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○レムデシビル製剤の使用に当たっての留意事項について

(令和2年5月7日)

(/薬生薬審発0507第12号/薬生安発0507第1号/)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知)

(公印省略)

レムデシビル製剤(販売名:ベクルリー点滴静注液100mg、同点滴静注用100mg。以下「本剤」という。)については、本日、「SARS―CoV―2による感染症」を効能又は効果として特例承認したところです。

特例承認とは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「薬機法」という。)第14条の3第1項の規定に基づき、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延その他の健康被害の拡大を防止するために緊急に使用されることが必要な医薬品として特例的に承認する制度です。本剤は、新型コロナウイルス感染症に対する有効性を期待して承認されるものですが、臨床試験の成績が極めて限定的であるため、特に本剤を用いた治療についてのデータが集積されるまでの間は、本剤を用いる医療機関及び医師においては特別の配慮をお願いします。

本剤の使用に当たっては、具体的な留意事項として下記の点について留意されるよう、貴管下の医療機関に対する周知をお願いします。また、貴管下の卸売販売業者に対しても適切に対応するよう周知願います。

1.本剤の位置づけについて

本剤は、以下のとおり薬機法第14条の3第1項の規定に基づき承認された特例承認品目であること。このため、通常の同法第14条第1項に基づく承認とは手続きが異なり、その取扱いに当たっては、特段のご注意とご配慮をお願いしたいこと。

第14条の3 第14条の承認の申請者が製造販売をしようとする物が、次の各号のいずれにも該当する医薬品として政令で定めるものである場合には、厚生労働大臣は、同条第2項、第5項、第6項及び第8項の規定にかかわらず、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、その品目に係る同条の承認を与えることができる。

一 国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延その他の健康被害の拡大を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品であり、かつ、当該医薬品の使用以外に適当な方法がないこと。

二 その用途に関し、外国(医薬品の品質、有効性及び安全性を確保する上で我が国と同等の水準にあると認められる医薬品の製造販売の承認の制度又はこれに相当する制度を有している国として政令で定めるものに限る。)において、販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列することが認められている医薬品であること。

2.本剤の承認条件等について

1) 本剤は、承認に当たり、薬機法第14条の3第2項の規定に基づき、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令(昭和36年政令第11号。以下、「薬機法施行令」という。)第28条各号に掲げる以下の義務を課すこととしたこと。

(1) 第1号関係

本剤の有効性及び安全性に関する情報は極めて限られていることから、現在進行中の治験又は臨床試験の成績が得られ次第、当該成績をとりまとめて速やかに報告すること。

(2) 第2号関係

本剤の副作用その他の事由によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生を知ったときは、速やかに報告すること。

(3) 第3号関係

本剤が特例承認を受けたものであること及び当該承認の趣旨が、本剤を使用する医療関係者及び患者又は代諾者に説明され、理解されるために必要な措置を講じること。

(4) 第4号関係

本剤の販売又は授与の相手方及びこれらの相手方ごとの販売数量又は授与数量を、必要に応じて報告すること。

2) 本剤は、承認に当たり薬機法第79条第1項の規定に基づき、以下の条件を付したこと

(1) 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

(2) 本剤は、薬機法第14条の3第1項の規定に基づき承認された特例承認品目であり、現時点での使用経験が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、可能な限り本剤が投与された全症例について副作用情報等の本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。また、得られた情報を定期的に報告すること。

(3) 本剤の安全性に関する追加的に実施された評価に基づき、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。

(4) 本剤の有効性及び安全性に係る最新の情報を医療従事者が容易に入手可能となるよう必要な措置を講じること。

(5) 本剤の投与が適切と判断される症例のみを対象に、あらかじめ患者又は代諾者に有効性及び安全性に関する情報が文書をもって説明され、文書による同意を得てから初めて投与されるよう、医師に対して要請すること。

(6) 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36年厚生省令第1号)第41条に基づく資料の提出の猶予期間は、承認取得から起算して9ヶ月とする。なお、現在実施中の臨床試験の成績が得られた際には速やかに当該成績を提出することとし、その他の資料についても遅くとも承認取得後9ヶ月までには独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)に提出すること。また、提出された資料等により、承認事項を変更する必要が認められた場合には、薬機法第74条の2第3項に基づき承認事項の変更を命ずることがあること。

3) 本剤は、薬機法第14条の3第1項に基づく承認であるため、同法第75条の3の規定により、同法第14条の3第1項各号のいずれかに該当しなくなったと認めるとき、又は保健衛生上の危害の発生若しくは拡大を防止するため必要があると認めるときは、これらの承認を取り消すことがあること。

3.本剤の効能又は効果について

本剤の効能又は効果における「SARS―CoV―2による感染症」とは、「病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和2年1月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。」を指すこと。

4.本剤の適正使用について

(1) 承認時点では、最適化された用法・用量に関するデータが得られていないため、現在進行中の治験及び臨床試験の結果から、推奨される至適用法・用量が変更される可能性があること。

(2) 本剤の添付文書の特定の背景を有する患者に関する注意において、肝機能障害患者については、ALTが基準値上限の5倍以上の患者については投与しないことが望ましいと記されている。また、腎機能障害患者については、本剤の投与により腎機能障害が悪化するおそれがあり、特に重度な腎機能障害患者については、治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与するよう記されているため、それらを踏まえて本剤の投与を判断すること。その他の使用上の注意については添付文書を参照されたいこと。

(3) 本剤の重要な基本的注意には、急性腎障害、肝機能障害があらわれることがあるので、投与前及び投与中は、毎日、腎機能検査及び肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察することが記されており、有害事象の早期発見のために臨床症状や臨床検査値を適切にモニタリングすべきである。実施中の臨床試験において、安全性に関する臨床検査として、白血球、白血球分画、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数、クレアチニン、グルコース、総ビリルビン、AST、ALT、プロトロンビン時間の測定が規定されていることから、本剤を投与する場合には、これらを参考にされたいこと。また本剤の腎臓への影響を踏まえ、必要に応じて尿検査の実施も検討すること。

(4) 適応患者の選定においては、本剤の承認申請時に提出されたコンパッショネートユース時に用いられた適格基準と除外基準のうち特に以下の点を参考にされたいこと。

<適格基準>

・PCR検査においてSARS―CoV―2が陽性

・酸素飽和度が94%以下、酸素吸入又はNEWS2スコア4以上

・入院中

<除外基準>

・多臓器不全の症状を呈する患者

・継続的に昇圧剤が必要な患者

・ALTが基準値上限の5倍超

・クレアチニンクリアランス30mL/min未満又は透析患者

・妊婦

5.本剤の全例調査等への協力依頼について

本剤には承認条件として可能な限り全症例を対象とした調査が課せられているが、本剤については安全性及び有効性に関するデータを特に速やかに収集する必要があることから、本剤を投与する医療機関におかれては、迅速なデータ提供にご協力いただきたいこと。

また、副作用と疑われる症状が現れたときは、本剤に係る情報収集を充実させるため、必要があると判断された場合には、医薬品・医療機器等安全性情報報告制度に基づきPMDAへの報告にご協力いただきたいこと。