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○「妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」の一部改正について(通知)

(令和2年5月7日)

(/基発0507第5号/雇均発0507第14号/)

(各都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長、厚生労働省雇用環境・均等局長通知)

(公印省略)

今般、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大している状況等を踏まえ、妊娠中の女性労働者の母性健康管理を適切に図ることができるよう、「妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針の一部を改正する件」(令和2年厚生労働省告示第201号。以下「改正告示」という。)が本日告示された。

改正告示により、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和47年法律第113号。以下「法」という。)第13条第1項に基づく妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に、令和3年1月31日までの間、新型コロナウイルス感染症に関する措置が新たに規定され、本日から適用される。

改正の趣旨、内容等は下記のとおりであるので、その円滑な実施に遺漏なきを期されたい。

第1 改正の趣旨

現在、我が国において新型コロナウイルス感染症の感染が拡大している。新型コロナウイルスについては不明な点が多いが、現在、有効なワクチンが存在せず、妊婦については、使用できる医薬品についても制限がある。こうした中で、妊娠中の女性労働者は、職場における作業内容等によって、新型コロナウイルス感染症への感染に大きな不安を抱える場合があり、その心理的なストレスが母体又は胎児の健康保持に影響を与えるおそれがあるところである。

母と子という「2つの生命」を守るという観点、そして少子化対策としても、妊娠中の女性労働者が、安心して妊娠を継続し、子どもを産み育てられるような環境を整備することが重要である。このため、妊娠中の女性労働者の母性健康管理を適切に図ることができるよう、今般、妊娠中の女性労働者の母性健康管理上の措置として、新型コロナウイルス感染症に関する措置を規定したものであること。

第2 新型コロナウイルス感染症に関する措置について

改正告示により新たに規定された「妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成9年厚生労働省告示第105号。以下「指針」という。)の2(4)は、妊娠中の女性労働者が、保健指導又は健康診査を受けた結果、当該女性労働者の作業等における新型コロナウイルス感染症に感染するおそれに関する心理的なストレスが母体又は胎児の健康保持に影響があるとして、母子保健法の保健指導又は健康診査を行う医師又は助産師(以下「医師等」という。)からこれに関する指導を受け、それを事業主に申し出た場合には、事業主は、医師等の指導に基づき、当該女性労働者が指導事項を守ることができるようにするため、作業の制限、出勤の制限(在宅勤務又は休業をいう。)等の措置を講じなければならないことを明らかにしたものであること。

また、担当の医師等による当該指導に基づく措置の内容が不明確な場合にも、担当の医師等と連絡をとり判断を求める等により、必要な措置を講じなければならないことを明らかにしたものであること。

1 措置の具体的内容

「作業の制限、出勤の制限(在宅勤務又は休業をいう。)等」は、措置の具体的内容として例示したものであり、「等」には、例えば、新型コロナウイルス感染症に感染するおそれに関する心理的なストレスを軽減するための通勤緩和の措置(時差通勤、勤務時間の短縮、交通手段や通勤経路の変更)が含まれること。

措置の具体的内容については、事業主が企業内の産業医等産業保健スタッフや機会均等推進責任者(令和2年6月1日以降は、法第13条の2に規定する男女雇用機会均等推進者。以下同じ。)の助言に基づき女性労働者と話し合って定めることが望ましいこと。その場合、具体的な措置内容の判断に当たっては、個々の女性労働者の作業内容等を勘案して、事業主において決定することが望ましいこと。

標準的な内容としては、次の措置が考えられること。

また、一般的に、健康診査等を行う医師等は、妊娠中の女性労働者の職場における作業等の状況を詳細に知ることが難しいことから、新型コロナウイルス感染症に感染するおそれに関する妊娠中の女性労働者の心理的なストレスに関して、医師等が行う指導の標準的な内容としては、以下の①又は②の措置のいずれかを選択的に講じることを求めるものが考えられること。この場合、事業主は、①又は②のいずれかの措置を講じれば足りるものであること。

① 作業の制限

「作業の制限」は、新型コロナウイルス感染症に感染するおそれに関する心理的なストレスを軽減するために必要かつ充分なものを行うこと。例えば、顧客や利用者等と対面で接触する機会が多い作業から、こうした機会が少ない事務作業などに転換する等の措置が考えられること。

② 出勤の制限

「出勤の制限」は、在宅勤務又は休業の措置をいうものであること。

なお、「在宅勤務」は、テレワーク等により在宅での勤務をさせることをいうが、新たに在宅での勤務が可能な作業を創設して与えることまでを事業主に求めるものではないこと。

2 医師等の指示が不明確である場合における事業主がとるべき具体的措置

指針2(4)の「医師等と連絡をとりその判断を求める等」とは、事業主がとるべき対応の例示を示したものであるが、事業主は、女性労働者を介して担当の医師等に確認をとり、その判断を求めるほか、企業内の産業保健スタッフや機会均等推進責任者に相談する等により必要な措置を講ずること。

例えば、医師等の指導内容が1の①又は②のいずれか特定の措置を求める内容である場合等には、他の措置で代替することができるかについて、事業主は、女性労働者を介する等して担当の医師等に確認を行うことが考えられること。

3 休業中等の待遇

休業中等の賃金等の取扱いについては、契約ないし労使で話し合って定めておくことが望ましいこと。

第3 母性健康管理指導事項連絡カードの利用

事業主が母性健康管理上必要な措置を講ずるためには、医師等の指導を受けた旨の女性労働者の申出が必要であり、指導事項の内容の的確な伝達と講ずべき措置内容の明確化が重要であることから、指針3(1)において、事業主に「母性健康管理指導事項連絡カード」(以下「母健連絡カード」という。)の利用が促されており、その取扱いは2(4)の措置の場合も同様であること。なお、女性労働者は、「母健連絡カード」を使用しない場合においても、事業主に対して医師等の指導事項の内容、妊娠週数、出産予定日等を書面により申し出ることが望ましいこと。

指針2(4)の措置に係る「母健連絡カード」の使用方法は、次のとおりであること。

① 「母健連絡カード」は、「1 氏名等」、「2 指導事項」、「3 上記2の措置が必要な期間」及び「4 その他の指導事項」については、医師等が記入し、署名又は記名押印をして女性労働者に渡すこと。

2(4)の措置に係る指導事項は「2 指導事項」のうち「標準措置と異なる措置が必要である等の特記事項」欄に記入すること。また、通勤緩和の措置が必要な場合には、「4 その他の指導事項」の「妊娠中の通勤緩和の措置」に○を記入すること。

② 女性労働者は、カードの裏面下の「指導事項を守るための措置申請書」欄に、申請日、所属及び氏名を記入して事業主に措置を申し出るものとすること。

③ 事業主は、「母健連絡カード」を受け取った場合には、「標準措置と異なる措置が必要である等の特記事項」欄等に記入された指導事項に基づき必要な措置を講ずるものであること。女性労働者から申出を受けた事業主は、措置内容を決定した後、速やかに、当該女性労働者に対して、措置内容を明示する必要があること。その場合において、措置の明示は、書面によることが望ましいこと。

第4 適用期日

この通達は、令和2年5月7日から令和3年1月31日までの間、適用すること。