添付一覧
○医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方に関する質疑応答集(Q&A)について(その2)
(令和2年1月6日)
(薬生機審発0106第4号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)
(公印省略)
医療機器の製造販売承認申請等に際して添付すべき資料のうち、生物学的安全性評価に関する資料の取扱いについては、「医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方についての改正について」(令和2年1月6日付薬生機審発0106第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知。以下「生安性通知」という。)により示したところです。
今般、別添のとおり、生安性通知に関する質疑応答集(Q&A)(その2)を取りまとめましたので、貴管内関係団体、関係業者等への周知方お願いします。
なお、「医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方に関する質疑応答集(Q&A)」(平成24年4月23日付薬食機発0423第2号厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知)は、令和4年12月31日をもって廃止します。
また、本通知の写しを独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長、一般社団法人日本医療機器産業連合会会長、一般社団法人米国医療機器・IVD工業会会長、欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会委員長及び医薬品医療機器等法登録認証機関協議会代表幹事宛て送付することとしています。
別添
質疑応答集(Q&A)(その2)
(既存品目の取扱い)
Q1 既に承認、認証又は製造販売届出された医療機器の取扱いとして、留意すべき点はあるか。 |
A1 「医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方についての改正について」(令和2年1月6日付薬生機審発0106第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)の別紙「医療機器の生物学的安全性評価の基本的考え方」(以下「基本的考え方」という。)の4.1)にあるとおり、上市後の医療機器はJIS T 14971又はISO 14971により管理されるべきであり、通知及びISO 10993シリーズの改訂ごとに、生物学的安全性の再評価を必ずしも求めるものではない。
(承認等申請書との関連性)
Q2 医療機器の生物学的安全性評価は、原則として、JIS T 0993―1あるいは国際規格である最新のISO 10993シリーズ(医療機器の生物学的評価関連の規格群)に準拠して行うこととするとあるが、JIS T 0993―1:2020の6.3.2項に記載のある「生物学的総括評価報告書」や7.の生物学的リスクアセスメントを文書化したものについては、承認等申請書に各文書を添付する必要はないと考えてよいか。 |
A2 貴見のとおり。なお、評価すべき生物学的安全性評価項目の選択の妥当性の判断、試験実施の要否判断や総合的な生物学的安全性評価等については、教育・訓練が十分になされた、経験豊富な専門家が行う必要があり、本評価の概要については、適切に申請書の添付資料(STED)へ記載されなければならない。
(「リスクマネジメント」)
Q3 申請品目について、通用JIS T 14971「医療機器―リスクマネジメントの医療機器への適用」又は国際規格であるISO 14971 Medical devices -- Application of risk management to medical deviceを参照して実施しているリスクマネジメントとは別に、生物学的安全性評価に対しての生物学的リスクマネジメントを実施しなくてはいけないのか? |
A3 生物学的安全性評価は、JIS T 14971「医療機器―リスクマネジメントの医療機器への適用」又は国際規格であるISO 14971 Medical devices -- Application of risk management to medical devicesに規定されるリスクマネジメントプロセスの検証作業の一つとして位置づけられており、JIS T 14971もしくはISO 14971に従ったリスクマネジメントの中で対応することで問題ない。例えば、生物学的安全性試験で特定のハザードが検出された場合は、通常のJIS T 14971もしくはISO 14971のリスクマネジメントの流れの中で、医療機器を製造販売する上でのリスクコントロールを行う必要がある。
Q4 「基本的考え方」5.1)、図1及び表1にある物理学的・化学的特性評価としては、どのような情報が必要か。 |
A4 物理学的・化学的情報とは、対象となる医療機器及び構成成分に関する組成、製造工程、形状及び物理学的性質、身体接触のカテゴリ、並びに臨床使用に関する情報を指し、「基本的考え方」の4.2)に掲げる情報等がこれに該当する。
なお、物理学的・化学的情報の定義は、ISO 10993―1:2018又はJIS T 0993―1:2020を参照すること。
Q5 物理学的・化学的情報を収集する際、化学分析評価は必ず実施しなければならないのか。 |
A5 化学分析評価は医療機器の生物学的安全性評価におけるハザードや臨床上リスクを見積もるための選択肢の一つである。「基本的考え方」5.1)の記載にあるように、物理学的及び化学的情報は、図1のフローチャートの材料、製造方法、滅菌方法、形状、物理学的特性、身体接触及び臨床使用に関する質問を充足できる内容であることが望ましいが、必ずしも化学分析を実施することを求めているものではない。
Q6 化学分析評価結果を用いて、生物学的安全性試験の実施を省略することは可能か。 |
A6 医療機器から溶出し得る化学物質の種類と量を化学的特性評価によって把握することにより、毒性学的閾値及び摂取許容値に基づく安全性評価(ISO 10993―17参照)が可能となり、新たな生物学的安全性試験の実施の要否を判断することができる。
化学分析の結果、生物学的安全性試験の実施を省略できると判断した場合は、承認等申請時に、化学分析の目的や分析種類、手順の妥当性等の情報と、試験省略の妥当性について詳細な説明が必要となる。また、実施した化学分析の試験成績を添付資料として提出すること。
なお、化学分析を用いて生物学的安全性試験を省略する場合の判断の適否については、承認等申請前にPMDAの対面助言(医療機器評価相談(安全性))等を活用することが望ましい。
Q7 「基本的考え方」5.2)における既存品との同等性評価に、物理学的情報(形状・物性等)が追加された背景は何か。 |
A7 医療機器を構成する材料が同一であっても、血液と接触する医療機器や体内に埋植される医療機器では、表面形状(微細な凹凸等)が異なると生体反応が変わる可能性があるため、既存品との同等性評価に物理学的情報を追加している。
Q8 「基本的考え方」表1の「物理学的・化学的情報」とは、ISO 10993―1:2018における当該箇所では「and/or」と記載されているように、「物理学的情報及び/又は化学的情報」の意味であり、両方の情報が必須ではないという理解でよいか。 |
A8 貴見のとおり、物理学的情報及び化学的情報の両方を必須とするものではない。
ただし、医療機器の形状・構造や接触による毒性発現のリスクの程度及び臨床使用実態に応じて、物理学的な評価を行うことが望ましい。
なお、医療機器の形状・構造が生体への接触リスクに影響しない場合は不要である。
Q9 「基本的考え方」表1において、「体内と体外とを連結する機器」及び「体内植込み機器」で評価項目が追加されている箇所があるが、この主旨は何か。 |
A9 いずれも接触時間が24時間以内の医療機器ではあるが、体内(組織・骨)に医療機器からの溶出成分が入り込み、全身に循環するリスクが想定されるため、急性毒性や発熱性についても評価項目として考慮する必要があるため、追加している。
なお、全身ばく露の懸念が無いことを申請資料で説明するなど、試験によらない評価も可能である。
Q10 「基本的考え方」表1において、局所適用である表面接触医療機器に、発熱性・急性毒性・亜急性毒性のような全身毒性評価が追加されているが、この主旨は何か。 |
A10 中・長期間にわたり粘膜や損傷皮膚などの局所に適用されることによって、医療機器から溶出した成分が全身ばく露されるリスクが想定されるため、これらも評価項目として考慮する必要があるため、追加している。
なお、医療機器では、体内動態を検討する評価は通常行われないため、全身ばく露を完全に否定することは難しいが、物質的に全身ばく露の懸念が無いことを申請書上で説明するなど、試験によらない評価も可能である。
Q11 「基本的考え方」表1において、埋植されない医療機器においても、「埋植」が評価項目として追加されているカテゴリがあるが、この主旨は何か。 |
A11 局所への中・長期的影響について、肉眼的にだけでなく病理組織学的にも観察し、適切なリスク評価を行う必要あるため、追加している。
今回の改訂で「埋植」の評価が求められる医療機器については、改訂前から刺激性試験が求められている。刺激性試験は、通常、肉眼観察(発赤や浮腫)結果で判定されるが、埋植試験では病理学的な影響を顕微鏡レベルで観察することが求められるため、刺激性試験に病理組織学的観察を追加することが、今回の改訂に対する主な対応となる。
Q12 「基本的考え方」8項に「生物学的安全性評価を目的とした試験はGLPに準拠した実施が求められる。」と記載されているが、物理学的・化学的情報収集の際に実施する材料の化学分析評価は、GLPの適用対象ではないと考えてよいか。 |
A12 貴見のとおり。
(細胞毒性試験)
Q13 「第1部 細胞毒性試験」に掲載されていない試験方法で試験を行うことは可能か。 |
A13 「第1部 細胞毒性試験」4.3に記載のとおり、本ガイダンスでは医療機器の安全性評価を目的とすることから、検出感度が高く、広く国内外で用いられている方法を掲載している。よって、医療機器の接触組織を勘案した時、適切な感度・再現性又は用量依存性が示されれば、ISO 10993―5に準拠した他の方法で試験を実施してもよい。
その他、個々の判断については、必要に応じPMDAの対面助言等を利用されたい。
Q14 対照試料の取扱いについては、以下の理解でよいか。 抽出法による場合: ・陰性対照材料及び陽性対照材料について試験を実施 ・陽性対照物質の試験は不要 直接接触法による場合: ・陰性対照材料及び陽性対照材料について試験を実施 ・陽性対照物質の試験は不要 原料化学物質の場合: ・陽性対照物質について試験を実施 ・陰性対照材料及び陽性対照材料の試験は不要 |
A14 貴見のとおり。
なお、抽出法による場合又は直接接触法による場合において、陽性対照物質の試験実施を妨げるものではない。
(感作性試験)
Q15 ISO 10993―10では、陽性対照試験について、6ヶ月を超えない定期的な再現性及び感度の確認に替えてよい旨の記載がある。これに従い、陽性対照試験を定期モニタリングとして問題ないか。 |
A15 感作性試験の成立要件として陽性対照群の評価は必要であるが、陽性対照群を試験ごとに設定せず、試験実施施設が6ヶ月を超えない範囲で定期的に陽性対照試験を実施し、その期間において感作性陽性の発現を担保する形で評価することでも差し支えない。この場合、ISO 10993―10を参考に、陽性対照試験を実施すること。
ただし、この場合、承認等申請時には、当該感作性試験を担保するために、試験報告書に陽性対照群の試験結果を記載する、あるいは陽性対照試験の報告書を添付する必要があることに留意すること。
なお、定期的に実施する陽性対照試験において適切な結果が得られず、使用個体群の感受性の低下が結論付けられた場合には、最後に有効であった陽性対照試験以降の試験データが無効となることに注意すること。
Q16 試験液がアセトンなどの揮発性有機溶媒抽出液であり、惹起適用量を0.1mLとする場合、開放塗布では皮膚の広範に広がり過ぎ、閉塞貼付ではパッチ内で乾固し、皮膚への接触が限定される。この場合、十分な塗布面積となる適用量としてよいか。 |
A16 試験液がアセトンなどの皮膚表面への親和性が高い溶媒では,評価にあたり十分な塗布面積(例えば直径1.5cmの範囲)となる適用量としてよい。
Q17 感作性試験において、有機溶媒抽出が求められる「新規原材料」の範囲はどのように考えればよいか。原材料を規定する情報には、一般名、メーカー、配合比、グレードなど様々あるが、詳細まですべて一致した使用前例でなければ、新規原材料となるのか。 |
A17 医療機器に初めて用いられる新規性のある化合物等については、ハザード検出を目的とした有機溶媒抽出による試験を実施しなくてはならないが、既存品との同等性を示すことができる程度の相違(配合比や同等グレードとの軽微な相違や、加工・滅菌工程等における軽微な条件の相違など)は新規原材料には該当しない。
また、国内では使用実績がないものの、外国での臨床使用実績が説明できる場合においても、同様に新規原材料には該当しない。
なお、これらの原材料に関しては、臨床使用上のリスクが低いと判断できるため、有機溶媒以外の抽出液を用いた試験によるリスク評価も可能である。
Q18 感作性試験において、24時間以上の接触期間である医療機器の場合、総合的にリスク評価を行った結果、有機溶媒以外の媒体で抽出を行うことは可能か? |
A18 Q17と同様に、単回且つ一時的接触(24時間以内)を超える接触期間となる医療機器に対し、「最終製品の化学的・物理学的特性」、「他の生物学的安全性試験成績結果」、「臨床使用実態や接触リスク」及び「医療機器を構成する原材料や添加物等の毒性情報」を総合的に評価し、有機溶媒を選択せずとも十分に試験が実施できることを申請書上で説明できれば可能である。
Q19 感作性試験の溶媒選定において、「溶媒中で試験試料が溶解したり、原形をとどめないほど変形・変質するような場合・・・は、他の適切な有機溶媒を選ぶ」とある一方で、ISO 10993―12 10.3.11項では、「ポリマー材料の軽度の軟化(10%未満の溶解)を超えてはいけない」との記載がある。試験試料の溶解、変形、変質の判断に加え、ISO 10993―12の記載を参考にして溶媒選択してよいか。 |
A19 貴見のとおり。ただし、当該溶媒が妥当であると判断した根拠を最終試験報告書に明記すること。
(刺激性試験)
Q20 皮膚刺激性評価としてin vitro皮膚刺激性試験を実施し、判定が陽性であった場合、他に実施した試験結果や臨床使用実態等から総合的に判断し、刺激性がないことをin vivo試験を追加実施することで評価を行うことは問題ないか。 |
A20 貴見のとおり。in vitro皮膚刺激性試験は、in vivo試験と比べて感度が高く、刺激性の強弱判定ができないことから、in vivo試験により刺激性の強弱の情報を得た上で、総合的に刺激性の評価を行うことで差し支えない。
(全身毒性試験)
Q21 急性毒性試験を埋植試験で代替することは可能か。 |
A21 不可能である。
急性毒性試験は、試験試料(最終製品又は原材料)から抽出した試験液中に、潜在的に急性全身毒性を有する物質が存在しないことを確認するための試験である。また、亜急性全身毒性試験以降の投与量を決定する上でも重要な試験となっている。
よって、埋植試験のように周囲組織に引き起こされる組織反応の種類と程度を評価する結果のみをもって、急性毒性試験の代替とすることはできない。
(血液適合性試験)
Q22 4項に「3項で選択した試験項目に対して、これらの中から一つ以上の適切な評価項目を選択する」とあるが、これは、8.1項に示す表に記載の医療機器例を参考に選択した試験項目に対して、4項の表を照らして評価項目から最も適切と思われる項目を一つ以上選択するという理解でよいか。 |
A22 貴見のとおり。
Q23 機械的溶血性を踏まえた血液適合性評価について、補助人工心臓、人工心肺、血液透析器などの医療機器の性能評価として溶血性を評価するものについては、性能評価結果を踏まえ、生物学的安全性としての溶血性を評価することで差し支えないか。 |
A23 貴見のとおり。
Q24 「基本的考え方」の8項に「ただし当該製品に求められる機能性/有効性を評価する試験で安全性評価の目的が副次的である場合には、医薬品医療機器等法施行規則第114条の22を順守すること。」とは、どのように解すればよいか。 |
A24 「基本的考え方」に従って血液適合性試験を実施する場合は、従来どおりGLP準拠が求められる。
一方、性能評価を主目的とする性能試験において、血液適合性試験を組込むことは可能であり、この場合においてGLP準拠は求められないが、従来どおり申請書の信頼性の基準に係る要求事項である医薬品医療機器等法施行規則第114条の22を順守する必要があることを記載しているものである。
以上