添付一覧
○水道事業の基盤強化に向けた取組について
(平成28年3月2日)
(生食水発0302第2号)
(都道府県水道行政担当部(局)・厚生労働大臣認可水道事業者・厚生労働大臣認可水道用水供給事業者あて厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部水道課長通知)
(公印省略)
日本の水道は、平成25年度末で普及率97.7%と大部分の国民が水道による水の供給を受けている状況を実現するとともに、水質の面でも世界に誇る「安全でおいしい水」の供給を達成していますが、一方で、管路をはじめとする水道施設の老朽化、耐震性の不足、職員数の減少、人口減少による料金収入減といった課題に直面しており、国民生活に密着した重要なインフラである水道の持続性を高める取組が喫緊の課題となっています。
厚生労働省では、これらの課題に対し、新水道ビジョン(平成25年3月策定)の提示及び水道事業におけるアセットマネジメント(資産管理)に関する手引き(平成21年7月厚生労働省健康局水道課作成)等各種ツールの提供等により、水道事業者による課題の把握及び対策の実施を支援してきました。
さらに、平成27年9月より水道事業基盤強化方策検討会(座長:滝沢智 東京大学大学院工学系研究科教授)を開催し、平成28年1月に、都道府県が推進役となって水道事業の広域連携を推進すべきこと等を内容とする「水道事業の基盤強化方策に盛り込むべき事項」(以下「中間とりまとめ」という。)(「水道事業基盤強化方策検討会中間とりまとめについて」(平成28年3月2日付け各都道府県水道行政担当部(局)長宛厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部水道課事務連絡)参照)をとりまとめました。
中間とりまとめで示された事項等については、厚生科学審議会生活環境水道部会の下に設置した水道事業の維持・向上に関する専門委員会においてさらに議論を深める予定としていますが、中間とりまとめのうち、主な内容について下記に示しました。
都道府県水道行政担当部(局)におかれましては、水道事業の広域連携に係る検討や貴管下の水道事業者及び水道用水供給事業者(以下「水道事業者等」という。)の指導・監督等の際の参考にされるとともに、貴管下の水道事業者等に対しても周知いただくようお願いいたします。
本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項(技術的助言)に基づくものです。
記
第1 都道府県における広域連携の検討について
水道事業の広域連携については、「水道事業の広域連携の推進について」(平成28年3月2日付け各都道府県水道行政担当部(局)長宛厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部水道課長通知)(別添)により早期の検討体制の構築等をお願いしているところですが、中間とりまとめでは次のとおり示されていますので、都道府県において広域連携の検討を進めるにあたり、適宜参照いただくようお願いします。
① 広域連携の趣旨
広域連携の趣旨は、経営規模拡大によるスケールメリットの創出に加え、水道事業者ごとに必要な人材を確保し続けることが困難な場合における人材確保という意義が大きいこと。
簡易水道については、従前より統合を進めていただいているところであるが、統合を行ってもなお十分な人材が確保できない場合には、さらに広域での連携を図るべきであること。
② 圏域の設定
水源とする河川の水系などの地理的状況や、社会的状況等を踏まえ、都道府県内を1~数個の圏域に集約することが考えられること。
③ 広域連携の形態
広域連携の形態は、「広域化」の代表的な形態である事業統合に限らず、経営統合や、人材の融通・派遣、事務的な協力の実施など、様々な手法が考えられ、地域の実情、水道事業者のニーズに応じて選択することが考えられること。
なお、人材の融通・派遣や事務的な協力の実施については、その時々におけるプロジェクト(更新需要の見積もり、施設更新計画の策定、施設更新工事発注時の仕様書作成、料金改訂等)に応じて対応することもありうること。
④ 水道用水供給事業と受水水道事業者との統合の推進
水道用水供給事業と受水水道事業者との統合は、既に管路が連結していることや、水源から給水栓までの一元管理が実現し水質管理が行き届きやすいといった利点があることから、積極的に推進するべきであること。
⑤ 民間企業との連携
水道事業を支える人材の確保としては、民間企業の経営ノウハウや人材の活用にも積極的に取り組むべきであること。
官民連携には、水道事業の個別の業務委託のほか、第三者委託やPFIの活用など様々な形があり、また、官民の共同出資会社の活用や、水道事業者、都道府県、民間企業等が柔軟に交流し、互いの知恵を出し合う取組も有効であること。
⑥ 広域連携を推進するための人材
広域連携の具体的な内容の検討は、関係水道事業者等と協議の上進めることとなるが、進め方としては、都道府県職員が主導するほか、都道府県下の、水道事業経営に関して多くの知識・経験を有する大規模水道事業者等(都道府県営水道事業・水道用水供給事業を含む。)が中心となって進める等の方法もあること。
第2 水道施設の更新・耐震化等について
(1) アセットマネジメントについて
アセットマネジメント(施設の修繕、更新、耐震化及び再構築を、長期的視野に立って更新需要を把握した上で、財源確保を考慮しつつ計画的に行うこと。)は、水道事業を持続的に経営するために必要不可欠な取組であり、従前より、水道事業におけるアセットマネジメント(資産管理)に関する手引き等により、その実施をお願いしてきました。
中間とりまとめにおいても、アセットマネジメントの実施を水道事業者に義務付けること等が示されています。
水道事業者等におかれては、引き続き、アセットマネジメントの実施に取り組まれるようお願いします。
なお、アセットマネジメントとは、上記手引きにも記載されているとおり、更新需要の試算に止まるものではなく、試算結果を踏まえ、財源も確保した上で、施設の更新等を計画的に実施することまでを含めたものです。
水道事業者等におかれては、この認識のもと、更新需要の試算に止まらず、試算結果を施設の更新計画の策定等に活かしていただくようお願いします。
また、都道府県におかれては、立入検査や認可等の事務を実施するにあたって、この認識に基づき、更新需要の試算を促進するとともに、試算結果を更新計画の策定等に活用するよう働きかけていただきますようお願いします。
(2) 認可権者による働きかけの強化について
厚生労働省では、大臣認可水道事業者の施設の更新等を促進するため、水道事業者ごとの管路の経年化率及び更新率等のデータを公表しており、今後は、技術管理者等のみならず事業管理者への直接的な働きかけも検討しています。
中間取りまとめにおいても、認可権者による働きかけの強化として、認可権者は水道事業の運営状況に関する情報の公表や、首長や事業管理者への情報伝達に努めるべきこと等が示されています。
都道府県におかれても、管下の水道事業者等について、国と同様に、水道事業者等の経営の状況を比較し把握できるようなデータの公表や事業管理者への直接の働きかけをご検討いただきますようお願いします。
第3 水道料金の適正化の促進
水道施設は耐震性等を備えたものでなければならないとされ(水道法(昭和32年法律第177号)第5条(施設基準)第3項)、そのような状態を維持するために必要な経費(資産維持費)を水道料金の原価を算定する際に組み込むこととされています(水道法施行規則(昭和32年厚生省令第45号)第12条)。
中間とりまとめでは、資産維持費として求める水準・内容について国の公的見解を示すべきことや、水道料金の適正化にあたり需要者とのコミュニケーションの充実を図るべきこと、水道法が目的として掲げる「低廉」な水の供給は、「安全」な水を、災害等に対応しうる「強靱」な施設を確保し、かつ、将来にわたって「持続」的に供給することを可能とすることを前提としている点を明確に示すべきこと等が示されました。
水道事業者におかれては、水道料金について、次の点をご確認いただき、必要に応じて、水道料金の見直しの検討に着手していただくようお願いします。
・資産維持費を適切に盛り込んで算定した額を基礎として、合理的かつ明確な根拠に基づき設定されているか(水道法施行規則第12条第2号)
・供給単価が給水原価を下回らない等、財政の均衡が保たれるよう設定されているか(水道法施行規則第12条第1号)
第4 その他
中間とりまとめにおいては、水質、地球温暖化対策、災害時の事業者間連携、地下水利用についても示されています。
都道府県及び水道事業者等におかれては、中間とりまとめも参照の上、引き続き水質の確保等に取り組まれるようお願いします。
[別添]
○水道事業の広域連携の推進について
(平成28年3月2日)
(生食水発0302第1号)
(各都道府県水道行政担当部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部水道課長通知)
(公印省略)
日本の水道は、平成25年度末で普及率97.7%と大部分の国民が水道による水の供給を受けている状況を実現するとともに、水質の面でも世界に誇る「安全でおいしい水」の供給を達成していますが、一方で、管路をはじめとする水道施設の老朽化、耐震性の不足、職員数の減少、人口減少による料金収入減といった課題に直面しており、国民生活に密着した重要なインフラである水道の持続性を高める取組が喫緊の課題となっています。
こうした状況を受け、厚生労働省では、これまでも都道府県に対して、都道府県水道ビジョンの作成により都道府県内における水道事業が目指すべき方向性等を示すことや、都道府県内の水道事業の広域化の推進を図っていただくことをお願いしてきたところです。
今般、水道事業の広域連携について、総務省より別添のとおり通知が発出されました(「市町村等の水道事業の広域連携に関する検討体制の構築等について」(平成28年2月29日付け各都道府県総務部長(市町村担当課、広域連携担当課扱い)・各都道府県企業管理者宛総務省自治財政局公営企業課長・公営企業経営室長通知)以下「総務省通知」という。)。
広域連携は水道事業の基盤強化のための有力な方策であり、都道府県水道行政担当部(局)におかれましては、総務省通知の趣旨を踏まえ、市町村担当課等の関係部局と十分に連携・協力の上、市町村等の水道事業の広域連携について、早期に検討体制を構築し、検討を進めていただくようお願いします。
なお、総務省通知において、検討体制の設置状況等を調査し、公表する予定であることが示されていますが、厚生労働省としても同調査を総務省と協力して実施するとともに、新水道ビジョン推進に関する地域懇談会等の場で都道府県における広域連携の推進状況についてフォローアップすることとしております。
また、総務省通知において、各市町村等の現状分析及び将来予測を行うことを求めていますが、その実施にあたっては、各水道事業者におけるアセットマネジメント(長期的視野に立った計画的資産管理)による更新需要の把握が有効であることを申し添えます。
厚生労働省においては、広域連携の推進を含む、水道事業の基盤強化方策について、平成27年9月より水道事業基盤強化方策検討会(座長:滝沢智 東京大学大学院工学系研究科教授)を開催し検討を進め、平成28年1月に、都道府県が推進役となって水道事業の広域連携を推進すべきこと等を内容とする「水道事業の基盤強化方策に盛り込むべき事項」(以下「中間とりまとめ」という。)をとりまとめましたのでお知らせします(「水道事業基盤強化方策検討会中間とりまとめについて」(平成28年3月2日付け各都道府県水道行政担当部(局)長宛厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部水道課事務連絡))。
なお、中間とりまとめで示された事項等については、厚生科学審議会生活環境水道部会の下に設置した水道事業の維持・向上に関する専門委員会においてさらに議論を深める予定であります。
本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項(技術的助言)に基づくものです。
[別添]
○市町村等の水道事業の広域連携に関する検討体制の構築等について
(平成28年2月29日)
(/総財公第31号/総財営第13号/)
(各都道府県総務部長(市町村担当課、広域連携担当課扱い)・各都道府県企業管理者あて総務省自治財政局公営企業課長・総務省自治財政局公営企業経営室長通知)
(公印省略)
水道事業については、施設等の老朽化に伴う大量更新期の到来や、人口減少に伴う料金収入の減少等により、経営環境は厳しさを増しており、経営健全化が一層求められています。
このため、総務省では、「公営企業の経営に当たっての留意事項について」(平成26年8月29日付け総財公第107号、総財営第73号、総財準第83号、総務省自治財政局公営企業課長、同公営企業経営室長、同準公営企業室長通知。)により、中長期的な経営計画である経営戦略の策定を要請し、その策定に当たっては、広域的な連携強化についても、地域の実情に応じ、経営基盤の強化、経営効率化の推進等を図るための一方策として検討するよう、市町村、企業団及び一部事務組合等(以下「市町村等」という。)に対し求めているところです。
また、「経済・財政再生計画」(経済財政運営と改革の基本方針2015(平成27年6月30日閣議決定)第3章をいう。)において、公営企業については、「広域的な連携等も含めた抜本的な改革の検討を更に進め」るとされていることを踏まえ、「経済・財政再生計画改革工程表」(平成27年12月24日経済財政諮問会議決定。以下「改革工程表」という。)では、「各都道府県別の広域化検討体制の構築(水道)」が取組内容として設定されています。
市町村等の水道事業の広域連携については、企業団化などの事業統合に限らず、経営の一体化、維持管理業務や総務系の事務処理などの管理の一体化、浄水場などの施設の共同化など様々な方策について、幅広く検討することが必要であるものの、検討の推進役の不在や検討の場の不足等により十分な検討が進んでいないのが現状です。
都道府県においては、市町村を包括する広域自治体として、市町村等の様々な広域連携について検討する場を提供する役割が期待されるところです。
各都道府県におかれては、下記の事項に留意の上、検討体制を早期に構築するとともに、市町村等の水道事業の広域連携について検討していただくようお願いします。
また、この趣旨については、貴都道府県内の各市町村等に対しても併せて周知されるようお願いいたします。
なお、地域の元気創造プラットフォームにおける調査・照会システムを通じて、各市町村に対して、本通知についての情報提供を行っていることを申し添えます。
本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項(技術的な助言)に基づくものです。
記
1.広域連携に関する検討体制の構築等
(1) 検討体制の構成
市町村等の水道事業の広域連携について検討を行うため、都道府県及び都道府県内の全ての市町村等をもって構成すること。
都道府県においては、技術面や経営面などの観点から幅広く助言等を行えるよう、生活衛生担当課、市町村担当課、広域連携担当課及び用水供給事業等の水道事業を運営している企業局等の関係部局が参加した体制とすること。
また、検討体制の事務局は、構成員間の協議により決められるものではあるが、経営戦略の策定と整合性を図る観点から、公営企業を所管する都道府県市町村担当課が生活衛生担当課の協力を得て行うことが考えられること。
なお、地理的条件、社会的条件等を勘案し複数のブロックに分けて検討することが望ましい場合には、全体の検討体制の中に、ブロック単位の検討体制を構築することも考えられること。その際には、連携中枢都市圏や定住自立圏など既存の広域連携の枠組みにも十分に留意すること。
(2) 検討体制の設置時期
市町村等の様々な広域連携について検討するにはかなりの時間を要することから、できる限り平成28年度中の早期に検討体制を設置し、検討を始めることが望ましいこと。
(3) 検討事項
①各市町村等の現状分析及び将来予測
各市町村等の水道事業について、給水人口や水需要、料金収入、施設の更新費用、職員数、人件費等の現状分析や将来予測を行い、各市町村等が抱える課題を十分把握すること。また、将来予測を行う場合には、様々な広域連携による経営効率化の効果について、シミュレーションを行うことにより十分比較検討すること。
②市町村等の水道事業の広域連携に関する検討
市町村等の水道事業の広域連携について、以下に掲げる事項に十分留意の上、検討すること。
・ 広域連携については、地域の実情に応じ、できることから相互協力することが重要であり、浄水場や配水池などの施設の共同設置、維持管理業務の共同実施や共同委託、各種システムの共同化等についても幅広く検討すること。
・ 連携中枢都市圏や定住自立圏など市町村間の広域連携の仕組みの活用や、市町村間の広域連携が困難な地域における都道府県の補完についても検討すること。
・ その際、新たに設けられた事務の代替執行や、公の施設の区域外設置等の制度を活用した区域外給水、用水供給事業と受水水道事業の統合など様々な手法について、地域の実情を踏まえつつ、幅広く検討すること。
・ 広域連携について検討する際には、住民自治の観点や基礎自治体と広域自治体との適正な役割分担についても十分配慮すること。
・ 民間事業者が持つノウハウや技術力、人的資源等を有効活用するには、民間事業者が参入しやすい環境を整える必要があり、共同委託による発注規模の拡大などの広域連携方策についても検討すること。
・ 広域連携や民間活用等の先進事例について十分に分析を行い、各市町村等における活用可能性について、検討すること。
(4) 検討の目途
改革工程表において、経営戦略について平成30年度までに集中的に策定を推進することとされていることを踏まえ、経営戦略への円滑な反映が可能となるよう、できる限り平成30年度までを目途に検討を行うことが望ましいこと。
(5) 検討結果の公表
検討結果については、都道府県及び市町村等のホームページ等により公表し、広く住民に周知を図るとともに、都道府県及び市町村等の議会へ説明すること。
(6) 検討結果の見直し
検討結果については、市町村等の水道事業の広域連携の進捗状況を踏まえ、必要に応じて見直すこと。
なお、見直した結果については、公表すること。
2.地方財政措置
平成28年度から平成30年度までの間、各公営企業(病院事業を除く)が経営戦略を策定する場合、策定に要する経費(上限1,000万円(事業費ベース・複数年度通算))の2分の1について、一般会計から繰出しを行うこととし、当該繰出金について特別交付税措置(2分の1)を講じることとしていること。
水道事業については、経営戦略の策定のために広域化の調査・検討を実施する場合、これらに要する経費を重点的に支援するため、対象経費の上限を1,500万円上乗せし、合計2,500万円とすることとしているので、関係団体と調整の上、都道府県が構築する検討体制での各種調査・検討においても、積極的に活用すること。
3.検討体制の設置状況等の調査及び公表
総務省においては、市町村等の水道事業の広域連携に関する各都道府県の検討体制の設置状況及び検討状況を把握するための調査を行い、調査結果を公表することを予定していること。