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○腸管出血性大腸菌O26、O103、O111、O121、O145及びO157の検査法について

(平成26年11月20日)

(食安監発1120第1号)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知)

(公印省略)

食品中からの腸管出血性大腸菌の検査法については、平成24年12月17日付け食安監発1217第1号「腸管出血性大腸菌O26、O111及びO157の検査法について」により通知しているところです。

今般、国内における感染報告数や重症化の報告例を踏まえ、新たに血清型O103、O121及びO145を加えること及びO抗原遺伝子検出法を組み入れることにより血清型の絞り込みを可能とすること等について所要の改正を行い、当該通知を廃止し、別添のとおりとするので、検査を行う場合はこの方法により実施されるようお願いします。

また、腸管出血性大腸菌を原因とする食中毒においては、同一食品による広域散発食中毒事例が発生しており、その原因食品の解明の一助となるよう本法の積極的な導入をお願いします。

(別添)

食品からの腸管出血性大腸菌O26、O103、O111、O121、O145及びO157の検査法

食品からの腸管出血性大腸菌O26、O103、O111、O121、O145及びO157の試験は、原則として、ベロ毒素(VT)遺伝子及びO抗原遺伝子検出法によるスクリーニングを行い、陽性であった場合には分離培養法で菌の分離を行い、確認試験の結果、判定する。

1.検体の採取

食品検体200g以上を採取する。なお、表面汚染が考えられる食品は、表面部を厚さ約0.3cmに削り、これを検体とする。1

──────────

1 水を検体とする場合には、食品衛生検査指針微生物編2004の検体の採取、試料の調製、増菌培養(増菌培地は本検査法の培地を使用する。)を参考に実施する。ただし、食品衛生検査指針微生物編の改訂時には新版を参考にする。

2.試料の調製

採取した検体の全体を細切、混和後、その25gをストマッカー袋に秤量して、これを試料とする。

3.増菌培養

以下の増菌培地をVT遺伝子検出法、O抗原遺伝子検出法及び分離培養法に供試する。ストマッカー袋中の試料に225mlの増菌培地(室温)を加え1分間以内のストマッカー処理などを行った後、42±1℃で22±2時間培養する。

増菌培養が終了した当日中にVT遺伝子検出試験及びO抗原遺伝子検出試験を実施し、ともに陽性の検体は、原則として、当日中に陽性であった血清群の免疫磁気ビーズ法及び直接塗抹法による分離培養を行う。また、VT遺伝子検出試験を実施し陽性であった検体のO抗原遺伝子検出試験を実施せずに分離培養を行う場合は、原則として、当日中に免疫磁気ビーズ法及び直接塗抹法による分離培養を行う。ただし、いずれの場合も当日中に分離培養を行えない場合は、増菌培養液10mlを冷蔵(8℃以下)し1日以内に分離培養法に使用する。また、追試などに備えて冷凍(-75℃以下)する場合には、凍結保護剤を培養液に添加する。凍結保護剤として滅菌ジメチルスルホキシド(DMSO、シグマ等)を使用する場合は、最終濃度5~10%になるように添加する。ただし、冷蔵及び冷凍保存中に食品によっては培養液中の腸管出血性大腸菌が食品成分や食品由来菌の影響を受ける場合が考えられるため、可能な限り当日中に分離培養法を実施する。

4.増菌用培地

1) mEC培地(日水製薬、メルク、オキソイド製造;関東化学販売、極東製薬工業、栄研化学等)

組成:

ペプトン 20.0g

胆汁酸塩 1.12g

ラクトース 5.0g

K2HPO4 4.0g

KH2PO4 1.5g

NaCl 5.0g

精製水 1,000ml

pH 6.9±0.1

備考:121℃で15分間滅菌後冷却し、そのまま使用する。

2) mEC培地(USDA法)(自家調製)

組成

トリプトン 20.0g

胆汁酸塩(Bile salts No.3) 1.12g

ラクトース 5.0g

K2HPO4 4.0g

KH2PO4 1.5g

NaCl 5.0g

精製水 1,000ml

pH 6.9±0.1

備考:121℃で15分間滅菌後冷却し、そのまま使用する。

凍結等によって菌の損傷が考えられる場合は、各試験検査機関において本検査法に示す増菌培養法と同等であると判断した上で、mEC培地において36±1℃培養など選択性を弱めた増菌培養法の使用を推奨する。その他の培地についても各試験検査機関で同等性について評価を行い使用しても良い。また、検体中の腸管出血性大腸菌以外の菌の増殖が腸管出血性大腸菌の増殖を妨げると考えられる場合は、ノボビオシン加mEC培地において42±1℃培養など選択性を高めた増菌培養法も考慮する。

5.DNA抽出法

増菌培養液からDNA抽出を行ない、それを試料として6.VT遺伝子検出法を行う。

DNA抽出法としては以下のものが利用できる。キットについては各添付文書を参照する。抽出DNAは氷上で取り扱い、保存は冷凍が望ましい。なお、増菌培養液の加熱による単純なDNA抽出法は検出感度が優れないため使用しない。可能であれば1検体につき2本のマイクロチューブを用いてDNAを抽出する。なお、脂肪の多い食品については、食品成分が遺伝子増幅に影響を及ぼす可能性があるため、VT遺伝子検出法での内因性又は外因性コントロールが検出されない場合は異なる抽出法、又は、各血清群について8.分離培養法を実施する。

1) アルカリ熱抽出法

培養液0.1mlをマイクロチューブにとり、10,000Xg、10分間遠心し、上清を取り除いた沈渣に滅菌した50mM NaOH 85μlを添加して100℃で10分間加熱処理する。その処理液に滅菌した1M Tris―HCl(pH 7.0)15μlを加えて中和し、遠心上清(2,000~10,000Xg、10分間)を検体とする。また、VT遺伝子検出キットに含まれるDNAアルカリ抽出試薬を使用できる(ただし、上記と同等のアルカリ液及び中和液の組成及び容量に限る)。抽出後は0~4℃静置し検出試験に使用する。当日使用しない場合には冷凍保存する。

2) PrepMan Ultra Sample Preparation Reagent(ライフテクノロジーズジャパン)

3) DNeasy Blood & Tissue Kit(キアゲン)

4) High Pure PCR Template Preparation Kit(ロシュ・ダイアグノスティックス)

5) NucleoSpin Tissue(マッハライ・ナーゲル社製造;タカラバイオ販売)

6) その他、同等品も使用できる。

6.VT遺伝子検出法

抽出したDNAを用いて、VT遺伝子の検出試験を実施する。VT遺伝子検出法(内因性又は外因性コントロールを設定)としては以下のものが利用できる。試験には陽性及び陰性コントロールを設定する。

VT遺伝子検出試験の結果、陰性であった場合は試験を終了する。陽性であった場合は、原則として、当日中に後述するO抗原遺伝子検出法及び分離培養法を実施する。O抗原遺伝子検出法を行わずに分離培養法を実施する場合も、原則として、当日中に実施する。

1) Real―time PCR法

市販のVT遺伝子検出キット又は公表されている方法を参照した試薬にて反応を行う。これについて下記のものが利用できる。

(1) 市販キットを使用する場合

① CycleavePCR O―157(VT gene)Screening Kit Ver.2.0(CY217A・CY217B、タカラバイオ)(サイクリング・プローブ法)

対応機種:Thermal Cycler Dice Real Time System Ⅱ(タカラバイオ)、Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast、Applied Biosystems 7900HT及びApplied Biosystems ViiA7(ライフテクノロジーズジャパン)、LightCycler 480Ⅱ(ロシュ・ダイアグノスティックス)

ただし、Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast、Applied Biosystems 7900HT及びApplied Biosystems ViiA7では、manual解析でbaselineを安定した部分に修正し、thresholdを適切な値に修正する。また、LightCycler 480Ⅱにおいて、Abs Quant/2nd Derivative Max(auto解析)で適切な判定が行えない場合は、Abs Quant/Fit Points解析でBackgroundを安定した部分(目安として4―10cycle)に手動設定し解析を行う。

② foodproof STECスクリーニングキット(3216D60211、バイオテコン・ダイアグノスティックス製造;プラクティカル販売)(5'―ヌクレアーゼ活性を利用した加水分解プローブ法)

対応機種:Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast、Applied Biosystems ViiA7、LightCycler 480Ⅱ

本試験では、キットに含まれるROX検出によるインチミン遺伝子(eae)を測定しないため、測定時に、ROX検出フィルターは使用しない。Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast及びApplied Biosystems ViiA7において、auto解析で適切な判定が行えない場合は、陽性コントロールと陰性コントロールを参照し、thresholdを適切な値に修正して解析する。また、LightCycler 480Ⅱにおいて、Abs Quant/2nd Derivative Max(auto解析)で適切な判定が行えない場合は、Abs Quant/Fit Points解析でbackgroundを安定した部分(目安として3―15cycle)に手動設定し解析を行う。

③ その他、同等の機能を有する試薬・機器が使用できる。

(2) 公表されている方法を参照した試薬を使用する場合

① VT1及びVT2遺伝子についてはNielsenらの方法(参照元:Clin. Microbiol. 41:2884―2893、2003)、内因性コントロールとしての16SrRNA遺伝子については米国農務省(United States Department of Agriculture、USDA、参照元:MLG 5B Appendix 1.01)のリアルタイムPCR法を参照した方法(5'―ヌクレアーゼ活性を利用した加水分解プローブ法)

(使用方法例1)

ア.機器

Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast、Applied Biosystems 7900HT及びApplied Biosystems ViiA7、LightCycler 480Ⅱ、Thermal Cycler Dice Real Time System Ⅱが使用できる。ただし、ABI PRISM 7500Fastでは、standard chemistryにて使用する。

イ.試薬

TaqMan Environmental Master Mix2.0(ライフテクノロジーズジャパン、Product No. 4396838)、加水分解プローブ、プライマー、滅菌精製水

ウ.反応液の準備

表2―1に示した反応液を調製する。

エ.反応プレートのウェル又は反応チューブに25.0μlずつ反応液を入れる。

オ.検体DNA5μlを加えて、試験を行う。総反応容量は30.0μlとなる。

カ.増幅反応は、50℃で2分、95℃で10分を1サイクル、次いで95℃で15秒、60℃で1分を45サイクルに設定し、ランを開始する。

キ.ランが終了したら、データ解析をする。

ク.Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast、Applied Biosystems 7900HT及びApplied Biosystems ViiA7では、auto解析又はthresholdを0.05に設定して解析する。必要のある場合は、baselineを安定した部分(目安として3―10cycle)に手動設定し解析を行う。各検体につき、Ct値が得られている場合を陽性とする。また、LightCycler 480Ⅱにおいて、Abs Quant/2nd Derivative Max(auto解析)で適切な判定が行えない場合は、Abs Quant/Fit Points解析でbackgroundを安定した部分(目安として4―10cycle)に手動設定し解析を行う。Thermal Cycler Dice Real Time System Ⅱでは、CP法(auto解析)にて解析する。

表2―1 反応液の調製

試薬

容量

滅菌精製水

6.28μl

TaqMan Environmental Master Mix 2.0

15.0μl

プライマー

VT1―F(50pmol/μl)

0.36μl

VT1―R(50pmol/μl)

0.36μl

VT2―F(50pmol/μl)

0.36μl

VT2―R(50pmol/μl)

0.36μl

16SrRNA―F(20pmol/μl)

0.24μl

16SrRNA―R(20pmol/μl)

0.24μl

プローブ

(5pmol/μl)

VT1―P

0.6μl

VT2―P

0.6μl

16SrRNA―P

0.6μl

25.0μl

VT1―F: 5' ―GGA TAA TTT GTT TGC AGT TGA TGT C―3'

VT1―R: 5' ―CAA ATC CTG TCA CAT ATA AAT TAT TTC GT―3'

VT1―P: 5' ―FAM―CCG TAG ATT ATT AAA CCG CCC TTC CTC TGG A―BHQ1―3'

VT2―F: 5' ―GGG CAG TTA TTT TGC TGT GGA―3'

VT2―R: 5' ―GAA AGT ATT TGT TGC CGT ATT AAC GA―3'

VT2―P: 5' ―FAM―ATG TCT ATC AGG CGC GTT TTG ACC ATC TT―BHQ1―3'

16SrRNA―F: 5' ―CCT CTT GCC ATC GGA TGT G―3'

16SrRNA―R: 5' ―GGC TGG TCA TCC TCT CAG ACC―3'

16SrRNA―P: 5' ―HEX―GTG GGG TAA CGG CTC ACC TAG GCG AC―BHQ1―3'

使用機器ごとに適切な蛍光色素を選択して反応を行う。

Applied Biosystems 7500・7500Fast・7900HT・ViiA7: FAM―BHQ1をFAM―None、HEX―BHQ1をVIC―None。

LC480:FAM―BHQ1をExcitation 465nm・Emission 510nm、HEX―BHQ1をExcitation 533nm・Emission 580nm。

DiceⅡ:FAM―BHQ1をFAM、HEX―BHQ1をHEX。

(使用方法例2)

使用方法例1の試薬を使用し、使用方法例1に示した機種、LightCycler Nano及びApplied Biosystems 7000、7300及び7700において、VT1・VT2遺伝子及び16SrRNA遺伝子を各simplexの系(両遺伝子ともにプローブの蛍光標識にFAMを使用)として反応する。

表2―2及び2―3に示した反応液を調製する。

表2―2 反応液の調製

試薬

容量

滅菌精製水

7.36μl

TaqMan Environmental Master Mix 2.0

15.0μl

プライマー

VT1―F(50pmol/μl)

0.36μl

VT1―R(50pmol/μl)

0.36μl

VT2―F(50pmol/μl)

0.36μl

VT2―R(50pmol/μl)

0.36μl

プローブ

(5pmol/μl)

VT1―P

0.6μl

VT2―P

0.6μl

25.0μl

表2―3 反応液の調製

試薬

容量

滅菌精製水

8.92μl

TaqMan Environmental Master Mix 2.0

15.0μl

プライマー

16SrRNA―F(20pmol/μl)

0.24μl

16SrRNA―R(20pmol/μl)

0.24μl

プローブ

(5pmol/μl)

16SrRNA―P

0.6μl

25.0μl

② その他、同等の機能を有する試薬・機器が使用できる。

2) Loop―mediated isothermal amplification(LAMP)法

以下のものが利用できる。

(1) Loopamp腸管出血性大腸菌検出試薬キット(外因性コントロール入り)(LMP681、栄研化学)

対応機種:Loopampリアルタイム濁度測定装置(LA―320C、RT―160C、LoopampEXIA:栄研化学)

(2) その他、同等の機能を有する機器が使用できる。

3) PCR法

市販のVT遺伝子検出キットにて反応を行う。これについては以下のものが利用できる。また、PCR産物の電気泳動においては1,000bp以下の核酸分離に対応した低分子用アガロースゲルを使用する。

(1) EHEC (VT gene) PCR Screening Set(RR120A、タカラバイオ)

94℃で1分、55℃で1分、72℃で1分を35サイクル、72℃で10分を1サイクル行う。増幅DNAの大きさはVT遺伝子が171bp、内部標準遺伝子が685bpである。

(2) その他、同等の機能を有する試薬が使用できる。

4) その他、同等の手法も使用できるが、感度が1X104cfu/ml(増菌培養液)より優れるものを使用することとし、感度の確認が必要な場合には各試験検査機関にて次の方法を参照して行う。

血清群O26、O103、O111、O121、O145又はO157(VT陽性株)の菌濃度が約1X104cfu/ml(検体の増菌培養液)を作製し試験する。血清群O26、O103、O111、O121、O145又はO157(VT陽性株)をTryptic soy broth(栄研化学、日水製薬、オキソイド製造;関東化学販売、日本ベクトン・ディッキンソン等)(10ml)に接種し36±1℃で18±1時間培養する(約5X108cfu/ml)。この培養液を対象検体のmEC培養液9mlを用いて10-4倍希釈する。この10-4倍希釈液1mlを、さらに4mlの対象検体のmEC培養液で希釈した菌液を試料とする。この希釈菌液は約1X104cfu/ml(検体の増菌培養液)とし試験に用いる。菌液調製について、各機関であらかじめ菌株の増殖程度を確認し、必要ならば希釈倍率の変更を行う。

7.O抗原遺伝子検出法

6.VT遺伝子検出法にて陽性であった場合には、そのDNA抽出液を用いてO26、O103、O111、O121、O145及びO157のO抗原遺伝子の検出試験を実施する。また、VT遺伝子検出法と異なる遺伝子検出法にてO抗原遺伝子を検出する場合には、培養液中の成分によって遺伝子検出の反応阻害がないことを確認する。すなわち、O抗原遺伝子検出に使用する遺伝子検出法の原理と同じVT遺伝子検出法にて、検出系に含まれる内因性・外因性コントロールが陽性であることを確認する必要がある。

O抗原遺伝子検出法としては以下のものが利用できる。試験には陽性及び陰性コントロールを設定する。O抗原遺伝子が陽性の場合は、原則として、当日中に8.以降の分離培養法を行う。

1) Real―time PCR法

市販のO抗原遺伝子検出キット又は公表されている方法を参照した試薬にて反応を行う。これについて下記のものが利用できる。

(1) 市販キットを使用する場合

① Cycleave PCR EHEC(O157/O26)Typing Kit(CY237、タカラバイオ)、Cycleave PCR EHEC(O111/O121)Typing Kit(CY238、タカラバイオ)、Cycleave PCR EHEC(O103/O145)Typing Kit(CY239、タカラバイオ)(サイクリング・プローブ法)

対応機種:Thermal Cycler Dice Real Time System Ⅱ、Applied Biosystems 7500及びApplied Biosystems 7500Fast

ただし、使用するDNA抽出液は5.DNA抽出法で示した3)DNeasy Bood & Tissue kitにて得たものとする。また、解析についてはApplied Biosystems 7500及びApplied Biosystems 7500Fastでは、manual解析でbaselineを安定した部分に修正し、thresholdを適切な値に修正する。

② その他、同等の機能を有する試薬・機器が使用できる。

(2) 公表されている方法を参照した試薬を使用する場合

① O26、O103、O121及びO145抗原遺伝子については米国農務省(United States Department of Agriculture、USDA、参照元:MLG 5B Appendix 1.01)、O111及びO157抗原遺伝子については欧州食品安全機構(European Food Safety Authority、参照元:EFSA Journal. 11:3138、2013)のリアルタイムPCR法を参照し、組み合わせた方法(5'―ヌクレアーゼ活性を利用した加水分解プローブ法)

(使用方法例)

ア.機器

Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast、Applied Biosystems 7900HT及びApplied Biosystems ViiA7、LightCycler 480Ⅱ、Thermal Cycler Dice Real Time SystemⅡが使用できる。ただし、ABI PRISM 7500Fastでは、standard chemistryにて使用する。

イ.試薬

TaqMan Environmental Master Mix2.0、加水分解プローブ、プライマー、滅菌精製水

ウ.反応液の準備

表3に示した反応液を調製する。

エ.反応プレートのウェル又は反応チューブに25.0μlずつ反応液を入れる。

オ.検体DNA5μlを加えて、試験を行う。総反応容量は30.0μlとする。

カ.増幅反応は、50℃で2分、95℃で10分を1サイクル、次いで95℃で15秒、60℃で1分を45サイクルに設定し、ランを開始する。

キ.ランが終了したら、データ解析をする。

ク.Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast、Applied Biosystems 7900HT及びApplied Biosystems ViiA7では、auto解析又はthresholdを0.05に設定して解析する。必要のある場合は、baselineを安定した部分(目安として3―15cycle)に手動設定し解析を行う。各検体につき、Ct値が得られている場合を陽性とする。また、LightCycler 480Ⅱにおいて、Abs Quant/2nd Derivative Max(auto解析)で適切な判定が行えない場合は、Abs Quant/Fit Points解析でbackgroundを安定した部分(目安として4―10cycle)に手動設定し解析を行う。LightCycler Nanoでは、auto解析を行う。Thermal Cycler Dice Real Time System Ⅱでは、CP法(auto解析)にて解析する。

表3 O抗原遺伝子検出反応液の調製

試薬

容量

滅菌精製水

7.9μl

TaqMan Environmental Master Mix 2.0

15.0μl

O26/

O157

検出

プライマー

(20pmol/μl)

Wzx―O26―F

0.3μl

Wzx―O26―R

0.3μl

RfbE―O157―F

0.3μl

RfbE―O157―R

0.3μl

プローブ

(5pmol/μl)

Wzx―O26―P

0.6μl

RfbE―O157―P

0.3μl

O103/

O111

検出

プライマー

(20pmol/μl)

Wzx―O103―F

0.3μl

Wzx―O103―R

0.3μl

WbdI―O111―F

0.3μl

WbdI―O111―R

0.3μl

プローブ

(5pmol/μl)

Wzx―O103―P

0.3μl

WbdI―O111―P

0.6μl

O121/

O145

検出

プライマー

(20pmol/μl)

Wzx―O121―F

0.3μl

Wzx―O121―R

0.3μl

Wzx―O145―F

0.3μl

Wzx―O145―R

0.3μl

プローブ

(5pmol/μl)

Wzx―O121―P

0.3μl

Wzx―O145―P

0.6μl

計(各反応液)

25.0μl

Wzx―O26―F: 5'―GTA TCG CTG AAA TTA GAA GCG C―3'

Wzx―O26―R: 5'―AGT TGA AAC ACC CGT AAT GGC―3'

Wzx―O26―P: 5'―HEX―TGG TTC GGT TGG ATT GTC CAT AAG AGG G―BHQ1―3'

Wzx―O103―F: 5'―TTG GAG CGT TAA CTG GAC CT―3'

Wzx―O103―R: 5'―ATA TTC GCT ATA TCT TCT TGC GGC―3'

Wzx―O103―P: 5'―FAM―AGG CTT ATC TGG CTG TTC TTA CTA CGG C―BHQ1―3'

WbdI―O111―F: 5'―CGA GGC AAC ACA TTA TAT AGT GCT TT ―3'

WbdI―O111―R: 5'―TTT TTG AAT AGT TAT GAA CAT CTT GTT TAG C ―3'

WbdI―O111―P: 5'―HEX― TTG AAT CTC CCA GAT GAT CAA CAT CGT GAA ―BHQ1―3'

Wzx―O121―F: 5'―AGG CGC TGT TTG GTC TCT TAG A―3'

Wzx―O121―R: 5'―GAA CCG AAA TGA TGG GTG CT―3'

Wzx―O121―P: 5'―FAM―CGC TAT CAT GGC GGG ACA ATG ACA GTG C―BHQ1―3'

Wzx―O145―F: 5'―AAA CTG GGA TTG GAC GTG G―3'

Wzx―O145―R: 5'―CCC AAA ACT TCT AGG CCC G―3'

Wzx―O145―P: 5'―HEX―TGC TAA TTG CAG CCC TTG CAC TAC GAG GC―BHQ1―3'

RfbE―O157―F: 5'―TTT CAC ACT TAT TGG ATG GTC TCA A―3'

RfbE―O157―R: 5'―CGA TGA GTT TAT CTG CAA GGT GAT―3'

RfbE―O157―P: 5'―FAM―AGG ACC GCA GAG GAA AGA GAG GAA TTA AGG―BHQ1―3'

使用機器ごとに適切な蛍光色素を選択して反応する。

Applied Biosystems 7500・7500Fast・7900HT・ViiA7: FAM―BHQ1をFAM―None、HEX―BHQ1をVIC―None。

LC480: FAM―BHQ1をExcitation 465nm・Emission 510nm、HEX―BHQ1をExcitation 533nm・Emission 580nm。

DiceⅡ:FAM―BHQ1をFAM、HEX―BHQ1をHEX。

その他の機器において各O抗原遺伝子のsimplexの系(プローブの蛍光標識にFAMを使用)又はduplex等のmultiplexの系として使用できるが、感度が1X104cfu/ml(増菌培養液)より優れるものを使用することとし、感度の確認が必要な場合には各試験検査機関にて6.VT遺伝子検出法の4)を参照して行う。

② その他、同等の機能を有する試薬・機器が使用できる。

2) LAMP法

公表されている方法を参照した試薬を用いる。又は、市販のO157抗原遺伝子キットにて反応を行う。これについては下記のものが利用できる。

(1) 公表されている方法を参照した試薬を使用する場合

① Wangらの方法(参照元:Appl. Environ. Microbiol., 78:2727―2736,2012)のプライマー及び反応条件を参照して反応を行う。

(使用方法例)

ア.機器

Loopampリアルタイム濁度測定装置(LA―320C、RT―160C、LoopampEXIA:栄研化学)

イ.試薬

Loopamp DNA増幅試薬キット(LMP204/LMP205/LMP206、栄研化学)、プライマー、滅菌精製水

ウ.反応液の準備

表4に示した反応液を調製する。

エ.反応チューブに20.0μlずつ反応液を入れる。

オ.検体DNA 5μlを加えて、試験を行う。総反応容量は25.0μlとなる。

カ.増幅反応は、O157では63℃60分、80℃2分。O157以外の血清群では65℃60分、80℃2分とし、反応を開始する。

キ.反応が終了したら、増幅曲線,判定等を確認する。

表4 O抗原遺伝子検出反応液の調製

試薬

容量

2 × Reaction Mix. (RM)

12.5μl

Bst DNA Polymerase

1.0μl

O26検出

O26―wzy―F3(2.5pmol/μl)

1.0μl

O26―wzy―B3(2.5pmol/μl)

1.0μl

O26―wzy―FIP(45pmol/μl)

1.0μl

O26―wzy―BIP(45pmol/μl)

1.0μl

O26―wzy―LF(25pmol/μl)

1.0μl

O26―wzy―LB(25pmol/μl)

1.0μl

滅菌精製水

0.5μl

O103検出

O103―wzx―F3(2.5pmol/μl)

1.0μl

O103―wzx―B3(2.5pmol/μl)

1.0μl

O103―wzx―FIP(45pmol/μl)

1.0μl

O103―wzx―BIP(45pmol/μl)

1.0μl

O103―wzx―LF(25pmol/μl)

1.0μl

O103―wzx―LB(25pmol/μl)

1.0μl

滅菌精製水

0.5μl

O111検出

O111―wzy―F3(2.5pmol/μl)

1.0μl

O111―wzy―B3(2.5pmol/μl)

1.0μl

O111―wzy―FIP(45pmol/μl)

1.0μl

O111―wzy―BIP(45pmol/μl)

1.0μl

O111―wzy―LB(25pmol/μl)

1.0μl

滅菌精製水

1.5μl

O121検出

O121―wzy―F3(2.5pmol/μl)

1.0μl

O121―wzy―B3(2.5pmol/μl)

1.0μl

O121―wzy―FIP(45pmol/μl)

1.0μl

O121―wzy―BIP(45pmol/μl)

1.0μl

O121―wzy―LF(25pmol/μl)

1.0μl

滅菌精製水

1.5μl

O145検出

O145―wzx―F3(2.5pmol/μl)

1.0μl

O145―wzx―B3(2.5pmol/μl)

1.0μl

O145―wzx―FIP(45pmol/μl)

1.0μl

O145―wzx―BIP(45pmol/μl)

1.0μl

O145―wzx―LF(25pmol/μl)

1.0μl

滅菌精製水

1.5μl

O157検出

O157―wzy―F3(2.5pmol/μl)

1.0μl

O157―wzy―B3(2.5pmol/μl)

1.0μl

O157―wzy―FIP(45pmol/μl)

1.0μl

O157―wzy―BIP(45pmol/μl)

1.0μl

O157―wzy―LF(25pmol/μl)

1.0μl

O157―wzy―LB(25pmol/μl)

1.0μl

滅菌精製水

0.5μl

20μl