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○次世代医療機器評価指標の公表について

(令和2年9月25日)

(薬生機審発0925第1号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)

(公印省略)

厚生労働省では、医療ニーズが高く実用可能性のある次世代医療機器について、審査時に用いる技術評価指標等をあらかじめ作成し、公表することにより、製品開発の効率化及び承認審査の迅速化を図る目的で、評価指標を検討してきたところです。

今般、在宅医療機器(別紙1)、難治性創傷治療機器(別紙2)の評価を行うに当たって必要と考えられる資料、評価のポイント等を評価指標としてとりまとめましたので、下記に留意の上、製造販売承認申請に当たって参考とするよう、貴管内関係業者に対して周知いただきますよう御配慮願います。

なお、本通知の写しを独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長、一般社団法人日本医療機器産業連合会会長、一般社団法人米国医療機器・IVD工業会会長及び欧州ビジネス協会医療機器委員会委員長宛て送付することを申し添えます。

1.評価指標とは、承認申請資料の収集やその審査の迅速化等の観点から、製品の評価において着目すべき事項(評価項目)を示すものである。評価指標は、法的な基準という位置付けではなく、技術開発の著しい次世代医療機器を対象として現時点で考えられる評価項目を示したものであり、製品の特性に応じて、評価指標に示すもの以外の評価が必要である場合や評価指標に示す評価項目のうち適用しなくてもよい項目があり得ることに留意すること。

2.個々の製品の承認申請に当たって必要な資料・データを収集する際は、評価指標に示す事項についてあらかじめ検討するほか、可能な限り早期に独立行政法人医薬品医療機器総合機構の対面助言を活用することが望ましいこと。

(別紙1)

在宅医療機器に関する評価指標

1.はじめに

近い将来、超高齢社会を迎える我が国においては、地域医療構想の実現と地域包括ケアシステムの構築が医療上の解決すべき喫緊の課題の一つとなる。人口減少が進む地域では、医療環境の在り方が変化すると予測され、医療機関・施設と同等の安全且つ有効で信頼性の高い医療を在宅において提供する必要性が増大すると考えられる。これらの背景から、全国在宅医療会議では、在宅医療を積極的に推進するための国家的施策について議論されている。また、医療機器促進法に基づく基本計画では、実用化を促進すべき重点5分野の一つとして、在宅で使用される医療機器が掲げられている。

在宅又は医療施設以外のその他の環境下で使用する医療機器には、使用者(主に一般人)、使用環境、並びに機器間の相互の影響等により発生する特有のリスクが付随する。また、在宅患者の状態(安定度や重症度等)、在宅患者に必要な治療内容は入院患者と異なる場合がある。在宅医療機器の設計開発において、潜在的ハザードを十分に考慮しない場合、不適切な使用や誤作動等を誘引し、死亡事故や深刻な障害が起こり得る。米国FDAは、在宅医療機器の設計開発及び審査において考慮すべき複数の因子を識別するための指針である“Design Considerations for Devices Intended for Home Use, Guidance for Industry and Food and Drug Administration Staff”の発行を通じて、リスクの最小化を図っている。我が国でも、人工呼吸器や人工透析等、医療機関・施設と同等の医療が既に在宅で行われていると共に、植込み型デバイスの遠隔モニタリングも現実の医療として提供されている。また、在宅使用を前提とした様々な医療機器プログラムも開発されているが、在宅医療機器を長期間安全且つ有効に使用するために要求される特有の性質については、包括的な議論が行われていない。

そこで本評価指標では、我が国固有の医療環境を考慮した上で、在宅使用を目的とした医療機器に求められる安全性、性能、ユーザビリティ等に関する評価の留意点を取りまとめた。

2.本評価指標の対象

本評価指標は、在宅使用を目的とする医療機器に必要な機能及び性能や、潜在する特有のリスクを最小化するための考慮すべき事項を示しており、在宅使用に特化した医療機器や適応範囲に在宅使用を含むその他の医療機器の評価に適用する。

3.評価指標の位置づけ

本評価指標は、IoTや人工知能の導入等、技術開発が著しい機器を対象とすると共に、在宅医療機器を取巻く状況も日々変化していることを勘案し、現時点で重要と考えられる事項を示したものである。今後の技術革新や医療現場での知見の集積等を踏まえて改訂されていくべきものであり、承認申請内容に対して、拘束力を持つものではない。本評価指標が対象とする製品の評価にあたっては、個別の製品の特性を十分に理解した上で、科学的な合理性を背景にして、柔軟に対応する必要がある。本評価指標の他、国内外のその他の関連ガイドライン等も参考にすること。

4.用語の定義

在宅医療機器とは、医療機関・施設及びそれ以外の環境下での適応を有する医療機器である。これには、住居、介護施設、オフィス環境、学校、屋外環境、航空機、車両等が挙げられる。

使用者とは、在宅医療機器を操作又は取り扱う者である。在宅医療機器に関して十分な知識を有するか否かを問わず、患者本人、患者を補助する同居家族等、非医療従事者である一般人の他、医師、看護師、療法士、救急隊員、介護専門家等の医療・介護従事者も含まれる。(参考資料1)

5.評価にあたって留意すべき事項

在宅での使用状況、患者の病状、治療目的に適した性能や、これらに付随する特有なリスク等、在宅医療機器を長期間安全且つ有効に使用するために要求される評価項目を以下に例示した。これらの項目を参考に、対象製品の特性に応じて必要な評価を行うこと。また、在宅医療機器に関して専門的知識を有さない使用者による使用も想定し、必要な機能や性能を考慮した上で設計されていることが望ましい。

(1) 適応範囲、使用状況

適応範囲となる対象疾患、使用目的、効能効果、使用場所及び想定される使用者の範囲とその要件、使用方法等について明らかにすること。製品の在宅における使用状況や治療内容に適した適応範囲が設定されていること。

(2) 使用環境に関する事項

在宅医療機器は医療機関・施設と異なる環境でも使用される。例えば、医療機関では考えにくい棚等からの落下物や、子供、ペットの存在が挙げられる。また、通常、機器を管理する専門家も不在であるため、その評価にあたっては、在宅使用時のワーストケースを考慮した環境下において性能を担保することが推奨される。想定されるあらゆる環境での使用が担保できない場合は、使用環境や使用者を限定する、機器の管理体制を定める等、適切な対応が実施されていること。

① 医療機関・施設へのアクセシビリティ

使用場所から医療機関・施設までの距離や移動時間を考慮し、必要に応じて、医療機関・施設へのアクセスに関する要件が明らかにされていること。

② 設置

設置場所の要件について検討されていること。例えば、設置場所の広さ、自動掃除機等を含む家電や家具等との物理的干渉、床面の材質等が影響する可能性が考えられる。また、併用する製品がある場合は、それらの要件についても検討されていること。使用者やその家族に子供やペットがいる可能性にも留意すること。

③ 温度及び湿度

空調(温度・湿度、換気)の制御、耐久性を考慮した設計・使用条件等、機器の安定動作に必要な諸因子について評価すること。特に、欧米諸国と比較して、本邦は高温多湿であることに留意すること。

④ 大気圧変化

使用場所の標高や航空機等による移動に伴う大気圧変動の影響について評価すること。

⑤ 振動

医療機関・施設と比較して、様々な振動が発生している可能性があること。移動に伴う振動も考慮して評価すること。また、在宅使用時の人やペットとの不意な接触や棚からの落下物による振動発生の可能性等についても留意すること。

⑥ 汚染物等の衛生維持管理

医療機関・施設と比較して、衛生環境の状況が悪い可能性があることを留意すること。例えば、害虫、ペット、タバコ等の煙、家庭用化学薬品、家庭用食品等の汚染物による影響が考えられる。

⑦ 自然災害等で以下が供給されない場合を想定して評価すること。

(ア) 給排水

(イ) 圧縮空気、酸素等のガス

(ウ) 電源((3)/⑦項も参照)

(エ) 電話回線や無線回線を用いる場合は、その安定性や災害時の停電対応等の通信環境

(オ) 機器の機能に不可欠な消耗品等

⑧ 移動

屋外での使用及び日常的な移動、並びに鉄道、自動車、航空機等の交通機関の利用、国内外の旅行への適応について検討し、評価すること。

⑨ 液体の接触

家庭環境で使用される水、飲料、清掃・消毒用液体等の在宅使用時に接触する可能性のある液体による影響を考慮し、評価すること。

⑩ 保管

本体及び消耗品を含む部品等の家庭で実現可能な適切な保管方法について検討し、使用者に適切に情報提供すること。

(3) 設計に関する事項

本項では、在宅医療機器について考慮されるべき技術的問題に対応する設計管理上の留意点を例示する。(参考資料2)

① 長期使用に係るリスク対応

機器としての耐久性のみならず、操作慣れへの対応等、長期使用に関する様々なリスクに対する評価が行われていること。

② QOLへの配慮

同一場所で同一人物が長期使用すること、及び生活環境で使用されることを踏まえ、静音設計等、患者及びその家族のQOLを考慮して設計されていることが望ましい。

③ ロックアウト機構

使用者による意図しない設定値変更を防止する必要がある場合等は、ロックアウト機構の採用が考えられる。しかし、在宅医療機器の安全性をロックアウト機構のみに委ねることは望ましくない。他の手段による解決策が困難である場合にのみ、ロックアウト機構が採用されていることが望ましい。

④ 日常の維持管理

在宅医療機器は、維持管理項目を最小限とされていることが望ましい。性能を維持するために定期的な点検等を必要とする場合は、主に非医療従事者が行うという在宅医療機器に特有の性質を踏まえ、手順が明瞭で容易に実施できる必要がある。また、維持管理における、各種点検等の実施事項に係る関係者の責任範囲を明確に示されていること。

⑤ 較正

在宅医療機器は較正が不要になるように設計されていることが望ましい。使用者による較正が必要となる場合には、較正が必要最小限となるように設計されていることが望ましく、その手順がわかり易く説明されていること。また、較正が正確に実施されたこと、前回の較正実施日、次回の較正の必要時期について、確認できる仕様であることが望ましい。

当該機器の性能が計測器の使用に依存する場合は、品質管理システムにより、計測器に割り当てられた値のトレーサビリティが確保されていることが望ましい。専門家による機器の較正が必要な場合は、較正の実施場所が明示されていることが望ましい。較正に関する要求事項は、該当するガイダンスや規格を参照して定められていること。

⑥ 機械系

在宅使用時における転倒、落下、衝突、他の機械との干渉等の物理的な衝撃を考慮した設計(強度特性等)について評価すること。(参考資料3)

⑦ 電気系

医療機関・施設に設置された専用電源と比較して、使用される電源は安定性に劣り、アースを確保できない可能性があることを考慮して、以下の事項について評価すること。(参考資料3)

(ア) 配電幹線

安全に動作可能な容量・電圧・周波数範囲を確認した上で、使用条件が設定されていること。短時間又は長時間の停電への対応についても確認すること。

(イ) 内部電源

動作がバッテリー等の内部電源に依存する場合、充電時間と使用時間の関係を示した上で、使用可能時間、そのばらつき及びその要因、繰り返し使用可能回数、並びに充電中の使用の可否等が使用者に明示されていること。バッテリーを交換する必要がある場合は、その方法が明示されていると共に、その必要性が事前に使用者に通知・警告されること。また、内部電源が切れた場合の再起動方法等の対応について明示されていること。

(ウ) 常設機器

家庭内に機器を常設する場合は、アース接続の必要性の有無が明示されていること。

(エ) コンセント

他の電気機器とのコンセントの共用が可能なのか明示されていること。また、サージ保護、延長コード、漏電遮断器の利用について適切な対策が講じられていること。

(オ) 停電

AC電源を利用している場合は、オプションとしてバッテリーや発電機等のバックアップ電源が提供されている、若しくは使用者が準備可能なバックアップ電源の性能が明示されていることが望ましい。停電時の連絡方法、バックアップ電源への切り替えや再起動時の設定値の確認を含む対応方法、バックアップ電源での使用可能時間又は使用可能回数、バックアップ電源を確保できない場合の使用可能時間や対応方法等について、使用者に必要な情報が提示されていること。また、必要に応じて手動での操作が可能である設計とされていることが望ましい。

(カ) 電磁両立性

大型電動モーター、無線機、スピーカー、携帯電話等、意図した使用環境下で発生し得る電磁的な干渉の影響について評価すると共に、必要に応じて使用時の注意喚起が行われていること。(参考資料4―6)

(キ) ワイヤレス技術

機器がワイヤレス技術を使用している場合、ワイヤレス技術、周波数及び周波数帯域、出力の詳細を確認すること。使用環境中にRFワイヤレス技術を有する製品が存在する可能性がある場合は、共存下でも適切に作動することを評価すること。また、障害物による通信距離への影響に留意すること。(参考資料7)

(ク) 警報システム

様々な使用者を想定し、在宅使用においても、確実にアラームを知覚できることを確認すること。知覚できない場合の注意喚起及び対応策について記載されていること。必要に応じて、視覚、聴覚、触覚のうち二つのモードでのアラームを発する等の対策が実施されていることが望ましい。同時に、患者・患者介助者等の関係者のQOLにも配慮し、過剰なアラームが頻発しないよう留意すること。また、長期使用に伴うアラーム慣れにも留意すること。(参考資料8)

(ケ) 通信

遠隔で通信を行う機器の場合は、機器間の接続性や、通信の切断時の対応について記載されていること。

(コ) 時刻

内部時計を有する医療機器においては、時刻のずれにより誤った解釈や動作が生じる可能性があることに留意すること。

⑧ 復旧

非常停止後の復旧方法が明示されていること。設定値が初期化される可能性や、適切な対処を行わずに再起動した場合の危険性等が考慮されていること。

⑨ 汎用端末の使用

情報携帯端末(スマートフォンやタブレット)等の汎用端末を利用した医療機器プログラムの場合にあっては、汎用端末に求められる電気的安全性、電磁両立性は少なくとも確保されていること。なお、医用電気機器に求められる電気的安全性や電磁両立性と、それら安全性等との差分に係るリスクマネジメントは考慮すること。

(4) 使用者に関する事項

在宅医療機器は、必要に応じて医師の指導の下で非医療従事者(患者自身又は家族等の使用者)が使用すること、また、特に使用者の高齢化による身体能力等、様々な能力低下を考慮し、以下の事項について評価すること。

① 身体

使用者の身体的能力、体格、運動能力、器用さ、持久力等を考慮し、必要な注意喚起や使用の制限等が実施されていること。

② 感覚及び知覚

様々な視覚能力、聴覚能力、触覚感度の使用者が含まれることを考慮すること。特に、周囲照明条件下におけるインターフェースの視認性や警報装置の視認性及び他の音源からの識別の可否について考慮すること。

③ 認知

様々な情報処理能力及び識字能力の使用者が含まれることを考慮すること。認知障害を有する使用者への影響を考慮し、必要に応じて、使用時の注意喚起を講じられていること。

④ 心理的影響

患者又は家族等の使用者はアラームの発生や機器の停止時に、その状況に動揺して、本来できるはずの行動や操作ができなくなることも想定される。在宅医療機器については、その様な状況に陥る可能性を考慮した設計・仕様となっていると共に、不具合発生時の対処方法を容易に理解できる説明書が提供されていることが望ましい。

(5) ヒューマンファクター

在宅医療機器は、医療施設等にある医療機器と比較して、多くのハザードが存在し、使用者に起因する不具合を引き起こす可能性がより高い。緊急時には、患者やその家族等、専門教育を受けていない使用者が対処しなくてはならない可能性もある。これらの観点を踏まえ、リスク分析時には、使用に関連した不具合及びエラーの原因になりうる要因に特別な注意を払い、人間工学、ユーザビリティ工学も考慮して設計されていることが望ましい。(参考資料9―11)

① 使用者への教育及び認定(参考資料12)

使用者の教育は、在宅医療機器の有効性及び安全性の担保に重要であるため、必要に応じて、想定される全ての使用者を考慮した、教育訓練プログラムや認定制度等も検討されていること。同一人物による長期間使用に伴う操作慣れの発生等に由来するヒューマンエラーも考慮する必要がある。

(6) 使用者へ周知すべき事項

① 緊急時の機器の取り扱い

必要に応じて、災害や停電等の様々な異常事態を想定した対応方法が明示されていること。

② 処分

機器、その部品及び付随する消耗品等を廃棄処分する場合の対応について記載されていること。

③ 衛生維持管理

洗浄、消毒、滅菌等の必要な衛生維持管理を一般家庭でも実施できることが望ましい。また、その方法が明示されていること。

④ メンテナンス

点検、較正の実施が必要な場合は、その方法が明示されていること。(詳細は(3)④、⑤参照)

⑤ 役割の明示

上記①から④について、製造販売業者、使用者、医師等の役割が明らかにされていること。

(7) 市販後考慮事項

① カスタマサービス

必要に応じて、機器の使用方法及び保守に関する質問を受け付ける窓口が設けられると共に、それが維持されることが望ましい。

② 不具合情報の収集

機器の不具合や誤使用に関する情報を医療機関、施設及び使用者から可能な限り収集し、また、必要に応じて、使用者に迅速に情報提供できる体制が構築されていること。

(8) サイバーセキュリティ

医療機器の特性に応じて、要求されるサイバーセキュリティレベルを明確化し、最新のサイバーセキュリティ規制に応じた適切な対策が講じられていること。(参考資料13)

また、必要な教育が使用者に実施されること。

(9) 個人情報保護

臨床情報を取得する機器にあっては、必要な個人情報保護の対策が講じられていること。臨床情報を保存する機能を有する機器にあっては、情報の保管や廃棄の際の取り扱いについても考慮されていること。

参考資料

1) 平成17年3月29日付け厚生労働省告示第122号「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第四十一条第三項の規定により厚生労働大臣が定める医療機器の基準」

2) ISO 14971:2007 Medical devices‐Application of risk management to medical devices

3) IEC 60601‐1‐11:2015 Medical electrical equipment‐Part 1‐11:General requirements for basic safety and essential performance‐Collateral standard:Requirements for medical electrical equipment and medical electrical systems used in the home healthcare environment

4) IEC 60601‐1‐2:2014 Medical electrical equipment‐Part 1‐2:General requirements for basic safety and essential performance‐Collateral Standard:Electromagnetic disturbances‐Requirements and tests

5) JIS T 0601‐1‐2:2018医用電気機器―第1―2部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項―副通則:電磁妨害―要求事項及び試験

6) 平成30年3月1日付け薬生機審発0301第1号「医療機器の電磁両立性に関する日本工業規格の改正の取扱いについて」

7) 平成30年8月27日付け総基環第190号総務省総合通信基盤局電波部電波環境課長通知 別添 平成29年度「電波の植込み型医療機器及び在宅医療機器等への影響に関する調査等」報告書

8) IEC 60601‐1‐8:2006/Amd 1:2012 Medical electrical equipment‐Part 1‐8:General requirements for basic safety and essential performance‐Collateral standard:General requirements, tests and guidance for alarm systems in medical electrical equipment and medical electrical systems

9) IEC 62366‐1:2015 Medical devices‐Part 1:Application of usability engineering to medical devices

10) JIS T 62366‐1:2019医療機器―第1部:ユーザビリティエンジニアリングの医療機器への適用

11) 令和元年10月1日付け薬生機審発1001第1号、薬生監麻発1001第5号「ユーザビリティエンジニアリングの医療機器への適用に関する日本産業規格の制定に伴う医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律上の取扱いについて」

12) AAMI TIR49:2013 Design of training and instructional materials for medical devices used in non‐clinical environments

13) 平成30年7月24日付け薬生機審発0724第1号、薬生安発0724第1号「医療機器のサイバーセキュリティの確保に関するガイダンスについて」

14) IEC 62304:2006/Amd 1:2015 Medical device software‐Software life cycle processes

15) JIS T 2304:2017医療機器ソフトウェア―ソフトウェアライフサイクルプロセス

16) 平成29年5月27日付け薬生機審発0517第1号「医療機器の基本要件基準第12条第2項の適用について」

17) IEC 82304‐1:2016 Health software‐Part 1:General requirements for product safety

18) JIS T 82304‐1:2018ヘルスソフトウェア―第1部:製品安全に関する一般要求事項

19) 国立研究開発法人産業技術総合研究所 平成28年度未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業(医療機器等に関する開発ガイドライン(手引き)策定事業)在宅医療機器人工呼吸器 開発WG報告書

20) 国立研究開発法人産業技術総合研究所 平成29年度未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業(医療機器等に関する開発ガイドライン(手引き)策定事業)在宅医療機器人工呼吸器 開発WG報告書

別紙2

難治性創傷治療機器の臨床評価に関する評価指標

1.はじめに

近年、高齢化や生活習慣病の蔓延等により、糖尿病、動脈硬化及び静脈うっ滞を伴う患者や、血液透析患者が増加傾向にある。当該患者においては、足壊疽や褥瘡等、標準治療では治癒が困難な難治性創傷が認められることが多く、創傷の重症度によっては、下肢切断を余儀なくされる場合があり、患者のQOLを著しく低下させる。我が国における褥瘡患者数は若干減少傾向にあるが、糖尿病性足潰瘍及び静脈うっ滞性潰瘍は経年的に増加傾向にあるため、創傷治癒を目的とする医療機器が数多く承認されていると共に、新規材料を用いた製品の研究開発も積極的に進められているが、難治性創傷に対する臨床的な治療効果を評価するための統一された手法は確立されていない。同創傷治療の臨床評価は多くの交絡因子を一定に管理できる入院管理下で実施することが有用であるが、長期入院管理を行うことは現実的に難しい。基礎疾患の有無や創傷の状態によって治癒期間が異なることも考えられるため、これらの条件をそろえた臨床試験を計画した場合、対象患者の組み入れが困難となり、試験期間が長期化する等、対象機器の効率的な評価が難しい状況となる。また、我が国の難治性創傷患者には透析患者が多く含まれること等、背景因子が海外の臨床試験データと異なることもあるため、その外挿が困難な場合も少なくない。一般的に、医療機器の臨床試験における有効性及び安全性評価は交絡因子やバイアスの影響を受け難い無作為化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT)により実施することが望ましい。しかし、難治性創傷においては、組み入れ患者の背景の複雑性、個々の創傷の大きさ、部位、状態等の多様性を考慮して対象機器の有効性を示すために相当数の症例が必要となる。また、標準療法(比較対照)群に組み入れられる患者への倫理的配慮等から、RCTの実施が困難となる場合も想定される。難治性創傷を巡る我が国の状況に鑑み、当該疾病に対する有効な治療法をより早く臨床現場へ届けるためには、単腕試験を用いた評価方法について検討することにも意義がある。

このような背景を踏まえ、本ワーキンググループにおいては、難治性創傷治療機器の国内外の利用動向及び臨床試験デザインの現状等を調査すると共に、単腕試験を実施する場合の試験デザインや評価方法等を中心として実臨床に則した評価指標を作成した。

2.本評価指標の対象

本評価指標は、十分な血流が確保され、標準治療が奏効しない難治性創傷に対して、創傷治癒促進効果を付与することを目的とした医療機器を対象とする。但し、対象機器の臨床的位置付けや性能によっては、比較対照群を設定した方がより効率的且つ容易に評価できることも想定される。開発品が本評価指標に該当するか判断が難しい場合には、必要に応じて独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に相談すること。

3.本評価指標の位置づけ

本評価指標は、技術開発が著しい医療機器を対象とするものであることを勘案し、現時点で重要と考えられる事項を示したものである。今後の技術革新や知見の集積等を踏まえて改訂されるものであり、承認申請内容に対して拘束力を持つものではない。本評価指標が対象とする製品の評価にあたっては、個別の製品の特性を十分理解した上で、科学的な合理性を背景にして、柔軟に対応する必要がある。本評価指標の他、国内外のその他の関連ガイドラインを参考にすることも考慮するべきである。

4.難治性創傷を対象とした臨床試験デザインにおいて留意すべき事項

(1) 難治性創傷の定義

本評価指標においては、日本皮膚科学会ガイドライン1)、並びに各種臨床試験結果2)―7)に基づき、「適切な標準療法を実施し4週間経過しても、創傷面積の縮小率が50%未満であり、かつ標準療法を継続しても比較的簡単な手技(縫合・植皮・小皮弁等)による閉鎖が期待できない創傷」を難治性創傷と定義する。(標準療法の考え方については別添参照)

注) 今後の知見の蓄積により、体積の縮小率や創縁の移動距離等の指標に基づいた定義も考慮する。

(2) 探索的試験の重要性

本評価指標に示した単腕試験を実施する場合、主要評価項目における達成基準の臨床的意義を示す必要がある。新規性の高い医療機器においては、適切な臨床的位置付けを確認するための根拠が不足していることが多いため、対象機器の有効性に関与する因子を特定すると共に、有効性(創傷治癒促進能力)を見積もるために探索的治験を実施することを推奨する。

(3) 対象患者の組み入れ

難治性創傷が生じる原因は主として、糖尿病性潰瘍、静脈うっ滞性潰瘍及び褥瘡に大別される。これらの疾患の創傷治癒過程は同等であるが、疾患毎に臨床試験を実施することが適切であるとされている8)。一方、疾患毎に臨床試験を行い、適応を確認するには膨大な時間と労力が必要であり、難治性創傷患者の有効な治療法へのアクセススピードを確保することも重要であることから、ある疾患を検証対象とした臨床試験の結果をもって、他疾患に対する有効性及び安全性を説明し得る場合もある。その際は、目的の疾患に対する臨床データ等をもって、対象機器の有効性が創傷治癒の作用機序に鑑みて合理的に説明できる必要がある。なお、このような組み入れに関する妥当性については、必要に応じてPMDAに相談すること。

1) 組み入れにおける確認事項

上述したいずれの創傷においても、以下の方法等により、創傷部への血流が確保されていることを経時的に確認する必要がある。なお、滲出液の有無も併せて確認すること。

・Ankle‐Brachal Index(ABI)

・Skin Perfusion Pressure(SPP)

・Transcutaneous oxygen tension(TcPO2)

また、創傷部位に感染が生じると創傷治癒の遅延又は創傷の悪化を引き起こすため、臨床試験を実施する際には、Infection Diseases Society of America(IDSA)のガイドライン等により創傷部における局所感染の有無を判断し、患者組み入れや臨床試験の継続可否等について判断することが望ましい。

2) 組み入れ方法

患者の組み入れは、診療録から遡る方法と4週間のスクリーニング期間を設ける方法が考えられる。

① 診療録から遡る方法

・創傷の大きさ(創傷の面積及び体積、創縁の移動距離)を写真等の根拠資料に基づき経時的に確認できること。

・通常診療において創傷の大きさ等を測定していない場合には、同意取得後、試験に適したスクリーニング期間を設ける等の対策を講じること。

② 4週間のスクリーニング期間を設ける方法

標準療法の治療効果について、前項と同様に創傷の大きさの変化を評価すること。

いずれの組み入れ方法においても、以下の事項について留意すること。

・難治性創傷としての組み入れ可否については、創傷治療に精通した医師により最終決定を行うが、評価の客観性を担保するため創傷評価第三者委員会により判定することが望ましい。

・創傷の性質に影響するデブリードマン(酵素製剤や組織切除等)は、処置後に創傷の大きさの測定を開始し、それ以降の処理は大きさを変化させない程度に控えること。

なお、外来診療患者等においては、組み入れ後の入院管理による影響で、対象機器の性能が適切に評価できない可能性も想定されるため、患者状態、対象機器の特性や使用方法を考慮した上で、評価条件の統一や、スクリーニング期間を設ける等、適切な診療方法を選択すること。また、組み入れ前やスクリーニング期間においては、設定予定の主要評価項目に即した項目も経時的に確認すること。

(4) 臨床試験(治験)デザイン

1) 基本的事項

臨床試験を実施する際には、以下の事項を考慮し、対象機器に必要な臨床評価が何かを明確にした上で、適切な評価項目、達成基準及び有効率(達成基準を達成した患者の割合)、並びに評価期間等を設定すること。

・対象疾患

・非臨床試験、探索的治験及び臨床文献等にて確認された対象機器の効能、効果又は性能

・当該治療法の臨床的位置づけ

なお、各評価項目を用いた臨床試験デザインの妥当性に関しては、対象機器の臨床的位置付けも踏まえた上でPMDAに相談することを推奨する。

2) 主要評価項目

難治性創傷治療機器は保存療法によって完全治癒を目的とする機器と創部環境好転を目的とする機器に大別されるため、各臨床的位置付けを踏まえて評価項目を選択することが望ましい。

① 保存療法によって完全治癒を目的とする機器

比較的小さい創傷に対して用いられ、二次治癒を目指す機器が該当する。同機器の評価においては次の項目から選択することが望ましい。

(ア) 完全上皮化

創傷部位完全上皮化患者数(発生率)を評価する。

(イ) 創傷面積及び体積の縮小率

創傷部位における経時的な創傷面積及び体積の一方又は両方の縮小率を評価する。なお、当該評価項目を用いる際には、副次評価項目(完全上皮化の有無、創傷関連の重篤な有害事象等)を設定し、当該評価項目の妥当性について示す必要がある。

(ウ) 創縁の移動距離

創傷部位における経時的な創縁の移動距離を評価する。当該評価項目は、その他の項目と比べ、より正確な指標であるとの報告9)―11)があると共に、組み入れ時の創傷面積等の影響が少ないことから、創傷治療の評価に適した項目と考えられる。なお、当該評価項目においても前項と同様な副次評価項目を設定し、当該評価項目の妥当性について示す必要がある。

② 創部環境好転を目的とする機器

良好な肉芽形成を目指す機器が該当する。肉芽が形成された後に、二次治癒させるための既存治療を行う場合と簡単な手技による閉鎖を行う場合がある。同機器の評価においては次の項目を用いることが望ましい。

(ア) 二次治癒又は簡単な手技により閉鎖可能な創傷となるまでの期間

創傷部位において、縫合・植皮・小皮弁等の比較的簡単な手術手技による閉鎖が可能な状態になったと判断されるまでの時間(日数)を評価する。

なお、当該創傷状態の判断の際は、以下に例示した項目等を設定し、数値化可能な項目においては数値化することが望ましい。褥瘡に関してはDESIGN―R12)―16)による判断も有用である。

・肉芽組織の面積

・壊死組織の面積

・腱、骨の露出

・感染の有無

・創傷の形態

また、同判断の客観性を担保するため、第三者委員会を設置することが望ましい。

3) 副次評価項目

創傷治癒の評価法は未だ確立していないことから、上述した主要評価項目において選択しなかった項目を副次評価項目に設定することについて検討すること。また、より正確に有効性を評価するために、以下に例示した適切な項目を設定し、多面的なデータ収集を行うことを推奨する。

・良性肉芽の比率

・評価ツールを用いた全身的な満足度の評価や、日常生活動作に関するアンケート等による患者の転帰報告(Patient reported outcome)

4) 適切な評価期間と経過観察期間

完全上皮化を主要評価項目とした場合、少なくとも12週間まで評価することが望ましい1)。その他の主要評価項目においては、創傷治癒に関するシステマティックレビューに基づき、対象機器の創傷治癒性能を考慮した上で、介入後8~12週間を目安に適切な期間を設定し、評価することが望ましい17)

評価期間後の観察期間については、当該機器が与える影響(有害事象等)を考慮し、適切な期間を検討すると共に、有効性維持期間についても確認すること。

5) 創傷の評価について

創傷の評価は、大きさ又は深さを指標として行う。肉眼的観察や写真により判定することから、以下の事項に留意すること。

① 大きさの評価

・写真判定を行う場合、撮影バイアス等が生じることが想定されるため、同一条件で撮影すること。

・創傷部位の全体像及び拡大した写真をそろえること。

・スケールやIDを付けて創傷の長さや症例を判別できること。

・ビジトラック等を使用したトレースによる面積評価も考慮すること。

② 深さの評価

・真皮に至る、皮下に至る、筋肉・腱に至る、骨・関節露出及び不明に分類すること。

なお、対象機器毎に使用する機材や評価方法が異なることも想定されるため、各臨床試験において適切なStandard Operating Procedure(SOP)を作成することが重要である。

6) 安全性

安全性については、臨床試験期間中に発現した有害事象及び対象機器の不具合に関する情報を収集し、評価すること。なお、探索的治験や臨床文献等から発現が予測される有害事象については、あらかじめ臨床試験実施計画書に記載し、必要に応じて安全対策措置を講じること。

7) 症例数

検証的治験における症例数は、探索的治験等の情報から統計学的根拠に基づいて設定することが望ましいが、難治性創傷治療の特性を踏まえて、他の治療法では改善が期待できないと共に、比較対照群をおくことが困難な状況も考慮して設定すること。

引用文献

1) 日本皮膚科学会ガイドライン.創傷・熱傷ガイドライン委員会報告―3:糖尿病性潰瘍・壊疽ガイドライン2017.

2) Sheehan P, Jones P, Giurini JM, Caselli A, Veves A. Percent change in wound area of diabetic foot ulcers over a 4‐week period is a robust predictor of complete healingin a 12‐week prospective trial. Plast Reconstr Surg, 117:S239‐244, 2006.

3) Sheehan P, Jones P, Caselli A, Giurini JM, Veves A. Percent change in wound area of diabetic foot ulcers over a 4‐week period is a robust predictor of complete healing in a 12‐week prospective trial. Diabetes Care, 26:1879‐1882, 2003.

4) Snyder RJ, Cardinal M, Dauphinee DM, Stavosky J. A post‐hoc analysis of reduction in diabetic foot ulcer size at 4 Weeks as a predictor of healing by 12 weeks. Ostomy Wound Manage., 56(3):44‐50, 2010.

5) Coerper S, Beckert S, K画像1 (7KB)別ウィンドウが開きます

per MA, Jekov M, K画像2 (7KB)別ウィンドウが開きます
nigsrainer A. Fifty percent area reduction after 4 weeks of treatment is a reliable indicator for healing‐analysis of a single‐center cohort of 704 diabetic patients. J. Diabetes Complications, 23(1):49‐53, 2009.

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7) Hingorani A, Glenn M. The management of diabetic foot:A clinical practice guideline by the Society for Vascular Surgery in collaboration with the American Podiatric Medical Association and the Society for Vascular Medicine. J. Vasc. Surg., 63(2 Suppl):3S‐21S, 2016.

8) Food and Drug Administration. Guidance for industry:Chronic cutaneous ulcer and burn wounds‐deeveloping products for treatment. June 2006.

9) Donohue K, Falanga V, FACP. Healing rate as a prognostic indicator of comlete healing:A reappraisal. Wounds:A Compendium of Clinical Research and Practice, 15(3):71‐76, 2003.

10) Gliman T. Wound outcomes:the utility of surface measures. Int. J. Low Extrem Wounds, 3:125‐132, 2004.

11) Vidal A, Mendieta Zeron H, Giacaman I, et al. A simple mathematical model for wound closure evaluation. J. Am. Coll. Clin. Wound Spec., 7(1‐3):40‐49, 2016.

12) Zhong X, Nagase T, Huang L, Kaitani T, Iizaka S, Yamamoto Y, Kanazawa T, Sanada H. Reliability and validity of the Chinese version of DESIGN‐R, an assessment instrument for pressure ulcers. Ostomy Wound Manage. 259(2):36‐43, 2013.

13) Iizaka S, Sanada H, Matsui Y, Furue M, Tachibana T, Nakayama T, Sugama J, Furuta K, Tachi M, Tokunaga K, Miyachi Y. redictive validity of weekly monitoring of wound status using DESIGN‐R score change for pressure ulcer healing:a multicenter prospective cohort study. Scientific Education Committee of the Japanese Society of Pressure Ulcers. Wound Repair Regen. 20(4):473‐81, 2012

14) Sanada H, Iizaka S, Matsui Y, Furue M, Tachibana T, Nakayama T, Sugama J, Furuta K, Tachi M, Tokunaga K, Miyachi Y. Clinical wound assessment using DESIGN‐R total score can predict pressure ulcer healing:pooled analysis from two multicenter cohort studies. Scientific Education Committee of the Japanese Society of Pressure Ulcers. Wound Repair Regen. 19(5):559‐67, 2011

15) Matsui Y, Furue M, Sanada H, Tachibana T, Nakayama T, Sugama J, Furuta K, Tachi M, Tokunaga K, Miyachi Y. Development of the DESIGN‐R with an observational study:an absolute evaluation tool for monitoring pressure ulcer wound healing. Wound Repair Regen. 19(3):309‐15, 2011

16) Sanada H, Moriguchi T, Miyachi Y, Ohura T, Nakajo T, Tokunaga K, Fukui M, Sugama J, Kitagawa A. Reliability and validity of DESIGN, a tool that classifies pressure ulcer severity and monitors healing. J Wound Care. 13(1):13‐8, 2004

17) Greer N, Foman N, Wilt T, Dorrian J, Fitzgerald P, MacDonald R, Rutks I. Advanced wound care therapies for non‐Healing diabetic, venous, and arterial ulcers:a systematic review. Ann Intern Med. 159(8):532‐42, 2013

別添

適切な標準療法の考え方

難治性創傷を対象とした単腕の臨床試験を実施するにあたり、標準療法の確認は重要な項目の一つである。FDAガイダンス(2006年)1)では、難治性の糖尿病性潰瘍、静脈うっ滞性潰瘍及び褥瘡における根本的な治療法が列挙されている。本評価指標において、標準療法とは、根本的治療に加え、本邦の治療ガイドラインの中で使用可能な創傷治療を目的とする薬剤、再生医療等製品や医療機器を指すものとする。しかし、創傷治療法、治療方針は、その時代の科学水準や治療水準に合わせて変化するため、ある時点における統一された治療法を標準治療と一義的に決定することは困難であり、医療機器の臨床的位置付けが異なれば、標準療法が異なることも想定される。そのため、対象機器の製造販売業者は、医学専門家の意見も踏まえ、臨床試験実施計画書に標準療法を規定しておく必要がある。参考として、各国のガイダンス1)―5)に基づき、難治性創傷に対する根本的な治療法を以下に記載する。なお、本邦においても当該根本的治療法は同一であるため、国外との差違は無い。

1.根本的な創傷管理

・異物、壊死組織や感染組織の除去

・適切な湿潤環境の維持

・創傷治癒に十分な血流の維持

・感染制御

・栄養療法

・創傷の浄化

2.代表的な難治性創傷

1) 褥瘡

・体圧分散用具

・体位変換

・仙骨・尾骨部及び坐骨部褥瘡における便・尿汚染対策

2) 糖尿病性足潰瘍

・血糖コントロール

・装具による免荷

3) 静脈うっ滞性潰瘍

・圧迫療法(弾性ストッキングや弾性包帯等)

引用文献

1) Food and Drug Administration. Guidance for industry:Chronic cutaneous ulcer and burn wounds‐deeveloping products for treatment. June 2006.

2) NPUAP/EPUAP/PPPIA. Prevention and treatment of pressure ulcers:Quick reference guide.

3) WuWHS. Local management of dianetic foot ulcers.

4) The Wound Healing Society. Chronic wound care guidelines.

5) EWMA. CURRICULUM/SYLLABUS:Fundamentals in wound healing for physicians.