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○社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する政令の一部を改正する政令等の施行及び社会保障に関する日本国とスロバキア共和国との間の協定の発効に伴う実施事務の取扱いについて

(令和元年5月13日)

(年発0513第1号)

(日本年金機構理事長あて厚生労働省年金局長通知)

(公印省略)

社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律(平成19年法律第104号。以下「特例法」という。)等の内容については、「社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律等の施行について」(平成20年1月10日付庁保発第0110002号)において、社会保障協定の発効に伴う実施事務の取扱いについては、「社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律等の施行に伴う実施事務の取扱いについて」(平成20年1月10日付庁保険発第0110001号、社業発第30号)において、それぞれ通知しているところである。

その後、社会保障に関する日本国とスロバキア共和国との間の協定(以下「スロバキア協定」という。)及び社会保障に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定(以下「中国協定」という。)が国会で承認されたことに伴い、社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する政令の一部を改正する政令(平成31年政令第25号。以下「改正特例政令」という。)が平成31年2月15日に公布され、また、スロバキア協定及び中国協定に係る実施事務が相手国との間で確定したことを受けて社会保障協定の実施に伴う国民年金法施行規則及び厚生年金保険法施行規則の特例等に関する省令の一部を改正する省令(平成31年厚生労働省令第14号。以下「改正特例省令」という。)が同日に公布されたところである。

今般、スロバキア協定は、令和元年7月1日から効力を生ずることとなるところ、スロバキア協定の概要、改正特例政令(スロバキア協定に係る部分に限る。)及び改正特例省令(スロバキア協定に係る部分に限る。)の施行並びにスロバキア協定の発効に伴う実施事務の取扱いに関する主な内容は下記のとおりであるので、その内容について御承知いただき、その実施に当たってよろしくお取り計らい願いたい。

この通知において、改正特例政令(スロバキア協定に係る部分に限る。)による改正後の社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する政令(平成19年政令第347号)を「改正後特例政令」と、改正特例省令(スロバキア協定に係る部分に限る。)による改正後の社会保障協定の実施に伴う国民年金法施行規則及び厚生年金保険法施行規則の特例等に関する省令(平成20年厚生労働省令第2号)を「改正後特例省令」と、それぞれ略称する。

このほか、この通知における用語の意義は、スロバキア協定並びに特例法、改正後特例政令及び改正後特例省令における用語の意義によるものとする。

また、本通知の内容について、貴機構において年金事務所長等宛て周知のための文書を発出する場合には、当該文書を厚生労働省年金局長宛て併せて送付されたい。

なお、中国協定の概要、改正特例政令(中国協定に係る部分に限る。)並びに改正特例省令(中国協定に係る部分に限る。)の施行及び中国協定に関する実施事務の取扱いに関する主な内容については、中国協定の効力発生に必要な手続が終了次第、別途通知することとする。

Ⅰ スロバキア協定の概要

第1 スロバキア協定の概要

スロバキア協定は、日本国とスロバキア共和国(以下「スロバキア」という。)との間で年金制度の適用についての調整を行うとともに、両国での保険期間の通算によりそれぞれの国における年金の受給権を確立し、もって両国間の人的交流・経済交流の促進を図ることを目的とするものであり、その内容の大要は、次のとおりであること。

1 総則

(1) 「国民」、「法令」、「権限のある当局」、「実施機関」、「保険期間」、「給付」の用語はそれぞれ定義された意味を有すること(スロバキア協定第1条1)。

(2) スロバキア協定において定義されていない用語は、それぞれの締約国の適用される法令において与えられている意味を有するものとすること(スロバキア協定第1条2)。

(3) スロバキア協定中の部、章及び条の見出しは、引用上の便宜のためにのみ付されたものであって、スロバキア協定の解釈に影響を及ぼすものではないこと(スロバキア協定第1条3)。

(4) 日本国については、国民年金及び厚生年金保険についてそれぞれ適用すること(スロバキア協定第2条1)。

(5) スロバキアについては、社会保険法の年金給付(老齢給付、早期退職に伴う給付、障害給付、寡婦及び寡夫に対する給付、孤児に対する給付並びに同等にするための補足給付)に関連する条について適用すること。また、スロバキア協定第2部及び関連する規定に関しては、社会保険法の社会保険への加入に関連する条について適用すること(スロバキア協定第2条2)。

(6) スロバキア協定は、両締約国の法令の全ての改正についても適用すること。ただし、当該改正の前に当該法令によって規律され、又は実施されていた制度の範囲が当該改正により実質的に変更されない場合に限ること(スロバキア協定第2条3)。

(7) スロバキア協定は、一方の締約国の法令の適用を受けている者又は受けたことがある者並びにこれらの者に由来する権利を有する家族及び遺族について適用すること(スロバキア協定第3条)。

(8) スロバキア協定に別段の定めがある場合を除くほか、スロバキア協定第3条に規定する者であって一方の締約国の領域内に通常居住するものは、当該一方の締約国の法令の適用に際し、当該一方の締約国の国民と同等の待遇を受けること(スロバキア協定第4条)。

(9) スロバキア協定に別段の定めがある場合を除くほか、一方の締約国の領域外に通常居住すること又は当該領域内にいないことのみを理由として給付を受ける権利の取得又は給付の支払を制限する当該一方の締約国の法令の規定は、他方の締約国の領域内に通常居住する者については、適用しないこと(スロバキア協定第5条1)。

(10) 一方の締約国の法令による給付は、スロバキア協定第3条に規定する者であって第三国の領域内に通常居住するものに対しては、当該一方の締約国の国民に対して支給する場合と同一の条件で支給すること(スロバキア協定第5条2)。

2 適用法令に関する規定

(1) スロバキア協定に別段の定めがある場合を除くほか、一方の締約国の領域内で被用者又は自営業者として就労する者については、その就労又は自営活動に関し、当該一方の締約国の法令のみを適用すること(スロバキア協定第6条)。

(2) 一方の締約国の法令に基づく制度に加入し、かつ、当該一方の締約国の領域内に事業所を有する雇用者に当該領域内で雇用されている被用者が、他方の締約国の領域内で就労するために当該雇用者により当該一方の締約国の領域又は第三国の領域から派遣され、かつ、次のいずれかに該当する場合には、当該被用者については、その就労に関し、当該被用者が派遣された日から五年の期間が満了するまで、当該被用者が当該一方の締約国の領域内で就労しているものとみなして当該一方の締約国の法令のみを適用すること

①当該他方の締約国の領域内で雇用契約を締結していない場合

②当該他方の締約国の領域内に事業所を有する雇用者と雇用契約を締結しているが、当該一方の締約国の領域内に事業所を有する雇用者の指揮の下にある場合(スロバキア協定第7条1)。

(3) スロバキア協定第7条1に規定する派遣が五年を超えて継続される場合には、両締約国の権限のある当局又は実施機関は、当該派遣に係る被用者に対し、同条1に規定する一方の締約国の法令のみを三年を超えない期間引き続き適用することについて合意することができること(スロバキア協定第7条2)。

(4) 一方の締約国の法令に基づく制度に加入し、かつ、当該一方の締約国の領域内で自営業者として通常就労する者が、他方の締約国の領域内でのみ自営業者として一時的に就労する場合には、その者については、当該他方の締約国の領域内における自営活動の開始から五年の期間が満了するまで、その者が当該一方の締約国の領域内で就労しているものとみなして当該一方の締約国の法令のみを適用すること(スロバキア協定第7条3)。

(5) スロバキア協定第7条3に規定する他方の締約国の領域内における自営活動が五年を超えて継続される場合には、両締約国の権限のある当局又は実施機関は、当該自営活動に係る自営業者に対し、同条3に規定する一方の締約国の法令のみを三年を超えない期間引き続き適用することについて合意することができること(スロバキア協定第7条4)。

(6) 一方の締約国の旗を掲げる海上航行船舶において就労する者については、

①当該者が被用者である場合には、その者の雇用者がその領域内に所在する締約国の法令のみを適用すること。

②当該者が自営業者である場合には、その者がその領域内に通常居住する締約国の法令のみを適用すること(スロバキア協定第8条)。

(7) スロバキア協定のいかなる規定も、千九百六十一年四月十八日の外交関係に関するウィーン条約又は千九百六十三年四月二十四日の領事関係に関するウィーン条約の規定に影響を及ぼすものではないこと(スロバキア協定第9条1)。

(8) スロバキア協定第9条1の規定に従うことを条件として、一方の締約国の公務員又は当該一方の締約国の法令において公務員として取り扱われる者が他方の締約国の領域内で就労するために派遣される場合には、その者については、当該一方の締約国の領域内で就労しているものとみなして当該一方の締約国の法令のみを適用すること(スロバキア協定第9条2)。

(9) 両締約国の権限のある当局又は実施機関は、被用者及び雇用者の申請又は自営業者の申請に基づき、特定の者又は特定の範囲の者の利益のため、これらの特定の者又は特定の範囲の者にいずれか一方の締約国の法令が適用されることを条件として、スロバキア協定第6条から第9条までの規定の例外を認めることについて合意することができること(スロバキア協定第10条)。

(10) 日本国の領域内で就労する者であって、スロバキア協定第7条、第9条2又は第10条の規定によりスロバキアの法令のみの適用を受けるものに同行する配偶者又は子については、社会保障に関する協定の実施に関する日本国の法令に定める要件を満たすことを条件として、スロバキア協定第2条1(a)に掲げる日本国の年金制度に関する日本国の法令の適用を免除すること。ただし、当該配偶者又は子が別段の申出を行う場合には、この規定は、適用しないこと(スロバキア協定第11条)。

(11) スロバキア協定第21条1(b)の規定に従い一方の締約国の権限のある当局によって指定された連絡機関は、被用者及び雇用者の申請又は自営業者の申請に基づき、当該被用者又は当該自営業者が当該一方の締約国の法令の適用を受けていることを証明すること(スロバキア協定第12条)。

(12) スロバキア協定第6条から第8条まで、第9条2及び第11条の規定は、各締約国の法令における強制加入についてのみ適用すること(スロバキア協定第13条)。

3 給付に関する規定

(1) 日本国の実施機関は、日本国の給付を受ける権利の取得のための要件を満たすために十分な保険期間を有しない者について、スロバキア協定第14条の規定に基づいて給付を受ける権利を確立するため、日本国の法令による保険期間と重複しない限りにおいて、スロバキアの法令による保険期間を考慮すること。ただし、この規定は、死亡又は脱退を理由とするスロバキア協定第2条1に掲げる日本国の年金制度の下での一時金については、適用しないこと(スロバキア協定第14条1)。

(2) スロバキア協定第14条1の規定の適用に当たっては、スロバキアの法令による保険期間は、厚生年金保険の保険期間及びこれに対応する国民年金の保険期間として考慮すること(スロバキア協定第14条2)。

(3) 給付に関して日本側にのみ適用される特別の事項を定めること(スロバキア協定第15条~第17条)。

(4) スロバキアの実施機関は、両締約国の法令による保険期間が成立している場合には、スロバキア協定に別段の定めがある場合を除くほか、スロバキアの法令による給付を受ける資格を決定するに当たり、スロバキアの法令による保険期間と重複しない限りにおいて、日本国の法令による保険期間についても考慮すること(スロバキア協定第18条)。

(5) 給付に関してスロバキア側にのみ適用される特別の事項を定めること(スロバキア協定第19条~第20条)。

4 雑則

(1) 両締約国の権限のある当局は、スロバキア協定の実施のために必要な行政上の取決めについて合意し、連絡機関を指定すること。また、自国の法令の変更(スロバキア協定の実施に影響を及ぼすものに限る。)に関する全ての情報をできる限り速やかに相互に通報すること(スロバキア協定第21条1)。

(2) 両締約国の権限のある当局及び実施機関は、それぞれの権限の範囲内で、スロバキア協定の実施のために必要な援助を提供すること。この援助は、無償で行うこと(スロバキア協定第21条2)。

(3) 一方の締約国の権限のある当局又は実施機関は、当該一方の締約国の法令の下で収集された個人に関する情報(この協定の実施のために必要なものに限る。)を当該一方の締約国の法律及び規則に従って他方の締約国の権限のある当局又は実施機関に伝達すること。当該他方の締約国の法律及び規則により必要とされない限り、当該情報については、スロバキア協定を実施する目的のためにのみ使用すること(スロバキア協定第22条1)。

(4) 一方の締約国の権限のある当局又は実施機関の要請がある場合には、他方の締約国の権限のある当局又は実施機関は、当該他方の締約国の法令の下で収集された個人に関する情報であって、スロバキア協定第22条1に規定する情報以外のもの(当該一方の締約国の法令の実施のために必要なものに限る。)を当該他方の締約国の法令その他関連する法律及び規則に従って当該一方の締約国の権限のある当局又は実施機関に伝達することができること。当該一方の締約国の法律及び規則により必要とされない限り、当該情報については、当該一方の締約国の法令を実施する目的のためにのみ使用すること(スロバキア協定第22条2)。

(5) 一方の締約国が受領するスロバキア協定第22条1及び2に規定する情報は、個人に関する情報の秘密の保護のための当該一方の締約国の法律及び規則により規律されること(スロバキア協定第22条3)。

(6) 一方の締約国の法令その他関連する法律及び規則において、当該一方の締約国の法令の適用に際して提出すべき文書に係る行政上又は領事事務上の手数料の免除又は軽減に関して規定する場合には、これらの規定は、スロバキア協定及び他方の締約国の法令の適用に際して提出すべき文書についても、適用すること(スロバキア協定第23条1)。

(7) スロバキア協定及び一方の締約国の法令の適用に際して提出される文書については、外交機関又は領事機関による認証その他これに類する手続を要しないこと(スロバキア協定第23条2)。

(8) スロバキア協定の実施に際し、一方の締約国の権限のある当局及び実施機関は、日本語、スロバキア語又は英語で作成されていることを理由として申請書その他の文書の受理を拒否してはならないこと(スロバキア協定第24条1)。

(9) 両締約国の権限のある当局及び実施機関は、スロバキア協定又はスロバキア協定が適用される法令の適用上必要な場合には、相互に、及び関係者(その居住地を問わない。)に対して、直接に連絡することができること。その連絡は、日本語、スロバキア語又は英語により行うことができること(スロバキア協定第24条2)。

(10) 一方の締約国の法令に基づく文書による給付の申請、不服申立てその他申告が他方の締約国の法令に基づく類似の申請、不服申立てその他申告を受理する権限を有する当該他方の締約国の権限のある当局又は実施機関に提出された場合には、当該給付の申請、不服申立てその他申告については、その提出の日に当該一方の締約国の権限のある当局又は実施機関に提出されたものとみなすものとし、当該一方の締約国の手続及び法令に従って取り扱うこと(スロバキア協定第25条1)。

(11) 一方の締約国の権限のある当局又は実施機関は、スロバキア協定第25条1の規定に従って提出された給付の申請、不服申立てその他申告を遅滞なく他方の締約国の権限のある当局又は実施機関に伝達すること(スロバキア協定第25条2)。

(12) スロバキア協定に基づく給付の支払は、いずれの締約国の通貨によっても行うことができること(スロバキア協定第26条1)。

(13) いずれか一方の締約国が外国為替取引又は海外送金を制限する措置を実施する場合には、両締約国の政府は、スロバキア協定に基づく当該一方の締約国による給付の支払を確保するために必要な措置について、直ちに協議すること(スロバキア協定第26条2)。

(14) スロバキア協定の解釈又は適用についての意見の相違は、両締約国の関係当局間の協議により解決すること(スロバキア協定第27条)。

5 経過規定及び最終規定

(1) スロバキア協定は、その効力発生前に給付を受ける権利を確立させるものではないこと(スロバキア協定第28条1)。

(2) スロバキア協定の実施に当たっては、スロバキア協定の効力発生前の保険期間及び他の法的に関連する事実についても考慮すること(スロバキア協定第28条2)。

(3) スロバキア協定の効力発生前に行われた決定は、スロバキア協定により確立されるいかなる権利にも影響を及ぼすものではないこと(スロバキア協定第28条3)。

(4) スロバキア協定の適用の結果として、受給者に対し、スロバキア協定の効力発生前に権利が確立された給付の額を減額してはならないこと(スロバキア協定第28条4)。

(5) スロバキア協定第7条1又は3の規定の適用に当たっては、スロバキア協定の効力発生前から一方の締約国の領域内で就労していた者については、同条1に規定する派遣の期間又は同条3に規定する自営活動の期間は、スロバキア協定の効力発生の日に開始したものとみなすこと(スロバキア協定第28条5)。

(6) スロバキア協定は、両締約国が、スロバキア協定の効力発生に必要なそれぞれの憲法上の要件が満たされた旨を相互に通告する外交上の公文を交換した月の後三箇月目の月の初日に効力を生ずること(スロバキア協定第29条)。

(7) スロバキア協定は、無期限に効力を有すること。いずれの締約国も、外交上の経路を通じて他方の締約国に対し書面によりスロバキア協定の終了の通告を行うことができること。この場合には、スロバキア協定は、終了の通告が行われた月の後十二箇月目の月の末日まで効力を有すること(スロバキア協定第30条1)。

(8) スロバキア協定がスロバキア協定第30条1の規定に従って終了する場合には、終了の日前に給付の申請を提出し、かつ、当該給付を受ける権利の取得のための要件を満たす者がスロバキア協定に基づいて取得した当該給付を受ける権利及び当該給付の支払に関する権利は、維持されること(スロバキア協定第30条2)。

第2 スロバキア協定における主な留意点

1 二重加入の防止の対象となる制度

二重加入の防止の対象となる制度は、日本国については年金制度、スロバキアについては年金制度、医療保険制度(現金給付)、雇用保険制度及び労災保険制度等であること。なお、スロバキアの社会保障制度は一体的に適用されるため、日本国の年金制度に対応する制度とともに、他の制度も一体的に適用又は免除されること。

2 二重加入の防止の規定

(1) 被用者の派遣又は自営活動を行う者に関し、当該被用者又は自営業者が一方の締約国の法令に基づく制度に加入し、当該被用者が雇用主により当該一方の締約国の領域から他方の締約国の領域内において就労するために派遣される場合、又は当該自営業者が他方の締約国の領域内において自営業者として一時的に就労する場合、当該被用者が派遣された日又は当該自営業者が他方の締約国の領域内において自営活動を開始した日から5年の期間が満了するまで当該一方の締約国の法令のみが適用されること。

(2) 派遣期間の延長については、両締約国の権限のある当局又は実施機関において、3年を超えない期間、引き続き一方の締約国の制度にのみ加入することについて合意することができること。

3 年金加入期間の通算の規定

(1) スロバキア協定による通算の対象となる給付は、老齢給付、障害給付及び遺族給付であること。

(2) スロバキアの法令による年金給付の支給に当たって、スロバキアの法令による年金給付の受給資格要件を満たしていない場合には、スロバキアの法令による保険期間と重複しない範囲において、日本国の法令による保険期間を通算することができること。

Ⅱ 改正後特例政令及び改正後特例省令における厚生年金保険法等の特例関係

第1 改正後特例政令における厚生年金保険法等の特例関係

1 厚生年金保険の加入の特例

厚生年金保険の加入の特例制度の対象となる社会保障協定について、スロバキア協定を追加すること(特例法第25条及び改正後特例政令第50条)。

2 給付の支給要件等に関する特例

(1) 通算の対象給付

障害手当金について、スロバキア協定に係る通算の対象給付とすること(特例法第29条及び改正後特例政令第61条)。

(2) 通算の対象期間

相手国期間のうち、スロバキア協定にあっては昭和17年6月以後の期間を通算の対象とすること(特例法第10条から第12条及び第27条から第30条並びに附則第4条から第6条、第9条から第11条及び第14条。改正後特例政令第21条第1項、第22条、第24条、第25条、第56条第1項、第57条、第58条、第102条、第106条第5項、第110条第4項、第113条、第116条、第120条第5項、第125条第4項、第130条第3項、第131条、第132条第1項及び第137条第1項)。

(3) 特例法により支給される給付の計算方法

障害基礎年金、遺族基礎年金、障害厚生年金(障害者となった者の厚生年金被保険者であった期間が300月未満の場合に限る。)及び遺族厚生年金(死亡した者の厚生年金被保険者であった期間が300月未満の場合に限る。)並びに障害手当金等の計算に用いるあん分率について、スロバキア協定については、日本国の法令による保険期間と昭和17年6月以後の相手国期間とを合算した期間に基づくあん分率により、給付等の額を計算すること(特例法第13条、第15条、第16条、第19条、第20条、第32条、第33条及び第38条から第40条並びに附則第4条、第5条、第9条及び第10条。改正後特例政令第34条、第35条、第38条、第40条、第72条、第73条、第77条、第84条第3項、第105条、第108条、第119条、第123条及び第127条第3項)。

第2 改正後特例省令における国民年金法施行規則及び厚生年金保険法施行規則の特例関係

1 国民年金の被保険者に係る適用証明書交付申請書等の記載事項

スロバキア協定に係る国民年金の適用証明書交付申請書及び適用証明期間継続・延長申請書に係る記載事項について、他の社会保障協定に係る各申請書と共通する記載事項のほか、申請者に日本国の領域内における就労に係る雇用主があり、かつ、スロバキアの領域内における就労が当該雇用主の命によるものであるときは、その旨及び次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に定める事項を記載することを定めたこと(改正後特例省令第2条及び第3条)。

(1) 申請者がスロバキアの領域内における就労に関し他の雇用契約を締結しないときは、その旨

(2) 申請者がスロバキアの領域内における就労に関しスロバキアの領域内に事業所を有する雇用主と雇用契約を締結し、かつ、日本の領域内における就労に係る雇用主の指揮の下にあるときは、その旨

2 厚生年金保険の被保険者に係る適用証明書交付申請書等の記載事項

スロバキア協定に係る厚生年金保険の適用証明書交付申請書及び適用証明期間継続・延長申請書に係る記載事項について、他の社会保障協定に係る各申請書と共通する記載事項のほか、次の内容を定めたこと(改正後特例省令第6条及び第7条)。

(1) 申請者がスロバキアの領域内における就労に関し他の雇用契約を締結しないときは、その旨

(2) 申請者がスロバキアの領域内における就労に関しスロバキアの領域内に事業所を有する雇用主と雇用契約を締結し、かつ、日本の領域内における就労に係る雇用主の指揮の下にあるときは、その旨

Ⅲ スロバキア協定の実施事務における主な留意点

第1 適用に係る主な留意点

適用証明書の交付申請書において、スロバキアの領域内における就労に関する他の雇用契約の締結の有無のほか、他の雇用契約を締結する場合にあっては、日本の領域内に事業所を有する雇用主の指揮の下にある旨を記載すること。

第2 給付に係る主な留意点

スロバキアの法令による年金給付は、年金事務所で受け付ける際、口頭による申請ができないこと。

第3 その他

1 スロバキア協定を実施するための様式については、別添のとおりであること。

2 スロバキアの社会保障制度は一体的に適用されるため、スロバキアの領域内で就労する者のうち、スロバキア協定の適用調整規定により日本国の法令のみの適用を受ける者については、日本国及びスロバキアのいずれの国においても強制的な労災保険が適用されない状態が生じ得ること。そのため、これらの者については、年金事務所等の受付窓口において、日本国の労災保険制度への特別加入又は民間の労災保険への加入の周知をすること。

Ⅳ 施行期日

改正特例政令(スロバキア協定に係る部分に限る。)及び改正特例省令(スロバキア協定に係る部分に限る。)は、スロバキア協定の効力の発生の日(令和元年7月1日)から施行すること。

この通知は、スロバキア協定の効力の発生の日(令和元年7月1日)から適用するものであること。

○社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する政令の一部を改正する政令等の施行及び社会保障に関する日本国とスロバキア共和国との間の協定の発効に伴う実施事務の取扱いについて

(令和元年5月13日)

(年発0513第2号)

(地方厚生(支)局長あて厚生労働省年金局長通知)

(公印省略)

社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律(平成19年法律第104号。以下「特例法」という。)等の内容については、「社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律等の施行について」(平成20年1月10日付庁保発第0110002号)において、社会保障協定の発効に伴う実施事務の取扱いについては、「社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律等の施行に伴う実施事務の取扱いについて」(平成20年1月10日付庁保険発第0110001号、社業発第30号)において、それぞれ通知しているところである。

その後、社会保障に関する日本国とスロバキア共和国との間の協定(以下「スロバキア協定」という。)及び社会保障に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定(以下「中国協定」という。)が国会で承認されたことに伴い、社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する政令の一部を改正する政令(平成31年政令第25号。以下「改正特例政令」という。)が平成31年2月15日に公布され、また、スロバキア協定及び中国協定に係る実施事務が相手国との間で確定したことを受けて社会保障協定の実施に伴う国民年金法施行規則及び厚生年金保険法施行規則の特例等に関する省令の一部を改正する省令(平成31年厚生労働省令第14号。以下「改正特例省令」という。)が同日に公布されたところである。

今般、スロバキア協定は、令和元年7月1日から効力を生ずることとなるところ、スロバキア協定の概要、改正特例政令(スロバキア協定に係る部分に限る。)及び改正特例省令(スロバキア協定に係る部分に限る。)の施行並びにスロバキア協定の発効に伴う実施事務の取扱いに関する主な内容は下記のとおりであるので、その内容について御承知いただき、その実施に当たってよろしくお取り計らい願いたい。あわせて、貴管内各市区町村へ周知方よろしく取り計らわれたい。

この通知において、改正特例政令(スロバキア協定に係る部分に限る。)による改正後の社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する政令(平成19年政令第347号)を「改正後特例政令」と、改正特例省令(スロバキア協定に係る部分に限る。)による改正後の社会保障協定の実施に伴う国民年金法施行規則及び厚生年金保険法施行規則の特例等に関する省令(平成20年厚生労働省令第2号)を「改正後特例省令」と、それぞれ略称する。

このほか、この通知における用語の意義は、スロバキア協定並びに特例法、改正後特例政令及び改正後特例省令における用語の意義によるものとする。

なお、中国協定の概要、改正特例政令(中国協定に係る部分に限る。)並びに改正特例省令(中国協定に係る部分に限る。)の施行及び中国協定に関する実施事務の取扱いに関する主な内容については、中国協定の効力発生に必要な手続が終了次第、別途通知することとする。

Ⅰ スロバキア協定の概要

第1 スロバキア協定の概要

スロバキア協定は、日本国とスロバキア共和国(以下「スロバキア」という。)との間で年金制度の適用についての調整を行うとともに、両国での保険期間の通算によりそれぞれの国における年金の受給権を確立し、もって両国間の人的交流・経済交流の促進を図ることを目的とするものであり、その内容の大要は、次のとおりであること。

1 総則

(1) 「国民」、「法令」、「権限のある当局」、「実施機関」、「保険期間」、「給付」の用語はそれぞれ定義された意味を有すること(スロバキア協定第1条1)。

(2) スロバキア協定において定義されていない用語は、それぞれの締約国の適用される法令において与えられている意味を有するものとすること(スロバキア協定第1条2)。

(3) スロバキア協定中の部、章及び条の見出しは、引用上の便宜のためにのみ付されたものであって、スロバキア協定の解釈に影響を及ぼすものではないこと(スロバキア協定第1条3)。

(4) 日本国については、国民年金及び厚生年金保険についてそれぞれ適用すること(スロバキア協定第2条1)。

(5) スロバキアについては、社会保険法の年金給付(老齢給付、早期退職に伴う給付、障害給付、寡婦及び寡夫に対する給付、孤児に対する給付並びに同等にするための補足給付)に関連する条について適用すること。また、スロバキア協定第2部及び関連する規定に関しては、社会保険法の社会保険への加入に関連する条について適用すること(スロバキア協定第2条2)。

(6) スロバキア協定は、両締約国の法令の全ての改正についても適用すること。ただし、当該改正の前に当該法令によって規律され、又は実施されていた制度の範囲が当該改正により実質的に変更されない場合に限ること(スロバキア協定第2条3)。

(7) スロバキア協定は、一方の締約国の法令の適用を受けている者又は受けたことがある者並びにこれらの者に由来する権利を有する家族及び遺族について適用すること(スロバキア協定第3条)。

(8) スロバキア協定に別段の定めがある場合を除くほか、スロバキア協定第3条に規定する者であって一方の締約国の領域内に通常居住するものは、当該一方の締約国の法令の適用に際し、当該一方の締約国の国民と同等の待遇を受けること(スロバキア協定第4条)。

(9) スロバキア協定に別段の定めがある場合を除くほか、一方の締約国の領域外に通常居住すること又は当該領域内にいないことのみを理由として給付を受ける権利の取得又は給付の支払を制限する当該一方の締約国の法令の規定は、他方の締約国の領域内に通常居住する者については、適用しないこと(スロバキア協定第5条1)。

(10) 一方の締約国の法令による給付は、スロバキア協定第3条に規定する者であって第三国の領域内に通常居住するものに対しては、当該一方の締約国の国民に対して支給する場合と同一の条件で支給すること(スロバキア協定第5条2)。

2 適用法令に関する規定

(1) スロバキア協定に別段の定めがある場合を除くほか、一方の締約国の領域内で被用者又は自営業者として就労する者については、その就労又は自営活動に関し、当該一方の締約国の法令のみを適用すること(スロバキア協定第6条)。

(2) 一方の締約国の法令に基づく制度に加入し、かつ、当該一方の締約国の領域内に事業所を有する雇用者に当該領域内で雇用されている被用者が、他方の締約国の領域内で就労するために当該雇用者により当該一方の締約国の領域又は第三国の領域から派遣され、かつ、次のいずれかに該当する場合には、当該被用者については、その就労に関し、当該被用者が派遣された日から五年の期間が満了するまで、当該被用者が当該一方の締約国の領域内で就労しているものとみなして当該一方の締約国の法令のみを適用すること

①当該他方の締約国の領域内で雇用契約を締結していない場合

②当該他方の締約国の領域内に事業所を有する雇用者と雇用契約を締結しているが、当該一方の締約国の領域内に事業所を有する雇用者の指揮の下にある場合(スロバキア協定第7条1)。

(3) スロバキア協定第7条1に規定する派遣が五年を超えて継続される場合には、両締約国の権限のある当局又は実施機関は、当該派遣に係る被用者に対し、同条1に規定する一方の締約国の法令のみを三年を超えない期間引き続き適用することについて合意することができること(スロバキア協定第7条2)。

(4) 一方の締約国の法令に基づく制度に加入し、かつ、当該一方の締約国の領域内で自営業者として通常就労する者が、他方の締約国の領域内でのみ自営業者として一時的に就労する場合には、その者については、当該他方の締約国の領域内における自営活動の開始から五年の期間が満了するまで、その者が当該一方の締約国の領域内で就労しているものとみなして当該一方の締約国の法令のみを適用すること(スロバキア協定第7条3)。

(5) スロバキア協定第7条3に規定する他方の締約国の領域内における自営活動が五年を超えて継続される場合には、両締約国の権限のある当局又は実施機関は、当該自営活動に係る自営業者に対し、同条3に規定する一方の締約国の法令のみを三年を超えない期間引き続き適用することについて合意することができること(スロバキア協定第7条4)。

(6) 一方の締約国の旗を掲げる海上航行船舶において就労する者については、

①当該者が被用者である場合には、その者の雇用者がその領域内に所在する締約国の法令のみを適用すること。

②当該者が自営業者である場合には、その者がその領域内に通常居住する締約国の法令のみを適用すること(スロバキア協定第8条)。

(7) スロバキア協定のいかなる規定も、千九百六十一年四月十八日の外交関係に関するウィーン条約又は千九百六十三年四月二十四日の領事関係に関するウィーン条約の規定に影響を及ぼすものではないこと(スロバキア協定第9条1)。

(8) スロバキア協定第9条1の規定に従うことを条件として、一方の締約国の公務員又は当該一方の締約国の法令において公務員として取り扱われる者が他方の締約国の領域内で就労するために派遣される場合には、その者については、当該一方の締約国の領域内で就労しているものとみなして当該一方の締約国の法令のみを適用すること(スロバキア協定第9条2)。

(9) 両締約国の権限のある当局又は実施機関は、被用者及び雇用者の申請又は自営業者の申請に基づき、特定の者又は特定の範囲の者の利益のため、これらの特定の者又は特定の範囲の者にいずれか一方の締約国の法令が適用されることを条件として、スロバキア協定第6条から第9条までの規定の例外を認めることについて合意することができること(スロバキア協定第10条)。

(10) 日本国の領域内で就労する者であって、スロバキア協定第7条、第9条2又は第10条の規定によりスロバキアの法令のみの適用を受けるものに同行する配偶者又は子については、社会保障に関する協定の実施に関する日本国の法令に定める要件を満たすことを条件として、スロバキア協定第2条1(a)に掲げる日本国の年金制度に関する日本国の法令の適用を免除すること。ただし、当該配偶者又は子が別段の申出を行う場合には、この規定は、適用しないこと(スロバキア協定第11条)。

(11) スロバキア協定第21条1(b)の規定に従い一方の締約国の権限のある当局によって指定された連絡機関は、被用者及び雇用者の申請又は自営業者の申請に基づき、当該被用者又は当該自営業者が当該一方の締約国の法令の適用を受けていることを証明すること(スロバキア協定第12条)。

(12) スロバキア協定第6条から第8条まで、第9条2及び第11条の規定は、各締約国の法令における強制加入についてのみ適用すること(スロバキア協定第13条)。

3 給付に関する規定

(1) 日本国の実施機関は、日本国の給付を受ける権利の取得のための要件を満たすために十分な保険期間を有しない者について、スロバキア協定第14条の規定に基づいて給付を受ける権利を確立するため、日本国の法令による保険期間と重複しない限りにおいて、スロバキアの法令による保険期間を考慮すること。ただし、この規定は、死亡又は脱退を理由とするスロバキア協定第2条1に掲げる日本国の年金制度の下での一時金については、適用しないこと(スロバキア協定第14条1)。

(2) スロバキア協定第14条1の規定の適用に当たっては、スロバキアの法令による保険期間は、厚生年金保険の保険期間及びこれに対応する国民年金の保険期間として考慮すること(スロバキア協定第14条2)。

(3) 給付に関して日本側にのみ適用される特別の事項を定めること(スロバキア協定第15条~第17条)。

(4) スロバキアの実施機関は、両締約国の法令による保険期間が成立している場合には、スロバキア協定に別段の定めがある場合を除くほか、スロバキアの法令による給付を受ける資格を決定するに当たり、スロバキアの法令による保険期間と重複しない限りにおいて、日本国の法令による保険期間についても考慮すること(スロバキア協定第18条)。

(5) 給付に関してスロバキア側にのみ適用される特別の事項を定めること(スロバキア協定第19条~第20条)。

4 雑則

(1) 両締約国の権限のある当局は、スロバキア協定の実施のために必要な行政上の取決めについて合意し、連絡機関を指定すること。また、自国の法令の変更(スロバキア協定の実施に影響を及ぼすものに限る。)に関する全ての情報をできる限り速やかに相互に通報すること(スロバキア協定第21条1)。

(2) 両締約国の権限のある当局及び実施機関は、それぞれの権限の範囲内で、スロバキア協定の実施のために必要な援助を提供すること。この援助は、無償で行うこと(スロバキア協定第21条2)。

(3) 一方の締約国の権限のある当局又は実施機関は、当該一方の締約国の法令の下で収集された個人に関する情報(この協定の実施のために必要なものに限る。)を当該一方の締約国の法律及び規則に従って他方の締約国の権限のある当局又は実施機関に伝達すること。当該他方の締約国の法律及び規則により必要とされない限り、当該情報については、スロバキア協定を実施する目的のためにのみ使用すること(スロバキア協定第22条1)。

(4) 一方の締約国の権限のある当局又は実施機関の要請がある場合には、他方の締約国の権限のある当局又は実施機関は、当該他方の締約国の法令の下で収集された個人に関する情報であって、スロバキア協定第22条1に規定する情報以外のもの(当該一方の締約国の法令の実施のために必要なものに限る。)を当該他方の締約国の法令その他関連する法律及び規則に従って当該一方の締約国の権限のある当局又は実施機関に伝達することができること。当該一方の締約国の法律及び規則により必要とされない限り、当該情報については、当該一方の締約国の法令を実施する目的のためにのみ使用すること(スロバキア協定第22条2)。

(5) 一方の締約国が受領するスロバキア協定第22条1及び2に規定する情報は、個人に関する情報の秘密の保護のための当該一方の締約国の法律及び規則により規律されること(スロバキア協定第22条3)。

(6) 一方の締約国の法令その他関連する法律及び規則において、当該一方の締約国の法令の適用に際して提出すべき文書に係る行政上又は領事事務上の手数料の免除又は軽減に関して規定する場合には、これらの規定は、スロバキア協定及び他方の締約国の法令の適用に際して提出すべき文書についても、適用すること(スロバキア協定第23条1)。

(7) スロバキア協定及び一方の締約国の法令の適用に際して提出される文書については、外交機関又は領事機関による認証その他これに類する手続を要しないこと(スロバキア協定第23条2)。

(8) スロバキア協定の実施に際し、一方の締約国の権限のある当局及び実施機関は、日本語、スロバキア語又は英語で作成されていることを理由として申請書その他の文書の受理を拒否してはならないこと(スロバキア協定第24条1)。

(9) 両締約国の権限のある当局及び実施機関は、スロバキア協定又はスロバキア協定が適用される法令の適用上必要な場合には、相互に、及び関係者(その居住地を問わない。)に対して、直接に連絡することができること。その連絡は、日本語、スロバキア語又は英語により行うことができること(スロバキア協定第24条2)。

(10) 一方の締約国の法令に基づく文書による給付の申請、不服申立てその他申告が他方の締約国の法令に基づく類似の申請、不服申立てその他申告を受理する権限を有する当該他方の締約国の権限のある当局又は実施機関に提出された場合には、当該給付の申請、不服申立てその他申告については、その提出の日に当該一方の締約国の権限のある当局又は実施機関に提出されたものとみなすものとし、当該一方の締約国の手続及び法令に従って取り扱うこと(スロバキア協定第25条1)。

(11) 一方の締約国の権限のある当局又は実施機関は、スロバキア協定第25条1の規定に従って提出された給付の申請、不服申立てその他申告を遅滞なく他方の締約国の権限のある当局又は実施機関に伝達すること(スロバキア協定第25条2)。

(12) スロバキア協定に基づく給付の支払は、いずれの締約国の通貨によっても行うことができること(スロバキア協定第26条1)。

(13) いずれか一方の締約国が外国為替取引又は海外送金を制限する措置を実施する場合には、両締約国の政府は、スロバキア協定に基づく当該一方の締約国による給付の支払を確保するために必要な措置について、直ちに協議すること(スロバキア協定第26条2)。

(14) スロバキア協定の解釈又は適用についての意見の相違は、両締約国の関係当局間の協議により解決すること(スロバキア協定第27条)。

5 経過規定及び最終規定

(1) スロバキア協定は、その効力発生前に給付を受ける権利を確立させるものではないこと(スロバキア協定第28条1)。

(2) スロバキア協定の実施に当たっては、スロバキア協定の効力発生前の保険期間及び他の法的に関連する事実についても考慮すること(スロバキア協定第28条2)。

(3) スロバキア協定の効力発生前に行われた決定は、スロバキア協定により確立されるいかなる権利にも影響を及ぼすものではないこと(スロバキア協定第28条3)。

(4) スロバキア協定の適用の結果として、受給者に対し、スロバキア協定の効力発生前に権利が確立された給付の額を減額してはならないこと(スロバキア協定第28条4)。

(5) スロバキア協定第7条1又は3の規定の適用に当たっては、スロバキア協定の効力発生前から一方の締約国の領域内で就労していた者については、同条1に規定する派遣の期間又は同条3に規定する自営活動の期間は、スロバキア協定の効力発生の日に開始したものとみなすこと(スロバキア協定第28条5)。

(6) スロバキア協定は、両締約国が、スロバキア協定の効力発生に必要なそれぞれの憲法上の要件が満たされた旨を相互に通告する外交上の公文を交換した月の後三箇月目の月の初日に効力を生ずること(スロバキア協定第29条)。

(7) スロバキア協定は、無期限に効力を有すること。いずれの締約国も、外交上の経路を通じて他方の締約国に対し書面によりスロバキア協定の終了の通告を行うことができること。この場合には、スロバキア協定は、終了の通告が行われた月の後十二箇月目の月の末日まで効力を有すること(スロバキア協定第30条1)。

(8) スロバキア協定がスロバキア協定第30条1の規定に従って終了する場合には、終了の日前に給付の申請を提出し、かつ、当該給付を受ける権利の取得のための要件を満たす者がスロバキア協定に基づいて取得した当該給付を受ける権利及び当該給付の支払に関する権利は、維持されること(スロバキア協定第30条2)。

第2 スロバキア協定における主な留意点

1 二重加入の防止の対象となる制度

二重加入の防止の対象となる制度は、日本国については年金制度、スロバキアについては年金制度、医療保険制度(現金給付)、雇用保険制度及び労災保険制度等であること。なお、スロバキアの社会保障制度は一体的に適用されるため、日本国の年金制度に対応する制度とともに、他の制度も一体的に適用又は免除されること。

2 二重加入の防止の規定

(1) 被用者の派遣又は自営活動を行う者に関し、当該被用者又は自営業者が一方の締約国の法令に基づく制度に加入し、当該被用者が雇用主により当該一方の締約国の領域から他方の締約国の領域内において就労するために派遣される場合、又は当該自営業者が他方の締約国の領域内において自営業者として一時的に就労する場合、当該被用者が派遣された日又は当該自営業者が他方の締約国の領域内において自営活動を開始した日から5年の期間が満了するまで当該一方の締約国の法令のみが適用されること。

(2) 派遣期間の延長については、両締約国の権限のある当局又は実施機関において、3年を超えない期間、引き続き一方の締約国の制度にのみ加入することについて合意することができること。

3 年金加入期間の通算の規定

(1) スロバキア協定による通算の対象となる給付は、老齢給付、障害給付及び遺族給付であること。

(2) スロバキアの法令による年金給付の支給に当たって、スロバキアの法令による年金給付の受給資格要件を満たしていない場合には、スロバキアの法令による保険期間と重複しない範囲において、日本国の法令による保険期間を通算することができること。

Ⅱ 改正後特例政令及び改正後特例省令における厚生年金保険法等の特例関係

第1 改正後特例政令における厚生年金保険法等の特例関係

1 厚生年金保険の加入の特例

厚生年金保険の加入の特例制度の対象となる社会保障協定について、スロバキア協定を追加すること(特例法第25条及び改正後特例政令第50条)。

2 給付の支給要件等に関する特例

(1) 通算の対象給付

障害手当金について、スロバキア協定に係る通算の対象給付とすること(特例法第29条及び改正後特例政令第61条)。

(2) 通算の対象期間

相手国期間のうち、スロバキア協定にあっては昭和17年6月以後の期間を通算の対象とすること(特例法第10条から第12条及び第27条から第30条並びに附則第4条から第6条、第9条から第11条及び第14条。改正後特例政令第21条第1項、第22条、第24条、第25条、第56条第1項、第57条、第58条、第102条、第106条第5項、第110条第4項、第113条、第116条、第120条第5項、第125条第4項、第130条第3項、第131条、第132条第1項及び第137条第1項)。

(3) 特例法により支給される給付の計算方法

障害基礎年金、遺族基礎年金、障害厚生年金(障害者となった者の厚生年金被保険者であった期間が300月未満の場合に限る。)及び遺族厚生年金(死亡した者の厚生年金被保険者であった期間が300月未満の場合に限る。)並びに障害手当金等の計算に用いるあん分率について、スロバキア協定については、日本国の法令による保険期間と昭和17年6月以後の相手国期間とを合算した期間に基づくあん分率により、給付等の額を計算すること(特例法第13条、第15条、第16条、第19条、第20条、第32条、第33条及び第38条から第40条並びに附則第4条、第5条、第9条及び第10条。改正後特例政令第34条、第35条、第38条、第40条、第72条、第73条、第77条、第84条第3項、第105条、第108条、第119条、第123条及び第127条第3項)。

第2 改正後特例省令における国民年金法施行規則及び厚生年金保険法施行規則の特例関係

1 国民年金の被保険者に係る適用証明書交付申請書等の記載事項

スロバキア協定に係る国民年金の適用証明書交付申請書及び適用証明期間継続・延長申請書に係る記載事項について、他の社会保障協定に係る各申請書と共通する記載事項のほか、申請者に日本国の領域内における就労に係る雇用主があり、かつ、スロバキアの領域内における就労が当該雇用主の命によるものであるときは、その旨及び次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に定める事項を記載することを定めたこと(改正後特例省令第2条及び第3条)。

(1) 申請者がスロバキアの領域内における就労に関し他の雇用契約を締結しないときは、その旨

(2) 申請者がスロバキアの領域内における就労に関しスロバキアの領域内に事業所を有する雇用主と雇用契約を締結し、かつ、日本の領域内における就労に係る雇用主の指揮の下にあるときは、その旨

2 厚生年金保険の被保険者に係る適用証明書交付申請書等の記載事項

スロバキア協定に係る厚生年金保険の適用証明書交付申請書及び適用証明期間継続・延長申請書に係る記載事項について、他の社会保障協定に係る各申請書と共通する記載事項のほか、次の内容を定めたこと(改正後特例省令第6条及び第7条)。

(1) 申請者がスロバキアの領域内における就労に関し他の雇用契約を締結しないときは、その旨

(2) 申請者がスロバキアの領域内における就労に関しスロバキアの領域内に事業所を有する雇用主と雇用契約を締結し、かつ、日本の領域内における就労に係る雇用主の指揮の下にあるときは、その旨

Ⅲ スロバキア協定の実施事務における主な留意点

第1 適用に係る主な留意点

適用証明書の交付申請書において、スロバキアの領域内における就労に関する他の雇用契約の締結の有無のほか、他の雇用契約を締結する場合にあっては、日本の領域内に事業所を有する雇用主の指揮の下にある旨を記載すること。

第2 給付に係る主な留意点

スロバキアの法令による年金給付は、年金事務所で受け付ける際、口頭による申請ができないこと。

第3 その他

1 スロバキア協定を実施するための様式については、別添のとおりであること。

2 スロバキアの社会保障制度は一体的に適用されるため、スロバキアの領域内で就労する者のうち、スロバキア協定の適用調整規定により日本国の法令のみの適用を受ける者については、日本国及びスロバキアのいずれの国においても強制的な労災保険が適用されない状態が生じ得ること。そのため、これらの者については、年金事務所等の受付窓口において、日本国の労災保険制度への特別加入又は民間の労災保険への加入の周知をすること。

Ⅳ 施行期日

改正特例政令(スロバキア協定に係る部分に限る。)及び改正特例省令(スロバキア協定に係る部分に限る。)は、スロバキア協定の効力の発生の日(令和元年7月1日)から施行すること。

この通知は、スロバキア協定の効力の発生の日(令和元年7月1日)から適用するものであること。