アクセシビリティ閲覧支援ツール

○新型コロナウイルス感染症の影響による休業に伴い報酬が急減した者等についての健康保険の標準報酬月額の保険者算定の特例の延長等について

(令和2年9月29日)

(保保発0929第1号)

(健康保険組合理事長あて厚生労働省保険局保険課長通知)

(公印省略)

今般の新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言に伴う自粛要請等を契機として、休業に伴い報酬が急減する被保険者が相当数生じている等の状況を踏まえ、令和2年4月から同年7月までの間に新型コロナウイルス感染症の影響による休業により報酬が急減した者については、通常の随時改定(健康保険法(大正11年法律第70号)第43条第1項の規定による改定をいい、「健康保険法及び厚生年金保険法における標準報酬月額の定時決定及び随時改定の取扱いについて」(昭和36年1月26日付け保発第4号厚生省保険局長通知)、「一時帰休等の措置がとられた場合における健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格及び標準報酬の取扱いについて」(昭和50年3月29日付け保険発第25号・庁保険発第8号厚生省保険局保険課長並びに社会保険庁医療保険部健康保険課長及び年金保険部厚生年金保険課長通知)等により従前示してきた取扱いを含む。以下同じ。)によって算定する額によらず、定時決定(健康保険法第41条第1項の規定による決定をいう。以下同じ。)までの間について、より速やかに、現状に適合した形で標準報酬月額を改定できるようにするため、「新型コロナウイルス感染症の影響による休業に伴い報酬が急減した者についての健康保険の標準報酬月額の保険者算定の特例について」(令和2年6月24日付け保保発0624第1号厚生労働省保険局保険課長通知。以下「前回通知」という。)により、保険者算定について、臨時特例的な取扱いをお示ししたところである。

現在においては、緊急事態宣言は解除されたものの、現下の情勢等を踏まえて、令和2年8月から令和3年7月までの間に新型コロナウイルス感染症の影響による休業に伴い報酬が急減した者等についても同様の特例措置を講ずることとし、具体的な内容等を下記のとおり整理したため、内容について了知いただくとともに、適切に対応されたい。

なお、前回通知に基づく特例措置とは相違する取扱いがあることに留意されたい。

また、本特例措置については、日本年金機構において、厚生年金保険及び協会管掌健康保険に係る取扱いとして講じられることとしている。こうした取扱いも踏まえ、健康保険及び厚生年金保険の社会保険制度としての適用上の一体性を確保するとともに、給与実務等の複雑化を防止する観点から、各健康保険組合についても、適切に対応いただくようお願いする。

さらに、本特例措置は、今般の新型コロナウイルス感染症による特別の状況等を踏まえ、通常の随時改定及び定時決定とは別途の手続として、臨時特例的な取扱いを整理したものであることから、本特例措置の内容は、通常の随時改定及び定時決定には適用されるものでないことに留意されたい。

1 対象者等

(1) 令和2年8月から令和3年7月までの間に急減月が生じた者についての特例

適用事業所の事業主から、以下の①から③のいずれにも該当する被保険者について、2に定める手続により、届出があった場合には、急減月(※1)に受けた報酬の総額を報酬月額として算定し、当該急減月の翌月から、標準報酬月額を改定できる取扱いとする。(※2、3、4、5)

ただし、当該休業が回復した月(※6)における報酬の総額を基にした標準報酬月額が、その者の標準報酬月額(本特例措置による改定後のものをいう。)に比べて2等級以上上昇した場合には、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、別紙1―3の様式により、速やかに、その内容を届け出た上で、前回通知に基づく特例措置による改定と異なり、その翌月から当該休業が回復した月における報酬の総額を基にした標準報酬月額に改定するものとする。(※7)

(※1) 急減月は、令和2年8月から令和3年7月までの間の1か月であって、休業により報酬が著しく低下した月として事業主が届け出た月とする。

(※2) 今般の新型コロナウイルス感染症を契機とする休業により、例えば、休業中に賃金が支払われない、報酬支払の基礎となる日数が著しく減少するなど、通常時の賃金体系と著しく異なる不安定な事態が広範かつ相当の期間生じ、又は生じうる等の特別の状況に鑑み、休業による報酬急減が生じた場合には、健康保険法第43条第1項に規定する「継続した三月間に受けた報酬の総額を三で除して得た額」が、健康保険法第44条第1項に規定する「著しく不当」なものに該当するものとして解釈上取り扱った上で、健康保険法第43条第1項の規定による改定を特例的に行うもの。

(※3) 報酬支払の基礎となった日数(17日以上(健康保険法第41条第1項の規定により11日とされる者にあっては11日以上。以下同じ。))については、事業主からの休業命令や自宅待機指示などがあり、その間、使用関係が継続していれば、当該休業した日を、当該休業した日について支払われた報酬の有無にかかわらず、当該報酬支払の基礎となった日として取り扱う。(その上で、報酬支払の基礎となった日数が17日未満となる場合は、健康保険法第43条第1項との関係上、本特例措置による届出の対象とはならないこととなる。)

(※4) 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金は、事業主が被保険者に支払う報酬でないから、ここにいう報酬の総額には含まれない。

(※5) 本特例措置においては、固定的賃金の変動を伴わない場合を含む取扱いとする。

(※6) 休業が回復した月とは、報酬支払の基礎となった日が17日以上ある状態とする。(この場合の日数の算定においては、※3により、報酬が発生していないが報酬支払の基礎となった日として取り扱われる日は含まないものとする。)

(※7) 休業が回復した際の届出は、次回定時決定前の令和3年8月(令和3年6月又は7月を急減月として本特例措置による改定を行った場合は令和4年8月)までの間において、最初に当該届出を要することとなった際に、一度限り届出ることとする。

<対象者>

① 事業主が新型コロナウイルス感染症の影響により休業(※1)させたことにより、急減月が生じた者であること。

② 当該急減月に支払われた報酬の総額に該当する標準報酬月額が、当該急減月に設定されている標準報酬月額(※2、3)に比べて、2等級以上低下した者であること。

③ 本特例措置による改定を行うことについて、本人が書面で同意している者であること。

(※1) 休業とは、労働者が事業所において、労働契約、就業規則、労働協約等で定められた所定労働日に労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、当該所定労働日の全1日にわたり労働することができない状態又は当該所定労働日の労働時間内において1時間以上労働することができない状態をいう。

(※2) 2等級以上低下した者には、次の場合を含む。

・ 健康保険第50級の標準報酬月額にある者の報酬月額(報酬月額が141万5,000円以上である場合に限る。)が降給したことにより、その算定月額が健康保険第49級以下の標準報酬月額に該当することとなった場合。

・ 第2級の標準報酬月額にある者の報酬月額が降給したことにより、その算定月額が5万3,000円未満となった場合。

(※3) 急減月に、報酬が全く支払われていない者については、第1級の標準報酬月額として取り扱うこととなる。

(※4) なお、被保険者期間が急減月を含めて3か月未満の者については、健康保険法第43条第1項の規定上、本特例措置による届出の対象とはならないこととなる。

(※5) また、急減月の翌月に被保険者資格を喪失する者については、当該急減月の翌月の保険料が賦課されないため、本特例措置による届出の対象にはならない。(なお、急減月の翌月末に退職する者については、当該急減月の翌々月1日に被保険者資格を喪失する。)

(2) 令和2年4月又は5月を急減月として本特例措置による改定を既に受けた者についての特例

適用事業所の事業主から、以下の①から③のいずれにも該当する被保険者について、2に定める手続により、届出があった場合には、令和2年8月の報酬の総額を基礎として算定した標準報酬月額を、定時決定に係る保険者算定による算定額とする取扱いとする。(※1、2)

ただし、休業が回復した月(※3)における報酬の総額を基にした標準報酬月額が、その者の標準報酬月額(本特例措置による改定後のものをいう。)に比べて2等級以上上昇した場合には、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、別紙1―3の様式により、速やかに、その内容を届け出た上で、その翌月から当該休業が回復した月における報酬の総額を基にした標準報酬月額に改定するものとする。

(※1) 前回通知に基づき令和2年4月又は5月を急減月として既に本特例措置による改定を受けている者について、定時決定後の標準報酬月額(令和2年9月)が、同年8月における報酬の総額に比べて、2等級以上高い場合においては、定時決定を一度行ったとしても、同年9月を急減月としてすぐに本特例措置による改定が行われる蓋然性が高く、そのような場合について定時決定を実施し、一時的に標準報酬月額を上げることは、健康保険法第44条第1項に規定する「著しく不当」なものに該当するものとして解釈上取り扱った上で、健康保険法第41条第1項の規定による決定を特例的に行うもの。

(※2) 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金は、事業主が被保険者に支払う報酬でないから、ここにいう報酬の総額には含まれない。

(※3) 休業が回復した月の考え方は、(1)と同様。

<対象者>

① 令和2年4月又は5月を急減月として本特例措置による改定を受けた者であること。

② 令和2年8月に支払われた報酬の総額に該当する標準報酬月額が、通常の定時決定により決定された標準報酬月額に比べて、2等級以上低い者であること。(※1、2)

③ 本特例措置による改定を行うことについて、本人が書面で同意している者であること。

(※1) 2等級以上低い者には、次の場合を含む。

・ 令和2年8月に支払われた報酬の総額に該当する標準報酬月額が、健康保険第49級となる者が、同年9月の定時決定において健康保険第50級(報酬月額が141万5,000円以上である場合に限る。)に決定された場合

・ 令和2年8月に支払われた報酬の総額が、5万3,000円未満となった者が、同年9月の定時決定において第2級の標準報酬月額に決定された場合。

(※2) 令和2年8月に、報酬が全く支払われていない者については、第1級の標準報酬月額として取り扱うこととなる。

2 手続等の方法

(1) 提出書類

適用事業所の事業主が①の届書に、②の申立書を添えて、急減月が生じた後、速やかに、提出すること。

① 被保険者報酬月額変更届(特例改定用)(別紙1―1・1―2)

イ 1(1)に該当する場合

被保険者報酬月額変更届(特例改定用・令和2年8月~令和3年3月を急減月とする場合)(別紙1―1)中、継続した3か月の各月の報酬月額等を記載する欄のうち一番下の月の欄のみに、急減月の報酬月額等を記載する取扱いとして差し支えないこと。

また、その際、⑱備考欄に「特例改定」と記載するものとすること。(別紙1―1を使用する場合は、「6.その他」に○を付した上で、「特例改定」と記載すること。)

なお、算定事務の適正化のため、保険者判断により3か月分の支払基礎日数の記載を求めることを妨げるものではない。保険者判断により、現行の「被保険者報酬月額変更届」の様式を用いることも差し支えないが、この場合には事業主に対して、3か月とも支払基礎日数を満たした方のみが特例対象者であることを示す、又は3か月分の支払基礎日数の記載を求めることにより、算定事務の適正化を図ること。

ロ 1(2)に該当する場合

被保険者報酬月額変更届(定時決定の保険者算定の特例に当たっての参考資料)(別紙1―2)中、継続した3か月の各月の報酬月額等を記載する欄のうち一番下の月の欄のみに令和2年8月の報酬月額等を記載し、これを定時決定に係る保険者算定に用いるため、本年の定時決定の際に提出された被保険者報酬月額算定基礎届の参考資料として扱って差し支えないこと。

また、その際、⑱備考欄に「定時決定」と記載するものとすること。(様式1―2を使用する場合は、「6.その他」に○を付した上で、「定時決定」と記載すること。)

なお、イと同様に、算定事務の適正化のため、保険者判断により3か月分の支払基礎日数の記載を求めることを妨げるものではない。

また、今般の決定(処分変更)は被保険者の同意を得たうえで事業主が届出したものに基づくものであることから、既に通知した決定通知書を回収することは必須ではなく、被保険者報酬月額算定基礎届の再提出を求めるものではない。

② 申立書(別紙2)

申立書は、以下の点を申し立てるものとすること。

イ 新型コロナウイルス感染症の影響による休業があった旨(1(2)の決定の対象者になる者は除く。)

ロ 本特例措置による届出を行っている被保険者が、1(1)又は(2)の対象者の要件に該当していることを確認した旨

ハ 本特例措置による届出を行っている被保険者について、被保険者本人の同意を書面で得ている旨

ニ 本特例措置の届出の内容が事実であることを確認できる書類((2)の書類)及び本特例措置による届出を行っている被保険者の同意書を、届出から2年間、確実に保存する旨

ホ 本特例措置による届出を行っている被保険者について、過去に令和2年8月から令和3年7月までを急減月とする本特例措置による届出を行っていないことを確認している旨

ヘ 当該被保険者について、休業が回復した月における報酬の総額を基にした標準報酬月額が、その者の標準報酬月額に比べて2等級以上上昇した場合には、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、速やかに、その内容を届け出ることを約する旨(その旨の本人同意があることを含む。)

ト 厚生年金保険についても同様の特例改定の手続を行う旨

(2) 関連書類の保存

(1)のほか、添付書類等の提出は原則として不要とするが、本特例措置の届出及び申立書の内容が事実であることを確認できる書類については、各保険者から資料提出を求めることにより後日確認する場合があるので、事業所では届出日から2年間は保存を要するものとする。

なお、保険者の判断により添付書類を求めることを妨げるものではない。

(例:休業命令等が確認できる書類、出勤簿、賃金台帳、本人の本特例改定の申請内容への同意書など)

(3) 受付期間等

長期の遡及による保険料の賦課や給付の調整、給与事務の複雑化を防止する等の観点から、令和3年2月末までを受付期間とする。なお、令和3年1月から同年3月までを急減月とする届出については、同年5月末までを、同年4月から同年7月までを急減月とする届出については、同年9月末までを受付期間とする。

3 その他の運用上の留意点等

(1) 本人の同意

本特例措置による改定を行う場合は、被保険者の保険料額への影響のみならず、年金給付、傷病手当金及び出産手当金への影響も生じることを、被保険者本人が十分に理解した上で同意することが必要である。このため、被保険者に不利益が生じないよう、その内容につきあらかじめ本人の自署による同意を要するとともに、その同意書を適切に保存することが必要であることに特に留意すること。

なお、本人の同意書についての参考様式は、別紙3のとおりであること。

(2) 再度の特例措置の届出の取扱い

本特例措置による届出は、保険料の賦課や給付、給与事務の複雑化、不安定化等を防ぐため、同一の被保険者について、令和2年8月から令和3年7月までを急減月とする本特例措置による改定を複数回行うことや、令和2年8月の報酬の総額に基づく定時決定に係る保険者算定の特例と令和2年8月から令和3年7月までを急減月とする本特例措置による改定を行うこと、届出後に急減月の選択等を変更すること等はできないので留意すること。

ただし、令和2年4月から同年7月までを急減月とする本特例措置による改定とは、それぞれ一度に限り行うことが可能であること。

(3) 前回通知との関係

同一の被保険者について、令和2年6月又は7月を急減月とする本特例措置による改定と令和2年8月から令和3年7月までを急減月とする本特例措置による改定をそれぞれ行った場合において、前回通知に基づき令和2年6月又は7月を急減月として特例措置による改定をした者に係る休業回復に伴う特例改定(前回通知2の柱書の※5の届出)に該当する前に、令和2年8月から令和3年7月までを急減月とする本特例措置による改定を行ったときは、前回通知2の柱書の※5の届出を行うことは要さず、本通知1(1)ただし書の届出のみを行うこととなる。

このほか、令和2年4月から同年7月までを急減月とする本特例措置による改定の取扱いについては、引き続き、前回通知によるものであること。

(4) 厚生年金保険との関係

健康保険と厚生年金保険の社会保険制度としての適用上の一体性を確保し、給与事務等の複雑化を防止する等の観点から、事業主からの申立書において、厚生年金保険についても同様の特例改定の手続を行う旨のチェック欄を設けているため、この点を確認し、チェックがない場合には、事業主に対し申立書を返戻した上で、日本年金機構に対しても一体的に手続を行うよう求めること。

[別紙1―1]

画像2 (130KB)別ウィンドウが開きます

[別紙1―2]

画像4 (108KB)別ウィンドウが開きます

[別紙1―3]

画像6 (123KB)別ウィンドウが開きます

[別紙2]

[別紙3]