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○「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律第12条に規定する採血等の制限の考え方について」の一部改正について

(令和2年8月26日)

(薬生血発0826第3号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局血液対策課長通知)

(公印省略)

安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(昭和31年法律第160号。以下「血液法」という。)第12条に規定する採血等の制限については、「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律第12条に規定する採血等の制限の考え方について」(平成27年9月1日付け薬食血発0901第2号厚生労働省医薬食品局血液対策課長通知。以下「採血制限通知」という。)において、その基本的な考え方を示してきたところです。

第200回国会で成立した医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第63号。以下「改正法」という。)により、血液法の一部が改正され、業として、医療の質又は保健衛生の向上に資する物の原料とする目的で採血することが認められるとともに、業として、人体から採取された血液等を原料として、医療の質又は保健衛生の向上に資する物を製造することが認められました。

このことを踏まえ、採血制限通知の一部を下記のとおり改正し、別添のとおりとするので、貴職におかれては、御承知の上、貴管下市町村、関係団体、関係機関等に対して周知徹底を御願いします。

1 採血制限通知の一部改正

(1) 改正法により、業として、医療の質又は保健衛生の向上に資する物の原料とする目的で採血することが認められたことに伴い、医療の質又は保健衛生の向上に資する物の例示、医療の質又は保健衛生の向上に資する物等の原料たる血液を得る目的で、人体から採血しようとする者が実施を確保すべき措置等を定める(別添2.(1)関係)。

(2) 血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物等を原料として血液製剤等以外のものを製造する場合について、献血者等の善意によって得られた血液の適正な利用を図るため、使用目的、献血者への対応等の取扱いを定める(別添3.(2)①関係)。

2 適用期日

令和2年9月1日

(別添)

安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律第12条に規定する採血等の制限の考え方について

1.採血等の制限の基本的な考え方

血液法第12条に基づく採血等の制限は、血液は、人の生命を維持していくために不可欠なものであり、むやみに採取を許すべきではなく、真に必要な場合にのみ血液が利用されることを期する血液法の理念に則り、より高次の目的すなわち人命の救助に関するものとして医療上あるいは学術研究上最小限度の血液の採取及び利用をする場合を除き、採血等は行われるべきではない、との基本的な考え方に基づき行われているものである。

2.採血の制限の例外

上記1の基本的な考え方に基づき、医療上あるいは学術研究上、最小限度の血液を採取する場合と考えられるものについて整理すると以下のとおり。

(1) 血液製剤等の原料とする目的での採血

ア 血液法第12条第1項に基づき、次に掲げる物を製造する者が、業として、その原料とする目的で採血することが認められる。また、採血事業者又は病院若しくは診療所の開設者が、次に掲げる物の原料とする目的で採血することが認められる。

① 血液製剤

② 医薬品(血液製剤を除く。)、医療機器又は再生医療等製品

③ 医療の質又は保健衛生上の向上に資する物として以下に掲げる物

i 医薬品、医療機器又は再生医療等製品の研究開発に用いる物であって、次の(i)から(iii)までのいずれかに掲げるもの

(i) ヒト体細胞加工研究用具((ii)及び(iii)に掲げる物を除く。)

(ii) ヒト体性幹細胞加工研究用具((iii)に掲げる物を除く。)

(iii) ヒト人工多能性幹細胞加工研究用具

ii 疾病の原因に関する研究又は疾病の予防、診断及び治療に関する方法の研究開発に用いる物であって、上記iの(i)から(iii)までのいずれかに掲げるもの

iii 血液学的検査、生化学的検査その他人体から排出され、又は採取された検体の検査の精度を適正に保つために用いる物

iについては、例えば、疾患特異的iPS細胞から分化誘導した神経細胞を用いて、治療薬の候補物質の探索する場合や、安全性・有効性の評価を行う場合が該当する。また、代表例として、(i)は培養液で希釈したヒト血液、(ii)はヒト造血幹細胞、(iii)はヒトiPS細胞がある。

iiについては、例えば、疾患特異的iPS細胞から分化誘導した神経細胞を用いて、病態を再現する場合が該当する。

iiiについては、例えば、血液学的検査等の検査機器の研究開発や維持に当たって当該検査の精度管理の基準となる、いわゆる「標準品」が該当する。

イ 血液法第25条第3項に基づき、上記ア②及び③に掲げる物の原料たる血液を得る目的で、人体から採血しようとする者は、次の措置の実施を確保しなければならない。

① 献血者等(本人の同意を得ることが困難な場合には、親権者、配偶者、後見人その他これに準ずる者)に対し、採取した血液の使途その他採血に関し必要な事項について適切な説明を行い、その同意を得ること。

② 採血の目的に照らして必要最小限の採血量とすること。

③ 採血によって健康が害された献血者等を適切に処遇する体制を整備すること。

なお、病院若しくは診療所の開設者と連携して採血を行う場合には、上記①から③までに掲げる措置の実施を確保するために必要な採血に関する手順を定めた手順書を作成し、病院等開設者に交付すること。

ウ 血液法第31条に基づき、業として人体から採血することは、医療及び歯科医療以外の目的で行われる場合であっても、医師法(昭和23年法律第201号)第17条に規定する医業に該当することに留意しなければならない。

(2) 血液法第12条第1項ただし書に基づく採血

① 瀉血療法等の採血自体が治療行為である場合

② 輸血に使用する血液を得る目的で採血する場合

③ 血液型判定等の医学的検査のために採血する場合

④ 適切な倫理審査委員会で承認された研究計画に基づき、研究の一環として採血が実施される場合

3.製造の制限の例外

上記1の基本的な考え方に基づき、医療上あるいは学術研究上、最小限度の血液を利用する場合と考えられるものについて整理すると以下のとおり。

(1) 血液製剤等の製造

血液法第12条第2項本文に基づき、業として、人体から採取された血液又はこれから得られた物を原料として、上記2(1)アに掲げる血液製剤等を製造することが認められる。

(2) 血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物等を原料とする場合

血液法第12条第2項ただし書に基づき、血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物又は生物由来原料基準(平成15年厚生労働告示第210号)に適合しない若しくは適合しなくなった血液製剤を原料とする場合は、血液製剤等以外の物を製造することが認められる。

具体的には、検査用検体の残余血液、血液製剤の製造過程で得られた廃棄画分、検査等により不適合となった血液、販売されず有効期限の切れた血液製剤等を原料とする場合が想定されるが、これらの利用は、献血者等の善意を無駄にせず、有効利用につなげる意義がある。一方で、血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物等も、国内で行われる善意の献血によって得られた血液であり、その利用の適正を図る必要があることを踏まえ、以下の取扱いとする。

ア 使用目的

(ア) 血液製剤の有効性・安全性又は献血の安全性の向上を目的とした使用

血液製剤の安全性又は献血の安全性については、採血時の問診、各種感染症に対するスクリーニング検査等、様々な取組がされており、その向上への不断の努力が求められている。また、血液製剤の製造・使用に関する新たな安全技術の導入に際しては、血液製剤の有効性が低下する可能性も否定できないことから、その影響を十分に確認する必要がある。このような状況を踏まえ、血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物等は、血液製剤の有効性・安全性及び献血の安全性の向上のため、以下の目的で使用することが考えられる。

① 研究開発

具体例:人工赤血球の開発、血小板製剤の有効期限に関する研究、検査機器の開発

② 品質管理試験

具体例:血液製剤の製造に必要な検査機器の精度管理用コントロール血清

③ 検査試薬

具体例:血液型判定試薬、抗血小板抗体試薬、教育目的の検査実習での使用

④ 疫学調査・研究

具体例:血液を通じて感染するおそれがある病原体の疫学研究

⑤ その他

具体例:血液フィルターの性能評価、採血基準に関する評価

(イ) 国の公衆衛生の向上を目的とした使用

ヒトの血液の中には様々なタンパク質等の物質が含まれており、疾病の診断、病態の解明、疫学研究等、疾病の克服や健康状態の改善に重要な役割を果たしている。このような状況を踏まえ、血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物等は、国の公衆衛生の向上のために、以下の目的で使用することが考えられる。

① 研究開発

具体例:新たな診断薬の開発

② 品質管理試験

具体例:新生児スクリーニング検査の精度管理用コントロール血清

③ 検査試薬

具体例:体外診断薬の試薬

④ 医薬品等及びその原材料の製造

具体例:培地への血漿(しょう)の使用、安定化剤としてのアルブミンの使用

⑤ 疫学調査・研究

具体例:過去の感染症の流行状況調査

⑥ その他

イ 献血者への対応

採血事業者は、献血者等に対し、献血により得られた血液又はこれから得られた物が、上記アの研究開発等に使用される可能性があることについて、説明を行い同意を得る必要がある。ただし、研究開発等について、採血事業者から献血者に説明を行い同意を得ることが困難な場合は、血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物等を研究開発等に使用する者は、研究開発等の内容等の適切な情報の公開を行い、原則として、献血者が、血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物等の研究開発等への使用を拒否できる機会を保障する等、倫理審査委員会が定める措置を実施しなければならない。

ウ 採血事業者又は血液製剤の製造販売業者は、献血者等の善意によって得られた血液の適正な利用を図るため、以下の点に留意して、血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物等を使用し、又は提供するものとする。

① 使用目的が、血液製剤の有効性・安全性の向上、献血の安全性の向上、国の公衆衛生の向上を目的とすることが明らかであること

② 血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物等の使用について、再生医療等安全性確保法等関連法令、個人情報関連法令、関連倫理指針等を遵守し、適切に使用する体制を整備すること

③ 血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物等を提供する場合にあっては、その提供を受ける者において、再生医療等安全性確保法等関連法令、個人情報関連法令、関連倫理指針等を遵守し、適切に使用する体制が整備されていること

④ 提供することができる血液の量が限定される場合は、公的補助金を受けて実施される研究、行政上必要な検査等に使用する者に優先的に使用を認めること

エ 報告

採血事業者又は血液製剤の製造販売業者は、血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物等を使用し、又は提供した量、その使用目的等の使用状況について、年度毎に血液事業部会運営委員会に報告するものとする。

オ 費用の徴収

採血事業者又は血液製剤の製造販売業者は、血液製剤の製造に伴って副次的に得られた物等を第三者に提供する場合には、実費相当の費用を徴収して差し支えないものとする。

(3) 適切な倫理審査委員会で承認された研究計画に基づき、研究の一環として実施される場合

(例)

・ 研究用細胞を提供している研究機関(細胞バンクを含む。)が血液由来細胞の培養等を行う場合(市場に流通させて不特定多数へ研究用細胞を提供するのではなく、個々の研究計画に基づき特定された研究者に研究用細胞が提供され、使用範囲は研究計画の研究課題ごとに限定されていることから、研究の一環と考えられる。)

(4) その他

① 再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号)第4条に規定する再生医療等提供計画に基づき、血液を原料とした特定細胞加工物を製造する場合

② 外国で採血された血液を原料として、血液製剤等以外の物を業として製造する場合(多量の採血によって生じる国民の保健衛生上の危害を防止し、国内の献血者等の保護を図ることが採血等の制限の目的であることを踏まえ、採血等の制限の対象外とする。)