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○情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて

(令和元年7月12日)

(基発0712第3号)

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

パーソナルコンピュータ等情報機器を使用して行う作業における労働衛生管理については、平成14年4月5日付け基発第0405001号「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」(以下「VDTガイドライン」という。)により、関係事業場に対して指導を行ってきたところである。

一方、平成14年にVDTガイドラインが発出されて以降、ハードウェア・ソフトウェア双方の技術革新により、職場におけるIT化はますます進行しており、情報機器作業を行う労働者の範囲はより広くなり、作業形態はより多様化しているところである。従来のように作業を類型化してその類型別に健康確保対策の方法を画一的に示すことは困難で、個々の事業場のそれぞれの作業形態に応じきめ細かな対策を検討する必要がある。

このような状況を踏まえ、情報機器を使用する作業のための基本的な考え方は維持しつつ、多様な作業形態に対応するため、事業場が個々の作業形態に応じて判断できるよう健康管理を行う作業区分を見直すこととした。また、情報技術の発達への対応及び最新の学術的知見を踏まえ、別添のとおり情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインをまとめたので、今後は、これにより関係事業場を指導されたい。

なお、本ガイドラインは、事務所において行われる情報機器作業を対象としたものであるが、ディスプレイを備えた当該機器を使用して、事務所以外の場所で行われる情報機器作業等についても、できる限り本ガイドラインに準じて労働衛生管理を行うよう指導されたい。

なお、平成14年4月5日付け基発第0405001号は、廃止する。

別添

情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン

1 はじめに

平成14年4月5日付け基発第0405001号「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(以下「VDTガイドライン」という。)の基本的な考え方は、次のとおりである。

VDT(Visual Display Terminals)作業に従事する者の心身の負担を軽減するためには、事業者が作業環境をできる限りVDT作業に適した状況に整備するとともに、VDT作業が過度に長時間にわたり行われることのないように適正な作業管理を行うことが重要である。

また、作業者が心身の負担を強く感じている場合や身体に異常がある場合には、早期に作業環境、作業方法等の改善を図り、VDT作業を支障なく行うことができるようにする必要がある。そのためには、事業者が作業者の健康状態を正しく把握し、できるだけ早い段階で作業者の健康状態に応じた適正な措置を講ずることができるよう、作業者の健康管理を適正に行うことが重要である。

VDTガイドラインは、このような考え方により、VDT作業における作業環境管理、作業管理、健康管理等の労働衛生管理について、産業医学、人間工学等の分野における知見に基づき、作業者の心身の負担を軽減し、作業者が情報機器作業を支障なく行うことができるよう支援するために事業者が講ずべき措置等について示したものである。

一方、平成14年にVDTガイドラインが策定されて以降、ハードウェア及びソフトウェア双方の技術革新により、職場におけるIT化はますます進行している。これに伴い、ディスプレイ、キーボード等により構成されるVDT機器のみならずタブレット、スマートフォン等の携帯用情報機器を含めた情報機器が急速に普及し、これらを使用して情報機器作業を行う労働者の作業形態はより多様化しているところである。

具体的には、

① 情報機器作業従事者の増大

② 高齢労働者も含めた幅広い年齢層での情報機器作業の拡大

③ 携帯情報端末の多様化と機能の向上

④ タッチパネルの普及等、入力機器の多様化

⑤ 装着型端末(ウェアラブルデバイス)の普及

等の変化が起こっている。

上記①、②については、総務省「通信利用動向調査」によれば、事業所のパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という。)保有率は、平成14年時点で9割に達し、多くの労働者が情報機器を使用する作業に従事している。VDTガイドラインが念頭に置いているパソコン等情報機器を使用して行う作業における健康障害に関する知見は、ここ10年大きな変化はなく、パソコン等情報機器を使用して行う作業における労働衛生管理については、引き続き取組が必要である。

一方、上記③から⑤までに関連し、VDTガイドラインでは、主にデスクトップ型パソコンやノート型パソコンを使って机で集中的に作業するという作業様態が念頭に置かれていたが、「平成29年通信利用動向調査」によれば、例えば、個人のインターネットの利用機器の状況がパソコンよりもスマートフォンが上回るなど、使用される情報機器の種類や活用状況は多様化している。

このような状況を踏まえ、VDTガイドラインの基本的な考え方について変更せず、従来の視覚による情報をもとに入力操作を行うという作業を引き続きガイドラインの対象としつつ、情報技術の発達や、多様な働き方に対応するよう健康管理を行う作業区分を見直し、その他、最新の学術的知見を踏まえた見直しを行った。

なお、VDTの用語が一般になじみがないこと、また、上述のとおり多様な機器等が労働現場で使用されていることを踏まえ、今般「VDT」の用語を「情報機器」に置き換え、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(以下「情報機器ガイドライン」という。)を定めることとした。

2 対象となる作業

対象となる作業は、事務所(事務所衛生基準規則第1条第1項に規定する事務所をいう。以下同じ。)において行われる情報機器作業(パソコンやタブレット端末等の情報機器を使用して、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業をいう。以下同じ。)とし、別紙「情報機器作業の作業区分」(以下「別紙」という。)を参考に、作業の実態を踏まえながら、産業医等の専門家の意見を聴きつつ、衛生委員会等で、個々の情報機器作業を区分し、作業内容及び作業時間に応じた労働衛生管理を行うこととする。

具体的には、別紙に定める

・「作業時間又は作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの(全ての者が健診対象)」については、4から8まで及び9(1)

・「上記以外のもの(自覚症状を訴える者のみ健診対象)」については、4から8まで及び9(2)

に記載された労働衛生管理を原則として行うこと。ただし、全てを一律に行うのではなく、対策の検討に当たっては、3の「対策の検討及び進め方に当たっての留意事項」を参照の上進めること。

なお、情報機器作業における労働衛生管理のほか、心の健康への対処については、「事業場における労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示第3号、平成27年11月30日同第6号)に基づき必要な措置を講ずること。さらに、情報機器作業のみならず、情報機器作業以外の時間も含めた労働時間の把握、長時間労働の抑制に向けた取組、長時間労働者に対する医師の面接指導などによる健康確保についても必要な措置を講じること。

また、事務所以外の場所において行われる情報機器作業、自営型テレワーカーが自宅等において行う情報機器作業及び情報機器作業に類似する作業についても、できる限り情報機器ガイドラインに準じて労働衛生管理を行うよう指導等することが望ましい。

3 対策の検討及び進め方に当たっての留意事項

事務所における情報機器作業が多様化したこと、また、情報機器の発達により、当該機器の使用方法の自由度が増したことから、情報機器作業の健康影響の程度についても労働者個々人の作業姿勢等により依存するようになった。そのため、対策を一律かつ網羅的に行うのではなく、それぞれの作業内容や使用する情報機器、作業場所ごとに、健康影響に関与する要因のリスクアセスメントを実施し、その結果に基づいて必要な対策を取捨選択することが必要である。

したがって、対策の検討に当たっては、

① 情報機器作業の健康影響が作業時間と拘束性に強く依存することを踏まえ、「5 作業管理」に掲げられた対策を優先的に行うこと。

② 情報機器ガイドラインに掲げるそれぞれの対策については、実際の作業を行う労働者の個々の作業内容、使用する情報機器、作業場所等に応じて必要な対策を拾い出し進めること。

を原則的な考え方として進めること。

また、対策を進めるに当たっては、以下の点に留意する必要がある。

① 事業者は、安全衛生に関する基本方針を明確にし、安全衛生管理体制を確立するとともに、各級管理者、作業者等の協力の下、具体的な安全衛生計画を作成すること。また、作成した計画に基づき、作業環境の改善、適正な作業管理の徹底、作業者の健康管理の充実等の労働衛生管理活動を計画的かつ組織的に進めていく必要があること。

② 作業者がその趣旨を理解し、積極的に措置の徹底に協力することが極めて重要であるので、適切な労働衛生教育を実施することが不可欠であること。

③ 情報機器ガイドラインは、主な情報機器作業を対象としたものであるので、各事業場においては、これをもとに、衛生委員会等で十分に調査審議すること。また、情報機器を使用する作業の実態に応じて、情報機器作業に関する労働衛生管理基準を定めるとともに、当該基準を職場の作業実態によりよく適合させるため、衛生委員会等において、一定期間ごとに評価を実施し、必要に応じて見直しを行うことが重要であること。

④ この基準をより適正に運用するためには、労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(平成11年労働省告示第53号)に基づき、事業者が労働者の協力の下に一連の過程を定めて継続的に行う自主的な安全衛生活動の一環として取り組むことが効果的であること。

4 作業環境管理

作業者の心身の負担を軽減し、作業者が支障なく作業を行うことができるよう、次により情報機器作業に適した作業環境管理を行うこと。

(1) 照明及び採光

イ 室内は、できる限り明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにすること。

ロ ディスプレイを用いる場合の書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とし、作業しやすい照度とすること。

また、ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること。

ハ ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、必要に応じて窓にブラインド又はカーテン等を設け、適切な明るさとなるようにすること。

ニ 間接照明等のグレア防止用照明器具を用いること。

ホ その他グレアを防止するための有効な措置を講じること。

(2) 情報機器等

イ 情報機器の選択

情報機器を事業場に導入する際には、作業者への健康影響を考慮し、作業者が行う作業に最も適した機器を選択し導入すること。

ロ デスクトップ型機器

(イ) ディスプレイ

ディスプレイは、次の要件を満たすものを用いること。

a 目的とする情報機器作業を負担なく遂行できる画面サイズであること。

b ディスプレイ画面上の輝度又はコントラストは作業者が容易に調整できるものであることが望ましい。

c 必要に応じ、作業環境及び作業内容等に適した反射処理をしたものであること。

d ディスプレイ画面の位置、前後の傾き、左右の向き等を調整できるものであることが望ましい。

(ロ) 入力機器(キーボード、マウス等)

a 入力機器は、次の要件を満たすものを用いること。

(a) キーボードは、ディスプレイから分離して、その位置が作業者によって調整できることが望ましい。

(b) キーボードのキーは、文字が明瞭で読みやすく、キーの大きさ及びキーの数がキー操作を行うために適切であること。

(c) マウスは、使用する者の手に適した形状及び大きさで、持ちやすく操作がしやすいこと。

(d) キーボードのキー及びマウスのボタンは、押下深さ(ストローク)及び押下力が適当であり、操作したことを作業者が知覚し得ることが望ましい。

b 目的とする情報機器作業に適した入力機器を使用できるようにすること。

c 必要に応じ、パームレスト(リストレスト)を利用できるようにすること。

ハ ノート型機器

(イ) 適した機器の使用

目的とする情報機器作業に適したノート型機器を適した状態で使用させること。

(ロ) ディスプレイ

ディスプレイは、上記ロの(イ)の要件に適合したものを用いること。ただし、ノート型機器は、通常、ディスプレイとキーボードを分離できないので、長時間、情報機器作業を行う場合については、作業の内容に応じ外付けディスプレイなども使用することが望ましい。

(ハ) 入力機器(キーボード、マウス等)

入力機器は、上記ロの(ロ)の要件に適合したものを用いること。

ただし、ノート型機器は、通常、ディスプレイとキーボードを分離できないので、小型のノート型機器で長時間の情報機器作業を行う場合については、外付けキーボードを使用することが望ましい。

(ニ) マウス等の使用

必要に応じて、マウス等を利用できるようにすることが望ましい。

(ホ) テンキー入力機器の使用

数字を入力する作業が多い場合は、テンキー入力機器を利用できるようにすることが望ましい。

ニ タブレット、スマートフォン等

(イ) 適した機器の使用

目的とする情報機器作業に適した機器を適した状態で使用させること。

(ロ) オプション機器の使用

長時間、タブレット型機器等を用いた作業を行う場合には、作業の内容に応じ適切なオプション機器(ディスプレイ、キーボード、マウス等)を適切な配置で利用できるようにすることが望ましい。

ホ その他の情報機器

ロからニまで以外の新しい表示装置や入力機器等を導入し、使用する場合には、作業者への健康影響を十分に考慮して、目的とする情報機器作業に適した機器を適した状態で使用させること。

ヘ ソフトウェア

ソフトウェアは、次の要件を満たすものを用いることが望ましい。

(イ) 目的とする情報機器作業の内容、作業者の技能、能力等に適合したものであること。

(ロ) 作業者の求めに応じて、作業者に対して、適切な説明が与えられるものであること。

(ハ) 作業上の必要性、作業者の技能、好み等に応じて、インターフェイス用のソフトウェアの設定が容易に変更可能なものであること。

(ニ) 操作ミス等によりデータ等が消去された場合に容易に復元可能なものであること。

ト 椅子

椅子は、次の要件を満たすものを用いること。

(イ) 安定しており、かつ、容易に移動できること。

(ロ) 床からの座面の高さは、作業者の体形に合わせて、適切な状態に調整できること。

(ハ) 複数の作業者が交替で同一の椅子を使用する場合には、高さの調整が容易であり、調整中に座面が落下しない構造であること。

(ニ) 適当な背もたれを有していること。また、背もたれは、傾きを調整できることが望ましい。

(ホ) 必要に応じて適当な長さの肘掛けを有していること。

チ 机又は作業台

机又は作業台は、次の要件を満たすものを用いること。

(イ) 作業面は、キーボード、書類、マウスその他情報機器作業に必要なものが適切に配置できる広さであること。

(ロ) 作業者の脚の周囲の空間は、情報機器作業中に脚が窮屈でない大きさのものであること。

(ハ) 机又は作業台の高さについては、次によること。

a 高さの調整ができない机又は作業台を使用する場合、床からの高さは作業者の体形にあった高さとすること。

b 高さの調整が可能な机又は作業台を使用する場合、床からの高さは作業者の体形にあった高さに調整できること。

(3) 騒音の低減措置

情報機器及び周辺機器から不快な騒音が発生する場合には、騒音の低減措置を講じること。

(4) その他

換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去、休憩等のための設備等について事務所衛生基準規則に定める措置等を講じること。

5 作業管理

作業者が、心身の負担が少なく作業を行うことができるよう、次により作業時間の管理を行うとともに、4により整備した情報機器、関連什器等を調整し、作業の特性や個々の作業者の特性に合った適切な作業管理を行うこと。

(1) 作業時間等

イ 一日の作業時間

情報機器作業が過度に長時間にわたり行われることのないように指導すること。

ロ 一連続作業時間及び作業休止時間

一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1回~2回程度の小休止を設けるよう指導すること。

ハ 業務量への配慮

作業者の疲労の蓄積を防止するため、個々の作業者の特性を十分に配慮した無理のない適度な業務量となるよう配慮すること。

(2) 調整

作業者に自然で無理のない姿勢で情報機器作業を行わせるため、次の事項を作業者に留意させ、椅子の座面の高さ、机又は作業台の作業面の高さ、キーボード、マウス、ディスプレイの位置等を総合的に調整させること。

イ 作業姿勢

座位のほか、時折立位を交えて作業することが望ましく、座位においては、次の状態によること。

(イ) 椅子に深く腰をかけて背もたれに背を十分にあて、履き物の足裏全体が床に接した姿勢を基本とすること。また、十分な広さを有し、かつ、すべりにくい足台を必要に応じて備えること。

(ロ) 椅子と大腿部膝側背面との間には手指が押し入る程度のゆとりがあり、大腿部に無理な圧力が加わらないようにすること。

ロ ディスプレイ

(イ) おおむね40cm以上の視距離が確保できるようにし、この距離で見やすいように必要に応じて適切な眼鏡による矯正を行うこと。

(ロ) ディスプレイは、その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにすることが望ましい。

(ハ) ディスプレイ画面とキーボード又は書類との視距離の差が極端に大きくなく、かつ、適切な視野範囲になるようにすること。

(ニ) ディスプレイは、作業者にとって好ましい位置、角度、明るさ等に調整すること。

(ホ) ディスプレイに表示する文字の大きさは、小さすぎないように配慮し、文字高さがおおむね3mm以上とするのが望ましい。

ハ 入力機器

マウス等のポインティングデバイスにおけるポインタの速度、カーソルの移動速度等は、作業者の技能、好み等に応じて適切な速度に調整すること。

ニ ソフトウェア

表示容量、表示色数、文字等の大きさ及び形状、背景、文字間隔、行間隔等は、作業の内容、作業者の技能等に応じて、個別に適切なレベルに調整すること。

6 情報機器等及び作業環境の維持管理

作業環境を常に良好な状態に維持し、情報機器作業に適した情報機器等の状況を確保するため、次により点検及び清掃を行い、必要に応じ、改善措置を講じること。

(1) 日常の点検

作業者には、日常の業務の一環として、作業開始前又は一日の適当な時間帯に、採光、グレアの防止、換気、静電気除去等について点検させるほか、ディスプレイ、キーボード、マウス、椅子、机又は作業台等の点検を行わせること。

(2) 定期点検

照明及び採光、グレアの防止、騒音の低減、換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去等の措置状況及びディスプレイ、キーボード、マウス、椅子、机又は作業台等の調整状況について定期に点検すること。

(3) 清掃

日常及び定期に作業場所、情報機器等の清掃を行わせ、常に適正な状態に保持すること。

7 健康管理

作業者の健康状態を正しく把握し、健康障害の防止を図るため、作業者に対して、次により健康管理を行うこと。

(1) 健康診断

イ 配置前健康診断

新たに情報機器作業を行うこととなった作業者(再配置の者を含む。以下同じ。)の配置前の健康状態を把握し、その後の健康管理を適正に進めるため、情報機器作業の作業区分に応じて、別紙に定める作業者に対し、次の項目について必要な調査又は検査を実施すること。

なお、配置前健康診断を行う前後に一般健康診断(労働安全衛生法第66条第1項に定めるものをいう。)が実施される場合は、一般健康診断と併せて実施して差し支えない。

a 業務歴の調査

b 既往歴の調査

c 自覚症状の有無の調査

(a) 眼疲労を主とする視器に関する症状

(b) 上肢、頸肩腕部及び腰背部を主とする筋骨格系の症状

(c) ストレスに関する症状

d 眼科学的検査

(a) 視力検査

i 遠見視力の検査

ii 近見視力の検査

(b) 屈折検査

(c) 自覚症状により目の疲労を訴える者に対しては、眼位検査、調節機能検査

e 筋骨格系に関する検査

(a) 上肢の運動機能、圧痛点等の検査

(b) その他医師が必要と認める検査

ロ 定期健康診断

情報機器作業を行う作業者の配置後の健康状態を定期的に把握し、継続的な健康管理を適正に進めるため、情報機器作業の作業区分に応じて、別紙に定める作業者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について必要な調査又は検査を実施すること。

なお、一般定期健康診断(労働安全衛生法第66条第1項に定めるものをいう。)を実施する際に、併せて実施して差し支えない。

a 業務歴の調査

b 既往歴の調査

c 自覚症状の有無の調査

(a) 眼疲労を主とする視器に関する症状

(b) 上肢、頸肩腕部及び腰背部を主とする筋骨格系の症状

(c) ストレスに関する症状

d 眼科学的検査

(a) 視力検査

i 遠見視力の検査

ii 近見視力の検査

iii 40歳以上の者に対しては、調節機能検査及び医師の判断により眼位検査。ただし、c自覚症状の有無の調査において特に異常が認められず、d(a)i遠見視力又はd(a)ii近見視力がいずれも、片眼視力(裸眼又は矯正)で両眼とも0.5以上が保持されている者については、省略して差し支えない。

(b) その他医師が必要と認める検査

e 筋骨格系に関する検査

(a) 上肢の運動機能、圧痛点等の検査

(b) その他医師が必要と認める検査

ハ 健康診断結果に基づく事後措置

配置前又は定期の健康診断によって早期に発見した健康阻害要因を詳細に分析し、有所見者に対して次に掲げる保健指導等の適切な措置を講じるとともに、予防対策の確立を図ること。

(イ) 業務歴の調査、自他覚症状、各種検査結果等から愁訴の主因を明らかにし、必要に応じ、保健指導、専門医への受診指導等により健康管理を進めるとともに、作業方法、作業環境等の改善を図ること。また、職場内のみならず職場外に要因が認められる場合についても必要な保健指導を行うこと。

(ロ) 情報機器作業の視距離に対して視力矯正が不適切な者には、支障なく情報機器作業ができるように、必要な保健指導を行うこと。

(ハ) 作業者の健康のため、情報機器作業を続けることが適当でないと判断される者又は情報機器作業に従事する時間の短縮を要すると認められる者等については、産業医等の意見を踏まえ、健康保持のための適切な措置を講じること。

(2) 健康相談

作業者が気軽に健康について相談し、適切なアドバイスを受けられるように、プライバシー保護への配慮を行いつつ、メンタルヘルス、健康上の不安、慢性疲労、ストレス等による症状、自己管理の方法等についての健康相談の機会を設けるよう努めること。

また、パートタイマー等を含む全ての作業者が相談しやすい環境を整備する等特別の配慮を行うことが望ましい。

(3) 職場体操等

就業の前後又は就業中に、体操、ストレッチ、リラクゼーション、軽い運動等を行うことが望ましい。

8 労働衛生教育

労働衛生管理のための諸対策の目的と方法を作業者に周知することにより、職場における作業環境・作業方法の改善、適正な健康管理を円滑に行うため及び情報機器作業による心身への負担の軽減を図ることができるよう、次の労働衛生教育を実施すること。

また、新たに情報機器作業に従事する作業者に対しては、情報機器作業の習得に必要な訓練を行うこと。なお、教育及び訓練を実施する場合は、計画的に実施するとともに、実施結果について記録することが望ましい。

(1) 作業者に対する教育内容

作業者に対して、次の事項について教育を行うこと。また、当該作業者が自主的に健康を維持管理し、かつ、増進していくために必要な知識についても教育を行うことが望ましい。

イ 情報機器ガイドラインの概要

ロ 作業管理

(内容)作業計画・方法、作業姿勢、ストレッチ・体操など

ハ 作業環境管理

(内容)情報機器の種類・特徴・注意点

ニ 健康管理

(内容)情報機器作業の健康への影響(疲労、視覚への影響、筋骨格系への影響、メンタルヘルスなど)

(2) 管理者に対する教育内容

情報機器作業に従事する者を直接管理する者に対して、次の事項について教育を行うこと。

イ 情報機器ガイドラインの概要(労働災害統計を含む。)

ロ 作業管理

(内容)作業時間、作業計画・方法、ストレッチ・体操など

ハ 作業環境管理

(内容)情報機器の種類・特徴・注意点、作業環境(作業空間、ワークステーション、什器、採光・照明、空調など)

ニ 健康管理

(内容)情報機器作業の健康への影響(疲労、視覚への影響、筋骨格系への影響、メンタルヘルスなど)、健康相談・健康診断(受け方)、事後措置

9 情報機器作業の作業区分に応じて実施する事項

(1) 「作業時間又は作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの(全ての者が健診対象)」に該当する者の場合

以下の対策を1~8に加えて実施すること。

イ 一日の連続作業時間への配慮

視覚負担をはじめとする心身の負担を軽減するため、他の作業を組み込むこと又は他の作業とのローテーションを実施することなどにより、一日の連続情報機器作業時間が短くなるように配慮すること。

ロ 健康診断

新たに作業時間又は作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの(全ての者が健診対象)に該当することとなった作業者(再配置の者を含む。以下同じ。)には、7(1)イによる配置前健康診断を、作業者の配置後には、7(1)ロにより定期健康診断を、全ての対象者に実施すること。

(2) 「上記以外のもの(自覚症状を訴える者のみ健診対象)」に該当する者の場合

以下の対策を1~8に加えて実施すること。

イ 健康診断

新たに上記以外のもの(自覚症状を訴える者のみ健診対象)に該当することとなった作業者(再配置の者を含む。以下同じ。)には、7(1)イによる配置前健康診断を、作業者の配置後には、7(1)ロにより定期健康診断を、自覚症状を訴える者を対象に実施すること。

10 配慮事項等

(1) 高齢者に対する配慮事項等

高年齢の作業者については、照明条件やディスプレイに表示する文字の大きさ等を作業者ごとに見やすいように設定するとともに、過度の負担にならないように作業時間や作業密度に対する配慮を行うことが望ましい。

また、作業の習熟の速度が遅い作業者については、それに合わせて追加の教育、訓練を実施する等により、配慮を行うことが望ましい。

(2) 障害等を有する作業者に対する配慮事項

情報機器作業の入力装置であるキーボードとマウスなどが使用しにくい障害等を有する者には、必要な音声入力装置等を使用できるようにするなどの必要な対策を講じること。

また、適切な視力矯正によってもディスプレイを読み取ることが困難な者には、拡大ディスプレイ、弱視者用ディスプレイ等を使用できるようにするなどの必要な対策を講じること。

(3) テレワークを行う労働者に対する配慮事項

情報機器ガイドラインのほか、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(令和3年3月25日付け基発0325第2号、雇均発0325第3号「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドラインについて」別添1)を参照して必要な健康確保措置を講じること。

その際、事業者が業務のために提供している作業場以外でテレワークを行う場合については、事務所衛生基準規則、労働安全衛生規則及び情報機器ガイドラインの衛生基準と同等の作業環境となるよう、テレワークを行う労働者に助言等を行うことが望ましい。

(4) 自営型テレワーカーに対する配慮事項

注文者は、「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」(平成30年2月2日付け雇均発0202第1号「「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」の改正について」別添)に基づき、情報機器作業の適切な実施方法等の健康を確保するための手法について、自営型テレワーカーに情報提供することが望ましい。

また、情報提供の際は、必要に応じて情報機器ガイドラインを参考にし、情報提供することが望ましい。

(解説)

「1 はじめに」について

「1 はじめに」においては、近年、職場における情報機器作業が大きく変化するとともに、情報機器作業における問題点として、精神的疲労、身体的疲労等を感じている作業者が多数に上るなどの問題点が指摘される状況にあり、このような作業者の心身の負担を軽減し、情報機器作業を支障なく行うことができるようにするためには、事業者が作業環境管理、作業管理、作業者の健康管理等を適正に行い、作業者を支援していくことが重要であるという情報機器ガイドラインの基本的な考え方について示した。

「2 対象となる作業」について

情報機器ガイドラインは、事務所においてディスプレイ(画面表示装置)を備えた情報機器を使用して作業を行う場合の労働衛生管理を対象とするものである。事務所とは、建築物又はその一部で事務作業に従事する作業者が主として使用するものをいう。ディスプレイを備えた情報機器を対象としており、キーボードについては必ずしも備えていなくとも対象としている。

ディスプレイとしては、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、有機エレクトロ・ルミネッセンス・ディスプレイ(有機EL)、プラズマ・ディスプレイ、蛍光表示管ディスプレイ、発光ダイオード・ディスプレイなどがある。

情報機器を使用する者については、一般正社員、パートタイマー、派遣労働者、臨時職員等の就業形態の区別なく、作業者が情報機器を使用する場合は全て情報機器ガイドラインの対象とする。

近年、自営型テレワーカーが自宅等において行う情報機器作業等が増加しつつあるが、これらの場合についても、できる限り情報機器ガイドラインに準じて労働衛生管理を行うよう指導等することが望ましい。

なお、自営型テレワークとは、注文者から委託を受け、情報通信機器を活用して主として自宅又は自宅に準じた自ら選択した場所において、成果物の作成又は役務の提供を行う就労をいう(法人形態により行っている場合や他人を使用している場合等を除く。)。

情報機器作業における身体的な特徴は「拘束性」という言葉で表される。これは情報機器作業においては、画面からの情報を正確に得るために頭(眼)の位置が限定されること、さらに、特にキーボードからの入力においては、手の位置も限定されることから、身体の動きが極端に制限されることによる。

また、決められた時間内に処理すべき作業量が多い場合などには精神的な負荷も加わり、心身ともに「拘束性」が強くなる。

「拘束性」が強いかどうかの判断は容易ではない場合が少なからずある。作業者自身が気付かないことも多く、また個人差も大きいことから、衛生管理者や産業医等の客観的な観察も必要である。

以下の作業環境管理、作業管理に関する考え方及びその解説は、主に情報機器作業においてディスプレイを注視し、キー操作(打鍵)等を行う作業者を想定したものである。

「3 対策の検討及び進め方に当たっての留意事項」について

情報機器作業に関する労働衛生管理が適正に行われるためには、事業者は安全衛生に関する基本方針を明確にするとともに、安全衛生管理体制を確立し、事業者、各級管理者、作業者等の関係者の協力の下、具体的な安全衛生計画を作成し、労働衛生管理活動を計画的かつ組織的に進めていく必要があることを示した。

このような労働衛生管理活動は、衛生委員会等の組織を有する事業場においては、衛生委員会等における調査審議の結果に基づき、総括安全衛生管理者、衛生管理者、産業医、各部門の管理者等を中心に、その他の事業場においては、事業者、衛生推進者、職場の責任者等が主体となって進められることとなる。

なお、事業場におけるこれらの活動をより効果的に進めるためには、必要に応じ、都道府県産業保健推進センター、地域産業保健センター、労働衛生コンサルタント等の活用を図ることが望まれる。

また、作業者には身体、心理、技能、経験等の違いにより、個人差があるので、一定の基準を全ての情報機器作業従事者に画一的に適用するのは適当でなく、ある程度の弾力性が必要である。

したがって、情報機器作業に関する労働衛生管理基準を新たに設け、又はこれを変更する場合には、当該基準が個々の作業者に適合しているかどうかについて、衛生委員会等において一定期間ごとに評価を実施し、このような評価結果に基づいて、より適切なものとしていくことが大切である。

さらに、情報機器作業に関する労働衛生管理がより適正に行われるためには、各事業場において労働安全衛生マネジメントシステムを導入し、安全衛生計画の作成、実施、評価、改善等を順次進めていくことにより、情報機器ガイドラインに基づいて定めた情報機器作業に係る労働衛生管理基準に盛り込まれた措置が確実に実施されるようにすることが望ましい。

「4 作業環境管理」について

作業環境管理においては、情報機器ガイドラインに掲げる事項のほか、「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(平成4年7月1日付け労働省告示第59号)を参照し、作業者が快適に作業を行うことのできる職場環境の整備を図ることが望ましい。

(1) 照明及び採光

イ 室内の照明及び採光については、明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせない方法によらなければならない(事務所衛生基準規則第10条第2項参照)。

ロ 「書類上及びキーボード上における照度」とは、書類やキーボードなどに入射する光の明るさをいう。

「ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさとの差はなるべく小さくすること。」とは、瞳孔は明るさに応じてその大きさを調節しており、一般的に、ディスプレイ画面や書類・キーボード面と周辺の明るさの差が大きいと眼の負担が大きくなるので、なるべく明るさの差を小さくすべきであるという趣旨である。

ニ 「グレア」とは、視野内で過度に輝度が高い点や面が見えることによっておきる不快感や見にくさのことで、光源から直接又は間接に受けるギラギラしたまぶしさなどをいう。

ホ 情報機器作業従事者がディスプレイを注視している時に、視野内に高輝度の照明器具・窓・壁面や点滅する光源があると、まぶしさを感じたり、ディスプレイに表示される文字や図形が見にくくなったりして、眼疲労の原因となる(眼の明るさに対する調整は網膜の順応や瞳孔の大きさによって行われるが、強い光に対する調整が優先されるためにグレアがあると比較的暗い画面上の文字等は見にくくなる。)。

また、これらがディスプレイ画面上に映り込む場合も同様である。したがって、ディスプレイを置く位置を工夫して、グレアが生じないようにする必要がある。

映り込みがある場合には、ディスプレイ画面の傾きを調整することなどにより、映り込みを少なくすることが必要である。

一般にグレアを防ぐために、近い視野内での輝度比は1:3程度、広い視野内の輝度比は1:10程度が推奨されている。

その他の映り込みを少なくする方法としては、フィルターを取り付ける等の方法があるが、フィルターの性能によっては、表示文字の鮮明度が低下したり、フィルター自身の表面が反射したりすることがあるため、反射率の低いものを選ぶ等の注意が必要である。

(2) 情報機器等

イ 情報機器の選択

情報機器には、用途に応じ、デスクトップ型、ノート型、タブレット型、携帯情報端末等の様々な種類があり、その特性等も異なることから、労働者への健康影響を考慮し、作業者が行う作業に最も適した機器を選択し導入する必要がある。

一般に、デスクトップ型は、一定の作業面の広さが必要であるが、キーボードが大きく、自由に移動させることができるため、作業姿勢も拘束されにくく、長時間にわたり作業を行う場合等に適している。

また、ノート型は、キーボードが小さく、自由に移動させることができないため、作業姿勢も拘束され易いが、作業面の広さは少なくて済むため、作業面の広さが限られている場合等に適している。

ただし、作業の内容、作業量等のその他の考慮すべき事項も考えられるため、情報機器の導入に当たっては、必要に応じ関係作業者等に意見を聞くことが望ましい。

ロ デスクトップ型機器

(イ) ディスプレイ

最近では多くの種類の情報機器用ディスプレイが存在する。通常の情報機器作業においては、市場における一般的なディスプレイで支障なく作業を遂行することができると思われるが、CADや定型書式への入力等の特定の作業において、画面が小さい、又は表示容量が低い場合に、情報機器作業者に過度の負担をもたらす場合があることから、画面サイズは目的とする作業に応じた適切な大きさのものを用いる必要がある。

反射防止型ディスプレイは、表面につや消し処理を行って散乱性をもたせたものと、多層薄膜コーティングにより反射そのものを減らすものとに大別されるが、前者は外光が明る過ぎると、画面全体が光るようになり、後者は、汚れやすいという欠点があるので、注意を要する。

ディスプレイ画面上の輝度又はコントラストの調整方法は、情報機器によって異なるので注意を要する。

代表的な例として次のような方法がある。

a ディスプレイ本体上のボタンやノブ等による方法

b キーボード上のボタン又はキー操作による方法

c ソフトウェアによる方法

ディスプレイの人間工学上の要求事項の詳細については、ISO 9241―303(Ergonomic requirements for electronic visual displays)をはじめとする、9241―300シリーズ等を参照されたい。

なお、情報機器から発せられる青色光(ブルーライト)は、概日リズムに影響を与えるとの研究があり、睡眠障害等の懸念が考えられる場合には、その使用に留意する必要がある。

(ロ) 入力機器(キーボード、マウス等)

入力機器としては、キーボード、マウスが代表的であるが、マウス以外のポインティングデバイス(トラックボール、パッド、スティック等)、音声入力、イメージスキャナー、バーコードリーダー等がある。また画面を直接指でタッチするタッチパネル方式の機器も入力機器の一種である。

これらの入力機器を利用することによって、情報機器作業を効率化でき、作業者の負担を大きく軽減できる場合もあるので、目的とする情報機器作業に適した入力機器を使用できるようにする必要がある。

キーボード及びその他の入力機器についての人間工学上の要求事項の詳細については、JIS Z8514(人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―キーボードの要求事項)、JIS Z8519(人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―非キーボードの入力装置の要求事項)等を参照されたい。また、最新の入力装置に関する情報は、ISO 9241―400シリーズ等を参照されたい。

ハ ノート型機器

ノート型機器には、携帯性を重視した設計(画面が小さい、キーストロークが短い、キーピッチが小さいなど)のものがあり、それらを長時間の情報機器作業に使用する場合には、人間工学上の配慮が必要となる。

小さいキーボードを、手が大きい作業者が使用する場合には、連続キー入力作業で負担が大きくなることがあり、小型の画面は文字が小さく視距離が短くなりすぎる傾向がある。また、キーボードとディスプレイが一体となった構成は、デスクトップ型に比べてディスプレイと頭の位置及びキーボード等入力装置と手の位置の関係において自由度が小さくなるため、作業者に特定の拘束姿勢を強いることや過度の緊張を招くことなどがある。したがって、使用する作業者や目的とする情報機器作業に適した機器を使用させる必要がある。

多くのノート型機器は外付けのディスプレイ、キーボード、マウス、テンキー入力機器などを接続し、利用することが可能であり、小型のノート型機器で長時間の情報機器作業を行う場合には、これらの外付け機器を利用することが望ましい。

ノート型機器の使用時の留意点については、日本人間工学会の「ノートパソコン利用の人間工学ガイドライン」が参考になる。

ニ タブレット、スマートフォン等

労働形態の多様化とICT(情報通信技術)の進展に伴い、移動中でもタブレットやスマートフォンを用いて仕事をする機会が増している。これらの機器は、小型化と携帯性を重視して設計されているため、職場や自営型テレワーク等において長時間にわたり使用するには必ずしも十分とはいえない。

これらの機器の人間工学上の特徴を踏まえ、ガイドラインでは長時間の情報機器作業に使用することはできる限り避けることが望ましいこととした。

タブレット、スマートフォン等はこれらの使用と姿勢との関係において、その「拘束性」はパソコンでのキーボード入力作業ほど強くはないと考えられるが、使用形態と健康影響に関する知見は少ない。今後注意深い観察が必要である。

ヘ ソフトウェア

(イ) ソフトウェアは、作業者の作業性及び作業負担に大きく影響するため、目的とする情報機器作業の内容、利用する作業者の技能、能力等に合ったものを使用することが望ましい。

(ロ) 作業者が作業中に、ヘルプ機能を用いること等により、操作方法等について随時参照できることが望ましい。

(ハ) 作業者が行う作業の内容や作業者の技能の程度、好み等により、作業者が作業を行いやすい文字等の大きさ、色、行間隔等は異なるので、それらの設定は、作業者が容易に変更可能であることが望ましい。

(ニ) 作業者の操作の誤りにより、それまでに入力した膨大な量のデータが消失し、復元不可能な場合、作業者に大きな負担を与えることとなるので、一旦入力したデータについては、容易に復元可能であることが望ましい。

ただし、作業者の特性や情報機器作業の目的に合ったものであるかどうかなどの判断が難しいという面もある。以下に判断の一助となる三つのJISを示すので、参照されたい。

a JIS Z8520(人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―対話の原則)

VDT対話の設計及び評価のための7つの原則が示されており、使用するソフトウェアがそれらに合致しているかの判断に利用できる。

b JIS Z8521(人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―使用性についての手引)

使用性(ユーザビリティ)の考え方及び測定方法について示されている。使用するソフトウェアは、作業者に受け入れられる水準以上のユーザビリティが確認されていることが望ましい。

c JIS X25062(システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SquaRE)―使用性の試験報告書のための工業共通様式)

使用性を判断するための試験報告書の共通様式であり、国際規格ISO/IEC 25062の翻訳JISである。ソフトウェア選定の一助となる。

ト 椅子

個人専用の椅子については、作業者の体形、好み等に合わせて適切に調整できるものがよい。

複数の作業者が交替で同一の椅子を使用する場合は、作業者一人ひとりが自分の体形に合った高さに容易に調整できるよう、ワンタッチ式など調整が容易なものがよい。

床からの座面の高さの調整範囲は、大部分の作業者の体形に合わせることができるよう、37cm~43cm程度の範囲で調整できることが望ましい。ここでいう床から座面の高さとは、実際に座って、クッション材が2cm~3cm圧縮された状態の座面の高さのことである。市販されている椅子の座面高の表示は、クッション材が圧縮されていない外形表面の高さが一般的であるので注意を要する。

床から座面の高さの調整範囲は、広いほど、多くの作業者に適応できるが、あまりに広い調整範囲を有する椅子は大型になりがちで適当でないので、ここでは実用的な調整範囲を示した。椅子の調整範囲で調整できない場合については、フットレストの利用等必要に応じて対応することが望ましい。

チ 机又は作業台

(ハ)のaで、高さ調整ができない机又は作業台を使用する場合は、床からの高さはおおむね65cm~70cm程度のものを用いることが望ましい。65cm及び70cmがそれぞれ女性及び男性が使用する場合に必要な高さのほぼ平均値となるためである。

(ハ)のbで示した、高さ調整が可能な机又は作業台を使用する場合の調整範囲は、大部分の作業者の体形に合わせることができるよう、床からの高さは60cm~72cm程度の範囲で調整できることが望ましい。

床からの高さの調整範囲は、椅子と同様に実用的な調整範囲を示した。調整範囲で調整できない場合については、椅子の場合と同様、必要に応じて対応することが望ましい。

高さ調整が可能な机又は作業台を使用する場合には、椅子の高さを最適に調整した後、机の高さを調整するとよい。

大型ディスプレイを使用する場合は、十分な奥行きの机を使用し、作業者の体にねじれを生じさせないよう、またディスプレイを見上げないように、ディスプレイを配置すること。また、脚の周囲の空間に荷物等があり、脚が窮屈な場合は、取り除くこと。

椅子、机又は作業台に関する人間工学上の要求事項の詳細は、JIS Z8515(人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―ワークステーションのレイアウト及び姿勢の要求事項)を参照されたい。

情報機器作業においては、機器と作業者の姿勢の関係を優先して机及び椅子を選択及び調整することが望ましい。特に、ノート型機器は一般の事務机上で使用することが多く、机・椅子の組み合わせ及び調整は長時間作業の疲労軽減に重要な因子となりうる。作業者自身が最も作業がしやすい姿勢をとるために机や椅子の調整を行うことも必要である。

(3) 騒音の低減措置

イ このような騒音の低減を図るためには、遮音及び吸音の機能を有するつい立てで取り囲む、機器そのものを消音ボックスに収納する、床にカーペットを敷く、低騒音型機器を使用するなどの方法もある。

ロ 情報機器作業を行う場所付近で、騒音を発する事務用機器を使用する場合には、必要に応じ、騒音伝ぱの防止措置を講じること(事務所衛生基準規則第11条及び第12条参照)。

(4) その他

事務所の換気、温度、湿度及び空気調和(空調)については、事務所衛生基準規則第3条から第5条までを参照されたい。

また、休憩等のための設備については、事務所衛生基準規則第19条から第21条までを参照されたい。

「5 作業管理」について

情報機器作業には多くの種類があり、それぞれ作業形態や作業内容は大きく異なっている。また、情報機器作業が健康に及ぼす影響は非常に個人差が大きいので、画一的な作業管理を行うことは好ましくない。

したがって、各事業場においては、個々の作業者の特性に応じた情報機器、関連什器等を整備するほか、情報機器作業の実態に基づいて作業負担の少ない業務計画を策定すること等、細かく配慮することが望ましい。

(1) 作業時間等

イ 一日の作業時間

一日の作業時間については、これまでの経験から、職場において情報機器作業に関して適切な労働衛生管理を行うとともに、各人が自らの健康の維持管理に努めれば、大多数の労働者の健康を保持できることが明らかになっており、他方、各事業場における情報機器作業の態様が様々で作業者への負荷が一様でなく、また、情報機器作業が健康に及ぼす影響は非常に個人差が大きいこともあり、ガイドラインでは上限を設けていない。

しかしながら、管理者は、適切な作業時間管理を行い、情報機器作業が過度に長時間にわたり行われることのないようにする必要がある。

「相当程度拘束性があると考えられる作業」の情報機器作業については、一般に自由裁量度が少なく、疲労も大きいため、それ以外の作業を組み込むなどにより、一日の連続情報機器作業時間が短くなるように配慮する必要がある。

ロ 一連続作業時間及び作業休止時間

(イ) 作業休止時間は、ディスプレイ画面の注視、キー操作又は一定の姿勢を長時間持続することによって生じる眼、頸、肩、腰背部、上肢等への負担による疲労を防止することを目的とするものである。連続作業後、一旦情報機器作業を中止し、リラックスして遠くの景色を眺めたり、眼を閉じたり、身体の各部のストレッチなどの運動を行ったり、他の業務を行ったりするための時間であり、いわゆる休憩時間ではない。

一連続作業時間の目安として1時間としているのは、パソコン作業がおおよそ1時間以上連続した場合には誤入力の頻度が増すことやフリッカー値が低下する(フリッカー値とは光の点滅頻度のことで、この値の低下は覚醒水準の低下に起因する視覚機能の低下を反映していると考えられる。)、すなわち大脳の疲労と関連する指標値に変化が見られたという研究結果に基づいている。

(ロ) 小休止とは、一連続作業時間の途中で取る1分~2分程度の作業休止のことである。時間を定めないで、作業者が自由に取れるようにすること。

ハ 業務量への配慮

個々の作業者の能力を超えた業務量の作業を指示した場合、作業者は作業を休止したくても休止することができず、無理な連続作業を行わざるを得ないこととなるため、業務計画を策定するに当たっては、無理のない適度な業務量となるよう配慮する必要がある。

(2) 調整

情報機器作業は、自然で無理のない姿勢で行うことが重要であるため、極端な前傾姿勢やねじれ姿勢を長時間継続させないよう、機器の位置を調整させる必要がある。

イ 作業姿勢

デスクトップ型パソコンで好ましいとされている作業姿勢は、ディスプレイの上端が眼の位置より下になるようにし、視距離は40cm以上確保すること。上腕と前腕の角度は90度以上で、キーボードに自然に手が届くようにする、とされている。また、これまでの調査研究から①首のこりや痛みは頭の前傾が大きくなると増加し、②打鍵の際に腕や手首を乗せる支持台がないと肩のこりや痛みは増加し、③手の側屈(尺側変位)が大きいと腕の疲れや痛みが増加するといわれている。

一方、ディスプレイとキーボードが一体になっているノート型パソコンを一般の事務机上で使用する際には上述のような姿勢をとることは容易ではないが、上述の「好ましい姿勢」を参考にしながら個人差も考慮した対応が必要になろう。

(イ)において、必要に応じ、足台を備えることとしたのは、足台は、足を疲れさせないだけでなく、背中や腰の疲れを防ぐ効果も有するためである。

ロ ディスプレイ

(イ)において、ディスプレイ画面と眼の視距離をおおむね40cm以上としたのは、眼に負担をかけないで画面を明視することができ、かつ、眼とキーボードや書類との距離の間に極端な差が生じないようにするためである。

(ロ)については、ディスプレイが大画面の場合は、画面の上端が眼の位置よりも上になる場合があるが、ディスプレイをパソコン本体の上に置かないようにすること等により、できる限り眼の高さよりも高くならないようにすることが望ましいことを示したものである。

(ハ)において、ディスプレイ画面とキーボード又は書類を眼からほぼ等しい距離にすることとしたのは、情報機器作業における眼球運動から生じる眼疲労(視線を移動させるたびにいちいち焦点調節を行っていると眼疲労を招く)を軽減するためである。

(ニ)の調整では、個々の作業者ごとに好ましい位置、角度、明るさ等が異なることから各自が調整する必要があることを徹底すべきである。

また、個々の作業者においても、時間帯によって室内の明るさが変化する場合、作業内容の変更やディスプレイ上の表示情報が変化する場合、慣れや疲れ等によって最適なレベルが変化する場合等においては、条件の変更が必要となることもあるので、1日に何回でも必要に応じて調整することが望ましい。

(ホ)の文字の大きさは、視距離によって最適な大きさが変動するため、視角(単位は分:1度の60分の1)でその要求値が決められている。

英数文字の場合には、読みやすさを確保するためには一般に16分以上がよく、20分~22分が特に推奨される。また、漢字などを表示する場合には一般に20分以上がよく、25分~35分程度が特に推奨される。視距離50cmで、20分が約2.9mmとなることから、ここではおおむね3mm以上とした。一般に文字の大きさは、作業者が、10ポイント、12ポイントなどと自由に設定できる場合が多いが、そのポイント数はディスプレイのサイズや種々の設定条件によって、必ずしも文字の物理的な大きさとは一致しないことに留意すること。

なお、高齢者については、10の(1)に示すように、別途配慮が必要である。

ハ 入力機器

多くの情報機器において、マウス等のポインティングデバイスのポインタの速度、ダブルクリックのタイミング等を変更することができるので、これを活用し、作業者の技能、好み等に応じた適切な速度に調整する必要がある。

ニ ソフトウェア

最近の情報機器はソフトウェアによって、種々の条件の設定・調整が可能であるが、それらの方法が知られていないために、適切でない条件で使用している例が少なくない。

ここに掲げているようなソフトウェアによる設定を徹底することによって、情報機器作業の改善を図ることが可能であるため、作業者への教育などで周知する必要がある。

「6 情報機器等及び作業環境の維持管理」について

(1) 情報機器等及び作業環境を良好に維持管理するには、点検項目を定め、定期的に点検、清掃等を実施する必要があるので、情報機器ガイドラインでこの趣旨を明確にしたものである。

(2) 点検及び清掃を実施する上での留意事項を次に掲げるので、参考にされたい。

イ 照明、採光、グレア防止措置などが適切に設定されていたとしても、作業場所の変更などにより、当初の条件が満たされなくなることがあるので、基準に適合しているか否かの点検を行う際、留意すること。

ロ ディスプレイ画面やフィルターには、ほこりや手あかが付着して、画面が見えにくくなったり、室内の湿度が低下すると静電気発生の原因となることもあるので、情報機器作業従事者の日常業務の一環として、湿った布等で画面をきれいにすること。

また、マウスはゴミ等の付着によるカーソル移動の困難をなくすように適切に清掃を行うこと。

ハ 日常の清掃を行う際に、常に情報機器や机又は作業台、さらには作業場所の整理整頓に努めるとともに、これらを適正な状態に保持すること。

「7 健康管理」について

(1) 健康診断

イ 配置前健康診断

「作業時間又は作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの(全ての者が健診対象)」(注)に対しては、健康障害防止の観点から健康診断を実施する必要がある。そうでない者で自覚症状を訴えるものに対しては、情報機器ガイドラインの9の(2)に従って健康診断を実施すること。

a 業務歴の調査

問診票等を用い、過去の情報機器作業業務歴等について把握する。

b 既往歴の調査

問診票等を用い、既往歴について把握する。

c 自覚症状の有無の調査

業務歴及び既往歴の調査の結果を参考にしながら、問診票等を用いて問診により行う。自覚症状の有無の調査は、情報機器作業による視覚負担、上肢の動的又は静的筋労作等、心身に与える影響に着目して行う必要がある。

問診項目としては、眼の疲れ・眼の乾き・眼の異物感・遠くが見づらい・近くが見づらい、首・肩のこり、頭痛、背中の痛み、腰痛、腕の痛み、手指の痛み、手指のしびれ、手の脱力感、ストレス症状等の自覚症状の有無等があげられる。また、眼の疲労等に関しては、眼科定期受診、及び点眼薬など治療薬の継続的な使用の有無も聴取する。軽快のきざしが見えず自覚症状が継続している場合は、当該症状に応じて、眼科学的検査又は筋骨格系に関する検査を行い、その結果に基づき、医師の判断により、保健指導、作業指導等を実施し、又は専門医の精密検査等を受けるように指導することとする。

筋骨格系疾患については、自覚症状が検査所見よりも先行することが多いことに留意すること。

ストレス等の症状が認められた場合については、必要に応じて、カウンセリングの実施、精神科医や心療内科医への受診勧奨等の事後措置を行うこと。なお、健康診断の実施場所における受診者のプライバシー保護についての配慮を十分に行う必要がある。

d 眼科学的検査

(a) 視力検査

i 遠見視力の検査

ふだん遠方視時(外を歩くなど)の屈折状態(裸眼、眼鏡、コンタクトレンズ)で検査を行う。

ii 近見視力の検査

ふだんの作業時の屈折状態(裸眼、眼鏡、コンタクトレンズ)で検査を行う。通常、50cm視力を測定するが、普段の情報機器作業距離がより近い場合には30cm視力を測定することが望ましい。

近見視力の検査はディスプレイの視距離に相当する視力が適正なレベルとなるよう指導することが目的であり、近見視力は、片眼視力(裸眼又は矯正)で両眼ともおおむね0.5以上となることが望ましい。

(b) 屈折検査

裸眼又は眼鏡装用者は、裸眼での屈折状態をオートレフラクトメータにて測定する。コンタクトレンズ装用者は、着脱可能な場合は裸眼で、困難な場合はレンズ装用下で測定する。

また、使用眼鏡の度数測定をレンズメーターで行う。コンタクトレンズ装用者は、可能であれば使用レンズの度数を聴取する。

検査の結果、現在の矯正状態かつ情報機器作業距離で十分な視力が得られていないと判断された場合は、配置前に眼科医の受診を指導すること。

なお、問診において特に異常が認められず、5m視力、近見視力がいずれも、片眼視力(裸眼又は矯正)で両眼ともおおむね0.5以上が保持されている者については、屈折検査を省略して差し支えない。

(c) 眼位検査、調節機能検査

眼位検査については、交代遮蔽試験又は眼位検査付き視力計で斜位の有無を検査する。

調節機能検査については、ふだん情報機器作業を行っている矯正状態での近点距離を測定する。

前記(a)~(c)以外の高度な眼科学的検査等については、専門医に依頼すること。

また、ドライアイは、情報機器作業により症状が発現する可能性があるため、問診において眼乾燥感、異物感、痛み、間欠的な見づらさを訴える場合は、程度に応じて専門医の受診を指導する。ドライアイの悪化要因としては、コンタクトレンズの装用、湿度の低下、眼に直接当たる通風、ディスプレイ画面が高すぎて上方視することにより、過度にまぶたを開く場合、読み取りにくい画面の凝視等によるまばたきの減少等が影響するので、これらに留意して、職場環境の改善、保健指導等を行うこと。

e 筋骨格系に関する検査

この検査項目は、上肢に過度の負担がかかる作業態様に起因する上肢障害、その類似疾病の症状の有無等について検査するためのものである。

(a) 上肢の運動機能、圧痛点等の検査

i 指、手、腕等の運動機能の異常、運動痛等の有無

ii 筋、腱、関節(肩、肘、手首、指等)、頸部、腕部、背部、腰部等の圧痛、腫脹等の有無

問診において、当該症状に異常が認められない場合には、省略することができる。検査の結果、上肢障害やその他の整形外科的疾患、神経・筋疾患などが疑われる場合は、専門医への受診等について指導すること。

ロ 定期健康診断

a、b及びcの調査並びにd及びeの検査の各検査項目については、それぞれの実施日が異なっても差し支えない。

a 業務歴の調査

従事した情報機器作業の概要のほか、必要に応じ、作業環境及び業務への適応性についても調べること。

なお、前記配置前健康診断に関する解説を参照のこと。

b 既往歴の調査

前記配置前健康診断に関する解説を参照のこと。

c 自覚症状の有無の調査

具体的検査の方法、判断基準及び措置については、前記配置前健康診断に関する解説を参照のこと。

なお、問診票は前記配置前健康診断で用いるものと同一のもので差し支えない。

d 眼科学的検査

具体的検査の方法、判断基準及び措置については、前記配置前健康診断に関する解説を参照のこと。

e 筋骨格系に関する検査

前記配置前健康診断に関する解説を参照のこと。

問診において、当該症状に異常が認められない場合には、省略することができる。前記配置前健康診断に関する解説を参照のこと。

ハ 健康診断結果に基づく事後措置

(イ) 各検査項目の解説で示した保健指導、専門医への受診指導等を行うとともに、自他覚症状、各種検査結果等に応じ、リラクゼーション、ストレッチ等の実施、作業方法の改善、作業環境改善等について指導を行う。

健康障害や疲労症状の職場外要因としては、家庭における長時間にわたるインターネットの利用、ゲームを長時間行う等の直接的な眼疲労の原因となるもののほかに、生活習慣、悩みごと等の間接的な疲労要因が考えられる。

(ロ) 眼科学的検査の解説で示したように、近見視力が、片眼視力でおおむね0.5以上となるよう指導を行うことが望ましい。

なお、作業に適した矯正眼鏡等の処方については、眼科医が行うことが望ましい。

(ハ) 産業医が作業者の健康を確保するため必要と認める場合は、作業の変更、作業時間の短縮、作業上の配慮等の健康保持のための適切な措置を講じること。

(2) 健康相談

情報機器作業における健康上の問題は、健康診断時以外の日常で発生することも多いので、作業者が気軽に健康等について相談し、適切なアドバイスを受けられるように、健康相談の機会を設けることが望ましい。

(3) 職場体操等

静的筋緊張や長時間の拘束姿勢、上肢の反復作業などに伴う疲労やストレスの解消には、アクティブ・レストとしての体操やストレッチを適切に行うことが重要である。また、就業中にも背伸び、姿勢の変化、軽い運動等を行うように指導すること。

「8 労働衛生教育」について

情報機器作業に係る労働衛生教育の実効性をもたせるためには、各事業場において定めた情報機器作業に関する労働衛生管理基準が職場に適用できるような条件整備に努めるとともに、次に掲げる事項を参考にして、作業者の教育訓練を実施することが重要である。また、手法及び実施時期を考慮のうえ、効果的な実施方法を考える必要がある。

(1) 作業者に対する教育内容

イ 情報機器ガイドラインの概要

情報機器ガイドラインの概要について説明する。

ロ 作業管理

情報機器作業に関連する障害の最も大きな原因は「拘束的」な長時間に及ぶ作業であることを認識させる。また情報機器作業の多様性と作業の方法・姿勢等には個人差が大きいことを認識させ、自分自身の作業方法に関して客観的な見方ができるようにする。

ハ 作業環境管理

作業環境が作業の効率や健康に及ぼす影響について理解させる。

ニ 健康管理

情報機器作業による健康障害の種類及びその可能性について理解させる。また身体的な症状、精神的なストレスの症状が懸念された場合、それらへの対処方法についても理解させる。

(2) 管理者に対する教育内容

イ 情報機器ガイドラインの概要(労働災害統計を含む。)

情報機器ガイドラインの概要について説明する。労働者教育に資する労働災害統計等も理解させる。

ロ 作業管理

情報機器作業に関連する障害の最も大きな原因は「拘束的」な長時間に及ぶ作業であることを認識させる。また情報機器作業の多様性と作業の方法・姿勢等には個人差が大きいことを認識させ、管理者として労働者の作業方法や姿勢等を客観的に観察し、指導できるようにする。

ハ 作業環境管理

作業環境(機器の種類、採光、照明、温度・湿度、騒音など)が作業の効率や健康に及ぼす影響について理解させ、管理者として作業環境の改善、維持ができるようにする。

ニ 健康管理

情報機器作業による健康障害の種類及びその可能性について理解させる。また身体的な症状、精神的なストレスの症状が懸念される労働者がいる場合、管理者として労働者に適切な助言(衛生管理者や産業医などへの導きなど)ができるようにする。

「10 配慮事項等」について

(1) 高齢者に対する配慮事項等

見やすい文字の大きさや作業に必要な照度等は、作業者の年齢により大きく異なる。作業者によっては作業の視距離に応じた矯正(眼鏡)が必要になる場合がある。

多くの情報機器作業の場合、文字サイズ、輝度コントラスト等の表示条件は使用する機器の設定により調整することが可能であり、作業者にとって見やすいように適合させることが望ましい。

照明機器等も、天井に配置した全体照明とは別に必要となる場合は、局所に作業用照明機器を配置することにより個人の特性に配慮した照度条件を実現することが可能となる。

作業時間、作業密度、教育、訓練等についても、高齢者の特性に適合させる配慮が望まれる。

(2) 障害等を有する作業者に対する配慮事項

情報機器作業は、筋力や視力等に障害があっても、作業できるように、種々の支援対策が準備されている。このような支援機器や適切な作業環境、作業管理によって、障害を有する場合でも、情報機器作業を快適に行うような措置を講じることが望ましい。

(3) テレワークを行う労働者に対する配慮事項

労働基準法上の労働者については、テレワークを行う場合においても、労働安全衛生法等の労働基準関係法令が適用されるため、労働安全衛生法等の関係法令等に基づき健康確保のための措置を講じる必要がある。

また、テレワークを行う作業場が、自宅等の事業者が業務のために提供している作業場以外である場合には、事務所衛生基準規則、労働安全衛生規則及び情報機器ガイドラインの衛生基準と同等の作業環境となるよう、テレワークを行う労働者に助言等を行うことが望ましい。

(4) 自営型テレワーカーに対する配慮事項

情報機器を活用している自営型テレワーカーの場合、作業机、照明環境、作業時間等について、労働衛生管理面からは必ずしも適切でないことがある。仕事を自営型テレワーカーに注文する注文者は、情報機器作業を行う自営型テレワーカーの健康を確保するため、自営型テレワーカーに対して情報機器ガイドラインの内容を提供することが望ましい。このことにより、自営型テレワーカーは、情報機器作業に係る作業環境管理、作業管理、健康管理、労働衛生教育等に関する情報を得ることができる。

なお、注文者には、自らの仕事を注文する者だけでなく、他者から業務の委託を受け、当該業務に関する仕事を自営型テレワーカーに注文する者も含まれる。

(注) 4時間以上の作業

パソコン作業者の調査研究から、1日の作業時間が4~5時間を超えると中枢神経系の疲れを訴える作業者が増大し、また、筋骨格系の疲労が蓄積するという調査報告がある。また、疲労測定に関する別の調査研究からは、点滅光の識別度合いを示すフリッカー値が5%以上の低下を示して疲労を示す対象者が作業者の25%を超えないことを目標とすると、1日の作業時間は300分が望ましいとされている。

別紙

情報機器作業の作業区分