添付一覧
○自動車による食品の移動販売に関する取扱いについて
(平成29年11月6日)
(薬生食監発1106第2号)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課長通知)
(公印省略)
自動車による食品の移動販売については、昭和42年3月3日付け環乳第5016号「自動車による食品の移動販売に関する取扱要領について」(以下「取扱要領」という。)を参考として指導していただいているところですが、今般、平成29年7月19日付け総評評第80号「買物弱者対策に関する実態調査の結果(通知)」(別添)により、買物弱者対策に取り組む事業者の負担軽減等の観点から、営業許可手続の簡素化及び流水式設備の設置義務の緩和を求める調査結果が示されました。つきましては、下記を踏まえ、適切な対応がなされるよう特段の御配慮方お願いします。
なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項に規定する技術的助言であることを申し添えます。
記
1 複数の地域にまたがって移動販売を行う場合の営業許可手続について
営業許可については、食品衛生法(昭和22年法律第233号)第52条第1項及び食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号)第67条第1項の規定により、同法第51条に規定する営業を営もうとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならず、また、当該許可を受けようとする者は、営業所所在地を管轄する都道府県知事等に申請を行うこととしている。
この点、取扱要領においては、当時の衛生水準等の状況に照らし、営業車の属する主たる固定施設の営業所等の所在地を管轄する都道府県知事等が営業許可を行うとともに、営業所等所在地以外の都道府県等の管轄区域にも移動して営業を行う場合には、改めて当該都道府県知事等の許可を要するものとしている(取扱要領第3の1(ウ))。
しかしながら、近年の衛生水準の向上及び移動販売の形態の多様化等の現状を踏まえ、関係都道府県等の間で、同水準の施設基準が確保されており、監視指導の方法、違反判明時の通報体制、行政処分の取扱い等について調整がなされている場合は、営業所等所在地を管轄する都道府県知事等のみが営業許可を行うこととする取扱いとして差し支えない。
2 流水式手洗設備の設置について
液漏れのないように包装した食品のみを取り扱い、巡回中にこれらの食品の小分けや再包装を行わない場合であって、巡回先で現地の手洗設備を利用する又は食品の取扱いの都度使い捨て手袋を着用する等の条件により、施設及び食品取扱者の適切な衛生管理が担保されると判断できるときは、流水式手洗設備の設置は省略して差し支えない。
別添:「買物弱者対策に関する実態調査の結果(通知)」(平成29年7月19日総評評第80号)
(別添)
○買物弱者対策に関する実態調査の結果(通知)
(平成29年7月19日)
(総評評第80号)
(厚生労働省政策統括官あて総務省行政評価局長通知)
この度、買物弱者対策に関する実態調査を実施した結果は、別添(買物弱者対策に関する実態調査結果報告書)のとおりですので、通知します。
なお、別紙に対する改善措置等については、平成30年1月19日までに御回答ください。
担当:行政評価局評価監視官 砂山裕
電話:03(5253)5486
別紙
買物弱者対策に資する取組を継続して実施するためには、買物弱者対策に取り組んでいる事業者の自助努力やこれらに対する金銭的支援だけではなく、事業者が取組を実施しやすい環境作りも必要と考えられる。特に、人口が少ない中山間地域を中心に、採算ベースに乗りにくい取組を実施している事業者のためには、少しでもその負担を軽くする環境作りが必要と考えられる。
今回、調査した183事業者及び87地方公共団体において、買物弱者対策に資する取組を行う上で、支障となっている規制はないか聴取したところ、次のとおり、移動販売事業における許可取得や移動販売車への手洗設備の設置に関して規制の見直しを求める意見がみられた。
ア 食品の移動販売許可
【意見・要望等】
複数の地方公共団体の区域をまたがって移動販売を行う際、保健所を設置している地方公共団体の管轄区域ごとに移動販売の許可が必要となっており、その都度、申請書類作成や申請手数料等の負担が生じている。ある特定の地方公共団体で自動車による移動販売許可を取得した場合は、他の保健所を設置している地方公共団体の管轄区域でも営業できるようにしてほしい。
【制度の概要】
食品衛生法(昭和22年法律第233号)第51条では、飲食店営業その他公衆衛生に与える影響が著しい営業として、食品衛生法施行令(昭和28年政令第229号)第35条で定める34業種について、条例で、業種別に、公衆衛生の見地から必要な基準を定めなければならないとされている。また、これらの営業を行おうとする者は、同法第52条及び第66条により、都道府県知事又は保健所を設置する市若しくは特別区の長(以下「都道府県知事等」という。)による許可が必要とされている。
一方、自動車による食品の移動販売の営業については、厚生労働省が「自動車による食品の移動販売に関する取扱要領について」(昭和42年3月3日付け環乳第5016号厚生省環境衛生局長通知。以下「取扱要領」という。)を発出している。
取扱要領では、食品の移動販売車に対して食品衛生法に基づき許可を与えるに当たっては、食品衛生上の支障が生じないような施設につき許可がなされるよう、食肉販売業、魚介類販売業及び乳類販売業のうち、自動車に販売施設を設けて出店予定地を巡回販売する形態のもの(以下「移動販売」という。)を対象に、許可の単位、許可の際に付すことができる条件、施設基準等、都道府県知事等が移動販売に係る食品衛生法に基づく許可(以下「移動販売許可」という。)の取扱いを条例等で定める際の留意点について示している。この中で、移動販売許可は、営業者の属する主たる固定施設の営業所等の所在地を管轄する都道府県知事等が行うものとすることとし、営業所等の所在地以外の都道府県等の管轄区域にも移動して移動販売を行う場合には、改めて当該都道府県知事等の許可を要するとしている。
また、厚生労働省は、「規制改革推進のための3か年計画」(平成19年6月22日閣議決定)を受け、「食品衛生法に基づく営業許可について」(平成20年3月27日付け食安監発第0327002号厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知。以下「20年通知」という。)を発出し、移動販売による営業も含め、都道府県等に対し、複数の地域にまたがって営業を行う営業者について、既に近隣の都道府県等の営業許可を取得している場合には、営業許可手続の簡素化が図られるように努めるよう要請している。
【調査結果】
今回、調査対象20都道府県のうち、当該都道府県内に保健所を設置する市がある19都道府県において、既に営業所等の所在地を管轄する都道府県知事等の移動販売許可を得ている者が、当該都道府県知事等の管轄区域を越えて移動販売を行う場合の移動販売許可の取扱いについて調査したところ、
① 既に営業所等の所在地を管轄する都道府県知事等の移動販売許可を取得している場合、同一都道府県内であれば、新たに移動販売許可を取得しなくても、移動販売が営業できる取扱いとしているものが6都道府県
② 都道府県知事等の移動販売許可による営業は、あくまで当該都道府県知事等の管轄する区域内に限られ、この区域外で営業することは、同一都道府県内であっても、認められていないものが13都道府県
となっていた。
なお、都道府県をまたいで移動販売を行う場合については、19都道府県全てにおいて、それぞれの都道府県知事等の移動販売許可が必要とされていた。
上記②の13都道府県では、そのような取扱いとしている理由について、「許可権者が異なるため」、「都道府県内の保健所を設置する市と、移動販売許可の基準(特に施設基準)が異なるため」、「都道府県内の保健所を設置する市と調整を行った上で移動販売許可の基準を定めてはいるが、違反が発生した場合の処分方法について調整を図っていないため」などとしている。
一方、上記①の6都道府県の中には、営業所等の所在地で移動販売許可を受けている者が、営業所等の所在地以外の都道府県知事等の管轄区域において不適切な営業を行っている場合、営業所等の所在地以外の都道府県等が移動販売許可を与えている都道府県知事等に指導等の必要性について連絡する申合せを行い、処分方法について調整を図っている例がみられた。
厚生労働省も、上記①の取扱いが実施できている都道府県知事等間では、施設基準等が同じ内容となっていることが考えられるとし、施設基準等については条例等により規定されるため、各許可権者間で施設基準の内容、監視指導の方法、違反発生時の行政処分の取扱い等について調整が整えば、営業所等の所在地を管轄する都道府県知事等以外による移動販売許可を不要とする取扱いは可能であるとしている。
しかし、厚生労働省は、20年通知において想定している営業許可手続の簡素化は、審査期間の短縮や申請書様式の統一であるとしており、営業所等の所在地を管轄する都道府県知事等以外による移動販売許可を不要とする取扱いまでは想定していなかったとしている。
移動販売を行っている事業者の営業区域が複数の都道府県知事等の管轄区域にまたがることは容易に想定されるが、この場合、上記②の取扱いのように、管轄区域ごとに移動販売許可が必要とされていると、それぞれに許可申請書類の作成、申請手数料の支払等が必要となり、事業者の負担になるものと考えられることから、移動販売の取組の継続を支援する観点からは、複数の都道府県知事等の管轄区域にまたがって営業する移動販売について、営業所等の所在地を管轄する都道府県知事等以外の移動販売許可は不要とする取扱いが推奨されるべきと考えられる。
【所見】
したがって、厚生労働省は、買物弱者対策に取り組む事業者の負担軽減の観点から、複数の都道府県知事等の管轄区域で移動販売を実施しようとする事業者が、既に、営業所等の所在地を管轄する都道府県知事等の移動販売許可を取得している場合、関係都道府県知事等の間で、同水準の施設基準の下で、監視指導の方法、行政処分の取扱い等について調整がなされているときは、移動販売許可を取得している都道府県知事等の管轄区域外においても、新たに移動販売許可を取得しなくても移動販売が営業できる取扱いとして差し支えないことを都道府県等に周知する必要がある。
イ 移動販売車の施設基準
【意見・要望等】
都道府県が定めている移動販売に係る施設の基準の中には、食肉、魚介類及び乳類を販売する場合には、移動販売車に飲料に適する水を十分供給することのできる容積の貯水槽を有した流水式手洗設備を設置する必要があるとされているものがある。このため、その設置費用がかさむほか、商品を置く場所もその分狭くなっている。パック詰めされた食品のみを取り扱う場合には、アルコール除菌スプレー等で代用可能とする等、流水式手洗設備の設置の義務付けを緩和してほしい。
【制度の概要】
厚生労働省は、取扱要領において、都道府県知事等が移動販売許可の基準を整備する上での留意事項として、飲食に起因する衛生上の危害を防止するために必要な限度において、取扱品目の制限等の条件を付することができることとし、具体的に、「あらかじめ包装したものに限って取扱うこと」(食肉販売業)、「車内で調理加工を行なわず、取扱う生食用の魚介類はあらかじめ包装したものに限ること」等を例示している。また、都道府県知事等が移動販売車に係る施設基準を整備する上での留意事項として、「営業車には、飲用に適する水を十分供給することのできる容積の貯水槽を有した流水式手洗設備を設け、かつその汚水が衛生的に処理できるようにされていること」を示している。
【調査結果】
今回、調査対象20都道府県のうち18都道府県では、移動販売車に係る施設基準において、流水式手洗設備の設置が義務付けられていた。
厚生労働省は、取扱要領において流水式手洗設備に関する基準を示している理由について、「食肉、魚介類、乳類等の動物由来食品については、原料由来の病原微生物の付着等による食中毒リスクの高い食品であるため、温度管理や二次汚染防止等の衛生管理が特に必要と考えており、包装された食品であっても、食品の小分けや外装の破損等によりあらかじめされている包装を解き、再包装をする場合等もあることから、手洗設備が必要である」としている。また、「移動販売車であっても固定施設と同等の衛生管理状態を確保する必要があるため、固定施設と同様、流水式手洗設備の設置を基準とした」としている。
一方、「取扱要領は都道府県知事等に対し施設基準の参考として示しているものであり、必ずしも取扱要領のとおりに施設基準を策定することを義務付けるものではないことから、都道府県等の判断により、移動販売で取り扱う食品の状態等を踏まえ、流水式手洗設備の設置により確保される衛生管理状態と同等の状態を確保できる他の設備の設置をもって、施設基準を満たすこととしても差し支えない」としている。
しかし、厚生労働省は、その旨を通知等により明文化したことはなく、特段の周知も行っていないとしている。
一方、調査対象20都道府県のうち2都道府県では、衛生上支障がないと知事が認めた場合や、消毒設備により代用できる場合には、業種を限定しつつも、移動販売車への流水式手洗設備の設置を義務付けていない状況がみられた。
調査した移動販売を行う事業者からは、「包装された食品のみを取り扱っているため、流水式手洗設備を用いる頻度は多くない」とする意見も聴かれた。
移動販売車への流水式手洗設備の設置の義務付けが緩和されれば、事業者にとっては、当該設備の設置のための費用等の負担が軽減されることが想定される。また、貯水槽の設置が不要となることにより、その分多くの商品を移動販売車に積むことが可能となり、事業者にとって有益であると考えられる。
【所見】
したがって、厚生労働省は、買物弱者対策に取り組む事業者の負担軽減等の観点から、取り扱う食品の再包装を行わない等、移動販売で取り扱う食品の状態等を踏まえた適切な衛生管理状態を保つことができている場合には、都道府県知事等の判断により、流水式手洗設備の設置を義務付けなくても差し支えないことを都道府県等に周知する必要がある。