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○公認心理師法第42条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について

(平成30年1月31日)

(/29文科初第1391号/障発0131第3号/)

(各都道府県知事あて文部科学省初等中等教育局長、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)

(印影印刷)

公認心理師法(平成27年法律第68号)第42条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準については、別添のとおりとしたので、通知する。

ついては、適正な実施に遺憾なきを期されるとともに、都道府県教育委員会、管内市区町村、関係団体等に周知願いたい。

[本件担当]

文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課

電話:03―5253―4111(内線4950)

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部

精神・障害保健課 公認心理師制度推進室

電話:03―5253―1111(内線3113、3112)

別添

公認心理師法第42条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準

1.本運用基準の趣旨

公認心理師法(平成27年法律第68号。以下「法」という。)においては、「公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない」(法第42条第1項)とされているほか、「心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない」(同条第2項)とされている。

本運用基準は、公認心理師が法第2条各号に定める行為(以下「支援行為」という。)を行うに当たり、心理に関する支援を要する者(以下「要支援者」という。)に、法第42条第2項の心理に関する支援に係る主治の医師(以下単に「主治の医師」という。)がある場合に、その指示を受ける義務を規定する法第42条第2項の運用について、公認心理師の専門性や自立性を損なうことのないようにすることで、公認心理師の業務が円滑に行われるようにする観点から定めるものである。

2.基本的な考え方

公認心理師は、その業務を行うに当たって要支援者に主治の医師があるときは、その指示を受けなければならないこととされている(法第42条第2項)。

これは、公認心理師が行う支援行為は、診療の補助を含む医行為には当たらないが、例えば、公認心理師の意図によるものかどうかにかかわらず、当該公認心理師が要支援者に対して、主治の医師の治療方針とは異なる支援行為を行うこと等によって、結果として要支援者の状態に効果的な改善が図られない可能性があることに鑑み、要支援者に主治の医師がある場合に、その治療方針と公認心理師の支援行為の内容との齟齬を避けるために設けられた規定である。

もとより、公認心理師は、要支援者の状況の正確な把握に努めているものであるが、特に要支援者に主治の医師がある場合には、要支援者の状況に関する情報等を当該主治の医師に提供する等により、公認心理師が主治の医師と密接に連携しながら、主治の医師の指示を受けて支援行為を行うことで、当該要支援者の状態の更なる改善につながることが期待される。

なお、これまでも、心理に関する支援が行われる際には、当該支援を行う者が要支援者の主治の医師の指示を受ける等、広く関係者が連携を保ちながら、要支援者に必要な支援が行われており、本運用基準は、従前より行われている心理に関する支援の在り方を大きく変えることを想定したものではない。

3.主治の医師の有無の確認に関する事項

公認心理師は、把握された要支援者の状況から、要支援者に主治の医師があることが合理的に推測される場合には、その有無を確認するものとする。

主治の医師の有無の確認をするかどうかの判断については、当該要支援者に主治の医師が存在した場合に、結果として要支援者が不利益を受けることのないよう十分に注意を払い、例えば、支援行為を行う過程で、主治の医師があることが合理的に推測されるに至った場合には、その段階でその有無を確認することが必要である。

主治の医師に該当するかどうかについては、要支援者の意向も踏まえつつ、一義的には公認心理師が判断するものとする。具体的には、当該公認心理師への相談事項と同様の内容について相談している医師の有無を確認することにより判断する方法が考えられる。なお、そのような医師が複数存在することが判明した場合には、受診頻度や今後の受診予定等を要支援者に確認して判断することが望ましい。また、要支援者に、心理に関する支援に直接関わらない傷病に係る主治医がいる場合に、当該主治医を主治の医師に当たらないと判断することは差し支えない。

また、主治の医師の有無の確認は、原則として要支援者本人に直接行うものとする。要支援者本人に対する確認が難しい場合には、要支援者本人の状態や状況を踏まえ、その家族等に主治の医師の有無を確認することも考えられる。いずれの場合においても、要支援者の心情を踏まえた慎重な対応が必要である。

4.主治の医師からの指示への対応に関する事項

(1) 主治の医師からの指示の趣旨

主治の医師からの指示は、公認心理師が、主治の医師の治療方針とは異なる支援行為を行うこと等によって要支援者の状態に効果的な改善が図られないこと等を防ぐため、主治の医師と公認心理師が連携して要支援者の支援に当たることを目的とするものである。

主治の医師からの指示は、医師の掌る医療及び保健指導の観点から行われるものであり、公認心理師は、合理的な理由がある場合を除き、主治の医師の指示を尊重するものとする。

具体的に想定される主治の医師からの指示の内容の例は、以下のとおりである。

・ 要支援者の病態、治療内容及び治療方針について

・ 支援行為に当たっての留意点について

・ 直ちに主治の医師への連絡が必要となる状況について 等

(2) 主治の医師からの指示を受ける方法

公認心理師と主治の医師が、同一の医療機関において業務を行っている場合、主治の医師の治療方針と公認心理師の支援行為とが一体となって対応することが必要である。このため、公認心理師は、当該医療機関における連携方法により、主治の医師の指示を受け、支援行為を行うものとする。

公認心理師と主治の医師の勤務先が同一の医療機関ではない場合であって、要支援者に主治の医師があることが確認できた場合は、公認心理師は要支援者の安全を確保する観点から、当該要支援者の状況に関する情報等を当該主治の医師に提供する等、当該主治の医師と密接な連携を保ち、その指示を受けるものとする。

その際、公認心理師は、要支援者に対し、当該主治の医師による診療の情報や必要な支援の内容についての指示を文書で提供してもらうよう依頼することが望ましい。

また、公認心理師が、主治の医師に直接連絡を取る際は、要支援者本人(要支援者が未成年等の場合はその家族等)の同意を得た上で行うものとする。

(3) 指示への対応について

公認心理師が、心理に関する知識を踏まえた専門性に基づき、主治の医師の治療方針とは異なる支援行為を行った場合、合理的な理由がある場合は、直ちに法第42条第2項に違反となるものではない。ただし、この場合においても、当該主治の医師と十分な連携を保ち、要支援者の状態が悪化することのないよう配慮することとする。

なお、公認心理師が主治の医師の指示と異なる方針に基づき支援行為を行った場合は、当該支援行為に関する説明責任は当該公認心理師が負うものであることに留意することとする。

公認心理師が主治の医師から指示を受ける方法は、(2)に示すとおり、公認心理師と主治の医師との関係等に応じて適切なものである必要があるが、指示の内容には要支援者の個人情報が含まれることに十分注意して指示を受けることとする。

公認心理師は、主治の医師より指示を受けた場合は、その日時、内容及び次回指示の要否について記録するものとする。

公認心理師が所属する機関の長が、要支援者に対する支援の内容について、要支援者の主治の医師の指示と異なる見解を示した場合、それぞれの見解の意図をよく確認し、要支援者の状態の改善に向けて、関係者が連携して支援に当たることができるよう留意することとする。

(4) 主治の医師からの指示を受けなくてもよい場合

以下のような場合においては、主治の医師からの指示を受ける必要はない。

・ 心理に関する支援とは異なる相談、助言、指導その他の援助を行う場合

・ 心の健康についての一般的な知識の提供を行う場合

また、災害時等、直ちに主治の医師との連絡を行うことができない状況下においては、必ずしも指示を受けることを優先する必要はない。ただし、指示を受けなかった場合は、後日、主治の医師に支援行為の内容及び要支援者の状況について適切な情報共有等を行うことが望ましい。

(5) 要支援者が主治の医師の関与を望まない場合

要支援者が主治の医師の関与を望まない場合、公認心理師は、要支援者の心情に配慮しつつ、主治の医師からの指示の必要性等について丁寧に説明を行うものとする。

5.その他留意すべき事項

(1) 公認心理師は、主治の医師からの指示の有無にかかわらず、診療及び服薬指導をすることはできない。

(2) 本運用基準は適宜見直しを行っていくものとする。

<参照条文>

○公認心理師法(平成二十七年法律第六十八号)(抄)

(定義)

第二条 この法律において「公認心理師」とは、第二十八条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。

一 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。

二 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。

三 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。

四 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。

(連携等)

第四十二条 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。

2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。