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○被扶養者の国内居住要件等について〔健康保険法〕

(令和元年11月13日)

(保保発1113第1号)

(全国健康保険協会理事長・健康保険組合理事長・地方厚生(支)局長・健康保険組合連合会長あて厚生労働省保険局保険課長通知)

(公印省略)

今般、医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律(令和元年法律第9号。以下「改正法」という。)が令和元年5月22日付けで公布され、また健康保険法施行規則等の一部を改正する省令(令和元年厚生労働省令第36号。以下「改正省令」という。)が令和元年8月30日付けで公布され、いずれも令和2年4月1日から施行することとされたところである。

改正法及び改正省令では、健康保険の被保険者に扶養される者(以下「被扶養者」という。)の要件について、国内居住要件を追加しているところであるが、当該要件の該当性の判断等が各保険者において統一的なものとなるよう、下記のとおり基本的な考え方を整理するとともに、別紙「国内居住要件に関するQ&A」により、その具体的な取扱いを整理したので、適切に御対応いただきたい。

また、改正法による改正後の船員保険法(昭和14年法律第73号)第2条第9項に規定する被扶養者の認定についても本通知に準じて取り扱うこと。

第1 国内居住要件の考え方について

改正法による改正後の健康保険法(大正11年法律第70号)第3条第7項に定める「住所」については、住民基本台帳に住民登録されているかどうか(住民票があるかどうか)で判断し、住民票が日本国内にある者は原則、国内居住要件を満たすものとすること。このため、例えば、当該被扶養者が一定の期間を海外で生活している場合も、日本に住民票がある限りは、原則として国内居住要件を満たすこととなること。

ただし、住民票が日本国内にあっても、海外で就労しており、日本で全く生活していないなど、明らかに日本での居住実態がないことが判明した場合は、保険者において、例外的に国内居住要件を満たさないものと判断して差し支えないこと。

第2 国内居住要件の例外の考え方について

外国に一時的に留学をする学生、外国に赴任する被保険者に同行する家族等の一時的な海外渡航を行う者については、日本国内に住所がないとしても、日本国内に生活の基礎があると認められる者として、国内居住要件の例外として取り扱うこと。具体的な取扱いについては、改正省令による改正後の健康保険法施行規則(以下「新健保則」という。)第37条の2各号のほか、別紙「国内居住要件の確認に関するQ&A」を確認すること。

なお、新健保則第37条の2各号では、日本国内に生活の基礎があると認められる者として、これまで日本で生活しており、渡航目的に照らし、今後日本で生活する蓋然性が高いと認められる者(一時的な海外渡航である者)で、かつ渡航目的が就労ではない者を基本に類型化している。

第3 認定に当たっての記載事項及び添付書類について

1 国内居住要件の例外に係る記載事項について

新健保則第38条第1項第3号等により、日本国内に住所がないものの国内居住要件の例外に該当する場合には、健康保険被扶養者(異動)届に国内居住要件の例外に該当する旨を記載することとなる。

2 日本国内に住所がある場合の添付書類について

被扶養者の認定の際には、健康保険被扶養者(異動)届に住民票の写し等の添付を求めることにより、認定対象者の住所が日本国内にあることを確認すること。

ただし、保険者等においてマイナンバーを活用した情報連携又は地方公共団体情報システム機構(J―LIS)からの機構保存本人確認情報の提供により当該認定対象者に係る住所情報を確認できる場合は、添付を省略して差し支えない。

3 日本国内に住所がない場合の添付書類について

被扶養者の認定の際には、健康保険被扶養者(異動)届に新健保則第37条の2各号に定める国内居住要件の例外に該当することを証する書類等の添付を求めることにより、国内居住要件の例外に該当することを確認すること。

なお、書類が外国語で作成されたものであるときは、その書類に翻訳者の記名がされた日本語の翻訳文を添付させること。

<添付書類の例>

例外該当事由

添付書類

① 外国において留学をする学生

査証、学生証、在学証明書、入学証明書等の写し

② 外国に赴任する被保険者に同行する者

査証、海外赴任辞令、海外の公的機関が発行する居住証明書等の写し

③ 観光、保養又はボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者

査証、ボランティア派遣機関の証明、ボランティアの参加同意書等の写し

④ 被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者であって、②と同等と認められるもの

出生や婚姻等を証明する書類等の写し

⑤ ①から④までに掲げるもののほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者

※個別に判断

第4 施行(令和2年4月1日)に向けた経過措置等について

1 現に海外に在住する被扶養者等について

施行時において適切な資格適用及び管理を行うため、保険者は、施行日前において、事業主を経由して被保険者に対して、現に海外に在住する被扶養者等に係る健康保険被扶養者(異動)届(国内居住要件の例外に該当する旨の確認又は該当しないこと等による認定の削除に関するもの)の提出を求めること。

なお、健康保険被扶養者(異動)届に添付する書類については、第3を参照すること。

2 施行日時点において国内の保険医療機関で入院している場合

改正法の施行に伴い被扶養者から除外される者が、施行日時点において国内の保険医療機関に入院中の場合には、保険者は、現に入院中であることを証する書類(入院申込書や入院診療計画書の写し等)の提出を求めることにより、現に入院中であることや入院期間(予定)を確認すること。

なお、当該入院が終了(退院)した時点で、経過措置対象者でなくなるので、適切な資格適用及び管理を行うために健康保険被扶養者(異動)届の提出を求めること。

第5 その他留意事項

今般の改正により、被扶養者の要件として国内居住要件が追加されたところだが、身分関係、生計維持関係等の被扶養者が満たすべき要件については、従来通り適切に把握するよう取り扱われたい。

[別紙]

<国内居住要件に関するQ&A>

1.居住実態の確認、収入の確認等について

Q1 国内居住要件は、どこまでの確認を要するのか。住民票の確認に加えて、全ての被扶養者(認定対象者)に対して居住実態の確認を行う必要があるのか。

A 国内居住要件の確認は、原則として、住民票が日本国内にあるかどうかを確認すればよく、全ての被扶養者の居住実態を確認する必要はない(第1参照)。

(明らかに日本に居住実態がないため国内居住要件を満たさないと判断するのは、例えば海外療養費の審査の過程において、海外への渡航理由を確認した際に、海外で就労しており、日本国内での居住実態がないと判明したケース等の個別の対応のみで問題ない。)

Q2 明らかに居住実態が海外にあることが判明する場合とは、どのようなケースを想定しているのか。

A 例えば、海外療養費の審査過程において海外への渡航理由を確認した際、検認において被扶養者の年収等を確認した際等に、海外で就労しており、日本国内での居住実態がないことが判明するケースが考えられる。

なお、海外で就労していることの確認は、原則として就労ビザの有無で判断することとし、留学生の滞在費用を補うためのアルバイトなど、本来の在留活動を妨げない範囲の付随的な就労であると認められる場合はこの限りでない。

Q2―2 外国に一時的に留学をする学生、外国に赴任する被保険者に同行する家族等の一時的な海外渡航を行う者であって、本来の在留活動を妨げない範囲の付随的な就労を行う場合又は就労しない場合の収入確認について、渡航先での滞在期間が短い等の理由で収入を確認する公的証明等が発行できない場合の取扱如何。

A 渡航先での滞在期間が短い等の理由で公的証明等が発行できない場合は、ビザにおいて、就労の可否、可能な就労の程度を確認し、今後1年間の収入を見込むこと。ビザだけでは判断できない場合は、被保険者の勤務先において扶養手当の支給状況及び支給基準等を提出させ確認を行うこと。なお、出国前の日本国内での収入で判断する場合は、海外に渡航していることによる状況の変化について考慮すること。

(例)

・ 学生ビザで就労可能な時間に制限がある場合等、当該制限の下で就労することにより被扶養者の認定基準未満の収入となることが見込まれる場合は、就労による収入は収入要件を満たすとして取り扱って差し支えない。

・ 就労ができない種類のビザの発給を受けている場合、就労による収入はないとして取り扱って差し支えない。

・ 渡航する前に国内に居住していた認定対象者について認定時における最新の国内の所得証明書を取得することができる場合、当該証明書にて被扶養者の認定基準額未満の収入であることが確認できる場合は、渡航後も認定基準額未満の収入として取り扱って差し支えない。

Q2―3 被保険者が外国に赴任している間に身分関係が生じた者の収入を確認する書類の例如何。

A 被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者については、収入額に関する公的機関の証明や、収入がある場合には勤務先から発行された収入証明書等で確認すること。

Q3 被扶養者の認定に当たって、保険者等において認定に必要な情報を既に所有している場合には、添付書類を省略して良いのか。

A 被扶養者の認定に当たっては、保険者等において第3に掲げる情報を所有しており、確認を行うことが可能な場合には、被保険者から添付書類を提出させることを省略して差し支えない。ただし、当該書類の提出を省略する際には、ビザの期間等に特に留意し、不適正な認定が行われることがないようにすること。

また、日本国内に住所があることの確認において、マイナンバーを活用した情報連携又は地方公共団体情報システム機構(J―LIS)からの機構保存本人確認情報の提供により当該認定対象者に係る住所情報を確認できる場合は、添付書類を省略して差し支えない。

Q4 国内に住民票を有し、国内居住要件を満たす場合には、被扶養者として認定するということか。

A 国内居住要件を満たすことのみで被扶養者として認定されるものでない。身分関係、生計維持関係等の被扶養者が満たすべき要件については、従来通り適切に把握するよう取り扱われたい。

Q5 国内居住要件の例外に該当する場合、同居要件も満たすこととなるのか。

A 国内居住要件の例外に該当するからといって、同居要件を満たすことにはならない。同居要件を満たすかどうかについては、従来通り適切に把握するよう取り扱われたい。

2.外国において留学をする学生(新健保則第37条の2第1号)について

Q6 留学の期間は問わないということか。

A 問わない。

Q7 学生が、留学後、現地で就職する場合の取り扱い如何。

A 国内居住要件の例外に該当するかどうかは渡航目的から形式的に判断することとし、「留学」という渡航目的の場合、留学中は国内居住要件の例外となる。

また、留学後、現地(海外)で就職する場合は、使用関係が生じた時点から例外要件を満たさなくなったものとして取り扱うこととする。

Q8 外国において留学する学生に同行する家族の取り扱い如何。

A 「留学への同行」という渡航目的に照らし、国内居住要件の例外として認める(新健保則第37条の2第3号に該当)。

3.外国に赴任する被保険者に同行する者(新健保則第37条の2第2号)について

Q9 「外国に赴任する被保険者に同行する者」の確認方法や対象範囲如何。

A 「家族帯同ビザ」の確認により判断することを基本とする(渡航先国で「家族帯同ビザ」の発行がない場合には、発行されたビザが就労目的でないか、渡航が海外赴任に付随するものであるかを踏まえ、個別に判断する)。

Q10 海外赴任に同行する家族が、被保険者と渡航・帰国のタイミングがずれる場合の取り扱い如何。

A 「海外赴任への同行」という渡航目的が満たされれば、必ずしも被保険者の移動と被扶養者の移動が同時に行われる必要はなく、例えば、被保険者が海外赴任後しばらくしてから海外に渡航する家族や、被保険者が帰国した後も子どもの現地での就学等の理由によりやむを得ず現地に残る家族も、国内居住要件の例外として認める。

Q11 被保険者が研修・留学で渡航する場合は、海外赴任に含まれるのか。

A 海外赴任とは、被用者が適用事業所との使用関係を維持し、被保険者としての身分を有したまま海外で何らかの活動を行うことであり、被保険者としての身分を有したまま行う研修・留学については海外赴任に含まれるものと解して差し支えない。

4.観光、保養又はボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者(新健保則第37条の2第3号)について

Q12 就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者の「一時的」の判断基準はどうするのか。

A ビザに有効期限がある場合は、原則として「一時的」と判断して差し支えない。

なお、ビザに有効期限がない場合であっても、それだけを以て国内居住要件の例外に該当しないと判断するのではなく、ビザの内容を含め総合的に判断すること。

Q13 「観光、保養又はボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外渡航する者」にワーキングホリデー制度の利用者は含まれるのか。

A 通常の就労ビザと異なり、ワーキングホリデー制度は主として休暇を過ごす意図を有するものと位置付けられており、ワーキングホリデーでの渡航は、海外滞在期間中の旅行・滞在資金を補うための付随的な就労が認められるものの、就労を目的とした渡航とは言えないため、国内居住要件の例外として認める。

また、就業訓練の目的で一時的に海外渡航する者については、例えばビザの内容から留学と同様であると判断できる場合など、就労を目的とした渡航とは言えない場合には、国内居住要件の例外として認める。

Q14 リタイアメントビザやロングステイビザなどで長期渡航する家族は「一時的に海外渡航する者」として国内居住要件の例外に該当しないのか。

A 海外渡航期間については、有効期限があるものが多いが、有効期限がないものもあるため、当該ビザでの渡航が一時的なものかどうかはビザの内容に応じて個別判断する必要がある。

なお、リタイアメントビザ(ロングステイビザ)は、退職後に海外で渡航して生活する者や富裕層に対して、一部の国で発行されているビザであり、当該ビザの発行要件として、基本的に一定の資産や収入が基準となっているため、そもそも生計維持要件を満たさない可能性が高いことが考えられる。

Q15 独立行政法人国際協力機構(JICA)の海外協力隊など海外でボランティア活動をする場合、当該団体等から現地生活費が支給されることがあるが、この場合も国内居住要件の例外に該当するか。

A ボランティア活動で一時的に海外に渡航する者として国内居住要件の例外に該当する。

ただし、当該現地生活費が年間収入として被扶養者の認定基準額以上である場合等は、健康保険法第3条第7項に規定する「主としてその被保険者により生計を維持するもの」に該当しないため、被扶養者と認定されないことに留意されたい。

5.被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者であって、外国に赴任する被保険者に同行する者と同等と認められるもの(新健保則第37条の2第4号)について

Q16 「被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者であって、外国に赴任する被保険者に同行する者と同等と認められるもの」の具体例如何。

A 「被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者であって、外国に赴任する被保険者に同行する者と同等と認められるもの」とは、「出生」、「婚姻」等の特別な事情により新たな身分関係が生じた結果、海外赴任に同行する者と同様に、海外赴任後に「日本人の配偶者等」、「定住者」、「家族滞在」等の在留資格により日本で生活すると予定されているなど、日本国内に生活の基礎があると保険者等が認める者が該当する。なお、第5に記載している通り、生計維持関係を満たす必要があり、身分関係が生じた者が現地で就労しているなど本人が主として生計を維持しており、被保険者との生計維持関係が認められない場合は除く。具体例は以下のとおり。

(例)

・ 海外赴任中に生まれた被保険者の子ども

・ 海外赴任中に現地で結婚した配偶者

・ 特別養子

なお、被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者の確認にあたっては、領事館発行の婚姻証明書や出生証明書など、公的機関が発行する証明書等により確認を行うこと。

Q17 海外赴任中に現地で結婚した配偶者の血族(被保険者の姻族)の取扱い如何。

A 海外赴任中に現地で結婚した配偶者の血族(被保険者の姻族)は、海外赴任後に被保険者の姻族という身分のみを以て発行されるビザがなく、今後日本で生活する蓋然性が高いとは言えないことから、配偶者と異なり、国内居住要件の例外としては位置づけない。

ただし、配偶者の連れ子については、海外赴任後に「定住者」等の在留資格により日本で生活すると予定されているなど、今後日本で生活する蓋然性がある場合には、国内居住要件の例外に該当するものとして差し支えない。ただし、この場合においても、日本で結婚した配偶者の連れ子と同様に、被保険者と同居していることが必要となる。

6.渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者(新健保則第37条の2第5号)について

Q18 その他、「渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者」の具体例如何。

A 具体例は以下のとおり。

(例)留学等の理由で渡航する被扶養者の海外在住中に生まれた子ども

・ 留学等の国内居住要件の例外として認められる海外在住の被扶養者に子どもが生まれた場合(例:被保険者の孫)については、一般的には、子が生まれた被扶養者は新たな世帯を形成することが想定されるが(その時点で当該被扶養者の帰国の蓋然性や被保険者との生計維持関係を満たす可能性が低くなることが考えられる。)、その子(被保険者の孫)についても、配偶者の就労実態や経済的援助の状況を踏まえ、被扶養者及びその配偶者がともに現地で就労できないビザで滞在しているなど、被保険者が扶養する必要がある特別な事情があり、「日本人の配偶者等」、「定住者」、「家族滞在」等の在留資格により日本で生活すると予定されているなど、今後日本で生活する蓋然性が高いと認められる場合には国内居住要件の例外として認めて差し支えない。

7.国内居住要件の例外として認められない事例について

Q19 就労を目的に海外に渡航する家族は、国内居住要件の例外としては一切認められないということか。

A 就労を目的として渡航する者は、海外での収入により生計を立てている可能性が高く、被扶養認定に必要な生計維持要件を満たす可能性が低いとともに、そもそも生活の基礎が日本にあるとまでは言えないことから、国内居住要件の例外には含めない。