添付一覧
○民間あっせん機関の第三者評価のための手引き等について
(令和元年11月20日)
(子家発1120第1号)
(各都道府県・各指定都市・各児童相談所設置市民生主管(部)局長あて厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課長通知)
(公印省略)
民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律(平成28年法律第110号)第21条第1項に規定する業務の質の評価については、本日、「民間あっせん機関の第三者評価基準について」(令和元年11月20日付け子発1120第1号厚生労働省子ども家庭局長通知)において通知し、適用したところである。
併せて、民間あっせん機関における第三者評価及び自己評価の実施に資するよう、第三者評価のための手引き、第三者評価にかかるガイドライン及び様式例について、「平成29年度先駆的ケア・検証調査事業(民間あっせん機関の業務の質に関する評価基準の策定に係る調査研究)報告書」及び「平成30年度先駆的ケア・検証調査事業(民間あっせん機関の第三者評価基準及び判断基準等の策定に係る調査研究)報告書」を踏まえ、別紙1から5のとおり策定したため、通知する。
貴職におかれては、内容について御了知いただき、その適正かつ円滑な実施を図られたい。
なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言であることを申し添える。
(別紙1)民間あっせん機関の第三者評価のための手引き
(別紙2)民間あっせん機関の第三者評価にかかるガイドライン
(別紙3)自己評価結果入力シート様式例
(別紙4)自己評価結果公表様式例
(別紙5)第三者評価結果報告書様式例
(別紙1)
民間あっせん機関の第三者評価のための手引き
民間あっせん機関の第三者評価について
1.民間あっせん機関における第三者評価の必要性
平成28年5月成立の「児童福祉法等の一部を改正する法律」(以下「改正児童福祉法」)において、第1条で「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、(中略)その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する」と規定し、児童の福祉を保障するための原理が明確化されました。さらに、改正児童福祉法の附則において「この法律の施行後速やかに、児童の福祉の増進を図る観点から、特別養子縁組制度の利用促進の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」とされています。
また、平成28年12月に成立した「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律」(以下「民間養子縁組あっせん法」)により、養子縁組あっせん事業を行う者を「民間あっせん機関」とし、その業務の適正な運営を確保するため、届出制から都道府県による許可制度とされることになりました。
あわせて、民間養子縁組あっせん法第21条においては、「業務の質の評価等」として「民間あっせん機関は、その行う養子縁組のあっせんに係る業務の質について、自ら評価を行うとともに、厚生労働省令で定めるところにより、評価機関(養子縁組のあっせんに係る業務についての評価を行う機関として厚生労働省令で定める者をいう。)による評価を受け、それらの結果を公表しなければならない」とともに、その結果に基づき「業務の改善を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない」とされました。
これらの規定は、養子縁組のあっせんに係る児童の保護を図るとともに、民間あっせん機関による適正な養子縁組のあっせんを促進することにより、児童の福祉を増進することを目的としています。従って、第三者評価は、それ自体が目的ではなく、より良い養子縁組のあっせんへ向けた不断の取組の一環として捉える必要があります。
2.第三者評価基準の位置づけ
第三者評価基準は、「民間あっせん機関による適正な養子縁組のあっせんの促進を図る」ことを目的として、全ての民間あっせん機関が第三者評価を受けること及びその結果を公表することが義務付けられたことを踏まえ、民間あっせん機関の第三者評価における評価項目や評価の着眼点等を策定したものです。
3.第三者評価基準の構成
■全体構成
「民間あっせん機関の第三者評価基準について」(令和元年11月20日付け子発1120第1号厚生労働省子ども家庭局長通知)別紙「民間あっせん機関の第三者評価基準」は、Ⅲ部構成、44の評価項目で構成しています。
別紙2「民間あっせん機関の第三者評価にかかるガイドライン」とあわせて活用できるよう、当該ガイドラインの構成ならびに内容に沿って策定しています。
【図表1】第三者評価基準の主構成
内容 |
評価項目数 |
|
第Ⅰ部 |
養子縁組のあっせん・相談支援の基本方針と組織 |
6項目 |
第Ⅱ部 |
民間あっせん機関の運営管理 |
10項目 |
第Ⅲ部 |
適切な養子縁組のあっせん・相談支援の実施 |
28項目 |
■各評価項目の構成
各評価項目は、「評価の着眼点」と「評価基準の考え方と評価の方法」で構成されています。このうち、「評価基準の考え方と評価の方法」は「目的」「趣旨・解説」「評価の方法」で構成されています。
評価者は、「評価の着眼点」を参考にしながら、その評価項目の評価を行ってください。
【図表2】各評価項目の構成
評価の着眼点 |
・第三者評価(自己評価)時に実施状況等を確認する視点 |
目的 |
・当該評価項目における主要な確認事項 |
趣旨・解説 |
・当該評価項目において、民間あっせん機関に求められる事項 ・民間あっせん機関の第三者評価にかかるガイドライン(別紙2)等より作成 |
評価の方法 |
・評価を行う際の確認方法 |
4.評価のつけ方
■評価ランク
各評価項目は、a~cの三段階で評価します。
なお、評価項目に該当する事例がない場合には、非該当「―」とします。
【図表3】評価ランクの考え方
a |
評価項目の事項が適切に実施されている。 →事業における取組みが十分な水準である状態 |
b |
評価項目の事項は実施されているが、十分ではない。 →「a」に向けた改善の余地がある状態 |
c |
評価項目の事項が実施されていない、または確認できない。 →「b」以上の取組みとなることを期待する状態 |
5.第三者評価基準における「関係機関」や「職員」の考え方
民間あっせん機関の組織形態や規模は様々であり、かつあっせんを行う縁組のケースに応じて、連携すべき関係機関も多岐に渡るのが実情です。そのため、第三者評価基準の中では、「関係機関」や「職員」といった言葉が用いられていますが、その対象や範囲を一律に定めることはしていません。
民間あっせん機関における第三者評価は、「児童の養子縁組は、専ら児童の福祉の観点に立って行われなければならない」という観点から行うものであり、その実現のためにあっせんが適切に行われているかを確認するものです。そのために必要な関係機関はどこなのか、あっせん業務にかかわる職員とは誰のことか、各民間あっせん機関の組織や取組みの状況等に応じて対象を設定のうえ、評価を行ってください。
6.第三者評価の流れ
第三者評価は、「自己評価」→「第三者評価」→「フィードバック」及び「公表」の流れで実施します。
【図表4】第三者評価の流れ
■自己評価の実施
第三者評価機関による評価の前に、まずは受審する民間あっせん機関自身での自己評価を実施し、第三者評価機関に提出します。第三者評価機関は、その内容を事前に確認のうえ、受審機関を訪問し、文書の確認や職員への聴き取りを行います。
自己評価は、職員全体で意見交換をしながら組織として1つの評価を決める方法や、まずは職員一人ひとりが評価を行い、職員による認識の違いを組織全体で把握し、その理由等を確認していく方法が考えられます。いずれにしても、個々の職員が評価に参画する姿勢が求められます。役割分担等により、個人での評価が難しい項目は対象外としても構いませんが、「自分ができているか」ではなく「組織としてどうか」という視点で評価を行うことにより、組織全体として課題等の共有を行うことが重要です。
なお、第三者評価の受審に向けて行う自己評価の評価シートの例は別紙3を、自己評価を公表する場合の公表様式の例は別紙4を参照してください。
■文書の準備・事前提出
第三者評価機関は、自己評価を踏まえ、評価を実施するにあたって必要な文書(業務方法書等)を受審機関に対して連絡します。第三者評価は、訪問により実施しますが、限られた時間の中で効率的かつ効果的に評価を行うためにも、文書を第三者評価機関が事前に確認しておくことが望ましいため、受審機関は、第三者評価までにそれらの文書を準備するとともに、事前提出可能な文書は、事前に第三者評価機関に対して送付します。
なお、職員に関する事項を含め、個人情報が記載された文書の取扱いには十分注意してください。
■第三者評価の実施
第三者評価機関が受審機関に訪問し、職員への聴き取りや文書を確認し、評価を行います。
評価の進め方は、各第三者評価機関に委ねますが、評価の冒頭において、受審機関、責任者の基本的な考え方を確認したうえで、評価を進めていくことにより、重点的に確認すべきポイントや、特に問題ないであろう評価項目などが見えてくるため、効率的かつ効果的に評価を行うことができます。1つずつの評価項目の確認に入る前に、受審機関の基本方針や養子縁組あっせんを行うにあたり配慮していること、現在感じている課題、取組みたいと思っていること、具体的なケースにおける対応などについての聴き取り、ディスカッションの時間を設けることをお勧めします。
また、各評価項目に関する聴き取りは、
○ その評価項目(着眼点)をどうとらえているか、どのように理解しているか
○ その実現に向けて、どのような取組みをしているか
○ 取組みの内容等を確認できる文書があるか
の3段階で行うと、評価項目に対する受審機関の理解に齟齬がないかや、受審機関の取組み状況などを包括的に確認でき、どのような文書で確認できそうかなども把握しやすいため、評価を進めやすくなります。
なお、第三者評価は、実施することそのものが目的ではなく、その結果を受けて必要な改善へ向けた取り組みを行うことに意味があります。そのため、第三者評価においては評価者からの評価理由や改善方法等の提案を受ける「フィードバック」もセットとして計画することが重要となります。最終的には文書としてとりまとめたものを受審機関に提出することになりますが、第三者評価当日に簡単なフィードバックを行い、評価結果を共有することが望ましく、スケジュールを組むうえでの配慮が求められます。
【図表5】第三者評価スケジュール(例1)~1日~
時間 |
主な内容 |
9:00~10:00 |
受審機関の考え方等に関する聴き取り・ディスカッション |
10:00~12:00 |
各評価項目に関する確認 |
12:00~13:00 |
(休憩・昼食) |
13:00~17:00 |
各評価項目に関する確認 |
17:00~17:30 |
評価結果のとりまとめ(評価者間調整) |
17:30~18:00 |
フィードバック ・第三者評価についての評価者の所感 ・自己評価と第三者評価が異なる項目とその理由 ・改善が必要な主な事項と改善方法に関する提案 等 |
【図表6】第三者評価スケジュール(例2)~1.5日~
時間 |
主な内容 |
|
1日目 |
9:00~10:00 |
受審機関の考え方等に関する聴き取り・ディスカッション |
10:00~12:00 |
各評価項目に関する確認 |
|
12:00~13:00 |
(休憩・昼食) |
|
13:00~17:00 |
各評価項目に関する確認 |
|
2日目 |
9:00~11:00 |
各評価項目に関する確認 |
11:00~11:30 |
評価結果のとりまとめ(評価者間調整) |
|
11:30~12:00 |
フィードバック ・第三者評価についての評価者の所感 ・自己評価と第三者評価が異なる項目とその理由 ・改善が必要な主な事項と改善方法に関する提案 等 |
■第三者評価結果の報告
第三者評価機関にて、報告書を作成し、受審機関にフィードバックを行います。報告書は、第三者評価全体に関する総評と、各評価項目に関する評価結果とその理由等に関する事項で構成します。
第三者評価は、評価の受審や評価結果を受け取り公表する、というだけでなく、評価の結果に基づき改善等につなげていくことが重要です。そのため、評価結果については受審機関の職員の理解と納得が不可欠であり、フィードバック(報告書の作成)にあたっては「なぜそのような評価をしたのか」「どう改善していったらよいか」についての説明・提案をしっかりと行ってください。
なお、報告書の例は、別紙5を参照してください。
■第三者評価結果の公表
第三者評価の結果は、各民間あっせん機関においてホームページを活用するなどして公表する必要があります。少なくとも民間あっせん機関名、第三者評価実施機関名、評価実施期間、総評及び評価項目ごとの評価ランクの公表は必要ですが、評価者からのフィードバックの内容や評価を受けた改善内容など、どこまでを公表するかについては、各民間あっせん機関の判断に委ねられます。
7.第三者評価の評価における留意点
第三者評価を実施する評価者の方は、第三者評価の目的である「質の向上に結び付ける」ことができるよう、以下の点にご留意ください。
●民間あっせん機関の役割や各機関の特徴を確認・理解しながら評価を行う
民間あっせん機関の形態や規模は様々であり、行っている養子縁組あっせんのケースも異なることから、各機関の特徴を踏まえた評価が必要となります。
聴き取り等を行う中で、各々の機関の特徴を確認・理解しながら、評価を進めることが求められます。
●評価項目の趣旨を理解し評価する
本基準には、「評価の着眼点」や「評価の方法」など、第三者評価を行っていただくうえでのポイントを記載していますが、記載されている着眼点等以外の視点や方法にて評価を行うことを妨げるものではありません。各評価項目の趣旨をご理解いただき、それを評価するために必要な視点を適宜加えながら、適切な評価をお願いいたします。
●「文書の有無」だけではなく、目的に即した内容となっているかを確認する
第三者評価を行ううえで、必要な文書や記録がそろっているかは重要なポイントですが、形式的にあればよいというわけではありません。その内容が適切なものか、が重要となります。「○○が実施されている」という取組みに関する評価においても、その取組みが目的に即したものか、その取組みによる成果がでているのかも聴き取り等で確認する必要があります。
●要改善事項を指摘するだけでなく、どう改善していくかもあわせて提案する
第三者評価の結果、改善が必要な事項が確認された場合には、その指摘と合わせて具体的な改善方法もあわせて提案することが重要です。なぜそれができていないのかの要因を確認しながら、どのように改善していけるかを一緒に考えることも第三者評価機関に期待されています。
●良い取組みは、良い取組みとしてしっかり評価する
第三者評価を効果的に活用するためには、受審機関にとって「有益な機会である」と感じてもらうことが重要であり、職員が「頑張ろう」と思える、職員のモチベーション向上につなげることを意識して第三者評価を行うことが必要です。そのためには、その機関の取組みの中で、よい部分もしっかりと評価し、それを直接職員に伝えてあげることがポイントです。評価した理由を含め、意識的にフィードバックを行ってください。
●法に抵触する可能性のある事項については速やかに厚生労働省に報告する
第三者評価は行政監査とは位置づけが異なりますが、第三者評価基準は「民間あっせん機関による適正な養子縁組のあっせんの促進を図る」ことを目的としていますので、評価項目には、実施義務のある事項、もしくは禁止事項が含まれます。これらの項目について、早急な改善が必要と思われる事項が確認された場合には、第三者評価の結果報告をまたず、速やかに厚生労働省に報告してください。報告内容に基づき、厚生労働省と管轄自治体にて事実確認等の必要な対応を行います。
8.自己評価での活用
民間養子縁組あっせん法第21条第1項においては、「自ら評価を行うとともに」と明記されており、各民間あっせん機関において自己評価を行うことが義務付けられています。
第三者評価基準は、事業におけるサービスの質を向上させることを目的として、外部の評価機関による評価を行うことを前提に策定していますが、民間あっせん機関の職員が行う自己評価にも活用いただき、養子縁組のあっせんのあり方や理念についての理解を深めていただくことができると考えています。自己評価の実施、評価結果に基づく見直しや研修等で活用されることを期待しています。
(別紙2)
民間あっせん機関の第三者評価にかかるガイドライン
[第Ⅰ部 総論]
1.目的
・養子縁組は、保護者のない児童又は何らかの事由により家庭での養育が受けられない児童に、家庭における養育を確保し、養育者との永続的な関係を形成する制度であり、児童の養子縁組は、専ら児童の福祉の観点に立って行われなければならない。
・この「ガイドライン」は、民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律(平成28年法律第110号。以下「法」という。)第21条第1項の規定による第三者評価について、民間あっせん機関及び第三者評価を行う評価機関が共有すべき重要な考え方や基本的な事項を示すことにより、民間あっせん機関が、法令及び民間あっせん機関が適切に養子縁組のあっせんに係る業務を行うための指針(平成29年厚生労働省告示第341号。以下「指針」という。)等に従って、適正な養子縁組のあっせんを行い、ひいては自らが行う養子縁組のあっせん・相談支援の質の確保と向上に資することを目的として定めるものである。
2.養子縁組のあっせん・相談支援の基本方針と組織
(1) 基本方針の明文化と周知
・民間あっせん機関は、以下の①~⑥を踏まえ、児童の権利擁護や家庭養育推進の視点を盛り込んだ基本方針を明文化し、職員の行動規範とすることが必要である。
・基本方針は、職員に周知することはもとより、支援の対象となる児童、生みの親(出生時に婚姻関係のないパートナーを含む。以下単に「生みの親」という。)、養親希望者及び業務上連携する関係者・機関に周知し、十分な理解を得るように努めなければならない。
①児童の最善の利益の確保
・児童の権利に関する条約(平成6年条約第2号)第3条第1項において、児童に関するすべての措置をとるに当たっては、児童の最善の利益が主として考慮されるものとされている。また、同条約第21条においては、養子縁組の制度について、児童の最善の利益について最大の考慮が払われることを確保するものとされている。
・法第3条第1項において、民間あっせん機関による養子縁組のあっせんは、児童の福祉に関する専門的な知識及び技術に基づいて児童の最善の利益を最大限に考慮し、これに適合するように行われなければならないことが明示された。
・養子縁組のあっせんについては、「児童の最善の利益のために」行うことをその基本理念とする。
②営利を目的とした養子縁組のあっせんの禁止
・従来、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第34条第1項第8号において、営利を目的とした児童の養育のあっせんが禁止されてきたことに加え、法第7条第1項第5号において、「営利を目的として養子縁組あっせん事業を行おうとするものでないこと」が許可基準の一つとされた。
・民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律施行規則(平成29年厚生労働省令第125号。以下「規則」という。)第3条第1項において、民間あっせん機関は、養子縁組のあっせんに関し、同項に規定する種類の手数料(現に要した額に限る。)を徴収する場合を除き、いかなる名義でも、実費その他の手数料又は報酬を受けてはならない。
③生みの親による養育の可能性の模索
・児童の権利に関する条約第7条第1項において、児童はできる限りその父母によって養育される権利を有するとされている。
・生みの親が、自ら養育することの可能性や、養子縁組を行うことによる当該児童の利益等について十分熟慮した上で、養子縁組のあっせんに同意するか否かの意思決定を行うよう相談支援することが必要である。
④国内におけるあっせんの優先
・児童の権利に関する条約第21条(b)において、国際的な養子縁組は国内で受入れ家庭を見いだせない児童について代替的手段として認められている。
・法第3条第2項において、民間あっせん機関による養子縁組のあっせんは、可能な限り日本国内において児童が養育されるよう行われなければならないとされている。
・これらを踏まえ、民間あっせん機関は、原則として国内で養親候補者を探すこととし、そのための努力を最大限に行うことが必要である。その上でもなお、国内で受入れ家庭を見いだせない場合に限り、国際的な養子縁組をあっせんすることができる。
⑤出自を知る権利の確保
・児童の権利に関する条約第7条第1項において、児童はできる限りその父母を知る権利を有するとされている。
・また、民間あっせん機関は、児童にとって生みの親の存在が極めて重要であり、児童が自らの出自を知る権利を有するということを養親が認識した上で児童を養育できるよう、養親を支援しなければならない。
・民間あっせん機関は、自らが行ったあっせんによって養子となった者が、将来、出自に関する情報の開示を求めた場合に、これに誠実に応じることができるように、生みの親に関する情報等を取得し、これを保存しなければならない。
⑥関係機関の連携による業務の推進
・民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る業務は、児童福祉、母子保健、精神保健福祉等の関係機関(以下単に「関係機関」という。)及び民間あっせん機関相互の連携のもとに進める。特に、妊娠相談、生みの親に対する支援及び児童の保護に関しては、関係機関との連携を重視しなければならない。
(2) 計画的な事業運営
・事業運営に当たっては、事業の将来性や継続性を見通しながら、良質かつ安心・安全な養子縁組のあっせん及び相談支援の提供に努めることが求められる。
・そのため、経営状況・環境について定期的に把握・分析等を行うとともに、それらを踏まえて、計画的な事業運営を行う。
・具体的には、事業運営において、以下の点に留意する。
i) 基本方針の実現に向けた目標を明確にする。
ii) 明確にした目標に対して、実施する支援等の内容、人材育成等の現状分析を行い、課題や問題点を明らかにする。
iii) 明らかになった課題や問題点を具体的に解決するため、単年度の事業計画を策定するほか、必要に応じて中・長期的な事業計画を策定する。
iv) 計画の実施状況の把握や評価、見直しを定期的に行う。
v) 支援等の提供に関わる事項については、職員、生みの親及び養親希望者等に周知し、理解を促すための取組みを行う。
(3) 養子縁組のあっせん・相談支援の質の向上への取組み
・養子縁組のあっせん・相談支援の質を向上させるためには、日々の実践における不断の努力に加え、自己評価の実施、第三者評価の受審、苦情相談の内容に基づく改善活動等を、総合的・継続的に実施する必要がある。
・民間あっせん機関は、自己評価、第三者評価等の結果を踏まえ、課題を明確にし、職員の参画のもとで改善策を策定して実行する。こうしたプロセスを繰り返し、課題の解決・改善に計画的・継続的に取り組まなければならない。
3.民間あっせん機関の運営管理
(1) 養子縁組あっせん責任者の責任とリーダーシップ
・民間あっせん機関は、単に養親希望者へ児童をあっせんすることにとどまらず、生みの親に対する相談支援、養親希望者への研修、児童や養親希望者に対する家庭調査、養子縁組成立後の養親及び養子となった児童(養子となった後、18歳に達した者を含む。以下同じ。)に対する継続的な支援を行わなければならない。
・民間あっせん機関がこうした幅広い業務を適正に実施するため、養子縁組あっせん責任者は、自らの役割と責任を職員に対して明らかにし、組織においてリーダーシップを発揮することが求められる。
・他方、民間あっせん機関が幅広い業務を適正に実施するためには、関係機関と連携し、自らの組織の力量や事業の特徴に応じて、適切な役割分担を行っていくことが求められることから、養子縁組あっせん責任者が中心となって、関係機関の連携や調整を行う。
・養子縁組あっせん責任者は、遵守すべき法令等を正しく理解し、これを遵守することにおいて組織全体をリードしなければならない。このため、自ら養子縁組あっせん責任者に係る研修に参加するとともに、職員を研修に参加させるなど、法令遵守のための具体的な取組みを行なわなければならない。
・養子縁組あっせん責任者は、養子縁組のあっせんと相談支援の質の向上に意欲を持ち、組織としての取組みに十分な指導力を発揮する。養子縁組のあっせん・相談支援の質の現状について定期的、継続的に評価・分析を行い、職員の意見を取り入れて質の向上に関する具体的な体制を構築する。
(2) 必要な人材の確保・育成
・児童の最善の利益の尊重や養子縁組の理念について、職員一人ひとりが理解し、その実現に向けて適切な取組みを行うことが求められる。そのため、民間あっせん機関は、基本方針や事業計画の中に、職員に求める基本姿勢や養子縁組支援の考え方を明示する。
・民間あっせん機関は、支援の質を確保するために、必要な人材の確保、管理職が適正に配置される組織体制の充実及び強化、関係機関との連携に努め、適切な養子縁組のあっせん、相談支援が提供できる体制を構築する。
・民間あっせん機関は、基本方針や事業計画に基づき職員育成計画を策定し、計画に基づいた取組みを行う。具体的には、職員の援助技術の水準、知識の量と質、養子縁組のあっせん及び相談支援に関係する実務経験、専門資格を取得する必要性の有無などを把握し、研修を計画的に受講させるなど、職員の資質向上に努める。
・職員が自由に意見を表明して組織の運営及び決定に関与でき、かつ、職員がひとりで問題を抱え込むことなく、養子縁組あっせん責任者や他の職員にいつでも相談できる環境を整える。また、養子縁組あっせん責任者については、職員からの相談に応じるほか、困難な事例や複数の事例を抱える職員等に対して、事例の進捗状況や問題が生じていないか逐次確認するとともに、必要に応じて積極的に助言を行う。
(3) 運営の非営利性の確保
・法第7条第1項第5号において、「営利を目的として事業を行おうとするものでないこと」が養子縁組あっせん事業の許可基準とされており、営利を目的とした事業ではないことが明らかでなければ、事業を営むことは認められない。そのため、民間あっせん機関は、自らの事業の非営利性について説明責任を果たすこと。
・民間あっせん機関は、法第9条及び規則第3条の規定により、手数料を徴収するに当たっては、事前に金額の根拠や使途を明らかにしなければならない。また、それらが明らかでない費用を実費と称して徴収してはならない。
・手数料の金額の根拠や使途を示すに当たっては、養親希望者や生みの親が手数料の内訳を容易に理解できるよう、当該内訳について一覧可能な書類を提示するとともに、可能な限りこれを裏付ける領収書等を併せて示すこと。また、手数料を受領した場合は、領収書を発行する。
・民間あっせん機関は、公的支援の活用や効率的な事業運営により、養親希望者や生みの親が負担する手数料に関わる事業運営に要する費用の抑制に努めるとともに、人件費や事務費等については、真に必要なものに限定する。
・民間あっせん機関は、寄付金、会費の取扱いについて、指針を遵守する。
・民間あっせん機関は、人身売買又は営利を目的とした養子縁組のあっせんはもとより、それらを示唆する宣伝広告や事業についての説明など、自らが行う事業の非営利性が疑われる運営を行ってはならない。
・民間あっせん機関は、生みの親からの相談に応じ、養親希望者を選定する立場であることに鑑み、広報活動への参加(広報媒体への出演を含む。)や、養育施設での労務の提供を求めるなど、養子縁組のあっせんに不当な条件を課してはならない。
(4) 運営の透明性の確保
・民間あっせん機関は、運営の透明化についての不断の努力が求められることから、定款や業務方法書、手数料の算定の基準その他の養子縁組のあっせんに係る業務に関する事項を、ホームページへの掲載等の適切な方法により、あらかじめ公表する。
・また、養子縁組のあっせんを申し込もうとする養親希望者及び生みの親に対しては、電子メールの送信や書面の交付等により、あらかじめ、養子縁組のあっせんに関する手数料の額、養子縁組のあっせん業務の実施方法について情報提供を行う。特に、手数料の額は前年度実績等に基づき標準的な徴収見込み額やその内訳を示すとともに、養子縁組のあっせんを中止した場合の費用負担の取扱いについても、事前に丁寧に説明する。
・民間あっせん機関は、養子縁組のあっせんに係る契約書、手数料の請求書や明細書、手数料の積算根拠となる領収書等を、個別の事例毎に、当該養子縁組のあっせん終了後、少なくとも5年間は保管する。
・民間あっせん機関は、法第32条及び規則第18条の規定により、都道府県等に対して行う、養子縁組のあっせんに係る報告とは別に、事業所毎の事業報告書を、毎事業年度終了後2月以内に都道府県等に提出しなければならない。
・民間あっせん機関は、業務の質について自ら評価を行うとともに、法第21条第1項の評価機関による評価を受け、事業の透明性を確保する観点からそれらの結果について公表しなければならない。
(5) 関係機関との連携・協働
・民間あっせん機関は、生みの親の妊娠相談から、養子縁組成立後の養子となった児童が出自を知るための支援まで、養子縁組に関わる相談支援の全てを単独で実施することは困難であるとともに、中立的な立場からの支援を行うため、児童の最善の利益を図る観点から、関係機関と連携・協働することを前提として事業を行うことが必要である。
・そのため、民間あっせん機関は、自らの役割や、機能を達成するために必要となる関係機関を含む社会資源を認識するとともに、業務に携わる職員がこれを常に活用できるよう、関係する情報を収集し、業務方法書等により共有する。
・また、民間あっせん機関は、個々の事例において、児童、生みの親、養親希望者並びに養子縁組成立後の養親及び養子となった児童に対して、関係機関による支援が利用可能であることについて適切に情報提供するとともに、関係機関と連携・協働して支援できる体制を構築するよう努めなければならない。
・関係機関との連携に際しては、必要に応じて公的機関や他の民間あっせん機関に児童、生みの親、養親希望者並びに養子縁組成立後の養親及び養子となった児童に関する情報を提供し、または情報提供を受けることがある旨をこれらの者に説明し、事前に同意を得るように努める。
・民間あっせん機関は、養子縁組あっせん事業の業務の一部を他の民間機関等に委託する場合には、当該民間機関等が法第6条第1項の許可を得ていることなどの確認はもとより、養子縁組あっせんに係る法令及びその他の関係法令を遵守していることの確認を行わなければならない。
[第Ⅱ部 各論]
4.適切な養子縁組のあっせん・相談支援の実施
(1) 児童の最善の利益の尊重
①実践プロセスにおける説明と同意に基づく意思決定
・民間あっせん機関は、生みの親から養子縁組のあっせんに関する相談を受け、具体的に養子縁組の検討を進める段階においては、生みの親と必ず面接をして事情を聴取する。また、必要に応じて、生みの親の家族や親族との面接を行う。それにより、生みの親の養育力やその環境等についてアセスメントを行う。
・生みの親の置かれた状況を把握した上で、その経済的な問題や子育ての問題を解決するため、公的な支援を受けながら自ら養育することや、児童の里親委託等の選択肢をとることも検討すべきことについて十分な理解が得られるよう、丁寧に説明を行う。
・生みの親の状況に応じ、必要な情報提供を行う。具体的には、妊婦検診への助成や入院助産に関する情報、妊娠中の生活場所の確保に関する情報、出産に関する費用の補助、生活費等経済的な支援に関する情報、児童扶養手当等のひとり親家庭への支援に関する情報、就労支援、市町村の法律相談や法テラス等の法律相談窓口に関する情報といった、幅広く多様な社会資源に関する情報提供を行うことが考えられる。
・生みの親への説明や情報提供と並行し、必要に応じて、出生前も含め、関係機関に連絡をとるとともに、当該関係機関への相談に同行するなどの必要な措置を講じる。
・相談支援の結果、生みの親が自ら児童を養育する意思を固めた場合であって、生みの親や親族の生活状況、収入等の養育環境を確認し、児童の安全や健全な育成を確保する観点から支援が必要と認められる場合には、生みの親に対し、関係機関の相談窓口等について情報提供を行うとともに、これらの者を関係機関につなげるように努めなければならない。なお、要保護児童対策地域協議会を活用して、これらの機関と民間あっせん機関との間で、当該児童及び生みの親の個人情報を共有することも考えられる。
・生みの親が養子縁組のあっせんを希望する場合についても、生みの親の状況に応じて、相談窓口等の情報提供や関係機関への連絡等を行う。
・養子縁組のあっせんに関する生みの親の同意については、養子縁組の制度や必要となる手続き、養子縁組の成立によって生じる効果、あっせんの手続き、徴収する手数料及び同意撤回時の費用負担の取扱い等について、対面により、あらかじめ丁寧に説明し、十分な理解を得た上で、書面により確認する。
・15歳以上の児童を養子とする養子縁組のあっせんを行う場合は、当該あっせんに係る児童の状況や抱える課題は、乳幼児に比して多様であることから、その意向や同意について、個別的に丁寧な説明と十分な理解のもとで確認する。
・15歳に達していない児童についても、年齢と発達に応じて、丁寧な説明と十分な理解のもとでその意向を確認する。また、自ら意思を表せない乳幼児等の場合には、権利擁護について特に配慮しなければならない。
・また、生みの親が熟慮した上で意思を決定できるよう、初回の相談・面談の際に養子縁組に関する詳細な情報を提供した場合であっても、その場で意思の決定を迫ることはしないなどの配慮をしなければならない。
・同意の確認については、特に、指針に掲げる生みの親の熟慮や養子縁組の同意の撤回を妨げる行為は厳に慎まなければならない。
・具体的には、養子縁組への同意の翻意により手数料を請求する可能性がある場合、そのことが生みの親の養子縁組への意思決定に対する不当な圧力にならないよう、経済的に困窮している生みの親に対しては児童相談所への相談を勧めるなどの配慮をしなければならない。また、生みの親等が同意の撤回を希望する場合に、手数料の支払いを児童の引渡しの条件にするなど、同意の撤回を事実上困難にするような取決めは行ってはならない。
・生みの親に対して、住居の確保や金品の提供・貸付け等の生活支援を行うことは、生みの親の意思決定に影響を及ぼすおそれがある。そのため、生みの親が生活支援を必要とする場合には、できる限り適切な公的支援につなぐなど、関係機関と連携し、当該支援の提供が養子縁組の意思決定に不当に影響しないよう配慮しなければならない。また、民間あっせん機関が、養子縁組のあっせんとは切り離しつつ、直接生活支援を行う場合であっても、そうした支援を受けることが、生みの親の意思決定に影響する可能性があるため、関係機関による公的支援を利用することで提供可能な支援については、その趣旨を丁寧に説明の上、公的支援の利用を優先する。なお、その際、生活支援に要した費用を手数料として養親希望者等から徴収することはできないことに留意する。
・生みの親が妊娠中に養子縁組を希望し、新生児のあっせんを予定している場合でも、生みの親の心身の状態が出産前後で大きく変化することを踏まえ、法第27条の規定により、少なくとも、養親希望者と児童が面会することについての同意及び縁組成立前養育を行うことについての同意は、児童の出生後に、あっせんの各段階で得る。
・出産前に胎児のエコー写真を養親希望者に渡すことや、養親希望者による命名を優先させるといった約束等は、生みの親の意思決定に影響を与え、児童の最善の利益の観点から問題を生じ得る行為である。また、養子縁組のあっせんの中断は、児童や養親希望者に喪失感を与えるおそれがあることから、生みの親の意思を丁寧に確認しながら、養親希望者に対して必要以上に期待を抱かせることのないよう配慮する。
・特に、縁組成立前養育が開始され、児童と養親希望者との間に一定の愛着関係が形成された後に生みの親が同意を撤回した場合には、児童の心身への影響や養親希望者の喪失感が大きいことから、民間あっせん機関は、縁組成立前養育を行うことの同意を事前に得ている場合であっても、その開始に先立ち、改めて生みの親の同意を確認するよう努める。
・養親希望者に対しては、養子縁組に関する詳細な説明と併せて、以下に例示する関連事項について十分な情報提供及び説明を行い、その内容を理解していることを確認するとともに、理解が不十分な者には養子縁組のあっせんを行わないこと。
i) 養子縁組成立までの生みの親の同意の撤回の可能性
ii) 児童の疾病や障害の可能性
iii) 生みの親との接触に関する取決め
iv) 手数料等の費用
v) 養親希望者の適性の判断基準
vi) 児童の養育開始後の支援内容
vii) 研修の案内
viii) 児童の養育に当たり必要な準備
ix) 家庭裁判所への申立方法
x) 児童の出自を知る権利
xi) 縁組成立後の支援内容
②児童・養親希望者のアセスメントとマッチング
・民間あっせん機関は、養子縁組のあっせんを行う前に、養親希望者及びその全ての同居家族と面会を行うとともに、少なくとも一度は養親希望者の家庭訪問を行い、養親希望者及びその全ての同居家族の意向、家庭状況等を把握し、養親として適切な養育ができることを確認する。
・養親希望者の適性については、将来の見通しを具体的に話し合いながら、慎重に適否を検討することが重要であり、養子縁組あっせん責任者を含めた複数の職員が、必要に応じて医療職、心理職等の助言を得ながら、業務方法書に明文化された項目に基づいて児童及び養親希望者の丁寧なアセスメントを行い、業務方法書に明文化された組織的な検討を行うなどの適切な手続きによりマッチングを実施する。
・養親希望者の選定について、生みの親の意見や希望のみによって行うことや、養親希望者に十分な情報や熟慮期間を与えずに行うこと、養親希望者に、児童の受入れについて一切の選択の余地を認めない形で行うことはすべきではなく、専門的な知識及び技術に基づき、児童の最善の利益を最大限考慮しながら行わなければならない。
・国際的な養子縁組のあっせんについては、児童相談所や他の民間あっせん機関と連携して国内在住の養親希望者を探すなど、まず、国内における養子縁組の可能性を十分に模索し、それでもなお日本国内での養子縁組が見込めない場合に限り、認められるものである。なお、国際的な養子縁組を行う場合であっても、児童と養親希望者のマッチングにおいて適正な手続きがなされることや、養子縁組成立後に至るまで、相手先国において適切な支援が提供されることを確認した上で養子縁組のあっせんを行うべきである。
③あっせん前の児童の一時的な養育、養親希望者への情報提供
・養親希望者が児童の養育を開始するまでの間、民間あっせん機関が養子縁組のあっせんに係る児童を養育することが想定される場合には、児童が適切に養育されるよう、あらかじめ養育施設の設置や人員の確保、乳児院、児童養護施設その他の公的に認可等された施設又はこれと同等の水準を満たす施設(以下「乳児院等」という。)との協定の締結等を行った上で、一時的な養育の方法について、業務方法書に記載しなければならない。
・民間あっせん機関が一時的に児童を養育する場合には、乳児院等に入所させることが望ましいが、それができない場合であっても、できる限り乳児院等に近い環境において児童を養育できるよう、安全に配慮した職員配置、設備及び衛生管理等の整備を行い、養育環境の改善に努める。また、必要に応じて、児童相談所及び福祉事務所をはじめとする関係機関と連携を図る。
・特に、新生児や、疾病や障害のある乳幼児等、生命の維持や安全に配慮を要する児童の場合、医療機関をはじめとする関係機関と連携して、医療行為を行う際に生みの親の同意を適切に確認できるような連絡体制を確保するなど、その保護と適切な養育環境の確保を図ることが必要である。
・民間あっせん機関(民間あっせん機関より委託を受けた者を含む。)は、児童を3ヶ月以上(乳児については1ヶ月以上)生みの親以外の養育者と同居させる場合には、児童福祉法第30条の規定により、同居児童の届出を行わなければならない。
・民間あっせん機関は、適性が確認された養親希望者による児童の養育を開始するに当たり、その時点での家庭状況を再度確認し、児童との交流や関係調整を十分に行う。また、児童の養育環境や心身の健康に関する情報、養子縁組を必要とする理由その他児童の養育に必要な情報について、生みの親から聴き取るなどして十分に把握し、養親希望者に対して、児童の養育を開始する前に提供する。
④養親希望者による養育開始後の支援
・養親希望者による養育が開始された後、養親希望者が安心して児童を養育することができるよう、きめ細かな相談支援を提供するとともに、養親希望者と児童を定期的に訪問し、監護の状況を確認する。相談支援に当たっては、必要に応じて養親希望者の居住地を管轄する児童相談所をはじめとする関係機関と連携を図る。
・養親希望者が、児童を3ヶ月以上(乳児については1ヶ月以上)同居させる場合には、児童福祉法第30条の規定により、市町村を経て、都道府県等に対し、同居児童の届出を行わなければならない。このため、民間あっせん機関は、縁組成立前養育の開始に際し、届出を受けた都道府県等により支援が提供される場合があることの説明を行うなど、養親希望者が届出を遅滞なく行うよう勧奨するとともに、届出を受けた都道府県等による調査等に協力するよう説明を行う。また、届出の有無の確認を行う。
・民間あっせん機関は、養親希望者が児童の養育を開始した場合には、法第32条第3項の規定により、養育を開始した日から1ヶ月以内に、当該児童及び養親希望者の居住地を管轄する都道府県等に対し、養親希望者による養育が開始したことを届け出るなど、必要な支援が遅滞なく提供されるよう連携体制を整える。
・縁組成立前養育における監護の状況等を踏まえ、児童の最善の利益を図る観点から、法律上の親子関係を成立させることが望ましいと考えられる場合、速やかに養子縁組に係る家庭裁判所への申立て等の手続きをとるよう、養親希望者に指導及び助言を行う。
⑤縁組成立前養育が中止された場合の支援
・支援を行っても、養親希望者と児童の関係が良好でない等のために縁組成立前養育が中止された場合には、民間あっせん機関は、児童の保護を適切に行うとともに、必要に応じて児童相談所をはじめとする関係機関に連絡をするなどの適切な対応をとる。
・養親希望者に対し、縁組成立前養育の中止を求めたときは、責任をもって児童の引き渡しを受け、当該児童の監護の権利を有する者に引き渡すこと、児童相談所に要保護児童通告を行うことその他の児童の保護のための適切な措置を講ずる。
・また、児童と養親希望者の双方に対して丁寧なケアを行う。その際、縁組成立前養育が中止された養親希望者を次の養子縁組のあっせんで優先的に取り扱うなどの配慮をすることは児童の最善の利益の観点から適切ではなく、養子縁組のあっせんは、あっせんを行う児童に適した養親希望者を選定しなければならない。
・児童を次の養親希望者にあっせんするに当たっては、縁組成立前養育中止後の児童の状況を勘案しながら、養親希望者の選定をより丁寧に行うなどの配慮をする。
⑥養子縁組成立後の支援
・養子縁組の成立後においても、養親は様々な問題を抱える。しかし、養親としての適格性を疑われることを懸念して、子育ての悩みを訴えず、閉鎖的な養育を行うおそれがあるほか、身近に同じ境遇で子育てをしている者が少なく、真実告知といった、養親特有の悩みを抱え込みやすくなる。そのため、民間あっせん機関は、養親が必要なときに安心して相談できる支援体制を構築することが必要であり、自ら支援を行うと同時に、気持ちを丁寧に聞きながら養親や養子となった児童のニーズを把握し、適切な支援機関との協働を行う。
・自ら行う支援としては、養親及び養子となった児童への定期的・継続的な訪問を行うなど、関係性の維持を図りつつ、真実告知のタイミング等の児童の発達段階に応じた悩みに対し助言すること等が挙げられる。こうした支援は、養子縁組成立の日から6ヶ月が経過して、法第30条及び第32条の規定による都道府県等への報告を終えた後も、継続的に行うことが望ましい。
・遠隔地の養親及び養子となった児童への支援では、定期的・継続的な訪問等の直接の支援が困難である場合も考えられるため、養子縁組の成立前から、養親の居住地を管轄する児童相談所及び市区町村をはじめとする関係機関と養親との関係作りを行うなど、継続的な支援が行えるような体制を整える。
・養親及び養子となった児童に対する支援は、就職、結婚、出産、介護等、人生の様々な段階で生じる課題に対応するために必要なものであり、長期的視野に立って取り組むことが求められる。
・養子となった児童から、自らの出自に関する情報を知りたいとの相談があった場合には、丁寧に相談に応じた上で、当該児童の年齢その他の状況を踏まえ、適切な助言を行いつつ、対応する。
・養子縁組の成立後においても、生みの親に対する心理的サポートは重要である。また、生みの親が生活を立て直すために必要な経済的支援、就労支援及び生活支援等に関する情報提供を行うとともに、必要に応じ、福祉事務所をはじめとする関係機関につなげる。
(2) 養子縁組のあっせん及び相談支援の質の確保
①養子縁組のあっせん及び相談支援の実施方法
・民間あっせん機関が作成し、公表しなければならない業務方法書は、養子縁組のあっせん及び相談支援の標準的な実施方法を文書化すべきものであり、生みの親や養親希望者にその内容が十分に説明され、これに則った養子縁組のあっせん及び相談支援が実施されなければならない。また、その内容について、定期的に検証し、必要に応じて見直しを行う。
・業務方法書には、養子縁組のあっせん及び相談支援の手順と方法をわかりやすく記載する。特に、生みの親への相談支援、同意の確認、養親希望者の適性評価のための調査や、児童と養親希望者の選定及び児童の一時的養育や出自に関する記録の保存に係る方法については、それぞれに必要な様式を定めるなど、具体的な業務内容と留意事項を標準化し、対応する職員や個々の事例によって提供される支援の質が異なることのないようにする。
②養親希望者の質の確保及び向上に向けた取組み
・民間あっせん機関は、養親希望者の適性について、年齢や職業の有無等の外形的な条件だけで判断するのではなく、児童を養育する上での強みや課題を総合的に勘案して、様々な観点から評価・判断すべきである。
・特に、養子縁組のあっせんを希望する理由や、養子縁組のあっせんを申し込むに至った経緯(養親希望者の生育歴や、養子縁組への思い、不妊治療等の経緯の中で抱えてきた葛藤や喪失感等)については、養親希望者の適性や児童を養育する上での強み、課題を評価するために重要な情報であり、丁寧な聴取りを行う。
・養親希望者に関する様々な情報を適正に評価するためには、様式等において、確認すべき内容を明示するとともに、複数回の面接、家庭訪問の実施、他の同居家族や親族の意向の確認等、評価の組織的な検討及び決定の方法が具体的に定められ、その方法に則り適切な手順で実施されるべきである。なお、養親希望者の選定に当たっては、外部の有識者を含む審査会を設定し、客観性を確保するなどの工夫も考えられる。
・養親希望者が受講する研修においては、民間あっせん機関は、養親希望者に対し、児童の特性や発達に関する理解を深めさせ、真実告知の重要性について理解を促す。また、児童への関わり方について、養育実習やロールプレイを取り入れるなど実践的に習得させるとともに、研修への取組状況やその内容についての理解等を通じて、養親希望者の強み及び課題を把握すべきである。このため、当該研修の実施に当たっては、そうした観点も踏まえたカリキュラムを作成するよう留意するとともに、社会福祉法人等への委託により研修を実施した場合においても、養親希望者及び研修担当者から逐次報告を受け、養親希望者の状況の把握に努める。
③養子縁組のあっせん及び相談支援の記録と情報管理
・民間あっせん機関は、規則第7条第1項に規定する記載事項を適切に記載した帳簿を備え付けるとともに、養子縁組のあっせん及び相談支援に必要な情報を職員間で共有する。
・また、児童、生みの親及び養親希望者等に関する情報収集、保管及び使用に関するルールを業務方法書において明文化し、情報管理を適正に行う。特に、児童に関する情報、生みの親に関する情報及び養子縁組の経緯については、児童が自らの出自を知るために重要な資料であり、必要な情報を十分に収集し、記録及び保管する。
・帳簿については、永続的な保管体制を確立し、不慮の災害等による滅失防止等に備えて、十分な対策をとるほか、事業の許可が取り消され又は事業を廃止した等の場合には、都道府県等又は他の民間あっせん機関に引き継ぐ。そのため、養親希望者及び生みの親に対し、記録の保管や引継ぎの可能性について、事前に説明し理解を求める。
・帳簿の情報は、児童に関する情報であるとともに、生みの親に関する情報でもあることが多い。そのため、将来、養子となった児童から自らの出自に関する情報を知りたいとの相談があった場合、その求めに応じ、帳簿の一定の情報が提供される可能性があることを、生みの親に対し、あっせんの段階で説明して理解を求め、あらかじめ同意を得る。
・養子縁組のあっせん及び相談支援の記録はセンシティブ情報であり、プライバシー保護のため、関係者の情報管理の徹底を図ることが必要である。
④児童、生みの親及び養親希望者が意見等を述べやすい体制の確保
・児童、生みの親及び養親希望者が意見等を述べやすく、相談しやすい体制が確保されていることは重要であり、相談方法や相談相手を選択できる体制を整備するとともに、その体制をこれらの者に周知する必要がある。
・また、苦情解決に関する体制についても、同様に整備及び周知することが求められる。具体的には、苦情解決責任者や苦情受付担当者、第三者委員を設置するとともに、文書や掲示によりその仕組みを分かりやすく周知する等の取組みを行うことが考えられる。
・併せて、意見や苦情等に対する対応マニュアルを整備し、組織的かつ迅速に対応することや、必要に応じて組織の運営改善に反映させること、要望に応えられない場合にも、その理由を丁寧に説明することが求められる。
・民間あっせん機関は、養親希望者を選定する立場であることに鑑み、意見や苦情を述べたことをもって養子縁組のあっせんを行わないなど、養親希望者が意見等を述べにくくするような言動は厳に慎まなければならない。
⑤安心・安全な養子縁組のあっせん、相談支援の実施のための取組み
・安心・安全な養子縁組のあっせん及び相談支援を実施するために、児童、生みの親、養親希望者、養子縁組成立後の養親及び養子となった児童への支援の過程で起こり得る緊急事態を想定し、事故対応マニュアル等を作成し、職員に周知するなどにより、リスクマネジメント体制を構築する。また、緊急時における関係機関との連絡・協力体制をあらかじめ構築し、安心・安全な事業運営のため万全を期す。
・養子縁組のあっせんに係る児童は要支援状態にあるという前提のもと、児童及び生みの親に対し、自ら継続的な心理的なケアを含む支援を行うとともに、関係機関とも連携した支援体制の構築を図る。また、養子縁組のあっせん及び相談支援の各プロセスにおいて、必要に応じ、連携先の関係機関に所属する専門職の助言を得る。
(別紙3)〈自己評価結果入力シート様式例〉
(別紙4)〈自己評価結果公表様式例〉
(別紙5)〈第三者評価結果報告書様式例〉