添付一覧
○「Biopharmaceutics Classification System(BCS)に基づくバイオウェーバーガイドラインについて」に関するQ&Aについて
(令和2年12月25日)
(事務連絡)
(各都道府県衛生主管部(局)あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課通知)
Biopharmaceutics Classification System(BCS)に基づき、ヒト生物学的同等性試験の免除(バイオウェーバー)を実施することについての製造販売承認申請における実施要件の指針については、令和2年12月25日付け薬生薬審発1225第13号医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知「Biopharmaceutics Classification System(BCS)に基づくバイオウェーバーガイドラインについて」により通知したところです。
あわせて、標記Q&Aにつきましても、日米EU医薬品規制調和国際会議において別添のとおり合意されましたので、下記事項を御了知の上、貴管内関係業者等に対し周知方御配慮願います。
別添
ICH M9 Q&As
1.緒言―適用範囲
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Questions |
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1.1 |
非線形の薬物動態を示す原薬は、BCSに基づくバイオウェーバーの適用の対象となるのか? |
非線形の薬物動態を示す原薬は、BCSクラスⅠ又はⅢの溶解性及び透過性の基準を満たす場合には、BCSに基づくバイオウェーバーの適用の対象となる。 |
1.2 |
本ガイドラインが、後発医薬品に対してBCSに基づくバイオウェーバーの適用について地域の違いを認めている理由は何か? |
ガイドラインは、科学的根拠により支持される場合に限り、BCSに基づくバイオウェーバーの考え方を、生物学的同等性を示す目的に適用されることを認めている。現時点では、BCSに基づくバイオウェーバーを後発医薬品に適用することを認めていない既存の規制に対応するため、その点が本ガイドラインに記載されているが、明確に表明されていない限り、製剤の申請に対してBCSに基づくバイオウェーバーを示すための調和された技術的要件の実装を否定するものではない。 |
1.3 |
医療用配合剤について、配合原薬のうち、1つのみがBCSに基づくバイオウェーバーの適用対象となり、他方の原薬が適用対象とならない場合、当該原薬はBCSに基づくバイオウェーバーの適用は可能となるのか? |
医療用配合剤に含まれる全ての原薬が、BCSクラスⅠ又はクラスⅢの基準を満たさなければ、バイオウェーバーの適用対象とはできない。原薬の1つがBCSクラスⅠ又はⅢの原薬でない場合には、医療用配合剤の処方がin vivoでの血中濃度推移に影響を与える可能性は排除できない。 |
1.4 |
治療濃度域が狭い薬物について、BCSクラスⅠ及びクラスⅢ原薬の吸収の速度と量が直接的に原薬の溶解性及び膜透過性に起因する場合であっても、バイオウェーバーの適用から除外される理由は? |
治療濃度域が狭い薬物とは、投与量や血中濃度のわずかな違いが、投与量や血中濃度に依存した重篤な治療過誤や副作用を引き起こしうる薬物として定義される。これらの薬物は、通常の用量範囲内で急激に変化する薬物用量反応関係を有する、及び有効性示す薬物濃度と重篤な毒性に関連する薬物濃度との間隔が狭いといった特徴がある。したがって、用量を慎重に漸増し、注意深くモニタリングしなければならない。治療濃度域が狭い薬物の国際基準のリストは存在しないが、これらの薬物のin vivoでの生物学的同等性を証明するためには、一般的には厳格な適合基準(例えば、Cmax及び/又はAUC:90~111%)や一部の地域では、特徴ある試験デザインを要求するといった特定の要件が必要となる。BCSに基づくバイオウェーバーの考え方は、より厳格なバイオウェーバーの基準を考慮するようにはデザインされていない。したがって、BCSに基づくバイオウェーバーのアプローチは、治療濃度域が狭い薬物の生物学的同等性を確立するための適切な代用手法としてはみなされない。 |
2.原薬の生物薬剤学分類
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Questions |
Answers |
2.1 |
試験製剤と標準製剤が異なる塩形態を有する原薬の場合、BCSに基づくバイオウェーバーが適用されるか? |
試験製剤と標準製剤が異なる(単純な)塩を含む場合には、両製剤に含まれる原薬がBCSクラスⅠ(高溶解性と高膜透過性)に分類されるのであれば、BCSに基づくバイオウェーバーを適用されうる。 試験製剤が標準製剤とは異なるエステル、エーテル、異性体、異性体の混合物、複合体又は誘導体を含む場合、これらの違いが生物学的利用能の製剤間差をもたらす可能性があり、BCSに基づくバイオウェーバーを支持するために使用する実験ではこの差を推定できないことから、BCSに基づくバイオウェーバーのアプローチは適用されない。 科学的側面に加えて、申請の法的規則及び規制要件を考慮すべきである。 |
2.2 |
溶解度を評価する際、異なる塩に関連する重量変化はどのように説明されるか? |
BCSは、特定の原薬を分類するものである。特定の活性成分の用量は、塩の形態に関係なく同一である必要がある。したがって、重量変化を考慮する必要はない。 |
2.3 |
プロドラッグがプロドラッグとして吸収される場合にのみ、BCSに基づくバイオウェーバーが適用されるのはなぜか? |
BCSは、原薬の溶解度及び膜透過性の判定基準に基づいて分類される。クラス分類は、異なる化合物(例えば、親化合物や代謝物)を参照することはできない。さらに、溶解度の基準は、その代謝物が服用直後で、かつ吸収前に形成されない限り、代謝物に関連しない規定された量の水分の経口摂取を考慮している。さらに、同一成分のin vitroでの溶出性が製品の類似性を示すために用いられることから、BCS分類は製剤化された原薬を参照する必要がある。 |
2.1 溶解性
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Questions |
Answers |
2.1.1 |
溶解度実験では、pHはどのように調整すべきか。 |
溶液のpHを調整するためには様々な許容された手法がある。pH調整が必要な場合、申請者は選択した方法の妥当性を示すべきである。±0.1のpH変動は許容される。 |
2.1.2 |
溶解度の測定時間はどのようにして決定されるか? |
平衡溶解度評価のために、溶解度の測定時間は、平衡に達するのに必要となる時間に基づいた十分な科学的根拠によって裏付けられるべきである。平衡溶解度を求めることができない場合、溶解度実験で設定する時間は、in vivoで吸収が完了したと想定される時間に基づき、十分な科学的根拠によって裏付けられるべきである。 |
2.1.3 |
溶解性を評価する際、ある緩衝液に関連する共通イオン効果をどのように説明するべきか? |
共通イオン効果は溶解性の評価に影響しないと予想される。 |
2.1.4 |
個々の試験結果に大きなばらつきがある場合、最小溶解度は、実施したpHでの試験の平均値に基づくべきか、それとも一つの試験によって得られた最小溶解度となるのか? |
通常、高溶解性の原薬については、個々の試験結果に大きなばらつきが認められるべきではない。最小溶解度の決定は、平均値に基づくべきである。 |
2.1.5 |
溶解性に関する文献データ又は別の科学的根拠は、BCSに基づくバイオウェーバーの原薬の溶解性評価の主要なデータとして使用することができるのか? |
実験での溶解度のデータは、原薬の溶解度を確認するために提出されるべきである。文献データは、溶解度データをさらに支持するために、提出してもよい。 |
2.1.6 |
ガイドラインが溶解度を評価する際に、原薬の分解の程度の限界値を10%以下に設定しているのはなぜか? |
10%カットオフ値は、原薬の分解により溶解度の測定値が過大評価されないことを保証するために設定される。この限界値は、実験的に十分達成可能であると考えられる。 |
2.2 膜透過性
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Questions |
Answers |
2.2.1 |
膜透過性の評価がCaco―2細胞株に限定されるのはなぜか?十分にバリデートされた他の細胞株(例えば、MDCKⅡ、LLC―PK1)をBCS分類のための膜透過性の評価に用いることはできるか? |
膜透過性は、他のin vitro(MDCKⅡのような他の細胞系)又はin situ(小腸一回灌流法[小腸灌流法])/ex―vivo(ラット反転腸管サック法)評価系によって推定できることがよく知られている。しかし、in vitroアプローチによる膜透過性の評価は、米国FDAを除く規制当局では確立されていないため、まずは最も経験が蓄積された評価系のみを採用することで合意した。将来的には、各国規制当局がin vitroデータについてより多くの経験を積んだ場合には、他の細胞株又は動物のex vivo及びin situ法を使用することができる可能性はあるが、それは現行ガイドライン案の別添Ⅰに概説されている原則に従って、厳密なバリデーション及び標準化を行った場合に限られる。 |
2.2.2 |
バリデートされたCaco―2試験系で中等度の膜透過性(50~84%)を示し、消化管で不安定であるものの、それを除けば膜透過性が高いと考えられる薬物が、なぜ低膜透過性と分類されるのか? |
膜透過性の高い原薬のみがBCSクラスⅠの基準(添加剤の変更に柔軟性があり、溶出性の判定基準を広げる(すなわち、30分以内に85%以上))が適応されることから、膜透過性を現在のものからさらに分類(すなわち、中等度の膜透過性又は低膜透過性)することは、BCSに基づくバイオウェーバーの目的から考えると適切ではない。消化管内で不安定な薬物については、in vivoで高い透過性を示すことは不可能である。ガイドラインに記載されたいずれかの方法で高膜透過性を示せない場合でも、BCSクラスⅢの基準(すなわち、添加剤の変更基準及び非常に速やかな溶出(15分以内に85%以上)を満たすことによって、バイオウェーバーは可能である。 |
2.2.3 |
薬物の膜透過性を適切に評価するために必要なサンプルサイズについてコメントしてほしい。 |
膜透過性分類を正確に評価するために必要な標本数は、個々のアッセイのばらつきに依存するため、ガイドラインで規定することは困難である。試験実施研究機関間のばらつきは大きいと考えられ、ばらつきの潜在的要因に関する情報はVolpe(J Pharm Sci (97), 2008)及びLee et al(Eur J Pharm & Biopharm(114), 2017)によって報告されている。しかし、BCSクラスⅠの原薬の試験実施研究所間のばらつきは、クラスⅢの原薬に比べてかなり小さいことが報告されている(Lee et al)。また、Papp>10×10-6cm/sの原薬については、ばらつきは中等度と報告されている(Peng et al, Eur J Pharm Sci (56), 2014;Jin et al, J Pharmcol & Toxicol Methods (70), 2014)。そのため、ばらつきが大きいことに起因して誤って高膜透過性と分類される可能性は低いと考えられる。したがって、Caco―2上皮細胞単層膜を用いた評価において、BCSクラスⅠ原薬を正しく分類するためのサンプルサイズは最低3標本以上とすることが妥当と考えられる。 |
2.2.4 |
低、中及び高膜透過性薬物について得られたPapp値が重なっている場合、各グループの個々の値はどのような統計的手法により比較すればよいか? |
本ガイダンスの目的は、2つに分類すること、すなわち、薬物の膜透過性が高い場合とそうでない場合を区別することである。別添Ⅰに記載された参照化合物のin vivo透過性は臨床研究で確認されており、低、中、高膜透過性が平均値によって明確に区別されることが示されている。さらに、多くの研究機関では、これらの参照化合物を用いたBCS分類のためのCaco―2系のバリデーションに成功しており、それらはin vitroでの高、中、低膜透過性化合物の区別できる評価系になっている。もし、実験により測定された低、中、高の薬剤の平均値が重複した場合は、使用したCaco―2評価の構築方法又は評価系の性能に問題がある可能性が高い。 試験薬物の膜透過性分類を実施するにあたり、評価系はこれらのモデル薬物に対して標準化されており、その上で試験薬物が高膜透過性と分類されるためには高膜透過性参照薬物と同等又はそれ以上の見かけの膜透過性(Papp)を示さなければならない。さらなる統計的手法を適用する必要はない。 |
3.製剤のBCSに基づくバイオウェーバーへの要件
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Questions |
Answers |
3.1 |
試験製剤と標準製剤の剤形が異なる場合に、なぜBCSに基づくバイオウェーバーが適応できないのか? |
製剤の差異により原薬の血中濃度推移は影響を受ける可能性がある。BCSに基づくバイオウェーバーガイドラインでは、生物学的同等性の誤判定のリスクを下げるために、製剤の差異が血中濃度推移に与える影響を考慮した上で、剤形及び添加剤に関する要件が規定されている。しかし、例えば、既存のin vivoデータに基づいて十分に正当化することによって、異なる剤形間であっても製剤開発過程で本ガイドラインの原則が適用される可能性もある。 |
3.2 |
口腔内崩壊錠(ODT)を水なしで服用する場合、BCSに基づくバイオウェーバーが適用されない理由は何か? |
胃内液量は250mLをかなり下回っているため、250mLの液体での原薬の溶解性の推定は、水なしで服用する場合の製剤には適用できない。水なしで服用するODTに対して溶解性を決定するために必要な液量を規定することは困難であると考える。さらに、現在の溶出試験の方法は、水なしで服用して口腔内で分散させる場合を想定していない。これらの製剤については、水なしでODTを投与した生物学的同等性試験を実施すること。 |
3.1 添加剤
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Questions |
Answers |
3.1.1 |
In silico PBPKモデルによる吸収過程のモデル化は、製剤性能の変化に対するリスク評価のために産業界で広く用いられている。十分に検討されたリスクアセスメントは推奨範囲を超えた処方変更の潜在的影響(添加剤の追加/除外の影響)の評価に用いることができるか? |
In silico PBPKモデルによる吸収過程のモデル化が、製剤処方の変更による製品性能のリスク評価に用いられることは認識されているが、そのようなモデルは、現在のところ、添加剤に起因する薬物吸収の差を反映するために十分に確立された方法であるとは考えられていない。したがって、モデル予測効果に基づくリスク評価では、添加剤の推奨範囲を超える変更は認められない。しかし、in silico PBPKモデルによる吸収過程のモデル化は、添加剤による薬物吸収阻害メカニズムが明確にされているという状況のもと、より広範な添加剤のリスク評価の一部(例えば、適切にバリデートされたPBPKモデルによる感度分析)として有用なエビデンスを提供するかもしれない。 |
3.1.2 |
表1に記載されている「全ての添加剤」が吸収に影響を及ぼすと予想されるかどうかについて明確にしてほしい。 |
表1はBCSクラスⅢに分類される原薬を含有する製剤に対する定量的類似性を示すための基準を提示している。表に列挙された添加剤は機能別に分類されているが、それぞれの分類中の一部の添加剤は吸収に影響を及ぼす場合がある。その場合には、標準製剤に含まれるその添加剤の重量に対する含有率の差は10%以内でなければならない。 |
3.1.3 |
表1に記載されている添加剤の許容差が逸脱する場合、「妥当な理由」は何か? |
典型例として、製品開発過程で得られる製剤のin vivoの血中濃度推移に関する多くのデータが挙げられる。このようなデータによって、例えば、十分かつ詳細なメカニズムの考察も含めて、添加剤の変更が薬物の吸収に影響を及ぼさないことを示すことができれば、表1に記載されているものを超える添加剤の変更を支持できる可能性がある。 |
3.1.4 |
BCSクラスⅢの原薬は、添加剤の種類は同じで量は類似していることが求められている。同じ種類でグレードが異なる添加剤について、どのように考えればよいか?この添加剤は「同じ種類」と考えてよいか? |
添加剤のグレードの違いを、製剤中の添加剤の機能特性と関連付けることが適切な場合はそのように評価する。一部の添加剤の種類では、添加剤のグレードの変更が製品の血中濃度推移に影響を及ぼさないと考えられる一方で、グレードの変更が製品の溶出性に影響を及ぼす可能性がある(例えば、HPMCの粒子径分布、粘度及び置換率の変化、滑沢剤のステアリン酸塩の比表面積の変化)。そのため、「同じ種類」とみなすかどうかについては事例ごとに決定する必要がある。 |
3.1.5 |
添加剤の糖アルコールに許容範囲が定められていないのはなぜか? |
現在のところ、これらの添加剤の許容される閾値を確認するのに十分なデータはない。さらに、これらの添加剤による変化の影響は、原薬の特性(すなわち、腸管移動速度の変化に対する薬物動態プロファイルの影響の受けやすさ)によっても異なるだろう。これらの添加剤の含量の変化は、吸収に影響を及ぼす可能性のある他の添加剤、すなわち標準製剤中の添加剤の量の±10%以内と同じ制限を受ける。 |
3.1.6 |
BCS ClassⅢの薬については、添加剤の種類は同じで量は類似していることが求められている(フィルムコーティング、カプセル剤皮の添加剤、着色剤、香料、保存剤を除く)が、これらの基準を満たす場合と、満たさない場合の代表例を提示することができるか。 |
添加剤の量が類似している場合の例示を本ガイドラインの別添Ⅱに示している。加えて、本ガイドラインの表1、3.1項において許容されうる添加剤の差に関する多くの推奨事項が内核重量に対する含有率の差(w/w)として表記されている。仮に試験製剤が当該推奨事項を満たすが、添加剤の絶対量に著しい差が認められる場合(例えば、内核重量が試験製剤と標準製剤間で類似していない場合)、更なる正当化が求められるかもしれない。 |
3.2 In vitro溶出試験
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Questions |
Answers |
3.2.1 |
堆積物の解消以外(吸着、浮遊などの解消)の理由でのシンカーの使用は、適切に正当化することで、使用が許容されるか? |
許容されうる。適切に正当化されれば、シンカーは溶出試験中に認められた問題を解決するために使用してもよい。標準製剤及び試験製剤について、同様の試験条件を適用する必要がある。 |
3.2.2 |
一方は非常に速い(平均溶出率が15分以下で85%以上)という基準を満たし、もう一方は速い(平均溶出率が30分以内で85%以上)という基準を満たしている場合に、BCSクラスⅠの原薬を含有する製品の溶出プロファイルを比較する方法はどのようなものか。 |
一方の製品が15分で85%を超える溶出率を示し、他方の製品は示さなかった場合、類似性を示すために十分なサンプリング点数で溶出試験を実施し、f2を計算する。 |
3.2.3 |
溶出プロファイルの比較では、初期の時点でのばらつきが大きいため、f2の計算にはサンプリング点が十分でない場合がある。このような場合にはどのように対処できるか? |
BCSクラスⅠの原薬については、溶出のばらつきが大きいとは考えられないため、類似性を示すための別の統計手法(例えば、ブートストラップ法)は適用できないと考えられる。コーニングによって大きな変動が生じる場合には、科学的に正当な理由があれば、コーニングの問題の解決のために、別の方法(例えば、シンカーの使用やその他の適切に正当化された方法)を使用してもよい。 |
3.2.4 |
溶出プロファイルの比較では、時点がガイドラインに記載された基準や条件を満たしている場合でも、時点が異なるとf2関数が異なる場合がある。例えば、10、20、30minの時点ではf2<50となり、8、20、30minの時点ではf2>50となる場合など。このような場合はどのように対応したらよいか。 |
このような状況は、ごく少数の事例でのみ発生するはずである。f2値の計算時点は予め指定する必要がある。一般に、予め設定したサンプリングポイントを全て使用する。 |
3.2.5 |
試験製剤と標準製剤の溶出プロファイルが異なる場合(速い溶出と非常に速い溶出の場合)、類似性を評価するためのf2関数の計算に同じ時点を用いなければならないか? |
f2の計算には同じ時点を使用しなければならない。 質問3.2.4への回答も参照のこと。 |
3.2.6 |
1つの含量で取得したバイオウェーバーを他の含量に適用できるか? |
適用できない。BCSに基づくバイオウェーバーは、各含量における裏付けデータを必要とする。試験製剤を同一含量の標準製剤とin vitroで比較することにより、そうしない場合に生じうる過誤を排除できる。 |
3.2.7 |
以下の剤形間についてバイオウェーバーを取得することは可能か? ―非コーティング錠とフィルムコーティング錠 ―錠剤とカプセル剤 |
―非コーティング錠とフィルム層が非機能であるコーティング錠は同一剤形とみなされ、BCSに基づくバイオウェーバーを適用できる。 ―錠剤及びカプセル剤は、同一の剤形であるとは考えられず、BCSに基づくバイオウェーバーは原則として受け入れられない(質問3.1への回答も参照のこと。)。 |
3.2.8 |
懸濁剤の溶出比較のために推奨される回転速度は? |
懸濁液の場合、パドル法50rpmの回転速度が推奨される。より低い回転速度で評価してもよいが、必須ではない。 |
別添Ⅰ:Caco―2細胞を用いた膜透過性試験における留意事項
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Questions |
Answers |
A.1 |
ガイドラインでは、in vitro膜透過性評価によるBCS分類の対象は受動輸送薬物に限定されている。しかし、Caco―2細胞法のバリデーションのために使用される40のモデル薬物のうち12の薬物(表2)は能動輸送される。これら12のうち4つは排出トランスポーターの典型基質(ジゴキシン、パクリタキセル、キニジン及びビンブラスチン)であり、他の8つは能動輸送される(フロセミド=OAT3;メトホルミン=OCT1及びOCT2;アミロライド=OCT2;ファモチジン=OCT2;アシクロビル=OAT1及びOCT1、テオフィリン=OAT2;及びエナラプリル=PepT1及びPepT2)。明らかな矛盾ではないか? |
24のヒト空腸の透過性とCaco―2細胞膜透過性の比較において、in vivoとin vitroの薬物透過性測定値は、受動的に吸収される薬物では良好に相関したが、能動輸送される薬物では相関しなかった(Sun et al. Pharm Res (19), 2002)。したがって、Caco―2細胞単層膜はヒトにおける薬物の受動輸送を予測するのに用いることができるが、トランスポーターによる輸送の予測は、この細胞系におけるキャリア発現に依存するため、不正確である可能性がある(Di et al., Drug Discover Today (17), 2012)。したがって、高透過性を規定するモデル薬物は、Caco―2細胞及びヒト空腸において同等の透過係数を有するナプロキセン、アンチピリン及びメトプロロールのような、速やかに(受動的に)透過する薬物である。 一部のモデル薬物では、能動輸送を受けるものの、これらの薬物はCaco―2細胞単層膜中の透過性はin vivoでの透過性と確実に相関することが示されている。細胞株におけるキャリア発現は、in vivoとは異なる可能性があるため、この相関性は、能動輸送される全ての薬物について普遍的に観察されるわけではない。したがって、in vivoにおける裏付けデータがなければ、in vitroデータだけでは能動輸送される薬物の膜透過性分類を決定することはできない。Caco―2細胞評価系により高透過性に分類できるのは、能動輸送を伴わない薬物のみである。 |
A.2 |
ある化合物がCaco―2細胞における排出を受けやすく、見かけのKm値が関連する腸内濃度よりもはるかに低い場合、排出活性は全ての濃度で飽和され、透過性は受動拡散によってのみ支配される。このような場合、特にヒトPKに線形性がみとめられる場合には、in vitroデータが活用できると考えられる。低Kmの製剤は、ヒトPK、ADMEデータなどの裏付けデータに基づくBCSに基づくバイオウェーバーは可能か? |
生理学的に適切な濃度(Annex Ⅰを参照;250mlに溶解した最高含量の0.01倍、0.1倍、1倍の濃度)が薬物のKm値を超える場合、排出トランスポーターが欠如しているか飽和しているかの判別はできない。その場合、見かけの透過性(Papp)が高透過性モデル薬物より高ければ、高透過性に分類できる。 さらに、Caco―2透過性試験系は、排出トランスポーターの機能活性を有するモデル薬物(表2)の双方向輸送性が検証されている必要がある。ガイダンスに従ったin vivoデータ(すなわち、ADME又は絶対的バイオアベイラビリティ)による高透過性を示すデータを提示することでも、高透過性の分類が認められる。 高透過性に分類できない薬物についても、ガイダンスに従った他の全ての条件が満たされている場合には、BCSクラスⅢのバイオウェーバーを適用できる。 |
A.3 |
Caco―2細胞は能動輸送される薬物の透過性も予測できるが、なぜこれらの薬物をBCSに基づくバイオウェーバーの対象から除外するのか? |
A1―1の回答を参照のこと。能動輸送される薬物であっても、ヒトのin vivoデータから高膜透過性であることが示されれば、バイオウェーバーの対象外とはならない。Caco―2細胞膜透過性試験結果のみを使用する場合は、この目的には適切ではない(Caco―2系におけるトランスポーター発現はin vivoでの発現状況と異なる可能性があるため)。 |
A.4 |
いくつかのバリデートされたCaco―2細胞単層膜モデルでは、2を超えるEfflux ratioが排出指向性の閾値としてより適切であると考えられる。バリデーション結果から得られたモデル化合物/データセットに基づいて、Efflux ratioの閾値が2を超えることを正当化することはできるか? |
取込み又は排出のどちらにも能動輸送がない場合、見かけの透過性(Papp)における「頂端側(A)→基底側(B)」と「B→A」との比は、1又は1に近いと考えられる。1からずれている場合は、能動輸送が何らかの役割を果たしている可能性がある。Efflux ratioが2を超える場合は、薬物が排出トランスポーターの基質であることを示すものと考えられている(Giacomini, et al. Nat Rev Drug Discov. 2010;9:215‐236)。 |
A.5 |
透過性試験法のバリデーション用のモデル医薬品に関する参考文献を示してほしい。 |
以下の文献を参照のこと: ・Volpe DA. Application of Method Suitability for Drug Permeability Classification. AAPS J. 2010;12(4):670‐8.” ・Li C. et al. Development of In Vitro Pharmacokinetic Screens Using Caco‐2, Human Hepatocyte, and Caco‐2/Human Hepatocyte Hybrid Systems for the Prediction of Oral Bioavailability in Humans. Journal of Biomolecular Screening 2007;12(8):1084‐1091 ・Peng Y. et al. Applications of a 7‐day Caco‐2 cell model in drug discovery and development. European Journal of Pharmaceutical Sciences 2014;56:120‐130 ・Kasim NA et al. Molecular Properties of WHO Essential Drugs and Provisional Biopharmaceutical Classification. Molecular Pharmaceutics 2004;1(1):85‐96 ・Lennern画像1 (18KB) ・Thiel‐Demby VE. Biopharmaceutics Classification System:Validation and Learnings of an In Vitro Permeability Assay. Molecular Pharmaceutics 2009;6(1):11‐18 ・Giacomini, et al. Nat Rev Drug Discov. 2010;9:215‐236 ・FDA, United States In vitro metabolism‐and Transporter‐Mediated Drug‐Drug Interaction Studies Guidance for Industry(October 2017) |