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別添2

歯科材料の物理的・化学的評価の基本的考え方

1.目的

本文書は、歯科用医療機器に必要な物理的・化学的評価項目及び試験方法を示し、平成17年厚生労働省告示第122号「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第41条第3項の規定により厚生労働大臣が定める医療機器の基準」(以下「基本要件基準」という。)に対する歯科用医療機器の適合性の評価に関する基本的考え方を示すものである。

2.適用範囲

本文書は、昭和35年法律第145号「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下「医薬品医療機器法」という。)第2条第4項で定められた医療機器のうち、歯科で用いる材料(以下「歯科材料」という。)に適用する。

備考 表3に記載する歯科材料については、評価項目及び評価方法を定めていない。これらの歯科材料については、使用目的、使用方法等を個別に検討し、必要な評価項目及び適切な評価方法を選定し、評価する。

3.定義

本文書で用いる用語の定義は、次による。

3.1 歯科材料

有資格者が歯科診療及びその関連処置、又はそのどちらかに用いるために、特別に調製・提供された物質若しくは物質の組合せをいう。

なお、アタッチメント、根管用ポスト、歯科矯正用器材、ダイヤモンドバー、技工用スチールバー等の有資格者が用いる成形品、義歯床安定用材、歯科用潤滑材等の一般人が用いる材料を含む。

3.2 原材料

歯科用医療機器の原材料、又は歯科用医療機器の製造工程(試験検査工程、滅菌工程を含む)中で用いられる原材料をいい、合成又は天然高分子化合物、金属、合金、セラミックス、その他の化学物質等をいう。

3.3 最終製品

その製品が使用される状態にある歯科材料をいう。ただし、滅菌品又は用時加工・調製される製品については、滅菌後のもの又は加工・調製後のものをいう。

備考 多くの歯科材料は、練和直後の状態で使用されるため、最終製品には練和直後及び硬化後の両方の状態のものが含まれる。

3.4 製品

用時加工・調製されて最終製品となる歯科材料で、加工・調製前の製品(例:歯科用セメントの粉と液)をいう。

3.5 医薬品含有材料

医薬品としての効能又は効果を有する成分を含む材料をいう。

ただし、次のいずれかに該当する材料を除く。

1) 最終製品でリスクを評価するとき、薬理作用又は生体への作用のない材料。

2) フッ素イオンを徐放する成分を含むが、フッ素イオンの溶出量について既存の管理医療機器に属する材料(例えば、歯科合着用グラスポリアルケノエートセメント)と同一性があり、フッ素イオンによる効能又は効果を標榜しない材料。

3.6 吸収性材料

生体内で全体的に又は主に吸収されるように意図された材料をいう。

3.7 生物由来材料

動物又はヒトの細胞/組織/由来物を含む材料をいう。

3.8 キット製品

2つ以上の異なる一般的名称をもつ医療機器を組み合わせたものをいう。

3.9 関連材料及び関連器材

主たる医療機器とともに用いる関連する材料・器材をいう。

3.10 セット製品

主要構成品及び専用の関連構成品からなるもので、関連構成品についても、主要構成品の一般的名称を適用するものをいう。

4.物理的・化学的評価の原則

1) 歯科材料の物理的・化学的評価は、「JIS T 14971 医療機器―リスクマネジメントの医療機器への適用」に示されたリスク分析手法により実施されなければならない。歯科材料の物理的・化学的評価は、意図する使用/意図する目的の効用に関する物理的・化学的特性、臨床使用における物理的・化学的性能、力学的安全性に関する特性、及び生物学的安全性に影響する物理的・化学的特性等を明確にするために実施されなければならない。

2) 物理的・化学的評価は、本文書によって実施された試験結果、関連の最新の科学文献等を踏まえて、リスク・ベネフィットを考慮して、総合的に行う必要がある。

3) 物理的・化学的評価は、教育・訓練が十分になされ、経験豊富な専門家によって行われなければならない。

4) 以下の項目のうちのいずれかに該当する場合には、物理的・化学的評価を改めて行う必要があるが、試験の再実施、試験項目の追加の必要性については、十分に検討する。

ア) 原材料の供給元又は規格が変更された場合

イ) 原材料の種類又は配合量、製造工程、最終製品及び/又は製品の滅菌方法又は一次包装(滅菌包装)形態が変更された場合

ウ) 用時加工・調製方法が変更された場合

エ) 保存中、最終製品及び/又は製品に変化があった場合

オ) 最終製品及び/又は製品の使用目的に変更があった場合

カ) 不具合を起こすかも知れない知見が得られた場合

5.評価項目及び試験方法の選定

5.1 一般的原則

1) 一部の歯科材料については、必要な特性・機能に関する物理的・化学的評価項目及び試験方法が、JISで規定されている。したがって、JISに規定されている歯科材料の評価項目及び試験方法は、原則として該当するJISの品質項目による。ただし、基本要件基準への適合を示すために、当該JISで規定されていない評価項目が必要な場合もある。

なお、JISには、品質項目に規定されていない特性に関する表示・記載に係わる項目もあり、それらも含める。

また、別途定められた基準がある場合には、その規定された評価項目も含める。

備考 昭和60年3月30日付け薬審第294号厚生省薬務局審査課長通知「歯科鋳造用ニッケルクロム合金(冠用)の製造(輸入)の承認申請について」で「歯科鋳造用ニッケルクロム合金基準(冠用)」が定められている。

2) JISに規定されていない歯科材料の評価項目及び試験方法は、用途、機能、組成等が同等である歯科材料(以下「同等品」という。)のJIS若しくはISO規格、又は既承認品の適切な「規格及び試験方法」、「品目仕様」若しくは「性能及び安全性に関する規格」を参考にする。

なお、JISの品質項目又はISO規格の要求事項に規定されていない特性に関する表示・記載に係わる項目に相当する事項については、材料に応じて考慮する必要がある。

3) 医薬品含有等の理由で高度管理医療機器のクラスⅢに分類される場合があるので、一般医療機器又は管理医療機器に該当するものであっても、高度管理医療機器に該当しない(3.5参照)ことを証明するために、この基本的考え方で指定された項目以外の評価を必要とする場合がある。

例えば、フッ素を含む化合物を原材料又は成分とする歯科材料は、口腔内でフッ素イオンを溶出することがあるので、医薬品含有量としてフッ素イオンの溶出量を評価する必要がある。

4) 医薬品医療機器法第23条の2の23第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準(以下「認証基準」という。)又は製造販売承認審査に用いる基準(以下「承認基準」という。)に適合しない歯科材料について、上記で定めた評価項目又は試験方法を変更する場合には、その科学的妥当性を示さなければならない。

なお、承認基準は、既に技術基準が確立している範囲を対象として定められるため、上記で定めた評価項目及び試験方法の一部を採用せず、また、新たな評価項目及び試験方法を採用することがある。

5) 歯科材料の物理的・化学的評価項目は、表1に示した評価項目からなる。

なお、特有の原理・特性を有する歯科材料又は表1の評価項目では特性を表すことが困難な歯科材料には、表1以外の評価項目を適用する場合がある。表1以外の評価項目及びその試験方法は、専門家によって科学的根拠に基づいて選定され、かつ、適正に実施されなければならない。

備考

1.評価項目は、歯科材料に適用されるJISの品質項目及びISO規格の要求事項を参考としたが、同等の品質項目又は要求事項をまとめて一つの評価項目とした。例えば、熱膨張率及び熱膨張係数は熱膨張とした。

2.歯科材料から溶出するフッ素イオンは、エナメル質及び象牙質の耐酸性を向上させるので医薬品成分として見なされる。このため、表1ではフッ素イオンの溶出量をフッ素溶出としたが、医薬品含有量の一形態として扱った。

3.滅菌医療機器について無菌試験、残留エチレンオキサイド試験などを行うことがあるが、これらの試験は、生物学的試験に属するため品質項目に含めなかった。

6) 医薬品含有材料については、医薬品を含有しない同等品の物理的・化学的評価に加えて、薬理作用又は生体への作用に係る他の評価を行い、その妥当性を示さなければならない。

なお、医薬品含有材料を表2に示した。

7) 吸収性材料及び生物由来材料は、非吸収性又は生物由来材料を含まない同等品の物理的・化学的評価を行えないことがあるので、基本要件基準への適合性を示すために必要な品質項目及び試験方法を定めて評価し、その妥当性を示さなければならない。

なお、吸収性材料及び生物由来材料を表2に示した。

8) 医療機器としての有効性に係る評価が確立されていない歯科材料の場合には、本ガイドラインにおいて物理的・化学的評価項目を定めることができないので、基本要件基準への適合性を示すために必要な品質項目及び試験方法を定めて評価し、その妥当性を示さなければならない。

なお、品質項目を定めることができない歯科材料を表3に示した。

9) 歯科材料のキット製品、セット製品、関連材料及び関連器材については、その構成品ごとにそれぞれの評価項目及び試験方法を適用する。

ただし、引用又は参照するJIS若しくはISO規格にシステムとしての評価項目が規定されている場合は、その評価項目及び試験方法を適用する。

なお、キット製品、セット製品、関連材料及び関連器材に属する品目を表4に示した。

備考

1.構成品によっては、該当する一般的名称がなく、評価項目が規定されていないことがある。

2.歯科用インプラントシステムについては、一部の構成品について評価項目を定めた。

10) 複数の使用目的を有する歯科材料については、各々の使用目的に応じた一般的名称の評価項目及び試験方法を適用する。

11) 別表1~3の「引用規格(JIS)番号」及び「引用規格名称(参照規格番号)」の欄は、以下のような記載とした。

ア) 一般医療機器(別表1)及び高度管理医療機器(別表3)は、参照するJIS又はISO規格がある場合は、参照規格として当該JIS又はISO規格の番号を括弧書きする。

イ) 管理医療機器(別表2)は、医薬品医療機器法第23条の2の23第1項の規定により厚生労働大臣が基準を定めて指定する管理医療機器に係る日本工業規格(以下「告示で引用するJIS」という)があり、当該JISがJIS T 0993―1及びJIS T 6001以外の場合は、引用規格として当該JISの番号及び名称を記載する。告示で引用するJISがJIS T 0993―1及びJIS T 6001で、参照するJIS又はISO規格がある場合は、参照規格として当該JIS又はISO規格の番号を括弧書きする。

5.2 一般医療機器の評価項目

1) 一般医療機器の物理的・化学的評価項目は、別表1(1―1~1―4)に示した評価項目からなる。

なお、選択適用する評価項目については、採否の妥当性を示さなければならない。

また、フッ素を含む化合物を原材料若しくは成分とする歯科材料の場合は、フッ素イオンの溶出量を評価し、一般医療機器に属することを示す必要がある。

2) 別表1の品目の記載は、平成27年11月25日付けで改正された平成16年7月20日付け薬食発第0720022号医薬食品局長通知「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第5項から第7項までの規定により厚生労働大臣が指定する高度管理医療機器、管理医療機器及び一般医療機器の一部を改正する件(告示)及び医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第8項の規定により厚生労働大臣が指定する特定保守管理医療機器(告示)の施行について」(以下「医療機器一般的名称通知」という。)の別添CD―ROMに記載された一般的名称を、用途等によって並び替えた順序とした。

5.3 管理医療機器の評価項目

1) 管理医療機器の物理的・化学的評価項目は、別表2(2―1~2―8)に示した評価項目からなる。

なお、選択適用する評価項目については、採否の妥当性を示さなければならない。

また、フッ素を含む化合物を原材料若しくは成分とする歯科材料の場合は、フッ素イオンの溶出量を評価し、管理医療機器に属することを示す必要がある。

2) 別表2の品目の記載は、「医療機器一般的名称通知」の別添CD―ROMに記載された一般的名称を、用途等によって並び替えた順序とした。

5.4 高度管理医療機器の評価項目

1) 高度管理医療機器の物理的・化学的評価項目は、別表3(3―1~3―3)に示した評価項目からなる。ただし、フッ素溶出は医薬品含有量として示した。

なお、選択適用する評価項目については、採否の妥当性を示さなければならない。

2) 医薬品含有材料は、別表3に示した評価項目及び表示項目に加えて、薬理作用又は生体への作用に係る他の評価を行う必要があり、その評価項目及び試験方法は、専門家によって科学的根拠に基づいて選定され、かつ、適正に実施されなければならない。

ただし、歯科材料から溶出するフッ素イオンが医薬品の成分として見なされる場合には、生体への作用に係る評価としてエナメル質及び象牙質の耐酸性を評価しなければならない。

3) 別表3に示した評価項目及び表示項目のみでは、基本要件基準への適合を示すことができない場合には、別の品質項目及び試験方法を定めて評価し、その妥当性を示さなければならない。

4) 吸収性材料及び生物由来材料は、非吸収性又は生物由来材料を含まない同等品の物理的・化学的評価のみでは歯科材料としての有効性を評価できないので、別表3に含めなかった。

5) 別表3の品目の記載は、「医療機器一般的名称通知」の別添CD―ROMに記載された一般的名称を、用途等によって並び替えた順序とした。

6.評価項目及び試験方法

6.1 評価項目

1) 別表1、別表2及び別表3に示す評価項目は、医療機器の機能・特性を評価するために必要な品質項目と機能・特性に関連する表示項目からなる。

2) 評価項目の記載順序は、「歯科材料の物理的・化学的評価項目」(表1)の分類の順序に従った。

3) 平成28年12月31日時点で有効なJIS及び平成28年12月31日時点で有効なISO規格を引用又は参照した。

備考 JIS及びISO規格は改正されることがあるので、最新版を調査して適用することが必要である。なお、別途、規格の運用を定めた通知があれば、それに従う。

4) 複数のJIS又はISO規格が該当する場合には、最新の規格を引用した。例えば、歯科用りん酸亜鉛セメントには、「JIS T 6609―1:2005 歯科用ウォータベースセメント―第1部:粉液型酸―塩基性セメント」を適用し、「JIS T 6602:1993 歯科用りん酸亜鉛セメント」は適用しなかった。

5) 当該品目に、告示で引用するJISがある場合、または参照するJISがある場合には、原則として当該JISの品質項目及び機能・特性に関する表示・記載に係る項目を評価項目とした。

6) 当該品目に適用できるJISがあるが、基本要件基準への適合性を示すために必要な品質項目が規定されていない場合には、JISの品質項目及び機能・特性に関する表示・記載に係る項目に加えて、基本要件基準への適合性を示すために必要な評価項目を追加した。この場合、当該JISを参照規格とし、「引用規格名称(参照規格番号)」欄にJIS番号を括弧書きで記載した。

備考 歯科鋳造用ニッケル・クロム合金では、「JIS T 6123 固定式歯科修復物用非貴金属材料」を参照するが、ニッケル溶出を適用する品質項目として追加した。

7) 当該品目に適用できるISO規格がある場合には、ISO規格の要求事項を品質項目とし、機能・特性に関する表示・記載に係る項目を評価項目とした。この場合、当該ISO規格を参照規格とし、「引用規格名称(参照規格番号)」欄にISO規格番号を括弧書きで記載した。

8) 当該品目の同等品又は類似品にJIS又はISO規格がある場合には、その品質項目を参考として評価項目とした。この場合、当該JIS又はISO規格を参照規格とし、「引用規格名称(参照規格番号)」欄にJIS又はISO規格番号を括弧書きで記載した。

9) 当該品目に適用又は参照するJIS及びISO規格がない品目については、既承認の適切な「規格及び試験方法」、「品目仕様」又は「性能及び安全性に関する規格」を参考として評価項目とした。

10) 複数の歯科材料を包括して規定するJIS又はISO規格の場合には、一般的名称毎に適用される品質項目を識別し、評価項目とした。

備考 例えば、歯科鋳造用銀合金の引張強さは、第2種では評価項目であるが、第1種では不要とした。

11) JIS又はISO規格の中で材質により品質項目又は要求事項が指定されている場合には、材質毎に適用する評価項目を記載した。

備考 歯列矯正用アタッチメントでは、金属系、高分子系及びセラミックス系に分けて評価項目を記載した。

12) 適用する品質項目には“○”印を、材料特性等により選択適用する品質項目には“●”印を付して区別した。品質項目ではない表示項目については、適用する表示項目には“△”印を、材料特性等により選択適用する表示項目には“▲”印を付して区別した。また、別表の脚注で選択適用する基準を示した。

なお、材料特性等により選択適用する評価項目については、その採否の妥当性を示さなければならない。

備考

1.例えば、歯科充填用コンポジットレジンの引用規格である「JIS T 6514:2015 歯科修復用コンポジットレジン」及びその対応国際規格である「ISO 4049:2009, Dentistry-Polymer-based restorative materials」においては、硬化に化学重合が関係するものには操作時間及び硬化時間の品質項目を適用するが、関係しないものには適用しないと規定している。

2.例えば、歯列矯正用ワイヤの変態点温度(オーステナイト終了温度)は、超弾性合金だけに適用し、ステンレス鋼には適用しない。

3.例えば、歯科鋳造用金銀パラジウム合金の引用規格である「JIS T 6106 歯科鋳造用金銀パラジウム合金」においては、密度を包装に表示する項目として規定している。

13) JIS又はISO規格で規定される“一般的性質”については、その内容に従って、該当する評価項目とした。例えば、「JIS T 6517 歯冠用硬質レジン」の一般的性質は“硬質レジンは、製造販売業者が指定する方法で用いたとき、歯冠に適した状態に形成できなければならない。”と規定されているので、使用性質(成形性)とした。

14) 材質又は用途に応じて評価項目が指定されている歯科材料については、該当する材質又は使用目的に応じた評価項目とした。

また、複数の一般的名称に該当する使用目的を有する歯科材料については、各々の使用目的に応じた一般的名称の評価項目を適用する。

なお、評価項目の適用についての妥当性を示さなければならない。

備考

1.例えば、“歯科インプラント用上部構造材”については、材質(金属系、セラミックス系及び高分子系)に応じて評価項目が指定されている。

2.例えば、“歯科用多目的グラスポリアルケノエートセメント”については、用途(接着用、合着用、裏層・裏装用、修復用、支台築造用及び小窩裂溝封鎖用)に応じて評価項目が指定されている。

15) 規格の要求事項のうち、同等の要求事項をまとめて一つの評価項目とした。例えば、熱膨張率及び線熱膨張係数は熱膨張とした。

また、二つの要求事項を含む品質項目について、要求事項ごとに二つの評価項目に分けて規定しているものがある。例えば、「JIS T 6522:2015 歯科用根管充填シーラ」及びその対応規格である「ISO 6876:2012, Dentistry-Root canal sealing materials」において規定している“溶解率及び崩壊性”を溶解と崩壊性に分けて規定した。

6.2 評価項目についての留意事項

1) 別表1、別表2又は別表3で指定される評価項目のみでは、基本要件基準への適合を示すことができない場合もあるので、当該歯科材料の使用目的等を十分考慮して評価項目を検討する必要がある。

2) 構成品を特定できないキット製品、関連材料及び関連器材については、別表1、別表2及び別表3から除外した。

3) 歯科材料のセット製品及びキット製品については、各構成品目が該当する一般的名称の評価項目を適用する。

4) 関連材料及び関連器材については、歯科材料に該当する各構成品が該当する一般的名称の評価項目を適用する。

備考 構成品によっては、該当する一般的名称がなく、評価項目が規定されていないことがある。

6.3 試験方法

1) 当該品目に引用又は参照するJIS若しくはISO規格に品質項目及び試験方法が規定されている場合は、規定されている試験方法を用いる。

2) 当該品目に引用又は参照するJIS若しくはISO規格に品質項目は規定されているが、その試験方法が規定されていない場合は、同等品のJIS又はISO規格の試験方法等を参考とし、試験方法を採用する科学的妥当性を示さなければならない。

3) 当該品目に引用又は参照するJIS若しくはISO規格がない場合には、同等品又は類似品のJIS又はISO規格の試験方法等又は既承認の適切な「規格及び試験方法」、「品目仕様」若しくは「性能及び安全性に関する規格」を参考とし、試験方法を採用する科学的妥当性を示さなければならない。

4) 表示項目は引用又は参照するJIS若しくはISO規格に試験方法が規定されていないので、同等品のJIS又はISO規格の試験方法等を参考とし、試験方法を採用する科学的妥当性を示さなければならない。

7.試験試料

1) 当該品目に適用できるJISがある場合には、原則として当該規格で規定されている試験試料を用いる。

2) 当該品目に適用できるISO規格がある場合には、原則として当該規格で規定されている試験試料を用いる。

3) 当該品目の同等品にJIS又はISO規格がある場合には、当該規格で規定されている試験試料を参考とすることができるが、その採用についての科学的妥当性を示さなければならない。

4) JIS又はISO規格に規定されていない試験試料を用いる場合には、次による。

ア) 歯科材料の物理的・化学的試験は、最終製品で行うことが原則であるが、歯科用アタッチメント等の成形品では最終製品で行えないこともある。試験試料としては、その他に最終製品から切り出した試験試料、製品及び原材料がある。どの試験試料を用いて試験するかについては最終製品の物理的・化学的評価ができるか、また、選択した試験方法に適合するかを検討し、その選択について科学的妥当性を示さなければならない。

イ) 製造過程、用時加工・調製において材料が物理的・化学的に変化する場合には、最終製品、最終製品から切り出した試料、あるいは、同じ条件で作成した模擬試験試料を用いて試験を行う必要がある。一方、製造過程、用時加工・調製において材料が物理的・化学的に変化しない場合には、製品、原材料を試験試料として試験を行うことで差し支えない。最終製品の状態で試験試料とするのが困難な場合(アタッチメント等のような小さな成形品)には、最終製品と物理的・化学的特性が同等であることの科学的妥当性を説明できる材料を試験試料とすることができる。

ウ) 試験試料の作製方法は、製造販売業者の指定する方法又は同等な方法による。

エ) ひ素溶出の試験は、最終製品の代わりに原材料又は製品を用いてもよいが、製造過程などを考慮して最終製品としての評価が必要である。

8.評価項目及び試験方法の概要

歯科材料の物理的・化学的評価項目について、適用範囲及び試験方法の概要を附属書に記載した。

9.参照するISO規格

平成28年12月31日時点で有効な歯科材料に関するISO規格の中で、本ガイドラインで参照するISO規格及び引用するJISの対応規格を対象とした。

備考

1.ISO規格は改正されることがあるので、最新版を調査して適用することが必要である。

2.多くのISO規格はJISとして発行されているが、ISO規格が改正されてもJISが改正されるまでの間は、両者の内容が異なることがある。

3.歯科材料に適用するISO規格の制定・改正については専門委員会(TC 106, Dentistry)が担当するが、インプラント材料については専門委員会(TC 150, Implant for surgery)が、生物学的安全性評価については専門委員会(TC 194, Biological evaluation of medical devices)が担当するISO規格も適用される。

9.1 評価項目

平成28年12月31日時点で有効なISO規格に規定されている要求事項及び特性に関する表示・記載に係わる項目を評価項目の一覧表として別表4に示す。

1) 評価項目の記載は、該当する範囲のみとし、その記載順序については、「歯科材料の物理的・化学的評価項目」(表1)の分類の順序に従った。

2) ISO規格の要求事項と該当するJISの品質項目の名称が異なる場合には、JISの品質項目の名称を採用した。

3) ISO規格の中で材質等により品質項目又は要求事項が指定されている場合には、材質等毎に適用する評価項目を記載した。

備考 例えば、「ISO 24234, Dentistry-Dental amalgam」では、合金、水銀及びアマルガムに分けて評価項目を記載した。

4) ISO規格で規定される“一般的性質”については、その内容に従って、該当する評価項目とした。

5) ISO規格の要求事項のうち、規格値等が規定されている評価項目で適用するものには“○”印を、同評価項目中で選択適用を規定しているものには“●”印を、規格値等が規定されていない評価項目の中で適用するものには“□”印を、同評価項目の中で選択適用するものには“■”印を付して区別した。例えば、“●”印については、「ISO 4049, Dentistry-Polymer-based restorative materials」では、硬化に化学重合が関係するものには操作時間及び硬化時間の品質項目を適用するが、関係しないものには適用しないと規定している。“□”印については、「ISO 15841, Dentistry-Wires for use in orthodontics」の寸法及び曲げ強さが該当する。

6) ISO規格で規定されている特性に関する表示・記載に係わる項目のうち、要求事項に規定されていないものの中で、適用するものには“△”印を、選択適用するものには“▲”印を付して区別した。例えば、“△”印については、「ISO 9917-1, Dentistry-Water-based cements-Part 1: Powder/liquid acid-base cements」の練和時間及び操作時間が該当する。“▲”印については、「ISO 10477, Dentistry-Polymer-based crown and bridge materials」の操作時間及び硬化時間が該当する。

9.2 試験方法

試験方法がISO規格に規定されている場合には、その方法を用いる。ISO規格に試験方法が規定されていない場合には、同等品のJIS又はISO規格の試験方法等を参考にする。

表1 歯科材料の物理的・化学的評価項目

A 外観・性状評価

1 外観

2 異物

3 色調

4 透光性

5 不透明度

6 気泡

7 仕上面及び光沢

8 粒度

9 均一性

10 保持孔

11 内部欠陥

12 表面粗さ

13 刃の数

14 気孔率・気孔径

15 粒子形状・粒子サイズ

16 焼結体ネック部の結合径

B 形状評価

1 寸法

2 寸法安定性

3 色による表示

4 処理膜の厚さ

C ちょう(稠)度・流動性評価

1 押出し性

2 可塑性

3 ちょう(稠)度

4 被膜厚さ

5 フロー

6 粘度

7 流動性

D 時間・硬化特性評価

1 練和時間

2 操作時間

3 硬化時間

4 口くう内保持時間

5 乾燥時間

6 光硬化深度

E 温度評価

1 ゲル化温度

2 液相点

3 固相点

4 押出し温度

5 ガラス転移温度

6 変態点温度

7 最高温度

8 溶解温度

9 注入温度

F 強さ評価

1 引張強さ

2 耐力

3 伸び

4 圧縮強さ

5 曲げ

6 曲げ剛性

7 曲げ強さ

8 曲げ弾性率

9 ヤング率

10 弾性率

11 バネ強さ

12 吸引力

13 引裂き強さ

14 硬さ

15 接着強さ

16 粘着強さ

17 結合性

18 はく離・クラック発生強さ

19 はく離強さ

20 ぜい(脆)弱性

21 衝撃強さ

22 針入深さ・針入深さ比

23 けい部強さ

24 破折強度

25 破断性

26 最大応力拡大係数

27 全破壊仕事

28 破壊じん(靱)性

29 伸び力

G ひずみ評価

1 永久ひずみ

2 弾性ひずみ

3 クリープ

H 寸法変化評価

1 寸法変化

2 熱膨張

3 硬化膨張

4 膨張妥当性

5 線焼成収縮率

J 安定性評価

1 変色

2 耐食性

3 電気化学的挙動

4 色調安定性

5 吸水

6 溶解

7 退色・変形・き裂

8 熱衝撃性

9 崩壊性

10 環境光安定性

11 分解性

12 貯蔵時の溶着

13 疲労

14 材質安定性

K 定量評価

1 化学組成

2 カドミウム含有量

3 ベリリウム含有量

4 鉛含有量

5 ニッケル含有量

6 可塑剤含有量

7 医薬品含有量

8 過酸化水素濃度

L 溶出評価

1 ひ素溶出

2 鉛溶出

3 ニッケル溶出

4 残留メタクリル酸メチル(MMA)モノマー

5 水溶性たん白質

6 フッ素溶出

M 使用性能評価

1 細線再現性

2 印象

3 石こうとの適合性

4 埋没材との適合性

5 洗浄性

6 はく離性

7 耐はく離性

8 使用性質

9 偏心

10 切れ味

11 鋳造性

12 残留物

13 着色材の性質

14 焼却残さ

15 練和泥の性状

16 形状成形性

17 象牙細管封鎖性

18 エナメル質脱灰性

19 溶解性

20 漂白性

N 光学・電磁特性評価

1 放射能量

2 X線造影性

3 磁性分布

4 漏れ磁束密度

P その他の評価

1 注入

2 密度

3 質量

4 pH

5 軸特性

6 水密性

7 同定・結晶化度

表2 医薬品含有材料、吸収性材料及び生物由来材料


コード

一般的名称

医薬品含有材料

70709000

医薬品含有歯科用歯面清掃補助材

38785000

歯科用漂白材

16710003

医薬品含有歯科用りん酸亜鉛セメント

16705003

医薬品含有歯科用ポリカルボキシレートセメント

70839003

医薬品含有歯科合着用グラスポリアルケノエートセメント

70841003

医薬品含有歯科合着用グラスポリアルケノエート系レジンセメント

70854003

医薬品含有歯科充填用グラスポリアルケノエート系レジンセメント

70848003

医薬品含有歯科充填用グラスポリアルケノエートセメント

70849013

医薬品含有歯科支台築造用グラスポリアルケノエートセメント

70849023

医薬品含有歯科支台築造用グラスポリアルケノエート系レジンセメント

70850003

医薬品含有歯科裏層用グラスポリアルケノエートセメント

70851013

医薬品含有歯科小窩裂溝封鎖用グラスポリアルケノエート系セメント

70851023

医薬品含有歯科小窩裂溝封鎖用グラスポリアルケノエート系レジンセメント

70879000

医薬品含有歯科用多目的グラスポリアルケノエートセメント

16709003

医薬品含有歯科用酸化亜鉛ユージノールセメント

70838003

医薬品含有歯科用酸化亜鉛非ユージノールセメント

70836003

医薬品含有歯科接着用レジンセメント

70837003

医薬品含有歯科用コンポジットレジンセメント

70847003

医薬品含有歯科充填用コンポジットレジン

70853003

医薬品含有歯科用充填材料キット

70855003

医薬品含有歯科間接修復用コンポジットレジン

70864003

医薬品含有歯科間接修復用コンポジットレジンキット

70865003

医薬品含有歯科用支台築造材料キット

70862000

医薬品含有歯面処理材

42483003

医薬品含有歯科用象牙質接着材

70866003

医薬品含有歯科用象牙質接着材キット

70920003

医薬品含有歯科用接着材料キット

31780003

医薬品含有高分子系歯科小窩裂溝封鎖材

70861003

医薬品含有歯面コーティング材

16182000

水酸化カルシウム系窩洞裏装材

70863003

医薬品含有歯科裏層用高分子系材料

70852000

医薬品含有歯科用覆髄材料

70870003

医薬品含有歯科用高分子系仮封材料

70871003

医薬品含有歯科用仮封材

70872000

医薬品含有歯科用歯周保護材料

31750003

医薬品含有高分子系ブラケット接着材及び歯面調整材

70913000

医薬品含有歯科用知覚過敏抑制材料

70928003

医薬品含有歯科根管切削補助材

70874000

医薬品含有歯科用根管充填シーラ

70876000

水酸化カルシウム系歯科根管充填材料

70877000

ヨードホルム系歯科根管充填材料

35861003

医薬品含有歯肉圧排糸

70884000

医薬品含有歯肉圧排材料

70905000

医薬品含有歯面研磨材

38783000

歯科用う蝕除去液

吸収性材料

70437204

吸収性骨再生用材料

34006004

吸収性歯科用骨再建インプラント材

70437304

歯科用コラーゲン使用骨再生材料

70436004

吸収性歯周組織再生用材料

生物由来材料

70439000

ブタ歯胚組織使用歯周組織再生用材料