水のいずれかを4μl加える。ボルテックスミキサー等で混合した後、軽く遠心し、リアルタイムPCR装置にかける。蛍光はFAM、クエンチャーはTAMRAを指定する。

表1.リアルタイムPCR反応調整液


試薬


1

TaqMan 2×Universal Master Mix

10μl

2

プライマー・プローブミックス

2μl

3

検体からのDNA溶液or陽性コントロール溶液or精製水

4μl

4

精製水

4μl

以下の条件で反応を行う

95℃10分 1サイクル

95℃15秒

60℃60秒 45サイクル

● 定量

陽性コントロールのコピー数(対数値)を縦軸に、PCR反応から得られたCt値を横軸にプロットし、検量線を作成する。この際、陽性コントロールの各濃度につき最低n=3で測定を行う。そこから、PCRに用いたDNA溶液4μl中のコピー数を求める。最終的にヒラメ1gあたりのKudoa rDNAのコピー数を以下の式を用いて算出する。検量線の傾きが-0.301(±0.020)以下であることを確認する。傾きが-0.301(±0.020)に収まらない場合、プライマー・プローブミックス溶液を再調製するか、Kudoa―Pを再合成すると改善される場合が多い。

試料1g中のKudoa rDNAのコピー数=検量線から得られたDNA溶液4μlのコピー数÷50(200μlのDNA溶液の内4μlを使用したため)×1000mg÷DNA抽出に用いた試料の重量25(mg)

=4μl中のコピー数×2000/1グラム試料

(例) 検量線から得られたDNA溶液4μlのコピー数が200の場合

それに200×2000=4.0×105kudoa rDNAのコピー数/1グラム試料

● 結果の判定

107Kudoa rDNAのコピー数/1グラム試料以上検出された場合、遺伝子検査のスクリーニング陽性とする。

5.顕微鏡検査法

スクリーニング検査で陽性と判定された場合、必ず顕微鏡検査を行い胞子の存在を確認する。

● 実験操作

検体を0.5g秤量し、シャーレ等に入れ目開き200μm程度のメッシュ(未滅菌のものでよい)を検体の上に置き、PBS約3mlを加え、ピンセットや注射筒の底で軽くつぶす。メッシュを通したPBS溶液をさらに目開き100μm程度のメッシュ(未滅菌のものでよい)に通し、そのろ液を遠心管等に回収する。遠心管等を1500rpm、10分、10℃の条件で遠心したのち、上清を出来る限り完全に捨てPBS0.5mlを正確に加え、懸濁する。そこから10μlをパラフィルム等にとり、同量のトリパンブルー溶液を加え混合し、Burker―Turk型等の白血球用血球計算盤で、6~7極嚢を有するkudoa胞子を計測する。1区画5―200個になるように、適時PBSで希釈する。トリパンブルー溶液はバックグラウンドを染めるために使用するのでK.septempunctata自体は基本的に染色されない。トリパンブルー溶液で染色された胞子が存在した場合、この胞子も計数する。

● 結果の判定

血球計算盤の1mm×1mm×0.1mmの区画を4箇所計測し、平均値(n)を算定する。定量限界は1区画のK.septempunctata数が5個のため、nが5以上の場合、有効とする。

(n×104)×2(トリパンブルー染色をしたため)×希釈倍数=グラム当たりの胞子数

定量限界 10万胞子

6.総合判定

1) スクリーニング検査及び顕微鏡検査の結果が陽性の場合に、陽性と判定し、食中毒の原因と判断する。スクリーニング検査の結果が陰性の場合は、顕微鏡検査を行わず陰性と判定する。スクリーニング検査の結果が陽性であって顕微鏡検査の結果が陰性の場合は、陰性と判定する。陰性との判定が困難な場合には、国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部に郵送し、国立医薬品食品衛生研究所で再検査を行い、陽性か陰性かの最終判定を行う。なお、スクリーニング検査の結果が陽性であって顕微鏡検査で定量限界以下の場合は、「Kudoa septempunctataは認められたが、定量限界以下」であることを明記する。

2) スクリーニング検査を行わず、顕微鏡検査を行い、その結果が陰性の場合、陰性と判断する。顕微鏡検査で陽性と判定された場合は、陽性と判断することができるが、必要に応じて「4.スクリーニング検査」で述べた方法を用いて、K.septempunctataの定性確認を行うことが望ましい。

7.注釈

1) 本試験法で示したスクリーニング検査法はK.septempunctataのDNAもしくは抗原を検出するものである。スクリーニング法だけでは胞子の存在を確定できないため、必ず顕微鏡検査を行い6~7個の極嚢を有する胞子の存在を確認する必要がある。

2) 本試験で示したリアルタイムPCR法はK.septempunctataに高い特異性を示すが、他のクドア属への交差反応は否定できない。正確にK.septempunctataの同定を行いたい場合は直接18srDNAのシークエンスにより確認することが望まれる。

(参考) 検査法フローチャート

1) スクリーニング検査から行う場合

2) 顕微鏡検査から行う場合