添付一覧
○腸管出血性大腸菌O26、O103、O111、O121、O145及びO157の検査法について
(平成26年11月20日)
(食安監発1120第1号)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知)
(公印省略)
食品中からの腸管出血性大腸菌の検査法については、平成24年12月17日付け食安監発1217第1号「腸管出血性大腸菌O26、O111及びO157の検査法について」により通知しているところです。
今般、国内における感染報告数や重症化の報告例を踏まえ、新たに血清型O103、O121及びO145を加えること及びO抗原遺伝子検出法を組み入れることにより血清型の絞り込みを可能とすること等について所要の改正を行い、当該通知を廃止し、別添のとおりとするので、検査を行う場合はこの方法により実施されるようお願いします。
また、腸管出血性大腸菌を原因とする食中毒においては、同一食品による広域散発食中毒事例が発生しており、その原因食品の解明の一助となるよう本法の積極的な導入をお願いします。
(別添)
食品からの腸管出血性大腸菌O26、O103、O111、O121、O145及びO157の検査法
食品からの腸管出血性大腸菌O26、O103、O111、O121、O145及びO157の試験は、原則として、ベロ毒素(VT)遺伝子及びO抗原遺伝子検出法によるスクリーニングを行い、陽性であった場合には分離培養法で菌の分離を行い、確認試験の結果、判定する。
1.検体の採取
食品検体200g以上を採取する。なお、表面汚染が考えられる食品は、表面部を厚さ約0.3cmに削り、これを検体とする。1
──────────
1 水を検体とする場合には、食品衛生検査指針微生物編2004の検体の採取、試料の調製、増菌培養(増菌培地は本検査法の培地を使用する。)を参考に実施する。ただし、食品衛生検査指針微生物編の改訂時には新版を参考にする。
2.試料の調製
採取した検体の全体を細切、混和後、その25gをストマッカー袋に秤量して、これを試料とする。
3.増菌培養
以下の増菌培地をVT遺伝子検出法、O抗原遺伝子検出法及び分離培養法に供試する。ストマッカー袋中の試料に225mlの増菌培地(室温)を加え1分間以内のストマッカー処理などを行った後、42±1℃で22±2時間培養する。
増菌培養が終了した当日中にVT遺伝子検出試験及びO抗原遺伝子検出試験を実施し、ともに陽性の検体は、原則として、当日中に陽性であった血清群の免疫磁気ビーズ法及び直接塗抹法による分離培養を行う。また、VT遺伝子検出試験を実施し陽性であった検体のO抗原遺伝子検出試験を実施せずに分離培養を行う場合は、原則として、当日中に免疫磁気ビーズ法及び直接塗抹法による分離培養を行う。ただし、いずれの場合も当日中に分離培養を行えない場合は、増菌培養液10mlを冷蔵(8℃以下)し1日以内に分離培養法に使用する。また、追試などに備えて冷凍(-75℃以下)する場合には、凍結保護剤を培養液に添加する。凍結保護剤として滅菌ジメチルスルホキシド(DMSO、シグマ等)を使用する場合は、最終濃度5~10%になるように添加する。ただし、冷蔵及び冷凍保存中に食品によっては培養液中の腸管出血性大腸菌が食品成分や食品由来菌の影響を受ける場合が考えられるため、可能な限り当日中に分離培養法を実施する。
4.増菌用培地
1) mEC培地(日水製薬、メルク、オキソイド製造;関東化学販売、極東製薬工業、栄研化学等)
組成:
ペプトン 20.0g
胆汁酸塩 1.12g
ラクトース 5.0g
K2HPO4 4.0g
KH2PO4 1.5g
NaCl 5.0g
精製水 1,000ml
pH 6.9±0.1
備考:121℃で15分間滅菌後冷却し、そのまま使用する。
2) mEC培地(USDA法)(自家調製)
組成
トリプトン 20.0g
胆汁酸塩(Bile salts No.3) 1.12g
ラクトース 5.0g
K2HPO4 4.0g
KH2PO4 1.5g
NaCl 5.0g
精製水 1,000ml
pH 6.9±0.1
備考:121℃で15分間滅菌後冷却し、そのまま使用する。
凍結等によって菌の損傷が考えられる場合は、各試験検査機関において本検査法に示す増菌培養法と同等であると判断した上で、mEC培地において36±1℃培養など選択性を弱めた増菌培養法の使用を推奨する。その他の培地についても各試験検査機関で同等性について評価を行い使用しても良い。また、検体中の腸管出血性大腸菌以外の菌の増殖が腸管出血性大腸菌の増殖を妨げると考えられる場合は、ノボビオシン加mEC培地において42±1℃培養など選択性を高めた増菌培養法も考慮する。
5.DNA抽出法
増菌培養液からDNA抽出を行ない、それを試料として6.VT遺伝子検出法を行う。
DNA抽出法としては以下のものが利用できる。キットについては各添付文書を参照する。抽出DNAは氷上で取り扱い、保存は冷凍が望ましい。なお、増菌培養液の加熱による単純なDNA抽出法は検出感度が優れないため使用しない。可能であれば1検体につき2本のマイクロチューブを用いてDNAを抽出する。なお、脂肪の多い食品については、食品成分が遺伝子増幅に影響を及ぼす可能性があるため、VT遺伝子検出法での内因性又は外因性コントロールが検出されない場合は異なる抽出法、又は、各血清群について8.分離培養法を実施する。
1) アルカリ熱抽出法
培養液0.1mlをマイクロチューブにとり、10,000Xg、10分間遠心し、上清を取り除いた沈渣に滅菌した50mM NaOH 85μlを添加して100℃で10分間加熱処理する。その処理液に滅菌した1M Tris―HCl(pH 7.0)15μlを加えて中和し、遠心上清(2,000~10,000Xg、10分間)を検体とする。また、VT遺伝子検出キットに含まれるDNAアルカリ抽出試薬を使用できる(ただし、上記と同等のアルカリ液及び中和液の組成及び容量に限る)。抽出後は0~4℃静置し検出試験に使用する。当日使用しない場合には冷凍保存する。
2) PrepMan Ultra Sample Preparation Reagent(ライフテクノロジーズジャパン)
3) DNeasy Blood & Tissue Kit(キアゲン)
4) High Pure PCR Template Preparation Kit(ロシュ・ダイアグノスティックス)
5) NucleoSpin Tissue(マッハライ・ナーゲル社製造;タカラバイオ販売)
6) その他、同等品も使用できる。
6.VT遺伝子検出法
抽出したDNAを用いて、VT遺伝子の検出試験を実施する。VT遺伝子検出法(内因性又は外因性コントロールを設定)としては以下のものが利用できる。試験には陽性及び陰性コントロールを設定する。
VT遺伝子検出試験の結果、陰性であった場合は試験を終了する。陽性であった場合は、原則として、当日中に後述するO抗原遺伝子検出法及び分離培養法を実施する。O抗原遺伝子検出法を行わずに分離培養法を実施する場合も、原則として、当日中に実施する。
1) Real―time PCR法
市販のVT遺伝子検出キット又は公表されている方法を参照した試薬にて反応を行う。これについて下記のものが利用できる。
(1) 市販キットを使用する場合
① CycleavePCR O―157(VT gene)Screening Kit Ver.2.0(CY217A・CY217B、タカラバイオ)(サイクリング・プローブ法)
対応機種:Thermal Cycler Dice Real Time System Ⅱ(タカラバイオ)、Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast、Applied Biosystems 7900HT及びApplied Biosystems ViiA7(ライフテクノロジーズジャパン)、LightCycler 480Ⅱ(ロシュ・ダイアグノスティックス)
ただし、Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast、Applied Biosystems 7900HT及びApplied Biosystems ViiA7では、manual解析でbaselineを安定した部分に修正し、thresholdを適切な値に修正する。また、LightCycler 480Ⅱにおいて、Abs Quant/2nd Derivative Max(auto解析)で適切な判定が行えない場合は、Abs Quant/Fit Points解析でBackgroundを安定した部分(目安として4―10cycle)に手動設定し解析を行う。
② foodproof STECスクリーニングキット(3216D60211、バイオテコン・ダイアグノスティックス製造;プラクティカル販売)(5'―ヌクレアーゼ活性を利用した加水分解プローブ法)
対応機種:Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast、Applied Biosystems ViiA7、LightCycler 480Ⅱ
本試験では、キットに含まれるROX検出によるインチミン遺伝子(eae)を測定しないため、測定時に、ROX検出フィルターは使用しない。Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast及びApplied Biosystems ViiA7において、auto解析で適切な判定が行えない場合は、陽性コントロールと陰性コントロールを参照し、thresholdを適切な値に修正して解析する。また、LightCycler 480Ⅱにおいて、Abs Quant/2nd Derivative Max(auto解析)で適切な判定が行えない場合は、Abs Quant/Fit Points解析でbackgroundを安定した部分(目安として3―15cycle)に手動設定し解析を行う。
③ その他、同等の機能を有する試薬・機器が使用できる。
(2) 公表されている方法を参照した試薬を使用する場合
① VT1及びVT2遺伝子についてはNielsenらの方法(参照元:Clin. Microbiol. 41:2884―2893、2003)、内因性コントロールとしての16SrRNA遺伝子については米国農務省(United States Department of Agriculture、USDA、参照元:MLG 5B Appendix 1.01)のリアルタイムPCR法を参照した方法(5'―ヌクレアーゼ活性を利用した加水分解プローブ法)
(使用方法例1)
ア.機器
Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast、Applied Biosystems 7900HT及びApplied Biosystems ViiA7、LightCycler 480Ⅱ、Thermal Cycler Dice Real Time System Ⅱが使用できる。ただし、ABI PRISM 7500Fastでは、standard chemistryにて使用する。
イ.試薬
TaqMan Environmental Master Mix2.0(ライフテクノロジーズジャパン、Product No. 4396838)、加水分解プローブ、プライマー、滅菌精製水
ウ.反応液の準備
表2―1に示した反応液を調製する。
エ.反応プレートのウェル又は反応チューブに25.0μlずつ反応液を入れる。
オ.検体DNA5μlを加えて、試験を行う。総反応容量は30.0μlとなる。
カ.増幅反応は、50℃で2分、95℃で10分を1サイクル、次いで95℃で15秒、60℃で1分を45サイクルに設定し、ランを開始する。
キ.ランが終了したら、データ解析をする。
ク.Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast、Applied Biosystems 7900HT及びApplied Biosystems ViiA7では、auto解析又はthresholdを0.05に設定して解析する。必要のある場合は、baselineを安定した部分(目安として3―10cycle)に手動設定し解析を行う。各検体につき、Ct値が得られている場合を陽性とする。また、LightCycler 480Ⅱにおいて、Abs Quant/2nd Derivative Max(auto解析)で適切な判定が行えない場合は、Abs Quant/Fit Points解析でbackgroundを安定した部分(目安として4―10cycle)に手動設定し解析を行う。Thermal Cycler Dice Real Time System Ⅱでは、CP法(auto解析)にて解析する。
表2―1 反応液の調製
試薬 |
容量 |
|
滅菌精製水 |
6.28μl |
|
TaqMan Environmental Master Mix 2.0 |
15.0μl |
|
プライマー |
VT1―F(50pmol/μl) |
0.36μl |
VT1―R(50pmol/μl) |
0.36μl |
|
VT2―F(50pmol/μl) |
0.36μl |
|
VT2―R(50pmol/μl) |
0.36μl |
|
16SrRNA―F(20pmol/μl) |
0.24μl |
|
16SrRNA―R(20pmol/μl) |
0.24μl |
|
プローブ (5pmol/μl) |
VT1―P |
0.6μl |
VT2―P |
0.6μl |
|
16SrRNA―P |
0.6μl |
|
計 |
25.0μl |
VT1―F: 5' ―GGA TAA TTT GTT TGC AGT TGA TGT C―3'
VT1―R: 5' ―CAA ATC CTG TCA CAT ATA AAT TAT TTC GT―3'
VT1―P: 5' ―FAM―CCG TAG ATT ATT AAA CCG CCC TTC CTC TGG A―BHQ1―3'
VT2―F: 5' ―GGG CAG TTA TTT TGC TGT GGA―3'
VT2―R: 5' ―GAA AGT ATT TGT TGC CGT ATT AAC GA―3'
VT2―P: 5' ―FAM―ATG TCT ATC AGG CGC GTT TTG ACC ATC TT―BHQ1―3'
16SrRNA―F: 5' ―CCT CTT GCC ATC GGA TGT G―3'
16SrRNA―R: 5' ―GGC TGG TCA TCC TCT CAG ACC―3'
16SrRNA―P: 5' ―HEX―GTG GGG TAA CGG CTC ACC TAG GCG AC―BHQ1―3'
使用機器ごとに適切な蛍光色素を選択して反応を行う。
Applied Biosystems 7500・7500Fast・7900HT・ViiA7: FAM―BHQ1をFAM―None、HEX―BHQ1をVIC―None。
LC480:FAM―BHQ1をExcitation 465nm・Emission 510nm、HEX―BHQ1をExcitation 533nm・Emission 580nm。
DiceⅡ:FAM―BHQ1をFAM、HEX―BHQ1をHEX。
(使用方法例2)
使用方法例1の試薬を使用し、使用方法例1に示した機種、LightCycler Nano及びApplied Biosystems 7000、7300及び7700において、VT1・VT2遺伝子及び16SrRNA遺伝子を各simplexの系(両遺伝子ともにプローブの蛍光標識にFAMを使用)として反応する。
表2―2及び2―3に示した反応液を調製する。
表2―2 反応液の調製
試薬 |
容量 |
|
滅菌精製水 |
7.36μl |
|
TaqMan Environmental Master Mix 2.0 |
15.0μl |
|
プライマー |
VT1―F(50pmol/μl) |
0.36μl |
VT1―R(50pmol/μl) |
0.36μl |
|
VT2―F(50pmol/μl) |
0.36μl |
|
VT2―R(50pmol/μl) |
0.36μl |
|
プローブ (5pmol/μl) |
VT1―P |
0.6μl |
VT2―P |
0.6μl |
|
計 |
25.0μl |
表2―3 反応液の調製
試薬 |
容量 |
|
滅菌精製水 |
8.92μl |
|
TaqMan Environmental Master Mix 2.0 |
15.0μl |
|
プライマー |
16SrRNA―F(20pmol/μl) |
0.24μl |
16SrRNA―R(20pmol/μl) |
0.24μl |
|
プローブ (5pmol/μl) |
16SrRNA―P |
0.6μl |
計 |
25.0μl |
② その他、同等の機能を有する試薬・機器が使用できる。
2) Loop―mediated isothermal amplification(LAMP)法
以下のものが利用できる。
(1) Loopamp腸管出血性大腸菌検出試薬キット(外因性コントロール入り)(LMP681、栄研化学)
対応機種:Loopampリアルタイム濁度測定装置(LA―320C、RT―160C、LoopampEXIA:栄研化学)
(2) その他、同等の機能を有する機器が使用できる。
3) PCR法
市販のVT遺伝子検出キットにて反応を行う。これについては以下のものが利用できる。また、PCR産物の電気泳動においては1,000bp以下の核酸分離に対応した低分子用アガロースゲルを使用する。
(1) EHEC (VT gene) PCR Screening Set(RR120A、タカラバイオ)
94℃で1分、55℃で1分、72℃で1分を35サイクル、72℃で10分を1サイクル行う。増幅DNAの大きさはVT遺伝子が171bp、内部標準遺伝子が685bpである。
(2) その他、同等の機能を有する試薬が使用できる。
4) その他、同等の手法も使用できるが、感度が1X104cfu/ml(増菌培養液)より優れるものを使用することとし、感度の確認が必要な場合には各試験検査機関にて次の方法を参照して行う。
血清群O26、O103、O111、O121、O145又はO157(VT陽性株)の菌濃度が約1X104cfu/ml(検体の増菌培養液)を作製し試験する。血清群O26、O103、O111、O121、O145又はO157(VT陽性株)をTryptic soy broth(栄研化学、日水製薬、オキソイド製造;関東化学販売、日本ベクトン・ディッキンソン等)(10ml)に接種し36±1℃で18±1時間培養する(約5X108cfu/ml)。この培養液を対象検体のmEC培養液9mlを用いて10-4倍希釈する。この10-4倍希釈液1mlを、さらに4mlの対象検体のmEC培養液で希釈した菌液を試料とする。この希釈菌液は約1X104cfu/ml(検体の増菌培養液)とし試験に用いる。菌液調製について、各機関であらかじめ菌株の増殖程度を確認し、必要ならば希釈倍率の変更を行う。
7.O抗原遺伝子検出法
6.VT遺伝子検出法にて陽性であった場合には、そのDNA抽出液を用いてO26、O103、O111、O121、O145及びO157のO抗原遺伝子の検出試験を実施する。また、VT遺伝子検出法と異なる遺伝子検出法にてO抗原遺伝子を検出する場合には、培養液中の成分によって遺伝子検出の反応阻害がないことを確認する。すなわち、O抗原遺伝子検出に使用する遺伝子検出法の原理と同じVT遺伝子検出法にて、検出系に含まれる内因性・外因性コントロールが陽性であることを確認する必要がある。
O抗原遺伝子検出法としては以下のものが利用できる。試験には陽性及び陰性コントロールを設定する。O抗原遺伝子が陽性の場合は、原則として、当日中に8.以降の分離培養法を行う。
1) Real―time PCR法
市販のO抗原遺伝子検出キット又は公表されている方法を参照した試薬にて反応を行う。これについて下記のものが利用できる。
(1) 市販キットを使用する場合
① Cycleave PCR EHEC(O157/O26)Typing Kit(CY237、タカラバイオ)、Cycleave PCR EHEC(O111/O121)Typing Kit(CY238、タカラバイオ)、Cycleave PCR EHEC(O103/O145)Typing Kit(CY239、タカラバイオ)(サイクリング・プローブ法)
対応機種:Thermal Cycler Dice Real Time System Ⅱ、Applied Biosystems 7500及びApplied Biosystems 7500Fast
ただし、使用するDNA抽出液は5.DNA抽出法で示した3)DNeasy Bood & Tissue kitにて得たものとする。また、解析についてはApplied Biosystems 7500及びApplied Biosystems 7500Fastでは、manual解析でbaselineを安定した部分に修正し、thresholdを適切な値に修正する。
② その他、同等の機能を有する試薬・機器が使用できる。
(2) 公表されている方法を参照した試薬を使用する場合
① O26、O103、O121及びO145抗原遺伝子については米国農務省(United States Department of Agriculture、USDA、参照元:MLG 5B Appendix 1.01)、O111及びO157抗原遺伝子については欧州食品安全機構(European Food Safety Authority、参照元:EFSA Journal. 11:3138、2013)のリアルタイムPCR法を参照し、組み合わせた方法(5'―ヌクレアーゼ活性を利用した加水分解プローブ法)
(使用方法例)
ア.機器
Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast、Applied Biosystems 7900HT及びApplied Biosystems ViiA7、LightCycler 480Ⅱ、Thermal Cycler Dice Real Time SystemⅡが使用できる。ただし、ABI PRISM 7500Fastでは、standard chemistryにて使用する。
イ.試薬
TaqMan Environmental Master Mix2.0、加水分解プローブ、プライマー、滅菌精製水
ウ.反応液の準備
表3に示した反応液を調製する。
エ.反応プレートのウェル又は反応チューブに25.0μlずつ反応液を入れる。
オ.検体DNA5μlを加えて、試験を行う。総反応容量は30.0μlとする。
カ.増幅反応は、50℃で2分、95℃で10分を1サイクル、次いで95℃で15秒、60℃で1分を45サイクルに設定し、ランを開始する。
キ.ランが終了したら、データ解析をする。
ク.Applied Biosystems 7500、Applied Biosystems 7500Fast、Applied Biosystems 7900HT及びApplied Biosystems ViiA7では、auto解析又はthresholdを0.05に設定して解析する。必要のある場合は、baselineを安定した部分(目安として3―15cycle)に手動設定し解析を行う。各検体につき、Ct値が得られている場合を陽性とする。また、LightCycler 480Ⅱにおいて、Abs Quant/2nd Derivative Max(auto解析)で適切な判定が行えない場合は、Abs Quant/Fit Points解析でbackgroundを安定した部分(目安として4―10cycle)に手動設定し解析を行う。LightCycler Nanoでは、auto解析を行う。Thermal Cycler Dice Real Time System Ⅱでは、CP法(auto解析)にて解析する。
表3 O抗原遺伝子検出反応液の調製
試薬 |
容量 |
||
滅菌精製水 |
7.9μl |
||
TaqMan Environmental Master Mix 2.0 |
15.0μl |
||
O26/ O157 検出 |
プライマー (20pmol/μl) |
Wzx―O26―F |
0.3μl |
Wzx―O26―R |
0.3μl |
||
RfbE―O157―F |
0.3μl |
||
RfbE―O157―R |
0.3μl |
||
プローブ (5pmol/μl) |
Wzx―O26―P |
0.6μl |
|
RfbE―O157―P |
0.3μl |
||
O103/ O111 検出 |
プライマー (20pmol/μl) |
Wzx―O103―F |
0.3μl |
Wzx―O103―R |
0.3μl |
||
WbdI―O111―F |
0.3μl |
||
WbdI―O111―R |
0.3μl |
||
プローブ (5pmol/μl) |
Wzx―O103―P |
0.3μl |
|
WbdI―O111―P |
0.6μl |
||
O121/ O145 検出 |
プライマー (20pmol/μl) |
Wzx―O121―F |
0.3μl |
Wzx―O121―R |
0.3μl |
||
Wzx―O145―F |
0.3μl |
||
Wzx―O145―R |
0.3μl |
||
プローブ (5pmol/μl) |
Wzx―O121―P |
0.3μl |
|
Wzx―O145―P |
0.6μl |
||
計(各反応液) |
25.0μl |
Wzx―O26―F: 5'―GTA TCG CTG AAA TTA GAA GCG C―3'
Wzx―O26―R: 5'―AGT TGA AAC ACC CGT AAT GGC―3'
Wzx―O26―P: 5'―HEX―TGG TTC GGT TGG ATT GTC CAT AAG AGG G―BHQ1―3'
Wzx―O103―F: 5'―TTG GAG CGT TAA CTG GAC CT―3'
Wzx―O103―R: 5'―ATA TTC GCT ATA TCT TCT TGC GGC―3'
Wzx―O103―P: 5'―FAM―AGG CTT ATC TGG CTG TTC TTA CTA CGG C―BHQ1―3'
WbdI―O111―F: 5'―CGA GGC AAC ACA TTA TAT AGT GCT TT ―3'
WbdI―O111―R: 5'―TTT TTG AAT AGT TAT GAA CAT CTT GTT TAG C ―3'
WbdI―O111―P: 5'―HEX― TTG AAT CTC CCA GAT GAT CAA CAT CGT GAA ―BHQ1―3'
Wzx―O121―F: 5'―AGG CGC TGT TTG GTC TCT TAG A―3'
Wzx―O121―R: 5'―GAA CCG AAA TGA TGG GTG CT―3'
Wzx―O121―P: 5'―FAM―CGC TAT CAT GGC GGG ACA ATG ACA GTG C―BHQ1―3'
Wzx―O145―F: 5'―AAA CTG GGA TTG GAC GTG G―3'
Wzx―O145―R: 5'―CCC AAA ACT TCT AGG CCC G―3'
Wzx―O145―P: 5'―HEX―TGC TAA TTG CAG CCC TTG CAC TAC GAG GC―BHQ1―3'
RfbE―O157―F: 5'―TTT CAC ACT TAT TGG ATG GTC TCA A―3'
RfbE―O157―R: 5'―CGA TGA GTT TAT CTG CAA GGT GAT―3'
RfbE―O157―P: 5'―FAM―AGG ACC GCA GAG GAA AGA GAG GAA TTA AGG―BHQ1―3'
使用機器ごとに適切な蛍光色素を選択して反応する。
Applied Biosystems 7500・7500Fast・7900HT・ViiA7: FAM―BHQ1をFAM―None、HEX―BHQ1をVIC―None。
LC480: FAM―BHQ1をExcitation 465nm・Emission 510nm、HEX―BHQ1をExcitation 533nm・Emission 580nm。
DiceⅡ:FAM―BHQ1をFAM、HEX―BHQ1をHEX。
その他の機器において各O抗原遺伝子のsimplexの系(プローブの蛍光標識にFAMを使用)又はduplex等のmultiplexの系として使用できるが、感度が1X104cfu/ml(増菌培養液)より優れるものを使用することとし、感度の確認が必要な場合には各試験検査機関にて6.VT遺伝子検出法の4)を参照して行う。
② その他、同等の機能を有する試薬・機器が使用できる。
2) LAMP法
公表されている方法を参照した試薬を用いる。又は、市販のO157抗原遺伝子キットにて反応を行う。これについては下記のものが利用できる。
(1) 公表されている方法を参照した試薬を使用する場合
① Wangらの方法(参照元:Appl. Environ. Microbiol., 78:2727―2736,2012)のプライマー及び反応条件を参照して反応を行う。
(使用方法例)
ア.機器
Loopampリアルタイム濁度測定装置(LA―320C、RT―160C、LoopampEXIA:栄研化学)
イ.試薬
Loopamp DNA増幅試薬キット(LMP204/LMP205/LMP206、栄研化学)、プライマー、滅菌精製水
ウ.反応液の準備
表4に示した反応液を調製する。
エ.反応チューブに20.0μlずつ反応液を入れる。
オ.検体DNA 5μlを加えて、試験を行う。総反応容量は25.0μlとなる。
カ.増幅反応は、O157では63℃60分、80℃2分。O157以外の血清群では65℃60分、80℃2分とし、反応を開始する。
キ.反応が終了したら、増幅曲線,判定等を確認する。
表4 O抗原遺伝子検出反応液の調製
試薬 |
容量 |
|
2 × Reaction Mix. (RM) |
12.5μl |
|
Bst DNA Polymerase |
1.0μl |
|
O26検出 |
O26―wzy―F3(2.5pmol/μl) |
1.0μl |
O26―wzy―B3(2.5pmol/μl) |
1.0μl |
|
O26―wzy―FIP(45pmol/μl) |
1.0μl |
|
O26―wzy―BIP(45pmol/μl) |
1.0μl |
|
O26―wzy―LF(25pmol/μl) |
1.0μl |
|
O26―wzy―LB(25pmol/μl) |
1.0μl |
|
滅菌精製水 |
0.5μl |
|
O103検出 |
O103―wzx―F3(2.5pmol/μl) |
1.0μl |
O103―wzx―B3(2.5pmol/μl) |
1.0μl |
|
O103―wzx―FIP(45pmol/μl) |
1.0μl |
|
O103―wzx―BIP(45pmol/μl) |
1.0μl |
|
O103―wzx―LF(25pmol/μl) |
1.0μl |
|
O103―wzx―LB(25pmol/μl) |
1.0μl |
|
滅菌精製水 |
0.5μl |
|
O111検出 |
O111―wzy―F3(2.5pmol/μl) |
1.0μl |
O111―wzy―B3(2.5pmol/μl) |
1.0μl |
|
O111―wzy―FIP(45pmol/μl) |
1.0μl |
|
O111―wzy―BIP(45pmol/μl) |
1.0μl |
|
O111―wzy―LB(25pmol/μl) |
1.0μl |
|
滅菌精製水 |
1.5μl |
|
O121検出 |
O121―wzy―F3(2.5pmol/μl) |
1.0μl |
O121―wzy―B3(2.5pmol/μl) |
1.0μl |
|
O121―wzy―FIP(45pmol/μl) |
1.0μl |
|
O121―wzy―BIP(45pmol/μl) |
1.0μl |
|
O121―wzy―LF(25pmol/μl) |
1.0μl |
|
滅菌精製水 |
1.5μl |
|
O145検出 |
O145―wzx―F3(2.5pmol/μl) |
1.0μl |
O145―wzx―B3(2.5pmol/μl) |
1.0μl |
|
O145―wzx―FIP(45pmol/μl) |
1.0μl |
|
O145―wzx―BIP(45pmol/μl) |
1.0μl |
|
O145―wzx―LF(25pmol/μl) |
1.0μl |
|
滅菌精製水 |
1.5μl |
|
O157検出 |
O157―wzy―F3(2.5pmol/μl) |
1.0μl |
O157―wzy―B3(2.5pmol/μl) |
1.0μl |
|
O157―wzy―FIP(45pmol/μl) |
1.0μl |
|
O157―wzy―BIP(45pmol/μl) |
1.0μl |
|
O157―wzy―LF(25pmol/μl) |
1.0μl |
|
O157―wzy―LB(25pmol/μl) |
1.0μl |
|
滅菌精製水 |
0.5μl |
|
計 |
20μl |
O26―wzy―F3: 5'―GACTATGAAGCGTATGTTGAT―3'
O26―wzy―B3: 5'―TCCTGATTTGAACAATGTCAAT―3'
O26―wzy―FIP: 5'―ACCGCCTAAATACTTAACACCATAATTAATGTCAATGAACTTTATGCC―3'
O26―wzy―BIP: 5'―TTCCTTGGGACCACATTCCTACATGTAAAGCAGCAAACC―3'
O26―wzy―LF: 5'―ACCAGCGATAACCAATCTC―3'
O26―wzy―LB: 5'―TACAATACAGTAAGTATACAGCATT―3'
O103―wzx―F3: 5'―ACTCAGTGGTGTAGTAACATG―3'
O103―wzx―B3: 5'―TCACCTTGATTTTCTGCTGA―3'
O103―wzx―FIP: 5'―ATTTGCTATTCCAATTGGACCAGTACTTTAGACTAATTTGTGGCCTTC―3'
O103―wzx―BIP: 5'―TTGGGACAATTGCAAAATTTTGTGGATCTATTAACTCCTTGTGAAACTTG―3'
O103―wzx―LF: 5'―AATTGCAACAACTTTTGAAATAA―3'
O103―wzx―LB: 5'―CCTTTATAAATGGATTCATTTCATC―3'
O111―wzy―F3: 5'―AAGGCGTAACTTTTTTTGAAC―3'
O111―wzy―B3: 5'―TCATGAGGGTCATTAGGAATT―3'
O111―wzy―FIP: 5'―TCACCAAGCTGTGAAACCAAACTACAGCAAGTAATATTGAACGT―3'
O111―wzy―BIP: 5'―TCCATGGTATGGGGACATTAAATTTTGATGGAAGTCCATATAACGT―3'
O111―wzy―LB: 5'―CTTAAATAACGGCGGACAAT―3'
O121―wzy―F3: 5'―GCTCAGCTTTTATCTTGTTCAA―3'
O121―wzy―B3: 5'―ATAGGCTCCCAACCATCC―3'
O121―wzy―FIP: 5'―ACGCAAAAAGTATGGATTCATACCTGATATAACAGAACCGACTTGG―3'
O121―wzy―BIP: 5'―TGTTGCTGGTTCCTTATTATGTAGTAAAAGCAAGCCAAAACACTC―3'
O121―wzy―LF: 5'―TAAAGCCATCCAACCACGC―3'
O145―wzx―F3: 5'―TTTGTAAGACAAGGTGTATGG―3'
O145―wzx―B3: 5'―GCATTGGTACAGACAGCTTTA―3'
O145―wzx―FIP: 5'―CACAGTACCACCAAACCAAAAAATATTGGTTAGCTATAGCTGTGA―3'
O145―wzx―BIP: 5'―AGTGTGCTTGGAGTGGCTTACAATCCCAGTTTGTAATATCGC―3'
O145―wzx―LF: 5'―TTCTTAAGTTCGGATACACTAGCA―3'
O157―wzy―F3: 5'―TCCCTTTAGGGATATATATACCTT―3'
O157―wzy―B3: 5'―ATAACTGATATTTTCATTTCGTGAT―3'
O157―wzy―FIP: 5'―TTCCCAGCCACTAAGTATTGCAATATGAAAAAAACCCATAGCTCGA―3'
O157―wzy―BIP: 5'―TGCATCGGCCTTCTTTTTTGGAACGTATCATGCAATAAGATCA―3'
O157―wzy―LF: 5'―ATAATGATATATGAATAGAATGCGC―3'
O157―wzy―LB: 5'―TCCTTTTCTCTCCGTATTGAT―3'
(2) O157抗原遺伝子対象の市販キットを使用する場合
① Loopamp大腸菌O157検出試薬キット(LMP631、栄研化学)
3) その他、同等の手法も使用できるが、感度が1X104cfu/ml(増菌培養液)より優れるものを使用することとし、感度の確認が必要な場合には各試験検査機関にて6.VT遺伝子検出法の4)を参照して行う。
8.分離培養法
分離培養は増菌培養液の免疫磁気ビーズ濃縮液の塗抹及び増菌培養液の直接塗抹によって行う。VT遺伝子検出試験及びO抗原遺伝子検出試験の両方が陽性であった場合は陽性であった血清群について、また、VT遺伝子検出試験が陽性でO抗原遺伝子検出法を行わずに分離培養法を実施する場合は6血清群について、原則として当日中に行う。当日中に分離培養をしない場合は、保存培養液を使用して実施する。
なお、磁石スタンド接触面へのビーズの吸着が芳しくない場合は、免疫磁気ビーズ塗抹法と同様に分離平板培地各2枚を使用して直接塗抹法を実施する。その他、必要があると思われる場合は目的に合わせた分離培養法を実施する。
1) 免疫磁気ビーズ法
(1) 免疫磁気ビーズ濃縮法
免疫磁気ビーズとしては以下のものが利用できる。各社ビーズの仕様に合わせたビーズ液量を1.5mlチューブに入れ、培養液1mlを加えて濃縮する。この際、複数のO抗原遺伝子が陽性であった場合に、異なる血清群のビーズを混合して用いない。また、濃縮操作は各社製ビーズの仕様に合わせ0.05% Tween20加PBS又は滅菌生理食塩水を使用し最終的に0.1mlに懸濁する。詳細な試験方法は、各仕様書を参照する。交差汚染を避けるためにマイクロチューブの蓋をあける際は、固く絞ったアルコール綿で蓋を覆うなどの配慮が必要である。また、ビーズ吸着操作後の培養液や洗浄液を取り除く際には、ディスポーザブルのスポイトの使用やマイクロピペットの汚染防止などを配慮する。
① 血清群O26
ア.免疫磁気ビーズO26「生研」(デンカ生研)
イ.Dynabeads EPEC/VTEC O26(ベリタス販売)
② 血清群O103
ア.免疫磁気ビーズO103「生研」(デンカ生研)
イ.Dynabeads EPEC/VTEC O103(ベリタス販売)
③ 血清群O111
ア.免疫磁気ビーズO111「生研」(デンカ生研)
イ.Dynabeads EPEC/VTEC O111(ベリタス販売)
④ 血清群O121
ア.免疫磁気ビーズO121「生研」(デンカ生研)
⑤ 血清群O145
ア.免疫磁気ビーズO145「生研」(デンカ生研)
イ.Dynabeads EPEC/VTEC O145(ベリタス販売)
⑥ 血清群O157
ア.免疫磁気ビーズO157「生研」(デンカ生研)
イ.Dynabeads anti―E.coli O157(ベリタス販売)
⑦ 各血清群につき、その他、同等品も使用できる。
(2) 免疫磁気ビーズ塗抹法
分離平板培地にはセフィキシム・亜テルル酸カリウム(CT)添加ソルビトールマッコンキー(CT―SMAC)寒天培地を必ず使用する。ただし、O26免疫磁気ビーズ濃縮液を塗抹する場合にはCT添加ラムノースマッコンキー(CT―RMAC)寒天培地、O111免疫磁気ビーズ濃縮液を塗抹する場合にはCT添加ソルボースマッコンキー(CT―SBMAC)寒天培地をCT―SMAC寒天培地に替えて使用しても良い。
また、腸管出血性大腸菌の分離に適した以下の④から⑬の酵素基質培地を1種類以上併用する。なお、凍結等によって菌の損傷が考えられるなど、汚染菌のCT感受性が高いことが考えられる場合などは、CT非添加の分離平板培地も使用する。
免疫磁気ビーズ濃縮液10~20μlを各種分離平板培地1枚あたりに画線塗抹し36±1℃で18~24時間培養後、疑われるコロニーを分離する。多くの単離コロニーが出現するように、1種類につき2枚以上の分離平板培地を用いる。二分画培地の場合は相当の面積に塗抹する。菌が密集して発育した場合には、コロニー形態の鑑別ができないため、単離コロニーが30個程度以上出現するよう工夫して塗抹する。1検体につき各種培地の典型的コロニーをできる限り5個以上釣菌し、9.血清型別試験以降の試験を行う。
① CT―SMAC寒天培地(市販生培地、自家調製又は基礎培地使用:オキソイド製造;関東化学販売、日水製薬、メルク、栄研化学、日本ベクトン・ディッキンソン等、極東製薬工業等)
基礎培地組成:
ペプトン 20.0g
胆汁酸塩 1.5g
ソルビトール 10.0g
NaCl 5.0g
ニュートラルレッド 0.03g
クリスタルバイオレット 0.001g
寒天 15.0g
精製水 1,000ml
pH 7.2±0.1
備考:121℃で15分間滅菌後、50℃以下に冷却し、以下に示す添加剤を無菌的に加えたのち、滅菌シャーレに分注し寒天平板として使用する。
添加剤:培地1,000mlに対し、セフィキシム0.05mg及び亜テルル酸カリウム2.5mg(オキソイド製造;関東化学販売、メルク、ベリタス等)を加える。
各血清群コロニーの典型的色調:典型的な血清群O157はソルビトール非分解又は遅分解の無色透明コロニー、血清群O26、O103、O111、O121及びO145は一般的な大腸菌と同様にソルビトール分解の赤色コロニーを形成する。
② CT―RMAC寒天培地(市販生培地:デンカ生研、日水製薬、極東製薬工業等;自家調製又は基礎培地使用(マッコンキー基礎培地を用いる場合:日本ベクトン・ディッキンソン等))
基礎培地組成:
ペプトン 20.0g
胆汁酸塩(Bile salts No.3) 1.5g
ラムノース 10.0g
NaCl 5.0g
ニュートラルレッド 0.03g
クリスタルバイオレット 0.001g
寒天 15.0g
精製水 1,000ml
pH 7.2±0.1
備考:121℃で15分間滅菌後、50℃以下に冷却し、以下に示す添加剤を無菌的に加えたのち、滅菌シャーレに分注し寒天平板として使用する。
添加剤:培地1,000mlに対し、セフィキシム0.05mg及び亜テルル酸カリウム2.5mg(オキソイド製造;関東化学販売、メルク、ベリタス等)を加える。
各血清群コロニーの典型的色調:典型的な血清群O26はラムノース非分解又は遅分解コロニーであり無色透明コロニー、血清群O103、O111、O121、O145及びO157は一般的な大腸菌と同様に赤色コロニーを形成する。
③ CT―SBMAC寒天培地(市販生培地:日水製薬、極東製薬工業等;自家調製又は基礎培地使用(マッコンキー基礎培地を用いる場合:日本ベクトン・ディッキンソン等))
基礎培地組成:
ペプトン 20.0g
胆汁酸塩 1.5g
ソルボース 10.0g
NaCl 5.0g
ニュートラルレッド 0.03g
クリスタルバイオレット 0.001g
寒天 15.0g
精製水 1,000ml
pH 7.2±0.1
又は
マッコンキー基礎培地 40.0g
ソルボース 10.0g
精製水 1,000ml
pH 7.1±0.2
備考:121℃で15分間滅菌後、50℃以下に冷却し、以下に示す添加剤を無菌的に加えたのち、滅菌シャーレに分注し寒天平板として使用する。
添加剤:培地1,000mlに対し、セフィキシム0.05mg及び亜テルル酸カリウム2.5mg(オキソイド製造;関東化学販売、メルク、ベリタス等)を加える。
各血清群コロニーの典型的色調:典型的な血清群O111はソルボース非分解又は遅分解コロニーであり無色透明コロニー、血清群O26、O103、O121、O145及びO157は一般的な大腸菌と同様に赤色コロニーを形成する。
④ CT―クロモアガーSTEC培地(市販生培地:関東化学、基礎培地使用(クロモアガーSTEC基礎培地:クロモアガー社製造;関東化学販売))
粉末培地調製は以下の通りである。
基礎培地組成:
ペプトン及び酵母エキス 8.0g
NaCl 5.2g
特殊酵素基質混合物 2.6g
寒天 15.0g
精製水 1,000ml
pH 7.0±0.2
備考:加熱溶解後(オートクレーブ不可、過度の加熱も避けること)50℃以下に冷却してから、以下に示す添加剤を無菌的に加えたのち、滅菌シャーレに分注し寒天平板を作製する。なお、作製した寒天平板は冷蔵保存するが、その保存期間は2~8℃で30日以内とする。
添加剤:培地1,000mlに対し、セフィキシム0.05mg及び亜テルル酸カリウム2.5mg(オキソイド製造;関東化学販売、メルク、ベリタス等)を加える。
各血清群コロニーの典型的色調:典型的な血清群O26、O103、O111、O121、O145及びO157は藤色コロニーを形成する。
⑤ CIX寒天培地(市販生培地:極東製薬工業)
組成:
カゼインペプトン 9.7g
胆汁酸塩 1.5g
糖類 10.0g
NaCl 5.0g
寒天 15.0g
酵素基質2種 0.2g
選択剤混合物 2.55mg
pH指示薬 0.03g
精製水 1,000ml
pH 7.5±0.1
備考:保存期間は2~10℃で3ヶ月以内とする。
各血清群コロニーの典型的色調:典型的な血清群O26及びO111は群青色~濃紫色コロニー、血清群O157は青~青緑色のコロニーを形成する。血清群O103、O121及びO145は多様な色調のコロニーを形成する。
⑥ XM―EHEC寒天培地(市販生培地:日水製薬)
組成:
ペプトン 15.0g
NaCl 3.0g
胆汁酸塩 1.8g
ソルビトール 15.0g
発色酵素基質混合物 0.24g
選択剤 5.05mg
寒天 13.0g
精製水 1,000ml
pH 7.2±0.2
備考:保存期間は4~10℃で2.5ヶ月以内とする。
各血清群コロニーの典型的色調:典型的な血清群O26は青紫色コロニー、血清群O111は白濁した赤紫~紫色コロニー、血清群O157は赤紫~紫色コロニーを形成する。血清群O103、O121及びO145は多様な色調のコロニーを形成する。
⑦ Vi EHEC寒天培地(市販生培地:栄研化学)
組成:
ペプトン 13.5g
胆汁酸塩 1.2g
NaCl 5.0g
酵素基質混合物 6.1g
選択剤 0.002g
寒天 19.0g
精製水 1,000ml
pH 7.2±0.2
備考:保存期間は2~10℃で2ヶ月以内とする。
各血清群コロニーの典型的色調:典型的な血清群O26は緑色コロニー、血清群O111はえんじ色コロニー、O157は無色透明で中心部褐色のコロニーを形成する。血清群O103、O121及びO145は多様な色調のコロニーを形成する。
⑧ CT―クロモアガーO26/O157培地(クロモアガー製造;関東化学販売)
基礎培地組成:
ペプトン及び酵母エキス 8.0g
NaCl 5.0g
選択剤・発色基質混合物 23.0g
寒天 15.0g
精製水 1,000ml
pH 7.0±0.2
備考:加熱溶解後(オートクレーブ不可、過度の加熱も避けること)50℃以下に冷却し、以下に示す添加剤を無菌的に加えたのち、滅菌シャーレに分注し寒天平板として使用する。作製した寒天平板は冷蔵保存するが、その保存期間は2~8℃で30日以内とする。
添加剤:培地1,000mlに対し、セフィキシム0.05mg及び亜テルル酸カリウム2.5mg(オキソイド製造;関東化学販売、メルク、ベリタス等)を加える。
各血清群コロニーの典型的色調:典型的な血清群O26は緑色コロニー、血清群O157は赤色コロニーを形成する。血清群O103、O111、O121及びO145は多様な色調のコロニーを形成する。
⑨ CT―クロモアガーO157培地(クロモアガー製造;関東化学販売)
組成:
ペプトン 5.0g
酵母エキス 3.0g
NaCl 5.0g
選択剤・発色基質混合物 1.0g
寒天 15.0g
精製水 1,000ml
pH 6.8±0.1
備考:加熱溶解後(オートクレーブ不可、過度の加熱も避けること)50℃以下に冷却し、以下に示す添加剤を無菌的に加えたのち、滅菌シャーレに分注し寒天平板として使用する。作製した寒天平板は冷蔵保存するが、その保存期間は2~8℃で30日以内とする。
添加剤:培地1,000mlに対し、セフィキシム0.05mg及び亜テルル酸カリウム2.5mg(オキソイド製造;関東化学販売、メルク、ベリタス等)を加える。
各血清群コロニーの典型的色調:典型的な血清群O157は藤色コロニー、血清群O26、O103、O111、O121及びO145は一般的な大腸菌と同様に青色コロニーを形成する。
⑩ CT―BCMO157寒天培地(栄研化学)
基礎培地組成:
ペプトン 18.0g
糖類(単糖類、二糖類) 40.0g
発色基質 0.4g
グラム陽性菌抑制剤 1.5g
フェノールレッド 0.1g
NaCl 5.0g
寒天 15.0g
精製水 1,000ml
pH 6.8±0.1
備考:加熱溶解後(オートクレーブ不可、過度の加熱も避けること)50℃以下に冷却し、1規定の塩酸又は水酸化ナトリウムでpH6.8±0.1に調製して以下に示す添加剤を無菌的に加えたのち、滅菌シャーレに分注し寒天平板として使用する。作製した寒天平板は冷蔵保存するが、その保存期間は2~8℃で30日以内とする。
添加剤:培地1,000mlに対し、セフィキシム0.05mg及び亜テルル酸カリウム2.5mg(オキソイド製造;関東化学販売、メルク、ベリタス等)を加える。
各血清群コロニーの典型的色調:典型的な血清群O157は黒~濃青色コロニー、血清群O26、O103、O111、O121及びO145は一般的な大腸菌と同様に緑色コロニーを形成する。
⑪ CT―Vi RXO26寒天培地(栄研化学)
基礎培地組成:
ペプトン 15.0g
NaCl 5.0g
胆汁酸塩 1.5g
L―ラムノース 10.0g
フェノールレッド 0.03g
発色基質 0.3g
寒天 15.0g
精製水 1,000ml
pH 7.0±0.2
備考:121℃で15分間滅菌後、50~60℃に冷却し、以下に示す添加剤を無菌的に加えたのち、滅菌シャーレに分注し寒天平板として使用する。
添加剤:培地1,000mlに対し、セフィキシム0.05mg及び亜テルル酸カリウム2.5mg(オキソイド製造;関東化学販売、メルク、ベリタス等)を加える。
各血清群コロニーの典型的色調:典型的な血清群O26は青紫~黒色コロニー、血清群O103、O111、O121、O145及びO157は一般的な大腸菌と同様に黄緑~青緑色のコロニーを形成する。
⑫ CT―レインボーアガーO157培地(バイオログ製造;セントラル科学貿易販売)
組成:
ペプトン 6.0g
糖類 35.63g
発色基質 0.4g
3―indoxyl―β―D―galactoside 0.25g
3―indoxyl―β―D―glucuronide 0.12g
寒天 14.0g
精製水 1,000ml
pH 6.8±0.1
備考:加熱溶解又は121℃で5分間滅菌した後、50℃以下に冷却し、以下に示す添加剤を無菌的に加えたのち、滅菌シャーレに分注し寒天平板として使用する。作製した寒天平板は冷蔵保存するが、その保存期間は2~8℃で14日以内とする。
添加剤:培地1,000mlに対し、セフィキシム0.05mg及び亜テルル酸カリウム2.5mg(オキソイド製造;関東化学販売、メルク、ベリタス等)を加える。
各血清群コロニーの典型的色調:典型的な血清群O157は黒~灰色コロニーを形成する。血清群O26、O103、O111、O121及びO145は多様な色調のコロニーを形成する。
⑬ その他、同等に腸管出血性大腸菌を検出できる培地も使用できる。
2) 直接塗抹法
直接塗抹法については増菌培養液10μlを1)免疫磁気ビーズ法で示した分離平板培地の①から③の1種類及び④から⑬の1種類について各1枚ずつ計2枚に画線塗抹し36±1℃で18~24時間培養後、疑われるコロニーを分離する。なお、詳細は1)免疫磁気ビーズ塗抹法に準拠して実施する。また、単一コロニーの出現には、増菌培養液を希釈したものを塗抹するなどの操作を必要に応じて行う。
9.血清型別試験
分離平板培地から血清群O26、O103、O111、O121、O145又はO157と疑われるコロニーを釣菌し、普通寒天培地等にて純培養する(培養条件:36±1℃で18~24時間)。市販の免疫血清又は抗体を感作したラテックスを使用した凝集試薬を用いて、仕様書の試験方法を参照し血清型別試験を行う。
なお、免疫血清を使用する場合には、生菌を用いた場合に誤判定となることがあるため、最終判定には加熱死菌を用いる。
1) 血清群O26
(1) 病原大腸菌免疫血清 O26(デンカ生研)
(2) E. coli O26―F「生研」(デンカ生研)
2) 血清群O103
(1) 病原大腸菌免疫血清 O103(デンカ生研)
3) 血清群O111
(1) 病原大腸菌免疫血清 O111(デンカ生研)
(2) E. coli O111―F「生研」(デンカ生研)
4) 血清群O121
(1) 病原大腸菌免疫血清 O121(デンカ生研)
5) 血清群O145
(1) 病原大腸菌免疫血清 O145(デンカ生研)
6) 血清群O157
(1) 病原大腸菌免疫血清 O157(デンカ生研)
(2) 大腸菌O157検出試薬「UNI」(オキソイド製造;関東化学販売)
(3) E. coli O157―F「生研」(デンカ生研)
7) その他、各血清群につき、同等品も使用できる。
10.生化学的性状試験
血清群O26、O103、O111、O121、O145又はO157と疑われるコロニーについては、生化学的性状を確認する。TSI寒天培地、LIM培地、CLIG培地、各種キット等から選択して使用できる(培地使用における培養条件:36±1℃で18~24時間)。
1) TSI寒天培地(日水製薬、栄研化学、メルク、オキソイド製造;関東化学販売等)
組成:
ペプトン 20.0g
肉エキス 3.0g
酵母エキス 3.0g
NaCl 5.0g
乳糖 10.0g
ショ糖 10.0g
ブドウ糖 1.0g
クエン酸鉄アンモニウム 0.2g
チオ硫酸ナトリウム 0.2g
フェノールレッド 0.024g
寒天 12.0g
精製水 1,000ml
pH 7.4±0.2
備考:加温溶解後、小試験管に3mlずつ分注し121℃で15分間滅菌後、斜面寒天(半高層)として使用する。市販品を使用してもよい。TSI寒天培地での典型的な大腸菌は、高層部黄変、斜面部黄変、硫化水素非産生、ガス産生を示す。
2) LIM培地(日水製薬、極東製薬工業、栄研化学等)
組成:
ペプトン 12.8g
酵母エキス 3.0g
ブドウ糖 1.0g
L―リジン塩酸塩 10.0g
L―トリプトファン 0.5g
ブロムクレゾールパープル 0.02g
寒天 2.7g
精製水 1,000ml
pH 6.8±0.2
備考:加温溶解後、小試験管に約5mlずつ分注し121℃で15分間滅菌後、急冷し高層培地とする。多くの大腸菌は、高層部紫色変、運動性陽性、インドール産生を示すが、高層部黄色変(血清群O111の多くの株)、運動性陰性など、非定型の性質を持つ場合もあることから、これらについても大腸菌の性状として検査する。
3) CLIG培地(極東製薬工業)
組成:
カゼインペプトン 7.5g
肉ペプトン 2.5g
ラクトース 1.0g
セロビオース 10.0g
トリプトファン 0.1g
MUG 0.02g
NaCl 5.0g
フェノールレッド 0.025g
寒天 14.9g
精製水 1,000ml
pH 7.4±0.2
備考:加温溶解後、小試験管に約3mlずつ分注し115℃で15分間滅菌後、斜面寒天(半高層)培地とする。典型的な血清群O157は、高層部黄変、斜面部赤変を示し、紫外線照射下で蛍光を示さない。
11.VT確認試験
血清群O26、O103、O111、O121、O145又はO157と疑われるコロニーについては、VT遺伝子又はVT産生性を以下の方法で確認する。
1) 遺伝子検出法
(1) 6.VT遺伝子検出法で示した各種検出法
(2) O―157(ベロ毒素1型、2型遺伝子)PCR Typing Set(RR105A、タカラバイオ)
(3) Loopamp腸管出血性大腸菌検出試薬キット(LMP621、栄研化学)
(4) その他、同等品も使用できる。
2) 逆受身ラテックス凝集反応(RPLA)法
(1) VTEC―RPLA「生研」(デンカ生研)
(2) その他、同等品も使用できる。なお、増菌培養液でのVT遺伝子検出試験の代替には使用できない。
3) イムノクロマトグラフィー法等
(1) デュオパス・ベロトキシン(メルク製造:極東製薬工業販売)
(2) キャピリアVT(タウンズ)
(3) NHイムノクロマトVT1/2(日本ハム製造:日水製薬、和光純薬工業、極東製薬工業、コスモ・バイオ販売)
(4) RIDAスクリーン ベロトキシン(アヅマックス)
(5) その他、同等品も使用できる。なお、増菌培養液でのVT遺伝子検出試験の代替には使用できない。
12.判定
腸管出血性大腸菌血清群O26、O103、O111、O121、O145又はO157が分離されたことをもって、陽性とする。VT遺伝子検出法及びO抗原遺伝子検出法によって陽性であったが、血清群O26、O103、O111、O121、O145又はO157の分離ができなかった場合は、陰性とする。
(参考)
食品からの腸管出血性大腸菌検査法
(O26、O103、O111、O121、O145及びO157)