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○医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二十三条の二の二十三第一項の規定により厚生労働大臣が基準を定めて指定する医療機器の一部改正について

(平成30年7月10日)

(薬生発0710第1号)

(各都道府県知事あて厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)

(公印省略)

登録認証機関の認証を要する医療機器については、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二十三条の二の二十三第一項の規定により厚生労働大臣が基準を定めて指定する医療機器」(平成17年厚生労働省告示第112号。以下「告示」という。)により示しているところです。

今般、平成30年7月10日付け厚生労働省告示第267号により、告示別表第三番号二十に規定する移動型超音波画像診断装置、汎用超音波画像診断装置、産婦人科用超音波画像診断装置、乳房用超音波画像診断装置、循環器用超音波画像診断装置及び膀胱用超音波画像診断装置(以下「超音波画像診断装置等」という。)の基準の改正を行い、使用目的又は効果として超音波を用いて肝臓、脾臓、膵臓、乳腺、甲状腺又は前立腺(以下「臓器等」という。)の硬さに関する情報を提供する場合の基準を別添のとおり定めましたので、下記に御留意の上、貴管内関係団体、関係事業者等への周知方お願いします。

なお、本通知の写しを独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長、一般社団法人日本医療機器産業連合会会長、一般社団法人米国医療機器・IVD工業会会長、欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会委員長及び医薬品医療機器等法登録認証機関協議会代表幹事宛て送付することとしていることを申し添えます。

1.本通知は、告示別表第三番号二十に規定する超音波画像診断装置等の基準における、使用目的又は効果として超音波を用いて臓器等の硬さに関する情報を提供する場合の基準を別添のとおり定めるものであること。

2.本基準の取扱いについて

告示別表第三番号二十に規定する使用目的又は効果については、告示下欄の1又は1及び2のいずれかとすること。なお、1のみを使用目的又は効果とする場合にあっては、別添に示す基準に適合する必要はないこと。

3.既存品の取扱いについて

新たに使用目的又は効果として超音波を用いて臓器等の硬さに関する情報を提供しようとする医療機器については、一部変更承認又は認証申請を行い、本通知の別添に示す基準に適合する必要があること。

4.適用期日

本基準は、本通知の発出日から適用する。

別添

超音波を用いて臓器等の硬さに関する情報を提供する場合の基準

(1) 適用範囲

告示別表第3の20に規定する「移動型超音波画像診断装置」、「汎用超音波画像診断装置」、「産婦人科用超音波画像診断装置」、「乳房用超音波画像診断装置」、「循環器用超音波画像診断装置」及び「膀胱用超音波画像診断装置」であって、超音波を用いて肝臓、脾臓、膵臓、乳腺、甲状腺又は前立腺(以下「臓器等」という。)の硬さに関する情報を提供する場合に適用する。

(2) 既存品目との同等性を評価すべき主要評価項目とその基準

外部からの力学的な作用に対する臓器等の応答を、超音波パルス反射法を用いて測定し、臓器等の硬さを評価する超音波エラストグラフィ(以下「超音波エラストグラフィ」という。)について、以下に示す内容を踏まえ、既存品との同等性評価を行うこと。なお、超音波エラストグラフィ以外の評価にあっては、告示別表第3の20に従って行うものとする。

① 測定原理

超音波エラストグラフィの測定原理が以下の範囲に含まれること。

(ア) ストレインエラストグラフィ法

用手的圧迫もしくは生体の拍動による応力で生じた臓器等内部のひずみを測定し、臓器等の硬さを評価する手法。

(イ) シアウェーブエラストグラフィ法

臓器等内部に生じたせん断波の伝搬速度を測定し、臓器等の硬さを評価する手法。せん断波の生成には、音響放射圧を用いる。

(ウ) トランジェントエラストグラフィ法

臓器等内部に生じたせん断波の伝搬速度を測定し、臓器等の硬さを評価する手法。せん断波の生成には、機械的振動を用いる。

② 計測範囲

使用目的に沿って評価対象とする臓器等を明確化し、計測範囲を特定すること。評価可能な硬さの範囲が、同じ測定原理を有する既存品目と実質的に同等であることを評価する。

③ 計測性能

次に掲げる試験条件により、異なる2つの計測点で得られるひずみの比率(以下「ひずみ比」という。)又はせん断波の伝搬速度(m/s)、弾性率(kPa)を、②で特定した計測範囲の上限及び下限を含む異なる硬さの3点以上で測定し、得られた結果が、測定した人体臓器を模擬した材料(以下「媒質」という。)の硬さに応じて正しく単調増加又は単調減少することを評価する。試験を行う場合は、製造販売業者が意図する使用環境下で実施する。

せん断波の伝搬速度と弾性率との間には次の関係がある。

E=3ρV2

E:弾性率(kPa),ρ:密度(g/cm3),V:伝搬速度(m/s)

【試験条件】

○ 試験用ファントム

計測範囲の上限、下限を包含した3種類以上の硬さを含む、弾性率が既知の媒質からなる試験用ファントムを準備する。試験用ファントムは、硬さの異なる複数の個体であっても、硬さの異なる複数の媒質からなる単一の個体であってもよい。

ストレインエラストグラフィ法を用いる場合、1つの硬さの計測に対して、計測対象の媒質(以下「試験媒質」という。)に加えて、基準となる硬さの媒質(以下「基準媒質」という。)が必要となる。この場合、試験用ファントムは、単一の個体中に3種類以上の媒質を含むものでもよい。

試験用ファントムの構成は測定原理、撮像領域の広さ及び測定領域指定機能の有無による。

使用する試験用ファントムの各媒質の特性範囲は、次による。

・疎密波音速 1500~1600(m/s)

・疎密波減衰係数 0.3~0.7(dB/cm/MHz)

○ 試験方法

(ア) ストレインエラストグラフィ法を用いる場合

超音波診断装置及び併用を意図する超音波診断用プローブを用いて、エラストグラフィ法を用いて計測処理がなされる領域(以下「撮像領域」という。)の中に、基準媒質と試験媒質を配置する(図1)。撮像領域の中にあって、指定することによって計測値が表示される箇所(以下「測定領域」という。)として、基準媒質内に測定領域1(硬さの基準の測定箇所)を、試験媒質内に測定領域2(計測対象の測定箇所)をそれぞれ設定する。その他の装置条件は実際の臨床使用の環境を想定した条件とする。

試験媒質の硬さを変え(3種類以上)、基準媒質に生じたひずみと試験媒質に生じたひずみの比(ひずみ比)を測定領域1及び測定領域2の計測値から求め、5回以上測定し、ひずみ比の平均値を算出する。全ての試験媒質に対して同様にひずみ比の平均値を算出する。

図1 ひずみ比計測の模式図(例)

(イ) シアウェーブエラストグラフィ法を用いる場合

超音波診断装置及び併用を意図する超音波診断用プローブを用いて、装置の撮像領域中に、試験媒質を図2のように設定する。せん断波を励起させるにあたって単一の超音波(プッシュパルス)を照射する場合は、中心周波数(MHz)及び時間幅(μsec)を測定又は特定し、試験条件として定めた範囲内であることを確認する。但し、複数のプッシュパルスを連続的に照射することにより、励起させるせん断波の特性を制御する場合は、プッシュパルスの中心周波数(MHz)、時間幅(μsec)に加えて、時間間隔(μsec)を測定又は特定し、試験条件として定めた範囲内であることを確認する。図3にプッシュパルスの波形と時間幅、時間間隔の例を示す。その他の装置条件は実際の臨床使用の環境を想定した条件とする。

測定領域を指定する機能がある場合は、撮像領域内であって、試験媒質の任意の位置に撮測定領域を図4のように設定する。この場合、測定領域から除くことで、撮像領域内に他の試験媒質があってもよい。測定領域を指定する機能が無い場合は、撮像領域内に他の試験媒質が入らないようにする。

試験媒質の硬さを変え(3種類以上)、試験媒質におけるせん断波の伝搬速度又は弾性率を、それぞれ5回以上計測したときのせん断波の伝搬速度又は弾性率の平均値を算出する。全ての試験媒質に対して同様にせん断波の伝搬速度又は弾性率の平均値を算出する。

図2 伝搬速度、弾性率計測の模式図(例)

(a) 単一のプッシュパルスを照射する場合

(b) 複数のプッシュパルスを照射する場合

図3 プッシュパルス波形と時間幅、時間間隔(例)

図4 伝搬速度、弾性率計測の模式図(例)

(測定領域を指定する機能がある場合)

(ウ) トランジェントエラストグラフィ法を用いる場合

超音波診断装置及び併用を意図する超音波診断用プローブを用いて、装置の撮像領域中に、試験媒質を図5のように設定する。撮像範囲(撮像ライン)内に試験媒質以外が入ってはならない。プローブに含まれる振動器を動作させて試験媒質に振動波を生じさせ、発生した振動波の中心周波数(Hz)および振動波の振幅(mm)を測定し、試験条件として定めた範囲内であることを確認する。その他の装置条件は実際の臨床使用の環境を想定した条件とする。

試験媒質の硬さを変え(3種類以上)、計測対象におけるせん断波の伝搬速度又は弾性率を、それぞれ5回以上測定したときのせん断波の伝搬速度又は弾性率の平均値を算出する。全ての試験媒質に対して同様にせん断波の伝搬速度又は弾性率の平均値を算出する。

図5 伝搬速度、弾性率計測の模式図(例)

(トランジェントエラストグラフィ法の場合)

④ 硬さに関する情報の表示

硬さに関する情報の表示が、以下の範囲に含まれることを評価する。

(ア) ストレインエラストグラフィ法を用いる場合

臓器等の硬さに関する情報の表示は、ひずみの値又はひずみの分布画像(カラーマッピング等)であること。

(イ) シアウェーブエラストグラフィ法を用いる場合

臓器等の硬さに関する情報の表示は、せん断波の伝搬速度(m/s)又は伝搬速度の分布画像であること。なお、弾性率(kPa)に変換して表示する場合、表示値が実際の臓器等の硬さと必ずしも一致しないことを添付文書等により情報提供を行うこと。

(ウ) トランジェントエラストグラフィ法を用いる場合

臓器等の硬さに関する情報の表示は、せん断波の伝搬速度(m/s)又は伝搬速度の分布画像であること。なお、弾性率(kPa)に変換して表示する場合、表示値が実際の臓器等の硬さと必ずしも一致しないことを添付文書等により情報提供を行うこと。

⑤ 音響放射圧に対する安全性

音響放射圧を用いてせん断波を生成する場合、撮像領域内外にかかわらず、生体組織、胎児への影響についてリスクマネジメントを実施し、添付文書等で胎児への照射を避けるよう注意を促すとともに、リスク低減に必要な情報提供を行うこと。