○医薬部外品・化粧品の安全性評価における眼刺激性試験代替法としてのウサギ角膜由来株化細胞を用いた短時間暴露法(STE法)に関するガイダンスについて
(平成30年12月18日)
(薬生薬審発1218第1号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)
(公印省略)
今般、「医薬品等の安全性評価に関するin vitro試験(代替法)の開発、国際標準化及び普及促進に関する研究」(平成30年度日本医療研究開発機構研究費(医薬品等規制調和・評価研究事業、代表研究者 小島肇))において、医薬部外品・化粧品の安全性評価に眼刺激性試験代替法としてのSTE法を利用するにあたっての留意点等を取りまとめたガイダンスを別添のとおり作成されたので、貴管下関係業者に対して周知願います。
[別添]
医薬部外品・化粧品の安全性評価における眼刺激性試験代替法としてのウサギ角膜由来株化細胞を用いた短時間曝露法(STE法)に関するガイダンス
眼刺激性は、被験物質が眼に直接接触したことにより生じる結膜の発赤・浮腫・分泌物、虹彩の変化や角膜の混濁等を指標とする反応である。眼刺激性試験はヒトが被験物質を粘膜に適用した場合に生じる傷害性、又は誤って眼に入った場合に生じる結膜、虹彩及び角膜に対する傷害性を予測するために実施される。
医薬部外品の製造販売承認申請及び化粧品基準改正要請では、従来、ウサギを用いた急性眼刺激性/腐食性(Acute Eye Irritation/Corrosion)を評価するDraize法1)(OECDテストガイドライン405:OECD TG405として1981年に採択され、その後改定されている2))が用いられてきた。
一方、眼刺激性試験に関するin vitro試験法である「短時間曝露法(Short Time Exposure Test Method:STE法)」は日本動物実験代替法学会(The Japanese Society for Alternatives to Animal Experiments:JSAAE)及び日本動物実験代替法評価センター(The Japanese Center for the Validation of Alternative Methods:JaCVAM)によるバリデーションを経て3,4)、米国動物実験代替法検証省庁間連絡委員会/NTP代替試験法省庁間センター(The Interagency Coordinating Committee on the Validation of Alternative Methods:ICCVAM/The National Toxicology Program Interagency Center for the Evaluation of Alternative Toxicological Methods:NICEATM, ICCVAM/NICEATM)による第三者評価を受け、その報告書(Summary Review Document:SRD)が2013年に公表された5)。
経済協力開発機構(The Organisation for Economic Co-operation and Development:OECD)は、国連(The United Nations:UN)による化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:GHS)区分6)で強度の眼刺激性(区分1)を有する化学物質あるいは混合物をトップダウン方式で、また無刺激性(区分外)の化学物質又は混合物をボトムアップ方式で評価する試験法としてSTE法を2015年に採択し(OECD TG491)、その後改定した7)。トップダウン方式は重篤な眼傷害性を引き起こすと疑われる被験物質に対して用いられる段階的方法で、重篤な眼の損傷を起こす物質を、それ以外の物質から正確に識別できる試験法で判別することから開始する。また、ボトムアップ方式は眼刺激性又は重篤な眼傷害性を有する区分に当たらないと予測される被験物質に対して用いられる段階的方法で、眼刺激性又は重篤な眼傷害性ではない物質を、それ以外の物質から正確に識別できる試験法で判別することから開始する8)。
本ガイダンスは、OECD TG491(STE法)について、医薬部外品・化粧品の安全性評価に利用するに当たって、必要な留意点等を取りまとめたものである。
1.試験法の概要
1―1.原理
眼刺激性は、被験物質が眼に直接接触したことにより生じる結膜の発赤・浮腫・分泌物、虹彩の変化や角膜の混濁等を指標とする反応である。角膜は偶発的な事故等により刺激物に曝露される眼表面組織の広範囲を占めており、その損傷は視力障害を引き起こす可能性がある。したがって、従来の眼刺激性評価法であるウサギを用いた眼刺激性試験(Draize法)では、角膜に対する影響を中心に評価している。
眼に異物が入った場合、眼の刺激性は最表面の細胞傷害から始まる。STE法は、これに注目して、角膜上皮細胞に対する細胞毒性を指標として眼刺激性を評価する試験法である。コンフルエントに単層培養したウサギ角膜由来株化細胞に被験物質を5分間曝露した後、3-(4,5-Dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide(MTT)の取り込み量で測定した細胞生存率に基づいて被験物質の眼刺激性を予測する。これは、MTTが脱水素酵素の基質となる性質を利用し、細胞内に取り込まれたMTTが還元され、生成されたホルマザン量が生存細胞数に比例することを利用している(MTT還元法)。
被験物質の曝露時間について、眼に異物が入った場合、ヒトではその大部分が1~2分間で眼内から排出され、ウサギでは3~4分間で約80%が排出されると報告されている9)。このような実際の曝露状況を考慮して、STE法は通常の細胞毒性試験と比べて短時間曝露の試験として設計されており、通常の細胞毒性試験で用いられないミネラルオイルを溶媒として選択することが可能なため、非水溶性の物質も適用できる試験法である。
1―2.試験手順及び判定
1―2―1.試験手順
詳細な内容を確認する場合には、OECD TG491を参照する7)。
細胞の準備
ウサギ角膜由来株化細胞であるStatens Seruminstitut Rabbit Cornea(SIRC)細胞を用いる。SIRC細胞は10%(v/v)ウシ胎児血清、2mmol/L L―グルタミン、50~100unit/mLペニシリン、50~100μg/mLストレプトマイシンを添加したイーグル最小必須培地にて37℃、5%CO2存在下で培養する。コンフルエントになるまで培養した細胞をトリプシンEDTA溶液により剥がし、継代用培養フラスコに播種する。試験には継代数25回までの細胞を使用する。
試験に用いる際は、試験実施時にコンフルエント(>80%)になるように、細胞数を前培養期間が4日間ならばウェルあたり6.0×103cells、5日間ならばウェルあたり3.0×103cellsに調製し96ウェル平板プレートに200μLずつ播種する。なお、1被験物質の判定に際して、独立した試験を3回繰り返し、各試験において1プレートを使用するため、合計3プレートを準備する。
被験物質の溶媒選択・対照物質の準備
図1に従って適切な溶媒を、生理食塩水、5%(w/w)DMSOを含む生理食塩水、ミネラルオイル(CAS番号 8042―47―5)の中から選択する。
はじめに生理食塩水を溶媒として被験物質5%(w/w)を調製し、溶解性を確認する。溶解又は均一分散する場合は、生理食塩水を被験物質の溶媒とする。生理食塩水に溶解又は均一分散しない場合は、5%(w/w)DMSOを含む生理食塩水を溶媒として被験物質5%(w/w)を調製し、溶解性を確認する。溶解又は均一分散する場合は、5%(w/w)DMSOを含む生理食塩水を被験物質の溶媒とする。5%(w/w)DMSOを含む生理食塩水に溶解又は均一分散しない場合は、ミネラルオイルを溶媒として被験物質5%(w/w)を調製し、溶解性を確認する。溶解又は均一分散する場合は、ミネラルオイルを被験物質の溶媒とする。ミネラルオイルに溶解又は均一分散しない場合は試験を実施しない。STE法での均一分散は目視等によって確認し、被験物質が溶液中で均一に分散し、この状態が曝露時間を考慮した5分間以上保たれていることとする。なお、被験物質の調製に際してはボルテックスミキサーによる攪拌、超音波破砕又は37℃に温めて溶解性を高めることも推奨される。
図1.被験物質の溶媒選択方法
試験には被験物質の5%(w/w)及び0.05%(v/v)(溶液又は均一分散液)を供する。被験物質0.05%(v/v)の調製には被験物質5%(w/w)を用い、10倍希釈して0.5%(v/v)を調製、さらに10倍希釈して0.05%(v/v)を得る。陽性対照にはラウリル硫酸ナトリウム(Sodium Lauryl Sulfate:SLS)の0.01%(v/v)生理食塩水溶液を用いる。陽性対照の調製について、まず1%(w/w)以上の溶液を調製し、0.01%(v/v)に希釈して用いることが望ましい。これに加えて、溶媒対照、操作対照(培地対照)及びブランク(細胞なし培地のみ、又は細胞なしリン酸緩衝液のみ)も設ける。これら対照及びブランクは各プレートに用意する。
ベンチマーク物質は、特定の化学物質又は製品クラスに属する未知の化学物質の眼刺激性、又は刺激反応が特定の範囲内にある眼刺激性物質を相対的に評価する上で有用である。
試験法の適用範囲
STE法の適用には試験法の性質上、また、正確性の観点から以下の制限が設けられる。
(1) 原料
・生理食塩水、5%(w/w)DMSOを含む生理食塩水若しくはミネラルオイルのいずれにも溶解しない、又はそれら溶媒中で均一分散している状態が5分間以上保たれない被験物質は適用できない。
・ボトムアップ方式においては、室温25℃における蒸気圧が6kPaを超える液体及び界面活性剤ではない固体は高い偽陰性率を示すことから、適用から除外される。
(2) 製剤
・生理食塩水、5%(w/w)DMSOを含む生理食塩水若しくはミネラルオイルのいずれにも溶解しない、又はそれら溶媒中で均一分散している状態が5分間以上保たれない被験物質は適用できない。
・製剤が固体の場合、界面活性剤のみから構成される製剤以外は適用から除外される。
・室温25℃における蒸気圧が6kPaを超える物質を含む製剤に適用する場合は眼刺激性が過小評価される可能性があるため、STE法を用いる妥当性を個別に検討すべきである。
被験物質の適用・細胞生存率の算出
SIRC細胞を前培養してコンフルエントとなった96ウェル平板プレートを以下(1)~(5)の手順で処理する。
(1) 各ウェルから培地を除去し、被験物質5%(w/w)、0.05%(v/v)及び対照物質をそれぞれ200μLずつ3ウェルに添加し5分間室温で曝露する。
(2) 曝露終了後、試験サンプルを除去し、リン酸緩衝液200μLで2回洗浄する。
(3) 0.5mg/mLのMTT溶液を200μL添加し、37℃、5%CO2存在下で2時間反応させる。
(4) 反応後MTT溶液を除去し、0.04mol/L塩酸を含むイソプロパノールを200μL添加し、1時間室温暗所でホルマザンを抽出する。
(5) 抽出後、その吸光度をプレートリーダーにより570nm(OD570)で測定し、3ウェルの平均値を用いて以下の式で被験物質の細胞生存率を算出する。
なお、被験物質処理群の細胞生存率がマイナスになった場合は、細胞生存率を0%とする。
1―2―2.判定
以上の手順で試験を3回実施し、それぞれで得られた細胞生存率の平均値を最終判定に用いる。ボトムアップ方式で被験物質を評価する際に5%(w/w)、0.05%(v/v)の両方での平均細胞生存率が70%を越えている場合、被験物質は『無刺激性』であると結論できる。トップダウン方式で被験物質を評価する際に5%(w/w)、0.05%(v/v)の両方での平均細胞生存率が70%以下となる場合、被験物質は『強度の眼刺激性』であると結論できる。
1―3.試験実施上の留意点
1―3―1.試験実施における注意事項
新たに試験を実施する試験施設では、STE法の熟達度確認物質(Appendix 1)等を活用し精度の向上に努める。
STE法は被験物質5%(w/w)、0.05%(v/v)を5分間曝露させ、ただちに洗浄操作を行うため、MTT直接還元能を持つ物質や有色の物質による干渉影響が起こりにくい。しかしMTT直接還元能を持つ物質や有色の物質が洗浄しきれず残るような場合は注意して評価すべきである。干渉影響の有無は例えば、細胞培養されたウェルと細胞を含まないウェルを用いてSTE法を実施した際の吸光度を比較することで確認できる。STE法による判定が無刺激性でないならば、干渉影響はないと結論できる。判定が無刺激性で、干渉影響があると考えられる場合は他の細胞生存率測定法を用いることで眼刺激性を判定することもできる。その際にMTT法を用いた場合と同様の結果、すなわち熟達度確認物質(Appendix 1)等を活用して同じ区分結果が得られ、かつ1―3―2.に示す試験成立条件を満たすことが必要である。
1―3―2.試験成立条件について
以下の4条件を満たした場合、試験の結果を判定に用いる。
(1) 操作対照の吸光度がブランク減算後、0.3以上である。
(2) 各プレートにおける溶媒対照の細胞生存率が操作対照の80%以上である。
(3) 陽性対照の細胞生存率が妥当な範囲に収まる。
(4) 3回の試験の細胞生存率の標準偏差(SD)が被験物質5%(w/w)、0.05%(v/v)のいずれも15%未満である。
(1)~(3)の条件のいずれかが満たされない場合には、新たに独立した1回の試験を実施する。(4)の条件については、SDが15%以上となった場合、その結果を使用せず、新たに独立した3回の試験結果を判定に用いる。
なお、(3)について、妥当な範囲とは、試験施設の背景データから求められる平均細胞生存率±2SDに収まる。上限・下限値は3ヶ月毎に更新すべきである。試験実績が1ヶ月に1回未満の施設においては上限・下限値の更新は試験実施の度に行う。過去のデータが不十分な施設においては、STE法開発施設が設定した上限・下限値(21.1%~62.3%)を用いてもよい。
1―3―3.ベンチマーク物質について
被験物質との比較に用いられるベンチマーク物質は以下の要件を満たすものである。
(i)供給源に一貫性及び信頼性がある、(ii)化学構造及び機能が被験物質に類似している、(iii)物理的及び化学的特性が既知である、(iv)既知の眼刺激作用に関するデータがある、(v)眼刺激性が望ましい範囲内にあること(ヒトが安全に使用できること等)を示す既知のデータがある。
2.ボトムアップ方式での本試験法の運用方法に関する留意点10)
2―1.原料が室温25℃における蒸気圧6kPa以下の液体及び固体の界面活性剤の場合
(1) 本試験法で原料5%(w/w)及び0.05%(v/v)を用いて試験し、平均細胞生存率がいずれも70%を超え、無刺激性と判定された場合は、原料は無刺激性であると結論できる。
(2) (1)で評価した結果、原料が無刺激性と判定されなかった場合でも、以下の手順で原料又は製剤の評価を行うことができる11)。
① 原料を製剤配合濃度以上の濃度で調製した溶液を被験物質とし、その5%(w/w)及び0.05%(v/v)で試験を行うことができる。判定が無刺激性であった場合は、試験に供した被験物質は無刺激性であると結論できる。
② ①で評価した結果、判定が無刺激性ではない場合は、製剤による評価を行うことができる。製剤を被験物質とし、その5%(w/w)及び0.05%(v/v)を用いて試験を行い、無刺激性と判定された場合は、その製剤は無刺激性であると結論できる。判定が無刺激性でない場合は、原料に関連したベンチマーク物質との相対評価を行うこともできる。
2―2.原料が界面活性剤ではない固体の場合
(1) 原料を製剤配合濃度以上の濃度で調製した溶液を被験物質とし、その5%(w/w)及び0.05%(v/v)を用いて試験を行うことができる。判定が無刺激性であった場合は、試験に供した被験物質は無刺激性であると結論できる。
(2) (1)で評価した結果、判定が無刺激性でない場合は、製剤による評価を行うことができる。製剤を被験物質とし、その5%(w/w)及び0.05%(v/v)を用いて試験を行い、無刺激性と判定された場合は、その製剤は無刺激性であると結論できる。判定が無刺激性でない場合は、原料に関連したベンチマーク物質との相対評価を行うこともできる。
2―3.原料が室温25℃における蒸気圧6kPaを超える液体の場合
(1) 本試験法は原料が室温25℃における蒸気圧6kPaを超える液体を無刺激性と判断することができないため、眼刺激性を検討する場合には他の試験法を選択する。
(2) 室温25℃における蒸気圧6kPaを超える液体を製剤で評価する場合は、眼刺激性が過小評価される可能性があるため、STE法を用いる妥当性を個別に検討すべきである。
2―4.2―1.及び2―2.の結果から無刺激性であると判断できない場合
本試験法の偽陽性率は約19%と報告されているため、2―1.及び2―2.の結果から無刺激性であると判断できない場合には、他の試験法による評価を実施し眼刺激性を検討することもできる7,12)。
3.引用文献
1) Draize et al., (1944) Methods for the study of irritation and toxicity of substances applied topically to the skin and mucous membranes. Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 82:377-390.
2) OECD (2017). Test Guideline 405. OECD Guideline for Testing of Chemicals. Acute eye irritation/corrosion.
https://www.oecd-ilibrary.org/environment/test-no-405-acute-eye-irritation-corrosion_9789264185333-en
3) Sakaguchi et al. (2011) Validation study of the Short Time Exposure (STE) test to assess the eye irritation potential of chemicals. Toxicol In Vitro 25(4):796-809.
4) Kojima et al. (2013) Second-phase validation study of the short time exposure test for assessment of eye irritation potency of chemicals. Toxicol In Vitro 27(6):1855-1869.
5) ICCVAM (2013) Short Time Exposure (STE) Test Method Summary Review Document.
http://ntp.niehs.nih.gov/iccvam/docs/ocutox_docs/ste/ste-srd-niceatm-rev-508.pdf
6) United Nations (UN)(2017). Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals (GHS), Seventh revised edition, UN New York and Geneva, 2017.
https://www.unece.org/fileadmin/DAM/trans/danger/publi/ghs/ghs_rev07/English/ST_SG_AC10_30_Rev7e.pdf
7) OECD (2018) Test Guideline 491. Short Time Exposure In Vitro Test Method for Identifying i) Chemicals Inducing Serious Eye Damage and ii) Chemicals Not Requiring Classification for Eye Irritation or Serious Eye Damage.
https://www.oecd-ilibrary.org/environment/test-no-491-short-time-exposure-in-vitro-test-method-for-identifying-i-chemicals-inducing-serious-eye-damage-and-ii-chemicals-not-requiring-classification-for-eye-irritation-or-serious-eye-damage_9789264242432-en
8) Scott L, et al. (2010). A proposed Eye Irritation Testing Strategy to Reduce and Replace in vivo Studies Using Bottom-Up and Top-Down Approaches. Toxicol In Vitro 24, 1-9.
9) Mikkelson et al. (1973) Altered bioavailability of drugs in the eye due to drug-protein interaction. J Pharm Sci. 62:1648-1653.
10) 眼刺激性分科会、医薬部外品の製造販売承認申請における安全性に関する資料のあり方検討会最終報告書―眼刺激性分科会報告―、平成21年度厚生労働科学研究動物実験代替法を用いた安全性評価体制の確立と国際協調に関する研究(平成22年4月)
11) Saito K, et al. (2015). Predictive performance of the Short Time Exposure test for identifying eye irritation potential of chemical mixtures. Toxicol In Vitro 29, 617-620.
12) 眼刺激性試験代替法の評価会議報告書、In vitro短時間曝露法(The Short Time Exposure In Vitro Test Method:STE法)、JaCVAM評価会議、平成27年(2015年)12月18日
Appendix 1
STE法の熟達度確認物質
物質名 |
CAS番号 |
化学的分類1 |
性状 |
STEでの使用溶媒 |
in vivoでのGHS区分2 |
STEでのGHS区分3 |
塩化ベンザルコニウム(10%水溶液) Benzalkonium chloride(10% aqueous) |
8001―54―5 |
オニウム化合物 |
液体 |
生理食塩水 |
区分1 |
区分1 |
トリトンX―100(100%) Triton X-100(100%) |
9002―93―1 |
エーテル類 |
液体 |
生理食塩水 |
区分1 |
区分1 |
赤色104―1号 Acid Red 92 |
18472―87―2 |
ヘテロサイクリック化合物; 臭化化合物; 塩素化合物 |
固体 |
生理食塩水 |
区分1 |
区分1 |
水酸化ナトリウム Sodium hydroxide |
1310―73―2 |
アルカリ; 無機化合物 |
固体 |
生理食塩水 |
区分1 |
区分1 |
ブチロラクトン Butyrolactone |
96―48―0 |
ラクトン類; ヘテロサイクリック化合物 |
液体 |
生理食塩水 |
区分2A4 |
区分不可5 |
1―オクタノール 1-Octanol |
111―87―5 |
アルコール類 |
液体 |
ミネラルオイル |
区分2A/B4 |
区分不可5 |
シクロペンタノール Cyclopentanol |
96―48―0 |
アルコール類; 炭化水素(環状) |
液体 |
生理食塩水 |
区分2A/B4 |
区分不可5 |
2―酢酸エトキシエチル 2-Ethoxyethyl acetate |
111―15―9 |
アルコール類; エーテル類 |
液体 |
生理食塩水 |
区分外 |
区分外 |
ドデカン Dodecane |
112―40―3 |
炭化水素(非環状) |
液体 |
ミネラルオイル |
区分外 |
区分外 |
メチルイソブチルケトン Methyl isobutyl ketone |
108―10―1 |
ケトン類 |
液体 |
ミネラルオイル |
区分外 |
区分外 |
N,N―ジメチルグアニジン硫酸塩 N,N-Dimethylguanidine sulfate |
598―65―2 |
アミジン類; 硫黄化合物 |
固体 |
生理食塩水 |
区分外 |
区分外 |
略号等:
CAS番号:Chemical Abstracts Service Registry Number (CASRN)
1 National Library of Medicine's Medical Subject Headings(MeSH)分類(http//www.nlm.nih.gov/mesh)に基づき、標準的な分類スキームを用いてそれぞれの被験物質に化学的分類を割り当てた。
2 Draize法(OECD TG405)の結果に基づき、UN GHSに従って表示。
3 STE法による判定の結果に基づき、UN GHSに従って表示。
4 2A又は2Bの区分については、GHS基準の解釈による。in vivo試験では3匹の動物を用いる。区分2Aの区分には試験動物3匹中少なくとも2匹で以下の陽性反応が得られる。試験物質投与後24、48及び72時間における評価の平均スコア計算値が:(a)角膜混濁画像3 (18KB)
1;かつ/または(b)虹彩画像4 (18KB)
1;かつ/または(c)結膜発赤画像5 (18KB)
2;かつ/または(d)結膜浮腫画像6 (18KB)
2;かつ通常21日間の観察期間内で完全に回復する。区分2Bの区分には区分2Aにおいて、上述の作用が7日間の観察期間内に完全に回復する場合には、眼刺激性は軽度の眼刺激(区分2B)であるとみなされる。
5 STE法による判定の結果に基づいたUN GHSによる区分で区分1や区分外に該当しない場合、区分不可とした。