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○児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律の公布について〔児童福祉法〕

(令和元年6月26日)

(/府共第98号/子発0626第1号/)

(各都道府県知事・各指定都市市長・各児童相談所設置市市長あて内閣府男女共同参画局長・厚生労働省子ども家庭局長通知)

(公印省略)

「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」(令和元年法律第46号。以下「改正法」という。)については、本年6月19日に国会で可決・成立し、本日公布されたところである。改正の趣旨及び概要は下記のとおりであり、十分御了知の上、管内市町村(特別区を含む。以下同じ。)をはじめ、関係者、関係団体等に対し、その周知徹底をお願いする。

改正法は、一部の規定を除き、令和2年4月1日から施行することとしている。今後、必要な政省令等の改正を行い、その内容について別途通知する予定である。また、改正法の施行に際しての留意点、その内容等を踏まえた「児童相談所運営指針」(平成2年3月5日付け厚生省児童家庭局長通知)等の改正等についても、別途通知する。

なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言である。

第1 改正の趣旨

児童虐待防止対策の強化を図るため、児童の権利擁護、児童相談所の体制強化及び関係機関間の連携強化等の措置を講ずる。

第2 改正の概要

Ⅰ 児童の権利擁護

1 親権者等による体罰の禁止(令和2年4月1日施行)

① 児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、体罰を加えることその他民法(明治29年法律第89号)第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超える行為により当該児童を懲戒してはならないこと。(児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号。以下「虐待防止法」という。)第14条第1項関係)

② 児童相談所長、児童福祉施設の長、その住居において養育を行う児童福祉法(昭和22年法律第164号)第6条の3第8項に規定する厚生労働省令で定める者(小規模住居型児童養育事業における養育者)及び里親は、監護、教育及び懲戒に関し必要な措置をとることができる児童に対し、体罰を加えることはできないこと。(児童福祉法第33条の2第2項及び第47条第3項関係)

2 懲戒権の在り方の検討(令和2年4月1日施行)

政府は、改正法の施行後2年を目途として、民法第822条の規定の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。(改正法附則第7条第5項関係)

3 児童相談所の業務の明確化(令和2年4月1日施行)

都道府県(児童相談所)の業務として、児童の権利の保護の観点から、一時保護の解除後の家庭その他の環境の調整、当該児童の状況の把握その他の措置により当該児童の安全を確保することを規定すること。(児童福祉法第11条第1項関係)

4 児童福祉審議会における児童等の意見聴取の際の配慮事項(令和2年4月1日施行)

児童福祉審議会が児童福祉法第8条第6項の規定により児童、妊産婦及び知的障害者、これらの者の家族その他の関係者の意見を聴く場合においては、意見を述べる者の心身の状況、その者の置かれている環境その他の状況に配慮しなければならないこと。(児童福祉法第8条第7項関係)

5 児童の意見表明権を保障する仕組みの検討(令和2年4月1日施行)

政府は、改正法の施行後2年を目途として、児童の保護及び支援に当たって、児童の意見を聴く機会及び児童が自ら意見を述べることができる機会の確保、当該機会における児童を支援する仕組みの構築、児童の権利を擁護する仕組みの構築その他の児童の意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されるための措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。(改正法附則第7条第4項関係)

Ⅱ 市町村及び児童相談所の体制強化等

1 市町村及び都道府県における体制の整備等に対する国の支援等(令和2年4月1日施行)

① 都道府県知事は、市町村の児童福祉法第10条第1項各号に掲げる業務の適切な実施を確保するため必要があると認めるときは、市町村に対し、体制の整備その他の措置について必要な助言を行うことができること。(児童福祉法第11条第2項関係)

② 都道府県は、児童福祉法による事務を適切に行うために必要な体制の整備に努めるとともに、当該事務に従事する職員の人材の確保及び資質の向上のために必要な措置を講じなければならないこと。(児童福祉法第11条第6項関係)

③ 国は、市町村及び都道府県における児童福祉法第10条第4項及び第11条第6項の体制の整備及び措置の実施に関し、必要な支援を行うように努めなければならないこと。(児童福祉法第10条第5項及び第11条第7項関係)

2 児童相談所の介入機能と支援機能の分離等(令和2年4月1日施行)

都道府県は、保護者への指導を効果的に行うため、児童の一時保護等を行った児童福祉司等以外の者に当該児童に係る保護者への指導を行わせることその他の必要な措置を講じなければならないこと。(虐待防止法第11条第7項関係)

3 児童相談所への弁護士の配置等(令和4年4月1日施行)

都道府県は、児童相談所がその業務のうち、児童福祉法第28条第1項各号に掲げる措置(※)を採ることその他の法律に関する専門的な知識経験を必要とするものについて、常時弁護士による助言又は指導の下で適切かつ円滑に行うため、児童相談所における弁護士の配置又はこれに準ずる措置を行うものとすること。(児童福祉法第12条第4項関係)

※ 保護者が、その児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において、児童を児童養護施設に入所させる等の措置を採ることが児童の親権を行う者等の意に反するときに都道府県が採ることができる措置

4 児童相談所への児童心理司の配置基準(令和2年4月1日施行)

心理に関する専門的な知識及び技術を必要とする指導をつかさどる所員(以下「児童心理司」という。)の数は、政令で定める基準を標準として都道府県が定めるものとすること。(児童福祉法第12条の3第7項関係)

5 児童相談所への医師及び保健師の配置(令和4年4月1日施行)

児童の健康及び心身の発達に関する専門的な知識及び技術を必要とする指導をつかさどる所員の中には、医師及び保健師が、それぞれ1人以上含まれなければならないこと。(児童福祉法第12条の3第8項関係)

6 児童相談所への児童福祉司及びスーパーバイザーの配置基準等(①から④まで、⑥及び⑧は令和2年4月1日施行、⑤及び⑦は令和4年4月1日施行)

① 児童福祉司の数の基準は、各児童相談所の管轄区域内の人口、児童虐待に係る相談に応じた件数、里親への委託の状況及び市町村における児童福祉法による事務の実施状況その他の条件を総合的に勘案して政令で定めるものとすること。(児童福祉法第13条第2項関係)

② 児童福祉司の数の基準については、児童福祉司の数に対する児童虐待に係る相談に応ずる件数が過重なものとならないよう、必要な見直しが行われるものとすること。(改正法附則第6条関係)

③ 児童相談所長及び児童福祉司として任用することができる者に精神保健福祉士及び公認心理師を追加すること。(児童福祉法第12条の3第2項及び第13条第3項関係)

④ 判定をつかさどる所員及び児童心理司の中に含まれなければならない者の例示に公認心理師を追加すること。(児童福祉法第12条の3第5項及び第6項関係)

⑤ 児童福祉司として任用することができる者のうち、社会福祉主事である者に必要な実務経験について、児童その他の者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行う業務(相談援助業務)に2年以上従事したこととすること。(児童福祉法第13条第3項関係)

⑥ 児童福祉司の中には、他の児童福祉司がその職務を行うため必要な専門的技術に関する指導及び教育を行う児童福祉司(以下「スーパーバイザー」(※)という。)が含まれなければならないこと。(児童福祉法第13条第5項関係)

※ 法律上の名称は「指導教育担当児童福祉司」という。

⑦ スーパーバイザーは、児童福祉司としておおむね5年以上勤務した者であって、厚生労働大臣が定める基準に適合する研修の課程を修了したものでなければならないこと。(児童福祉法第13条第6項関係)

⑧ 都道府県は、保護者への指導(虐待防止法第11条第2項の指導及び児童虐待を行った保護者に対する児童福祉法第11条第1項第2号ニの規定による指導)を効果的に行うため、スーパーバイザーに児童福祉司がその職務を行うため必要な専門的技術に関する指導及び教育のほか保護者への指導を行う者に対する専門的技術に関する指導及び教育を行わせなければならないこと。(虐待防止法第11条第7項関係)

7 児童相談所の業務の質の評価の実施等(令和2年4月1日施行)

① 都道府県知事は、児童相談所が行う業務の質の評価を行うこと等により、当該業務の質の向上に努めなければならないこと。(児童福祉法第12条第6項関係)

② 国は、①の措置を援助するために、都道府県知事が行う児童相談所の業務の質の適切な評価の実施に資するための措置を講ずるよう努めなければならないこと。(児童福祉法第12条第7項)

8 児童虐待の再発防止のための措置(令和2年4月1日施行)

① 都道府県知事又は児童相談所長は、児童虐待を行った保護者について児童福祉法第27条第1項第2号又は第26条第1項第2号の規定により指導を行う場合は、当該保護者について、児童虐待の再発を防止するため、医学的又は心理学的知見に基づく指導を行うよう努めるものとすること。(虐待防止法第11条第1項関係)

② 都道府県知事が児童虐待を受けた児童について採られた施設入所等の措置を解除しようとするときの勘案事項に、当該児童の家庭環境が含まれる旨を明確化すること。(虐待防止法第13条第1項関係)

9 児童相談所の体制の強化に対する国の支援等の在り方の検討(公布日施行)

政府は、速やかに、児童相談所の職員の処遇の改善に資するための措置、一時保護所及び委託を受けて一時保護を行う者の量的拡充に係る方策、当該施設又は当該者が行う一時保護の質的向上に係る方策その他の児童相談所の体制の強化に対する国の支援その他の措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。(改正法附則第7条第1項関係)

10 児童の福祉に関し支援を行う者についての必要な資質の向上を図るための方策の検討(令和2年4月1日施行)

政府は、改正法の施行後1年を目途として、改正法の施行の状況等を勘案し、児童の福祉に関し専門的な知識及び技術を必要とする支援を行う者についての資格の在り方その他当該者についての必要な資質の向上を図るための方策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。(改正法附則第7条第3項関係)

Ⅲ 児童相談所の設置促進

1 児童相談所の管轄区域の策定基準(令和5年4月1日施行)

児童相談所の管轄区域は、地理的条件、人口、交通事情その他の社会的条件について政令で定める基準を参酌して都道府県が定めるものとすること。(児童福祉法第12条第2項関係)

2 中核市及び特別区に対する児童相談所の設置支援(令和2年4月1日施行)

① 政府は、改正法の施行後5年間を目途として、児童相談所及び一時保護所の整備の状況、児童福祉司その他の児童相談所の職員の確保の状況等を勘案し、中核市及び特別区が児童相談所を設置することができるよう、児童相談所及び一時保護所の整備並びに職員の確保及び育成の支援その他必要な措置を講ずるものとすること。(改正法附則第7条第6項関係)

② 政府は、①の支援を講ずるに当たっては、関係地方公共団体その他の関係団体との連携を図るものとすること。(改正法附則第7条第7項関係)

③ 政府は、改正法の施行後5年を目途として、①の支援その他必要な措置の実施状況、児童相談所の設置状況及び児童虐待をめぐる状況等を勘案し、児童相談所及び一時保護所の整備並びに職員の確保及び育成の支援の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。(改正法附則第7条第8項関係)

Ⅳ 関係機関間の連携強化

1 連携強化すべき関係機関の明確化(令和2年4月1日施行)

国及び地方公共団体による児童虐待の防止等のために必要な体制の整備に関し、強化を図るべき関係機関間の連携の例示として、関係地方公共団体相互間並びに市町村、児童相談所、福祉事務所、配偶者暴力相談支援センター、学校及び医療機関の間の連携を明記すること。(虐待防止法第4条第1項関係)

2 児童虐待の早期発見の努力義務の対象者の明確化(令和2年4月1日施行)

児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない団体に都道府県警察、婦人相談所、教育委員会及び配偶者暴力相談支援センターが含まれること、並びに児童虐待の早期発見に努めなければならない者に警察官及び婦人相談員が含まれることを明確化すること。(虐待防止法第5条第1項関係)

3 児童の福祉に職務上関係のある者の守秘義務(令和2年4月1日施行)

① 学校の教職員、児童福祉施設の職員等児童の福祉に職務上関係のある者は、正当な理由がなく、その職務に関して知り得た児童虐待を受けたと思われる児童に関する秘密を漏らしてはならないこと。(虐待防止法第5条第3項関係)

② ①の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、虐待防止法第5条第2項の規定による国及び地方公共団体の施策に協力するように努める義務の遵守を妨げるものと解釈してはならないこと。(虐待防止法第5条第4項関係)

4 DV対応と児童虐待対応との連携強化(令和2年4月1日施行)

DV被害者及びその同伴する家族の保護を行うに当たって、その適切な保護が行われるよう、相互に連携を図りながら協力するよう努めるべき関係機関に児童相談所が含まれることを明確化すること。(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第9条関係)

5 要保護児童対策地域協議会からの情報提供等の求めへの応答の努力義務(令和2年4月1日施行)

関係機関等は、児童福祉法第25条の3第1項の規定に基づき、要保護児童対策地域協議会から資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力の求めがあった場合には、これに応ずるよう努めなければならないこと。(児童福祉法第25条の3第2項関係)

6 児童が転居する場合の措置(令和2年4月1日施行)

児童相談所の所長は、児童虐待を受けた児童が住所又は居所を当該児童相談所の管轄区域外に移転する場合においては、当該児童の家庭環境その他の環境の変化による影響に鑑み、当該児童及び当該児童虐待を行った保護者について、その移転の前後において指導、助言その他の必要な支援が切れ目なく行われるよう、移転先の住所又は居所を管轄する児童相談所の所長に対し、速やかに必要な情報の提供を行うものとすること。この場合において、当該情報の提供を受けた児童相談所長は、要保護児童対策地域協議会が速やかに当該情報の交換を行うことができるための措置その他の緊密な連携を図るために必要な措置を講ずるものとすること。(虐待防止法第4条第6項関係)

Ⅴ 検討事項等

1 検討事項(③及び④は公布日施行、①及び②は令和2年4月1日施行)

政府は、Ⅰ2及び5、Ⅱ9及び10並びにⅢ2③に加え、以下の事項について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

① 政府は、改正法の施行後1年を目途として、要保護児童を適切に保護するために都道府県及び児童相談所が採る一時保護その他の措置に係る手続の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。(改正法附則第7条第2項関係)

② 政府は、改正法の施行後5年を目途として、改正法による改正後の児童福祉法及び虐待防止法の規定の施行の状況を勘案し、児童虐待の予防及び早期発見のための方策、児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援並びに保護者に対する指導及び支援の在り方その他の児童虐待の防止等に関する施策の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。(改正法附則第7条第9項関係)

③ 政府は、改正法の公布後3年を目途に、配偶者からの暴力の発見者による通報の対象となる配偶者からの暴力の形態及び保護命令の申立てをすることができる被害者の範囲の拡大について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。(改正法附則第8条第1項関係)

④ 政府は、この法律の公布後3年を目途に、配偶者からの暴力に係る加害者の地域社会における更生のための指導及び支援の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。(改正法附則第8条第2項関係)

2 経過措置等(一部の規定を除き令和2年4月1日施行)

この法律の施行に関し、必要な経過措置を定めるとともに、関係法律について所要の改正を行うこと。(改正法附則第2条から第5条まで及び第9条)