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○「水道広域化推進プラン」の策定について

(平成31年1月25日)

(/総財営第85号/生食発第0125第4号/)

(各都道府県知事あて総務省自治財政局長、厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知)

(公印省略)

我が国の水道事業(水道用水供給事業を含む。以下同じ。)を取り巻く経営環境は、急速な人口減少や施設・管路の老朽化等に伴い、急速に厳しさを増しています。こうした中、住民生活に必要不可欠なライフラインとして水道事業の持続的な経営を確保していくためには、中長期の経営見通しに基づく経営基盤の強化を進める必要があります。

このため、水道事業者(水道用水供給事業者を含む。以下同じ。)である市町村等(市町村、企業団及び一部事務組合等をいう。以下同じ。)においては、市町村の区域を超えて連携して又は一体的に水道事業に取り組む広域化の推進が求められます。この水道事業の広域化とは、水道法の一部を改正する法律(平成30年法律第92号)による改正後の水道法(昭和32年法律第177号)(以下「改正水道法」という。)第2条の2第2項の市町村の区域を超えた広域的な水道事業者間の連携等に当たるものです。その具体的な方策としては、経営統合(事業統合及び経営の一体化をいう。以下同じ。)のほか、浄水場等一部の施設の共同設置や事務の広域的処理等、多様な方策が考えられます。経営統合による広域化は、単一の経営主体が経営資源を管理することとなるため、経営基盤の強化を図る効果が最も期待できる一方、経営統合の実現が困難な地域においても、その他の広域化により、施設の更新費用の削減や事務処理の効率化のみならず、技術水準の確保等の効果が期待できます。

こうしたことから、これらの多様な広域化を積極的に推進するため、各都道府県に対し、市町村等の水道事業の広域化に関し、検討体制の構築と平成30年度までの検討及びその結果の公表を要請してきました。

平成30年12月に公表された「水道財政のあり方に関する研究会」(座長 石井晴夫東洋大学教授)の報告書においては、今後、多様な広域化の取組をさらに推進していくためには、引き続き都道府県を中心として、具体的かつ計画的な取組を進めていくことが重要であるとされており、改正水道法においても、同様の趣旨から、厚生労働大臣が定める水道基盤強化のための基本方針(以下「基本方針」という。)において水道事業者間の連携等の推進に関する事項を定める(改正水道法第5条の2第2項第5号)こととされているほか、都道府県が定める水道基盤強化計画においても水道事業者間の連携等に関する事項を定める(改正水道法第5条の3第2項第6号)こととされています。

こうした中、各都道府県知事におかれては、これまでの検討状況を踏まえるとともに、水道基盤強化計画の策定を見据え、広域化の推進方針やこれに基づく当面の具体的取組の内容等について、下記のとおり、「水道広域化推進プラン」を策定し、市町村等の水道事業の広域化の取組を推進されますようお願いします。また、貴都道府県内の市町村等に対してもこの趣旨について速やかに周知されますようお願いします。

なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項(技術的な助言)に基づくものです。

1.水道広域化推進プランの基本的な考え方

(1) 水道広域化推進プランについて

水道広域化推進プランは、市町村等の実施する水道事業について市町村の区域を超えた広域化を推進するため、都道府県が区域内の水道事業に係る広域化の推進方針を定めるとともに、これに基づく当面の具体的取組の内容やスケジュール等について定める計画であること。都道府県においては、これまでの検討結果も踏まえ、広域化の様々なパターンに応じた経営体制や経営指標等の将来見通しについてシミュレーションを実施し、その具体的効果を比較した上で策定すること。

(2) 水道広域化推進プランの策定主体

市町村の区域を超えた水道事業の広域化については、広域的な地方公共団体である都道府県が、住民生活の水準の確保等の観点から、水道の基盤強化の方策として積極的に支援することが求められることから、水道広域化推進プランの策定は、都道府県が行うこと。

(3) 水道広域化推進プランの策定体制

水道広域化推進プランを策定するに当たっては、都道府県において、一義的には市町村財政担当課が主たる取りまとめを行うことが期待されるが、都道府県内の広域にわたる水道事業の効率化や技術的な水準の確保という観点から、水道行政担当課や水道事業を経営している企業局等との連携も重要であることから、関係部局が参加する一元的な体制を構築することが望ましいこと。

また、都道府県は、水道事業者である市町村等と十分協議するとともに、区域内の水道事業の状況を俯瞰し、小規模な事業等も含め、区域全体として持続可能な枠組みとなるよう調整を図ることが求められること。

なお、具体的な策定を進める体制としては、都道府県において既に構築されている広域化に関する検討体制を基本としつつ、改正水道法第5条の4に定める広域的連携等推進協議会を組織し、活用することも検討されたいこと。

水道事業者である市町村等においては、自らの事業の経営基盤の強化のために策定される水道広域化推進プランについて、その策定に必要となる資産等各種情報を都道府県へ適切に提供するなど、都道府県の水道広域化推進プランの策定に協力すること。

(4) 水道広域化推進プランの策定スケジュール

水道広域化推進プランは、平成34年度末までに策定し、公表すること。

また、策定後においても、当該地域の経営条件の変化や広域化に関する具体的な取組の進捗状況等に合わせ、適宜改定を行うこと。

(5) 水道広域化推進プランの公表等

水道広域化推進プランを策定又は改定した場合には、積極的に公表し住民に周知を図るとともに、都道府県及び市町村等の議会へ説明すること。

また、遅滞なく総務省及び厚生労働省に報告されたいこと。

(6) 水道広域化推進プランの策定状況の調査

総務省及び厚生労働省においては、策定状況を把握するための調査を毎年度行い、調査結果を公表することを予定していること。

2.水道広域化推進プランにおける具体的な記載事項

以下に示す項目について所要の検討を行い、その検討結果を水道広域化推進プランに記載することが適当であること。

(1) 市町村等の水道事業者ごとの経営環境と経営状況に係る現状と将来の見通し

次の項目について、今後の人口減少や更新投資需要の増大等への対応の必要性を反映し、現時点の状況と現行の経営形態で経営を継続した場合の将来見通しを明らかにすること。中長期の課題を把握分析するため、40年~50年程度の期間による将来見通しとすることが望ましいこと。

① 給水人口、産業の動向、有収水量、利用可能な水資源の状況といった自然・社会的条件に関すること

② 水質の維持管理状況、災害時の対応計画といった水道事業のサービスの質に関すること

③ 従事している職員の状況(専門的な人材の状況を含む。)、業務委託等の実施状況、他の事業者との連携といった経営体制に関すること

④ 浄水場、管路等の主な施設の状況(給水能力、経年化、耐震化の状況を含む。)、更新を要する主な設備の状況といった施設等の状況に関すること

⑤ 一定の水準で施設更新を行った場合の更新投資額、各年度の収益的支出(人件費、運営費、減価償却費などの内訳を含む。)、給水原価、経費をすべて料金で賄う場合の供給単価といった経営指標に関すること

(2) 広域化のパターンごとの将来見通しのシミュレーションと広域化の効果

地域の実情を踏まえながら、考えられる広域化のパターンごとに、(1)の①~⑤の項目について将来見通しのシミュレーションを行い、広域化の効果を明らかにすること。④の施設等の状況に関すること及び⑤の経営指標に関することについては、広域化を行うことにより可能となる中長期の施設・設備や更新投資総額の削減の状況、給水原価上昇の抑制幅、求められる料金引上げの抑制幅等について、分かりやすく示すこと。

(3) 今後の広域化に係る推進方針等

(1)の課題及び(2)の広域化効果の分析に基づき、今後の広域化の推進方針並びに今後進める広域化の当面の具体的取組の内容(想定される広域化の圏域とその方策)及びそのスケジュールについて記載すること。

なお、スケジュールについては、地域の特性や個別の状況を踏まえて、合理的な期間とすること。

3.水道広域化推進プランの策定に当たっての留意事項

(1) 水道広域化推進プラン策定のためのマニュアルについて

水道広域化推進プランの策定のために参考となるマニュアルを平成30年度中に別途発出する予定にしているので、策定に当たり参照されたいこと。

(2) 都道府県の区域を超えた広域化の取組について

水道広域化推進プランは、都道府県が当該区域内の市町村等の経営する水道事業の広域化について策定することが基本であるが、地域によっては、都道府県の区域を超える市町村等の間での広域化が効果的な場合もあることから、具体的な取組を進める場合には、関係市町村等の意見も踏まえ、必要に応じて都道府県間で調整を図り、いずれかの都道府県の水道広域化推進プランに記載すること。

(3) 水道基盤強化計画との関係

水道基盤強化計画は、水道事業の広域化をはじめ、水道の基盤強化を図る上での各種取組の具体的な実施計画であること。その記載事項等については、今後、厚生労働省において策定する基本方針を踏まえ、水道基盤強化計画の策定のために参考となる手引きを示す予定であること。

水道広域化推進プランは、水道基盤強化計画の策定に先立って、広域化の推進方針やこれに基づく当面の具体的取組の内容等を記載するものであり、最終的には水道基盤強化計画に引き継がれることを想定しているものであること。

なお、水道基盤強化計画及び水道広域化推進プランの策定の事務が円滑に進むよう、今後、水道基盤強化計画の記載事項等について通知等を発出する際には、水道広域化推進プランの記載事項との関係等について示すこととしていること。

(4) 都道府県水道ビジョン等との関係

水道事業の広域化も含め、都道府県における水道事業が目指すべき方向等を定めた基本的なビジョンである都道府県水道ビジョンの策定を各都道府県に要請しているところであるが、水道広域化推進プランの策定に当たっては、都道府県水道ビジョンの広域化に関する記載内容を活用しつつ、2.に示した記載事項に沿ってその内容を充実させることにより策定することも可能であること。なお、都道府県水道ビジョンを未策定の都道府県においては、水道広域化推進プランを策定した後、「都道府県水道ビジョン作成の手引き」(平成26年3月19日付け健水発0319第3号厚生労働省健康局水道課長通知別添)の広域化に関する記載事項を参考としつつ広域化以外の記載事項も検討し、都道府県水道ビジョンへ移行することも検討されたいこと。

また、「公営企業の経営に当たっての留意事項について」(平成26年8月29日付け総財公第107号、総財営第73号、総財準第83号総務省自治財政局公営企業課長、同公営企業経営室長、同準公営企業室長通知)において、経営戦略の策定を各公営企業に要請しているところであるが、水道広域化推進プランの策定に当たっては、区域内の水道事業者が策定した経営戦略の記載内容を活用することも検討されたいこと。

(5) 水道広域化推進プランに基づく取組の推進

改正水道法第2条の2第2項において、都道府県は、その区域内における市町村の区域を超えた広域的な水道事業者間の連携等の推進その他の水道の基盤の強化に関する施策を策定するとともに、これを実施するよう努めなければならないとされており、水道広域化推進プランに基づく取組を推進する役割を担うものであること。

また、水道事業者についても、改正水道法第2条の2第4項において、その経営する事業を適正かつ能率的に運営するとともに、その事業の基盤の強化に努めなければならないとされていることから、水道事業者である市町村等は、水道の基盤強化を図る観点から、都道府県とともに、水道広域化推進プランを踏まえ、水道事業の広域化に取り組むことが重要であること。

4.地方財政措置等

水道広域化推進プランの策定に要する経費については、「生活基盤施設耐震化等交付金」の対象とするとともに、地方負担額について、平成31年度から平成34年度までの間、標準的な財政需要に基づき普通交付税措置を講じることとしていること。

また、水道広域化推進プランに基づき実施する広域化のための施設やシステムの整備に要する経費については、地方財政措置を講ずることとしていること。

なお、詳細については別途通知予定であること。